Download - 子宮頸癌細胞診と精度管理 - さくらのレンタルサーバjscck.sakura.ne.jp/h24/to1.pdf【特別講演】 平成24年9月8日(土) 日本臨床細胞学会関東連合会
【特別講演】
平成24年9月8日(土) 日本臨床細胞学会関東連合会 ー先端医療を支える細胞診断学ー
子宮頸癌細胞診と精度管理
大阪がん循環器病予防センター 婦人科検診部1) 同 検査科2)
神戸常盤大学 保健科学部 医療検査学科3)
松下記念病院産婦人科4) 赤穂市民病院産婦人科5)
兵庫県予防医学協会検診センター6)
植田政嗣1)、田路英作2)、布引 治3)、明石京子4)、
明瀬光里1)、佐藤直美1)、出馬晋二1)、鳥居貴代1)、
東田太郎5)、田中一朗6)、岡本吉明1)、野田 定1)
日本における子宮頸癌発症数と死亡数
1年間に約15,000人の女性が 子宮頸癌を発症している1
1年間に約3,500人の女性が 子宮頸癌で死亡している2
20~30歳代女性で、子宮頸癌は 罹患率・死亡率ともに増加している1,2
1. 国立癌センター癌対策情報センター http://ganjoho.ncc.go.jp/data/public/statistics/backnumber/1isaao000000068m-att/fig04.pdf2. 2. 国立癌センター癌対策情報センター http://ganjoho.ncc.go.jp/data/public/statistics/backnumber/1isaao000000068m-att/date02.pdf
日本における年代別子宮頸癌罹患率
0
10
20
30
40
50
60
70
0-4 5-9 10-14 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-84 85以上
1985 2005
25~44歳 罹患率(対人口10万人)
診断年齢(歳)
国立癌センター癌対策情報センター 地域癌登録全国推計による癌罹患データ(1990年~2005年)
羅患率(対人口10万人)
1990 1993 1996 1999 2002 2005 0
10
20
30
40
日本では20~30歳代の若い女性の 子宮頸がんが急増している
子宮体癌
卵巣癌
乳癌*
子宮頸癌*
* 上皮内癌を含む
国立がんセンターがん対策情報センター 地域癌登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2005年)より作図 国立がんセンターがん対策情報センター 人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2007年)より作図
欧米先進国に比べて 日本は増加の一途!
HPV = Human Papillomavirus ヒトパピローマウイルス = ヒト乳頭腫ウイルス
150以上の“型(タイプ)”
皮膚に疣贅を引き起す皮膚型と、性器周辺に感染 する粘膜型(約40種類)に大別
発癌性のあるハイリスク型と、良性腫瘍を引き起こす ローリスク型
ハイリスク型 : 16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59, 68, 69, 73, 82型など約15種類
ローリスク型 : 6, 11型など
子宮頸癌の約70%は、HPV16型または18型が原因
尖圭コンジローマの90%以上は、HPV6型または 11型が原因
HPV感染から子宮頸癌への過程
CIN2/CIN3/子宮頸癌 HPV感染/CIN1 正常な子宮頸部
エピソーム
新たな感染性ウイルス粒子
核周囲の空胞化 (コイロサイトーシス)
組み込まれた ウイルスDNA
感染性ウイルス粒子
CIN = cervical intraepithelial neoplasia
笹川 寿之:臨床と微生物 2009; 36(1):55-62.より改変
HPV感染から子宮頸癌へと進行する自然史
前癌期:CIN2/CIN3
60人 (感染者の1~6%)
自然治癒
90% 自然治癒
5% 不顕性持続感染
数%
感染期:CIN1
6,000人 (6割以上の女性)
発癌期:浸潤癌
6人 (感染者の0.1%)
女性 10,000人
数年 数年~10数年 数週間~2年
CIN = cervical intraepithelial neoplasia
中学~高校生の初交経験率(2005年)
(%)
50
40
30
20
10
0
男性 女性
初交経験率
高3 高2 高1 中3 中2
35.7
44.3
23.5 26.4
12.3 14.6
4.3
9.8
1.4
5.1
0.4 0.9
中1
都性研 2008年児童・生徒の性意識性行動調査一部改変(東京都幼小中高心性教育研究会(都性研)が、1981年以来、3年毎に都内各校種、各学年の 男女500人以上の児童・生徒を対象に実施してきた性意識・性行動の実態調査
高校生女子の初交経験率の増加→HPV感染の蔓延
子宮頸癌の原因となるハイリスクHPVは 皮膚、粘膜、口腔内にも検出される
コンドームでHPV感染を防ぎきることはできない!
