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DSL技術の現状と将来 梅山 伸二

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DSL技術の現状と将来

梅山 伸二

ちょっと振り返って・・・

1997 伊那xDSL利用実験 第ゼロ?世代 標準は存在しなかった 技術の基礎は固まった

xDSLはまだCAP方式が多かった

1999 xDSL商用サービス立ち上げITU-TでG.992.1、G992.2が標準化される 第1世代

 ADSLはDMT方式が 標準となる2000 年末でユーザ数1万弱

G.992.2(G.Lite)が中心 DSLAM高密度化 低価格化 JATE認証(DIY化)2001 年末でユーザ数150万強

G.992.1(G.DMT)に移行、8Mbpsへ

第2世代(第1.5世代?) 高速化 長距離化

2002 年末でユーザ数564万5千秋にいわゆる12Mbpsサービスが始まる

第1世代ADSL(LegacyADSLなどとも呼ばれる)の概要通常のG.992.1(オプションなどは使わないもの)

・ FDM(周波数分割多重)・ マルチキャリア

上り信号

下り信号

トーン(ビンとも呼ばれる)幅4kHzのキャリア (1つのトーンは最大60kbpsの通信を行う)

223個のトーン27個のトーン信号強度

周波数

1104kHz26kHz 138kHz

・ 上位層はATM方式   これは必須ではないが事実上ATMばかりになっている

日本向け仕様 AnnexCG.992.1およびG.992.2のAnnexの一つ

日本では:  ・ISDNが非常に普及している(1000万ユーザ)  ・ISDNの方式が欧米と異なる     帯域が広い(320kHz)、時分割方式、高調波をたれながしている

    日本ではISDNからの干渉(妨害)が非常に強い    ISDNからの干渉を防ぐ方法をAnnexCで規定

ADSLはFDM(周波数分割多重)なのだが、これにISDN同期のTDM(時分割多重)を加味したのがAnnexC

 ・DBM(DualBitMap) 干渉が強いサイクルでは速度を落とす ・FBM(FextBitMap)  干渉が強いサイクルでは通信しない                  =>完全にISDNに同期した通信  

第1世代ADSL(LegacyADSL)の性能

・ 下り最大8Mbps、上り最大1Mbpsの通信速度キャリア自体は下り最大13.3Mbps,上り最大1.5Mbpsまで可能これを制限しているのは、データを通信する単位であるフレームの構成方法である。

・ 通信可能距離はせいぜい5km

ケーブルや雑音によって変わる、5km以下でも通信できないこと多し5kmでの通信速度は512kbps以下最大通信速度で通信できるのはせいぜい2km

性能を制限するもの:ケーブルでの損失

高い周波数の信号は遠距離まで到達できない

0.5mmケーブルの伝送損失

-120

-100

-80

-60

-40

-20

0

0 200 400 600 800 1000 1200

周波数(kHz)

損失(dB)

3km

5km

伝送損失の測定例

性能を制限するもの:雑音

漏話(CrossTalk)が最大の雑音源である  ADSLのFDM(周波数分割多重)という方式はこの対策である

漏話源 回線1

回線2

遠端漏話(FEXT)

近端漏話(NEXT)

近端漏話と遠端漏話

近端漏話による強い雑音

送信 回線1

回線2受信

減衰した弱い信号

近端漏話による干渉

ADSLサービスの現状と課題

・ 完全にブロードバンド通信の主役になった

一般家庭向けにはADSL、企業向けはFTTHという分担になるのではないか

・ 全ての家庭にADSLサービスを提供しなければならないが  現実にはサービスを提供できないエリアがある

・ 局舎からの距離が遠い加入者にサービスできない  (雑音等でサービスできない場合もある)・ 部分的光化によってサービスできない

前者の解決のため、ADSLの長距離化(長延化ともよばれる)が必要後者の解決のためには光ファイバからメタルへの変換点(RT)の開放が必要

高速化はどちらかというと事業者のユーザ獲得争いのためか?

