Download - 3 状態図 - yakugakulab.infoŠ¶態図.pdf · 2)で構成されており、もとの組成(x 1)よりも沸点の低いa が多く含まれている。 ③:②の操作で得られた組成x
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3 状態図
1 二成分系の相平衡
二成分系(二つの成分を混合した場合)の相平衡では、相律は、F=C-P+2=2-P+2=4-P と
なる。よって、相の数 P=1 の場合、F=3 となり、自由度の最大数は 3 となる。二成分系では、自由
度の最大数が 3 であることから、示強性状態変数は、圧力、温度、組成(物質の構成比であるモル分
率、質量分率)により、すべての平衡関係を表すことができる。
二成分系の完全な状態図は、3 変数を座標軸(x 軸、y 軸、z 軸)とする立体図になるが、これを扱
うのは不便であるため、一般には、圧力や温度を一定とした平面が用いられる。
2 二成分系の液相−気相平衡
1) 温度一定条件における液相−気相平衡の状態図
下図は、温度一定条件で、縦軸に圧力、横軸に組成(混合比)をとった場合の状態図である。
・pA、pBは、A、B それぞれの蒸気圧を示している。
・縦軸が圧力、横軸が組成(A 及び B のモル分率)。
・図の上(圧力の高い状態)は、液相領域であり、図の下(圧力の低い状態)は、気相領域である。
また、液相領域と気相領域で挟まれた部分は、液相と気相が両方存在する領域である。
・液相領域と接触している線を液相線といい、気相領域と接触している線を気相線という。
圧力
組成
条件:温度一定
液相
液相
気相 +
気相
A B
pA
pB
液相線
気相線
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<温度一定条件における液相−気相平衡の状態図の読み取りについて>
例)組成 X の混合物を用意し、圧力を上昇させた場合の状態変化
<点 C〜F の状態変化>
点 C(圧力が低い状態)では、すべて気体として存在している。
点 D(気相線との交点)では、徐々に液化が始まる。
点 E では、液相と気相の両方が存在し、液相と気相が平衡状態にある。
点 F(液相線との交点)では、完全に液体となる。
圧力
組成
条件:温度一定
A B
pA
pB
X
・ C
・ ・ ・
D
E
F
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<点 E における状態>
点 E では、液相と気相の二相が存在しており、それぞれの組成、存在比については、相図より読みと
ることが可能である。
<組成を確認する方法>
①:点 E にタイライン(連結線)を引く(点 E を通過するように水平の線を引く)。
②:タイラインと液相線、タイラインと気相線の交点(点 G、点 H)をとる。
③:点 G より垂直に線を引いて得られた組成が液相の組成、点 H より垂直に線を引いて得られた組
成が気相の組成となる。
<液相と気相の質量比を確認する方法>
気相、液相の組成よりたすきをかけるように矢印をクロスさせる(青色の矢印)。その矢印の先の線
分の長さが液相及び気相の質量または物質量の割合に比例している。
このことから、気相と液相の質量比は、点 E〜点 G の距離:点 E〜点 H までの距離となる。
(参考:2 成分系の質量、物質量の割合の求め方)
2 成分系の状態図では、液相と気相、液相と液相、液相と固相が存在する領域があり、それぞれの組
成、質量または物質量の割合については、上記の方法と同様に求めることができる。
圧力
組成
条件:温度一定
A B
pA
pB
・ E
・ ・ G
H
気相の組成 液相の組成
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2) 圧力一定条件における液相−気相平衡の状態図
下図は、圧力一定条件で、縦軸に温度、横軸に組成(混合比)をとった場合の状態図であり、沸点
図といわれる。
・TA、TBは A、B それぞれの沸点を示している。
・縦軸が温度、横軸が組成(A 及び B のモル分率)である。
・図の上(温度の高い状態)は、気相領域であり、図の下(温度の低い状態)は、液相領域である。
また、液相領域と気相領域で挟まれた部分は、液相と気相が両方存在する領域である。
・液相領域と接触している線を液相線(沸騰曲線)といい、気相領域と接触している線を気相線(凝
集曲線)という。
温度
条件:圧力一定
気相
液相
+
気相
液相
TA
気相線
液相線
TB
A B
組成
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<圧力一定条件における液相−気相平衡の状態図の読み取りについて>
