Download - Aklo Interview
© rev3.11™ 2012
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■AKLO 『THE PACKAGE』特別インタビュー
YouTube やミックステープなど、それまで”あまり一般的ではなかった方法”を有効に活用することで注目を集
め、雑誌などのメディアへの露出やラジオ番組を持つようになるほどのプロップスを得た AKLO がついに
Bach Logic 率いる”ONE YEAR WAR RECORDS”からアルバム『THE PACKAGE』をリリースした。以前に
JPRAP.com の企画にてインタビューを行った頃は現在に比べると勢いはあれど、まだまだメインストリームに
躍り出るようなラッパーではなかったが、あれから 2 年を経て変わった境遇や”フリー”で勝ちあがってきた
AKLO が渾身の力をそそいで制作した『THE PACKAGE』にこめた想い、そしてほとんど無名のなかネットの
世界で勝ち上がっていた頃から変わっていった視点など、ミックステープ時代の AKLO を知るひとこそが興味
を持つであろうテーマを中心に掘り下げさせてもらった。(インタビュワー:微熱王子)
———————
–2つのフリーダウンロードミックステープ(『A DAY ON THE WAY』、『2.0』)のリリースからこの『THE
PACKAGE』のリリースまで 2 年以上経ちましたが、ミックステープのリリースから今まで AKLO さんの境遇は
どう変わりましたか?
AKLO(以下、A):ミックステープをリリースしたことで全く新しい流れがくめたと思うんですよ。これまでの日本
のヒップホップシーンで勝ちあがっていくために必要だった人脈とか、流通とか、お金とか、ビートの面を含め
て色々と面倒くさい要素を全て取っ払ったうえで自己アピールをできました。ただ、その分リスナーの期待感も
高かったと思う。本当はもっと面白いことをしたかったんだけど、CD をリリースするより面白いことは思いつか
なかった。だけど、俺が「ここで何か面白いことをしないとヤバイな」と思うくらいの注目は感じていたし、まった
く無名だった俺がシーンを背負っているんじゃないかと思うくらいのプレッシャーを感じるくらいのところまでは
来たと思いましたね。
–『2.0』で夢として語っていた”ラジオ番組を持つ”ということも実現しましたし、人脈や環境の面でもいろいろと
変化があったんじゃないかと思いますけど。
A:わかりやすいところで言うと、”ONE YEAR WAR MUSIC”とディールを組んだことで、個人では到底かけら
れないような予算のなかで PV を作ることが出来るようになったというところですね。そういった環境が整ったと
いう面で、制作にプラスになるような変化はありました。
–広告面でプラスになったと。
A:勿論、トラック面でも。
俺がそれまで持っていたコネクションより、クオリティの高い人脈を使って作品をつくることができるようになっ
た。それは Bach Logic だったりするわけですけど。
–より幅広い人脈のなかでビートを選ぶことができるようになったということですね。
A:あとは、それによってサポートしてくれる人たちが増えてくるところもあります。俺のやっていることはラップ
だけだけど、それ以外のすべての部分でうまく動いてもらえるようになったと思いますね。
–そういった幅広い人脈を得たなかで、『THE PACKAGE』のプロデューサを Bach Logic と JIGG で固めたのっ
て何故なんでしょうか。AKLOさんのこれまでの動きを見ていると、別に日本にこだわらなくてUSのトラックメイ
カーからビートを揃えても良さそうですけど。
A:結局、PV は US で撮りましたけど、本当は全て国産で揃えたいという意図はあったんです。”日本での最高
峰”を揃えたほうがわかりやすいと思ったんですよ。日本らしさを追求したかったわけではないんですけど、”メ
イドインジャパン”にこだわった US 志向のヒップホップを作りたかったんです。
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–「全て日本の物で揃えてもこれだけの物が作れるぜ」ということを示したかった?
