施工技術の動向kenmane.kensetsu-plaza.com/bookpdf/38/ti2_01.pdf施工技術の動向...

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施工技術の動向� 国土交通省総合政策局建設施工企画課� 深礎工� 図―施工フロー� 図―施工目的� 図―施工杭径� 図―施工杭長� 2% m m m m 5% m 3% m 4% m m 1. はじめに 本工法は,円形の立坑を土留めおよび内部の土 砂を除去しつつ必要な深さまで掘り下げ,これに コンクリートを充填して基礎とする工法である。 掘削,土砂搬出方法には,人力およびバックホウ による掘削,クラムシェルおよびクレーンまたは 簡易やぐらによる排土等がある。 ここでは,平成17年度に実施した「深礎工」の 調査結果について,その概要を紹介する。 2. 調査概要 深礎工の調査は,平成7年度の調査に引き続き 国土交通省にて,施工フロー(図―)の各工程 に沿って作業内容,使用機械等について詳細に実 施した。 同工法の施工目的は,図―のとおり基礎杭が 98%,地すべり抑止杭が2%であり,大半が基礎 杭の施工であった。 施工杭径としては,図―のとおり1.5m から 技術情報コーナー マネジメ 2007 7 49

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  • 施工技術の動向�

    国土交通省総合政策局建設施工企画課�

    深礎工�

    図―1 施工フロー�

    図―2 施工目的� 図―3 施工杭径� 図―4 施工杭長�

    機  材  搬  入�

    機  材  搬  出�

    掘     削�

    出�

    土留材組立�

    工�

    立�

    コンクリート打設�

    入�

    地すべり�抑止杭�2%�

    基礎杭�98%�

    1.5~�2.5m�60%�

    2.6~�4.0m�17%�

    5.6~�7.5m�15%�

    4.1~�5.5m�5%�

    7.5m超�3%�

    ~30m�4%�

    ~20m�35%� ~10m�

    61%�

    1. はじめに

    本工法は,円形の立坑を土留めおよび内部の土

    砂を除去しつつ必要な深さまで掘り下げ,これに

    コンクリートを充填して基礎とする工法である。

    掘削,土砂搬出方法には,人力およびバックホウ

    による掘削,クラムシェルおよびクレーンまたは

    簡易やぐらによる排土等がある。

    ここでは,平成17年度に実施した「深礎工」の

    調査結果について,その概要を紹介する。

    2. 調査概要

    深礎工の調査は,平成7年度の調査に引き続き

    国土交通省にて,施工フロー(図―1)の各工程

    に沿って作業内容,使用機械等について詳細に実

    施した。

    同工法の施工目的は,図―2のとおり基礎杭が

    98%,地すべり抑止杭が2%であり,大半が基礎

    杭の施工であった。

    施工杭径としては,図―3のとおり1.5mから

    技術情報コーナー

    建設マネジメント技術 2007年 7月号 49

  • 図―5 掘削方法� 図―6 発破作業の有無�

    図―7 排土方法� 図―8 排土機械(人力掘削)�

    有�62%�

    油圧クラム�シェル�96%�

    機械排土�98%�

    ユニック�車�4%�

    簡易やぐら�排土�2%�

    無�38%�

    人力掘削�58%�

    人力併用�機械掘削�42%�

    7.5m超(最大径11m)までの実績が見

    られ,前回調査と比較して拡大傾向にあ

    った。

    また,施工杭長としては,図―4のと

    おりの範囲であり,前回調査と同程度で

    あった。

    3. 施工形態

    ! 掘削・排土作業

    掘削方法は,ピックハンマ等を使用し

    て行う人力による掘削(写真―1)と,

    人力と機械を併用した掘削(写真―2)

