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AutoCADのカスタマイズにより、系統図作図の完全な自動化を実現

ノーリツ 営業本部 営業開発部では、1996年ごろから、ろ過システムの系統図の作図にCADを導入していた。系統図の作成とは、さまざまな機器接続の組み合わせを適切に系統化していく作業である。当初は、見積書に対応するパーツ図面をレイヤーに貼り付けるという手法で、他の国産メーカーのCADを約5年間使っていた。1997年からは、AutoCAD LTを併行して使用することになった。 営業開発部 主事 工藤光由氏は、AutoCAD LTの導入に関して、「当時、取引先でもCADの導入が進んでおり、一般的なデータ交換フォーマットであるDWGを扱えることが必要でした。業界では、AutoCADとJw_cadが主流でしたが、パートナーの大塚商会からアドバイスもいただき、汎用性の高いAutoCAD LTを選択しました」 AutoCAD LTの導入後、ろ過システムの系統図に使用される機器をブロック化する作業を開始。現在、ろ過システムでは、ブロック化されたパーツが既に約500以上もある。DWG ファイルベースとなるブロック化の作業は、AutoCAD LT上でほとんどが行われた。ろ過システムを構成する個々の機器図面そのものは比較的単純なものだが、バリエーションが豊富である上に、次々に新製品が発表される。新製品が出るたびに、ブロック化の作業も追加されることになる。また、機器には自社製品だけでなく、他社の製品も含まれるために、作業はより複雑になってくる。より効率化するためにAutoCADへの移行を決断した。「当時は、ろ過システムに使用される機器およびブロック化されたパーツに関する知識がないと、系統図を作成することが困難でした。今回、AutoCADのカスタマイズによって、見積書に連動して系統図を自動作成することが可能になり、作図のための時間を短縮できるようになりました。同時に見積書さえできてしまえば、誰でも簡単に系統図を作成することができるようになっています」(工藤氏)

株式会社ノーリツ(以下、ノーリツ)営業本部 営業開発部は、共同浴場などのろ過機器、給湯

機器、コ・ジェネレーション機器などの業務用機器の営業・販売を行っている。業務用ろ過シ

ステムについては、顧客企業である大手ゼネコンや設計事務所に協力し、見積書からブロッ

ク化されたパーツのCADデータにアクセスし、系統図を作成する業務が必要不可欠になっ

ていた。従来は、Microsoft ExcelとAutoCAD LTをばらばらに使用して、見積書の機器

名から対応するブロック図をAutoCAD LTに挿入するという手法で系統図を作図。2006

年1月、パートナーの株式会社大塚商会から、いっそうの自動化のためには、AutoCAD

2006とAPIを使用したカスタマイズが有効であるという提案があり、AutoCAD 2006

への移行を決断。見積書から系統図の作図を行う時間を大幅に短縮している。

“業務用ろ過システム系統図・ 機器表自動作図システム”を構築 AutoCADのカスタマイズにより、 系統図作図に要する時間を従来の1/2以下に短縮

AutoCAD APIによるカスタマイズ事例

株式会社ノーリツ

会社概要 株式会社ノーリツは、1951年創業。ガス風呂釜、ボイラ、ガス給湯器の開発・製造を経て、1980年代からは新技術、システム化の段階に入り、現在では、ガス温水機器、石油温水機器、温水暖房システム、空調機器、ソーラーシステム、システムバス、システムキッチン、洗面化粧台、温水洗浄便座、業務用浴室設備機器などを幅広く開発・製造・販売。同社 営業本部 営業開発部では、ろ過機器、給湯機器、コ・ジェネレーション機器などの業務用機器の営業・販売を行っている。 http://www.noritz.co.jp/

システム概要 ● APIを利用したAutoCADのカスタマイズにより、Microsoft Excelをポータルとした見積書作成アプリケーションから、ろ過システムの系統図・機器表を自動的に作成

導入製品 ● AutoCAD 2006

利用したオートデスクAPI ● ActiveX オートメーション(COM)

パートナー ● 株式会社大塚商会

http://www.otsuka-shokai.co.jp/

システム導入のメリット ● 豊富な商品知識を持つ熟練者しかできなかった、見積書から系統図作成の作業を自動化することにより、誰でも容易に系統図の作成が可能に

● 平均的な12~13パーツ程度のろ過システムにおいて、系統図作成に要する時間を、従来の1時間程度から15~30分程度に、大幅に削減

● スピーディな顧客対応が可能となり、ケアレスミスも削減

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株式会社ノーリツ 営業本部 営業開発部 主事 工藤 光由 氏

ActiveX オートメーション(COM)によるカスタマイズが、 Microsoft ExcelとAutoCAD 2006の連携を実現

2005年11月、ノーリツ 営業本部 営業開発部とパートナーの大塚商会との打ち合わせが行われた。営業開発部では、AutoCAD LTを日常的に使用していても、AutoCADの存在やカスタマイズに関して、ほとんど知識を持っていなかった。大塚商会の提案によって、AutoCAD が持つActiveX オートメーション インタフェースを利用することで、AutoCAD 2006とMicrosoft Excelを同期させて、見積書と系統図の作成を連動させられることがわかった。 実際の開発期間は、2006年2月から3月にかけての約1ヵ月間。

AutoCAD LTによるブロック化されたパーツのデータの蓄積があったため、AutoCAD 2006への移行およびカスタマイズを短期間で完了することができた。 大塚商会のすすめでAutoCAD LTを選択し、DWGファイルでパーツ図面を作成し続けてきたことが、結果として正しかったことが証明された。2006年3月からテスト運用を開始して、現在、システム効果を測定中だが、期待した結果が得られている。既存の手作業による運用をそのまま自動化する方法をとったため、システム構成が比較的シンプルになり、今後のメンテナンスや拡張に有利になるはずだ。 見積書作成に連動して、 ろ過システムの系統図と機器表を自動的に作成

