Download - 高齢者の都市施設利用とQ.O.L.に関する研究
Department of Architecture,School of Science and Engineering, Waseda University
早稲田大学理工学部建築学科卒業論文 指導教授 渡辺仁史
高齢者の都市施設利用とQ.O.L. に関する研究
Correlation of senior citizen’s city facilities availability and quality of life(Q.O.L.) scales
U0807
田名網 祐
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
はじめに
今年の夏、私は小笠原を訪れる機会があった。人生で4回目の小笠原への旅行であった。
東京から航路で約25時間。同じ東京都という括りでありながら、果てしなく遠く感じる船旅である。
東洋のガラパゴスとも比喩される小笠原。地球上のすべての自然が集まったかのような、美しい島である。極限まで透きとおり、吸い込まれるような海の青さ。美しい海と共生する野生のイルカやクジラたち。
そこには無限の「美」が存在している。
研究のことを頭の片隅に置きながら観光をしていると、ふと気づいたことがあった。この島には高齢者が少ない。あまりにも違和感を感じるほど高齢者が少ない。
この島は高齢者にとって非常に住みにくい島なのである。病院は医療機関と呼ぶに似つかわしくない設備しかなく、医師もいない。重病人が出たときは、航空自衛隊のヘリを使わなければならない。若年層は島を離れ、孤独になる高齢者たち。「安心」を求めて高齢者も本土へと移住する。
どんなに自然に満ちあふれていても、どんなに自然と共生したいと思っても、そこに住む「人間」が暮らしにくいと感じてしまっては、みな敬遠してしまう。
「人間」にとって生活しやすい環境を得るために、「人間」が健康でいつづけられるために。
今、自分に出来ることをしようと、この研究は始まった。
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
Correlation of senior citizen's city facilities availability and quality of life(Q.O.L.) scales
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
目次
第1章 序論 1-1 研究目的 7 1-2 既往研究 8 1-3 語句の定義 9 1-4 研究概要 10
第2章 研究背景 2-1 日本の高齢化率の推移 12 2-2 高齢者の生活環境 13
2-3 WHO健康都市の取り組み 14
第3章 研究方法 3-1 研究フロー 16
3-2 Q.O.L の調査方法 17 3-2-1 Q.O.L SF-36 について 17 3-2-2 SF-36 を構成する主要概念と下位尺度 17 3-2-3 計量心理学的評価 18 3-2-4 SF-36 のスコアリング法 19 3-2-5 国民標準値に基づくスコアリング法 20
3-3 施設利用頻度の調査方法 21
3-4 アンケート配布・回収方法 22
3-5 アンケート内容(縮小版) 23
3-6 調査地選定方法 26
3-7 調査日程 27
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第4章 調査結果 4-1 都市別にみたQ.O.L の得点 35 4-1-1 Q.O.L 総合得点 35 4-1-2 全体的健康感 得点 36 4-1-3 身体機能 得点 37 4-1-4 日常役割機能(身体) 得点 38 4-1-5 体の痛み 得点 39 4-1-6 活力 得点 40 4-1-7 社会生活機能 得点 41 4-1-8 日常役割機能(精神) 得点 42 4-1-9 心の健康 得点 43
4-2 国民標準値でみるQ.O.L 45 4-2-1 都市の比較 45 4-2-2 群馬県南牧村 46 4-2-3 群馬県上野村 47 4-2-4 長野県売木村 48 4-2-5 東京都小笠原村 49 4-2-6 新潟県新潟市 50 4-2-7 北海道伊達市 51 4-3 世代ごとのQ.O.L 52 4-4 都市施設の利用頻度 53 4-4-1 群馬県上野村 53 4-4-2 群馬県南牧村 54 4-4-3 長野県売木村 55 4-4-4 北海道伊達市 56 4-4-5 新潟県新潟市 57 4-4-6 特徴的な施設の利用頻度 58 4-5 都市施設の利便性 59 4-5-1 群馬県南牧村 59 4-5-2 群馬県上野村 60 4-5-3 長野県売木村 61 4-5-4 北海道伊達市 62 4-5-5 新潟県新潟市 63 4-5-6 利便性の地域比較 64
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ 5-1 都市施設の利用頻度と利便性の相関 66 5-1-1 南牧村 66 5-1-2 上野村 67 5-1-3 売木村 68 5-1-4 伊達市 69 5-1-5 新潟市 70 5-1-6 都市施設の利用頻度と利便性の相関 71
5-2 都市施設の利用頻度とQ.O.L の相関 72 5-2-1 説明変数の抽出 72 5-2-2 目的変数の抽出 73 5-2-3 重回帰分析1 Q.O.L と都市施設の利用頻度の相関 74 5-2-4 重回帰分析2 身体機能と都市施設の利用頻度の相関 75 5-2-5 重回帰分析 3 日常役割機能(身体)と都市施設の利用頻度の相関 76 5-2-6 重回帰分析4 体の痛みと都市施設の利用頻度の相関 77 5-2-7 重回帰分析5 社会生活機能と都市施設の利用頻度の相関 78 5-2-4 重回帰分析6 日常役割機能(精神)と都市施設の利用頻度の相関 79 5-2-9 都市施設の利用頻度とQ.O.L の相関 80
第6章 まとめ・展望 6-1 まとめ 83
6-2 展望 84
終わりに参考文献注釈資料編
第1章 序論
1-1 研究目的1-2 既往研究1-3 語句の定義1-4 研究概要
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第 1章 序論
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第 1 章 序論1-1 研究目的日本各地の高齢化率の進んだ地域での高齢者を対象とした調査を基に、高齢者のQ.O.L と都市施設の利用頻度の相関を明らかにし、モデルの作成を行う。
地方都市においては、その地域特有の施設や、生活に必要な施設であるにも関わらず整備のされていない施設があるなどそれぞれ特徴があるといえる。この様な施設が高齢者のQ.O.L に深く関わっていると考えられる。
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第 1章 序論
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1-2 既往研究三宮ら文1)の研究では、地方都市における高齢者の地域生活行動として街歩きに注目し、その実態から地域生活での意義を探り、Q.O.L の維持・向上にむけた福祉のまちづくりにおける今後の計画課題の提起を行っている。高齢者の街歩きは、街中に身を投じ、なじみの人や場所、自然と関わりをもつことで地域生活を実感し、地域の生活者として自身の存在を確認するための行動といえ、すなわち、地域生活のQ.O.L 向上に関わる意義のある行動といえることが証明されている。また、街歩きに関係の深い地域生活行動として、「日常的な買い物」「銀行や郵便局」「散歩」「文化活動 ( 稽古事や習い事 )」「会話・交際」といったものが挙げられている。このように、高齢期のQ.O.L は外出行動が少なくなるために、過ごす時間の長くなる住環境と結びつけて考えられることが多い(図 1-1)。しかし、外出そのものが減ることによってQ.O.L そのものを低減させると考えられる。身体能力の低下に伴って、行動範囲が狭くなることは避けられない問題であるが、都市環境の整備状況によってはQ.O.L が長く保たれる、あるいは向上する可能性がある。本研究では外出目的に着目するのではなく、外出先の施設に着目した。日常生活に欠かせない施設に対する、高齢者の利用頻度やその施設までの利便性を都市毎に明らかにし、高齢者のQ.O.L にどのように関わっているのかを明らかにする。日常生活を送ることにより高齢者のQ.O.L が向上する都市があるのならば、とても魅力的な都市であるといえるだろう。
文1)三宮基裕 他/地方都市
における高齢者の街歩きの意
義と福祉のまちづくりに向け
た今後の課題 高齢期におけ
る地域生活行動に関する研究
その2/日本建築学会学術
講演梗概集 . E-2, 建築計画 II,
住居・住宅地 , 農村計画 , 教
育 2007, p73-p74
文 2) 堀 敦志 他 / 介護予防を
目的とした高齢者の住環境と
ADL・QOLの関係に関する
調査研究 /日本建築学会計画
系論文集 (620) p.1-p.7
文 3) 朴 貞淑 他 / 在宅福祉
ニーズにおける在宅支援に
関する研究 (I) : 岡山県を事
例として ( 建築計画 )/ 日本
建築学会技術報告集 No.23
p.285-p.288
文 4) 小澤純一 他 / 居住環境
評価からみた高齢脳卒中患者
の生活機能・障害について :
高齢者の生活機能・障害と居
住環境の関連性に関する調査
研究 /日本建築学会計画系論
文集 (605) p.1-p.6
住宅
高齢者施設都市
Q.O.L
文1) 本研究
文2)
文3)文4)
図 1-1 本研究の位置づけ
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第 1章 序論
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1-3 語句の定義◇Q.O.LQuality of life の略語である。日本語では「生活の質」とも訳される。一般的には、人々の生活を物質的な面から量的にのみとらえるのではなく、精神的な豊かさや満足度も含めて、質的にとらえる考え方を指す。医療や福祉の分野で重視され、生活の質や生命の質というとらえ方もある。本研究では、健康関連Quality of life という概念の基、使用する。生活に関わる身体的・精神的健康状態を示す指標として SF-36 を使用し、研究に用いる。
◇都市施設都市施設は一般用法として、都心的性格をもつ商業施設などを含む公的サービス機能
をもつ施設であり、都市計画法第11条第1項第1号~第11号に定められている。参考資料1)
本研究では、日常生活において必要な施設や整備されていると便利な施設、またQ.O.Lに影響のありそうな施設、場所を示し、病院・薬局、スーパー、コンビニ、物産店、公園、図書館、役場、公民館・集会所、職場、高齢者施設、温泉、飲食店、墓地、田畑、友人宅・親戚宅を示す。
◇利便性利便とは便利なこと、都合のよいことを指す。本研究における利便性とは、便利さや行きやすさ、利用しやすさを示す指標として用いる。
参考資料1) フリー百科
事典「ウィキペディア
(Wikipedia)」都市施設
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第 1章 序論
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高齢者のQ.O.L
都市施設の利便性 施設の利用頻度
1-4 研究概要本研究は、図 1-2 で示すように「高齢者のQ.O.L」と「都市施設の利用頻度」「都市施設の利便性」との相関を示すものである。全国 6カ所の地域で高齢者を対象に、Q.O.L の調査と都市施設の利用頻度の調査を行い、高齢者のQ.O.L に都市のどの施設が影響を及ぼしているのか導き出す。
図1-2 高齢者のQ.O.L への相関イメージ
地域住民
家族
本人 健康
健康都市
ソフト・ハード面の環境整備により傾斜を緩やかにする。
都市の環境整備
に活かす本研究
本研究で導き出された相関を、都市の環境整備へと活かすことにより、様々な都市において、それぞれの地域特性と、高齢化に対応した都市環境の整備の方針を明らかにしたい。その都市に住む住民の健康を向上させることが可能になると共に、都市のソフト面、ハード面の両面から都市整備に活かすことが出来ると予想される。(図 1-3)
図 1-3 本研究のフィードバックイメージ
第2章 研究背景
2-1 日本の高齢化率の推移2-2 高齢者の生活環境2-3 WHO健康都市への取り組み
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第2章 研究背景
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第 2 章 研究背景2-1 日本の高齢化率の推移 我が国の総人口は、平成 19年では約 1億 2777 万人で前年に比べてほぼ横ばいになっている。65歳以上の高齢者人口は、過去最高の 2746 万人となり、総人口に占める割合( 高齢化率 ) も 21.5%となり、初めて 21%を超えた。5人に 1人が高齢者(65歳以上)、10人に 1人が後期高齢者(75歳以上)という「本格的な高齢社会」となっている。高齢者人口は今後、いわゆる「団塊の世代」( 昭和 22 年~ 24 年に生まれた者 ) が 65歳に到達する平成 24 年には 3000 万人を超え、平成 30 年には 3500 万人に達すると見込まれている。その後も高齢者人口は増加を続け、2042 年に 3863 万人でピークを迎え、その後は減少に転じると推計されている。総人口が減少するなかで高齢者が増加することにより高齢者率は上昇を続け、平成 25年には高齢化率が 25.2%で 4人に 1人となり、2035年には 33.7%で 3人に 1人になる。2042 年以降は高齢者人口が減少に転じても高齢化率は上昇を続け、2055 年には 40.5%に達して、国民の 2.5 人に 1人が 65 歳以上の高齢者となる社会が到来すると推計されている。総人口に占める後期高齢者の割合も上昇を続け、いわゆる「団塊ジュニア」( 昭和 46年~ 49年に生まれた者 ) が後期高齢期に入った後に、2055 年には 26.5%となり、4人に 1人が 75歳以上の高齢者になると推計されている。また、高齢者人口のうち、前期高齢者人口は「団塊の世代」が高齢期に入った後に平成 28年の 1744 万人でピークを迎える。その後は 2032 年まで減少傾向となるが、その後は再び増加に転じ、2041 年の 1669 万人に至った後、減少に転じると推計されている。一方、後期高齢者人口は増加を続け、平成 29年には前期高齢者人口を上回り、その後も増加傾向が続くものと見込まれており、増加する高齢者数の中で後期高齢者の占める割合は、一層大きなものになるとみられている。参考資料2)
図 2-1 日本の将来推計人口
図 2-1 内閣府/平成 19年版
高齢社会白書 p.5
参考資料2)内閣府/平成 19
年版高齢者白書
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第2章 研究背景
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2-2 高齢者の生活環境社会的背景からも分かる様に、我が国にとって高齢者に対して取り組む問題は山積みになっている。特に今回の論文を執筆する際に注目すべきは居住地域の利便性である。図 2-2 で示している様に、60歳以上の高齢者が現在住んでいる地域で不便に思ったり、気になったりすることについてみると、「日常の買い物に不便」が 16.6%、「医院や病院への通院に不便」が 10.0%、「交通事故にあいそうで心配」が 9.2%、「交通機関が高齢者には使いにくい、又は整備されていない」が 8.4%、「近隣道路が整備されていない」が 7.8%となっている。だが同時に「特にない」と答えた高齢者は 57.3%と非常に高い数値を示している。これらの結果はあくまで全国を対象としたものであり、地域による格差は激しいものだと考えられる。この問題を解決することにより、高齢者の外出の頻度を高め、心身ともに健康を増進させることが可能になるのではないだろうか。
図2-2 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査(平成18年)
図 2-2 内閣府/平成19年
版 高齢社会白書 p.57
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第2章 研究背景
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2-3 WHO健康都市の取り組み 健康都市連合は、都市の住民の健康を守り、強化することを目的とした国際的なネッ
