新型コロナウイルス対応~管理者として感染拡大を防止するために~
統合幕僚監部令和2年4月
目 次
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項 目 ページ番号
1 はじめに P 2
2 自衛隊における取組 P 3 ~ P 7
3 これまでの経験で得たこと P 8
4 個人の感染防護基準 P 9 ~ P 1 0
5 施設等の感染防護基準 P 1 1 ~ P 1 5
6 隊員の教育 P 1 6
7 実行の監督 P 1 7
1 はじめに
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新型コロナウイルス感染症は、全世界で300万人以上の感染者、20万人以上
の死亡者が発生するような未曽有の事態となっています。日本国内においても、
1万人を超える感染者が発生し、政府は全国に緊急事態宣言を発令しました。
このような非常事態において、自衛隊は令和2年1月31日から帰国邦人等に対
する輸送支援、帰国邦人等の宿泊施設における生活支援、民間船舶「ダイヤモン
ド・プリンセス号」への対応を、同年3月28日から帰国者等に対する検疫支援、
輸送支援、生活支援、自治体職員や民間事業者への教育支援を実施しています。
自衛隊にとって、大規模な感染症対応は初めての経験でありましたが、生物化学剤
防護に関する教育訓練の成果を生かし対応してきました。その結果、これまでの
活動で自衛隊員に1人の感染者を出すことなく任務を遂行できています。
感染症対策を行う管理者の方へこの貴重な経験で得たノウハウを活用して頂きた
く、本資料を作成しました。本資料が皆さまのお役に立つことができれば幸いに思
います。
2 自衛隊における取組
3
帰国邦人等およびクルーズ船乗客等の救援に係る災害派遣
時 期
活 動
成 果
令和2年1月31日~3月16日
➤ 帰国邦人等に対する輸送支援
➤ 帰国邦人等の宿泊施設における生活支援(食事配布、回収など)
➤ クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」への対応
・ 医療支援(診察、検体採取、薬の処方)
・ 生活支援(生活物品の搬入、荷物の搬出、船内の消毒)
➤ 宿泊・生活支援や輸送支援(養生・消毒など)の実施要領を一から
定め、業務を実施した。
➤ 感染防護基準を定め、教育・徹底・実行の確認をしたことで活動
隊員から1人の感染者を発生させずに任務を完遂した。
2 自衛隊における取組
4
水際対策強化・市中感染拡大対応に係る災害派遣
時 期
活 動
本災害派遣における取組
令和2年3月28日~
➤ 帰国者や入国者に対する検疫支援、輸送支援及び生活支援
➤ PCR陽性患者(無症状・軽症)に対する生活支援
➤ 自治体職員、民間事業者への教育支援(防護服などの着用要領、生
活支援の実施要領など)
➤ 前回の災害派遣で得た教訓を今回の災害派遣に応用している。
➤ 自衛隊が得たノウハウを国全体に共有している。
・ 自治体職員や民間事業者への教育支援
・ 感染防護要領や感染リスク管理法を統幕ホームページで紹介
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活動前に教育し訓練を行うことで基礎動作の徹底を図る活動前に教育し訓練を行うことで基礎動作の徹底を図る
衛生教育衛生教育 感染防護服着脱訓練感染防護服着脱訓練 ガウン着脱訓練ガウン着脱訓練
2 自衛隊における取組
活動中は定められた防護基準で感染防護し、指揮官は実行の確認を行う活動中は定められた防護基準で感染防護し、指揮官は実行の確認を行う
下船者の輸送 下船者の荷物搬送 船内での医療支援6
2 自衛隊における取組
これまでに得た経験や教訓を生かす・広めるこれまでに得た経験や教訓を生かす・広める
自治体に対する教育支援自治体に対する教育支援ホテルにおける生活支援ホテルにおける生活支援帰国者に対する輸送支援帰国者に対する輸送支援7
2 自衛隊における取組
3 これまでの経験で得たこと
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○ 新型コロナウイルスの感染経路を遮断するための基準や計画を作成する。
○ 作成した基準や計画を徹底する。
1 業務内容毎の感染防護基準を定める。
2 活動中の感染拡大防止に係る行動基準を定める。
1 施設のゾーニングを行い、清潔エリアと非清潔エリアの区分を作成する。2 輸送に使用する車両の養生要領を定める。3 廃棄物処理の基準を定める。4 施設や車両の消毒要領を定める。
個人の感染防護基準 施設等の感染防護基準
感染者を発生させないための教訓
定めた感染防護基準を教育・徹底するとともに、実行の確認を行うことが重要
現在実施している水際対策強化における例(抜粋)
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4 個人の感染防護基準
1 業務内容毎の感染防護基準を定める
