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ぎょう鉄にやさしい 外板展開プログラムの説明 -曲率線展開- (独)海上技術安全研究所 (社)日本中小型造船工業会

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Page 1: ぎょう鉄にやさしい 外板展開プログラムの説明 · 現図展開とぎょう鉄の関係 可展面 プレス等の冷間加工で可能 面積不変 非可展面 ぎょう鉄:熱で縮める

ぎょう鉄にやさしい外板展開プログラムの説明

-曲率線展開-

(独)海上技術安全研究所

(社)日本中小型造船工業会

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造船のぎょう鉄にやさしい外板展開法を実装した新しい外板展開システムを開発,この春より汎用版をリリースします。

この新しい展開法を「曲率線展開」と言います。

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目次

1.造船における現図展開とぎょう鉄・造船の設計・生産工程における位置

・現図展開とぎょう鉄

・現図展開とぎょう鉄の関係について

2.曲率線展開の展開原理とそのぎょう鉄施工・曲率線展開法の原理

・そのぎょう鉄施工手順

・実証実験について

3.曲率線展開システムについて

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船の形

• ブロック建造• 曲がり外板の精度が重要• ぎょう鉄(板曲)の精度、工作時間が建造に大きな影響

外板は膜構造で,曲面あり⇒3断面図で表現

内構材(骨)も曲がっている

全船一体では作れない

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現図展開からぎょう鉄までの工程

組立設計・

性能評価

現図展開

一品図作成

NC切断

マーキングぎょう鉄

線図による設計

測地線展開法等(各社固有)による現図展開 熟練職人技能による作業

(写真等)

目視による形状確認

・曲面の表現が厳密でない・展開精度が悪い・曲げ方を考慮しない展開

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ぎょう鉄=曲面の形成

線状加熱

点焼き・三角焼き

曲げ(面外)

絞り(面内)

入熱による膨張・収縮を利用する

熱間加工

プレス機

ローラーベンダー曲げ(面外)機械的に曲げる

冷間加工

(機械曲げ)

←プレス加工

熱間加工→

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熱間加工

熱が板の表裏に行き渡る

⇒面内に一様に収縮

熱が板の表にのみ効く

⇒表側のみ面内収縮

⇒曲げが生じる

⇒プレスで代替できる

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加工線の求め方

与えられた曲げ型を板の上で転がして,大まかな方針を立てる

・曲げ加工手順については,全くの現場任せ・曲げ型を基本として,過去のデータ・経験で方針を立てる・職人によって,加工手順が異なる・かなり上級の職人でも,3次元の形状を一気に合わせる加工線を求めることは難

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ぎょう鉄技能の調査結果(実情)1.曲げ型や平たい鋼板からは、完成時の3次元の複雑な形状を

想像する空間認識がしづらいこと(阻害要因)

2.技能内容(「どこを、どれだけの速度で加熱するか」を判断する

過程)が口頭で説明しにくいこと(阻害要因)

3.上記2の結果として、熟練技能者が初心者等に見様見真似で

技能を習得させる方法で技能が継承されていること

4.各造船所間でのぎょう鉄技能者の交流がないこと

このため、各ヤード内で技能が固定化していること

5.ぎょう鉄技能が技術的に解明されていないため、管理者が

ぎょう鉄作業の指示が出せず、教育できないこと(阻害要因)

・ 3次元イメージができない。・ どこを,どうやればいいか分からない。・ 思い通りに加工できない。

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現図展開

・船の材料となる鋼材は平で入ってくる。

・曲面部も平らな板から形成する。

・曲面に相当する平面を求める。→展開

可展面の展開⇒柱面や錐面,ビルジ外板など⇒展開形状は,容易に一意に決まる

非可展面の近似展開⇒船首・船尾の任意曲面,皿型・鞍型⇒便宜上の近似展開

・基線展開法,測地線展開法・真金送り展開法,タスキ送り展開法 etc.

⇒板の面内方向の伸縮が生じる。⇒面積が異なる。 ボンヌ図法

柱面の展開

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非可展面の展開

皿型⇒耳絞り

鞍型 ⇒腹絞りねじれ板

非可展面の形成には,必ず面内に伸ばし or 絞りが必要。

⇒ぎょう鉄の場合は絞りのみ。

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基線展開法(測地線展開法)

