Download - LHC 実験, 陽子衝突実験の原理,加速器
1
LHC 実験,陽子衝突実験の原理,加速器
山崎祐司(神戸大)
2
講義の内容
LHC 実験とハドロンコライダーの基礎
量子色力学とクォーク・グルーオンの散乱
高エネルギー陽子・陽子散乱 LHC の物理過程
電子・陽子散乱による陽子の構造の測定
LHC (Large Hadron Collider) at CERN*
標準模型の予言する質量起源のヒッグス粒子,標準模型を超える粒子・相互作用の発見が目的
世界最大,最高エネルギーの加速器
周長 27km (電子・陽電子衝突実験 LEP トンネルの再利用)7TeV = 7 兆電子ボルト( TeV = 10¹² eV ) 陽子同士の衝突 重心系エネルギー 14 TeV 米 Tevatron の 7 倍40MHz 衝突建設期間 14 年
3
*CERN: 欧州原子核研究所
モンブラン
ジュネーブ市街
CERN
レマン湖
フランス
スイス
LHC 加速器と物理実験
4
ATLAS: 14TeV pp日本は高エネ研 (KEK) ,東大,神戸大など15の研究機関が参加
CMS: 14TeV pp
ALICE: 重イオン衝突Quark-gluon plasma 生成で初期宇宙再現広大,東大,筑波大,理研
LHCb: 14TeV ppb- クォークの物理( CP 非保存)に特化している
CERN 研究所
このあと, 14TeV pp,ATLAS/CMS の話のみ
加速器:KEK が協力
標準模型の粒子と相互作用
5
6
ハドロンコライダーとは
陽子・陽子衝突( Tevatron までは陽子・反陽子衝突) 点状粒子=素粒子,
の衝突ではない 陽子の「なかみ」
=クォーク,グルーオンの衝突
陽子
陽子の「あまり」(proton remnant)
高い横運動量 pT を持つ散乱された粒子
• { クォーク,グルーオン } = パートン parton( ハドロンの構成部分をなす粒子という意味の造語。強い相互作用に関連する素粒子の総称 )
• パートン同士がぶつかって散乱
7
クォークとグルーオン
クォークと電磁気 (g)u-type (eu
2 = 4/9)d-type (ed
2 = 1/9) W±: u, d 同じ電荷 Z0 は複雑
グルーオンクォーク間の相互作用電弱相互作用との違い: 結合定数がむちゃくちゃ大きい 自己結合する
(非可換群の性質,弱ゲージボゾンも同じ)
, c, t
, s, b
8
3つの力の結合定数
強い相互作用:摂動計算(逐次近似)が収束しにくい 特に ~0.5 GeV 以下では収束しない
非摂動論的な取り扱いが必要(後述)
強い相互作用によるクォークの閉じこめ
強い相互作用の結合定数は,相互作用のエネルギーが高いほど小さい(低いほど大きい)
力は距離が離れるほど強くなる
ポテンシャルエネルギーにより新たに粒子・反粒子が対生成 中間子を形成し,多粒子
のジェットとなる 破砕化( fragmentation )
とよばれる
9
rr 1)(
rr ~)(
ポテンシャルエネルギーが高くなっている 中間子
中間子
クォーク・グルーオンの破砕化
10
パートンが一つ放射ee → qqgハードな散乱の「3体崩壊」
次々にパートンが放出される( αS でかい)
拡大すると…
パートン間の不変質量が 1 GeV 程度になると, αS ~ 1 となり摂動計算が意味をなさなくなる→ 非摂動な QCD で説明される束縛状態(中間子)を形成
O(√s)
O(1GeV)
11
ハドロンコライダー: e+e 衝突との違い
e+e 衝突:ビームが完全に対消滅できる 新粒子の対生成が(エネルギー効率よく)できる
ビーム進行方向の運動量保存が使える
ハドロンコライダー:ビームの一部が散乱 ビームと垂直な面での
運動量保存だけが使える
12
ハドロンコライダーの主なプロセス
QCD 過程が主な断面積を占める
ggqqgg
qgqg
qqqq
ggqqqq
,
,
クォーク,グルーオンは直接観測されない破砕化して,ハドロンの束(ジェット)を生成
13
ハドロンコライダーの散乱過程の記述
信号も,巨大なバックグランドも,始状態のパートン密度 f (x, Q2) がないと計算できない
つまり,核子(陽子,中性子)の内部構造を知る必要がある →今日の残りの話題
gq
TTT FSpppxfpxf,
34122211
21
)34()(),(),()4 ,3(
)4 ,32 ,1()()(
する確率が特定の終状態に崩壊
に散乱する確率が粒子密度密度ビームからの素粒子の
12→34
14
陽子の基本構造
バリオン:3つのクォーク 強い相互作用で閉じこめられているカラー相互作用=グルーオン
RGB (赤緑青)でカラー中性
強い相互作用@低エネルギー結合定数が大きい もっと細かく見ると,右図の
ようにうじゃうじゃしている?
