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    時間生物学 Vo l . 20 , No . 2( 2 0 1 4 )

    【概要】 日本における初めての時間生物学サマースクールCBS2014を7月21日から25日の5日間、北海道大学医学研究科において開催しました。参加者は世界10 ヶ国から38名、海外6名と国内講師6名、実行委員と実習指導者などスタッフを加え、総勢61名です。海外からの著明な研究者を含む講師による10コマの講義と2コマの特別講演、8種類の中から3コースを選択する3日間の実習を行いました。また、参加者間の交流を促進するため、全員参加の自己紹介を兼ねたData Blitz、Welcome Reception、Party、Summary Presentationに加え、Mixer、Small Group Discussion なども行いました。ほとんどの参加者が、引き続く札幌シンポジウムにも参加、ポスター発表も行い、講義に加えて先端的な研究に触れたり、参加者以外の研究者とも交流することができて、大好評を得ました。

    【開催の経緯】 時間生物学サマースクールCBS(Chronobiology Summer School)は、過去2回、ヨーロッパとアメリカで開かれたものに引き続く3回目の企画です。CBS2012は、EBRS(European Biological Rhythm Society)のメンバーが中心となり、2012年9月16日~ 22日にBerlinのInstitute for Theoretical Biologyで、CBS2013は、SRBR(The Society for Research on Biological Rhythms)が、2014年7月21日 ~ 26日 に、NashvilleのVanderbilt Universityで開催されました。そこで、JSC (Japanese Society for Chronobiology)でも、是非、CBS を企画したいと、理事長の近藤孝男先生から提案があり、理事の粂・吉村・岩崎・上田が実行委員として担当することになりました。本年が札幌シンポジウムの開催年で、世界各国から多数の時間生物学関係者が札幌に集まることから、その時期に合わせて札幌で行うこととして、アドバイザーとして近藤孝男先生、本

    間さと先生、本間研一先生、海老原史樹文先生、さらに、現地実行委員として、榎木亮介、山仲勇二郎、小野大輔先生、吉川朋子先生、平田快洋先生の協力を得て、計画を作成しました。

    【参加者】 国籍では日本21名、メキシコ4名、韓国3名、中国2名、ドイツ、イタリア、スイス、ベトナム、スペイン、フィリピン、アイルランド、タイから各1名と全12 ヶ国の38名が参加しました。居住地では、日本、メキシコ、韓国、中国、アメリカ、ドイツ、スイス、スペイン、フィリピン、イギリスの10 ヶ国からとなり、国際色豊かなサマースクールとなりました。

    【実施内容】7月21日:初日は、午後1時に受付けを開始、2時からの全体説明の後、全員の自己紹介と研究紹介を兼ねたData Blitz を、スライド1~2枚、持ち時間1分で行いました。また、実習の一環として、サマースクール期間中に自己記録してもらうため、参加者全員にアクチグラフと睡眠計を配布しました。その後、7~8人ずつの5つの小グループに分かれたグループ討論で、各自がより詳しい自己紹介と研究の紹介を行い、初対面のメンバー同士が知り合う機会としました。再度、全員が集合して、Serge Daan 博士による時間生物学の歴についての特別講演の後、Welcome Reception を開催しました。7月22日~ 24日:2日目から4日目は、午前中に2~3コマの講義、午後に1コマの講義の後、3時間程度の実習を行いました。講義は、2日目が近藤孝男、本間研一、本間さと、3日目が郡 宏、吉村 崇、粂 和彦、4日目は外国人講師の日としErik Herzog、Hanspeter Herzel、John Hogenesch、Amita Sehgal の述べ10名が、この順に担当しました。

