Download - 梅毒検査試験と、梅毒トレポネーマ菌体または菌体成分を抗原とする Treponema pallidum(以下TP)抗原試験 の2つに大別される(表1)。(1)脂質抗原試験(STS)法
AiCCLSAiCCLS
第1期梅毒
暴 露
第2期梅毒
第3期梅毒
早期潜伏梅毒(感染後1年以内)
後期潜伏梅毒(感染後1年以上)
心血管梅毒10%
(感染後20~30年)
ゴム腫15%
(感染後1~46年)
第3期梅毒
進行麻痺2~5%
(感染後2~30年)
脊髄癆2~9%
(感染後3~50年)
早期神経梅毒
無症候性
中枢神経浸潤25~60%
潜伏期間(10~90日)
感染力あり(性行為感染
または母子感染)
感染力あり(母子感染)
感染力なし
潜伏期間(4~10週間)
24%再発
症候性5%
髄膜炎脳神経炎眼症状
髄膜血管梅毒
後期神経梅毒
Aichi Committee for Clinical Laboratory StandardizationAichi Committee for Clinical Laboratory Standardization2019.8. Ver.1
図2. 免疫応答正常者における梅毒の自然経過(参考文献3より改変)
1)
2)3)
4)
5)6)7)8)
「梅毒とは」国立感染症研究所ホームページhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/465-syphilis-info.html性感染症診断・治療ガイドライン2016, 日本性感染症学会誌, 2016;27(1):48-52Golden MR et al.: “Update on Syphilis Resurgence of an Old Problem”, JAMA, 2003; 290(11):1510-1514日本性感染症学会梅毒委員会梅毒診療ガイド作成小委員会:梅毒診療ガイド, 2018山根誠久, 臨床検査ひとくちメモ, モダンメディア, 2010;56(2):32-35津上久弥:「梅毒血清反応検査と治癒判定の問題」, 皮膚, 1982;24:11-18.高橋朋子, 菅原孝雄:「梅毒トレポネーマ」, 日本臨床, 1995;53増刊号:216-220.厚生労働省, 性感染症報告数の年次推移https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0411-1.html (2019年5月15日参照)
参考文献参考文献
発行者発行者
梅毒の病原体は梅毒トレポネーマ(学名:Treponema pallidum subsp. pallidum)という螺旋状菌である。通 常 の 明 視 野 光 学 顕 微 鏡 では 観 察されず 、暗 視 野 顕 微 鏡 で 青 い 色 彩を放 つことからpallidumの種名が与えられている1)。梅毒は世界中に広く分布しており、一般的に皮膚や粘膜の小さな傷から梅毒トレポネーマが侵入することによって感染する。感染経路の大部分は、菌を排出している感染者との粘膜の接触を伴う性行為や疑似性行為によるものである。 感染数時間後、血行性に全身に散布されて様々な症状を引き起こし、全身性の慢性感染症となる。胎児が母体内で胎盤を通して感染したものを先天性梅毒、それ以外を後天性梅毒と呼ぶ2)。皮膚、粘膜の発疹や臓器梅毒の症状を呈する顕症梅毒と、症状は認められないが梅毒血清反応が陽性である無症候梅毒とに分けられる2)。
梅毒の自然経過概要梅毒の自然経過概要
愛知県臨床検査標準化協議会(AiCCLS) 免疫血清検査部門愛知県臨床検査標準化協議会(AiCCLS) 免疫血清検査部門問い合わせ先問い合わせ先 公益社団法人 愛知県臨床検査技師会事務所内 愛知県臨床検査標準化協議会事務局
〒450-0002 名古屋市中村区名駅五丁目16番17号 花車ビル南館1階公益社団法人 愛知県臨床検査技師会事務所内 愛知県臨床検査標準化協議会事務局〒450-0002 名古屋市中村区名駅五丁目16番17号 花車ビル南館1階Tel. 052-581-1013 Fax. 052-586-5680Tel. 052-581-1013 Fax. 052-586-5680
