図1. ポリクローナル抗体の UV クロマトグラム
グリホサートとその関連物質の LC/MS 一斉分析
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● 緒 言 グリホサートやグルホシネートなどの農薬は、ほとんどの雑草に有効な非選択性除草剤として世界中で広く使われている。人体への有害性が懸念されるため各国で規制されており、環境や食品中の濃度をモニターする必要がある。親水性が高いため
HPLC を用いた分析が適しているが、そのままでは逆相モードでの保持が難しく、前処理で誘導体化したり、溶離液にイオンペア剤を添加するといった工夫が必要であった。ただし、前者は煩雑で迅速性に欠ける面があり、後者はイオンペア剤がカラムや流路に残留してバックグラウンドを上げるという問題が伴う。 ここでは第四級アンモニウム基を官能基とするShodexⓇ
HILICpakⓇ VT-50 2Dを用いて、上記の操作を必要とせずに、グリホサートとその代謝物であるアミノメチルスルホン酸(AMPA)、グルホシネートとその代謝物である3-ヒドロキシメチルホスフィニコプロピオン酸(MPPA)、エテホン、ホセチルの 6 種について LC/MS/MS 法による高感度な一斉分析を検討した。各国の規制における基準値は定量できるように、 1 ng/mL を分析できることを目指した。
● 実験条件 条件検討にあたり、各化合物の市販試薬を水に溶解させた標準試料を用い、下記の条件で測定を行なった。溶離液はイソクラティックとした。
Instrument : Shimadzu Nexera / LCMS-8030 Plus
Column : Shodex HILICpak VT-50 2D
(2.0 mm I.D. x 150 mm;5 μm)
Eluent : (a) (Acid condition) 50 mM HCOOH
aq./CH3CN=90/10
Eluent : (b) (Neutral condition) 50 mM HCOONH4
aq./CH3CN=80/20
Eluent : (c) (Alkaline condition) 50 mM HNH4CO3
aq./CH3CN=50/50
Flow rate : 0.3 mL/min
Detector : ESI-MS SIM(-) or MRM(-)
Column temp. : 40 ºC
なお、これらの有機リン系農薬は金属配位性が高く、流路の材質が金属性であると吸着し、テーリングの原因になり得る。そのため、装置の配管は PEEK 材質を採用した(オートサンプラー内の流路のみ SUS 材質)。 VT-50 2D はハウジングには
PEEK 材質を採用しており、金属配位性物質の吸着を防ぐことができる仕様になっている。
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図1. 各溶離液での SIM クロマトグラム
図2. 10 ng/mL での MRM クロマトグラム(10 μL 注入)
図3. 検量線
● 結 果1. 溶離液 pH の分離への影響 1 μg/mL 混合標準溶液を 5 μL 注入し、 SIM(-) モードで測定した結果を図 1 に示す。酸性条件(50 mM HCOOH aq.
の pH は約 2.4 )(図 1-a)では、 AMPA がほとんど保持されない、グリホサートがテーリングする、エテホンの溶出が約 60
min と遅い、ホセチルが検出されない、という点が問題であった。中性条件(50 mM HCOONH4 aq. の pH は約 6.8) (図 1-b)では分析時間は 10 min 以内と早くなるものの、 AMPA とグルホシネートがほとんど保持されない、 AMPA とグリホサートがテーリングする点に問題が残った。アルカリ性条件(50 mM HNH4CO3 aq. の pH は約 8.5) (図 1-c)では最も早く溶出するホセチルでも保持係数は 2 以上あり、すべての化合物はピーク形状が良好で、 20 min 以内に溶出することが確認された。アルカリ性条件が適すると判断された。
2. アルカリ性条件におけるMRMモードでの高感度測定 10, 50, 100, 250 ng/mL 混合標準溶液を 10 μL 注入し、 MRM(-)モードで測定した。 10 ng/mL でのクロマトグラムを図 2 に示す。各化合物の検量線を図 3 に示す。 MPPA では二次曲線になったが、それ以外の化合物では直線性は良好であることが確認された。
10 μL 注入では 1 ng/mL の検出は困難であったが、図
4 に示すように、 50 μL 注入にするとホセチル以外は検出できることが確認された。
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図4. 1 ng/mL での MRM クロマトグラム(50μL 注入)
図5. 水道水への添加実験結果
3. 水道水でのグリホサートの添加回収実験 水道水にグリホサートを 10 ng/mL 添加した場合の MRM
クロマトグラムを図 5 に示す(50 μL 注入)。回収率は 84 %
であり、比較的良好であった。
● 結 論 ShodexⓇ HILICpakⓇ VT-50 2D に炭酸水素アンモニウムを添加したアルカリ性溶離液を用いることにより、グルホサート、 グルホシネート、 AMPA、 MPPA、 エテホン、 ホセチルの
LC/MS 一斉分析が可能であることが確認された。ポリマー基材を充てん剤としたカラムであるためアルカリ性溶離液が使える特長を活かした条件である。また、ハウジング材質が PEEK
のためテーリングを回避できている。本手法では、誘導体化前処理、イオンペア剤添加、溶離液グラジエントが不要であり、迅速かつ安定した分析を実現できる。
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