歴史的建築物及び社会インフラの健全度診断技術に関する研究
建築材料研究室 1310920093 豊田晋太郎
はじめに
•近年、経過年数による建築物の劣化や損傷の補修や維持管理が課題となっており、耐震診断技術の高度化、簡易化の必要性がある。•本研究は、建築物の補修や維持管理のために、建築物の耐震診断などの評価技術における、高度化や簡易化を図った耐震診断技術を構築することを目的としている。
MEMS技術
MEMS技術とは、マイクロ・エレクトロ・メカニカルシステムのことで、シリコン基板上に電気機械構造を三次元的に作りこむ技術を活用して製造した部品をいう。また大量生産できるという利点がある。
軍艦島
測定建物 日給社宅16号棟
建物概要 9階建てRC造(1918年建設)
建物用途 鉱員社宅(66戸。1階に外勤詰所)
使用機材 MEMS無線加速度計(4台)
断面図
計測点1(N1センサ)加速度記録
計測点2(N2センサ)加速度記録
計測波形
計測点3(N3センサ)加速度記録
計測点4(N4センサ)加速度記録
フーリエスペクトル
フーリエスペクトル(X方向) フーリエスペクトル(Y方向)
計測データ(振動モード図)
X方向(長辺方向) 1次モード T1=0.205sec Y方向(短辺方向) 2次モード T2=0.123sec
MEMSセンサーで計測した加速度記録をフーリエスペクトルに換算し、それをさらに振動モード図で表すことによって、建築物の揺れ方が分かる。これをモデル化して地震時にどこが揺れやすく補強すべきかを検討し、これからの維持保全に役立てる。
考察(固有周期)固有周期T(sec)
今回のデータ過去の文献のデータ
X方向(長辺方向) 0.205 0.180
Y方向(短辺方向) 0.188 0.190
過去の文献のデータでは固有周期がX方向に0.18、Y方向に0.19であるのに対し、今回の結果はX方向に0.205、Y方向に0.188であった。Y方向はほぼ同じ数値が出たが、X方向は0.025の差が出た。この差が、過去の計測から今回の計測までの軍艦島の劣化度を表していると考える。
また今回の計測では振動モード図で表し、より揺れやすい場所を明らかにした。その結果から斜面側のN3、N4地点が揺れやすく、海側のN1、N2地点
は比較的揺れなかった。これは日給社宅16号棟の特徴とも言える開口のな
い一連になった海側の壁面が頑丈で、その反動で斜面側が揺れやすくなったと推測される。
考察(振動モード図)
街灯
メディアセンター北(街灯A) E館北(街灯B)
実験概要
2850
1920
4770
495
150
100
単位:mm
N1
N2
N3
1920
1000
MEMSセンサー設置個所
微動加速度記録
-1.5
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
0 50 100 150 200 250 300
加速度(gal)
時間(sec)
N3-X
-1.5
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
0 50 100 150 200 250 300
加速度(gal)
時間(sec)
N3-Z
-0.3
-0.2
-0.1
0
0.1
0.2
0.3
0 50 100 150 200 250 300
加速度(gal)
時間(sec)
N3-X
-0.3
-0.2
-0.1
0
0.1
0.2
0.3
0 50 100 150 200 250 300
加速度(gal)
時間(sec)
N3-Z
街灯A 街灯B
平均フーリエスペクトル
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
0.09
0.1
0 10 20 30 40
フーリエスペクトル(gal・sec)
振動数(Hz)
N3-X
N2-X
N1-X
f1=5.42Hz
f2=21.7Hz
f3=28.3Hz
0
0.01
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
0.07
0.08
0.09
0.1
0 10 20 30 40
フーリエスペクトル(gal・sec)
振動数(Hz)
N3-Z
N2-Z
N1-Z
f1=5.66Hz
f2=20.8Hz
f3=29.0Hz
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
0 10 20 30 40
フーリエスペクトル(gal・sec)
振動数(Hz)
N3-X
N2-X
N1-X
f1=5.89Hz
f2=9.77Hz
f3=14.6Hz
f4=17.2Hz
f5=24.0Hz
0
0.05
0.1
0.15
0.2
0.25
0.3
0 10 20 30 40
フーリエスペクトル(gal・sec)
振動数(Hz)
N3-Z
N2-Z
N1-Z
f1=6.01Hz
f2=10.1Hzf4=20.1Hz
f3=17.5Hz
街灯A 街灯B
伝達関数
0
5
10
15
20
25
30
35
40
0 10 20 30 40
応答倍率
振動数(Hz)
N3-X
N2-X
f1=5.47Hz
f2=23.2Hz
f3=29.7Hz
0
10
20
30
40
50
60
0 10 20 30 40
応答倍率
振動数(Hz)
N3-Z
N2-Z
f1=5.71Hz
f2=21.2Hz
f3=29.6Hz
0
10
20
30
40
50
60
0 10 20 30 40
応答倍率
振動数(Hz)
N3-X
N2-X
f1=6.01Hz
f2=9.77Hz
f3=14.6Hz
f4=19.5Hz
f5=24.1Hz
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
0 10 20 30 40 50
応答倍率
振動数(Hz)
N3-Z
N2-Z
f1=6.01Hz
f2=10.1Hzf3=20.1Hz
f4=22.4Hz
f5=28.7Hz
f6=30.2Hz
街灯A 街灯B
考察
f1(Hz)
X方向 Z方向
街灯A 5.47 5.71
街灯B 6.01 6.01
仮に二つの街灯が同じ質量で,地盤条件も同一であると仮定すると,固有振動数の差が構造物の剛性の差と考えられる。これらの街灯はもともと同じ剛性を有していたと仮定すれば,固有振動数のより小さい街灯Aの方が剛性が減少していることになる。
固有振動数
街灯Aのサビ
まとめ
•軍艦島のような足場の悪いところでも、MEMSセンサーを使えば簡単にかつ多地点でデータを取ることができると分かった。
•身近にある街灯を使ってMEMSセンサーの設置方法や計測方法を学んだ。
•最近、劣化した街灯が倒れて人に当たる事故が起こり、劣化診断の見直しが必要となっているので、今後MEMSセンサーが活躍すると考える。