ⅡⅡ
ⅥⅥ
ⅤⅤ
梅毒の病原体梅毒の病原体
愛知県臨床検査標準化協議会 leaflet “梅毒検査”愛知県臨床検査標準化協議会 leaflet “梅毒検査”
ⅠⅠ 梅毒は1960年代半ばには日本も含め、世界的な再流行が見られた。日本においては1987年をピークとする流行の後、報告数は減少傾向であったが、近年再び増加傾向にある
(図5)。梅毒の感染報告数は2012年の875人から2017年の5,826人へと、この5年間で約6.7倍に増加している。これを受けて、厚生労働省では検査や受診をすすめるポスターやリーフレットを作成し啓発活動を行なっている。
梅毒は、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)によって5類感染症に定められている。全数把握対象疾患に指定されているため、全例を7日以内に最寄りの保健所へ届け出ることが義務付けられている。届出基準には血清抗体の検出について記載があり、CLを抗原とする検査とTPを抗原とする検査の両方で抗体を検出し、かつCLを抗原とする検査では16倍以上又はそれに相当する抗体価を保有することが診断の1つの条件とされている。
梅毒は感染後3~6週間程度の潜伏期を経て、経時的に様々な症状が逐次出現する。その間症状が軽快する時期があり治療開始が遅れることにつながる。近年では複雑な進行形態をとる慢性感染症と考えられるようになってきている(図2)。
感染症法の届出について感染症法の届出について
近年の梅毒の発生状況近年の梅毒の発生状況 梅毒検査梅毒検査報告数(人)
年
梅毒報告数の年次推移
図5. 梅毒報告数の男女別年次推移(2018年は暫定値)(参考文献8より作成)
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
0
総数 男性 女性
図1. 梅毒トレポネーマの電子顕微鏡像(ネガティブ染色)(参考文献1より引用)
梅毒検査リーフレット 表紙(p1-p4) 2019/8/26
Aichi Committee for Clinical Laboratory StandardizationAichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
図4. 梅毒抗体価の推移 (参考文献6より改変)
図3. 梅毒を疑う患者への検査フローチャート(参考文献4より作成)
ⅢⅢ▶梅毒診療ガイドでは、STSとTP抗体を同時に
測定することが推奨されている(自動化法推奨)。
▶STS陽性でTP抗体が陰性の場合は、FTA-ABSで最終確認をする(表2)。また、感染初期の場合もあるため感染の疑いが強い症例には3~4週間後に再度検査を行い、感染初期の梅毒かBFPかの判定を下す必要がある。
▶梅毒関連抗体は、TPに感染後約1週間でまずTPに対するIgM抗体(FTA-ABS IgM)が産生され、続いて脂質抗原に対するIgM抗体、IgG抗体、最後にTPに対するIgG抗体が産生される(図4)。
※2018年策定の梅毒診療ガイドには、RPRが梅毒の活動性を示すことに異論はないが、近年、RPR陰性で梅毒トレポネーマ抗体のみ陽性の早期梅毒の報告が増えてきたので、梅毒の診断には特異性の高いTP抗体の陽性を重視すべきである、との記載がある4)。このことから、従来ではSTS(-)、TP(+)の場合、梅毒の既往・治療後であると考えられてきたが、梅毒の感染初期の可能性も否定できない。
梅毒の検査法は、血清学的検査と病原体検出がある。しかし、病原体検出は検体採取に習熟していないと検出感度がよくないことや、梅毒トレポネーマPCRが保険未収載(2018年5月時点)であり国立感染症研究所等の一部施設で試験的に行われているものであるため、血清学的検査の方が現実的となっている4)。
【血清学的検査】 梅毒血清反応には、カルジオリピン(以下CL)、レシチン(以下Lec)のリン脂質を抗原とする脂質抗原試験と、梅毒トレポネーマ菌体または菌体成分を抗原とするTreponema pallidum(以下TP)抗原試験の2つに大別される(表1)。