A:そうですね。日本で最高峰の物を作ってみたかった。そのほうが話題としてもキャッチーでわかりやすいし。
US の名前があまり知られていないトラックメイカーからビートを揃えるより、日本の最高峰のトラックメイカーの
ビートを揃えたほうが面白い作品がつくれるとも思いましたし。
–それこそ Bach Logic のプロダクションは SEEDA や NORIKIYO、4WD、SALU など日本のヒップホップリス
ナーにとっては馴染み深いものだと思うんです。言ってしまえば、馴染み深すぎて意外性が無い。そういう面
がリスナーにとってマイナスに働くんじゃないかっていうようなことは考えなかったんですか?
A:あぁ、「つまんねーよ」ってことですね。でも、最終的に作品になったときに「誰も勝てないな」とは確実に思
っています。「他の人の作ったトラックと聴き比べてみ?」ってことなんですよ。
–Bach Logic のビートこそが最高峰だと。
A:トラックメイキングってアイデア勝負ではないから。みんな、「パソコン 1 台でどうとでもなる」というようなこと
を言うけど、そうじゃない。経験も必要だし、色々な機材が必要だし、きちんと自分のスタジオを持っていて、こ
れまで成功を収めているからこそ鳴らせる音というのが絶対的にある。色んなヤツがビートを作っていて、な
かには注目を受ける人もいるけど、やっぱりどこかチープな部分があるんですよ。そういうことを踏まえて、”超
プロフェッショナルな音”をつくれるのは Bach Logic しかいないと思うんです。もし、そういう部分をディスるん
だったら、全然ディスってもらって構わない。そこには絶対的な自信をもっているから。
–既に公開されているインタビューでは、「Bach Logic と JIGG の 3 人で協力して制作を進めた」というようなこ
とを言われていましたけど、具体的に制作にあたってどんなアドバイスを受けましたか?
A:3 人で一番初めに実験的につくった作品が”BEAST MODE”なんですよ。あの曲はビートをはじめにもらっ
て、ラップもほとんど変更することなく作成した曲なんです。で、あの曲をつくった後に、Bach Logic が「OK!
もう SWAG な曲は無し!」って。
–それは何故?
A:理由は教えてくれなかったです。とにかく、「スワッギーな曲はこれで充分」って言われたんです。いままで
の AKLO がやっていたことばかり出して欲しくないから、新しい面も出して欲しいって。
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–ちなみに、AKLO さんにとっての”SWAG”ってどういうものなんですか?
A:本当は SWAG の定義なんてものはそれぞれが考えることだと思うし、自分の答えが出たヤツが SWAG な
んですけど、俺の答えが知りたいなら……”単なる自慢”ではなくて、”自分のやっていることが一番フレッシュ
なんだという確信があって、それを自慢すること”が SWAG なんですよ。
–それが AKLO さんの SWAG に対する答えだと。
A:例えば、ルイヴィトンのベルトがここにあったとして、そのルイヴィトンのベルトそのものは SWAG ではない。
だけど、自分のコーディネイトのなかでそのルイヴィトンのベルトを使って、「このファッションでルイヴィトンの
ベルトを使うのは新しい」だとか、「誰もやったことがないし、ヤバくないか?」っていうところまで達したときに、
そいつとそのルイヴィトンのベルトに SWAG が生まれる。
–自分なりのセンスや、自分なりのアイデアがあらわれているものが SWAG だということですね。
A:そうですね。ただ、それは俺の SWAG の定義であって、他の人たちとの SWAG の定義とは違うことも知って
いる。でも、他の人の考えとは違うからこそ、『THE PACKAGE』をつくることができたとも思いますけどね。
–AKLO さんのイメージってやっぱりそういう SWAG にこだわる姿勢だったと思うんです。それを禁止されること
に抵抗感はなかったんですか?
