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 近年の技術進歩によって、遠隔操作の可能性がさらに進展している。例を挙げると、小型の実験機器によって、医師は医療施設から離れていても患者をスクリーニング、診断できる。また、携帯型環境モニターによって、野外における予防・治療応答を加速させる情報が得られる。顕微鏡は歴史的に見て

巨大で壊れやすく、ずれに弱かったが、最先端の設計や製造技術によって、今では高パフォーマンスなポータブル顕微鏡法システムが可能となっている。小型化された光学対物レンズと極薄フィルタによって、システムのサイズと重量を大きく減らすことができる。設計者は医療や環境モニタリング応用向

けに、高性能でフィールドポータブルな装置を作ることができるようになっている(図1)。 ポータブル装置では、正確性と迅速な応答の両方が重要だ。水の品質モニタリングを例に考えよう。水源の安全性に疑問があるときに使うのは危険だが、水供給のアクセス遮断は甚大な被害をもたらす。顕微鏡法は正確性を保証するが,適切な装備で研究所に送るサンプルをフィールド収集することが一般的に必要であり、レスポンスタイムの遅れにつながる。そのため、化学的、生物学的な不純物の特性を迅速で正確に評価することは、非常に意味のあるものだろう。 類似する状況が、マラリア診断のような臨床応用にある。この疾患は、蚊が媒介する寄生虫が原因であり、赤血球の形態学的変化を誘導する。赤血球をイメージングすることで正確に診断できるが、研究室の顕微鏡を遠く離れた熱帯地域に運ぶことは現実的ではない。代替手段としてサンプルを研究室に返送する方法があるものの、これもまた決定的な診断の遅れとなる。 このような生体医学における応用以外に、顕微鏡による検査は製造業で非常に有益なものとなっている。しかし、スペースに限りがある製造ラインでは、割れや散乱のような欠点のあるものを拡大させて取り入れることは、しばしば問題外である。幸いなことに、ロー

ステファン・ブリッグズ、コリー ・ブーン

超小型対物レンズと極薄フィルタによって、進歩したフィールドポータブルな顕微鏡法システムが可能となっており、多くの応用が期待されている。

ハイパフォーマンス、ロープロファイルの顕微鏡法

ポータブル顕微鏡法/光学イノベーション

図1 顕微鏡法システムは臨床応用に必須である。しかし、従来のような巨大なサイズと重量、そして複雑性が、フィールドワークにおける迅速な応答を困難なものとしている。

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プロファイルで精度が高く、耐久性もあるシステムを次第に設計できるようになっている。

大きなものが小さなパッケージでやってくる 近年の超小型顕微鏡対物レンズは、大きさや重量と関係する応用において、高拡大率と高パフォーマンスをもたらす(図2)。直径25mm、厚さ11mm(25セント硬貨を積み重ねた程度)という小型のフォームファクタは、直径4 ~7mmのレンズ素子と直径わずか8 ~15mmの前部要素によって実現され、短い焦点距離、シャープな曲率半径、小さいf 値をもつ。対物レンズの構造を簡略化することでさらに小型化できるが、焦点は固定され、絞り環は小さく、絞り値は調節できないものになるだろう。 このような対物レンズは、像面が平面ではなくなる傾向にあるため、視野の中心軸で分解能やコントラストが向上するものの、エッジでは視野湾曲のため、コントラストが5 ~ 10%低下するだろう。しかしながら、非平面であることの利点もある。これらの対物レンズは、巨大でフルサイズのイメージセンサ上でイメージを解像できる。これは、細胞検出や顕微鏡の欠陥分析などの多くの応用で有効である(ただし、回折限界以上を要求する応用には適さない)。 超小型対物レンズは有限系でもあり、対物レンズの入射瞳に応じてセンサ位置を変えることでモジュラーズームレンズに変化できる。延長チューブを追加することで対物レンズの倍率を変更でき、ひとつの対物レンズで複数の異なる条件下で使用できる。いくつかの正確な変換ステージまたはアクチュエータを用いて、モジュラーズームの顕微鏡とするためにスクリプトやア