(1)脂質抗原試験(STS)法 脂質抗原試験は、通常serological tests for syphilis(以下STS)と呼ばれ、狭義の梅毒血清反応である。梅毒感染による組織破壊に伴って自己抗原が認識されることで産生される一種の自己抗体を検出する方法で、rapid plasma reagin test(以下RPR)が該当する5)。CL、Lec等を抗原とし、梅毒に対しては非特異的だが、鋭敏度が高くスクリーニングに優れており、治療経過の観察に有用とされている。また 、梅 毒 感 染 以 外 で C Lを抗 原とする抗 体 検 査 法 が 陽 性 になることを、生 物 学 的 偽 陽 性
(biological false positive : BFP)という。
(2)TP抗原法 TP抗原法は梅毒病原体であるTPに対する抗体を検出する方法で、TP抗体検査とも表記される。梅毒に対する特異性が極めて高いので、確認試験として梅毒の診断には有用であるが、治療の適応あるいは治療効果の判定などには不適当である6)。その理由は、梅毒抗体価が一度一定以上まで上昇してしまうと有効治療が加えられても容易に抗体価の低下がみられず、また半永久的に陽性を持続するためである。特異性が高い一方で、梅毒以外の疾患でも陽性反応を呈することがあり、歯槽膿漏(口腔トレポネーマ)やトレポネーマによる結膜炎、熱帯性トレポネーマ症、伝染性単核症などではTP抗原法で偽陽性反応を呈する恐れがある7)。 fluorescent treponemal antibody-absorption test(以下FTA-ABS)はTP抗原法に含まれ、TPを用いた間接蛍光抗体法であり、特異度が高く鋭敏で他のTP抗原法よりも陽転化が早いことから梅毒の最終確認法として推奨されている7)。FTA-ABSについても、SLE患者では患者血清中に存在する抗核抗体が原因で偽陽性反応を呈することがあるため注意が必要である7)。 TP抗原法は抗原抗体反応を利用しているため偽陽性を呈することがある。検査で陽性となった際、原理の異なる測定法にて再検査を行うことが有用となることがある。例えば、ラテックス凝集法
(TPLA)で陽性であった場合、確認用としてイムノクロマト法(IC)で再検を実施することなどが挙げられる。また、試薬メーカーによっては中和試験用の試薬を販売しているものもあり、これらによって確認することが可能となっている。
検査法 検出対象 抗原の組成 特 徴
表2. 梅毒血清反応の結果と解釈表2. 梅毒血清反応の結果と解釈
生物学的偽陽性(BFP)がある鋭敏度が高くスクリーニングに適する治療経過の観察が可能
CL、Lec、コレステロール、炭素粒子
STS法(RPRなど)
抗脂質抗体を検出
梅毒に対する特異性が高い治療効果判定には不向き
TP菌体成分(FTA-ABSはTP菌体)
TP抗原法(TPLAなど)
TP抗体を検出
抗体価
月1ヶ月
感染 治療 治療期間
TP抗体-IgG
CL抗体-IgG
CL抗体-IgMTP抗体-IgM
2ヶ月 3ヶ月
STS TP抗体 FTA-ABS 結果の解釈
(-) (-)
(-)
(+)(-)
(+)
(+) (+)(+) (-)(+) (-)
非梅毒(検査不要)梅毒感染のごく初期(稀)
必要に応じて実施 梅毒の既往・治癒後TP抗原系の偽陽性(ごく稀)※梅毒感染初期
梅毒感染(検査不要)
梅毒感染初期
生物学的偽陽性(BFP)
非梅毒の可能性が高い
STSとTP抗体検査を実施
STS(+)or
TP抗体(+)STS(-)and
TP抗体(-)
活動性梅毒と判断した場合は治療
検診やルーチン検査でTP抗体陽性
病歴確認(感染機会・治療歴)やTP抗体・RPRの値の推移を検討
梅毒の検査梅毒の検査 ⅣⅣ 梅毒血清検査の流れと結果の解釈梅毒血清検査の流れと結果の解釈
表1. 梅毒血清学的検査の種類と特徴表1. 梅毒血清学的検査の種類と特徴
梅毒検査リーフレット 中面(p2-p3) 2019/8/26
