日本のオープンデータを振り返る
クリエイティブ・コモンズ・ジャパンオープンデータ勉強会
渡辺智暁 2014.05.25 於: GLOCOM
前置き・ OD とは?・オープンとは?・ライセンスは何故必要か?
I. 状況と経緯
政策面2012.7. 「電子行政オープンデータ戦略」が
IT 戦略本部で採択される。(閣議決定と同じ重み)
2013.1. 安倍政権も早々にオープンデータへの支持を表明
2013.6. 「世界最先端 IT 国家創造宣言」でもオープンデータとビッグデータが主要な経済成長戦略のひとつとして位置づけられる。
2013.6. G8 オープンデータ憲章に署名
解説・立法がなく、時の政権の方針として実施し
ている。⇔ EU は 2003 年から Directive を採用している。 US は 2014 年に部分的に立法を実施。
・経済効果が期待されている。⇔透明性向上、行政高度化、政府の参加活性化などの目標
・現政権は前向き
制度面IT 戦略本部 →電子行政オープンデータ実務者会議http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/densi/ → WG (技術、利用・普及)事務局:内閣官房 IT 総合戦略室
※IT 戦略本部は首相 + 各大臣 + 有識者からなるトップレベル会議。
解説・行政全体におよぶ取り組み(全省庁がデータ
をオープン化することを期待される)・政治家の支援を受けやすいはず・内閣官房は、政府全体におよぶ取り組みの担
当として適任・一方で、内閣官房は各省庁を動かす力が弱い
との説がある・政府 CIO 制度が設けられ、推進力の弱さが改
善されるとの期待もある
関連する取り組み・経産省:オープンガバメントに 2010 年頃
から着手。 3 ・ 11 を受けてオープンデータに注力。
・総務省: 2012 年7月のオープンデータ流通推進コンソーシアム設立を支援。
・元来統計データの活用促進なども政策としては存在していた。地図・地理情報の活用促進も同様。
解説・国としての決定に先行して ICT 関連の 2 省
は動いていた。・情報活用を促進する取り組みは OD 以前に
もあった。
関連する取り組み(自治体)・鯖江市 2012 年 3 月からデータシティ・鯖江構想
・ 2013 年 2 月国際オープンデータ・デイ 日本からは 10都市が参加
・ 2014 年 2 月 32 の都市が参加
関連する取り組み(民間)・ NPO 法人リンクト・オープン・データ・イニシアティブ 2012 年
8 月http://linkedopendata.jp/・横浜オープンデータソリューション発展委員会 2012 年 12 月http://yokohamaopendata.jp/・一般社団法人オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン
2013 年 11 月(活動開始は 2012 年 4 月、公のキックオフは同年 7 月)
・ Where Does My Money Go Japan・ Code for Japan・ Open Corporate Japanなど関連団体が多く立ち上がる
解説・行政はデータのオープン化に慎重- 間違っているかも知れない- 誤解を与えるかも知れない- 責任を負わされるかも知れない- 望ましくない使い方をされるかも知れない- 改変され、詐欺に使われるかも知れない- 政府の権威や信用を悪用されるかも知れない…さまざまな懸念がある。
解説・政治のトップ、利用者コミュニティ、利用
の印象的な事例、経済効果推計、などは行政を後押しする効果を持つ。
・鯖江は政治のトップと利用者が出会ってオープンデータが始まっている
・自治体はトップの決断が早いので世界的に見ても OD の先駆例をつくることが多い
II. ライセンシング
2種類の利用条件1. ODポータル用2.政府サイト全般用
ODポータル・ベータ版・ 12 月にローンチ・ 4 月に閉鎖・ 5 月 16 日に再開・メタデータ、データ共に原則 CC-BY 2.1 JP・重点 5 分野の公開済みデータを登録、メタ
データとライセンスを付与
政府サイト全般・近々利用条件を一斉変更・「標準利用規約 1.0 」を採用・オプトアウトは可能
標準利用規約・禁止されている利用- 法令に反する利用- 公序良俗に反する利用- 国家・国民の安全に脅威を与える利用・クレジット表記関連の規定- 編集・加工を行ったことを明記する- 編集・加工したものを国が作成したかのような態様で利用することは禁止