A:ありましたよ。俺のなかでの SWAG の定義も固まっていたから、SWAG の無い曲はありえなかったんです。
でも、そこから色々と考えてつくったのが”サッカー”や”YOUR LANE”という曲なんです。聴くひとにも拠るだろ
うけど、これらの曲を SWAG だと思う人はあまりいないと思う。
“YOUR LANE feat.鋼田テフロン”
http://www.youtube.com/watch?v=irqr-LPbDNU
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–どちらかと言うとリスナーが感情移入しやすい、エモい感じの曲ですよね。
A:そうですね。「こういうことも出来るよ」っていうことでつくったのが、”FOOT PRINT”とかその辺のライン。
で、そういうものばかりつくっていると、スワッギーなものが超作りたくなって「スワッギーな曲ばかり集めたミッ
クステープでもつくろうかな」とかも考えるようになったんですよ。それこそ、”サッカー”を 1 曲つくっている間に
スワッギーな曲を 3 曲つくれるような感じになっていったんです。
–どんどん追い詰められている感じですね。
A:そういうところを Bach Logic が感じ取ったのかわからないですけど、ある日突然「今日から SWAG は解禁
やから」って言われて制約が取れたんです。それでつくったのが”CHASER”や”RED PILL”とか。
–”S.H.O.T”とか?
A:いや。それは制限かかっているときにつくった曲ですね。コンセプチャルな内容の曲は制限がかかっている
ときにつくったもので、「I、MY、ME、MINE」みたいな自分中心のことばかり言っている曲は SWAG 解禁になっ
てから書いた曲です。で、結果的には苦しかったけど、すごく良かったと思う。制限がかかったお陰でコンセプ
チャルな曲も書けたし、制限を外したときの爆発力も曲にあらわれていると思うから。
–制限がかかったことでスワッギーな曲を制作するときのモチベーションが増幅されたんですね。
A:具体的に「ここの小節こういう風にして」って細かい指示を出されるんじゃなくて、俺のマインドの部分に制
限をかけることで制作に影響を与えるようなプロデュース方法でしたね。
Bach Logic は SALU の『IN MY SHOES』にすごく納得していたんで、おそらく俺の作品にはそこまで思い入れ
はなかったんじゃないかとも思いますね。だから、曲の制作にはいってしまえば、俺のやりたいことをやりたい
ようにやらせてもらった感じがします。
–”RED PILL”で 3.11 に触れるようなラップをしていたり、それこそ”YOUR LANE”でのリスナーに訴えかけるよ
うなラップをしていたところもありますけど、そういうラップをするイメージがこれまでの AKLO さんのイメージか
ら離れているので、Bach Logic の指示があったんだろうなという邪推はしていたんですが…
A:別に「リスナーが感情移入しやすい曲を書け」だとか、「ラブソングを書け」っていうような指示があったわけ
じゃないんですよ。「”俺が俺が”っていうのばかりだと嫌だよ。他のテーマの曲もかけるやろ?」ということしか
言われていない。そんなの「書けるよ」としか言えないですよね。
–JIGG はどうでしたか?
A:JIGG 君もすごくこだわってくれましたよ。JIGG 君がビートをつくった”S.H.O.T”が大きなターニングポイントで
したね。最初の頃に”BEAST MODE”や”サッカー”、”BEST MAN”を書いていて「これからこのアルバムをどう
いう方向に持っていこうかなー」ってみんなが考えているときに俺が”S.H.O.T”を書いて持っていったんですよ。
そしたら 2 人の俺に対するリスペクトレベルが明らかに上がりましたね。「俺らが想像していたものとは全然違
う」って。
–具体的にどんなところに彼らは感銘を受けていたんですか?
