所長seihodb.jp/uploads/survey/6125.pdf社援第1773号 裁決書 審査請求人 / 、 処分庁...

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社援第1773号 審査請求人 /、 ■■■■■■■■所長 ・審査請求人が平成26年6月30日付けで提起した生活保護法第63条 に基づく費用返還決定処分に係る審査請求について、次のとおり裁決する。 処分庁が、平成26年6.月9日付けで行った生活保護法第63条に基づ く費用返還決定処分を取り消す。 声、 第1審査請求の趣旨及び理由 1審査請求の趣旨 本件審査請求の趣旨は、処分庁が平成26年6月9日付けで審査請 求人(以下「請求人」という。)に対して行った生活保護法(以下「法」 という。)第63条に基づく費用返還決定処分(以下「本件返還決定」 という。)の取消しを求めるものと解される。 2審査請求の理由 -.1-

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社援第1773号

裁 決 書

審査請求人

/̅ 、 処 分 庁■■■■■■■■所長(

・審査請求人が平成26年6月30日付けで提起した生活保護法第63条に基づく費用返還決定処分に係る審査請求について、次のとおり裁決する。

主 文

処分庁が、平成26年6.月9日付けで行った生活保護法第63条に基づ■

く費用返還決定処分を取り消す。

声、 理 由、

第1審査請求の趣旨及び理由

1審査請求の趣旨

本件審査請求の趣旨は、処分庁が平成26年6月9日付けで審査請求人(以下「請求人」という。)に対して行った生活保護法(以下「法」という。)第63条に基づく費用返還決定処分(以下「本件返還決定」という。)の取消しを求めるものと解される。

2審査請求の理由-.1-

本件審査請求の理由の要旨は、次のとおりである。

(1)処分庁が本件返還決定したことは、請求人の最低限の生活を損なうものであり、不当である。.

(2)請求人は平成25年11月に部屋の物品を盗難に遭い、平成26年6月2日に保険会社より、盗難保険金1,006,000円の支払いを受けた。同月6日(金)に処分庁で職員2人と話し合い、週明け月曜日の同月9日に持参返還することで合意。しかし、同日、請求人の不注意で返還金を遺失し、返還不能となった。結果として、請求人には百万円強の返還義務額(毎月の保護給付額の減額)とカード負債(50万円弱)の債務が残った。

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(3)請求人はカードと手持ち資金で盗まれた物品を保険金支払い前に再購入。

(4)支払い保険金は被害額の70%強に減額された。

(5)法第63条の趣旨はよくわがるが、法に疎い者の道理に基づく考え方からすると疑問が生じる。

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(6)被保護者として、書面で提示されている「遵守事項」を厳格に守っての生活をしているが、多岐にわたる法は道理や常識で自ら考えざるを得ない。それが今回の事案である。つまり、保護の負担を軽減すべく契約した保険が無役だっただけでなく、徒ともなったのである。請求人が保険に入った本来の目的は、住居が木造の古いアパートで失火を懸念してのものであった。しかし、担当者の説明では火災による保険金も、経費は一切認められず、全額を収入として返還義務が生じるとのことであった。保険金を負担しての保険は無益で意味がないようである。

第2当庁が認定した事実及び判断

-2-

1当庁が認定した事実

(1)平成14年9月4日より処分庁において請求人の保護が開始さ●

れたこと。

(2)処分庁は請求人に対して、平成26年6月9日付けで「盗難共済金の発生による」との理由により本件返還決定を行い、通知したこと。なお、返還決定額は916,000円とされたこと。

平成26年8月1日付けで、処分庁が審査庁に提出した弁明書(以下「弁明書」という.)には、次の趣旨の記載があること。

(3)風(

ア請求人は、単身の世帯として、平成14年9月4日より生活保護を受給している。

イ平成26年5月9日、請求人より盗難共済の保険金が下りる可能性があるとの報告を受ける。被害発生日は平成25年11月24日被害内容は現金、パソコン、ステレオ等。後日、請求人が加入していた共済(以下「共済」という。)の担

当者が処分庁へ聞き取りに行く可能性があるとのこと。

ウ平成26年5月27日、々共済の担当者から来電。請求人の同意の下、翌日来所し状況を聞きたいとの申し出がある。また、平成22年にも同様の盗難事件による保険金給付があったとのこと。

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エ平成26年5月28日、共済担当者が来所。担当者は請求人の被害額に対して疑問を抱いており、そのために生活保護の受給状況について聞きたいとのこと。請求人の生活状況等について伝え、また、平成22年の保険金受領については処分庁は把握していないと伝える。平成22年の受領については法第29条調査の調査書を担当者