OKFJ の評価 on 標準利用規約・著作物でないデータにも制約導入・互換性・曖昧さ -萎縮効果・国際的には悪い「お手本」
・大きな進歩・ CC より読みやすい
解説・日本のオープンデータは、これまで非公開だったデータのオープン化は実質していない。
→既存のデータユーザは大きな収穫がない可能性※日本は主要なデータは既に公開済みなの
でこれが適当という説もある・政府内で既に互換性問題を発生させている。
解説:互換性Q. データ A とデータ B を組み合わせて利用できるか? -利用互換性・その際にどちらかのライセンスのみに従えばいいか?(片側互換性)・その際にどちらのライセンスでも一方だけ従えばいいか?(両側互換性)・両方のライセンスに従う必要があるか?(部分互換性)・そもそも利用できないか?(非互換)
Q. 両者を組み合わせた結果を、さらに他の人に提供できるか?その際の利用条件は? -提供互換性
・どちらかのライセンスに設定できるか?(片側互換性)・どちらのライセンスにでも設定できるか?(両側互換性)・両方のライセンスの全条件を継承するか?(部分互換性)・そもそも不可能か?(非互換)
※理論的整理に乏しい領域なので全て私見
解説:互換性例:CC-BY-2.1 JP で提供されている本と、標準利用規約で提供されている政府文書を組み合わせ利用する場合は?
利用面の互換性→CC BY にだけ従って「公序良俗に反した利用」をしていいということはな
い。標準利用規約にだけ従って「技術的保護手段」を使っていいということもない。両方を遵守する必要アリ。
※両方の遵守は基本的に可能= 部分互換性
提供面の互換性→ どちらのライセンスも遵守するなら、第三者も利用可能。 = 部分互換性なお、 CC-BY作品に由来する部分だけを抽出して使いたい人は CC-BY さえ守
ればいい。(実際に判断は難しいとしても)政府文書のみの利用なら標準利用規約だけ守ればいいはず。
データオープン化の実務課題・権利(者)の錯綜 第三者権利物が入っているが、どこにあるかは判然としな
い場合もある。・著作者不明のデータ;権利処理コスト 許諾取得が不可能または高コスト 著作者が不明、連絡先が不明、等・著作物性の不明瞭事例 著作物性のなさそうなデータにライセンス情報を表示する
と、著作物だと誤解される。 ライセンス情報を表示しないと、萎縮する利用者も・大量一括ライセンシング 多種多様、多数のデータを一挙にライセンス
課題への対応ぶり・権利(者)の錯綜→ 一般的な注意喚起。第三者権利物の特定はしない・著作者不明のデータ;権利処理コスト→断念。今後は契約中に権利譲渡などを盛り込むこ
とで対応・著作物性の不明瞭事例→ 全てライセンス情報を表示・大量一括ライセンシング→ 以上のやや粗いやり方で実現
その他の課題・裁判管轄と準拠法→東京地裁と日本法・賠償責任→ 国家賠償法による制限
今後の課題・政府の契約文書にオープン化を想定した権
利処理の文言を導入する・ ODポータルのライセンスと、政府標準利
用規約とがズレる。・ CC4.0 や CC0 も採用する ?
本資料のライセンスこの資料を 3 種類のライセンスで提供し、利用者が選べるようにするために、利用許諾に関
する注意書きを以下に記し ます。・ この資料は、 CC-BY 2.1 JP (http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ ) でライセンスされ
ています。・ この資料は、 CC-BY-SA 2.1 JP (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.1/jp/ ) でライセンス
されています。・この資料は、 CC-BY 4.0 (http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/ ) でライセンスされていま
す。
なお参考までに、本作品のタイトルは「日本のオープンデータを振り返る」 で、原著作者と許諾者は渡辺智暁です。本作 品に係る著作権表示はなく、免責に関する注意書きもなく、許諾者が本作品に添付するよう 指定した URI もありません。
そこで、例えば、CC-BY ライセンスで要求されるクレジット等の表示の義務を満たすには、次のような類の表示をすればよいということになります:
「日本のオープンデータを振り返る」 by 渡辺智暁 この資料は、 CC-BY 2.1 JP (http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/ ) でライセンスされて
います。