    粂 和彦CBS2014実行委員長

    時間生物学会サマースクール2014イン札幌(CBS2014 in Sapporo)の開催報告

    開催報告

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     講義内容は、時間生物学の重要項目の分担をあらかじめ決めて、基礎から始め、なるべく最新の情報を入れるように工夫しました。また、学習効果が進むように印刷したハンドアウトも配布しました。しかし、日本人参加者には、全てが英語の講義であった点は、やや厳しかったと思われます。特に、自分の専門外分野や、数学や理論など不慣れな分野については、一部の参加者には難解だったでしょう。 実習は、視交叉上核や臓器の切片を作成して、蛍光、発光観察をする4種類の実験コースに加え、個体レベルの実験の見学、隔離実験ユニットの見学・体験、ショウジョウバエの遺伝学入門・体験、パソコン・プログラミングの基礎の習得の、全部で8種類のコースを実施しました。事前の希望で、視交叉上核の切片作成・観察は人気が集中したため、予定よりグループ数を増やし、全参加者が希望通りのコースを受けることができました。実習部分は、ほぼ全て、本間研の現地実行委員が企画・実施をしたため、準備が大変だったと思います。 2日目と3日目の実習後は、実習室近くに軽食とビールなどを用意して、気楽なミキサータイムを開きました。実習ごとに終了時間が異なるため、ここで参加者同士が、また合流して、その後、すすきのに繰り出して、札幌の夜を楽しむ参加者も多かったようです。4日目の実習コース終了後は、本年度のアショフ・ホンマ生物リズム賞を受賞したCarl Johnson による特別講演でした。シアノバクテリアではなく、意外な動物の話を、一同、興味深く聞いた後、引き続きPartyを開催しました。プログラムの大半を終えた夜でしたから、参加者同士も親しくなり、外国人講師も多数加わって、楽しい夜を過ごしました。7月25日:最終日は、初日とは異なる組み合わせの小グループでサマースクールの内容へのコメントと感想を話し合いました。引き続く全体会では、まず5日間記録したアクチグラフと睡眠計の数名分のデータの解析結果を供覧しました。次に、小グループごとに各講義・実習へのコメント・感想を発表して、修了証を受け取りました。実習などで優秀だった参加者にサプライズプレゼントが渡され、最後の集合写真撮影でサマースクールの全プログラムが終了しました。

    【札幌シンポジウム】 ほとんどのサマースクール参加者は、解散後、午後からの札幌シンポジウムとアショフ・本間賞の授

    賞式・記念講演に参加しました。札幌シンポジウムでは、2日目、3日目のランチョンタイムにポスター発表が設定され、サマースクール参加者の多くが、自分のデータを発表しました。多数の札幌シンポジウムの参加者からのフィードバックを受けられたことは、大きなメリットとなったと思います。

    【特徴】 CBS2014は、これまでのサマースクールと比較して、2つの大きな特徴がありました。 一点目は、本格的な実習コースの設定です。多くの参加者が、視交叉上核の実物を初めて見ることができたり、隔離実験施設に入ることができたりと、貴重な体験をしました。参加者によるアンケート結果でも、実習コースの設定が、最も高い評価を得ました。 二点目は、サマースクールが国際シンポジウムと連続して行われたことです。6泊7日という日程は、計画時には、やや長く感じられましたが、基礎的な講義だけでなく、最先端の研究の話を、多数のシンポジウムで聞けたことは、大きな価値があったと考えられます。特に外国からの参加者にとっては、長時間かけて日本に来て、自分自身のポスター発表もできた点は高く評価されると思います。

    【反省点】 日本人の若手の参加者には、完全に英語のみの講義は、一部難しすぎたと思われます。今回は、参加者の幅が大学院生からPIまでと広く、適当なレベルを設定することが難しかったのですが、少なくとも何らかの形で補習的な時間を作れると良かったと思います。そのためには、プログラムが詰め込み過ぎで、余裕が少なかったかもしれません。 また、私の個人的事情ですが、開催直前の7月20日に実父が他界して、葬儀の喪主を務める必要があったため、初日は参加できませんでした。実行委員長として多くの準備をしてきましたので、とても残念でしたし、プログラムの一部について準備不足の面があり、ご迷惑をおかけした点を、お詫びします。

    【謝辞】 最後に、資金面で援助を頂いた日本時間生物学会、寄付を頂いたり、機器を貸し出して頂いた多くの企業のみなさま、実習指導をお願いした名市大の冨田淳博士に感謝します。また、実質的な準備をし

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    て下さった北大の本間研究室の全てのみなさま、特に、現地実行委員の先生方と、織田善晃博士、本間あや医師、そして、誰よりも、影の実行委員長とし

    て全面的にリードして頂いた本間さと先生に、心から感謝いたします。


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