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 さらなるポータビリティに向けたロープロファイル実現の目標として、開発者はシステムのあらゆる面の最小化を試みている。たとえば、光学に置き換わるアルゴリズムを用いる「計算顕微鏡」が追究されている。アルゴリズムは確かに光学システムの中にあるが、その限界を認識することは重要である。 一例を挙げると、アルゴリズムには処理時間が必要だが、光学はリアルタイムに行われる。演算能力を高めることでアルゴリズム処理のスピードは向上できる

が、巨大なシステムをもってしてもリアルタイムとはならない。 これに関連する問題は、外部オペレーターへの依存だ。データを遠隔処理装置に転送するとして(これはさらに処理を遅くさせる)、セキュリティと忠実性が考慮される。データが破損してないと知るにはどうするのか。さらに、アルゴリズムは適切に動作していると知るにはどうするのか。 スピード、正確性、信頼性を求めるほど、高品質な光学を求めることになる。

ハードウエアvsソフトウエア

図2 米エドモンド・オプティクス社(Edmund Optics)のTECHSPEC部品のような超小型顕微鏡対物レンズは、ポータブルシステム設計を実現する重要なものである。

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ルゴリズムを簡単に記述できる(これに対して無限補正対物レンズは、大きな収差を生み出さずに同程度に小型化するのが難しい)。 これらの性能は、まったく新しいフォームファクタを期待させる。現在のポータブル技術の原型は携帯電話である。光路長が短く、数gしかない顕微鏡対物レンズによって、スマートフォンと連動する超小型の設計が可能である。携帯電話ベースの装置は現在、ウエストナイルウイルスやジカウイルスなどと関連する形態学的変化を迅速に検出するために使われている。携帯電話ベースの顕微鏡法では通常、プログラミングと演算能力、使用される光学における球面収差の補正時間が大量に必要となる(ハードウエアvsソフトウエア

を参照)。しかし、超小型対物レンズによって、アルゴリズム調整や補正なしに高品質なイメージを取得できる。 これらの対物レンズのメリットは、光学フィルタが重く、厚く、壊れやすいのであれば意味をなさない。コーティングされたガラス基質の厚さは1mm以上になりえる。しかし、極薄フィルタは厚さ75μmから押し出されるポリマー(アクリルやポリカーボネート)で形成される。これにより、軽量かつフレキシブルで、傷に強い飛散防止フィルタとなる。ほぼ90度まで曲げても壊れない(図3)。こうしたフィルタは押

し出されたあとにダイカットされるため、顧客が求める大量生産と、研究やアカデミア向けの単発のカスタマイズの両方に対応しやすい。比較できる硬質酸化フィルタよりも平均反射率が低く、波長間シフトや球面シフトを最小限に抑えられる。

応用に向けた利点 どの実現技術でもそうだが、設計者が新たな可能性に気付いたときに新しい応用が登場する。ドローンに搭載されているセンサアレイのように軽量、ロバストなイメージングシステムを想像するのは容易であり、応用を制限するのは想像のみである。ポータブル・エンターテインメント分野では、携帯ディスプレイやAR/VRアプリケーションが急速に伸びているが、超小型顕微鏡もまったく新しいオプションになるかもしれない。エンターテインメントと教育のオーバーラップは可能性に満ちており、リアルタイムな顕微鏡イメージをカリキュラムに簡単に組み込むといった教室スケールのシステムが考 えられる。 アデノシン三リン酸

(ATP)を蛍光で検出することは、今では外食産業で顕微鏡的に行われている。病室では、顕微鏡スケールに小さくすることで、検査の正確性が大きく向上する。 迅速な応答とin situ(その場)計測への関心が高まっているなか、非常にコンパクトな顕微鏡を使う応用の範囲は確実に広がり続ける。小型、軽量、ロバストな顕微鏡対物レンズとフィルムの利点は、予期せぬ応用をもたらすだろう。

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著者紹介ステファン・ブリッグズはエドモンド・オプティクス社の生体医学製造ラインエンジニア、コリー ・ブーンは同社の技術マーケティングエンジニアである。e-mail:[email protected] URL:www.edmundoptics.com

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ポータブル顕微鏡法/光学イノベーション

図3 極薄でフレキシブルなフィルタは傷に強く、重量が問題となる応用に理想的である。


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