平成22年度九州管内火力設備の事故事例
九州産業保安監督部
電力安全課
事故事例リスト
�事例1 ボイラー過熱器損傷
�事例2 ボイラー火炉蒸発管破損
�事例3 ボイラー火炉水冷壁管損傷
�事例4 蒸気タービンスラスト軸受損傷
�事例5 蒸気タービン動翼損傷
�事例6 ばいじん降下トラブル
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事例1 ボイラー過熱器損傷【概要】 貫流型ボイラー 石炭専焼 2,120t/h・パトロール中にボイラー上部で蒸気漏洩を発見。・4次過熱器出口管寄せ管台1本に損傷を確認。・類似箇所点検中、1本に損傷を確認。
#28 #28#29 #29管寄せ
4次過熱器管
4次過熱器管出口管寄せ
4次過熱器管入口管寄せ
非加熱部
ボイラ前
4次過熱器出口管寄せ
4次過熱器入口管寄せ
4次過熱器管
損傷箇所
(#29パネル5番管)
3 [ボイラー断面図]
火 炉
2次過熱器管
3次過熱器管2次再熱器管
1次再熱器管
1次過熱器管
加熱部
12345691011121314 78
4次過熱器管寄せ断面図
#29パネル管台配置図
[#29パネル5番管 損傷状況]
4次過熱器管
2次過熱器管
3次過熱器管 2次再熱器管
1次再熱器管
1次過熱器管
火 炉
【原因】 大分類:設備不備 小分類:製作不完全・工場での管寄せ製作において、管台ピッチ修正作業時(管台の長手・円周方向の修正)に管の一部を加熱・材料の変態点を超える加熱により局所的に組織変化(微細化)し、母材のクリープ強度が低下したことから、想定より短期間の運転で破口に至ったものと考えられる。
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【再発防止対策】・漏洩管及び類似箇所の点検において高温クリープによるひずみの増大が確認された管(合計29本)について、新管に取替。・今後、定期検査等にあわせて、管の健全性を確認。
事例2 ボイラー火炉蒸発管破損
【事故概要】貫流型ボイラー 1,640t/h
・運転状態の変動(給炭量増加、補給水量増加、空気流量増加等)を確認。
・現場確認にてボイラー8階缶前にて異音を確認。
・火炉前壁♯9管の高さFL+46mに
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フィッシュマウス状の破口を確認。・当初、異物詰まりによる長時間クリープと推定し点検したが、原因となる異物は発見できず、詳細調査の結果、急過熱による短時間クリープと判明。
・急激に過熱された原因調査のため、管上流側の点検を行ったところ、高さFL+7mに外面腐食減肉による別の破口を確認。
【原因】大分類:保守不備小分類:保守不完全
・炉底部の蒸発菅が腐食により破損(一次漏洩)し、管内流量が低下したことにより、下流側が過熱されクリープ損傷(二次漏洩)に至ったものと推定。・炉底部の蒸発管は、クリンカ落下に伴う“カ リ”により ホ パ
炉底管の漏洩メカニズム
漏洩部
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に伴う“カエリ”により、ホッパ水(海水)が管外面に付着し、腐食が進行したものと推定。
【再発防止対策】・漏洩管、損傷管、減肉管の新管取替を実施。・炉底部は定期的に非破壊検査を実施し健全性を確認。
事例3 ボイラー火炉水冷壁管損傷
【事故概要】貫流型ボイラー石炭専焼 1,640t/h
・パトロール中、ボイラー4階にて異音を確認。
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・火炉前壁♯7管の高さFL+19mで管長手方向に長さ13mm、幅0.5mmの破口を確認。
・また、隣接管の1本に縦しわ、近傍の2本に溝状腐食を確認。
損傷箇所
ボイラ前
ボイラ中心
1コーナ
2コーナ
4コーナ
3コーナ
STBA23Sφ31.8×t5.9(tsr=4.92mm)
漏洩管仕様
【原因】大分類:保守不備小分類:保守不完全
・破口部近傍の管内面側に赤褐色でポーラス状の厚いヘマタイトスケールが確認されたことから、スケールによる伝熱阻害によりメタル温度が上昇し、クリープ損傷により破損
同左拡大(炉内側)
ボイラ上
ボイラ上
スケール付着無し
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【再発防止対策】・漏洩管、損傷管の新管取替及び類似箇所の調査を行い金属組織劣化を認めた管の新管取替。
・洗缶ブロー方式を自圧式から押出式に変更し、残存スケールを排出。
・水質管理の見直し(給水pH値の引き上げ運用)・当面の措置として、メタル温度計を設置し温度監視を強化。
し、クリ プ損傷により破損に至ったものと推定。