トワークである。連合は、ヘルシーシティーズと呼ばれるアプローチを通じて目的を達成しようとする都市とその他の機関から成る団体である。健康都市連合は目的達成のために、国際的な協力が効果的な手段になると信じ、健康問題に取り組む人々との相互交流を推進している。 ヘルシーシティアプローチは、社会的、経済的、身体的環境が都市に住む人の健康
の鍵を握るというコンセプトに基づく。健康都市プログラムは都市化とともに生じる健康に関する問題の解決を目的とする。都市化は世界的規模で急速に進んでいるが、都市の健康問題は複雑になり、健康部門と従来までは健康とあまり関係のない部門間の協力が必要とされるようになった。 都市化は住民のライフスタイルや生活環境を変化させた。この変化には、人口の増
加、大気汚染、水質低下、住宅の密集、交通渋滞、廃棄物管理などが含まれる。社会的背景の中で、都市化は家族や労働環境にも変化をもたらした。こうした変化はワーキングマザーや深夜労働者の増加からうかがえる。さらに交通機能の発達により、人や物の移動とともに伝染病が媒介するようになった。 様々な社会的環境的変化は都市の住民の健康に相互に絡み、影響を与えている。健
康都市のイニシアティブのもと、WHOは健康の問題と健康の事業を公共政策のすべての側面に組み入れるよう、地方自治体に働きかけた。WHOは公衆衛生 ( パブリックヘルス ) 政策と、経済の促進、コミュニティの発展といった都市の政策を関連づけるよう協調する。これらの分野は、従来ならばパブリックヘルスとは関係がないと考えられていたので、ヘルシーシティアプローチは伝統的な健康アプローチとは対照的である。WHOはまた、企業やNGOなどの民間部門とも緊密に連携をとるよう、都市に働きかけた。参考資料3)
WHOはヘルシーシティアプローチについて専門知識を持つが、実際に健康都市プランを作成し健康都市プログラムを実行するのは、都市である。都市は健康都市プログラムを進めるにあたって最適なプレーヤーであるとみなされる。なぜならこのプログラムは地域のコミュニティに関心を向けるべきものであり、地域住民や団体の参加がプログラムの成功のためには不可欠だからである。このようにWHOは健康都市プロジェクトの推奨を行っている。現在も日本各地で健康都市への取り組みが行われている。健康都市への取り組みを積極的に行っている都市に、この論文が役立つことを願っている。
参考資料 3)健康都市連合日
本支部ホームページ
第3章 研究方法
3-1 研究フロー3-2 Q.O.L 調査方法 3-3 施設利用頻度の調査方法3-4 アンケート配布・回収方法3-5 アンケート内容(縮小版)3-6 調査地選定方法3-7 調査日程
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
第3章 研究方法3-1 研究フロー本研究では、日本の6都市において、その地域に住む 65歳以上の方を対象に、Q.O.Lと都市施設の利用頻度、利便性を調査するアンケートを行った。それらのデータを基に、Q.O.L と都市施設の利用頻度の相関について分析を行う。なお、サンプルの有効数は、南牧村 6サンプル、上野村 20サンプル、売木村24サンプル、伊達市22サンプル、小笠原村13サンプル、新潟市14サンプルの計99サンプルを用いている。
調査都市の選定
調査票の作成
群馬県南牧村 群馬県上野村北海道伊達市 長野県売木村 東京都小笠原村
アンケート配布
新潟県新潟市
アンケート回収
Q.O.L のデータ化 利用頻度・利便性のデータ化
相関の検討
モデル化
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
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3-2 Q.O.L の調査方法
3-2-1 Q.O.L SF-36 についてSF-36 は、健康状態を測る質問紙として世界中で最も普及しているものである。それは SF-36 がシンプルかつ有用であり、計量心理学的に十分な特性を持っており、さらに容易に入手することができ、すでに十分なデータの蓄積があるからと考えられる。また今回用いた SF-36 v2 では、0-100 得点だけでなく国民標準値に基づいたスコアリング (norm-based scoring: NBS) を使用することができる。
3-2-2 SF-36 を構成する主要概念と下位尺度SF-36 は、8つの健康概念を測定するための複数の質問項目から成り立っている。8つの概念とは、(1) 身体機能、(2) 日常役割機能 ( 身体 )、(3) 体の痛み、(4) 全体的健康感、(5) 活力、(6) 社会生活機能、(7) 日常役割機能 ( 精神 )、(8) 心の健康である。表 x-x に、各下位尺度の得点が表す意味を示した。この 8つの下位尺度以外に、SF-36 には、健康全般についての 1年間の変化を尋ねる項目がある。この項目は、8つの下位尺度得点の算出には用いられず、単独で名義尺度もしくは順序尺度、間隔尺度として使用される。
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表 3.1 SF-36 下位尺度の得点の解釈
表 3.1 SF-36v2 日本語版
マニュアル p.8
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
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3-2-3 計量心理学的評価SF-36 は、8つの下位尺度で 8つの健康特性を測定するように構成されている。これらの尺度はリッカート法 (1932) で構成され、合計点を算出して得点化されるが、それは検証可能な特定の仮説に基づいている。計量心理学的方法においては、ある尺度に含まれる科目群への回答の仕方や、項目分散はだいたい同じであることが想定される。また尺度に含まれる項目はその尺度得点と強い相関を持つことも想定される ( 収束的妥当性 )。各項目は、ある一つの尺度の得点算出にのみ使われるので、弁別的妥当性検証が行われる。この検証は、各項目が他の健康概念を測っているのではなく、該当する一つの健康概念だけをきちんと測っているかどうかを調べるものである。表 3.2 には回答項目と下位尺度の関係性が示されている。
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表 3.2 SF-36 の各項目の内容 表 3.2 SF-36v2 日本語版
マニュアル p.43
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
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3-2-4 SF-36 のスコアリング法図 3-1 に示すフローチャートに従い、Q.O.L のスコアリングを行う。公式 3-1 に示す公式を使い、素点を 0点から 100 点の範囲の下位尺度得点に変換する。表 3.3 には、それぞれの下位尺度得点を算出するのに必要な情報が記されている。この操作により、最低点と最高点の間の値は 0点から 100 点の範囲に変換され、その範囲の中に得点がくるようになる。
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図 3-1 SF-36v2 日本語マニ
ュアル p.64
公式 3-1 SF-36v2 日本語マ
ニュアル p.80
表 3.3 SF-36v2 日本語マニ
ュアル p.81
図 3-1 SF-36 スコアリングのフローチャート
公式 3-1 0-100 得点への変換公式
表 3.3 下位尺度得点の素点と最終的な下位尺度得点に変換するための公式
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
-20-
第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
3-2-5 国民標準値に基づくスコアリング法次のステップでは、0-100 得点から、下記に示した公式(公式 3-2 , 公式 3-3)を使って国民標準値に基づくスコアリングを行う。表3.4に、公式に必要な情報を示している。国民標準値に基づくスコアリングで使用される平均値と標準偏差は、2002 年の日本の国民標準値である。8つの下位尺度ごとに、2002 年の国民標準値を 50 点、標準偏差を 10点とするために Z値への変換が行われる。
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表 3.4 下位尺度の2002年日本国民標準値
表 3.4 SF-36v2 日本語マニ
ュアル p.83
公式 3-3 下位尺度の Z値からの変換
公式 3-2 下位尺度の Z値による標準化
公式 3-2 SF-36v2 日本語マ
ニュアル p.83
公式 3-3 SF-36v2 日本語マ
ニュアル p.84
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
-21-
第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
3-3 施設利用頻度の調査方法 予め当方がピックアップした施設(表 3.5)に対して、「ほぼ毎日」「週に 1回以上」「月に 1回以上」「年に 1回以上」「全く行かない」の 5つの項目に対して選択する形式による調査を行った。表 3.6 の公式に従い、5つの項目の数値化を行った。数値化したものを利用して結果を分析していく。
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表 3.5 本研究における都市施設
表 3.6 利用頻度の年間得点化
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
-22-
第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
3-4 アンケート配布・回収方法今回の調査では実際に調査地に行き、アンケートを行った。役場や病院等に予め連絡を取り、調査書を郵送し委託することも可能であったが、実際に調査地に赴き学ぶこと、住民の方と話し、触れ合うことにより学ぶものが大変多くあると考え、この様な形をとることにした。
調査地にて地域内を歩き回り、高齢者の方へ一人一人内容の説明をしながら配布した。その場でアンケートをヒアリングにて調査すると、膨大な時間がかかってしまい、有効なデータ数に届かないと判断し、同封した返信用封筒にて回収を行うことにした。返信用封筒は料金受取人払郵便の封筒を用い、差出人には一切の料金をご負担頂かないため、アンケートの回収率の向上に繋がったと考えられる。
全地域にて約 500 部配布し、有効データとして 99サンプルを得た。
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
-23-
第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
3-5 アンケート内容(縮小版)
問1 最高に良い とても良い 良 い あまり
良くない 良くない
1 2 3 4 5 (一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)
問2 1年前よりはるかに良い
1年前よりはやや良い
1年前とほぼ同じ
1年前ほど良くない
1年前よりはるかに悪い
1 2 3 4 5 (一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)
問3
ア)イ)ウ)エ)オ)カ)キ)ク)ケ)コ)
問4
ときどき ぜんぜんない
ア)仕事やふだんの活動をする時間をへらした 3 5イ)仕事やふだんの活動が思ったほど、できなかった 3 5ウ)仕事やふだんの活動の内容によっては、できないものがあった 3 5エ)仕事やふだんの活動をすることが難しかった 3 5
(いつもより努力を 必要としたなど)
問5
ときどき ぜんぜんない
ア)仕事やふだんの活動を する時間をへらした 3 5イ)仕事やふだんの活動が 思ったほど、できなかった 3 5ウ)仕事やふだんの活動が いつもほど、集中して できなかった 3 5
問6
ぜんぜん妨げられなかった
わずかに妨げられた
少し妨げられた
かなり妨げられた
非常に妨げられた
1 2 3 4 5 (一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)
裏面へ
階段を1階上までのぼる体を前に曲げる、ひざまずく、かがむ.1キロメートル以上歩く
激しい活動、例えば、激しいスポーツをする、 重い物を持ち上げるなど適度の活動、例えば、家や庭のそうじをする、 1~2時間散歩するなど少し重い物を持ち上げたり、運んだりする (例えば買い物袋など)階段を数階上までのぼる
4
数百メートルくらい歩く百メートルくらい歩く自分でお風呂に入ったり、着がえたりする
2 4
ほとんどいつも
まれに
4
1 2 411 2
24
111
いつも まれに
22 4
4
32
いつも
1
1
2
11
ほとんどいつも
1111
2222
3333
22
333
健康状態について
22
311
少し難しい2
とても難しい1
アンケート (対象:○○県○○市にお住まいの65歳以上の方)
過去1ヵ月間に、家族、友人、近所の人、その他の仲間とのふだんのつきあいが、身体的あるいは心理的な理由で、どのくらい妨げられましたか。
過去1ヵ月間に、仕事やふだんの活動(家事など)をするにあたって、心理的な理由で(例えば、気分がおちこんだり不安を感じたりしたために)、次のような問題がありましたか。(ア~ウまでのそれぞれの質問について、一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)
過去1ヵ月間に、仕事やふだんの活動(家事など)をするにあたって、身体的な理由で次のような問題がありましたか。(ア~エまでのそれぞれの質問について、一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)
以下の質問は、日常よく行われている活動です。あなたは健康上の理由で、こうした活動をすることがむずかしいと感じますか。むずかしいとすればどのくらいですか。(ア~コまでのそれぞれの質問について、一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)
この研究は、年齢を重ねても入院することなく、できるだけ長い間、良い健康状態を保ちながら、自らの意思で生活を送られるような都市空間を目指して行っています。各地域の都市の要素とそこに住む人々の健康状態との関係を調査し、人々の健康を維持するための都市の要因を明らかにしていくことを目的としています。お手数をおかけしますが、何卒ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。
あなたの現在の健康状態はいかがですか。
1年前と比べて、現在の健康状態はいかがですか。
ぜんぜん難しくない3
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
問7 過去1ヵ月間に、体の痛みをどのくらい感じましたか(一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)。ぜんぜんなかった かすかな痛み 軽い痛み 中くらいの
痛み 強い痛み
1 2 3 4 5
問8 ぜんぜん
妨げられなかったわずかに妨げられた
少し妨げられた
かなり妨げられた
非常に妨げられた
1 2 3 4 5 (一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)
問9
ときどき ぜんぜんない
ア) 元気いっぱいでしたか 3 5イ) かなり神経質でしたか 3 5ウ) どうにもならないくらい、 気分がおちこんでいましたか 3 5エ) おちついていて、 おだやかな気分でしたか 3 5オ) 活力(エネルギー)に あふれていましたか 3 5カ) おちこんで、ゆううつな 気分でしたか 3 5キ) 疲れはてていましたか 3 5ク) 楽しい気分でしたか 3 5ケ) 疲れを感じましたか 3 5
問10
いつも ほとんどいつも ときどき まれに ぜんぜんない
1 2 3 4 5
問11
まったくそのとおり ほぼあてはまる
ア) 私は他の人に比べて病気になりやすいと思う 1 2イ) 私は、人並に健康である 1 2ウ) 私の健康は、悪くなるような気がする 1 2エ) 私の健康状態は非常に良い 1 2
例 かかっている病院の診療科目
非常に激しい痛み6
いつも ほとんどいつも
過去1ヵ月間に、いつもの仕事(家事も含みます)が痛みのために、どのくらい妨げられましたか。
次にあげるのは、過去1ヵ月間に、あなたがどのように感じたかについての質問です。(ア~ケまでのそれぞれの質問について、一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)