に直接手渡し{依頼。同時に口頭で、担当者に情報提供を求め、以下の点が判明。・共済の火災保険加入は平成21年8月。

-3-

・盗難補償は特約でつけたもの。・共済への申請書類には不備がなく、保険金支払いについては拒絶する理由はないが、調査の結果・からは実際に盗難があったかどうかは疑わしいと共済は考えているとのこと。・請求人の申告をもとに査定した被害額は916,850円であること。・平成22年の保険金給付額は248,000円であること。(後日法第29条調査回答にても確認済)

オ平成26年5月30日、共済担当者より来電。同年6月2日に1,006,000円が振込みされるとのこと。内訳は現金補償90う000円、パソコン関連等916,00

0円。(法第29条調査により後日確認済。)請求人に架電し、振り込まれる保険金は残しておくこと、同月

6日に来所することを伝える。

/ベ(1

力平成26年6月6日に請求人来所。平成22年5月の保険金受領に関して、報告義務違反で文書指導を行い、受領した248,000円について法第78条徴収を行うことを告げる。また、平成26年6月2日付けでの 1 , 0 0 6 , 0 0 0 円の入

金について確認。.ケース診断会議を開催し、現金被害分9万円を除く部分につい

ては、実施要領、次第8-3、次第8-3-(5)、及び問答集問13-5により、収入認定しないものに該当せず、かつ返還免除することが自立を著しく阻害するものではないと判断し、返還を求めることとした。、ケース診断会議の結果について、請求人は了承し、同月9日に916;000円を処分庁に持参し返還することとする。

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キ平成26年6月9日に請求人より連絡があり、問題が起こったひ

ので本日は来所できない。翌同月10日に説明に行くとのこと。

ク平成26年6月10日、請求人来所。同月9日付けの法第63条返還通知を手交し、返還を求める。

-4-

ところが、請求人いわく-、、同日の来所予定日に、銀行から現金を下ろしたあと、■■■のパチンコ店に行った際、封筒に入れていた現金を紛失したという。そのため、916,000円を一括で返還するつもりであったが不可能になったという。警察には紛失届けを提出したとのこと。また、保険金が下りることを当てにして、カードローンで借金をし、パソコンを購入。ローン額は50万ほどとのこと。現金を紛失のうえ、ローン返済も嵩むと訴えるため、返還計画について、分割返済を含め、処分庁で検討することを伝え、請求人も了承する。

P、{ ケ平成26年6月11日、ケース診断会議を実施。

現金を紛失したことについては、大金を持って■■■■のパチンコ屋に行っていることから、善管注意義務を果たしておらず、法第63条返還を消滅させるものではない。.盗難保険の保険料についても、火災保険の特約として自らの判

断で加入していたものであり、その件について処分庁になんら相談、報告もなかったことから経費認定は行わないこととした。

(4)弁明書と同時に処分庁が提出した、平成26年6月4日付けで処分庁が受領した、請求人あての「お支払い共済金のご案内」には、同月2日付けで、共済金額1,006,000円が請求人に対して支払われる旨の記載があること。なお、共済金額の内訳とし て 、 家 財 共 済 金 が 9 1 6 , 0 0 0 円 、 現 金 損 害 が 9 0 , 0 0 0円とされていること。

(5)平成26年8月6日付けで、審査庁は請求人に対して、前記(3)の内容を記載した弁明書の副本を送付し、これに対する反論書の提出を求めたが、現在に至るまで、請求人から反論書の提出はないこと。

2 判 断

.、5-

(1)法第4条は、生活保護制度の基本原理の一つである「保護の補足性」について規定しているが、その第1項において「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。」と定めている。また、法第5条において「この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基いてされなければならない。」と定めている。

(2)法第63条は、「被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保謹金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。」と定めている。.なお、本条文については、本来受けるべきでなかった保護金品

を得たときの返還義務を規定したものであり、また、返還額は、原則として、当該資力を限度として支給した保護金品の全額を返還額とすべきであると解されている。

/令(、!

