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レジリエンス確保に関する技術検討委員会
「河川分科会」検討報告書
(「国難」をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書:付録Ⅲ)
2018 年 6 月
土木学会
平成 29 年度会長特別委員会
「レジリエンス確保に関する技術検討委員会」
河川分科会
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レジリエンス確保に関する技術検討委員会「河川分科会」 委員名簿
役 職 氏 名 所 属
主査 山田正 中央大学
幹事長 戸田祐嗣 名古屋大学
協力者(洪水経済被害の推計)
藤井聡 京都大学
片山 慎太朗 一般社団法人 システム科学研究所
中尾 聡史 京都大学
東 徹 一般社団法人 システム科学研究所
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目次
1.検討の前提 …… 4
2.計算の概要 …… 5
2.1 被害想定 …… 5
2.1.1 国家的レジリエンス …… 5
2.1.2 全地域レジリエンス …… 10
2.2 整備コスト …… 10
3.計算結果 …… 12
3.1 国家的レジリンス(L2 洪水、三大都市) …… 12
3.2 全地域レジリエンス(L1、L2 洪水、三大都市圏+その他一級水系)
…… 12
4.提言の概要 …… 14
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1.検討の前提
・各種シナリオ想定時の経済被害を国が公表している事業再評価等の氾濫シミュレーション結果から推
計する。
・レジリンスランク向上に要するコストを河川整備計画等の公表資料より推計する。
・計量評価尺度:洪水氾濫による資産等の直接被害、経済活動の停止に伴う GDP 毀損(経済被害)、想定死
者数
・対象ハザード:
国家的レジリンス:三大都市(荒川、揖斐川、長良川、木曽川、庄内川、淀川)におけるL2洪水
全地域的レジリンス:三大都市圏を含む全一級水系におけるL1洪水
・強靱化策(カッコ内は効果、コストを計量的に考慮した対策):
ランクB -戦後最大洪水を安全に流すことが可能 (河川法に基づく「河川整備計画」の整備)
ランクA -100~200 年に1度の大洪水(L1 洪水)を安全に流すことが可能 (河川法に基づく
「河川整備基本方針」の目標流量を安全に流す整備)
ランクS -想定最大規模の巨大洪水(L2)発生時に堤防決壊による壊滅的な被害を回避するこ
とが可能(高規格堤防)
・計算ケース: (下線=計算が困難)
国家的レジリエンス:
L2 洪水 ― 現状(ランクC)
〃 ― 河川対策(ランクB,A) (堤防決壊は防げないため、浸水エリアの軽減等に
ついては詳細なシミュレーションが必要)
〃 ― 河川対策(ランクS)
全地域的レジリエンス:
L1 洪水 ― 現状(ランクC)
〃 ― 河川対策(ランクB)
〃 ― 河川対策(ランクA)
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2.計算の概要
2.1 被害想定
2.1.1 国家的レジリエンス:
・東京圏:「最大規模の洪水等に対応した防災・減災対策検討会(H29.8.9)」、名古屋圏:「東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会(H29.5)」、大阪圏:「大阪大規模都市水害対策検討会(H29.6)」の公表資料より推算。
・社会経済への被害は、氾濫によって生産施設が破壊され、交通インフラが破壊されることを通じて、経済活動が低迷することによって生じる経済被害額を算出。
・想定死者数は浸水区域内人口から、内閣府「首都圏における大規模水害の被害想定(H20.3.25)」における浸水区域内人口/想定死者数の比より推計。
・ランク C(現状)では、荒川、揖斐川、長良川、木曽川、庄内川、淀川で、想定される被害が最大と
なる箇所(各河川で 1 箇所)で堤防が決壊する、という被災シナリオを設定。
・ランク S では高規格堤防の整備により、軽度な越流の可能性はあるものの堤防は決壊しないと仮定。 ・名古屋圏の被害については、「東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会」の浸水被害から、高潮と