まれに
1 2 41 2 41 2 41 2 41 2 41 2 41 2 41 2 41 2 4
何とも言えない ほとんどあてはまらない
ぜんぜんあてはまらない
次にあげた各項目はどのくらいあなたにあてはまりますか。(ア~エまでのそれぞれの質問について、一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)
過去1ヵ月間に、友人や親せきを訪ねるなど、人とのつきあいが、身体的あるいは心理的な理由で、時間的にどのくらい妨げられましたか。 (一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい)
3 4 53 4 5
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あなたのお体で、痛みやマヒなど不自由なところなどがございましたら、例を参照に症状とともあげて下さい。また、特に強い不自由さを感じている部分がございましたら、二重丸をつけてください。また医者にかかっている場合は、その診療科もお答えください。
3 4 53 4 5
お体の状態についてのアンケート
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
-25-
第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
施設名 交通手段 移動時間 自宅から施設に行くまでの利便性
例) スーパー 徒歩、バス 15分 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
病院・薬局 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
スーパー かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
コンビニ かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
物産店 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
公園 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
図書館 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
役場 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
公民館・集会所 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
職場 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
高齢者施設 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
温泉 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
飲食店 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
墓地 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
田畑 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
友人宅・親戚宅 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
美術館 かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
その他( )
かなり便利/やや便利/やや不便/かなり不便
最後にあなたのことについてお伺いします。ご記入できる範囲で結構です。
性別
就業状況
同居人数
同居者
1人 2~4人 5~7人
いない 配偶者 子
8人以上
親 兄弟 友人 その他
していない
利用頻度ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上
年に1回以上/全く行かない
90~85~89
男性 女性
あなたがお住まいの地域の施設に関する質問です。以下の施設(その他にはご自由にお書きください)について「利用する頻度」および「利便性」の項目は、それぞれ一番よくあてはまるものに○印をつけて下さい。またその施設を利用する際に、ご自宅からどのような交通手段を利用するか、所要時間をそれぞれご記入ください。
お住まいの地域について
65~6970~7475~7980~84
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
年齢(歳)
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
以上でアンケートは終わりです。ご協力ありがとうございました。
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に2回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
ほぼ毎日/週に1回以上/月に1回以上年に1回以上/全く行かない
孫
している
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
-26-
第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
3-6 調査地選定方法図 3-2 は日本の全ての市区町村のプロット図である。x軸には平成 15年から平成 17年までの人口増減率 (%) が示され、y軸にはその都市の総人口に対する高齢者の割合 (%)すなわち高齢者率が示されている。まず第一の調査地として選定したのが「群馬県南牧村」である。南牧村は日本で最も高齢化が進んでいる都市である。高齢者の多いこの村ならではの施設配置や整備が行われていると考え、調査地に選んだ。2つ目の都市が「群馬県上野村」である。この村は 5年間の人口減少が最も進んでおり、なにか人口が減少する理由があると考え選定した。3つ目の都市は「長野県売木村」である。先に述べた上野村と高齢者率はほぼ等しいが、人口の増減が極めて少ない。上野村と売木村を比較することにより、高齢者にとって住みにくい環境とは何か、住みやすい都市整備とは何かを示す指標になると考えた。そして「東京都小笠原村」である。この地域は図 3-2 を見ても分かるように、非常に特異な都市である。高齢者がほとんど住んでいないのだ。この理由は何か。建築学的に分析すると面白い発見があると思い選定した。「新潟県新潟市」「北海道伊達市」のプロットは非常に近い位置にある。図を見る限り特に特徴はないが、それぞれ高齢者の誘致を行っていたり、積極的な姿勢をみせている。なにか結果に面白い影響を与えるのではないだろうか。
GkG
IGkG
bGkG
aGkG
cGkG
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dGkG
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上野村
南牧村
売木村
小笠原村
伊達市新潟市
図 3-2 高齢化率と人口増減率の関係
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
3-7 調査日程今回の研究で行った調査地(図 3-3)の調査日程を示す。
伊達市
小笠原村
南牧村 上野村
売木村
新潟市
図 3-3 調査値の位置関係
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
◇東京都小笠原村 (8/16 ~ 8/19)東京、竹芝桟橋より小笠原海運が運行する「小笠原丸」にて片道 25 時間。村の高齢者率が極めて低く、配布が困難であったが、島特有の人柄の良さが幸いした。小笠原村(図 3-4、図 3-5)は人々が生活する地域が狭い。都市施設は非常に少なく(図3-6)、市街地に集中している。
1km 2km 3km 4km 5km
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図 3-4 小笠原村 1 図 3-5 小笠原村 2
図 3-6 小笠原村の都市施設
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
◇群馬県南牧村 (10/3)東京より関越自動車道にて南牧村まで片道 2.5 時間程度(図 3-7, 図 3-8)。車でのアクセスは便利であったが、公共交通機関を使うとなると非常に不便な場所である。都市施設も非常に少なく、生活しにくい環境である(図 3-9)。
南牧村
上野村
1km 2km 3km 4km 5km
病院・薬局スーパーコンビニ物産店公園図書館公民館高齢者施設温泉飲食店
図 3-7 南牧村の位置 図 3-8 南牧村
図 3-9 南牧村の都市施設
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
南牧村
上野村
1km 2km 3km 4km 5km
病院・薬局スーパーコンビニ物産店公園図書館公民館高齢者施設温泉飲食店
◇群馬県上野村 (10/3)南牧村と隣接している村である(図 3-10、図 3-11)。南牧村同様、公共交通機関の全くない場所であった。高齢者は主に自家用車で移動している。国道沿いに都市施設が集中しているため(図 3-12)、自動車での移動は比較的便利で
図3-10 上野村の位置 図 3-11 上野村
図 3-12 上野村の都市施設
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
1km 2km 3km 4km 5km
病院・薬局スーパーコンビニ物産店公園図書館公民館高齢者施設温泉飲食店
売木村
長野市
◇長野県売木村 (10/7 ~ 10/8)東京より新幹線で浜松まで行き、そこからレンタカーを利用して売木村まで移動した。長野県といってもかなり南に位置するので日本アルプスを避けるとなると、この方法が一番アクセスがしやすい ( 図 3-13)。売木村(図 3-14)の都市施設は比較的、中心部に隣接していた(図 3-15)。ただし、国道沿いということもありトラックなどの交通量が多く、歩きにくい環境であった。
図3-13 売木村の位置 図 3-14 売木村
図 3-15 売木村の都市施設
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
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新潟市
1km2km3km4km5km
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◇新潟県新潟市 (10/11 ~ 10/13)公共交通機関が発達しているため非常に便利である(図 3-16)。新潟市の都市施設は、非常に駅付近に密集している(図 3-17)。
図3-16 新潟市の位置
図 3-17 新潟市の都市施設
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第3章 研究方法
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1km 2km 3km 4km 5km
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伊達市
新千歳空港
札幌市
◇北海道伊達市 (10/14)東京国際空港より新千歳空港まで約 1.5 時間。新千歳空港から車で 1.5 時間程度の場所に位置する(図 3-18)。他の調査地に行くよりも、東京からのアクセスは悪くないと感じた。まちは非常にきれいに整備され、非常に生活しやすい環境であると感じた。(図3-19, 図 3-20)都市施設も中心部に集中し、便利である。(図 3-21)
図 3-18 伊達市の都市施設
図 3-19 伊達市1 図 3-20 伊達市2
図 3-21 伊達市の都市施設
第4章 調査結果
4-1 都市別にみたQ.O.L の得点4-2 国民標準値でみるQ.O.L4-3 世代ごとのQ.O.L 得点4-4 都市施設の利用頻度4-5 都市施設の利便性
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
第 4章 調査結果
今回の調査の各地域の有効サンプル数は、南牧村 6サンプル、上野村 20 サンプル、売木村24サンプル、伊達市22サンプル、小笠原村13サンプル、新潟市14サンプルの計99サンプルを用いている。ただし、利用頻度、利便性の調査は小笠原村にて行っていないため、利用頻度、利便性を用いた分析では小笠原を除いた86サンプルで分析を行う。
4-1 都市別にみたQ.O.L の得点ここではQ.O.L の総合得点と8つの下位尺度の計9種の得点を地域別に比較する。
4-1-1 Q.O.L 総合得点図 4-1 は Q.O.L の総合得点を地域別に比較したものである。南牧村、売木村、小笠原村、新潟市のポイントはほぼ横並びであるが、伊達市のポイントがやや低く、上野村に至っては他の地域に比べ非常に低いポイントであった。
図4-1 Q.O.L 総合得点
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
4-1-2 全体的健康感 得点図 4-2 は GH ( General health perceptions ) 、「全体的健康感」の得点を地域別に比較したものである。上野村はQ.O.L の総合得点と同様に低いポイントを示しているが、ここで注目すべきは小笠原村のポイントの高さである。
図4-2 全体的健康感の得点
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
4-1-3 身体機能 得点図 4-3 は PF ( Physical functioning ) 、「身体機能」の得点を地域別に比較したものである。「身体機能」の得点に関しては上野村が非常に低いポイントを示している他は、特に目立った特徴は無い。ただ「全体的健康感」同様に小笠原のポイントが高いことも分かる。
図4-3 身体機能の得点
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
4-1-4 日常役割機能 (身体 ) 得点図 4-4 は RP ( Role physical ) 、「日常役割機能 ( 身体 )」の得点を地域別に比較したものである。身体的な「日常役割機能」のポイントが高い地域は南牧村であることが分かる。「身体機能」の得点においても、南牧村は高いポイントを示していたため、南牧村の高齢者は身体的に健康だと言うことが出来るだろう。反して上野村のポイントは非常に低く、身体的に不健康な高齢者が多い傾向にあると言える。
図4-4 日常役割機能(身体)の得点
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-1-5 体の痛み 得点図 4-5 は BP ( Bodily pain ) 、「体の痛み」の得点を地域別に比較したものである。体の痛みに関しては個人に差があるため、一概に都市毎に比較するのは難しい。このポイントは「体の痛みによって日常生活において妨げられる行為がある」という解釈である。そのような解釈の基、比較すると上野村や伊達市では体の痛みによって日常生活が妨げられていると感じている人々が多いといえる。
図4-5 体の痛みの得点
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
4-1-6 活力 得点図 4-6 は VT ( Vitality ) 、「活力」の得点を地域別に比較したものである。どの地域もほぼ横ばいである印象を受けるが、売木村の高齢者の活力が平均して高い事が分かる。対して上野村の高齢者については他の地域に比べ、少し低いポイントを示している。
図4-6 活力の得点
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
4-1-7 社会生活機能 得点図 4-7 は SF ( Social functioning ) 、「社会生活機能」の得点を地域別に比較したものである。他の下位尺度に比べ総合的に高い得点を示す結果になっている。なかでも南牧村、売木村、小笠原村の高齢者については社会生活 ( 交友活動 ) を送る上で、身体的ないし心理的な要因で不自由を感じている人が少ない結果になっている。ただ上野村に関しては、何かしらの影響で社会生活を妨げられている高齢者が少なからずいる事を示している。
図4-7 社会生活機能の得点