(3)「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知)第8の3の(2)のエの(イ)では、「不動産又は動産の処分による収入、保険金その他の臨時的収入((3)のオ、力又はキに該当する額を除く。)については、その額(受領するために交通費等を必要とする場合は、その必要経費の額を控除した額とする。)が世帯合算額8,000円(月額)をこえる場合、そのこえる額を収入として認定すること。」と定めている。

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(4)「生活保護手帳(別冊問答集)2013(平成21年3月31日付け厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下「問答集」という。)」の(問13の5)の「法第63条に基づく返還額の決定」の答において、「原則として、当該資力を限度として支給した保護金品の全額を返還額とすべき」とし、「保護金品の全額を返還額とすることが当該世帯の自立を著しく阻害すると認められるような場合については、次の範囲においてそれぞれの額を本来の要

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返還額から控除して返還額を決定する取扱いとして差し支えない。」とされ、「次の範囲」としてアからオまでの5項目が掲げられている。そのアによれば、「盗難等の不可抗力による消失した額。(事実が証明されるものに限る。)」と記載されている。

(5)問答集(問13の6)の「費用返還と資力の発生時点」の「自動車事故等の被害により補償金、保険金等を受領した場合」の答(3)では、「自動車事故等第三者の加害行為により被害にあった場合、加害行為の発生時点から被害者は損害賠償請求権を有することとなるので、原則として、加害行為の発生時点で資力の発生があったものと取り扱うこととなる。しかしながら、ここにいう損害賠償請求権は単なる可能性のようなものでは足りず、それが客観的に確実性を有するに至ったと判断される時点とすることが適当である。」と記載されている。

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(6)問答集(問13の23)の「法第63条・法第78条と控除jの答(2)では、法第63条を適用する場合で、保護受給中に資力が発生した場合として、「保護開始後に発生した資力については、それが速やかに現金化できる状況にあれば、本来収入認定を行うべきものである。したがって、事後に資力が換金され、その結果法第63条を適用する場合には保護の実施要領に定める収入認定の各規定に従って必要な控除等を適用すべきものである。」とし、次官通知第8の3の(2)のエに規定する「その他の収入」であれば、「世帯合算8 , 000円以内の額は返還対象から除外することとなる。」と記載されている。

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(7)本件についてみると、前記第2の1の(2)から(4)までの認定事実のとおり、処分庁は、請求人が盗難の被害に遭い、盗難共済金を受領したため、本件返還決定を行ったものと認められる。

(8)処分庁は、請求人の受領した盗難共済金について、盗難の現金損害額90,000円を除く部分については、収入認定しないものに該当せず、かつ返還免除することが自立を著しく阻害するものではないと判断し、本件返還決定を行ったこと、盗難共済の掛

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金についても自らの判断で加入していたものであり、処分庁になんら相談、報告もなかったことから経費認定は行わなかった旨主張する。しかしながら、前記第2の1の(2)から(4)の認定事実の

とおり、処分庁が、請求人が受領した盗難共済金について、前記(3)の保険金その他の臨時的収入に該当するものと認めた場合には、処分庁は、必要経費を控除した収入額から世帯合算8,000円をこえる額について収入として認定するものとされている。その上で、処分庁は、請求人が受領した共済金について、前記(5)にいうところの資力の発生時点について検討し、本件共済金の受領時点の収入であるものと認定するのであれば、保護の要否等、すなわち、保護費の減額や保護の停廃止について検討するものとされ、一方で、法第63条に規定するところの、既に有していた資力であると判断するのであれば、支給した保護費の範囲内で、その他認められる控除を行った上で、同条による返還決定を行うものとされている。ところが、処分庁は、本件返還決定に際し、請求人が受領した

共済金から8,000円を控除することなく、また、上記の資力の発生時点について検討することなく、盗難共済金のうち、現金損害額90,000円を控除したのみで法第63条に基づく返還対象額を決定したことが認められる。したがって、本件返還決定は、前記(1)から(6)に照らし、

収入として認定すべき額に誤りがあり、また、資力の発生時点についての検討も行われていないことから、処分庁が行った本件収入認定及び本件返還決定の手続には暇疵があるといわざるを得ず、当該収入額の返還を求める本件返還決定は取り消しを免れない。

/一、

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f-7一、§、

以上の理由により、行政不服審査法第40条第3項の規定を適用して、主文のとおり裁決する。

平成27年8月13日

-8-

審 査 庁 大 阪 府 知 事 松 井

教 示

この裁決に不服があるときは、この裁決があったことを知った日の翌日から起算して30日以内に、厚生労働大臣に対し再審査請求をすることができます(なお、裁決があったことを知った日の翌日から起算して30日以内であっても、裁決があった日の翌日から起算して1年を経過すると再審査請求をすることができなくなります。)。また、この裁決については、この裁決があったことを知った日の翌日

から起算して6箇月以内に、この裁決の前提となる決定をした市を被告として(訴訟において市を代表する者は市長となります。)決定の取消しの訴えを、あるいは大阪府を被告として(訴訟において大阪府を代・表する者は大阪府知事となります。)この裁決の取消しの訴えを提起することができます(なお、裁決があったことを知った日の翌日から起算して6箇月以内であっても、裁決があった日の翌日から起算して1年を経過すると決定及び裁決の取消しの訴えを提起することができなくなります。)。

〆、(

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