A:”S.H.O.T”っていう曲は、ジョン・レノンを殺した人の映画(”チャプター27″)からインスパイアされたつくった
曲なんですよ。ジョン・レノンを殺したマーク・デイヴィッド・チャップマンっていう人は”ライ麦畑でつかまえて”と
いう本を読んでいるなかで空気のような自分の存在が嫌になっていって「有名なヤツを殺したい」という欲望を
持つんです。それで、ジョン・レノンを標的にするんですけど、元々マーク・デイヴィッド・チャップマンはジョン・
レノンのファンだった。だけど、「アイツは偽善者なんじゃないか」ということに彼は気づいて、「嘘つき野郎、殺
してやるよ」っていう考えに行き着くんです。
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–マーク・デイヴィッド・チャップマンに感情移入したということですね。
A:彼にとってのジョン・レノンは、俺にとってのヒップホップシーンに置き換えたら面白いなと思いついて、そこ
から「じゃあ俺はヒップホップシーンを殺してやるぜ(KILL THE GAME)」っていうコンセプトが出来上がったんで
す。それを Bach Logic と JIGG の 2 人に聞かせたら「AKLO、ヤバイな。もっとやってみ」ってなったんですよ
ね。
–過去 2 作のミックステープと比べると、『THE PACKAGE』はずいぶんストイックな印象を持ちました。たとえば、
ミックステープでのギャルネタは結構ナンパな感じでしたけど、『THE PACKAGE』で 2 曲あるギャルネタがそ
れぞれ結果的に AKLO さんの孤独をあらわすような内容になっています。そういった面でも AKLO さんの”孤
独さ”や”孤高さ”があらわれている作品だと思ったんですが。
A:そうですよね。途中で気づいて”PM TO AM”とか”THE LADY”をつくったんですけど…。「凄い良いものをつ
くろう!」と気負い過ぎて、ストイックになってしまって一瞬遊び心を失っていた時期があったことは否めない。
–最高峰のものをつくろうという気概が結果的にストイックな作品をつくりあげてしまったということですか。
A:だけど、途中で修正したつもりです。やっぱりアルバムとして聴けるように息抜きできるようなポイントをつく
って、必死になんとかバランスを取るように努めました。
–うーん。やっぱり結構ストイックですよね。
A:確かに”独り”の作品ですよね。ずーっと、主人公一人っていう。
–ラップスキルの面でも一人で高みを目指しているような感じですし、作品テーマとしても”自分の描く世界を完
璧につくりあげていこう”としているような感じ。しかも周囲のギャルからは理解されず、孤独になっていってし
まう。
A:そうなんですよ。でも、それは勿論ワザとやっています。たとえば、曲の流れで”FOOT PRINT”から
の”S.H.O.T”というのは意味がある。最初から曲を流したときに”FOOT PRINT”はリスナーの耳を傾ける内容
だと思う。そこから一気に”S.H.O.T”で一番深いところに引きずりこみたかった。
–”FOOT PRINT”で彼女から理解されず孤独になってしまった男が、”S.H.O.T”で思いつめて世界を殺しに行く
っていう流れですね。
A:正にそうです。”S.H.O.T”自体がすごく思いつめた曲なので、何かキッカケがないとこうはならない。だか
ら、”FOOT PRINT”のテーマは良いキッカケになると思ったんですよね。
–これまでのミックステープでは US ヒップホップに対して AKLO さんなりの解釈が入ったバラエティ豊かな作品
だったと思います。US ヒップホップをアレンジするような遊び心が面白さの1つでしたけど、ミックステープが好
きだったリスナーにとってはそういう面白さがなくなってしまった部分は、魅力が後退しているところだと思いま
す。そういった点を踏まえ、リスナーに対して『THE PACKAGE』の聴きどころをアピールしてもらえますか。
A:俺自体はすごく変化していくアーティストなんですよ。これまで、アンダーグラウンドな曲も出しているし、
『AKLO と空』のような作品も出している。『THE PACKAGE』は俺の考える”最高峰のクオリティ”という部分を
追求していったアルバムなんで、今回は「日本最高峰のヒップホップというものがどんなものか興味ある」とい
う人に是非聴いてもらいたい。もし遊び心があって「こいつバカだなー」って楽しめる曲が聴きたいのなら 2 つ
のミックステープを聴いてもらえればいいかな。