健常人の口腔内には年齢や男女別なくハイリスクHPVが
ある程度存在する(口腔粘膜はHPVのリザーバー)。
口腔内ケアが悪い人や喫煙者ほどハイリスクHPVが高頻
度に検出される(歯みがきと禁煙が重要)。
咽頭がんはHPV感染やオーラルセックスと関連がある。
Case–Control Study of Human Papillomavirus and Oropharyngeal Cancer
New Engl J Med. Volume 356:1944-1956 May 10, 2007 Number 19
平成19 年6 月に閣議決定
がん検診の受診率を5年以内に50%とするすべての市町村において精度管理・事業評価を実施する
市町村事業におけるがん検診の事業評価
「科学的根拠に基づき、有効性の確認されたが
ん検診」をより「多くの人に」「正しく」実施する。
・ 細胞診の精度管理
・ プロセス指標(受診率、要精検率、精検受診率、がん発見率
など)の把握
厚生労働省「がん検診に関する検討会」では、子宮頸がん検診に関しても、検診実施機関ごとに行わなければならない事業評価のためのチェックリストや仕様書に明記すべき必要最低限の精度管理項目が示されている。
世界各国の子宮頸癌検診受診率 (OECD加盟国における20~69歳の女性、2006年)
83.5 79.4 78.6
75.6 72.8 72.4 71.0 70.6 70.5 69.6 69.4
65.3
0
20
40
60
80
100
米国
1
英国
1
スウェーデン
1
ノルウェー
1
カナダ
2
フランス
2
アイスランド
1 ニュージーランド
1
フィンランド
1
オランダ
1
デンマーク
2
ベルギー
1
(%)
1 Programme data. 2 Survey data. Health Care Quality Indicators Project, OECD 2009. OECD Health Data 2009 (cervical screening)
62.2 60.6
41.7 38.5
24.5
アイルランド
1
オーストラリア
1
ルクセンブルク
1
イタリア
1
日本
2
子宮頸癌検診受診率
欧米先進国に比べて著しく低い日本の頸癌検診受診率
日本における年代別子宮頸癌検診受診率
国民生活基礎調査 平成19年 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa07/toukei.html
5.6
21.2
30.2 32.0
24.4
16.3
7.0
1.5 0
10
20
30
40
20-24 25-34 35-44 45-54 55-64 65-74 75-84 85以上
(%)
子宮頸癌検診受診率
(歳)
20歳代前半の受診率が極めて低い
子宮頸がん検診受診状況の推移(大阪府精度管理基礎調査)
受診率は増加傾向にあるものの20%あまり 車検診は年々減少し個別検診が増加
年齢階級別受診者数
35~39歳にピーク、45歳以上は横ばい 平成21年度は20~44歳の受診者数が著しく増加
(子宮頸がん検診クーポン券の効果!)