・フレームと展開基線で展開する。⇒フレームの位置関係を展開基線で結んでいく。

・展開図上で展開基線は直線になるという仮定。・実長を押えて近似する。

⇒伸ばしの量・箇所を把握できない。・経験に基づいて,伸ばしを入れる。・展開形状がひとつに収まらない。

コンパスと定規による展開。既存システム:単なるIT化。既存の手法をコンピュータ上にトレースしたもの。展開原理自体が持つ仮定や近似の解消にはならない。

基線展開: 正面線図上で基準FRに垂直な直線測地線展開: 曲面上での最短距離となる線

基線

基線

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現図展開とぎょう鉄の関係

可展面

プレス等の冷間加工で可能 面積不変

非可展面

ぎょう鉄:熱で縮める 展開:現図伸ばし

現図伸ばしの量と位置が分かっていれば、

何処を焼けばよいかすぐ分かる

皿形,耳絞り 鞍形・捻れ板,腹絞り

ぎょう鉄と現図展開は互いに逆操作

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非可展面の展開方法の雑多さ

ある造船所の名人が他に行くと下手だったり

展開時の情報がぎょう鉄職に伝わらない

人毎に違う戦略 名人の伝承不能な技芸

どうしたらよいのか

① 工数が少なく最も確実なぎょう鉄作業の方法

② その逆作業として曲面の展開方法

③ 非可展面の展開方法も唯一となる

現図展開とぎょう鉄の関係

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効率的なぎょう鉄作業

ぎょう鉄作業の手順

・ 大きい曲がり(横曲がり)を粗曲げ

・ 交差する小さい曲がりを熱絞りで施工

曲面の幾何学的性質

・ 最大、最小曲率方向(主方向)は直交する

効率的なぎょう鉄作業

・ 絶対値最大曲率を曲げ施工(施工線は?)・ 直角方向の曲がりは絞りで(施工線は?)

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効率的なぎょう鉄作業

皿型の施工線

鞍型の施工線

大きい曲がりを粗曲げ非可展面の形成に熱絞り

最小曲率に沿って粗曲げ最大曲率に沿って熱絞り

曲率線の利用⇒一般の外板へ

プレス

プレス

線状加熱

線状加熱

曲率線展開された曲率線

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曲率線展開法曲率線を基準に展開する展開法。

(特許出願:PCT/JP2003/03260,PCT/JP2004/004640)

X

Y

Z

格点

赤線: 第1格子線,L1曲率線青線: 第2格子線,L2曲率線

曲率の絶対値の大きいdy/dx 方向

曲率の絶対値の小さいdy/dx 方向

対象の曲面外板 z=z(x,y)

曲率線: 曲面上で法曲率の最大値と最小値をそれぞれ結んでいったもの。第1曲率線 : 法曲率の絶対値の大きい方向を結んだもの。

曲がりの最も大きい方向第2曲率線 : 交差する他方を結んだもの。

皿型:曲がりの最も少ない方向鞍型:沿っている方の曲がりの最も大きい方向

曲面上で互いに直交関係。

【違うこと】基線展開,測地線展開:⇒フレームを展開基線で結んでいく

曲率線展開:⇒第1曲率線を第2曲率線で結んでいく

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測地的展開測地的展開: 法曲率の分の曲げを除去して平面に展開

(曲率ベクトル)=(法曲率ベクトル)+(測地的ベクトル)曲率線の場合のみ,ねじれなく平面へ展開可能。

n

n×t

t

接平面

接線ベクトルt と垂直な平面

曲面上の曲率線(速度は1)

K :曲率ベクトル,K=Kg+Kn Kg :測地的曲率ベクトル Kn :法曲率ベクトル n :単位法線ベクトル t :速度ベクトル(大きさ1) n×t:nとtの外積ベクトル

対象曲面

K: 曲率ベクトル

Kg: 測地的曲率ベクトル

Kn: 法曲率ベクトル

平面

Kg: 測地的曲率ベクトル

【違うこと】基線展開,測地線展開:⇒仮フレーム・展開基線は直線に展開

曲率線展開:⇒第1曲率線・第2曲率線を測地的展開

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曲面の展開第1曲率線を第2曲率線で接続し,展開形状を得る。

曲率線

法ベクトル n

平面

曲面

法ベクトル n

展開された曲率線

現図伸ばし量

現図伸ばし量

第1曲率線

接続する隣の第1曲率線

接続の第2曲率線

伸ばされる第2曲率線

伸ばされる第2曲率線

・伸ばし量を把握できる。 ・直交している曲率線。

【違うこと】基線展開,測地線展開:⇒基線・フレーム・シームの実長を保存して展開

曲率線展開:⇒最適な第2曲率線で結んでいく⇒非可展面の伸ばしを幾何学的に考慮できる

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最適なぎょう鉄施工

加工の独立性:曲率線が曲面上で直交を保つ。

⇒ 他方の曲率線方向の変形が,もう他方の曲率線方向の変形に影響を及ぼさない。

最適なぎょう鉄加工:

始めに,曲がりの強い曲率線方向(第1曲率線)の曲げ形成を冷間曲げ(主にプレス)による粗曲げで行う。

次に,非可展面の形成のための面内収縮を他方の曲率線方向(第2曲率線)に沿ってガス加熱で行う。

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最適なぎょう鉄施工

(法曲率から)プレスによる曲げ角(幾何的収縮量から)ガス加熱の場所,ガス加熱の本数

目的形状の形成に必要な量を把握。⇒曲げ方案を出図する。初心者でも対応可能。

展開平面 粗曲げ後 目的曲面

第2曲率線に沿って,プレス加工⇒第1曲率線方向の強い曲がりを粗曲げ

第1曲率線に沿って,ガス加熱 ⇒第2曲率線方向を絞る。 ⇒非可展面の形成。

完成!