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-1-8 日常役割機能 (精神 ) 得点図 4-8 は RE ( Role emotional ) 、「日常役割機能 ( 精神 )」の得点を地域別に比較したものである。小笠原村の高齢者のポイントは極めて高い事が分かる。これは日常生活において精神的に非常に健康であるといえる。対して上野村の高齢者は、日常生活において心理的な理由が問題で、活動が妨げられることが多いといえる。
図4-8 日常役割機能(精神)の得点
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-1-9 心の健康 得点図 4-9 はMH ( Mental health ) 、「心の健康」の得点を地域別に比較したものである。この尺度のポイントが高いという事は、日々おちついて、楽しく、おだやかな気分で生活出来ていることを指す。今までの結果を考慮すると、小笠原村のポイントが高い事を期待したが、非常に高いとは言い難い。平均してあまり差の無い、下位尺度である。
図4-9 心の健康の得点
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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これらの結果をまとめたものが表 4.1 である。各得点に対し、最も平均得点の高かった地域を黄色、平均得点の低かった地域は青色に着色している。
上野村は全ての得点に対して、6都市の中で最も低い得点であることが分かる。また比較的、小笠原村や南牧村の得点は高い傾向ある。
各得点ごとの最大値、最小値の差では、特に日常役割機能(身体)の得点、身体機能の得点、日常役割機能(精神)の得点、Q.O.L の得点、全体的健康感の得点において、差の大きい傾向が見られた。
表4.1 各得点の地域比較
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-2 国民標準値でみるQ.O.L
4-2-1 都市の比較図 4-10 では、都市間でQ.O.L の国民標準値を比較している。国民標準値は 50.0 ポイントであるため、それより高ければ平均より高い、低ければ平均より低いということになる。ただし、この国民標準値には高齢者を含めた全世代のQ.O.L の得点が利用されているため、高齢者のQ.O.L のみを用いている今回の調査では、あまり比較するに好ましくないと考えられる。そのため、あくまで傾向をみるだめの目的で利用することとする。それ故、図 4-10 をみても分かる様に、ずば抜けて高い数値を示す尺度は無い。ただ、売木村の活力 (VT_N) 得点、心の健康 (MH_N) 得点はそれなりに高い数値である。全体的な傾向としては、精神的健康は平均的に国民標準値のラインである事と、上野村のポイントは低い傾向にある事がわかる。
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-2-2 群馬県南牧村図 4-11 では、南牧村のQ.O.L と国民標準値とを比較したものである。南牧村は全ての下位尺度とも極めて国民標準値に近似している。今回の調査では高齢者を対象にしているため、身体機能 (PF_N) の得点が低いのは仕方の無い事であり、その他の得点が国民標準値に近似しているのは、健康的な村民が多い傾向にあるといえるだろう。
図4-11 国民標準値とQ.O.L 下位尺度の比較(南牧村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-2-3 群馬県上野村図 4-12 では、上野村のQ.O.L と国民標準値とを比較したものである。上野村は全ての下位尺度に対して国民標準値を下回っている。高齢者を対象にした調査を行ったため、致し方ない結果である。ただ、際立って低い得点を示しているのが、身体機能 (PF_N) と日常役割機能 / 身体(RP_N) の得点である。
図4-12 国民標準値とQ.O.L 下位尺度の比較(上野村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-2-4 長野県売木村図 4-13 では、売木村のQ.O.L と国民標準値とを比較したものである。売木村の得点は身体的健康が国民標準値に対して低い傾向にある。ただ活力 (VT_N)、心の健康 (MH_N) に関しては高い得点であると言える。
図4-13 国民標準値とQ.O.L 下位尺度の比較(売木村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-2-5 東京都小笠原村図 4-14 では、小笠原村のQ.O.L と国民標準値とを比較したものである。小笠原村の高齢者は比較的、国民標準値を上回る傾向がある。日常役割機能/身体
(RP_N)に関しては唯一、国民標準値を下回っている。
図4-14 国民標準値とQ.O.L 下位尺度の比較(小笠原村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-2-6 新潟県新潟市図 4-15 では、新潟市のQ.O.L と国民標準値とを比較したものである。小笠原村の高齢者は多くの下位尺度において、国民標準値を下回っている。特に全体的健康感 (GH_N) の値は極めて低く、40ポイントを下回る結果になっている。心の健康 (MH_N) の値が最も高い結果になった。
図4-15 国民標準値とQ.O.L 下位尺度の比較(新潟市)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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4-2-7 北海道伊達市図 4-16 では、伊達市のQ.O.L と国民標準値とを比較したものである。伊達市ではほぼ全ての下位尺度において国民標準値を下回る結果になっている。唯一、国民標準値をわずかに上回っているのが活力 (VT_N) の得点のみである。
図4-16 国民標準値とQ.O.L 下位尺度の比較(伊達市)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-3 世代ごとのQ.O.L 得点
図 4-17 は、年齢別のQ.O.L 得点を個人ごとにプロットした図である。各世代ごとのプロット範囲の中心を取り、それらを結ぶ近似一次関数を描いた結果、図 4-17 の赤線の様に係数が負の一次関数となった。
これは年齢を重ねるごとにQ.O.L の得点が低くなる傾向があると言える。歳をとればとるほど、体力が落ち、肉体的にも健康を維持することは困難である。しかし、図4-17 を見ても分かる様に、近似一次関数に比例していないサンプルも数多くある。これは年齢を重ねてもQ.O.L の得点は高い、すなわち健康である人も少なからずいることを示す結果である。
図4-17 年代別 Q.O.L 得点のプロット
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-4 都市施設の利用頻度
4-4-1 群馬県上野村図 4-18 は上野村の都市施設利用頻度の結果である。上野村の高齢者は高齢者施設の利用頻度が極めて高い。また田畑の利用頻度も高いことから農業をおこなっている高齢者が多いことも分かる。日常生活に欠かす事の出来ないスーパーの利用頻度が低いのは、不便である影響していると考えられる。またアンケート回答者の中には、買い物は肉親に頼んでいるというケースも見られた。
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第4章 調査結果
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4-4-2 群馬県南牧村図 4-19 は南牧村の都市施設利用頻度の結果である。南牧村の高齢者はスーパーに行く頻度が高い。また、友人宅も頻繁に訪れる傾向がある。
図4-19 都市施設の利用頻度(南牧村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
4-4-3 長野県売木村図 4-20 は売木村の都市施設利用頻度の結果である。売木村の高齢者は田畑の利用頻度が極めて高い。農業を行っている高齢者が多い傾向にあるということだ。その他の施設に関しては全体的に利用頻度が低い傾向にある事が分かる。
図4-20 都市施設の利用頻度(売木村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-4-4 北海道伊達市図 4-21 は伊達市の都市施設利用頻度の結果である。伊達市の高齢者の施設利用頻度は全体的に高い傾向にある。中でも顕著に現れているのがスーパー、公園、飲食店の利用頻度である。これらの利用頻度は他の施設に比べて高いことが分かる。
図4-21 都市施設の利用頻度(伊達市)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-4-5 新潟県新潟市図 4-22 は新潟市の都市施設利用頻度の結果である。新潟市の高齢者の施設利用頻度は全体的に高い傾向にあるが、特に公民館の利用頻度が高い結果が出ている。また、高齢者施設や友人宅の利用頻度も高い傾向にある。
図4-22 都市施設の利用頻度(新潟市)
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第4章 調査結果
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4-4-6 特徴的な施設の利用頻度各都市の施設頻度より、地域ごとの差に特徴のある施設を抽出した。抽出した都市施設は、スーパー、公園、公民館、高齢者施設、田畑である。図 4-23 はそれらの都市施設の利用頻度を地域ごとに比較したグラフである。アンケート回答者ののべ年間利用日数を人数で除算し、高齢者一人あたりの年間利用日数の平均を地域毎に示している。
南牧村のスーパー利用頻度が多いのに対し、上野村・売木村の利用頻度はほぼゼロに等しい。また公園に関しては、伊達市の利用頻度が多いのに対して、他の地域は極めて低い。公民館は各地域ほどほどに利用頻度があることが分かるが、上野村は低く、新潟市の利用頻度が多い。高齢者施設の利用頻度については、上野村と新潟市が多く、南牧村に至っては0である。また、田畑の利用頻度は売木村が極めて多い傾向にある。
図4-23 都市施設の利用頻度 地域毎の比較
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第4章 調査結果
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4-5 都市施設の利便性
4-5-1 群馬県南牧村図 4-24 は南牧村の都市施設の利便性を示したグラフである。横軸に都市施設、縦軸にアンケートで調査した各施設の利便性を示している。今回、利便性を数値化する方法として、アンケートで調査した利便性を用いている。「かなり便利」を 2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として地域ごとに集計し、各地域ごとに平均値を出した。
役場、公民館は便利と感じている高齢者が多く、反して公園、図書館を不便と感じている高齢者も多い。スーパーに関しては不便であるがコンビニは便利な地域である事も分かる。
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-5-2 群馬県上野村図 4-25 は上野村の都市施設の利便性を示したグラフである。横軸に都市施設、縦軸にアンケートで調査した各施設の利便性の得点の平均値をとっている。上野村の高齢者の多くはこれらの都市施設に対し、不便と感じている割合が多く、生活しにくい環境であると想像出来る。ただ、病院や高齢者施設に関しては便利であるという回答が多くみられた。
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-5-3 長野県売木村図 4-26 は売木村の都市施設の利便性を示したグラフである。横軸に都市施設、縦軸にアンケートで調査した各施設の利便性の得点の平均値をとっている。売木村の高齢者は全体的に都市施設に対して便利と感じている割合が高い。特に病院・薬局、公民館、高齢者施設に対しては便利であると回答した高齢者が多い傾向にあるこ
図4-26 都市施設の利便性(売木村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
4-5-4 北海道伊達市図 4-27 は伊達市の都市施設の利便性を示したグラフである。横軸に都市施設、縦軸にアンケートで調査した各施設の利便性の得点の平均値をとっている。伊達市の都市施設は非常に便利な環境であることがわかる。特に公園に対して便利と感じている高齢者が多い。
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
4-5-5 新潟県新潟市図 4-28 は新潟市の都市施設の利便性を示したグラフである。横軸に都市施設、縦軸にアンケートで調査した各施設の利便性の得点の平均値をとっている。新潟市の高齢者は意外にも都市施設に対して便利だと回答した人が少なかった。結果からも分かる様に、全体的に不便だと感じる施設が多いことが分かる。
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第4章 調査結果
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4-5-6 利便性の地域比較図 4-29 は調査を行った各地域ごとに都市施設の利便性を表したグラフである。横軸に都市施設、縦軸にアンケートで調査した各施設の利便性の得点の平均値をとっている。伊達市の施設は平均して便利であり、上野村の施設が割と不便であることがわかる。
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図 4-29 利便性の地域比較
第5章 高齢者のQ
.O.L
に関わる都市パラメータ 5-1 都市施設の利用頻度と利便性の相関
5-2 都市施設の利用頻度とQ.O.L の相関
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ
5-1 都市施設の利用頻度と利便性の相関5-1-1 南牧村前章で得た、都市施設の利用頻度の得点と、利便性の得点を用いて関係を見る。都市施設の利用頻度は年間平均利用日数を用いて、利便性については「かなり便利」を2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として表している。図 5-1 には南牧村の都市施設の利用頻度と利便性の関係を示している。南牧村は都市施設の利便性において役場と公民館の値が非常に高い。また役場と公民館の利用頻度も年間平均利用日数が70日前後とやや高い。またスーパーの利用頻度が最も高いが、利便性の得点は「やや不便」な傾向にある。コンビニの利便性はやや高いものの、あまり利用はされていない傾向にある。
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図 5-1 都市施設の利用頻度と利便性の相関(南牧村)
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
5-1-2 上野村都市施設の利用頻度は年間平均利用日数を用いて、利便性については「かなり便利」を2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として表している。図 5-2 には上野村の都市施設の利用頻度と利便性の関係を示している。上野村の病院・薬局、高齢者施設は非常に便利である結果が出ている。ただし、病院・薬局に関しては利用頻度が少ない傾向にある。高齢者施設については便利であり、利用頻度も高い傾向にあると言える。
図5-2 都市施設の利用頻度と利便性の相関(上野村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
5-1-3 売木村都市施設の利用頻度は年間平均利用日数を用いて、利便性については「かなり便利」を2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として表している。図 5-3 には上野村の都市施設の利用頻度と利便性の関係を示している。上野村は全体的に利便性が高いものの、利用頻度が非常に少ない。病院・薬局、公民館、高齢者施設は非常に便利であるものの、ほとんど利用されていない傾向がある。
図5-3 都市施設の利用頻度と利便性の相関(売木村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ
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5-1-4 伊達市都市施設の利用頻度は年間平均利用日数を用いて、利便性については「かなり便利」を2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として表している。図 5-4 には伊達市の都市施設の利用頻度と利便性の関係を示している。伊達市の都市施設は全体的に便利であることが分かる。特に他の地域にはない、公園の利便性の高さは特筆すべき点である。そして公園は非常によく利用されていることも分かる。
図5-4 都市施設の利用頻度と利便性の相関(伊達市)
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PTU
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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5-1-5 新潟市都市施設の利用頻度は年間平均利用日数を用いて、利便性については「かなり便利」を2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として表している。図 5-5 には新潟市の都市施設の利用頻度と利便性の関係を示している。新潟市では公民館の利便性が高く、利用頻度も非常に多い。また公園の利便性もやや高い傾向にあるが、あまり利用されていない。
図5-5 都市施設の利用頻度と利便性の相関(新潟市)
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PQRS
PTU
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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5-1-6 都市施設の利用頻度と利便性の相関以上の結果をふまえると、全体的に利便性が高ければ、利用頻度が多くなる傾向がある。ただ、スーパーは日常生活に欠かせない施設であるにも関わらず、利便性が高くても利用頻度の少ない地域、利便性が少なくて利用頻度の少ない地域が見られた。スーパーに関してはどんなに不便であっても最低限は利用すると考えられるのだが、今回の結果で示すことは出来なかった。また、公園は利便性が高ければ利用頻度が多くなる傾向が見られた。公園はスーパーと異なり、日常生活に必ずしも必要な施設であるとは言い難い。しかし高齢者は近くに公園があれば利用する傾向があると言える。アンケート回答の中には、欄外の自由記述において「公園へ毎日通うことが日課」や「公園まで少し距離があるが、そこまで散歩がてら歩く様にしている」と記述している高齢者がいたことも事実である。高齢者施設については、利便性に関わらず、たとえ不便であったとしても利用する高齢者が多い傾向が表れた。
今回の結果では、必ずしも「利便性が高ければ、都市施設を利用する回数が多くなる」とは言えないが、公園や公民館など「必ずしも行く必要が無いけれども、利便性が高ければ、その施設を利用する回数が多くなる」という傾向が見られる施設もあったと言えるだろう。
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図 5-6 都市施設の平均年間利用日数
5-2 都市施設の利用頻度とQ.O.L の相関5-2-1 説明変数の抽出前章でも用いた都市施設の平均年間利用日数のグラフ(図 5-1)を基に、日数差の大きい都市施設をピックアップして分析を行う。現状の全ての要素を利用するには、説明変数が多すぎて有意なモデル式は得られない。そこで前章の結果を用いて、説明変数を減らすこととする。
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XY#
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差が大きくみられる施設5つを図5-7にピックアップした。抽出した項目は、スーパー、公園、公民館、高齢者施設、田畑である。これらを説明変数とし、分析を行っていく。
図5-7 説明変数に挙げた施設の平均年間利用日数
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5-2-2 目的変数の抽出目的変数にはQ.O.L と下位尺度を利用する。前章で都市毎にQ.O.L の得点について行った。それらを利用し目的変数を決定する。表 5.1 はアンケート調査を行った全6都市の得点である。黄色いセルが下位尺度ごとの最大値である、青いセルが最小値である。また、下位尺度の最大値と最小値の差も示している。
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67879 :;7< =>7< :;7; >?7= :@7= A=7> B:7=
CDEFGH >:7> =I7? A<7@ AI7< ?<7= A;7: BA7>
JDKL :@7< @=7B :<7B A@7; :?7; A?7= @B7:
MNOPKLQJDR ?;7B @@7= A=7@ >I7A >>7? A<7; @>7:
D4ST A>7@ =;7@ A=7@ =@7> A@7@ A<7? I=
UV >:7: =:7; A>7> >=7B A<7< >:7= ;:7=
WXYUKL ?I7= A<7< ?B7: :<7; ?;7A :=7A IB7:
MNOPKLQZ[R ?;7A =?7I :>7I A>7= ?:7> A=7> B?7@
\4FG A=7< >>7: :@7> A<7I :<7< :I7? ;A7:
!"# $%# &'# ()* +,*-./0-1/23
45657 895: ;<5: 8959 <=5; >;5< ?;59
@ABCDE <85< ;?5= >:5F >?5: >958 9=59
GAHI 8F5: F;5J 8:5J >F59 >=5; J85>
KLMNHIOGAP =95J FF5; >;5F <?5> >:59 F<58
A2QR ><5F ;95F >;5F ;F5< >:5= ?;
ST <858 ;859 ><5< <;5J <85; 985;
UVWSHI =?5; >:5: =J58 8:59 8;5> ?J58
KLMNHIOXYP =95> ;=5? 8<5? ><5; >;5< J?5;
Z2CD >;5: <<58 8F5< >:5? 8?5= 9>58
今回の分析では説明変数を都市施設の利用頻度としているので、利用頻度の調査を行った5都市のQ.O.L の得点が対象となる。表 5.1 から利用頻度の調査を行っていない小笠原村の値を除去したものが表 5.1 である。この中から、目的変数として利用するものは得点の最大値と最小値の差が 20以上のものとする。したがって、Q.O.L の総合得点、身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、社会生活機能、日常役割機能(精神)の得点を目的変数とする。
表5.1 Q.O.L と下位尺度の都市毎の比較1
表 5.2 Q.O.L と下位尺度の都市毎の比較 2
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5-2-3 重回帰分析1 ~ Q.O.L と都市施設の利用頻度の相関~重回帰分析により、Q.O.L とスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数にQ.O.L の総合得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.3 に示す。
標準化係数を見ると、Q.O.L に大きな影響を与えている独立変数は、スーパーの利用頻度、公民館の利用頻度、田畑の利用頻度の3変量である。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、Q.O.L にあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、Q.O.L に影響を与える要因ということになる。したがって、公民館の利用頻度と田畑の利用頻度がQ.O.L に影響を与えている要因であるといえる。
ただし、いずれの独立変数においても偏回帰係数が極めて小さい値となっているため、重回帰式としてあてはまりが悪いことがわかる。
また重相関係数が1に近いほど重回帰式のあてはまりが良いといえるが、今回の重回帰式における重相関係数は 0.604 とやや低い値が出ている。
この分析から読み取れることは、偏回帰係数の値がそれぞれ正であることから、公民館の利用頻度が多い高齢者はQ.O.L の値が高い傾向があり、同様に田畑に行く頻度が多い高齢者はQ.O.L の値が高い傾向があると言える。
表5.3 重回帰分析の結果(Q.O.L と利用頻度の相関)
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0(123%&, 45647 (8&, 9:5;9< 45444
0=> 45?69 @.A.BCDEF 4547; 45G47 454:G
HIBCDEF 454G; 45JJ< 45G<;
HKLBCDEF 45497 45G76 454JG
MNOPQBCDEF R454?G R45J;7 45JJ4
STBCDEF 4547< 457G: 45444
UVW& XYZ[\]W&
^5_5`Babcd
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5-2-4 重回帰分析2 ~身体機能と都市施設の利用頻度の相関~同様にして重回帰分析により、身体機能とスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数に身体機能の得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.4 に示す。
標準化係数を見ると、身体機能に大きな影響を与えている独立変数は、スーパーの利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度の4変量である。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、身体機能にあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、身体機能に影響を与える要因ということになる。したがって、スーパーの利用頻度と公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度が身体機能に影響を与えている要因であるといえる。標準化係数による抽出と同様の結果になった。
ただし、いずれの独立変数においても偏回帰係数が極めて小さい値となっているため、重回帰式としてあてはまりが悪いことがわかる。
また重相関係数が1に近いほど重回帰式のあてはまりが良いといえるが、今回の重回帰式における重相関係数は 0.688 とやや低い値が出ている。
この分析から読み取れることは、偏回帰係数の値が正のもの負のものがあることから、スーパー、公民館、田畑の利用頻度が多い高齢者は、身体機能の値が高い傾向にあり、逆に高齢者施設の利用頻度が高い高齢者は、身体機能の値が低い傾向があるといえる。
表5.4 重回帰分析の結果(身体機能と利用頻度の相関)
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'()*+%&, -./
0(123%&, 45677 (8&, 9959:9 45444
0;< 45:=: >.?.@ABCD 45E47 45FE4 45446
GH@ABCD 454E: 454:4 4567E
GIJ@ABCD 45479 45K9L 4544:
MNOPQ@ABCD R454=: R45K7= 4544=
ST@ABCD 4546E 45F=K 4544E
UVW& XYZ[\]W&
^_`ab
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5-2-5 重回帰分析3 ~日常役割機能(身体)と 都市施設の利用頻度の相関~同様にして重回帰分析により、日常役割機能(身体)とスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数に日常役割機能(身体)の得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.5 に示す。
標準化係数を見ると、日常役割機能(身体)に大きな影響を与えている独立変数は、田畑の利用頻度の1変量である。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、日常役割機能(身体)にあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、日常役割機能(身体)に影響を与える要因ということになる。したがって、今回の重回帰分析では全ての独立変数があまり影響を与えていない傾向がある。
また重相関係数が1に近いほど重回帰式のあてはまりが良いといえるが、今回の重回帰式における重相関係数は 0.349 と極めて低い値が出ている。
この分析では、日常役割機能(身体)に影響を与えている施設利用頻度は見い出すことが出来なかった。
表5.5 重回帰分析の結果(日常役割機能・身体と利用頻度の相関)
!"#$%& "#$%&
'()*+%&, -./
0(123%&, 45678 (9&, :85;<< 45444
0=> 45;<< [email protected] 4547F 45;<6 45744
GHABCDE I454<7 I454F6 45F;J
GKLABCDE 454<M 454MJ 45784
NOPQRABCDE I45474 I45;7M 45<J<
STABCDE 45476 45<7F 454M6
UVW& XYZ[\]W&
0^_`a
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5-2-6 重回帰分析 4 ~体の痛みと都市施設の利用頻度の相関~同様にして重回帰分析により、体の痛みとスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数に体の痛みの得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.6 に示す。
標準化係数を見ると、体の痛みに大きな影響を与えている独立変数は、スーパーの利用頻度、田畑の利用頻度の2変量である。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、体の痛みにあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、体の痛みに影響を与える要因ということになる。したがって、田畑の利用頻度が身体機能に影響を与えている要因であるといえる。標準化係数によって抽出されたスーパーの利用頻度は除去することになる。
ただし、いずれの独立変数においても偏回帰係数が極めて小さい値となっているため、重回帰式としてあてはまりが悪いことがわかる。
また重相関係数が1に近いほど重回帰式のあてはまりが良いといえるが、今回の重回帰式における重相関係数は 0.410 とやや低い値が出ている。
この分析から読み取れることは、偏回帰係数の値が正であることから、田畑に行く頻度が多い高齢者は、体の痛みの得点が高い傾向にある、すなわち体の痛みを感じていない傾向があるといえる。
表5.6 重回帰分析の結果(体の痛みと利用頻度の相関)
!"#$%& "#$%&
'()*+%&, -./
0(123%&, 45674 (8&, 945::; 45444
0<= 457>: [email protected] 454F4 45GG: 4577G
HIABCDE J4546K J45799 45G7;
HLMABCDE 4547: 454>6 459>6
NOPQRABCDE 4547: 454FK 45994
STABCDE 454>4 4567G 4544;
UVW& XYZ[\]W&
'^_`a
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5-2-7 重回帰分析 5 ~社会生活機能と都市施設の利用頻度の相関~同様にして重回帰分析により、社会生活機能とスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数に社会生活機能の得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.7 に示す。
標準化係数を見ると、社会生活機能に大きな影響を与えている独立変数は、田畑の利用頻度のみである。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、社会生活機能にあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、社会生活機能に影響を与える要因ということになる。したがって、高齢者施設の利用頻度が社会生活機能に影響を与えている要因であるといえる。田畑の利用頻度は有意確率が 0.05 を下回る結果になった。