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–お金をかけたからこそ出来たアウトプットを聴いてもらいたいってことですね。お金をかけないと出来ない到
達点ならではの面白さというか。
A:人が本気を出しているところも面白いじゃないですか。人が遊んでいるところも面白いけど、そういう風に遊
んでいた人が本気を出したらどうなるんだろう?っていう。
ミックステープ以上のクオリティをリリック面でも、ラップ面でも、ビート面でも、全てにおいて追求した。ミックス
テープの魅力はわかっているつもりだし、ファッショナブルな曲だと”RED PILL”のシングルカップリングになっ
ていた”E.T.”があるけど、そういう曲がアルバムに入らないくらい、『THE PACKAGE』にはこれまでのミックス
テープには無い要素が強い。AKLO が出した本気のカタチが『THE PACKAGE』です。
–『THE PACKAGE』のコンセプトは、”古いシステムや世界を捨てて、新しいシステムや世界をつくりだして行
く”ものだと捉えました。実際、古いシステムを捨てて新しい世界で生きるというようなバースも色々な曲で聴け
ますし、ギャルネタも含めて新しい世界で生きる人間の孤独さみたいなものも出ているし、”YOUR LANE”みた
いなリスナーに向けてのメッセージソングでも”新しい世界へ行くために目覚めさせる”ような内容をうたってい
る。
A:それはそうかも。特に”RED PILL”は”リスナーを目覚めさせる”ためにうたっているような内容になっている
んだけど、これは途中で気づいてしまったことなんですよ。SWAG の定義とかっていうよりも、もっとスゴいこと
に気づいてしまった。
自分の中で 3.11 ってすごく大きいものだったんですよ。「2 年も何でかかったんだよ?」って言われると恥ず
かしい話、3.11 で受けたダメージが大きかったから。3.11 までの流れがあまりに良かったから、直面したとき
にどうすればいいのか本当にわからなかった。たとえば、L-VOKAL が”S.O.S.”っていう曲で宇宙人に助けを
求めるというコンセプトを打ち出してきたときに素晴らしいなと思ったですけど、アーティストがそれぞれ 3.11
というものをどう消化するのか?ということが試されている感じがしたんです。L-VOKAL の曲だと、怒りを政
府とかにそのままぶつけるのではなくて、「いま日本がヤバイんです!助けてください!」って宇宙人にメッセ
ージを送るという内容でそれがとてもフレッシュに感じたんですね。しかも、表現として新しいだけじゃなくて、リ
スナーへのメッセージとしても伝わる。
–たしかに。ただ単に怒りを表現するだけではオーソドックスすぎて、新しさが無いですね。
A:自分はL-VOKALみたいな視点はなかなか思いつかなかったんだけど、俺の視点で政府とかを見たときに
すごく「ダサいな」って思ったんです。「政府ってダサいな、地上波ってダサいな、日本のダサいところって一杯
あるな」って。
–風営法に関するリリックもありましたね。
A:そうそう。で、「彼らはなんでこんなにダサいんだろう?」ってことを考えたときに、”社会へ抵抗しなければ、
しなくなるほどダサくなる”ということに気づいたんです。
–周りに流されることで画一的になってくるし、自分独自のカラーが出せなくなってくる。
A:TV 番組をつくるにしても面白い番組をつくりたいのに、会社に言われてつまんない番組をつくっているなん
て良く聞く話で。社会の言うなりになればなるほどダサくなっていくということは、政府があんだけダサいんだか
らしょうがないことなんだと思った。そして、逆に”超カッコいいこと”っていうのは脅威なんじゃないかってことに
気づいたんですよ。カッコよければカッコいいほど REBEL だなって。
–その視点は面白いですね。
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A:俺の解釈では、”何かを言うこと”が REBEL なのではなくて、”カッコいいこと”そのものが REBEL なんですよ。
そこに気づいて作り上げたから『THE PACKAGE』はストイックな内容になっているんです。カッコよさを提示す
ることで、社会へ抵抗しているんです。
–『THE PACKAGE』が”新しい世界を創出する”ということをテーマにしているのであれば、その世界ってどんな
ものなのだろうか?と思っていたんですけど、つまり”カッコいいものに満ち溢れている世界”なんですね。
A:そうですね。そういう視点を持ったことでカッコいいものにフォーカスしているんです。
–インタビューでは、「”強さ”が”カッコよさ”なんだ」ということも言っていましたが。