洪水による浸水面積を23:26と仮定・案分し算出。
○レジリエンスランク(整備目標)の設定
ランクAは、100~200 年に一度の大洪水(L1 洪水)を安全に流す目的の整備がなされた状態と設定
し、ランクSについては、想定最大規模の降雨による巨大洪水(L2 洪水)へ対応するため、ランクAの
対策に加え超過洪水対策である高規格堤防の整備を行った状態と設定する。ランクBは、戦後最大規模
の洪水を安全に流す目的の整備がなされた状態と設定する。
表2-1-1 L2 洪水に対するレジリエンスランク(整備目標)の設定
ランク 目標
S
・高規格堤防の整備により三大都市の壊滅的な被害を回避。(荒川、庄内川、淀川)
・高規格堤防のない区間では、越水により堤防が決壊し、市街地が浸水するが、危機管理型ハ
ード対策により決壊までの時間を遅らせる。
A ・越水により堤防が決壊し、市街地が浸水するが、危機管理型ハード対策注)により決壊までの
時間を遅らせる。
B
・越水により堤防が決壊し、市街地が浸水するが、危機管理型ハード対策注)により決壊までの
時間を遅らせる。
注)氾濫が発生した場合でも被害を軽減するハード対策。参照 http://www.mlit.go.jp/river/mizubousaivision/hard.html
○L2洪水の考え方
河川整備の効果を試算する L2 洪水については、下記に示すとおり公表されている三大湾における大規
模水害の被害想定を用いる。
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表2-1-2 三大湾における最大規模の洪水等
東京湾 伊勢湾 大阪湾
検討主体(公表
年月)
最大規模の洪水等に対応し
た防災・減災対策検討会
(H29.8.9)
東海ネーデルランド高潮・洪水地
域協議会(H29.5)
大阪大規模都市水害対策検討
会(H29.6)
対象河川 荒川 揖斐川、長良川、木曽川、庄内川 淀川
想定外力 年超過確率 1/1000 の降雨 年超過確率 1/1000 の降雨相当 年超過確率 1/1000 の降雨
潮位 計画高潮位
(A.P.+5.100m)
T.P.+2.9m
※計画高潮位は T.P.4.02m
計画高潮位
(O.P.+5.200m)
被害想定 浸水面積 98 ㎢
区域内人口 126 万人
浸水面積 490 ㎢
区域内人口 120 万人
(L2 高潮との合計値)
浸水面積 7.2 ㎢
区域内人口 12 万人
孤立者 6.4 万人
○14ヶ月経済被害の計算方法
・平時と有事の GDP を、SCGE で推計し、その差分で推計。 ・有事 GDP は、「津波シミュレーション」と同じように対応。つまり、「浸水シミュレーション結果」に
基づいて、被害があったエリアの「資産 M」とそれに付随して変化する数値(サプライチェイン項)を、
「毀損」させる。ネットワークは固定。 計算方法 ①市区町村別の浸水範囲や世帯数、可住地面積の割合を設定。 ②このデータを使って、「各ゾーン毎の資産毀損量」をどうやって計算するかを考える。例えば、「浸水世
帯数」を使うなら・・・・ a)「各ゾーン毎」の、総世帯数 K1 を求める。 b)「各ゾーン毎」の、浸水総世帯数 K2 を求める c)ただし、K2 が浸水しているのは、初期時点。それは徐々に回復していく。その回復曲線は図2-1-
1(鬼怒川の堤防決壊による洪水後のケース、大原 美保・南雲 直子・澤野 久弥、土木学会論文集 B1(水工学) Vol.74, No.4, I_1159-I_1164, 2018)を使う。 d)この「職場環境」の「全回復」割合の推移に基づいて、「14 ヶ月目に全回復する」という想定。 e)さらに、上記の売り上げ回復と職場環境回復との間に「ラグ」があることも考慮。その考慮の方法は、
「△ADC /△ADB」を使う。 f)そして、0 ヶ月から 14 ヶ月の間の平均「全稼働事業所割合」を、上記データから物差しでも使って求
める。それを「PA」(=全く回復事業所がなければ0~全て回復していれば1)と呼ぶ. g)以上より、洪水水被害の計算は、次のように行う。 ・GDP 毀損=(平時 GDP―有事 GDP)×14/12×△ADC /△ADB ・有事 GDP=GDP(平常時 Mi 等 ―毀損Mi等量)