人
子宮頸がん検診実績(平成21年度)
受診者数 (率)
要精検者数 (率)
精検受診者数 (率)
発見子宮頸がん (率)
上皮内がん (割合)
微小浸潤がん (割合)
陽性反応適中度 (率)
子宮頸がん疑い
総数
281,776
4,321
3,415
378
224
35
21
%
(22.2)
(1.5)
(79.1)
(0.13)
(59.3)
(9.3)
(8.8)
75.0
0.010.020.030.040.050.060.070.080.090.0
100.0
堺市池田市
豊中市
門真市
熊取町
東大阪市
島本町
松原市
貝塚市
柏原市
大阪市
大東市
交野市
田尻町
泉大津市
羽曳野市
吹田市
箕面市
茨木市
寝屋川市
泉佐野市
岬町太子町
河南町
阪南市
和泉市
八尾市
河内長野市
岸和田市
高槻市
富田林市
四條畷市
豊能町
能勢町
摂津市
大阪狭山市
枚方市
守口市
高石市
藤井寺市
千早赤阪村
忠岡町
泉南市
大阪府総計
図4-2 市町村別に見た子宮頸がん検診精検受診率(平成19-21年度平均 )
1.5
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
3.5
4.0
藤井寺市
豊能町
守口市
河内長野市
箕面市
交野市
泉南市
泉大津市
忠岡町
吹田市
島本町
高石市
松原市
富田林市
池田市
貝塚市
岸和田市
豊中市
寝屋川市
枚方市
高槻市
羽曳野市
東大阪市
八尾市
柏原市
堺市
四條畷市
和泉市
茨木市
阪南市
泉佐野市
能勢町
摂津市
千早赤阪村
熊取町
大阪市
太子町
岬町
河南町
田尻町
門真市
大東市
大阪狭山市
大阪府総計
図4-1 市町村別に見た子宮頸がん検診要精検率(平成19-21年度平均 )市町村別に見た子宮頸がん検診要精検率(平成19-21年度平均)
許容値1.4%以下
市町村別に見た子宮頸がん検診精検受診率(平成19-21年度平均)
許容値70%以上、目標値90%以上
7.9
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
30.0
35.0
豊能町
千早赤阪村
岬町河南町
泉佐野市
堺市田尻町
貝塚市
大阪狭山市
摂津市
守口市
大阪市
池田市
門真市
豊中市
阪南市
富田林市
寝屋川市
島本町
熊取町
東大阪市
大東市
羽曳野市
茨木市
枚方市
高槻市
箕面市
吹田市
交野市
岸和田市
八尾市
和泉市
能勢町
柏原市
松原市
河内長野市
泉南市
高石市
太子町
藤井寺市
四條畷市
泉大津市
忠岡町
大阪府総計
図4-4 市町村別に見た子宮頸がん検診陽性反応適中度(平成19-21年度平均 )
0.12
0.000.050.100.150.200.250.300.350.400.45
豊能町
千早赤阪村
岬町守口市
貝塚市
河南町
堺市藤井寺市
泉佐野市
池田市
富田林市
島本町
箕面市
豊中市
寝屋川市
田尻町
交野市
摂津市
阪南市
枚方市
吹田市
東大阪市
羽曳野市
大阪市
河内長野市
高槻市
茨木市
泉南市
門真市
岸和田市
熊取町
松原市
八尾市
高石市
大阪狭山市
和泉市
柏原市
大東市
能勢町
泉大津市
忠岡町
四條畷市
太子町
大阪府総計
図4-3 市町村別に見た子宮がん検診子宮頸がん発見率(平成19-21年度平均)市町村別に見た子宮頸がん発見率(平成19-21年度平均)
許容値0.05%以上
市町村別に見た子宮頸がん検診陽性反応適中度(平成19-21年度平均)
許容値4.0%以上
なぜ欧米で受診率が高いのか?
学校教育や家庭(特に母親)での啓発
かかりつけ産婦人科医(検診は常識)
国費負担による無料検診(英国)
医療保険会社が検診を奨励(米国)
各個人への徹底した受診勧奨
受診率向上に対してエビデンス(科学的根拠)が 認められている方法論
大腸がん 乳がん 子宮頸がん
受診勧奨システム(個別の受診勧奨) ○ ○ ○
スモール・メディア(ビデオ、リーフレット) ○ ○ ○
1対1教育 ○ ○
マス・メディア(単独)
インセンティブ(単独)
集団教育 〇
自己負担の軽減 〇
障壁の除去(日程調整、職場検診の提供) 〇 〇
出典:CDC(2010) The Community Guide
対象者を把握した上で、受診勧奨の案内文をメール・郵送・電話等で行う。 その際、リーフレットを同封するなど、スモールメディアを同時活用するとより効果的。
仁科 亜季子さんと娘さん
子宮頸がん検診・乳がん検診 子宮頸がんワクチン
子宮頸癌発生率と検診受診率1
浸潤子宮頸癌の年齢調整発生率と 検診の受診率(英国、1980~1995年)