A:昔も現在も、誰かが何かを表現をするとイーブンなことも言えば、ネガティブなことも言っていた。ただ、昔と
現在でぜんぜん違うのは、昔はネガティブなことを散々言っていても表現者にはその言葉が届かなかった。正
確に言うと、ある程度の発言力を持った地位のある人が言わないと表現者には届かなかった。だけど現在は、
好き勝手なことを誰が言っても表現者にすぐに届いてしまう。アーティストはサンドバックみたいなもので叩か
れたい放題なんですよ。だから、いま何かを表現したいのであれば、まず強くなければならない。叩かれても、
ヘイターに対するアンサーをきちんと出せるか、本当に無視できるか。いくら才能があっても表現することを恐
れてしまうと何にもならないから。
–表現がお金に変わるのであればまだマシですけど、表現に対する見返りが何もないのであればなおさらキツ
イですからね。
A:だから、弱い部分やセンシティブな部分を抱えているアーティストはこの先キツいんじゃないかと思います
ね。言ってしまえば、草食系男子とか言われてマチズムとは離れていく日本人のこの流れそのものがダサい。
だって、弱くなればなるほど抵抗できなくなっていくのに、社会的な流れがそっちの流れになっているんだから。
そういう流れから見ても、俺がやっているような SWAG だったり、カッコよさを追求したり、強さを求めるようなこ
とは日本の流れから見て反しているように見えるかもしれないけど、全然反していない。いま闘うために必要
な要素を言っているだけだから。
–”サッカー”という曲は、AKLO さんのこれまでの音楽活動をサッカーに置き換えて表現した曲です。この曲の
なかでも、AKLO さんは新しいフィールドで闘っていくことになりますけど、AKLO さんの目指す”新しいフィール
ド”はどこでしょうか?
A:”サッカー”という曲に対して言えば、ヒップホップのメインストリームなんですけど、いまそんなものはほとん
ど存在していないこともわかっているので、最終的には日本の音楽の中でのメインストリームで闘いたい。
–以前のインタビューの中では「日本の音楽チャートにヤバいラップを提示する」ということを言っていましたけ
ど、そこは変わっていないですね。
A:そこは変わっていない。ただ、そこに”カッコいいものは REBEL だ”という思考が加わったことで、その目標自
体にも大きな意味が出てくると思っています。
–AKLO さんは自ら”ラップビースト”と名乗るくらいラップにこだわりを持っているラッパーで、これまでのミックス
テープでもソロのイメージが強いラッパーでした。今回、アルバムには 1 人だけ客演ラッパーがいて、それが
NORIKIYO だったのがとても意外だったのですが。
A:俺はずっと前から NORIKIYO が好きだったんです。最近はライブでも会って話をすることがあるんですけど、
彼は人間的にオトナで、今回客演に呼んだ”LIGHTS & SHADOW”ではオトナの視点が欲しかったんです。影
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の魅力も凄くあるんだけど、長く生きていると光の良さがわかってくる。この曲の後に”YOUR LANE”があるか
ら、その流れでどうしてもそういうことがわかっているラッパーの言葉が欲しかった。
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–シングルに収録されている”E.T.”の JON-E や、以前から AKLO さんが注目していた MOMENT、Y’s やレー
ベルメイトの SALU、これまで曲をいくつか一緒につくっていた KLOOZ あたりのラッパーとの曲がアルバムへ
収録されていないのが意外でした。
A:”LIGHTS & SHADOW”は全部俺がラップしている AKLO バージョンがあって、フックも全部俺が考えていた
んですけど、このフックのイメージが NORIKIYO 君にピッタリだったんですよ。曲の趣旨を考えても、
NORIKIYO 君以上にハマるラッパーはいないと思います。
–ミックステープ『2.0』がドロップされてから、このアルバムがリリースされるまで、AKLO さんの動きとしてはイ
ンターネットがメインのものではなくなってきていると感じます。前は、「YouTube チャンネルを活用していきた
い」という話や、「ミックステープでコンディションを提示していきたい」ということを言っていましたけど、現在の
AKLO さんから見て”インターネットでの音楽活動”をどう捉えていますか?
