酸化物ナノ粒子安定水性分散系を用いた光エネルギー変換・貯蔵流体の開発と新規光電池への応用
千葉大学大学院自然科学研究科
多様性科学専攻 上川 直文
1
蛍光発光性酸化物ナノ粒子の環境調和型製造方法
千葉大学大学院工学研究科共生応用科学専攻
上川 直文
無機蛍光体ナノ粒子の重要性12
無機半導体ナノ粒子
量子ドット
蛍光発光性ナノ粒子
-研究の背景1-
粒径が10nm以下になると
様々な量子効果により物性が粒径に依存
CdSe, CdTe, ZnSなど
高い発光効率・安定性
粒径で制御可能
無機蛍光体ナノ粒子の重要性23
無機蛍光体ナノ粒子の応用の広がり
●有機蛍光分子よりも発光寿命が長く安定である
・タンパク質やDNA用マーカー
・ガンなどの画像診断用マーカー
●発光波長などの物性の制御がしやすい
・LED ,ディスプレイ,レーザー
CdSeなどよりも環境負荷や生体に対する
親和性の高い材料を開発できないか?
-研究の背景2-
CdSe系化合物が
用いられている。
酸化亜鉛(ZnO)とは14
酸化亜鉛(ZnO) ○緑色蛍光発光体
n型半導体・・・化学センサー
色素増感太陽電池
圧電体・医薬品
広範囲な産業分野への応用展開の可能性を有する汎用性の高い材料である
・地球上に多くの資源を有し枯渇の心配が無い。
・コスト的にも非常に安価である。
・精製技術が確立し安定した品質の原料供給が見込める。
-研究の背景3-
酸化亜鉛(ZnO)とは25
量子ドットレベルでの粒径と物性制御
-研究の背景4-
ZnO
‐‐
‐‐
酸素欠陥 格子間亜鉛
蛍光発光ドナー準位形成
粒径が小さくなりナノ粒子になると
欠陥を多く含む表面の割合が増加
比表面積が高くなり吸着量が増加
蛍光発光強度や波長に影響
表面相互作用が蛍光発光特性に影響
表面吸着相互作用に敏感な蛍光発光特性
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技術の特徴1
前駆体として水酸化亜鉛Zn(OH)2に着目
Zn(OH)Zn(OH)22ゲル状沈澱ゲル状沈澱
●光吸収特性・蛍光発光特性を制御●ナノ粒子表面と遷移金属イオンの相互作用が蛍光特性に影響
エチレングリコール溶液中に分散
+粒径・欠陥制御
Zn2+添加
低温加熱処理
解膠
ZnOZnOナノ粒子分散ゾルナノ粒子分散ゾル
酸化物ナノ粒子の前駆体としての水酸化物ゲルの水溶液中での調製
グリコールなどの溶液中で熟成させることにより粒子成長速度・分散性を制御
7
H2O エタノール エチレングリコール
静置条件:75℃, 24h
技術の特徴2 -Zn(OH)2の溶液中低温加熱処理-
Zn(OH)Zn(OH)22ゲル状沈澱ゲル状沈澱
安定で均一なZnOナノ粒子
分散ゾル
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技術の詳細1 -ZnOナノ粒子の調製方法-
遠心分離 (3000 r.p.m., 1 min)×3
Zn2+含有(Zn(NO3)2・6H2O)エチレングリコール 100 ml
0M~0.1M35℃, 24 h 静置
1min 攪拌 5min 静置
0.1 mol/l NH3 水100ml
Zn(OH)2 沈殿
0.1 mol/l Zn(NO3)2 ・ 6H2O 水溶液100ml
ZnO分散ゾル
○非化学量論性の制御による欠陥の導入
○核発生頻度の制御
●
●
●
静置するだけの非常に簡単なプロセスです。
9
Zn(OH)2をエチレングリコール中に分散し静置して得られた粒子のXRDパターン
技術の詳細2
35℃での加熱処
理で結晶性を有するZnO粒子が
生成
20 30 40 50 60 70 802θ (CuKα)/deg
Inte
nsity
/ a.
u.
0 M
[Zn2+]
0.01 M
0.05 M(100) (102) (110) (103)
(200)(112)
(201)
(002)(101)
(004)
静置条件35℃, 24h
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得られたZnOナノ粒子分散ゾルの外観
技術の詳細3 -ZnOナノ粒子分散ゾルの外観-
静置条件:35℃, 24h
[Zn2+] = 0 M [Zn2+] = 0.05 Mエチレングリコール中Zn2+濃度
均一性の高い分散状態を実現
11
技術の詳細4 -ZnOナノ粒子の吸光特性2-
300 350 40000.51.01.52.02.53.03.54.0
Wave Length / nm
Abs
orba
nce
0h
1h 2h4h 8h
12h
18h
24h
静置温度:35℃[Zn2+] = 0.05 M
ZnO格子の形成
バンド間遷移に基づく吸収が発現
35℃にて静置1 h以内に
吸収端の長波長へのシフト
粒径の増加
ZnOナノ粒子分散ゾルのUV-VIS吸収スペクトルの経時変化2
12
技術の詳細5 -エチレングリコール中のZn2+濃度と粒径-
100nm
静置条件:35℃, 24h
[Zn2+]=0 M [Zn2+]=0.05 M
ゾル中のZnOナノ粒子のSEM像
13
技術の詳細6 -ZnOナノ粒子の蛍光発光特性1-
400 450 500 550 600 6500
200
400
600
800
1000
Wave Length / nm
PL In
tens
ity /
a. u
.