炉内側
管内面のスケール
の付着状況
事例4 蒸気タービンスラスト軸受け損傷
タービン断面図
【概要】 衝動復水型蒸気タービン 29,300kW・蒸気タービンの軸位置異常により緊急停止。・潤滑油油こし器を点検したところ、金属粉で目詰まり。・開放点検したところ、スラスト軸受正スラスト側パッドのメタル損傷など確認。
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スラスト軸受詳細図
【原因】 大分類:保守不備 小分類:保守不完全スラストパッドとスラストカラーの摺動部への異物混入による潤滑不良。【再発防止対策】・起動前のオイルフラッシングを最低48時間以上実施し、フラッシングは検査員の確認判断をもって終了とする。その旨を定期事業者検査要領に追記。・年1回定期的に潤滑油性状分析を行うことで潤滑油管理の強化を図る。
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スラストパッド損傷状況 スラストカラー摩耗状況
事例5 蒸気タービン動翼損傷
【概要】再熱復水形蒸気タービン500MW
定期点検時に低圧タービン第16段の動翼部分の抜き取り検査を実施した 結果、ホイールダブティル部に亀裂模様(インジケーション)が確認された。
蒸気入口側
ロータ回転
ノッチ溝(1)
蒸気入口側より見る
ロータ角度30°
ロータ角度210°
ロータ角
度300
°
ロータ角
度120
°
(2)
(3)
(4)
(5)(7)
(6)
(8)
(9)
(11) (10)
(12)
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(36)(37)
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(39)(40)
(41)(43)
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(44)(45)
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(49)(50)
(51)
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(58) (59)
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(62)(63)
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(67)
(68)
(69)
(70)
(71)
(72)(73)
インジケーション発生箇所 ; 73箇所
26mm
1段ダブテイル部
2段ダブテイル部
3段ダブテイル部
UTによる深さ調査結果例ホイールダブティル部の状況11
【原因】
損傷は、ダブティル部に長時間の運転により腐食媒が濃縮し、金属粒界腐食に作用する遠心力の3つの要素が、長時間に亘り複合的に作用して発生したものと判断される。
⇒応力腐食割れ
SCCに及ぼす各要因の相互関係
材料要因
応力要因 環境要因
SCC
応力腐食割れ
(SCC:Stress Corrosion Cracking)
【再発防止対策】・損傷が確認された低圧タービンの取替。
・水質環境による影響の検証と、発生防止に適した水処理・水質管理の方法について検討。
①応力要因:静的な一定引張応力作用応力が大きいほど、感受性は大
②環境要因:腐食しやすい環境下(特に、腐食媒の濃縮しやすい乾湿交番域)での使用Cl-イオンや溶存酸素はSCCを加速
③材料要因:鋭敏化(*)による材料のSCC感受性の増加高降伏強度低延性の材料ほど感受性大
*;一般的にSUS材や高Cr系鋼の場合
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事例6 ばいじん降下トラブル【概要】・平常運転中、煙突入口排ガスばい煙濃度の警報発報。・電気集塵機電気室にて電流電圧指示値がゼロとなっており、集塵機能が停止。・煙突から約1kmの扇形範囲に渡り、ばいじんが降下。
(ばいじん濃度最大値8.57g/㎥N > 排出基準値30mg/㎥N )・車両(1100台)、民家屋根太陽光発電設備(20台)、農作物等へばい
じんが付着。
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【原因】・電気集塵機シーケンサーCPUユニット通信カードが故障。・通信異常が発生し、コンピュータとの入出力が遮断。・電気集塵機が制御されない状況となり停止。【再発防止対策(予定含む)】
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