○ 業務内容毎に必要と思われる防護装備を定めた。○ 隊員が活動する上で、感染防護が図れる最低限の基準を分析した結果、一部の業務で一般的な基準よりも高い基準となった。
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4 個人の感染防護基準
2 活動中の感染拡大防止に係る行動基準を定める
○ 日々の活動を行う前に健康状態を確認し、症状がある場合は勤務に従事せず、速やかに医療機関を受診する。
○ 勤務時間中は、常時マスクを着用するほか、速乾性のアルコール製剤等で手指の消毒を行う。
○ 勤務中や活動終了後に発熱、咳などの症状を自覚したものは、マスクを着用したまま医療機関等を受診し指示をうける。
○ 勤務終了後、移動する際は手指のアルコール消毒を行い、マスクを着用する。
○ 勤務終了後は不要不急の外出を控える。
(例)食事の受け渡しを行うフロア
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5 施設等の感染防護基準
1 施設のゾーニング計画を作成する
○ 清潔区域で活動するものと非清潔区域で活動するものが交わらないように区域を統制することで、感染の拡大を防止する。
○ 清潔区域と非清潔区域を区別するためには、フロアごとで動線が交わらないように計画し、清潔区域と非清潔区域をテープや衝立等で明確に区分する。
(例)客室のあるフロア
厨房スタッフは青ゾーン
活動隊員は赤ゾーンのみで活動
・ 厨房スタッフと宿泊者への対応者はエリアを分けて行動する。・ 厨房スタッフは受け渡しエリアで活動隊員に宿泊者用の食事を受け渡す。
・ 帰国者専用の宿泊フロアを設定する。
・ 帰国者専用のエレベーターを設定し、勤務する隊員と交わらないように処置する。
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5 施設等の感染防護基準
2 車両の養生要領を定める
○ 感染者を輸送する場合、予め車内をビニールなどで覆うことで、2次感染を防止する。
○ 感染者を輸送した後に、ビニールを回収し更にアルコールなどで消毒する。
窓側にビニールシートなどを貼り付け、カーテンを養生する。
背もたれ、座面をビニール(ごみ袋など)で覆う。
全ての座席や補助席をビニールなどで覆い養生を完成させる。
廃棄物の処理
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5 施設等の感染防護基準
3 廃棄物の処理の基準を定める
○ 清潔区域で使用するごみ袋と非清潔区域で使用するごみ袋は区別する。
○ 非清潔区域で発生した感染防護具や宿泊者の弁当箱などの廃棄物は一般廃棄物と区別する。
○ 非清潔区域で発生した廃棄物と一般廃棄物は区分して捨てる。その際、廃棄物の区分がわかるように表示することで、2次感染を防ぐ。
区分した集積容器をわかりやすく表示する。 感染防護を行い、廃棄物を搬出する。
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5 施設等の感染防護基準
廃棄物の処理4(1)施設の消毒要領を定める
○ ドアノブなど不特定多数が触れる可能性のある場所を消毒用エタノール液などで消毒する。
○ 玄関、会議室など共用で使用する場所の入り口付近に消毒用エタノールを設置することで、室内の汚染を防止する。
・ ドアノブ、エレベーターなどのスイッチ、トイレなどの共用施設は定期的に消毒を行う。
・ 消毒の際もマスク、手袋を着用する。・ 部屋の入口にアルコール消毒液を設置する。
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5 施設等の感染防護基準
廃棄物の処理4(2)車両の消毒要領を定める
○ 乗客には乗車前に消毒用アルコールで手指を消毒してもらう。
○ 輸送が終了した際に、乗客が特に触れそうな手すりなどを消毒用アルコールなどで消毒する。
○ 天井や運転席、荷台についても消毒用アルコールなどで消毒する。
手すりの消毒 天井の消毒 運転席の消毒 荷台の消毒
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6 隊員の教育
廃棄物の処理活動前に隊員の教育を行う
任務に従事する前に、感染症の概要、個人防護具(防護服、マスク、手袋等)の防
護基準や脱着要領、感染拡大防止に関わる行動基準などの教育を実施し、自信をもっ
て活動ができるように知識や技術を付与する。
ゴーグルの装着要領の教育 ガウンの着脱要領の教育
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7 実行の監督
廃棄物の処理実行の監督を行う
○ 指揮官が現場に進出し、示された基準に従った防護及び行動が実施できているか
を自らの目で確認する。
○ 示されたことが実行できていない場合は、原因を追究し阻害要因を除去する。
指揮官による活動現場(輸送バス)の確認及び指導指揮官による活動現場(ホテル)の確認及び指導
協力:陸上自衛隊