Aichi Committee for Clinical Laboratory StandardizationAichi Committee for Clinical Laboratory Standardization
図4. 梅毒抗体価の推移 (参考文献6より改変)
図3. 梅毒を疑う患者への検査フローチャート(参考文献4より作成)
ⅢⅢ▶梅毒診療ガイドでは、STSとTP抗体を同時に
測定することが推奨されている(自動化法推奨)。
▶STS陽性でTP抗体が陰性の場合は、FTA-ABSで最終確認をする(表2)。また、感染初期の場合もあるため感染の疑いが強い症例には3~4週間後に再度検査を行い、感染初期の梅毒かBFPかの判定を下す必要がある。
▶梅毒関連抗体は、TPに感染後約1週間でまずTPに対するIgM抗体(FTA-ABS IgM)が産生され、続いて脂質抗原に対するIgM抗体、IgG抗体、最後にTPに対するIgG抗体が産生される(図4)。
※2018年策定の梅毒診療ガイドには、RPRが梅毒の活動性を示すことに異論はないが、近年、RPR陰性で梅毒トレポネーマ抗体のみ陽性の早期梅毒の報告が増えてきたので、梅毒の診断には特異性の高いTP抗体の陽性を重視すべきである、との記載がある4)。このことから、従来ではSTS(-)、TP(+)の場合、梅毒の既往・治療後であると考えられてきたが、梅毒の感染初期の可能性も否定できない。
梅毒の検査法は、血清学的検査と病原体検出がある。しかし、病原体検出は検体採取に習熟していないと検出感度がよくないことや、梅毒トレポネーマPCRが保険未収載(2018年5月時点)であり国立感染症研究所等の一部施設で試験的に行われているものであるため、血清学的検査の方が現実的となっている4)。
【血清学的検査】 梅毒血清反応には、カルジオリピン(以下CL)、レシチン(以下Lec)のリン脂質を抗原とする脂質抗原試験と、梅毒トレポネーマ菌体または菌体成分を抗原とするTreponema pallidum(以下TP)抗原試験の2つに大別される(表1)。
(1)脂質抗原試験(STS)法 脂質抗原試験は、通常serological tests for syphilis(以下STS)と呼ばれ、狭義の梅毒血清反応である。梅毒感染による組織破壊に伴って自己抗原が認識されることで産生される一種の自己抗体を検出する方法で、rapid plasma reagin test(以下RPR)が該当する5)。CL、Lec等を抗原とし、梅毒に対しては非特異的だが、鋭敏度が高くスクリーニングに優れており、治療経過の観察に有用とされている。また 、梅 毒 感 染 以 外 で C Lを抗 原とする抗 体 検 査 法 が 陽 性 になることを、生 物 学 的 偽 陽 性
(biological false positive : BFP)という。
(2)TP抗原法 TP抗原法は梅毒病原体であるTPに対する抗体を検出する方法で、TP抗体検査とも表記される。梅毒に対する特異性が極めて高いので、確認試験として梅毒の診断には有用であるが、治療の適応あるいは治療効果の判定などには不適当である6)。その理由は、梅毒抗体価が一度一定以上まで上昇してしまうと有効治療が加えられても容易に抗体価の低下がみられず、また半永久的に陽性を持続するためである。特異性が高い一方で、梅毒以外の疾患でも陽性反応を呈することがあり、歯槽膿漏(口腔トレポネーマ)やトレポネーマによる結膜炎、熱帯性トレポネーマ症、伝染性単核症などではTP抗原法で偽陽性反応を呈する恐れがある7)。 fluorescent treponemal antibody-absorption test(以下FTA-ABS)はTP抗原法に含まれ、TPを用いた間接蛍光抗体法であり、特異度が高く鋭敏で他のTP抗原法よりも陽転化が早いことから梅毒の最終確認法として推奨されている7)。FTA-ABSについても、SLE患者では患者血清中に存在する抗核抗体が原因で偽陽性反応を呈することがあるため注意が必要である7)。 TP抗原法は抗原抗体反応を利用しているため偽陽性を呈することがある。検査で陽性となった際、原理の異なる測定法にて再検査を行うことが有用となることがある。例えば、ラテックス凝集法