例)組成 X の混合物を用意し、温度を上昇させた場合の状態変化
<点 C〜F の状態変化>
点 C(温度が低い状態)では、すべて液体として存在している。
点 D(液相線との交点)では、徐々に気化が始まる。
点 E では、液相と気相の両方が存在し、液相と気相が平衡状態にある。
点 F(気相線との交点)では、完全に気体となる。
温度
条件:圧力一定
TA
TB
A B
組成
X
・ C
・
・
・
D
E
F
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<点 E について>
点 E では、液相と気相の二相が存在しており、それぞれの組成、存在比については、相図より読みと
ることが可能である。
<組成を確認する方法>
①:点 E にタイライン(連結線)を引く(点 E を通過するように水平の線を引く)。
②:タイラインと液相線、タイラインと気相線の交点(点 G、点 H)をとる。
③:点 G より垂直に線を引いて得られた組成が液相の組成、点 H より垂直に線を引いて得られた組
成が気相の組成となる。
<液相と気相の質量比を確認する方法>
気相、液相の組成よりたすきをかけるように矢印をクロスさせる(青色の矢印)。その矢印の先の線
分の長さが液相及び気相の質量または物質量の割合に比例している。
このことから、気相と液相の質量比は、点 E〜点 G の距離:点 E〜点 H までの距離となる。
温度
条件:圧力一定
TA
TB
A B
組成
・ E
・ ・ G H
気相の組成 液相の組成
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3) 蒸留
蒸留は、物質の精製によく用いられる操作のことである。
<蒸留について>
①:組成 X1の A と B の混合物を用意し、液相線と交わる温度(T1)まで加熱する。
②:①の操作で発生した蒸気を集め、T2以下まで冷却する。それにより組成 X2の液体が得られる。
なお、①の操作で発生した蒸気は、タイラインと気相線との交点(C)から垂直に線を下ろした組
成(X2)で構成されており、もとの組成(X1)よりも沸点の低い A が多く含まれている。
③:②の操作で得られた組成 X2の液体に対して①、②と同様の作用を行う。
上記の①〜③の作業を繰り返し行うことにより、沸点の低い A を多く含む液体が得られる。このよう
に、蒸気を発生させ、その後、冷却することにより物質を分離する方法を分留操作という。分留操作
を行うことにより、沸点の高い物質と沸点の低い物質に分離することが可能である。
温度
条件:圧力一定
TA
TB
A B
組成
X1 X2
①
T1
T2
②
C
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4) 共沸混合物
同種分子間力と異種分子間力が著しく異なる場合、その 2 成分系における沸点図は極大点や極小点
を有する状態図となる。極大点や極小点の組成で構成された溶液は、2 成分が同時に沸騰することか
ら、共沸混合物といわれる。
<極大点を有する場合>
A−A あるいは B−B 同種分子間力に比べ、A−B 異種分子間力の方が強い場合、A の沸点や B の沸点
よりも AB の沸点は高くなる。A や B よりも沸点の高い AB が形成される場合、A、B を混合すると、
A と B の間に強い分子間力が働くとともに熱が放出される。
・
・
・
組成
A B
TB
TA
温度
共沸点
極大点あり
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<極小点を有する場合>
A−A あるいは B−B 同種分子間力に比べ、A−B 異種分子間力の方が弱い場合、A の沸点や B の沸点
よりも AB の沸点は低くなる。A や B よりも沸点の低い AB が形成される場合、A、B を混合すると、
A と B の間に弱い分子間力が働くとともに熱が吸収される。
<共沸混合物が形成される場合における分留>
分留操作を行うことにより、沸点の高い物質と沸点の低い物質に分離することが可能である。通常
の沸点図を示す混合物では、分留操作により A と B の混合物から、A、B を分離することが可能であ
るが、共沸混合物ができる場合には、A、B に分離できず、混合物の組成によって A、AB または B、
AB に分離される。
A B
TA ・
・
・ TB
共沸点
極小点あり
温度
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3 液相−液相平衡