ただし、いずれの独立変数においても偏回帰係数が極めて小さい値となっているため、重回帰式としてあてはまりが悪いことがわかる。
また重相関係数が1に近いほど重回帰式のあてはまりが良いといえるが、今回の重回帰式における重相関係数は 0.317 とかなり低い値が出ている。
この分析から読み取れることは、偏回帰係数の値が正であることから、田畑に行く頻度が多い高齢者は、社会生活機能の値が高い傾向があるといえる。
表5.7 重回帰分析の結果(社会生活機能と利用頻度の相関)
!"#$%& "#$%&
'()*+%&, -./
0(123%&, 45678 (9&, 8:5;<< 45444
0=> 45744 [email protected] 45468 457<; 456F:
GHABCDE I454<8 I454JF 45:JK
GLMABCDE 454:6 457;; 45788
NOPQRABCDE 45477 454;4 45877
STABCDE 454:4 45<J; 4546F
UVW& XYZ[\]W&
^_`ab
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5-2-8 重回帰分析 6 ~日常役割機能(精神)と 都市施設の利用頻度の相関~同様にして重回帰分析により、日常役割機能(精神)とスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数に日常役割機能(精神)の得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.8 に示す。
標準化係数を見ると、日常役割機能(精神)に大きな影響を与えている独立変数はない。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、日常役割機能(精神)にあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、日常役割機能(精神)に影響を与える要因ということになる。今回の分析では、全ての独立変数の有意確率が 0.05 を下回る結果になった。
したがって、日常役割機能(精神)に影響を与えている都市施設の利用頻度は無いという傾向がわかった。
表5.8 重回帰分析の結果(日常役割機能・精神と利用頻度の相関)
!"#$%& "#$%&
'()*+%&, -./
0(123%&, 45676 (8&, 9:5:4; 45444
0<= 454;> [email protected] 454>; 45F6> 45>F;
GHABCDE I454F> I4547J 45:9J
GKLABCDE 45474 454MM 45>;>
NOPQRABCDE I454FM I4549M 45974
STABCDE 4546: 45F;9 456:F
UVW& XYZ[\]W&
0^_`a
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5-2-9 都市施設の利用頻度とQ.O.L の相関6つの重回帰分析より得た有意確率を表 5.9 に示す。ここでは各得点ごとの、一つ一つの要素(説明変数)の有意確率を比較する。この場合の有意確率とは、「ある要素(説明変数)がモデルの予測に役立たない」という仮説に対する有意確率である。有意確率が 0.05 以下の場合、仮説が棄却され、その要素がモデルの予測に役立つということになる。よって値の小さいものほど、モデルの予測に影響するということである。表 5.8 中で黄色のセルは有意確率 0.05 以下のもので、青色のセルは有意確率 0.10 以下のものである。田畑の利用頻度は比較的多くの目的変数に対し影響を及ぼし、逆に公園の利用頻度はまったく影響を及ぼしていない。
!"#" $% $&' ()*+, -.
/0102 30345 30567 30385 30883 30333
9:;< 3033= 30=78 3033> 30336 30338
?@AB;<C9:D 30>33 30=87 30>43 30575 3036E
:FGH 30885 3058E 30I=> 30II3 3033E
JKLM;< 30E4> 30>7= 30866 30688 303E4
?@AB;<CNOD 30>8I 306=4 30>I> 30=E3 30568
PQRSTUVW
表 5.9 各モデル式の有意確率
!"#" $% $&' ()*+, -.
/0102 30345 30365 30374 830396 3034:
;<=> 30?35 303?4 30357 8303:4 303@?
ABCD=>E;<F 3034@ 830364 3036: 830343 30349
<GHI 303:3 83034J 303?5 303?5 303@3
KLMN=> 3039: 83036: 30349 303?? 30343
ABCD=>EOPF 30347 8303?4 30393 8303?5 3036:
QRSTUVWXY
次に、6つの重回帰分析より得た偏回帰係数を表 5.10 に示す。偏回帰係数が正の値は、その施設の利用頻度が上がるほど、目的変数の値も高くなる。逆に偏回帰係数が負の値は、その施設の利用頻度が下がるほど、目的変数の値が高くなることを指す。
表 5.10 より、スーパー、公民館、田畑の利用頻度に関しては偏回帰係数が全て正であるが、公園や高齢者施設に関しては、偏回帰係数が負の値が多い。
表5.10 各モデル式の有意確率
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次に、先ほどの偏回帰係数を目的変数ごとの順位づけを行った(表 5.11)。偏回帰係数の絶対値の大きさにより、絶対値の大きい順に並んでいる。
! " # $ %
&'(') *+, -./. 01 23456 *7
89:; -./. *+, 23456 01 *7
<=>?:;@89A -./. 01 23456 *+, *7
9BCD -./. 01 *7 *+, 23456
EFGH:; *+, 01 -./. *7 23456
<=>?:;@IJA -./. *+, 01 23456 *7
KL@MNBOPQBRSTKAUVWMN
以上より、以下のことが言える。
◇Q.O.L 総合得点に対して、公民館、スーパー、田畑の利用頻度が影響している傾向がある。公民館、スーパー、田畑へ訪れる機会が多い高齢者は、Q.O.L の値が高い傾向がある。
◇身体機能の得点に対して、スーパー、公民館、高齢者施設の利用頻度が影響している傾向がある。スーパー、公民館へ訪れる機会が多い高齢者は、激しい活動を含むあらゆるタイプの活動を行うことが可能な人が多く、高齢者施設へ訪れる機会が少ない高齢者は、激しい活動を含むあらゆるタイプの活動を行うことが可能な高齢者が多い傾向がある。
◇日常役割機能(身体)の得点に対して、スーパー、田畑、高齢者施設の利用頻度が影響している傾向がある。スーパー、田畑へ訪れる機会が多い高齢者は、仕事やふだんの活動を行うことが容易な人が多く、高齢者施設へ訪れる機会が少ない高齢者は、仕事やふだんの活動を行うことが容易な高齢者が多い傾向がある。
◇体の痛みの得点に対して、スーパー、田畑、公園の利用頻度が影響している傾向がある。スーパー、田畑へ訪れる機会が多い高齢者は、体の痛みのために活動が妨げられることがない人が多く、公園へ訪れる機会が少ない高齢者は、体の痛みのために活動を妨げられることがない人が多い傾向にある。
◇社会生活機能の得点に対して、公民館、田畑、スーパーの利用頻度が影響している傾向がある。公民館、スーパー、田畑へ訪れる機会が多い高齢者は、家族、友人、近所の人、その他の仲間とのふだんの付き合いが、身体的あるいは心理的な理由で妨げられることがない人が多い傾向がある。
◇日常役割機能(精神)の得点に対して、スーパー、公民館、田畑の利用頻度が影響している傾向がある。公民館、スーパー、田畑へ訪れる機会が多い高齢者は、仕事やふだんの活動をした時に心理的な理由で問題がない高齢者が多い傾向がある。
第5章 高齢者のQ
.O.L
に関わる都市パラメータ 5-1 都市施設の利用頻度と利便性の相関
5-2 都市施設の利用頻度とQ.O.L の相関
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ
5-1 都市施設の利用頻度と利便性の相関5-1-1 南牧村前章で得た、都市施設の利用頻度の得点と、利便性の得点を用いて関係を見る。都市施設の利用頻度は年間平均利用日数を用いて、利便性については「かなり便利」を2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として表している。図 5-1 には南牧村の都市施設の利用頻度と利便性の関係を示している。南牧村は都市施設の利便性において役場と公民館の値が非常に高い。また役場と公民館の利用頻度も年間平均利用日数が70日前後とやや高い。またスーパーの利用頻度が最も高いが、利便性の得点は「やや不便」な傾向にある。コンビニの利便性はやや高いものの、あまり利用はされていない傾向にある。
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図 5-1 都市施設の利用頻度と利便性の相関(南牧村)
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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5-1-2 上野村都市施設の利用頻度は年間平均利用日数を用いて、利便性については「かなり便利」を2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として表している。図 5-2 には上野村の都市施設の利用頻度と利便性の関係を示している。上野村の病院・薬局、高齢者施設は非常に便利である結果が出ている。ただし、病院・薬局に関しては利用頻度が少ない傾向にある。高齢者施設については便利であり、利用頻度も高い傾向にあると言える。
図5-2 都市施設の利用頻度と利便性の相関(上野村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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5-1-3 売木村都市施設の利用頻度は年間平均利用日数を用いて、利便性については「かなり便利」を2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として表している。図 5-3 には上野村の都市施設の利用頻度と利便性の関係を示している。上野村は全体的に利便性が高いものの、利用頻度が非常に少ない。病院・薬局、公民館、高齢者施設は非常に便利であるものの、ほとんど利用されていない傾向がある。
図5-3 都市施設の利用頻度と利便性の相関(売木村)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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5-1-4 伊達市都市施設の利用頻度は年間平均利用日数を用いて、利便性については「かなり便利」を2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として表している。図 5-4 には伊達市の都市施設の利用頻度と利便性の関係を示している。伊達市の都市施設は全体的に便利であることが分かる。特に他の地域にはない、公園の利便性の高さは特筆すべき点である。そして公園は非常によく利用されていることも分かる。
図5-4 都市施設の利用頻度と利便性の相関(伊達市)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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5-1-5 新潟市都市施設の利用頻度は年間平均利用日数を用いて、利便性については「かなり便利」を2点、「やや便利」を1点、「やや不便」を-1点、「かなり不便」を-2点として表している。図 5-5 には新潟市の都市施設の利用頻度と利便性の関係を示している。新潟市では公民館の利便性が高く、利用頻度も非常に多い。また公園の利便性もやや高い傾向にあるが、あまり利用されていない。
図5-5 都市施設の利用頻度と利便性の相関(新潟市)
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高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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5-1-6 都市施設の利用頻度と利便性の相関以上の結果をふまえると、全体的に利便性が高ければ、利用頻度が多くなる傾向がある。ただ、スーパーは日常生活に欠かせない施設であるにも関わらず、利便性が高くても利用頻度の少ない地域、利便性が少なくて利用頻度の少ない地域が見られた。スーパーに関してはどんなに不便であっても最低限は利用すると考えられるのだが、今回の結果で示すことは出来なかった。また、公園は利便性が高ければ利用頻度が多くなる傾向が見られた。公園はスーパーと異なり、日常生活に必ずしも必要な施設であるとは言い難い。しかし高齢者は近くに公園があれば利用する傾向があると言える。アンケート回答の中には、欄外の自由記述において「公園へ毎日通うことが日課」や「公園まで少し距離があるが、そこまで散歩がてら歩く様にしている」と記述している高齢者がいたことも事実である。高齢者施設については、利便性に関わらず、たとえ不便であったとしても利用する高齢者が多い傾向が表れた。
今回の結果では、必ずしも「利便性が高ければ、都市施設を利用する回数が多くなる」とは言えないが、公園や公民館など「必ずしも行く必要が無いけれども、利便性が高ければ、その施設を利用する回数が多くなる」という傾向が見られる施設もあったと言えるだろう。
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図 5-6 都市施設の平均年間利用日数
5-2 都市施設の利用頻度とQ.O.L の相関5-2-1 説明変数の抽出前章でも用いた都市施設の平均年間利用日数のグラフ(図 5-1)を基に、日数差の大きい都市施設をピックアップして分析を行う。現状の全ての要素を利用するには、説明変数が多すぎて有意なモデル式は得られない。そこで前章の結果を用いて、説明変数を減らすこととする。
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差が大きくみられる施設5つを図5-7にピックアップした。抽出した項目は、スーパー、公園、公民館、高齢者施設、田畑である。これらを説明変数とし、分析を行っていく。
図5-7 説明変数に挙げた施設の平均年間利用日数
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5-2-2 目的変数の抽出目的変数にはQ.O.L と下位尺度を利用する。前章で都市毎にQ.O.L の得点について行った。それらを利用し目的変数を決定する。表 5.1 はアンケート調査を行った全6都市の得点である。黄色いセルが下位尺度ごとの最大値である、青いセルが最小値である。また、下位尺度の最大値と最小値の差も示している。
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67879 :;7< =>7< :;7; >?7= :@7= A=7> B:7=
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JDKL :@7< @=7B :<7B A@7; :?7; A?7= @B7:
MNOPKLQJDR ?;7B @@7= A=7@ >I7A >>7? A<7; @>7:
D4ST A>7@ =;7@ A=7@ =@7> A@7@ A<7? I=
UV >:7: =:7; A>7> >=7B A<7< >:7= ;:7=
WXYUKL ?I7= A<7< ?B7: :<7; ?;7A :=7A IB7:
MNOPKLQZ[R ?;7A =?7I :>7I A>7= ?:7> A=7> B?7@
\4FG A=7< >>7: :@7> A<7I :<7< :I7? ;A7:
!"# $%# &'# ()* +,*-./0-1/23
45657 895: ;<5: 8959 <=5; >;5< ?;59
@ABCDE <85< ;?5= >:5F >?5: >958 9=59
GAHI 8F5: F;5J 8:5J >F59 >=5; J85>