32
31
32
0 31
32
32
1
) ( ) (
ddunduup
15
陽子の構造,どうやって調べるか
光学顕微鏡
, 線 (同位体元素の崩壊)
電子顕微鏡
X線発生器放射光
電子ビーム重イオンビーム
電子・陽子衝突散乱 HERA
鳥インフルエンザウィルス
ミドリムシ
放射光の回折パターンRutherford 散乱の再現(Rutherford 研究所 )
核子のスピンを固定標的電子散乱で探る HERMES 実験
16
電子散乱でどうやって測るか
• クォークの縦方向の運動量は,散乱した電子の散乱角とエネルギーからわかる
• 散乱角が大きいほど,移行運動量 (Q2)が大きい– 短い波長 (l) の仮想光
子 (g*) で陽子を見たことになるつまり,よりよい解像度で見ている
散乱電子
散乱クォークからのハドロン
e+ / e beam
protonbeam
深非弾性散乱 (DIS)Deep-inelastic scattering
Q2
22 1
Q
カラー相互作用に伴うハドロン生成
点状粒子(電子)で直接クォークをたたく
17
固定標的実験での陽子構造測定
Increasing resolution (large Q2)
gluon splitsinto quarks
early fixed target exp’ts Q ~ 1-3 GeV (101 fm)
proton diameter~ 1015 m (1fm)
recent fixed target + muonQ ~ 1-10 GeV (102 fm)
22 1
Q
• Q2 が大きくなると波長が短くなる– 細かい内部構造
が見えてくる– グルーオンが
クォーク・半クォーク対に分解してできる「 Sea (海)クォーク」
18
HERA 実験までのクォーク分布
• 固定標的ではわからなかった,低い運動量比(小さい x )での構造は?
recent fixed target + muonQ ~ 1-10 GeV (102 fm)
HERAQ > 1-300 GeV (< 103 fm)
Courtesy C. Gwenlan, K. Nagano
Quarks emita gluon,which splitsinto quarks ...
Increasing resolution (large Q2)
Stru
ctur
e fu
nctio
n
qua
rk d
ensi
ty
19
衝突型電子・陽子衝突 HERA 実験
• 周長 6.3 km( 陽子・反陽子衝突型加速器Tevatron とほぼ同じ )
• 陽子ビーム : 920 GeV• ( 陽 ) 電子ビーム :
27.5 GeV 重心系エネルギー
( 構造を 10-18m= 陽子の大きさの 1/1000 まで見ることができる)
GeV 318s
20
ドイツ・ハンブルク市西の DESY 研究所
21
加速器:陽子(上段),電子の2階建て陽子を曲げる磁場は超伝導磁石
22
HERA での構造関数測定
• F2(x) = e2q
x(q(x)+q(x))– F2 はクォーク密度 q(x)
に比例 – x と Q2 の関数
• 海クォークが低い x に向けて急速に増えている
( )22 ,QxF x
22 1
Q
rest of the proton
scattered quark
クォークの陽子に対する運動量比
23
解像度を上げるとたくさんのクォークが見えてくる
• 海クォークがより高い Q2 で動的に作られている。
• この振る舞いは,理論的にDGLAP (Dokschitzer-Gribov-Lipatov-Altarelli-Parisi) 発展方程式により予言されていた。
Higher Q2
Higher Q2
p p
e
e'
g*
evol
utio
n
You cansee gluonsindirectly
Quark density decreasing at high-x with Q2
24
Q2 の関数でみたクォーク密度
• 構造関数が非常に精度よく求まっている• LHCへの準備が
できた• DGLAP方程式で予言
された,クォークとグルーオンの動的な生成が見て取れる– F2 の傾きから
グルーオン分布が求まる
large x
small x
25
クォーク,グルーオン密度決定の結果
• グルーオンは直接の測定ではないが, DGLAP 方程式を用いて精度よく決めることができた
• 低い x の領域ではグルーオンの量が圧倒的に多い
• HERA の測定で精度が飛躍的に上がった
BeforeHERA
26
グルーオンを直接測れないか?
