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  • � はじめにはじめにはじめにはじめにナンジャモンジャゴケ類は,ナンジャモンジャゴケ

    Takakia lepidozioides とヒマラヤナンジャモンジャゴケT. ceratophyllaの2種のみからなる,議論の多いコケ植物である.単純な棒状の葉が並ぶこと,染色体数がn=4または5とコケでも最小であること,造卵器・造精器が包葉や側糸などの保護器官に覆われていないこと,など,原始的と思われる特徴を備えており,コケ植物や陸上植物の起源を探る糸口と期待され,多くの研究が行われている.

    1958年にナンジャモンジャゴケが発表された当時は,苔類の新種とされ,本種をもとに新属,新科,新目が提唱された.1990年に胞子体が発見される以前は苔類として扱うことが一般的であったが,発見された胞子体は明らかに蘚類的特徴を備えており,特に縦に裂開するさくなどは,蘚類クロゴケ類との類縁を示唆させるものであった.そこで現在では,蘚類の中でもクロゴケ類に含める意見,クロゴケ類などと並ぶ蘚類の中の独自の亜綱などとする意見,蘚類と苔類を結びつける独立した綱または門とする意見などがある.

    葉緑体遺伝子を分子系統解析に用いることは,植物の系統解析に有効な方法であるが,葉緑体遺伝子には転写後のRNA編集が起こることあることが複数の植物から報告されている.RNA編集が起こっている遺伝子では,編集後のアミノ酸配列をmRNAの解析により推定し,系統解析に用いる必要がある.

    研究代表者 経済学部生物学教室 有川智己

    ナンジャモンジャゴケ.

    ナンジャモンジャゴケ類の分布.

    「植物の多様性と系統」裳華房バイオディバーシティ・シリーズより

    蘚類・苔類・ツノゴケ類と維管束植物(シダ植物と種子植物)の関係は? また,ナンジャモンジャゴケ類はこれらとどんな関係に?

    維管束植物の起源を探る:葉緑体遺伝子によるナンジャモンジャゴケ類の系統解析

  • � これまでのこれまでのこれまでのこれまでの結果結果結果結果とととと考察考察考察考察

    本研究では,これまでにナンジャモンジャゴケの葉緑体ゲノムの部分塩基配列と17遺伝子分の葉緑体遺伝子のcDNAの塩基配列を決定し,比較した.その結果,ナンジャモンジャゴケではこれまでに報告された中でも最も高頻度の葉緑体RNA編集が行われていることを見いだした.しかし,ナンジャモンジャゴケで見つかったRNA編集は全てC→U変換であり、U→C変換は存在しなかった.さらに,atpB, rbcL, psbB, psbD, psbN, psbH, petB, petD, psaA, psaB, rpoC2 の11遺伝子に対応するcDNAの塩基配列から推定されるアミノ酸2927残基分の配列を用いて,既に葉緑体ゲノムが解明されている植物のデータと共に最尤法による系統解析を行った.その結果,ナンジャモンジャゴケは蘚類ヒメツリガネゴケと苔類ゼニゴケからなるクレードと姉妹群となり,その外側にホウライツノゴケが来て,コケ植物が単系統となり,維管束植物と姉妹群となる,という樹形が得られた.まだ情報量が十分であるとは思われないが,ナンジャモンジャゴケ類が蘚類と苔類を結びつける独立した系統群であるという説が支持された.

    今後の展開としては,ミズゴケなど比較対象とすべきサンプルを増やし,用いる遺伝子も増やすことが必要である.

    共同研究者•国立科学博物館植物研究部

    •樋口 正信•名古屋大学遺伝子実験施設

    •杉田 護•宮田 有希•丸山 かおり•杉浦 千佳

    本研究は,文部科学省科本研究は,文部科学省科

    学研究費補助金(若手研学研究費補助金(若手研究(究(B)B),,課題番号課題番号1777007317770073,「維管束植物,「維管束植物の起源を探る:葉緑体遺伝の起源を探る:葉緑体遺伝

    子によるナンジャモンジャ子によるナンジャモンジャ

    ゴケ類の系統解析」)を受ゴケ類の系統解析」)を受

    けて行われた.けて行われた.

    決定打となる系統樹はまだ出来ていない.有意な差ではないが比較的尤度の高い系統樹は,蘚類と苔類が姉妹群となりその系統がナンジャモンジャゴケになる,というものが多い.

    関連論文関連論文関連論文関連論文M. Sugita, C. Sugiura, T. Arikawa & M. Higuchi. 2004. Molecular evidence of existence

    of rpoA gene on the basal moss chloroplast genomes: rpoA is a useful molecular maker for phylogenetic analysis of mosses. Hikobia 14: 171-175.

    M. Sugita, Y. Miyata, K. Maruyama, C. Sugiura, T. Arikawa & M. Higuchi. 2006. Extensive RNA editing in transcripts from the psbB operon and rpoA gene of plastids from the enigmatic moss Takakia lepidozioides. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 70 (9): 2268-2274.

    関連学会発表関連学会発表関連学会発表関連学会発表有川智己・樋口正信.葉緑体遺伝子を用いたナンジャモンジャゴケの分子系統解析.日本蘚苔類学

    会第28回和歌山大会,和歌山県西牟婁郡白浜町・ホテル古賀の井,1999年8月.有川智己・樋口正信.ナンジャモンジャゴケ属のrbcL遺伝子の塩基配列?種間変異・種内変異・RNA

    editing.日本植物学会第68回大会,神奈川県藤沢市・日本大学湘南キャンパス,2004年9月(ポスター発表).

    T. Arikawa & M. Higuchi. Highly frequent RNA editing in rbcL gene of Takakiophyta. XVII International Botanical Congress (第17回国際植物科学会議),オーストリア共和国ウイーン・Austria Center Vienna, 2005年7月(ポスター発表).

    宮田有希・丸山かおり・杉浦千佳・有川智己・樋口正信・杉田護.ナンジャモンジャゴケ葉緑体における高頻度RNA編集.第28回日本分子生物学会年会,福岡県福岡市,ヤフードームほか,2005年12月(ポスター発表,共同発表者).

    有川智己・樋口正信・宮田有希・丸山かおり・杉浦千佳・杉田護.複数の葉緑体遺伝子によるナンジャモンジャゴケ類の系統解析.日本植物分類学会第5回大会,沖縄県中頭郡西原町・琉球大学大学会館,2006年3月(ポスター発表)日日日日本本本本植植植植物物物物分分分分類類類類学学学学会会会会大大大大会会会会発発発発表表表表賞賞賞賞 受受受受賞賞賞賞


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