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Vol.65 No.13 工場管理52

 プラスチック成形を手がける柴田合成は、2018年からベトナム人エンジニアを正社員として採用している。外国人材の採用から活用、育成のノウハウと実績を新たな事業として展開するべく、同年に柴田合成のグループ会社としてシバタエンジニアリングを設立。外国人材が人手不足の救世主となっただけでなく、新たなビジネスを切り開くきっかけとなった。

困難を極める新卒採用で外国人材に活路

 1961年に群馬県甘楽町で合成樹脂加工事業として創業した柴田合成は、20年前に長野県佐久市の金型メーカーを買収して以来、金型設計製造から成形、組立までの一貫生産体制を敷く。車載用エアコン部品やエンブレムなど自動車分野をはじめ、医療機器、パチンコ台パーツなどのアミューズメント、住宅内装など幅広い産業のプラスチック製品を製造。中国にも3つの生産拠点を持つ。 採用活動の潮目が大きく変わったのは約2年前。「13年前から理系大学・学科の新卒社員を採用しており、以前は優秀な人材を企業側が“選べる”立場でした。しかし近年の就職説明会ではなかなか学生が集まらない。だからといって、採用する人材の質は下げてしまっては、企業としての成長を見込めない。どうしたらよいか、頭を抱えてい

ました」とシバタエンジニアリング営業担当の柴田晃佑氏(写真1)は当時の苦悩を明かす。 国内の大学生を採用できない。それなら一層、日本人にこだわらず、外国人を採用してみてはどうか。そうした発想に至ったのは、甘楽町にあるNPO法人自然塾寺子屋との出会いからだった。 自然塾寺子屋とは、多文化共生を目的に自然体験や環境教育、人材育成を行っているNPO法人で、海外研修生のサポートにも力を入れている。自然塾寺子屋からベトナム送出し機関のWin-Win Japanを紹介され、ベトナム人採用のルートを築くことができたのである。

優秀な5人のベトナム人エンジニアを採用

 送出し機関を通じて募集すると、採用予定人数の約5倍以上の応募があった。応募者とはスカイプ(ウェブを通じて通話やチャットができるサービス)を通じて面接。2018年に5人のベトナム人をエンジニアとして初めて採用した。

会 社 名:㈱柴田合成所 在 地:〒 370-2202     群馬県甘楽郡甘楽町小幡 270-3設  立:1968年従業員数:129名事業内容:プラスチック製品の設計・試作、金型設計・

製作、成形、組立

会 社 概 要

写真1 シバタエンジニアリング    営業担当 柴田 晃佑氏

事例編 3

ベトナム人材採用・活用ノウハウを外国人材紹介ビジネスへ発展

柴田合成

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工場管理 2019/11 53

特集 現場の新たな戦力へ!外国人材活用成功マニュアル

 採用した5人はハノイ工科大学、ダナン工科大学などベトナムのトップレベルの理系大学出身者ばかり。雇用条件や待遇は日本人正社員と同じ。会社の将来を担う期待の人材として迎えた。 内定者たちは採用決定後から入社までの6カ月間は全寮制の日本語学校で学ぶ。また、ベトナムの提携大学で金型に関する実技講習を受けた。 こうして半年の準備期間を経て来日した第1期生たちは群馬の本社工場と長野の佐久工場へ分かれ、3人は金型設計や加工、2人は社内の自動化・ロボット化を手がけるロボット事業部へ配属された。 雇用主である柴田合成も受入れ体制を整えた。20代の若手社員に専属オブザーバー、技術指導オブザーバーを1人ずつ任命。専属オブザーバーは「困ったことがあればこの人に頼ればいい」といった、いわばお兄さん的な存在。オブザーバー役に抜擢された社員にとっても初めての経験だった。

日本人の先輩社員がサポート

 ベトナム人エンジニア第1期生の1人、トイさん(24歳)は、社内の自動化を担当するロボット事業部に配属された。人手による梱包作業を自動化する自動梱包機を作製している(写真2)。ロボット事業部はベトナム人エンジニアの採用を機に昨年から新設された部署。社内の自動化を推進することで省人化を目指すとともに、将来的には自動機を外販することも検討している。

 トイさんとともに自動機の開発から設計・製造を担当しているのが、先輩社員の渋谷祐大さん(写真3)。ベトナム人エンジニアの指導役“専属オブザーバー”も担っており、日常業務はもちろん、日本の生活で困った時に頼られる存在だ。 「(強いて言うなら)仕事の上での壁は言葉」と渋谷さんは指摘する。生活や日常会話でのコミュニケーションには問題がないものの、業務上の専門用語や漢字の読み方などは難しく、まだまだ発展途上だ。トイさんも「日本語がもっと上達すれば、仕事もできるようになるはず」と意気込む。そこで渋谷さんは、ベトナム人たちの日本語力を鍛えるためコミュニケーションの仕方にも心がけていることがある。 「単語だけでも相手が伝えようとしていることは理解できますが、それでは彼らの日本語が上達しないので、あえて文章で話させるようにしています」(渋谷さん)。 仕事を教える際は、口頭で説明しても理解できないこともある。意味が伝わらないことが、間違いや品質不良を招く要素にもなり得る。そうしたリスクを避けるためにも、一緒に作業して見せ、体験しながら覚えさせるようにしている。「体で覚える」ことが習得の近道になる。「彼らは1回体験するとすぐに覚えてしまいます」(渋谷さん)。 そして、注意をするときにも他の社員がいないところで伝えるよう気遣う。 「何事にも我慢強いベトナム人はよっぽどの体調不良でないと病院に行くということをしません。

写真2 ロボット事業部は自動梱包機の製作を2人で手がけている

写真3 ベトナム人エンジニアのトイさん(左)と先輩社員の渋谷 祐大さん


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