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・毀損Mi等量=平常時 Mi 等×K2/K1×(1―PA) ※ Mi 等は、Mi とサプライチェイン項、の双方 図2-1-1 鬼怒川洪水後の売上額及び職場環境の回復(平成 27 年 9 月関東・東北豪雨による 常総
市内の事業所の被災特性に関する調査研究、大原 美保・南雲 直子・澤野 久弥、土木学会論文集 B1(水
工学) Vol.74, No.4, I_1159-I_1164, 2018) ○減災効果の計算方法
表2-1-3に示すとおり、ランクAについてはL1洪水に対して安全に流せるよう整備することと
しており、ランクAが確保されればL1洪水に対しては決壊しない条件とする。 ランクSについては、超過洪水に対して決壊しない高規格堤防が整備されるため、L2洪水が発生した
としても、越流する洪水は少なく内水の排水により浸水被害は発生しないものとした。 表2-1-3 レジリエンスランクと堤防の決壊条件
ランク 巨大洪水(L2) 大洪水(L1)(参考) 戦後最大洪水(参考) S 決壊を回避 安全に流下 安全に流下 A 決壊 安全に流下 安全に流下 B 決壊 決壊 安全に流下
○東京・荒川巨大洪水(L2)における被害の算出
(1)資産被害額の算出
国公表の資料では、「最大規模の洪水等に対応した防災・減災対策検討会(H29.8.9)」において、決壊箇所が荒川右岸 21.0k、浸水区域内人口が 126 万人等は公表されているが、被害額は公表されていない。
平成 28 年度事業再評価における荒川直轄河川改修事業の根拠資料の様式2(表2-1-4)、様式3(表2-1-5)では、荒川右岸 21.0k 地点が含まれるR2の氾濫ブロックがあり、ブロック内の人口や現況河道(ランクC)に対して流量規模 1/200(L1)の洪水により決壊した場合の被害額が公表されているため、氾濫区域内の人口の比率から、巨大洪水(L2)における資産被害額を算出(表2-1-6)した。
A B C
D
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表2-1-4 荒川根拠資料様式2
表2-1-5 荒川根拠資料様式3
表2-1-6 荒川における資産被害額の算出結果
巨大洪水(L2) 大洪水(L1) 氾濫区域内人口 126 万人 78 万人
資産被害額 36 兆円 22 兆円
(2)死者数の算出
想定氾濫区域内人口に対して、内閣府「首都圏における大規模水害の被害想定(H20.3.25)」における浸水区域内人口 120 万人に対する想定死者数 2000 人の比率から算出
126 万人 × 2,000 人 / 1,200,000 人 = 約 2,100 人
○名古屋・庄内川等巨大洪水(L2)における被害の算出
(1)資産被害額の算出
国公表の資料では、「東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会(H29.5)」において、決壊箇所がそれぞれ揖保川右岸 27.2k、長良川右岸 19k、木曽川左岸 21.8k、庄内川左岸 17.2k、浸水区域内人口が約 120万人、被害額は約 20 兆円と公表されている。
この被害額は、洪水と高潮被害の合算値であるため、洪水と高潮の浸水面積比率を26:23と仮定し、浸水区域内人口 40 万人、資産被害額約 13 兆円と算出した。 (2)死者数の算出
想定氾濫区域内人口に対して、内閣府「首都圏における大規模水害の被害想定(H20.3.25)」における浸水区域内人口 120 万人に対する想定死者数 2000 人の比率から算出
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40 万人 × 2,000 人 / 1,200,000 人 = 約 670 人
○大阪・淀川巨大洪水(L2)における被害の算出
(1)資産被害額の算出
国公表の資料では、「大阪大規模都市水害対策検討会(H29.6)」において、決壊箇所が淀川左岸 9.2k、浸水区域内人口が 12 万人等は公表されているが、資産被害額は公表されていない。
平成 26 年度事業再評価における淀川直轄河川改修事業の根拠資料の様式2(表2-1-7)では、淀川左岸 9.2k 地点が含まれる YL1-1 の氾濫ブロックがあり、ブロック内の人口と「一般資産被害額と農作物被害額(以下、一般資産等被害額という。)」は公表されているため、人口の比率から、巨大洪水(L2)における一般資産等被害額を算出。