KLMNHIOGAP =95J FF5; >;5F <?5> >:59 F<58
A2QR ><5F ;95F >;5F ;F5< >:5= ?;
ST <858 ;859 ><5< <;5J <85; 985;
UVWSHI =?5; >:5: =J58 8:59 8;5> ?J58
KLMNHIOXYP =95> ;=5? 8<5? ><5; >;5< J?5;
Z2CD >;5: <<58 8F5< >:5? 8?5= 9>58
今回の分析では説明変数を都市施設の利用頻度としているので、利用頻度の調査を行った5都市のQ.O.L の得点が対象となる。表 5.1 から利用頻度の調査を行っていない小笠原村の値を除去したものが表 5.1 である。この中から、目的変数として利用するものは得点の最大値と最小値の差が 20以上のものとする。したがって、Q.O.L の総合得点、身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、社会生活機能、日常役割機能(精神)の得点を目的変数とする。
表5.1 Q.O.L と下位尺度の都市毎の比較1
表 5.2 Q.O.L と下位尺度の都市毎の比較 2
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5-2-3 重回帰分析1 ~ Q.O.L と都市施設の利用頻度の相関~重回帰分析により、Q.O.L とスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数にQ.O.L の総合得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.3 に示す。
標準化係数を見ると、Q.O.L に大きな影響を与えている独立変数は、スーパーの利用頻度、公民館の利用頻度、田畑の利用頻度の3変量である。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、Q.O.L にあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、Q.O.L に影響を与える要因ということになる。したがって、公民館の利用頻度と田畑の利用頻度がQ.O.L に影響を与えている要因であるといえる。
ただし、いずれの独立変数においても偏回帰係数が極めて小さい値となっているため、重回帰式としてあてはまりが悪いことがわかる。
また重相関係数が1に近いほど重回帰式のあてはまりが良いといえるが、今回の重回帰式における重相関係数は 0.604 とやや低い値が出ている。
この分析から読み取れることは、偏回帰係数の値がそれぞれ正であることから、公民館の利用頻度が多い高齢者はQ.O.L の値が高い傾向があり、同様に田畑に行く頻度が多い高齢者はQ.O.L の値が高い傾向があると言える。
表5.3 重回帰分析の結果(Q.O.L と利用頻度の相関)
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0(123%&, 45647 (8&, 9:5;9< 45444
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HKLBCDEF 45497 45G76 454JG
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STBCDEF 4547< 457G: 45444
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^5_5`Babcd
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5-2-4 重回帰分析2 ~身体機能と都市施設の利用頻度の相関~同様にして重回帰分析により、身体機能とスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数に身体機能の得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.4 に示す。
標準化係数を見ると、身体機能に大きな影響を与えている独立変数は、スーパーの利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度の4変量である。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、身体機能にあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、身体機能に影響を与える要因ということになる。したがって、スーパーの利用頻度と公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度が身体機能に影響を与えている要因であるといえる。標準化係数による抽出と同様の結果になった。
ただし、いずれの独立変数においても偏回帰係数が極めて小さい値となっているため、重回帰式としてあてはまりが悪いことがわかる。
また重相関係数が1に近いほど重回帰式のあてはまりが良いといえるが、今回の重回帰式における重相関係数は 0.688 とやや低い値が出ている。
この分析から読み取れることは、偏回帰係数の値が正のもの負のものがあることから、スーパー、公民館、田畑の利用頻度が多い高齢者は、身体機能の値が高い傾向にあり、逆に高齢者施設の利用頻度が高い高齢者は、身体機能の値が低い傾向があるといえる。
表5.4 重回帰分析の結果(身体機能と利用頻度の相関)
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0(123%&, 45677 (8&, 9959:9 45444
0;< 45:=: >.?.@ABCD 45E47 45FE4 45446
GH@ABCD 454E: 454:4 4567E
GIJ@ABCD 45479 45K9L 4544:
MNOPQ@ABCD R454=: R45K7= 4544=
ST@ABCD 4546E 45F=K 4544E
UVW& XYZ[\]W&
^_`ab
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5-2-5 重回帰分析3 ~日常役割機能(身体)と 都市施設の利用頻度の相関~同様にして重回帰分析により、日常役割機能(身体)とスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数に日常役割機能(身体)の得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.5 に示す。
標準化係数を見ると、日常役割機能(身体)に大きな影響を与えている独立変数は、田畑の利用頻度の1変量である。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、日常役割機能(身体)にあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、日常役割機能(身体)に影響を与える要因ということになる。したがって、今回の重回帰分析では全ての独立変数があまり影響を与えていない傾向がある。
また重相関係数が1に近いほど重回帰式のあてはまりが良いといえるが、今回の重回帰式における重相関係数は 0.349 と極めて低い値が出ている。
この分析では、日常役割機能(身体)に影響を与えている施設利用頻度は見い出すことが出来なかった。
表5.5 重回帰分析の結果(日常役割機能・身体と利用頻度の相関)
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'()*+%&, -./
0(123%&, 45678 (9&, :85;<< 45444
0=> 45;<< [email protected] 4547F 45;<6 45744
GHABCDE I454<7 I454F6 45F;J
GKLABCDE 454<M 454MJ 45784
NOPQRABCDE I45474 I45;7M 45<J<
STABCDE 45476 45<7F 454M6
UVW& XYZ[\]W&
0^_`a
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5-2-6 重回帰分析 4 ~体の痛みと都市施設の利用頻度の相関~同様にして重回帰分析により、体の痛みとスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数に体の痛みの得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.6 に示す。
標準化係数を見ると、体の痛みに大きな影響を与えている独立変数は、スーパーの利用頻度、田畑の利用頻度の2変量である。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、体の痛みにあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、体の痛みに影響を与える要因ということになる。したがって、田畑の利用頻度が身体機能に影響を与えている要因であるといえる。標準化係数によって抽出されたスーパーの利用頻度は除去することになる。
ただし、いずれの独立変数においても偏回帰係数が極めて小さい値となっているため、重回帰式としてあてはまりが悪いことがわかる。
また重相関係数が1に近いほど重回帰式のあてはまりが良いといえるが、今回の重回帰式における重相関係数は 0.410 とやや低い値が出ている。
この分析から読み取れることは、偏回帰係数の値が正であることから、田畑に行く頻度が多い高齢者は、体の痛みの得点が高い傾向にある、すなわち体の痛みを感じていない傾向があるといえる。
表5.6 重回帰分析の結果(体の痛みと利用頻度の相関)
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'()*+%&, -./
0(123%&, 45674 (8&, 945::; 45444
0<= 457>: [email protected] 454F4 45GG: 4577G
HIABCDE J4546K J45799 45G7;
HLMABCDE 4547: 454>6 459>6
NOPQRABCDE 4547: 454FK 45994
STABCDE 454>4 4567G 4544;
UVW& XYZ[\]W&
'^_`a
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5-2-7 重回帰分析 5 ~社会生活機能と都市施設の利用頻度の相関~同様にして重回帰分析により、社会生活機能とスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数に社会生活機能の得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.7 に示す。
標準化係数を見ると、社会生活機能に大きな影響を与えている独立変数は、田畑の利用頻度のみである。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、社会生活機能にあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、社会生活機能に影響を与える要因ということになる。したがって、高齢者施設の利用頻度が社会生活機能に影響を与えている要因であるといえる。田畑の利用頻度は有意確率が 0.05 を下回る結果になった。
ただし、いずれの独立変数においても偏回帰係数が極めて小さい値となっているため、重回帰式としてあてはまりが悪いことがわかる。
また重相関係数が1に近いほど重回帰式のあてはまりが良いといえるが、今回の重回帰式における重相関係数は 0.317 とかなり低い値が出ている。
この分析から読み取れることは、偏回帰係数の値が正であることから、田畑に行く頻度が多い高齢者は、社会生活機能の値が高い傾向があるといえる。
表5.7 重回帰分析の結果(社会生活機能と利用頻度の相関)
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'()*+%&, -./
0(123%&, 45678 (9&, 8:5;<< 45444
0=> 45744 [email protected] 45468 457<; 456F:
GHABCDE I454<8 I454JF 45:JK
GLMABCDE 454:6 457;; 45788
NOPQRABCDE 45477 454;4 45877
STABCDE 454:4 45<J; 4546F
UVW& XYZ[\]W&
^_`ab
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ
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5-2-8 重回帰分析 6 ~日常役割機能(精神)と 都市施設の利用頻度の相関~同様にして重回帰分析により、日常役割機能(精神)とスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度にどのような関係があるかを導き出す。
利用頻度の調査を行った、南牧村、上野村、売木村、新潟市、伊達市の調査結果より有効サンプルである86サンプルを用いた。従属変数に日常役割機能(精神)の得点を投入し、独立変数にスーパーの利用頻度、公園の利用頻度、公民館の利用頻度、高齢者施設の利用頻度、田畑の利用頻度を投入し分析を行った。結果を表 5.8 に示す。
標準化係数を見ると、日常役割機能(精神)に大きな影響を与えている独立変数はない。
有意確率が 0.05 よりも大きい独立変数は、日常役割機能(精神)にあまり影響を与えていない。逆に有意確率が 0.05 より小さい独立変数は、日常役割機能(精神)に影響を与える要因ということになる。今回の分析では、全ての独立変数の有意確率が 0.05 を下回る結果になった。
したがって、日常役割機能(精神)に影響を与えている都市施設の利用頻度は無いという傾向がわかった。
表5.8 重回帰分析の結果(日常役割機能・精神と利用頻度の相関)
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'()*+%&, -./
0(123%&, 45676 (8&, 9:5:4; 45444
0<= 454;> [email protected] 454>; 45F6> 45>F;
GHABCDE I454F> I4547J 45:9J
GKLABCDE 45474 454MM 45>;>
NOPQRABCDE I454FM I4549M 45974
STABCDE 4546: 45F;9 456:F
UVW& XYZ[\]W&
0^_`a
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ
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5-2-9 都市施設の利用頻度とQ.O.L の相関6つの重回帰分析より得た有意確率を表 5.9 に示す。ここでは各得点ごとの、一つ一つの要素(説明変数)の有意確率を比較する。この場合の有意確率とは、「ある要素(説明変数)がモデルの予測に役立たない」という仮説に対する有意確率である。有意確率が 0.05 以下の場合、仮説が棄却され、その要素がモデルの予測に役立つということになる。よって値の小さいものほど、モデルの予測に影響するということである。表 5.8 中で黄色のセルは有意確率 0.05 以下のもので、青色のセルは有意確率 0.10 以下のものである。田畑の利用頻度は比較的多くの目的変数に対し影響を及ぼし、逆に公園の利用頻度はまったく影響を及ぼしていない。
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/0102 30345 30567 30385 30883 30333
9:;< 3033= 30=78 3033> 30336 30338
?@AB;<C9:D 30>33 30=87 30>43 30575 3036E
:FGH 30885 3058E 30I=> 30II3 3033E
JKLM;< 30E4> 30>7= 30866 30688 303E4
?@AB;<CNOD 30>8I 306=4 30>I> 30=E3 30568
PQRSTUVW
表 5.9 各モデル式の有意確率
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/0102 30345 30365 30374 830396 3034:
;<=> 30?35 303?4 30357 8303:4 303@?
