1
フレキシブル超音波スピーカを用いたオーディオスポットの構築
立命館大学 情報理工学部 メディア情報学科
教授 西浦 敬信
2
オーディオスポットとは
ある場所にのみ音が伝わり、その他の場所では音がゼロ(もしくは限りなく小さい)
–必要な情報を必要な場所にのみ伝達
3
オーディオスポットの応用例– リビングにおけるテレビ用スピーカ
• テレビを見ている人にのみ音声を提示
(周辺で勉強している子供には聞こえず)
– 公共施設におけるデジタルサイネージ用スピーカ
• 広告の前に立つ人にのみ情報を提示
(音の広告分野を創出)
リビングデジタルサイネージ
(日経コンピュータ:デジタルサイネージ最前線より抜粋)
4
一般的なスピーカ 超音波スピーカ広い放射特性 鋭い放射特性
一般的なスピーカ VS 超音波スピーカ
聞き比べてください!
デモンストレーション
5
• 音とは• 空気の振動(圧力と密度の変化)によ
り波として伝えられるもの
• 振動が緩やかな波(低周波)は音が広がり、振動が細かい波(高周波)は音がまっすぐ進む性質を持つ
• 可聴音とは• 耳に聞こえる振動の波で、およそ20Hz~20kHz(1秒間に20
回~20,000回振動)の周期を持つ信号
• 超音波とは• 耳に聞こえない振動の波で、およそ24kHz以上の周期を持つ
信号をさす。超音波は振動が細かい波であるため、まっすぐ進む性質を持つ まっすぐ進む超音波の性質を積極的に
利用してオーディオスポットを構築
音波の基礎
6
超音波スピーカの基礎原理(概要:時間表現)
t
t
t
キャリア波
(超音波)
鋭い指向性
t
可聴音が空気中で復調
○超音波をキャリアとして、音を伝播○可聴域の音波と比べて高周波数帯を使用す
るので直進性が非常に高い○超音波はツィータ板を用いて音を放射するた
め小型の振動板を使用(筐体を小さくできる)
可聴音
7
f
○超音波をキャリアとして音を伝播○可聴域の音波と比べて高周波数帯を使用す
るので直進性が非常に高い○超音波はツィータ板を用いて音を放射するた
め小型の振動板を使用(筐体を小さくできる)
可聴領域 非可聴領域(超音波)
可聴音を超音波に加工(振幅変調)
f
可聴領域 非可聴領域(超音波)
低 高
キャリア波
側帯波f
可聴領域 非可聴領域(超音波)
402 4 [kHz] 402 442 4436 38
[kHz]
超音波スピーカの基礎原理(概要:周波数表現)
8
超音波スピーカのまとめ
• 特徴– 鋭い放射特性(音がまっすぐ進む)
– 小型(ツィータ板を複数個並べているため、1つ1つは小さい)
• 原理– 超音波をキャリア波として利用するため、信号がまっすぐ進む
(波の性質上、細かい周期を持つ波は直進する)
– 超音波のみ放射するため放射板を小型化できる
9
オーディオスポットの応用~壁面反射型オーディオスポット~
– 壁面反射を利用したオーディオスポット
– 直接音は受聴者に到来せず反射音のみが到来
⇒反射壁面上に音像を構築可能
音像
壁面
反射音のみが到来
10
壁面反射型オーディオスポットの問題点
– 音像の知覚領域はパラメトリックスピーカの放射特性に依存
– 従来の平面型パラメトリックスピーカを用いると音像の知覚領域が狭く複数人での同時受聴が困難
音像
壁面
同時受聴が困難
壁面反射型オーディオスポットにおける音像の知覚領域拡大目標
11
• 超音波スピーカアレーを用いた音像の知覚領域拡大
– 平面型超音波スピーカをアレー状に配置
– 音像の知覚領域は反射音の指向特性に依存
⇒超音波スピーカアレーの放射特性を制御することで
反射音の指向特性を制御
音像壁面
反射音の指向特性が変化
パラメトリックスピーカアレーの放射特性を
制御
従来技術
12
• 超音波スピーカアレーを用いた音像の知覚領域拡大
– 【問題点】複数のパラメトリックスピーカが必要⇒設置箇所が制限される
音像壁面
反射音の指向特性が変化
パラメトリックスピーカアレーの放射特性を
制御
従来技術の問題点
超音波スピーカの形状を改良することで放射特性の制御を実現!