    があり,今回の調査結果では,図―5の

    とおり人力による掘削が若干多かった。

    また,岩掘削においては,図―6のと

    おり約6割の工事で発破作業を行ってい

    た。

    掘削した土砂の排土については,機械による排

    土と簡易やぐらによる排土があり,図―7のとお

    り機械による排土が多くの工事で採用されてい

    る。機械排土のうち,人力掘削工法の排土に使用

    する機械としては,図―8のとおり油圧クラムシ

    ェルによる施工(写真―3)が多く,規格として

    は前回調査と同様にバケット容量0.4m3が多く見

    受けられた(図―9)。人力併用機械掘削工法の

    写真―1 写真―2

    写真―3 写真―4

    技術情報コーナー

    50 建設マネジメント技術 2007年 7月号

  • 図―9 油圧クラムシェル規格(バケット容量)� 図―10 排土機械(機械掘削)�

    図―11 クレーン種類(機械掘削)� 図―12 クレーン規格(機械掘削)�

    図―13 土留め方法� 図―14 クレーン種類(人力掘削)�図―15 クレーン規格(人力掘削)�

    0.25m3�16%�

    0.4m3�60%�

    0.5m3�8%�

    1m3�4%�

    0.6m3�12%�

    クレーン類�73%�

    油圧クラム�シェル�27%�

    ラフテレーン�クレーン�82%�

    トラック�クレーン�9%�

    25t 吊�78%�

    25t 吊�78%�

    4.9t 吊�22%�

    20t 吊�11%�

    10t 吊�11%�

    ジブクレーン�9%�

    ライナー�プレート�88%�

    コンクリート等�吹付け�12%�

    ラフテレーン�クレーン�60%�

    クローラ�クレーン�20%�

    その他�20%�

    排土に使用する機械としては,図―10のとおりク

    レーン類による施工(写真―4)が多く,クレー

    ンの種類および規格としては,これまでと同様に

    ラフテレーンクレーン25t吊が多く採用されてい

    た(図―11,12)。簡易やぐらによる排土につい

    ては,前回調査に比べて施工件数は減少している

    が,写真―5のように現場条件によってクラムシ

    ェルやクレーンを設置できない個所の施工に採用

    されている。

    また,掘削排土作業中,必要に応じて杭内部の

    写真―5 写真―6

    技術情報コーナー

    建設マネジメント技術 2007年 7月号 51

  • 排水を行う場合がある(写真―6)。

    ! 土留材組立,コンクリート打設,グラウト

    注入

    掘削および排土作業が一定量終了した後に,地

    山の崩落を防止するための土留めを行う。土留め

    についてはさまざまな方法があるが,今回の調査

    では図―13のとおり,ライナープレート(波形鋼

    板)が88%,コンクリート等の吹付けによる土留

    めが12%と,これまでと同様にライナープレート

    による土留め(写真―7)が多く採用されてい

    た。施工件数は少なかったが,吹付けによる土留

    めについては,徐々に採用事例が増えている。

    杭内部へのライナープレートや鉄筋等の吊り込

    み機械は,人力掘削工法においては,図―14,15

    のとおりラフテレーンクレーン25t吊の採用が多

    く,前回調査より大型化の傾向が見られた。人力

    併用機械掘削工法での材料吊り込み等の補助的作

    業については,排土作業で使用したクレーンにて

    行っている。

    定着地盤までの掘削,排土,土留め作業が終了

    した後に,杭内部へ鉄筋組立(写真―8),コンク

    リート打設(写真―9)を行い,最後に,地山とライ

    ナープレートの間にグラウトを注入(写真―10)

    し,杭を形成する。

    4. 技術動向

    前回の調査と比較して,杭径7.5mを超える大

    口径の深礎杭の採用が増えてきている。また,土

    留め方法についてもコンクリート等の吹付けによ

    る土留めが増加している。

    5. おわりに

    今回の調査では,施工杭の大口径化,土留め方

    法の多様化が見られた。特に,施工杭径について

    は調査を行うごとに拡大する傾向にあるため,今

    後も大口径杭の施工が増加することが予想され

    る。

    以上のことから,常に変動し続ける施工の実態

    を迅速かつ的確に把握するため,継続的な調査を

    実施していくとともに,施工改善についての検討

    を行っていきたい。

    写真―8写真―7

    写真―9 写真―10

    技術情報コーナー

    52 建設マネジメント技術 2007年 7月号