高速化はパイの奪いあい、長距離化はパイの拡大のはずなのだが・・・

どうすれば長距離化できるか

長距離では高い周波数は使えない⇒ 下り信号に使える帯域(138kHz以上)がなくなってしまう。⇒ 上り信号が使う帯域を下り信号でも使いたい⇒ 138kHz以下を上り・下りで共用する     オーバーラップ方式と呼ぶ

信号強度(模式的)

138kHz 1.1MHz26kHz

上り

下り

周波数

オーバーラップ方式

オーバーラップした帯域では、上り信号と下り信号を切り分けるためエコーキャンセラー(エコキャン)という技術を使う

送信回路

受信回路

エコーキャンセラー

送信信号

送信信号

受信信号+送信信号受信信号

送信信号送信信号を打ち消す

DSL装置

送信信号

ケーブル

受信信号

エコーキャンセラー自体は古くから使われてきた技術                  欧米のISDNやHDSL,SDSLで使われている。

オーバーラップ方式自体も新しいものではなく、G.992.1、G.992.2のオプションとして規定されている。                  使われるようになったのは2002年あたりから

これだけでは長距離化には不十分

  パイロットトーン、同期信号といった、制御のための信号も低い周波数に  移さなければならない

      規格(ITU-T標準)の変更が必要

  ・ 欧米ではG.992.3、G.992.4として標準化  ・ 日本では G.992.1 AnnexC の改訂、としてITU-Tに提案

なんで日本は独自規格にしたがるのか・・・

オーバーラップ方式の問題点   干渉

上り信号・下り信号が同じ帯域を使っているため漏話による干渉がおこる

  ・オーバーラップ方式どうしの干渉(自己干渉)  ・オーバーラップ方式が通常のADSL(LegacyADSL)の上り信号に干渉

  後者がTTCのスペクトルマネジメントで問題とされソフトバンクの  猛反発を受けた

漏話により雑音が増え、S/N比(信号対雑音の比)が悪くなることは確か。これにより性能(通信速度)が劣化することもほぼ確か。 対策としてオーバーラップしている下り信号の調整     強度を下げる、一部は上り信号と重ねない ->シェイピングと呼ぶを行う。 BBTのA.exという方式はこれを行っていない。

AnnexCのFBMモードは時分割動作なのでオーバーラップしても干渉しない。       反BBT派はこれを使えばよい、と主張している

時分割は通信速度が遅くなる!

長距離化に特化したDSL --- ReachDSL

・ 低い周波数帯域を使用     20~90kHzの帯域で1.1Mbpsの通信速度 (V2.2低速モード)・ ATDD(AdaptiveTimeDomainDuplexing:適応時分割2重)の使用     ユーザトラフィックに応じて上り・下りを切り替える     ユーザトラフィックがなければアイドリング

特徴: ・ 長距離まで通信できる       JANIS殿の実績ではNTT回線でも最長9km以上 ・ ユーザトラフィックに応じ通信速度を有効利用できる       固定時分割ではトラフィックがなくても上り・下りは切り替わってしまう

 ・ 雑音やブリッジタップ等の回線からくるトラブルにも強い       帯域が低いため

 ・ 電源消費・発熱が少ない。       アイドリング時には送信しない

干渉はおきる。ただし予想よりは少なく、自己干渉があっても性能は維持できる

どうすれば高速化できるか

現在のADSLでも、キャリアが伝送できる最大通信速度は13.3Mbpsある60kbps(1つのトーンの伝送速度)×222(トーン数:223-1) = 13.3Mbps

これが8Mbpsにおさえられているのは、キャリアを変調する前の処理で制限されているため。

  送信するデータはフレームという単位にまとめられ、誤り訂正などの処理が付け加わる。  このフレームの伝送容量が通常は8Mbpsになっている。  これを倍にすればキャリアの伝送速度一杯まで通信速度を上げられる

  フレーム伝送容量の2倍化は現行ADSL標準G.992.1のオプションとして規定されている。     (S=1/2オプションと呼ばれる)