1980 1985 1987 1990 1995 0
10
12
14
16
18
1. Quinn M, Babb P, Jones J, Allen E. BMJ. 1999;318:904–908. Adapted with permission from the BMJ Publishing Group.
National Call/Recall System*の導入
100
80
60
40
20
0
(%)
検診受診率
10万人あたりの発生率
発生率 検診受診率
* 家庭医の登録リストから受診対象者名簿を作成し、それをもとに個人へ受診勧奨を行う仕組み
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
25+35(クーポンのみ)
26+36(対照群)
30+40(クーポン+再勧奨)
31+41(対照群)
池田市での子宮頚がん検診への再受診勧奨効果に関する研究 (平成21年度 がん臨床研究事業 渋谷班)
無料クーポン+検診手帳の効果
(+20%)
再受診勧奨 の効果 (+10%)
↓
無料クーポン+ 検診手帳配布
↓
クーポン未使用者への 個別に受診勧奨
10月の時点での無料クーポン未使用者1375名に、リーフレット(上質紙、カラー印刷)を郵送。 諸費用は約176,000円。
Organized screening(組織型検診)のすすめ
対象者を中央登録システムで管理し、事前に定められたガイドラインに従って、組織的に管理して行われる。 検診対象者名簿の確定 Call /Recall system
個別受診勧奨
未受診者の把握と受診勧奨
このような、組織・体制・ルールを作ること
各 市 町 村 大 阪 府
組織型検診体制の構築
系統的受診勧奨の体制
がん医療との連携
組織型検診台帳データベース 精度管理基礎調査・分析
市町村
住民基本台帳
システム
医療機関
(がん拠点病院)
全市町村情報を
比較分析・評価
大阪府
精度管理
患者紹介
がん検診の
評価に活用
大阪府
住基ネット
大阪府
がん登録システム
がん対策(予防・医療)の効果を統計的に算出
(生存率・早期発見率)
罹患報告
治療報告
生存・転居
データ照合
インポート
組織型検診機関
集計報告
指導助言
エクス
ポート イ
ン
ポート
統一形式で
エクスポート
検診結果
結果報告
市町村
組織型検診
台帳システム
市町村
集計
① 有効性の確立したがん検診を 行うこと ② 対象者を明確化すること ③ 高い受診率を確保すること ⇒受診勧奨・未受診勧奨
既存システムを活用する。
日 母 分 類
ベセスダシステム2001準拠
子宮頸部細胞診報告様式
通称 ベセスダシステム
医会分類
要精検:コルポ, 生検
Squamous cell
carcinoma
V 扁平上皮癌 (微小浸潤癌を含む)
SCC 6)扁平上皮癌
要精検:コルポ, 生検
High grade squamous
intraepithelial lesion
IIIa
IIIb
IV
中等度異形成
高度異形成
上皮内癌
HSIL 5)高度扁平上皮内
病変
要精検:コルポ, 生検
Low grade squamous
intraepithelial lesion
IIIa HPV感染
軽度異形成
LSIL 4)軽度扁平上皮内
病変
要精検:コルポ, 生検 Atypical squamous
cells cannot exclude
HSIL (ASC-H)
III / IIIb 高度扁平上皮内病変疑い
ASC-H 3)HSIL除外できない
異型扁平上皮細胞
(説明:「高度病変疑う」)
要精検:
①HPVテストによる判定が望ましい。
陰性:1年後に細胞診HPV併用検査
陽性:コルポ、生検
②HPVテスト非施行
6ヵ月以内細胞診再検査
Atypical squamous
cells of undetermined
significance (ASC-US)
II / IIIa 軽度扁平上皮内病変疑い
ASC-US 2)意義不明な異型
扁平上皮細胞(説明: 「判定が難しい」 「鑑別できない」)
異常なし:定期検査 Negative for
intraepithelial lesion or
malignancy
I, II
非腫瘍性所見、炎症
NILM 1)陰性
取扱い(参考)
英語表記
従来のクラス分類
推定される病理診断
略語
結果
ベセスダシステム2001に準拠した子宮頸部細胞診報告様式(医会分類2008)