“業務用ろ過システム系統図・機器表自動作図システム”構成は、次のようになっている。 まず、“簡易見積書計算システム”(Excelアプリケーション)により、見積条件を入力する。“見積書画面”では数量を入力。“引当情報入力ダイアログ”には、50/60Hzの別を入力し、ガスの種類を特定する。

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以上の入力作業により、系統図用引当テーブル、機器表用引当テーブルを経由し、該当するAutoCADのパーツ(ブロック図面)を選択して、仕様にあわせて、系統図と機器表が自動的に作成される。 「自動作図システムを導入した大きなメリットとして挙げられるのは、第一に、作図時間の短縮です。見積書を作成すれば、自動的に系統図と機器表ができてしまうので、作図にかかる時間は、標準的な12~13パーツのシステムで、15分から30分といったところです。これは、従来のAutoCAD LTのシステムの約1/4~1/2になります。

また、誰でもできるとまではいえませんが、見積書を作成することができれば、自動的に図面が作図されるので、従来のように専門的な知識のある人だけでなく、より多くのスタッフが同じ仕事に携われるようになりました」(工藤氏) 営業開発部では、系統図作図にかかる時間を、1日の業務時間の約20%から5%にまで短縮することができたということだ。AutoCAD LTのシステムに比較すると、Excelと連動して作図までできることが、現場ではもっとも評価されている。 カスタマイズに関しては、システムを快適でより使いやすいものにするために、今後も現場の声を積極的に反映していく計画だ。

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AutoCAD APIによるカスタマイズ事例

株式会社ノーリツ

PTD024-0610(B)

オートデスク株式会社 〒 104-6024 東京都中央区晴海1-8-10 晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーX 24F 〒 532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪MTビル2号館3F TEL : 03-5992-7878(オートデスク インフォメーション センター)

www.autodesk.co.jp※Autodesk、AutoCAD、AutoCAD LT、DWF、Design Web Formatは、米国Autodesk, Inc.の米国およびその他の国における商標または登録商標です。その他記載の会社名、ブランド名および商品名は各社の商標または登録商標です。 ※記載事項は、予告なく変更することがございます。予めご了承ください。 ©2006 Autodesk, Inc. All rights reserved.

ActiveX オートメーション(COM)によるAutoCADのカスタマイズを提案し、 リーズナブルなコストで、短期間にシステムを構築

株式会社 大塚商会 サービス&サポート本部 CADソリューションセンター 受託開発課2係 アプリケーションエンジニア 石崎 昇 氏

「今回の“業務用ろ過システム系統図・機器表自動作図システム”では、従来のAutoCAD LTの資産であるブロック化されたデータをいかすことを考えました。そのメリットは、すでに土台ができているので、標準化しやすく、誰でも作図が可能なシステムを構築できることです。また、既存のパーツのデータをいかすことで、コストも抑えられ、開発期間を短縮することが可能になりました。 A u t o C A D 2 0 0 6のカスタマイズには、A u t o L I S P、ObjectARXなどの他のAPIを選択することもできました。しか

し、私自身がActiveX オートメーションの豊富な経験があること、難度を考慮すると今回のシステムに最適のAPIであると判断したことにより、ActiveX オートメーションを選びました」と、大塚商会 サービス&サポート本部 CADソリューションセンター受託開発課2係 アプリケーションエンジニア 石崎昇氏は語っている。 現在の自動作図システムは、Excel VBAの中にプログラム本体を置いて、見積書の作成から自動的に系統図を生成するものだが、当初は、系統図から逆に見積書を作成する機能の搭載も計画していた。今後は、この逆のフローもシステム化していくということだ。 「現在、Excelのシート上で管理している部材データをデータベース化すれば、ろ過システム以外の業務システムでも利用可能になります。自動作図システムと、統合見積書システムなどの全社システムとの連携も、調査し、提案していきたいと考えています」(石崎氏)

自動作図システムの本格稼働により、 AutoCADによる図面作成の重要度をアピール

ろ過システムの系統図作成は、大阪地区と東京地区のみで行われていた。東京地区での“業務用ろ過システム系統図・機器表自動作図システム”のテスト運用を経て、2006年秋、ろ過システムの新製品発表に合わせて社内向けにシステムの存在を広報していく予定だ。また、全社の統合見積書システムに、ろ過システムの見積書を組み入れ、全社で使用できるように提案の準備を進めている。 「系統図・機器表などの作成は、顧客企業のゼネコンや設計事務所に対して、重要なサービスになっています。しかし、社内では、図面作成への認識度は高くなく、評価されにくい仕事であるといえます。 顧客対応という面からも、系統図作成にかかる時間を短縮したことにより、スピーディになったという評価をいただくと同時に、自動化により、機器の組み合わせのミスなども削減されています。

当社標準CADであるAutoCADのカスタマイズによって、図面作成を自動化したということの重要性を、社内に強くアピールしていきたいですね」(工藤氏) 営業開発部では、大阪地区のろ過システムについても、自動作図システムの導入を提案していく予定だ。さらに、ろ過システム以外の同社の業務用システムについても、システム化に際して機器のブロック化を行う必要があるものの、同様の自動作図システムを構築することが可能になる。“業務用ろ過システム系統図・機器表自動作図システム”が広く社内に認知されることにより、他の業務システムへの拡張も視野に入ってくるだろう。


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