提案
13
• 曲面型パラメトリックスピーカ
– 超音波素子を凹面状、もしくは凸面上に配置
凸面型 凹面型
Focus
Ultrasonic transducer
2rA
B
C
D
E
1r2x1x1x 2x
1r
2r
AB
C
D
E
• 凸面型: 放射方向を広げることで広い指向性を実現
• 凹面型: スピーカの前方に焦点を形成、遠方で広い指向性
提案技術
凹面型超音波スピーカーの試作品
14
• 放射特性の制御
– 円弧の半径 を制御することで放射範囲 を制御可能11 , rr
Focus
Ultrasonic transducer
2rA
B
C
D
E
1r2x1x1x 2x
1r
2r
AB
C
D
E
提案技術の性能
凹面型超音波スピーカーの試作品
形状を自在に変形させること(フレキシブル制御)ができれば任意の放射特性を自在に制御可能
22 xx ,
凸面型 凹面型
要点
15
• 実験目的
– 曲面型パラメトリックスピーカの放射特性を確認
• 実験内容
– 曲面型と平面型の放射特性を比較
x [cm]
y [cm]
0
50
100
150
200
0 25-25 50-50
:Microphone
:Parametric loudspeaker
曲率
192 [kHz]サンプリング周波数
防音室実験場所
RME, FIREFACE UFXオーディオインタフェース
TSP (219 [point])音源
パワーアンプ YAMAHA, P4050
マイクロフォン SENNHEISER, MKH8020
騒音レベル LA = 18.8 [dB]
cm 30 10,:cm 30:
1
1
rr
凹面型凸面型
実験条件
性能評価の予備実験
16cm) 30(1
r凹面型
平面型
cm) 10(1
r凹面型
cm) 30(1
r凸面型
x [cm]
y [cm]
050
100
150
200
0 25-25 50-50
性能評価の予備実験結果
17
• 実験目的
– 曲面型パラメトリックスピーカを用いた壁面反射型オーディオスポットの制御が可能であるかを確認
• 実験内容
– 曲面型と平面型の1次反射指向特性を比較
曲率
192 [kHz]サンプリング周波数
会議室実験場所
RME, FIREFACE UFXオーディオインタフェース
TSP (219 [point])音源
パワーアンプ YAMAHA, IPA8200
マイクロフォン SENNHEISER, MKH8020
騒音レベル LA = 31.1 [dB]
cm 30 10,:cm 30,10:
1
1
rr
凹面型 凸面型
実験条件
Wall
2.0 m2.0 m
50 deg.10 deg.
90 deg.
実験配置図
:Microphone :Parametric loudspeaker
性能評価実験
18
cm) 10Concave(cm) 30Concave(
Planecm) 30Convex(cm) 10Convex(
1
1
1
1
rr
rr
同等の曲率であれば、凹面型が良い
性能評価実験の結果
19
r=30[cm] r=25[cm] r=20[cm]
r=15[cm] r=10[cm]
凹面型反射オーディオスポットの詳細分析
20
空間の断絶は「ひきこもり」を誘発し、運動の継続を阻害する。
ウルサイ!ウルサイ!
指向性スピーカー
音環境による空間シェアリングは、公共空間への誘導効果を持つ。
楽しそう!楽しそう!
誘導 誘導
オーディオスポットの実践例
21
文部科学省COI-T「運動を生活カルチャー化する健康イノベーション」
22
新技術の特徴・従来技術との比較
• 従来技術の問題点であった放射特性を制御することに成功した。
• 従来は一般的なスピーカーを使った広い放射特性もしくは超音波スピーカーによる狭い放射特性しか実現できなかったが、本提案技術により所望の放射特性を自由に実現可能となった。
• 放射面を電気制御すれば、放射特性をニーズに合わせて(フレキシブル)制御することが期待できる。
23
想定される用途
• 本技術は様々な製品への導入が期待でき、用途の可能性は多岐にわたる。
• 特に、音の放射特性を自由に制御することで、対象ユーザに合わせて音を伝達できることから、これまでになかった新しい商品開発や市場開拓も期待できる。
• 代表的な例としては、デジタルサイネージ、家庭用オーディオスピーカ、公共機関における音声案内など
24
実用化に向けた課題
• 放射特性を制御するところまでは開発済。現在フレキシブル制御ユニットを開発中。あとは、放射範囲を広げることで音圧が低下する問題の解決が今後の課題。
• 今後、超音波から可聴音に変調させる際の変換効率について詳細に分析した上で、より変換効率の高い変調方式について検討を行っていく。
• 実用化に向けて、一般的な超音波スピーカと同程度の音圧まで向上できるよう技術を確立する必要あり。
25
企業への期待
• 未解決の音圧については、変調方式の改良(ハイブリッドAM・FM変調)により克服できる
と考えている。
• ハードウェアの技術を持つ(製造技術を有する)企業との共同研究を希望。
• また、家電メーカや、広告分野への展開を考えている企業には、本技術の導入が有効と思われる。
26
本技術に関する知的財産権
• 発明の名称 :音響空間設定方法、パラメトリック
スピーカおよび音響システム
• 出願番号 :特願2013-197599• 出願人 :学校法人立命館
• 発明者 :西浦 敬信、 中山 雅人
益永 翔平、 生藤 大典
27
産学連携の経歴
• 2006-2008: 建材メーカからの委託研究
• 2006-2009: 機械メーカからの委託研究
• 2007: 精密機械メーカへの技術指導
• 2008: 電機メーカAとの共同研究
• 2008から現在継続中: ゴルフ用具メーカからの委託研究
• 2010から現在継続中: 電機メーカBとの共同研究
• 2011-2013: 住宅メーカからの委託研究
• 2014から現在継続中: 電機メーカCとの共同研究
28
お問い合わせ先
立命館大学 研究部 リサーチオフィス(BKC)テクノプロデューサー黒木 貴久(Takahisa Kuroki)
TEL 077-561-2802
FAX 077-561-2811
e-mail [email protected]