気相の関係しない固相や液相で成立する平衡では、圧力の影響は一般に小さいため、圧力を 1atm
に固定して考える場合がほとんどである。液相−液相平衡では、一般に圧力を自由度から除外して考
える。極性の小さい溶媒と水を混合しても混じり合わず二相に分離することがある。その代表例とし
て、水とフェノールの混合系がある。
<相互溶解度曲線、臨界共溶温度について>
上記の図は、水−フェノールの相互の溶解について表していることから、相互溶解度曲線といわれ
る。水−フェノールの相互溶解度曲線は、温度と共に大きくなり、約 66.8℃に達すると、どのような
混合割合でも混合し、均一な液相となる。このようにどのような混合割合でも混合し、均一な液相と
なる温度を臨界共溶温度(臨界溶解温度)という。
条件:圧力一定 温度
フェノールの濃度(%)
0 100
1 相領域
2 相領域
・ 66.8℃
・ 30℃
・ ・ P Q R
X1 X2 X
水相の組成 フェノール相の組成
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<1atm、30℃、水−フェノール混合系の組成 X について>
1atm において水−フェノール混合系の組成 X を 30℃にすると、点 P となる。点 P は 2 相領域にあ
ることから、水相とフェノール相に分離していると考えられる。2 相の組成については、タイライン
を引き、相互溶解度曲線と交わった点(点 Q、点 R)から垂直に線を下ろした組成 X1および X2によ
り表される。水相の組成については、フェノールの濃度が小さく、水の濃度が大きい X1 により表さ
れ、フェノール相の組成については、水の濃度が小さく、フェノールの濃度が大きい X2 により表さ
れる。また、水相とフェノール相の質量比については、X1(水相の組成)、X2(フェノール相の組成)
よりたすきをかけるように矢印をクロスさせる(青色の矢印)。その矢印の先の線分の長さが水相及
びフェノール相の質量または物質量の割合に比例している。このことから、水相とフェノール相の質
量比は、点 P〜点 R の距離:点 P〜点 Q までの距離となる。
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4 固相−液相平衡
二成分系では液相は完全に溶け合うが、固相では溶相とならない場合がある。その例として、ベン
ゼン−ナフタレン系がある。
<ベンゼン−ナフタレン系の状態図について>
TAはナフタレンの融点、TBはベンゼンの融点である。TAから伸びている曲線はナフタレンの融点
変化を示しており、TB から伸びている曲線はベンゼンの融点変化を示している。TA より伸びている
曲線の下では、ナフタレンが固体化しており、TBより伸びている曲線の下では、ベンゼンが固体化し
ている。TC以下の温度では、ナフタレンおよびベンゼンは完全に固体として存在している。
点 C の組成では、ベンゼン及びナフタレンが同じ融点を示しており、共融点という。なお、共融点
における組成の混合物を共有混合物という。点 C における自由度については、0 である。その計算方
法として、点 C では、圧力一定条件であることから、相律は、F=C-P+1 となる。また、点 C で
は、固体のベンゼン、固体のナフタレン、溶液の 3 相が存在している。よって、F=2-3+1=0 とな
る。
・
・
TB
TA
ナフタレンのモル分率
0 1.0
溶液
溶液+
固体ナフタレン 溶液+
固体ベンゼン
固体ベンゼン+固体ナフタレン
TC
圧力一定
・ C
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組成 X のナフタレンとベンゼンの混合物を用意し、温度を低下させた場合
<点 H〜K の状態変化>
点 H(温度が高い状態)では、すべて液体として存在している。
点 I(ナフタレンの融点変化を示す線との接点)では、徐々にナフタレン固体化が始まる。
点 J では、固相と液相の両方が存在し、固相と液相が平衡状態にある。
点 K(温度が低い状態)では、ベンゼンおよびナフタレンは固体として存在している。
<点 J における溶液の組成および固体と溶液の存在比について>
点 J においては、固体のナフタレンと溶液(ベンゼンとナフタレンの混合溶液)が存在している。固
体および混合溶液における組成については、以下のように確認することができる。
①:点 J からタイラインを引き、ナフタレンの融点変化を表す線との接点(点 L)、点 M より垂線
おろす。
②:点 L の組成(X1)が溶液の組成であり、点 M の組成(ナフタレンのモル分率 1.0)が固体の組成
となる。