(TPLA)で陽性であった場合、確認用としてイムノクロマト法(IC)で再検を実施することなどが挙げられる。また、試薬メーカーによっては中和試験用の試薬を販売しているものもあり、これらによって確認することが可能となっている。
検査法 検出対象 抗原の組成 特 徴
表2. 梅毒血清反応の結果と解釈表2. 梅毒血清反応の結果と解釈
生物学的偽陽性(BFP)がある鋭敏度が高くスクリーニングに適する治療経過の観察が可能
CL、Lec、コレステロール、炭素粒子
STS法(RPRなど)
抗脂質抗体を検出
梅毒に対する特異性が高い治療効果判定には不向き
TP菌体成分(FTA-ABSはTP菌体)
TP抗原法(TPLAなど)
TP抗体を検出
抗体価
月1ヶ月
感染 治療 治療期間
TP抗体-IgG
CL抗体-IgG
CL抗体-IgMTP抗体-IgM
2ヶ月 3ヶ月
STS TP抗体 FTA-ABS 結果の解釈
(-) (-)
(-)
(+)(-)
(+)
(+) (+)(+) (-)(+) (-)
非梅毒(検査不要)梅毒感染のごく初期(稀)
必要に応じて実施 梅毒の既往・治癒後TP抗原系の偽陽性(ごく稀)※梅毒感染初期
梅毒感染(検査不要)
梅毒感染初期
生物学的偽陽性(BFP)
非梅毒の可能性が高い
STSとTP抗体検査を実施
STS(+)or
TP抗体(+)STS(-)and
TP抗体(-)
活動性梅毒と判断した場合は治療
検診やルーチン検査でTP抗体陽性
病歴確認(感染機会・治療歴)やTP抗体・RPRの値の推移を検討
梅毒の検査梅毒の検査 ⅣⅣ 梅毒血清検査の流れと結果の解釈梅毒血清検査の流れと結果の解釈
表1. 梅毒血清学的検査の種類と特徴表1. 梅毒血清学的検査の種類と特徴
梅毒検査リーフレット 中面(p2-p3) 2019/8/26
AiCCLSAiCCLS
第1期梅毒
暴 露
第2期梅毒
第3期梅毒
早期潜伏梅毒(感染後1年以内)
後期潜伏梅毒(感染後1年以上)
心血管梅毒10%
(感染後20~30年)
ゴム腫15%
(感染後1~46年)
第3期梅毒
進行麻痺2~5%
(感染後2~30年)
脊髄癆2~9%
(感染後3~50年)
早期神経梅毒
無症候性
中枢神経浸潤25~60%
潜伏期間(10~90日)
感染力あり(性行為感染
または母子感染)
感染力あり(母子感染)
感染力なし
潜伏期間(4~10週間)
24%再発
症候性5%
髄膜炎脳神経炎眼症状
髄膜血管梅毒
後期神経梅毒
Aichi Committee for Clinical Laboratory StandardizationAichi Committee for Clinical Laboratory Standardization2019.8. Ver.1
図2. 免疫応答正常者における梅毒の自然経過(参考文献3より改変)
1)
2)3)
4)
5)6)7)8)
「梅毒とは」国立感染症研究所ホームページhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/465-syphilis-info.html性感染症診断・治療ガイドライン2016, 日本性感染症学会誌, 2016;27(1):48-52Golden MR et al.: “Update on Syphilis Resurgence of an Old Problem”, JAMA, 2003; 290(11):1510-1514日本性感染症学会梅毒委員会梅毒診療ガイド作成小委員会:梅毒診療ガイド, 2018山根誠久, 臨床検査ひとくちメモ, モダンメディア, 2010;56(2):32-35津上久弥:「梅毒血清反応検査と治癒判定の問題」, 皮膚, 1982;24:11-18.高橋朋子, 菅原孝雄:「梅毒トレポネーマ」, 日本臨床, 1995;53増刊号:216-220.厚生労働省, 性感染症報告数の年次推移https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/04/tp0411-1.html (2019年5月15日参照)