 2002年秋に始まった12Mbpsサービスはこれを利用したものであり、 現行の技術標準(G.992.1)の範囲内でのオプションの利用である。

標準内とはいえ、オプションの利用には付随して様々な制御の追加が必要になる。12Mbpsサービスで使っているADSLはメーカ間の互換性が保証されない。新たな標準は必要である。欧米ではG.992.3(G.dmt.bis)という標準が制定されている。

もっと高速化するためには

通信速度 = トーンの数×1つのトーンの伝送速度変調速度×1変調でのビット数

これを15から20に増やすという案もあるが難しいだろう

これを増やすには帯域幅を増やさなければならない現在、138kHzから1.1MHzまで使っている。(下り方向)1) 2.2MHzまで使う  ーーー ダブルスペクトラム2) 3.75MHzまで使う --- カッドスペクトラム

カッドとは4という意味だが4倍の4.4MHzではなくて3.75MHzとしたのはVDSLの規格(Plan998)にあわせたため

欧米ではADSLplus(ADSL+)として標準化が検討されている。イーアクセスがADSLプラスというサービス名を使っているがあれはこの高速化技術とは関係ない。こういうまぎらわしい事はすべきでない。

上記1)を中心にG.992.5として標準化される見通し(今月合意の予定)

国内ではG992.1のAnnexIとして標準化を行おうとしている。これも国際標準と異なる日本独自規格にしようとしている

周波数を増やしても到達距離が短くなるだけなんだが・・・

138kHz 1.1MHz 2.2MHz 3.75MHz 5.2MHz

上り

上り

上り

下り

下り

下り

下り

周波数

標準ADSL(G.992.1)

ダブルスペクトラム(ADSLplus、AnnexI)

カッドスペクトラム(ADSLplus)

上り

VDSL AnnexA(旧Plan998)

スペクトル管理(社)情報通信技術委員会(TTC)が国内でのスペクトル管理の規格を作っている。NTTはこれに従って事業者との相互接続を管理する。

以下TTCの文書より:

• スペクトル管理の目的:

– メタリック電話ケーブルにおいて、複数事業者による複数の伝送システムが共存できることであり、最終的には利用者の利益を守ること

  全ての通信事業者がスペクトル適合性に対する責任を共有することを期待する

• スペクトル適合性の定義:

– 同一ケーブル内で、二つの伝送方式が互いに満足できる伝送性能を維持しながら共存できること

• スペクトル管理の定義:

– 電話ケーブル内のDSL回線間の相互干渉が発生する可能性を最小化し(=スペクトル適合性を確保する方法を明確化し)、周波数スペクトルを有効に利用すること

スペクトル管理の手順

・ 保護すべき方式を定める(標準システム第1グループ)    ISDN、ADSLのAnnexAおよびC (オーバーラップしないもの)  これらの最低保証速度を定める(伝送性能基準値)

・ 他の方式について、これを干渉源としたときの標準システム第1グループ  の伝送速度をシミューレーションし、伝送性能基準値と比較

  伝送性能基準値を下回った場合、以下の制限を加える   - 収容制限 (同一カッドに収容しない)   - 距離制限 (使用距離を制限する)

・ 現行規則(JJ100.01)では、以下のものが制限されている  (標準システム第2グループ)    SDSL  1.5Mbpsでは1.0km、2.3Mbpsでは0.75km    SHDSL 1.5Mbpsでは1.5km、2.3Mbpsでは1.0km

現行スペクトル管理方法(JJ100.01)の問題点

・ フィールドと異なるシミュレーションモデル   - 0.4mm紙絶縁ケーブルのみ   - 遠端漏話の過小評価    シミュレーション方法をフィールドと突き合わせて検証していないのではないか

・ 不合理な伝送性能基準値   遠距離で上り伝送速度が異常に大きい(下り速度を上回るところすらある)

結果として、

・ 長距離化の方式を排除してしまう。   長距離化のための方式に距離制限をつけてしまう

・ ISDN同期した方式(AnnexC)に極めて有利になっている。

                   TTCでの審議も極めて偏ったものになっている

距離[km]