細胞診結果(その1:陰性〜扁平上皮系異常)
ベセスダシステム2001に準拠した子宮頸部細胞診報告様式(医会分類2008)
細胞診結果(その2:腺細胞系異常〜その他異常)
要精検:病変検索 Other malignant
neoplasms
V その他の悪性腫瘍 other 10) その他の
悪性腫瘍
要精検:コルポ、生検、頸管内膜細胞診または組織診
Adenocarcinoma V 腺癌 Adenocarcinoma 9) 腺癌
要精検:コルポ、生検、頸管内膜細胞診または組織診
Adenocarcinoma
in situ
IV 上皮内腺癌 AIS 8) 上皮内腺癌
要精検:コルポ、生検、頸管内膜細胞診または組織診
Atypical glandular cells
III 腺異形成、腺系病変疑い AGC 7) 異型腺細胞
取扱い
英語表記
従来のクラス分類
推定される病理診断
略語
結果
組織診断でCIN1・2と判定された患者において、HPVハイリスク型といわれているHPV16,18、31、33,35,45、52,58の8種類が検出される場合には、厳重な経過観察が推奨される。(産婦人科診療ガイドライン 2011)
クリニチップHPV 保険適用 2000点
ハイブリッド・キャプチャー 保険適用360点
CIN管理指針とHPV-DNA検査
3~6ヶ月毎経過観察
6~12ヶ月毎経過観察
AGCの背景
扁平上皮細胞 頸管腺細胞 化生
異 型
異型腺細胞(AGC)とは
癌へのリスクの高さを示す分類
①腺に異型があるがAISの判定基準を満たさない
②腺癌が疑われるが断定できない
ー AGC,異型腺細胞 ー (Atypical Glandular Cells)
AGC-NOS Atypical Glandular Cells -Not Otherwise Specified 特定不能な異型腺細胞 :腫瘍性の示唆を明示できない場合
AGC-favor neoplastic Atypical Glandular Cells -favor neoplastic 腫瘍性を示唆する異型腺細胞 :細胞形態は異常であるが、量的質的に内頚部AISや 浸潤腺癌の判断に至らないもの
異型腺細胞(Atypical Glandular Cells : AGC)
反応性変化や修復変化を越えた異常を認めるが、 明らかな内頚部AISや浸潤腺癌の特徴がないもの
定義
AGC-NOS AGC-NOS
AGC-favor neoplastic AGC-favor neoplastic
ー AGC,異型内膜細胞 ー (Atypical Glandular Cells)
①5 ~ 10個の少数の細胞集団
②正常子宮内膜細胞に比べ軽度な核腫大
③軽度のクロマチンの濃染を認める
④小型の核小体がみられることもある
⑤細胞質は少なく、しばしば空胞状
⑥細胞境界は不明瞭
(ベセスダシステム2001アトラスより)
上記と同倍率のEM Ad.Ca
50歳代 AGC-NOS:異型内膜細胞 (フォローアップで陰性)
50歳代 閉経後出血
年齢と臨床情報が重要
核の大きさが重要
Table 1. Comparison of Cervical Precancer or Cancer and Endometrial Cancer
Outcomes by Initial Cytologic Interpretation
AGC-EM AGC-EC AGC-NOS Total (n)
Less than CIN 2 98 (79.7) 543 (85.6) 543 (81.7) 1,184
CIN 2/CIN 3/AIS 4 (3.3) 77 (12.1) 65 (9.8) 146
Cervical cancer* 2 (1.6) 11 (1.7) 16 (2.4) 29
Endometrial cancer 18 (14.6) 3 (0.5) 36 (5.4) 57
Other cancers 1 (0.8) 0 (0.0) 5 (0.8) 6
Total (n) 123 634 665 1,422
AGC, atypical glandular cells; EM, endometrial cells;
EC, endocervical cells; NOS, not otherwise specified;
CIN, cervical intraepithelial neoplasia; AIS, adenocarcinoma in situ.