先ほどの F2 の傾きを用いる方法は,理論をかなり仮定していた。 グルーオンを光子でなくクォークを介して「直接」たたく グルーオンの運動量:ジェットより逆算
Scattered e
Jet 1
Jet 2
27
ジェット生成の測定結果
ジェット生成の散乱断面積は,先ほど DGLAP で求めたグルーオン密度を用いたものとよく一致
LHC の主な過程はジェット生成:これでまた安心(たぶん)
LHC でもジェットでグルーオン密度を測れる
gluon densityfrom DGLAP
e を p にg が g に
衝突エネルギーとパートン衝突の確率
クォーク,グルーオンとも低い運動量でずっと多い 同じ質量のものを生成するなら,高エネルギー衝突が圧倒的に有利
28sxxxxm 2121 ),(
29
まとめ
陽子衝突 LHC では,新粒子は,クォーク,グルーオンの散乱から作られる
散乱過程の理論計算には 量子色力学 陽子のパートン密度が必要
パートン密度は電子・陽子散乱で測定した クォークの分布は非常に精度よく グルーオンもかなりの精度で
CERN 研究所
欧州 20カ国の国際研究機関 素粒子現象を加速器を用いて探求する研究所 スイス・ジュネーブ郊外,フランスとの国境にまたがる
運営 年間予算 1076 MCHF
(約 1000億 ) [2008] 職員数 2544 人 オブザーバー国:
日本、米国、ロシア、イスラエル、インド、トルコ、 EU、 UNESCO
利用者数 (2007 年末 ) 8369 人 ( うち非加盟国 2991 人,日本は 182 人 )
30
CERN 研究所(続き)
31
World Wide Web の発祥地CERN 計算機部門 (当時 ) の Tim Berners-Lee氏は、世界中に散らばっている実験チームのメンバーの研究者間で瞬時に同じ情報をアクセスするにはどうしたらよいか悩んだ末、 1990 年も年の暮れ近くに Web の発明に至った。
なぜ陽子加速器か周回加速器とシンクロトロン放射
周回加速器とは 荷電粒子を高周波の波に乗せて加速 磁場で曲げる
周回 → 一気に加速しなくてよい 荷電粒子を曲げる→シンクロトロン放射による損失 エネルギー損失 (1/R)(E/m)⁴
E: ビームエネルギー , m: 質量 , R: 半径 電子の質量は陽子の 1/2000
→ 同じ半径ならエネルギー損失 10¹³ 倍 LEP(100GeV) 以上では,陽子をぶつけるか (LHC) ,
電子をまっすぐ加速するか (ILC: International Linear Collider) ILC は技術開発中,現在の技術では陽子を回すのが最適解
32
LHC 加速器:超伝導技術の粋
超伝導双曲磁石 決まった半径でできるだけ
高いエネルギーに達するには磁場を強くするしかない
8.33T, 1232 台の双極磁石曲率半径 2.8km
超流動ヘリウム冷却 1.9K
線材: NbTi
33[m] :
[T] :GeV/c][ :
3.0
曲率半径磁場運動量
Bp
Bp
34
Two particles in a dipole field
34
Particle A
Particle B
Lets unfold these circles……
What happens with two particles that travel in a dipole field with different initial angles, but with equal initial position and equal momentum ?
Assume that Bρ is the same for both particles.
35
The 2 trajectories unfolded
Particle B oscillates around particle A. This type of oscillation forms the basis of all transverse
motion in an accelerator. It is called ‘Betatron Oscillation’
The horizontal displacement of particle B with respect to particle A.
Particle BParticle A
2p0
disp
lace
men
t
36
Quadrupole fields
Magnetic field
The ‘normalised gradient’, k is defined as: ( ) )( 2m
BK
On the x-axis (horizontal) the field is vertical and given by:
By x On the y-axis (vertical)
the field is horizontal and given by:
Bx y
The field gradient, K is defined as:
( )dxByd ( )1Tm
37
Types of quadrupoles
It focuses the beam horizontally and defocuses the beam vertically.
Force on particles
This is a:Focusing Quadrupole (QF)
Rotating this magnet by 90º will give a:Defocusing Quadrupole (QD)
38
FODO cell The ’FODO’ cell is defined as follows:
‘FODO’ cell
QF QD QF
Or like this……Centre of first QF
Centre of second QF
L1 L2
39
Solution of Hill’s equation (1)
ε and 0 are constants, which depend on the initial conditions.
(s) = the amplitude modulation due to the changing focusing strength.
(s) = the phase advance, which also depends on focusing strength.
2nd order differential equation. Guess a solution:
0)(2
2
xsKds
xd
( )0)(cos)(. ssx
40