0.001 M
0.05 M0.1 M
0.01 M
0.005 M
Zn2+=0 M
励起波長=365nm
EG中のZn2+濃度が増加 520nm付近の蛍光発光強度が増大
静置条件:35℃, 24h
ZnOナノ粒子分散ゾルの蛍光発光スペクトル
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技術の詳細7 -ZnOナノ粒子の蛍光発光特性2-
ブラックライト照射前
MnドープZnSナノ粒子
ZnOナノ粒子(粒径小)
ZnOナノ粒子
非常に簡便なプロセスで蛍光発光特性を制御可能です。
ブラックライト照射後
技術の詳細8 -ZnOナノ粒子の蛍光発光特性3-
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SiO2により安定化したZnOナノ粒子の蛍光発光
ブラックライト照射時
ゾル中だけでなく固体中でも蛍光を保持できます。
緑色 青色
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技術の詳細9
400 600 800 1000Raman Shift / cm-1
Inte
nsity
/ a.
u.
Zn2+=0M
Zn2+=0.01M
Zn2+=0.1M
静置温度:35℃
酸素欠陥に関連する振動モード
ZnO格子振動E2モード
35℃での静置処理
にも関わらず酸素欠陥量が制御されています。
ZnOナノ粒子のラマンスペクトルによる検討
400 500 600 7000
100
200
Wave Length / nm
Inte
nsity
/ a.
u.
陽イオン添加前
Ni2+
Al3+
Ce3+
Mn2+
ZnOナノ粒子ゾルへの金属イオン添加による
蛍光発光スペクトル変化
金属イオン添加1h後の蛍光発光
スペクトル
添加金属イオンに依存した蛍光発光スペクトルの変化が観測された
静置(35 ℃)
M(NO3)n0.001 mol
蛍光発光スペクトルの経時変化測定
ZnOナノ粒子分散ゾル100ml
濃度=0.01 M
励起波長=365nm
励起波長=365nm
技術の詳細10 -共存陽イオンが蛍光発光に与える影響1-
400 450 500 550 600 6500
200
400
600
800
1000
1200
Wave Length / nm
PL
Inte
nsity
/ a.
u.
0.001 M
0 M
0.01 M
0.0001 M
0.00001 M
Cu2+添加によるPL変化
400 450 500 550 600 6500
200
400
600
800
1000
1200
Wave Length / nm
PL
Inte
nsity
/ a.
u.
0.001 M
0 M
0.01 M
0.0001 M
0.00001 M
Fe3+添加によるPL変化
ZnOナノ粒子分散ゾルへ金属イオンを添加した際の蛍光スペクトルの変化
静置条件:35℃, 0.5 h
技術の詳細11 -共存陽イオンが蛍光発光に与える影響2-
励起波長:365nm
低温・低環境負荷な液相合成法
溶液を用いた合成反応を積極的に利用する
・ドーピングや格子欠陥の制御などによる物性制御法の確立。
普遍的基盤技術の開発
本研究のオリジナリティのある応用分野の検討
●酸化物ナノ粒子の安定な分散系の開発●物性制御法の確立
①
②蛍光体ナノ粒子の表面敏感な特性を利用した環境汚染金属イオンの高感度センサーの開発
研究開発の展開イメージ1
本技術に関する知的財産権120
本提案技術に関連する以下の特許を申請中
特願2005-260940号
特願2007-213144号
・水酸化亜鉛Zn(OH)2をグリコール溶媒中で室温~100℃以下の温度で静置することによってZnOナノ粒子およびゾルを製造する方法。
・ZnOナノ粒子の粒径,吸光特性,および
蛍光発光特性の制御方法。
水酸化亜鉛Zn(OH)2を前駆体とした酸化亜鉛粒子の合成法に関して特許を出願
本技術に関する知的財産権221
本技術( 特願2007-213144号)は以下の部分から構成され
ています。
製造方法
・水酸化亜鉛と陽イオンを、2価以上の多価アルコール及びアルキルエーテルの少なくともいずれかを含む溶液に分散し、加熱処理する、酸化亜鉛微粒子を含むゾルの製造方法。・前記陽イオンは、亜鉛イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、カルシウムイオン、バリウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、クロムイオン、アンモニウムイオン及びテトラメチルアンモニウムイオンのうち少なくともいずれかを含むゾルの製造方法。・ZnOナノ粒子の安定な分散ゾルを15℃以上100℃以下の温
度で加熱処理することにより得る方法。
応用可能な分野・製品122
ZnOナノ粒
子本技術の利点
・室温に近い温度で安定なZnOゾルを調製可
能。・Zn2+濃度、反応時間の
パラメータにより物性を制御可能。
・大量合成法の確立・ドーピングによる物性制御手法の検討
色素増感太陽電池
蛍光発光材料・マーカー
本技術の課題
UVカット膜
蛍光特性変化観測によるセンシングデバイス
実用化に向けた課題23
バイオマーカーなどとしての応用を目指して
●ゾル中のZnO粒子濃度をより高め10wt%以
上にする。●蛍光発光波長をより広い範囲で制御できるようにする。●ZnOナノ粒子表面を修飾して他の分子に固
定化できるようにする。
蛍光発光材料としての応用を目指して
●薄膜などにした場合でもゾル中と同様な高い発光効率を維持できるようにする。