A:残念ながら、昔ほど効果が出なくなっている気がしますね。やっていることに対して見返りが無さ過ぎるよう。
YouTube は評価しているんですけどね。こないだ”New Day”をリミックスした曲をネット上にアップしたんです
けど、あれも YouTube に比べると 1/30 くらいの人しか聴いてくれていない。だから、「やるからには
YouTube にビデオをアップしなければいけない。でも、ビデオをアップするのであればクオリティが高くないと
いけない」そういうことを考えていくと、フリーの音源じゃなくて、”RED PILL”みたいなシングル曲のビデオが一
番効果が出るということになる。だから、プロモーションとしてフリーの音源をバンバン出すというよりは、お金
をかけて 30 倍の効果のあるものを出したくなるのは自然なことですよね。フリーのものを出すのもたまには良
いことだと思いますけどね。”New Day”をリリースして何か損をしたかというと特に損もしていないし。
“RED PILL”
http://www.youtube.com/watch?v=uOaPZARbTHg
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–ミックステープのほうはどう考えています?
A:ミックステープは楽曲を1つ出すよりおそらく 10 倍くらいの効果はあると思いますよ。もしかしたらそれ以上
あるかもしれないけど、YouTube には勝てないんじゃないかな。いま一番効果無いのは SoundCloud にポ
ンと曲をアップするスタイル。日本で SoundCloud からバズった人はいないと思うんで。
やっぱり単に新しければいいってものでもない。YouTube は似たような曲をリンクしていく仕組みや、ブログ
に YouTube を埋め込むようなチャートも日本語であるから広まり易いシステムになっている。
–ミックステープだと、自分のやりたいことを YouTube 以上にリスナーに伝えることができそうな印象を持ちま
すけど。
A:こないだ BOWWOW へインタビューしたときに彼は「アルバムはワールドミュージックを作らなければならな
いんだけど、自分のやりたいことはヒップホップ。だからヒップホップはミックステープで表現していきたい」とい
うことを言っていたんですけど、俺の場合はアルバムで表現したいことが今自分が一番表現したいものなんで
すよね。だから、いまミックステープをつくったとしてもアルバムと似たようなものが出来てしまうと思う。
–AKLO さんがネット上から出てきた時期って、新しいネットのインフラも出揃って来て、表現者が表現したいこ
とをネットにアップして、それがリスナー達にダイレクトに伝わって行く。今までに無い新しい音楽の世界が立ち
上がっていくようなワクワク感があったと思うんです。当然、リスナーはそういうワクワク感をこれから産み出し
てもらえるんじゃないかという期待を AKLO さんに持っていると思いますが。
A:ワクワク感っていうより結果が大事な時期なんじゃないですかね。良い結果を出せば出すほど、後に続くヤ
ツが出てくるはずなんですよ。俺が結果出さないと後に続かないと思う。「いいなー。AKLO。あいつミックステ
ープから成り上がったらしいから、俺もやってみるか」みたいな。
–既にネットのインフラ面は充実してだいぶ経っているから、ネットから産まれることの斬新さや面白さ云々で
はなくて、作品そのもののクオリティなり、結果で面白さを出していくしかないということですね。
A:そうそう。”面白くてカッコいい”というものにはどんどん挑戦してもらいたいですね。俺は『THE PACKAGE』
よりインタレスティングでカッコいいものを無料で出すしか次のステップには行けないと思う。少なくとも俺はい
ままで存在する CD よりもカッコよくて面白いものをリリースしたくて『2.0』をつくったんで。「ちょっとラップが上
手いんです」くらいだと全然興味持たれない。本当にワクワク感を産み出したいんであれば、いまは AKLO よ
り面白くてカッコいいことが重要なんじゃないかな。
~END~
AKLO
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