Data are n (risk %) unless otherwise specified.
* Includes squamous, adenosquamous, and adenocarcinoma histology.
Castle PE et al. Obstet Gynecol 2010;115:243-8
Castle PE et al. Obstet Gynecol 2010;115:243-8
Fig. 1. Absolute risk of clinically relevantly histologic diagnoses among 1,422 women with atypical
glandular cell cervical cytology and high-risk human papillomavirus (HPV) testing
判定 良性 CIN-I CIN-II CIN-III GD AdCa 合計
AGC-NOS 13 11 5 0 0 0 29
AGC-FN 3 2 1 1 1 1 9
合計 16 13 6 1 1 1 38
検出率 (%) 42.1 34.2 15.8 2.6 2.6 2.6 100
AGC判定例における組織診断
AGC-NOS, AGC-FN判定例にCINが検出される
判定 良性 CIN-I CIN-II CIN-III GD AdCa 合計
HPV (-) 8 8 0 0 1 0 17
HPV (+) 1 6 5 1 0 1 14
合計 9 14 5 1 1 1 31
検出率 (%) 29.0 45.2 16.1 3.2 3.2 3.2 100
AGC判定例におけるhigh-risk HPV感染と組織診断
AGC判定例中CIN-II/IIIとAdCaは全てHPV陽性であった
異型腺細胞(AGC)の臨床病理学的背景とHPV感染
①子宮頸部細胞診一次スクリーニングにおけるAGC検出頻度
②AGC-NOSやAGC-favor neoplasticの細胞診断学的特徴
③同判定例におけるコルポ所見と狙い生検部位の選定
④同判定例における頸部腺系病変および内膜病変検出頻度
⑤同判定例におけるhigh-risk HPV-DNAならびにCIN検出頻度
⑥同判定例の疫学的背景
今後の検討課題
AGCの臨床的取扱い(triage)の明確化
青木大輔ほか:子宮頸がん検診の精度管理.日本がん検診・診断学会誌 14:137-144, 2007
目視下での 細胞採取
スライドガラス への細胞塗布
標本の染色 スクリーニング 判定
報告書
臨床医 検診施行施設
細胞診従事者 Laboratory
日本臨床細胞学会 による認定制度
資格認定 細胞診専門医 細胞検査士
施設認定 細胞診認定施設
ベセスダシステムによる報告書 標本の状態の評価
子宮頸がん検診における細胞診管理プロセス
Sampling Error Diagnostic Error
日本臨床細胞学会施設認定基準 (施設認定制度委員会)
平成14年度から実施され、現在までに
約850施設が認定されている。
1) 日本臨床細胞学会が認定する常勤またはそれに準ずる細胞診専門医および常勤の細胞検査士が連携して細胞診断業務を遂行していること。
2) 細胞診断件数が年間2000件以上あり、しかも細胞標本を自施設で作製していること。
3) 日本臨床細胞学会が定める精度管理を実施していること。
細胞診業務の精度管理ガイドラインに関する会告 (認定施設に対する細胞診精度管理ガイドライン 2005年)
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会
理事長 蔵本 博行 同 細胞診専門医・指導医委員会
委員長 石原 得博
内部精度管理(検査室内精度管理) 外部精度管理(検査室間精度管理)
内部精度管理
1) 細胞診専門医と細胞検査士が緊密に連携して細胞診業務を行っていること。