現況河道(ランクC)に対して流量規模 1/200(L1)の洪水被害額の公表値がないため、荒川の一般資産等被害額と合計被害額の比率を使い、巨大洪水(L2)の資産被害額を算出した。
表2-1-7 淀川根拠資料様式2
表2-1-8 荒川根拠資料様式3
表2-1-9 淀川における資産被害額の算出結果
巨大洪水(L2) YL1-1(資産データ) 淀川 R2 氾濫区域内人口 12 万人 286 万人 - 一般資産額等合計 2 兆円 61 兆円 7.8 兆円
資産被害額 6 兆円 - 22.4 兆円
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(2)死者数の算出
想定氾濫区域内人口に対して、内閣府「首都圏における大規模水害の被害想定(H20.3.25)」における浸水区域内人口 120 万人に対する想定死者数 2000 人の比率から算出
12 万人 × 2,000 人 / 1,200,000 人 = 約 200 人
2.1.2 全地域的レジリンス:
・全一級水系の直轄河川改修事業における事業再評価の公表資料から推算。
○レジリエンスランク(整備目標)の設定
ランクAは、河川整備基本方針レベルの洪水(以下、L1洪水)を安全に流す目的の整備がなされた状
態と設定し、ランクBは、戦後最大規模の洪水を安全に流す目的の整備がなされた状態と設定する。
表2-1-10 L1 洪水に対するレジリエンスランク(整備目標)の設定
ランク 目標
A ・河川整備基本方針の目標流量を安全に流す整備により、市街地を浸水させない。
B
・越水により堤防が決壊し、市街地が浸水するが、危機管理型ハード対策により決壊までの時
間を遅らせる。
○減災効果の計算方法
前述の表2-1-3に示すとおり、ランクAについてはL1洪水に対して安全に流せるよう整備する
こととしており、ランクAが確保されればL1洪水に対しては決壊しない条件とする。 ○資産被害額の算出
国公表の直轄河川改修事業における事業再評価の根拠資料の様式3から、L1 洪水(流量規模 1/100~1/200)に対して被害が最大となる氾濫ブロックの合計の被害額を、整備計画着手時(ランクC)、整備計画完了時(ランクB)として、全 109 水系分(120 整備計画)積み上げて算出。
河川整備基本方針の目標流量を流す対策が完了時(ランクA)における資産被害額は0円とした。
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2.2 整備コスト
国家的レジリンス:
・荒川、揖斐川、長良川、木曽川、庄内川、淀川の 6 河川での対策を対象。 ・ランクB:最新の事業再評価手続資料(行政機関が行う政策の評価に関する法律に基づいて行われる
もの)を基に、河川整備計画の実施に必要となる各水系の河川・ダム整備事業費を集計。 ・ランクA:河川整備計画における事業費をもとに原単位(河川の流下能力あたり単価及びダムの治水
容量あたり単価)を作成し、河川整備基本方針の目標流量を安全に流すために必要となる各水系の河川・ダム整備事業費を推算。
・ランクS:高規格堤防(現在、整備区間とされている荒川 51.2km、淀川 22.7km の2河川に加えて、庄内川で整備が必要と想定した区間約 40km)を追加。
※高規格堤防の費用についてはこれまでの再評価で公表されている事業費と航空写真から整備前の土地利用状況を判断
し単価を設定し、現状の土地利用状況を踏まえて費用を推計
全地域的レジリンス:
・全一級水系を対象に上記と同様にランク B、ランク A の整備費用を推算。 ・三大都市圏には国家的レジリンスで検討した 6 河川に利根川、多摩川、大和川を加え、ランク S 対
応として現在、整備区間とされている利根川(江戸川)21.4km、荒川 51.2km、多摩川 13.6km、淀川 22.7km、大和川 6.7km の5河川に加えて、庄内川で整備が必要と想定した区間約 40km の高規格堤防整備を想定。
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3.計算結果 3.1 国家的レジリエンス(L2 洪水、三大都市) (効果)
被害額
(上段:資産被害、下段:経済被害)
被災者数
(上段:浸水区域内人口、下段:想定死者