参考文献参考文献
発行者発行者
梅毒の病原体は梅毒トレポネーマ(学名:Treponema pallidum subsp. pallidum)という螺旋状菌である。通 常 の 明 視 野 光 学 顕 微 鏡 では 観 察されず 、暗 視 野 顕 微 鏡 で 青 い 色 彩を放 つことからpallidumの種名が与えられている1)。梅毒は世界中に広く分布しており、一般的に皮膚や粘膜の小さな傷から梅毒トレポネーマが侵入することによって感染する。感染経路の大部分は、菌を排出している感染者との粘膜の接触を伴う性行為や疑似性行為によるものである。 感染数時間後、血行性に全身に散布されて様々な症状を引き起こし、全身性の慢性感染症となる。胎児が母体内で胎盤を通して感染したものを先天性梅毒、それ以外を後天性梅毒と呼ぶ2)。皮膚、粘膜の発疹や臓器梅毒の症状を呈する顕症梅毒と、症状は認められないが梅毒血清反応が陽性である無症候梅毒とに分けられる2)。
梅毒の自然経過概要梅毒の自然経過概要
愛知県臨床検査標準化協議会(AiCCLS) 免疫血清検査部門愛知県臨床検査標準化協議会(AiCCLS) 免疫血清検査部門問い合わせ先問い合わせ先 公益社団法人 愛知県臨床検査技師会事務所内 愛知県臨床検査標準化協議会事務局
〒450-0002 名古屋市中村区名駅五丁目16番17号 花車ビル南館1階公益社団法人 愛知県臨床検査技師会事務所内 愛知県臨床検査標準化協議会事務局〒450-0002 名古屋市中村区名駅五丁目16番17号 花車ビル南館1階Tel. 052-581-1013 Fax. 052-586-5680Tel. 052-581-1013 Fax. 052-586-5680
ⅡⅡ
ⅥⅥ
ⅤⅤ
梅毒の病原体梅毒の病原体
愛知県臨床検査標準化協議会 leaflet “梅毒検査”愛知県臨床検査標準化協議会 leaflet “梅毒検査”
ⅠⅠ 梅毒は1960年代半ばには日本も含め、世界的な再流行が見られた。日本においては1987年をピークとする流行の後、報告数は減少傾向であったが、近年再び増加傾向にある
(図5)。梅毒の感染報告数は2012年の875人から2017年の5,826人へと、この5年間で約6.7倍に増加している。これを受けて、厚生労働省では検査や受診をすすめるポスターやリーフレットを作成し啓発活動を行なっている。
梅毒は、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)によって5類感染症に定められている。全数把握対象疾患に指定されているため、全例を7日以内に最寄りの保健所へ届け出ることが義務付けられている。届出基準には血清抗体の検出について記載があり、CLを抗原とする検査とTPを抗原とする検査の両方で抗体を検出し、かつCLを抗原とする検査では16倍以上又はそれに相当する抗体価を保有することが診断の1つの条件とされている。
梅毒は感染後3~6週間程度の潜伏期を経て、経時的に様々な症状が逐次出現する。その間症状が軽快する時期があり治療開始が遅れることにつながる。近年では複雑な進行形態をとる慢性感染症と考えられるようになってきている(図2)。
感染症法の届出について感染症法の届出について
近年の梅毒の発生状況近年の梅毒の発生状況 梅毒検査梅毒検査報告数(人)
年
梅毒報告数の年次推移
図5. 梅毒報告数の男女別年次推移(2018年は暫定値)(参考文献8より作成)
8000
7000
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2006
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2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
0
総数 男性 女性
図1. 梅毒トレポネーマの電子顕微鏡像(ネガティブ染色)(参考文献1より引用)
梅毒検査リーフレット 表紙(p1-p4) 2019/8/26