2) 1日の検鏡枚数は、90 枚を上限とする。 3) 陽性例・疑陽性例判定報告に関しては、細胞診専門医が必ずチェックし署名する。
4) 細胞診陰性例の10%以上を再スクリーニングする。 5) 全例の報告書および細胞診ガラス標本の保存期間は5年間を基本とする(個人情報の適切な管理)。
6) 臨床診断や病理診断と細胞診断との不一致例の妥当性を検討する。
7) 症例検討会や地域検討会の開催や参加を推奨する。
年報の提出 細胞診断件数、標本の種類、陰性・疑陽性・陽性率、組織診断
との対比件数、学術集会への参加、施設内検討会の実施、精
度管理に関するアンケート等(4年毎認定更新の要件)
実地調査 新規認定施設、年報未提出施設から各々2施設無作為抽出し
立入調査を実施 → 学会誌イエローページに広報
<よくある指導事項> 1) 期限内に年報を提出すること
2) 陰性標本の10%以上のダブルチェックを心がけること
3) 定期的な症例検討会を開催し記録を保存すること
外部精度管理
1)衛生検査所登録証明書:都道府県知事の登録・認可を受け、精度管理専
門委員により1~2年ごとに立ち入り調査を実施。
2)医療関連サービスマーク認定証:厚生労働省委託による財団法人医療
関連サービスマーク振興会が、2年ごとに立ち入り調査を実施。
3)CAP(The College of American Pathologists:米国臨床病理医協会)認定
書:米国病理医による査察。「CAP認定証」発行。3年ごとに更新。
4)ISO 9001、 ISO 15189 認証:総括的な品質管理。サーベランス監査、更
新監査を実施。
5)日臨技臨床検査精度管理調査:臨床検査全分野を含む総括的なコントロ
ールサーベイ。年1回細胞画像を用いたサーベイ実施。
6)日本臨床細胞学会コントロールサーベイ:学会施設認定委員会がバーチ
ャルスライドを用いたコントロールサーベイを2年ごとに実施。
7)細胞学会支部、細胞検査士会支部など地域レベルで行う評価。
バーチャルスライドによるコントロールサーベイ
症例提示 細胞像供覧 関連事項の設問 回答
子宮頸部細胞診におけるSampling Error
偽陰性の原因の50%がsampling error
綿棒による低評価率はサイトピックの2倍強
偽陰性となった中等度異形成以上の病変の
約1/3が細胞採取不良に起因
自己採取法は感度が1/50以下
ハイリスクHPV-DNA検査併用で精度向上
一般検診では細胞採取力の強い器具(サイトピッ
クなど)がのぞましい
スライドグラスの全面にしっかり塗布し、乾燥や変
性防止のため速やかに固定する
乾燥標本が予想される場合(高齢者など)あらか
じめ採取器具を生食で湿らせておく
腺系病変が疑われる場合は頚管内をブラシやサ
イトピックでしっかり擦過する
自己採取細胞診は推奨できない(ただし自己採
取HPV-DNA検査は有望)
細胞診採取上の注意点
液状細胞診 (LBC) における細胞採取法
たった3 ステップでより良い結果に
1. 細胞採取 2. ブラシの先端をバイアルに 3. ラボに送る
子宮頸部細胞採取ブラシ
シュアパス (細胞固定保存液)
液状細胞診 (LBC)
全て同じ状態の標本が
乾燥変性が無く作成できる
従来法
塗抹過少 塗抹過多
委員長 植田政嗣 委 員 青木大輔 石井保吉 田路英作 布引 治 長谷川壽彦 畠山重春 半藤 保 平井康夫 山下 博
特定非営利活動法人日本臨床細胞学会 理事長諮問委員会
「子宮頸がん検診における細胞診の精度管理に関するワーキンググループ」 調査報告書
日本臨床細胞学会誌 第51巻4号 イエローページ
講演の要点
1)子宮頸癌とHPV
2)子宮頸癌検診の問題点
3)ベセスダシステムへの移行
4)AGCの取扱い
5)細胞診精度管理
謝 辞
本講演の発表の機会をお与え頂いた杉原
志朗先生ならびに日本臨床細胞学会群馬
県支部会各位に深く感謝致します。また、
御協力頂いた大阪がん循環器病予防セン
ターの野田定先生ならびに同センター調査
室の方々に深甚なる謝意を表します。