また、固体と溶液の存在比については、以下のようにして確認することができる。
①:溶液の組成および固体の組成よりたすきをかけるように矢印をクロスさせる(青色の矢印)。
②:その矢印の先の線分の長さが溶液及び固体の質量または物質量の割合に比例している。このこと
から、固体と溶液の質量比は、点 L〜点 J の距離:点 J〜点 M までの距離となる。
・
・
・
・
・ ・ ・
H
TB
TA
L
・
I
ナフタレンのモル分率
J
K
M
0 1.0 X
圧力一定
X1 溶液の組成 固体の組成
・
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<参考:二成分系の状態図の読み取りについて>
二成分系の状態図を読み取る際に、次のことを確認するようにしましょう。
①:固体、液体、気体どの相における平衡を表しているのか。
②:状態を表す変数のうち、どの変数を一定としているのか。
③:状態図の縦軸、横軸が何を表しているのか。
④:温度変化、圧力変化により状態がどのように変化しているのか。
⑤:二相が存在する場合、それらの組成、質量比はどうなっているのか。
⑥:相律、自由度についてはどうなっているのか。
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◇演習問題◇
問1〜3
図は成分 A 及び B からなる混合物の液相-気相状態図である。P 点にある混合物の温度上昇に伴って観
測される状態変化にかんする記述の正誤について答えよ。ただし、P点における成分Bのモル分率はXであ
る。
問1 温度 T2では、液相中の成分 B のモル分率は X より大き
い。
問2 温度 T2では、気相中の成分 B のモル分率は X より大き
い。
問3 温度 T1で、蒸気を集めて冷却して液化したものを再蒸
留する。この操作を繰り返すと、ほぼ成分 B の蒸気が得ら
れる。
問1:正
問2:誤
温度 T2では、気相中の成分 B のモ
ル分率は X よりも小さい。
問3:誤
温度 T1で、蒸気を集めて冷却して
液化したものを再蒸留する。この操
作を繰り返すと、ほぼ成分 A の蒸
気が得られる。
P
液相
気相
T1
T2
温
度
0 X 1
Bのモル分率
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問4〜7
図はクロロホルムとアセトンの混合系の気相―液相の状態図である。圧力(1気圧)一定で、
横軸は組成(クロロホルムのモル分率)、縦軸は温度である。この混合系に関する記述の正誤に
ついて、答えよ。
問4 曲線 ABC 及び曲線 CDE は沸騰曲線である。
問5 点 C における自由度は 0 である。
問6 クロロホルムのモル分率が 0.35 の混合物は、分留によ
って共沸混合物とクロロホルムに分けられる。
問7 クロロホルムとアセトンを混合すると発熱する。
問4:正
問5:正
問6:誤
クロロホルムのモル分率が 0.35 の
混合物は、分留によって共沸混合物
とアセトンに分けられる。
問7:正
クロロホルムとアセトンを混合す
ると、沸点の高い共沸混合物を形成
することからクロロホルムとアセ
トンの間には強い分子間力が働い
ていると考えられる。強い分子間力
が形成される際、余分なエネルギー
が放出されるため、クロロホルムと
アセトンを混合すると発熱が認め
られる。
・
・
・ ・
・
0
C
B
D
A
E
0.2 0.4 0.6 0.8 1
組成
温度
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問8〜12
下の図は水ーフェノール2成分系の相互溶解度曲線である。図中の A、B は、図に示されている温度
と組成で表される溶液を意味する。次の記述の正誤を答えよ。
問8 相平衡にある A と B の水含量を比較すると、A の方が
大きい。
問9 温度が 66.4℃を越えると溶液は直ちに沸騰する。
問 10 水とフェノールを質量比 1:1 で混合し、40℃で激しく
振り混ぜると系全体は直ちに透明な溶液となる。
問 11 フェノールの化学ポテンシャルは A と B で等しい。
問 12 フェノール 10%と水 90%を混合した液体が 2相から 1
相になるときの温度は、66.4 度である。
問8:正
問9:誤
66.4℃を越えると溶液は相互溶解
する。
問 10:誤
水とフェノールを質量比 1:1 で混
合し、40℃で激しく振り混ぜると 2
相になる。
問 11:正
問 12:誤
フェノール 10%と水 90%を混合し
た液体が 2 相から 1 相になるとき
の温度は、40 度である。
◇関連問題◇
第 86 回 問 171、第 94 回 問 19、第 103 回 問 92