数)
東京圏 名古屋圏 大阪圏 東京圏 名古屋圏 大阪圏
ランク C
(現状)
36 兆円
26 兆円
13 兆円
12 兆円
6 兆円
7 兆円
126 万人
2100 人
40 万人
670 人
12 万人
200 人
+ランク S 0 円
0 円
6 兆円
4 兆円
0 円
0 円
0 人
0 人
6.6 万人
110 人
0 人
0 人
一つの洪水で複数箇所が決壊する実例もあり、複数箇所が決壊した場合、被害が大幅に拡大する可能
性もある。 (コスト) コスト注 1) ランク C(現状)→ランク S 約 9 兆円
注 1) 流域全体の整備が想定箇所での堤防決壊を防ぐものであるため、流域全体の整備コストを計上。 3.2 全地域的レジリエンス(L1、L2 洪水、三大都市圏+その他一級水系) (効果)
被害額
三大都市圏 その他一級水系
ランク C(現状) 171 兆円 109 兆円
+ランク B 128 兆円(C→B:43 兆円の効果) 76 兆円(C→B:33 兆円の効果)
+ランク A L1 被害なし(C→A:171 兆円の効果) L1 被害なし(C→B:109 兆円の効果)
+ランク S L2 東京圏、大阪圏:被害無し
名古屋圏:6兆円
-
※三大都市圏については国家的レジリエンスで対象としている荒川、庄内川、木曽川、長良川、揖斐川、淀川とあわせ
て、利根川、多摩川、大和川の被害を計上。
(コスト) 三大都市圏 その他一級水系 ランク C(現状)→ランク S 20 兆円(+5 兆円) -
ランク C(現状)→ランク A 15 兆円(+11 兆円) 34 兆円(+24 兆円)
ランク C(現状)→ランク B 4 兆円 10 兆円
※( )内は整備コストのうち、「ランク B」から「ランク A」もしくは「ランク A」から「ランク S」への追加コスト。
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※「ランク C(現状)→ランク S」に記す(+5兆円)については、東京圏(荒川、利根川(江戸川)、多摩川)、大阪圏(淀
川、大和川)の高規格堤防整備区間約 120km のうち、今後整備に要するコスト約4兆円に、名古屋圏のうち庄内川で大規
模な被害が発生するため対策が必要と想定した整備延長約 40km の整備に要するコスト約1兆円の合計値。
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4.提言の概要 ・河川対策による強靱化効果(被害低減効果)は甚大。投入費用の何倍もの効果有り。強靱化・防
災対策の観点から、河川強靱化対策は進めるべし。 ・地球温暖化等の影響を受け、近年、毎年のように全国の各地でこれまでに経験したことの無い豪
雨による洪水・土砂災害が発生している。我が国の洪水対策の当面の目標は、戦後最大規模程度
の洪水(30 年~40 年に一度の洪水)を安全に流す(レジリエンスランク B を達成する)ことで
あるが、温暖化の影響を考慮して改めてその規模の洪水の発生確率を試算したところ、15 年以
内の発生確率は 50%以上となった。そのため、我が国の洪水対策は、おおよそ「15 年以内」に
レジリエンスランク Bを達成することを目指すべきと考える。 参考:下記図4-1を用いて、確率降雨年の変化を計算すると、 20C 気候での 30 年に 1 度⇒ 21C 気候での 16.3 年(15 年以内の発生確率:61%) 40 年に 1 度⇒ 20.7 年(15 年以内の発生確率:52%)
図4-1 気候変動による豪雨確率年の変化(出典:Oki,T.(2016)Integrated Water Resource and Adaptation
to Climate Change, Water Resource Development and Management)
・さらには、IPCC 第5次報告書において、21世紀末までにほとんどの地域で極端な降水がより
強く、より頻繁となる可能性が非常に高いことが科学的に予測されていることを踏まえると、21
世紀末での三大都市圏でのレジリンスランク S、その他の一級水系でのレジリンスランク Aを目
指し、現状の投資水準を「加速」し、可及的速やかに対応すべきである。 ・温暖化適応策としての抜本的な治水対策、ハード対策・ソフト対策を総動員した被害軽減・防
止策の検討と社会実装が急務である。
以上