ABCD=>E;<F 3034@ 830364 3036: 830343 30349
<GHI 303:3 83034J 303?5 303?5 303@3
KLMN=> 3039: 83036: 30349 303?? 30343
ABCD=>EOPF 30347 8303?4 30393 8303?5 3036:
QRSTUVWXY
次に、6つの重回帰分析より得た偏回帰係数を表 5.10 に示す。偏回帰係数が正の値は、その施設の利用頻度が上がるほど、目的変数の値も高くなる。逆に偏回帰係数が負の値は、その施設の利用頻度が下がるほど、目的変数の値が高くなることを指す。
表 5.10 より、スーパー、公民館、田畑の利用頻度に関しては偏回帰係数が全て正であるが、公園や高齢者施設に関しては、偏回帰係数が負の値が多い。
表5.10 各モデル式の有意確率
高齢者の都市施設利用とQ.O.L に関する研究
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第5章 高齢者のQ.O.L に関わる都市パラメータ
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
次に、先ほどの偏回帰係数を目的変数ごとの順位づけを行った(表 5.11)。偏回帰係数の絶対値の大きさにより、絶対値の大きい順に並んでいる。
! " # $ %
&'(') *+, -./. 01 23456 *7
89:; -./. *+, 23456 01 *7
<=>?:;@89A -./. 01 23456 *+, *7
9BCD -./. 01 *7 *+, 23456
EFGH:; *+, 01 -./. *7 23456
<=>?:;@IJA -./. *+, 01 23456 *7
KL@MNBOPQBRSTKAUVWMN
以上より、以下のことが言える。
◇Q.O.L 総合得点に対して、公民館、スーパー、田畑の利用頻度が影響している傾向がある。公民館、スーパー、田畑へ訪れる機会が多い高齢者は、Q.O.L の値が高い傾向がある。
◇身体機能の得点に対して、スーパー、公民館、高齢者施設の利用頻度が影響している傾向がある。スーパー、公民館へ訪れる機会が多い高齢者は、激しい活動を含むあらゆるタイプの活動を行うことが可能な人が多く、高齢者施設へ訪れる機会が少ない高齢者は、激しい活動を含むあらゆるタイプの活動を行うことが可能な高齢者が多い傾向がある。
◇日常役割機能(身体)の得点に対して、スーパー、田畑、高齢者施設の利用頻度が影響している傾向がある。スーパー、田畑へ訪れる機会が多い高齢者は、仕事やふだんの活動を行うことが容易な人が多く、高齢者施設へ訪れる機会が少ない高齢者は、仕事やふだんの活動を行うことが容易な高齢者が多い傾向がある。
◇体の痛みの得点に対して、スーパー、田畑、公園の利用頻度が影響している傾向がある。スーパー、田畑へ訪れる機会が多い高齢者は、体の痛みのために活動が妨げられることがない人が多く、公園へ訪れる機会が少ない高齢者は、体の痛みのために活動を妨げられることがない人が多い傾向にある。
◇社会生活機能の得点に対して、公民館、田畑、スーパーの利用頻度が影響している傾向がある。公民館、スーパー、田畑へ訪れる機会が多い高齢者は、家族、友人、近所の人、その他の仲間とのふだんの付き合いが、身体的あるいは心理的な理由で妨げられることがない人が多い傾向がある。
◇日常役割機能(精神)の得点に対して、スーパー、公民館、田畑の利用頻度が影響している傾向がある。公民館、スーパー、田畑へ訪れる機会が多い高齢者は、仕事やふだんの活動をした時に心理的な理由で問題がない高齢者が多い傾向がある。
表5.11 偏回帰係数のまとめ
第6章 まとめ・展望
6-1 まとめ6-2 展望
高齢者のQ.O.L と都市施設利用頻度の相関モデル
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第6章 まとめ・展望
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第6章 まとめ・展望6-1 まとめ今回の研究では、都市施設の利用頻度と相関のある傾向を示すQ.O.L の下位尺度は、身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、社会生活機能であることが分かった。またQ.O.L に影響を及ぼす傾向のある都市施設は、スーパー、公民館、田畑、高齢者施設、公園であった。
同時に、都市において、都市施設の利便性が高ければ高いほど、都市施設の利用頻度が多くなる傾向がみられた。すなわち、スーパー、公民館、高齢者施設、公園への利便性を高めれば、都市施設の利用頻度を多くすることができ、さらにQ.O.L を高めることが可能であるといえる。
また、調査地を選定する際に「高齢化率」を用いたが、高齢化率とQ.O.L の相関を見い出すことは出来なかった。つまり、高齢者が多いからといって必ずしもQ.O.L の値が低いわけではない。また、高齢者率と利便性の間にも相関は見られなかった。
高齢者のQ.O.L と都市施設利用頻度の相関モデル
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第6章 まとめ・展望
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
6-2 展望相関モデルについて、モデルの当てはまりが悪く、説明変数が及ぼしている影響が少ない原因として考えられるのは、サンプル数が少なかったためだと考えられる。各都市において、より多くのサンプルを集め、また各都市とも平均して同数のサンプルを集める必要がある。
また今回の分析では5都市の比較を行いデータとして利用したが、より多くの都市のサンプルを集める必要がある。多くの都市のデータがあることにより、都市施設の多種の配置を用いることが出来るので、相関モデルの精度を上げることができるだろう。
今回は現状を分析するまでに留まった。今後、将来的に高齢者率が増加した際にどのような都市施設を増やせば高齢者のQ.O.L が維持でき、また高めることが出来るのか検討、シュミレーションを行うことが必要であると感じる。
資料編
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
終わりに
長い長い執筆期間がやっと終わった。
テーマを決めるまで約4ヶ月、そこから今まで約4ヶ月。とても長く感じたが、数字に表すと短く感じる。
本田さん、信じられないくらい助けられました。こんなに感謝したこと今まで無いくらい感謝しています。本当にありがとうございました。
長澤さん、本当に色々とご迷惑をおかけしました。どうしようもない自分ですが、最後までご指導して頂いて、本当に感謝しています。ありがとうございました。
そして、渡辺先生。先生の研究室に入って良かったと、心からそう思います。ご指導、ありがとうございました。
今はただ、遊ぶよりも思いっきり寝たいです。
2008 年 11 月8日 田名網祐
Hitoshi Watanabe.Lab Waseda.Univ 2008
参考文献
1) 三宮基裕 他 : 地方都市における高齢者の街歩きの意義と福祉のまちづくりに向けた今後の課題 高齢期における地域生活行動に関する研究 その 2、日本建築学会学術講演梗概集 . E-2, 建築計画 II, 住居・住宅地 , 農村計画 , 教育 2007, p73-p74
2) 堀 敦志 他 : 介護予防を目的とした高齢者の住環境とADL・QOLの関係に関する調査研究、日本建築学会計画系論文集 (620) p.1-p.7
3) 朴 貞淑 他 : 在宅福祉ニーズにおける在宅支援に関する研究 (I) : 岡山県を事例として ( 建築計画 )/ 日本建築学会技術報告集 No.23 p.285-p.288
4) 小澤純一 他 : 居住環境評価からみた高齢脳卒中患者の生活機能・障害について : 高齢者の生活機能・障害と居住環境の関連性に関する調査研究、日本建築学会計画系論文集 (605) p.1-p.6
5) 日下部真世 : 食行動の自由度からみた生活環境の評価モデル、日本建築学会大会学術講演梗概集
6) 平野順子 : わが国における高齢者のQOL研究の文献的考察と展望、生きがい研究 8、p.71-p.89
7) 水間政典 : 都市居住高齢者の外出行動の特性の圏域に関する研究ー都市型高齢者住宅居住者の実態分析とシミュレーション、MASコミュニティ研究報告
8) 内閣府、「平成 19年版 高齢社会白書、株式会社ぎょうせい、2007
9) 石田秀人、「考える統計学」、工学社、2007
10) 石村貞夫 他、「SPSS でやさしく学ぶ多変量解析」、東京図書、2006
11) 内田治、「すぐわかる SPSS によるアンケートの多変量解析」、東京図書、2007
12) 福原俊一 他、「健康関連QOL尺度 SF-36v2TM 日本語版マニュアル」、健康医療評価研究機構、2008
注釈
基本的には、文章をより簡単な表記にするよう配慮はしているが、専門的な用語は注釈としてではなく本文中に分かりやすく説明を載せている。しかし、一部分かりにくい語があると予想出来るので、以下に補足する。
地方都市(P.7)首都以外の都市。あるいは首都圏以外の都市。
公共交通機関(P.29)不特定多数の人々が利用する交通機関を指す。日本の高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)では、鉄道事業法に基づく鉄道事業者、軌道法に基づく軌道経営者、道路運送法に基づく一般旅客自動車営業者、自動車ターミナル法によりバス事業を営む者、海上運送法による航路運行事業者、航空法による旅客輸送を行う者と定義されている。
説明変数(P.72)説明変数 (explanatory variable), 予測変数 (predictor) とも呼ばれる。回帰分析において , ある 1 個の変数 Y の予測値 Yhat が ,p 個の変数 Xi(i=1,2,...,p) によって Yhat=b0+b1・X1+b2・X2+・・・+bp・Xp という重回帰式で定義される場合 ,Xi を独立変数 ( リグレッサー regressor),Y を従属変数 ( リグレッサンド regressand) と呼ぶ。例えば実験などでいくつかの実験条件によって結果が変化するような場合 , 結果 ( 従属変数 ) は実験条件 ( 独立変数 ) に「従属」して決るが , 実験条件は結果とは「独立」に自由に変えられるという意味を含んでいる。説明変数という呼びかたは , 従属変数の変動を「説明」することから , 予測変数という呼びかたは , 従属変数を「予測」するための変数であることからつけられたものである。判別分析においては , あるケースがどの群に属するかを「予測」する。例えば 2 群の判別の場合に ,n1,n2 を各群のケース数としたとき , 一方の群に n2/(n1+n2), もう一方の群に -n1/(n1+n2) という数値を与えたときの重回帰分析と , 通常の線形判別分析とは等価であることが導ける。このため解析プログラムによっては , 判別分析の場合にも独立変数 , 従属変数という呼びかたをしている。ただし , 判別分析においては「独立変数」よりは「説明変数」と呼んだほうが適切かもしれない。あるケースがどの群に属するかは , 例えば臨床所見から医師が鑑別診断を下すように , 統計学とは別の観点から ( やや経験学的に ) 決められる「外的基準」である。このようなことから ,「従属変数」を基準変数 (criterion variable) と呼ぶ場合もある (回帰分析の場合にも独立変数が「外的基準」であることに変りはない )
目的変数(P.73)従属変数とも呼ばれ ," 結果 " として捉える変数のことであり , 要因から影響を受ける変数のことをいう。
セル(P.73)ラテン語の cella に由来する英語で、「小部屋」「小区画」を意味する。スプレッドシート上の個々のマス目。
重回帰分析(P.74)多変量解析の一つ。回帰分析の独立変数が複数になったもの。適切な変数を複数選択することで、計算しやすく誤差の少ない予測式を作ることができる。一般的によく使われている最小二乗法、線形モデルの重回帰は、数学的には線形分析の一種であり、分散分析などと数学的に類似している。
U0807
高齢者の都市施設利用とQ.O.L.
に関する研究
田名網祐