ISDN

G.992.1 Annex A

G.992.2 Annex A

G.992.1 Annex C G.992.2 Annex C

DBM FBM DBM FBM

DS,US

DS US DS US DS US DS US DS US DS US

0.5 144 5632 832 2848 832 6048 832 2496 288 2912 832 1088 288

0.75

144 4032 832 2464 832 4960 832 2432 288 2656 832 1088 288

1.0 144 2400 800 2016 800 3808 800 2272 288 2368 800 1088 288

1.25

144 1504 768 1504 768 3168 768 2208 288 2048 768 1088 288

1.5 144 960 704 960 704 2784 736 2144 288 1696 736 1056 288

1.75

144 608 640 608 640 2432 704 2048 288 1504 704 1056 288

2.0 144 384 576 288 576 2208 672 1952 288 1280 672 1024 288

2.25

144 192 512 128 512 1984 640 1792 288 1184 640 1024 288

2.5 144 96 448 64 448 1664 576 1536 288 1120 576 960 288

2.75

144 32 352 32 352 1344 544 1248 256 1024 544 928 256

3.0 0 0 288 0 288 1120 480 1024 256 992 480 896 256

3.25

0 0 256 0 256 928 448 832 256 928 448 832 256

3.5 0 0 192 0 192 800 416 640 224 832 416 736 224

3.75

0 0 160 0 160 672 416 512 224 736 416 576 224

4.0 0 0 128 0 128 512 384 384 224 608 384 448 224

4.25

0 0 96 0 96 416 352 256 192 480 352 320 192

4.5 0 0 64 0 64 320 352 160 192 384 352 224 192

4.75

0 0 64 0 64 256 352 96 192 320 352 128 192

5.0 0 0 32 0 32 128 320 32 192 192 320 64 192

ソフトバンク 対 反ソフトバンクの対立  Yahoo!BBの12Mbpsサービスをめぐって

AnnexAフルオーバーラップ方式(A.ex)

・ 問題が出たら対処 対 事前規制

事前規制は必要だろう、事前規制のほうがコスト的に良い

・ A.exは問題ない 対 A.exは干渉をおこす

どっちも言い過ぎだろう、干渉はあるがそれほどでもない                      JJ100.01をまず改訂すべきだろう

・ AnnexA 対 AnnexC

ISDNの影響下ではAnnexCのほうが有利なことは確かただし、日本の規格が国際規格を必ずちょっと変えているのはどうかと思う国際規格を排除していると言われてもしかたがない     国際規格というのが実際はUSA規格にすぎないのだが・・・

DSL技術の将来

基本的にはもう頭打ちか?

電話回線の特性(損失、雑音等)はいかんともしがたいよほどのブレークスルーがなければ性能はこれ以上期待できないだろう

VDSLはあまり普及しないだろう

細かな改良やニッチ的な製品はでてくるだろう。

バースト転送の活用

今のADSLは無駄に信号を送信している   届かないトーンも送信   トラフィックが無くても常時送信

多数の回線を束ねて使うもの

光ファイバの無い所で光ファイバなみの高速通信をしたい

高信頼化通信速度を多少犠牲にしても信頼性を向上したい

DSLサービスの将来       2010年までを考えて

一般家庭にはADSL企業には光ファイバ      という棲み分けになるのではないかモバイルは無線

無線でのデータ通信がコスト、通信速度ともADSLにならんだ時DSLサービスは消滅していくだろう

残る課題  (ADSLがサービスできない場所をどうするのか)

コスト的に見合わない地域のブロードバンド化をどうするのか?

公的補助によるDSLサービス/CATV/無線ないし衛星通信?

RTの開放(部分的に光化された先へのADSLサービスの提供)

これまでと異なるDSLAMが必要           小型、小規模(たぶん50ポート以下)           低消費電力・低発熱・低雑音           悪環境(高温、高湿)で稼動しなければならない