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既存展開との違い

基線展開測地線展開

曲率線展開

展開に利用する線 フレームを展開基線で結んでいく 第1曲率線を第2曲率線で結んでいく

展開 仮フレーム・展開基線は直線に展開 第1曲率線・第2曲率線を測地的展開

展開(接続方法) 基線・フレーム・シームの実長を保存して展開最適な第2曲率線で結んでいく ⇒シームの長さが変わる

伸ばし どこに伸ばしが入っているか分からない(近似) 伸ばしの量・位置を把握

展開の手段製図で求められる造船システムとしてシステム化されている

PCによる数値演算が必要

必要な情報線図(FR,WL,BL)の点列データorCADデータただし,切り直し等をやって精度を上げる

線図(FR,WL,BL)の点列データただし,切り直し等をやって精度を上げる

原理

運用

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実際の外板では

・曲率線を求めるのに数値計算

・外板をパッチに分割し,外板形状を3次元関数表現

・格子が歪でない →良い展開形状を得るコツ

FR7 FR6

FR5

FR4

FR3 FR2

FR1

BUTT

BUTT

SEAM

SEAM

パッチ

FR7FR6

FR5FR4

FR3

BUTTFR1

BUTT

FR2

SEAM

SEAM

FR7 FR6

FR5

FR4

FR3 FR2

FR1

BUTT

BUTT

SEAM

SEAM

外板形状入力 外板格子の作成外板の関数表現

曲率線導出

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ねじれ外板の曲率線⇒曲率線は,曲がりの最大・最小の線なので,3次元形状の直感的理解にも役立つ

実際の外板では

9 10 11 12 13 14 15 16 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 2.5

3

3.5

4

4.5

5

5.5

XYX

Y

1.15 1.2

1.25 1.3

1.35 1.4

1.45 1.5

Z

-4.5-4

-3.5-3

-2.5-2

-1.5-1

10

11

12

13

14

15

16

17

Z

正面図 曲率線の様子

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曲率線展開法の実証実験

施工者: 30年以上の経験を有するぎょう鉄工

対象外板: ケミカルタンカー,船首側外板

船首ステムに隣接

五辺形形状

とも側に外曲がりを含むS字

ねじれ外板

大きさは約2m×3m程度

板厚14mm

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作業の有効性・優位性を検証するため・・・

• 右舷(S)側: 通常展開板(測地線展開)

職人の判断で自由に施工してもらう。

• 左舷(P)側: 曲率線展開板(海技研)

展開計算で算出される曲率線を基に,

作業手順に従って施工してもらう。

曲率線展開法の実証実験

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展開一品図

曲率線展開法の実証実験

曲率線展開:展開図上に曲率線がマーキンされる。この曲率線に沿って施工を行う。

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曲率線展開法の実証実験

曲率線展開での施工手順S字の逆曲げを施工 横曲げを施工 縦曲げ&ねじれを施工

•すべての施工(プレス,線状加熱)を曲率線に沿って行う。

•曲げの加減は木型を使って確認。

•曲率線に沿う加工により,縦曲げ・ねじれを同時に合わせる。

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(通常施工)• 施工前に曲げ型を使って施工線を墨打ち。曲りの大

まかな傾向を掴む。

• 表面から横曲がりを調整,裏面から縦・ねじれを調整。これを幾度か繰り返して,目的形状にするという作業方針。トンボの繰り返しが生じる。

(曲率線展開)• すべての加工は,あくまで曲率線に沿って加工。

• 第1曲率線に沿う腹絞りで,一発で縦曲げとねじれを合わせた。

実証実験のまとめ

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実証実験のまとめ

(施工比較)

• 時間の差は,修正加工で発生している。

• 職人の感触は,好意的であった。通常施工では,横・縦・ねじれを一纏めで扱うことが易々ではない(人の3Dイメージには限界がある)。しかし,曲率線による施工は,横・縦・ねじれを一気に加工し,大きな近道になることは納得できるとのこと。

横曲げ加工 腹絞り加工 修正加工 トンボ

通常展開板 4時間 2時間 4~5時間 7回以上

曲率線展開板 4時間 2時間 15分 3回

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曲率線展開プログラムとは• 船体曲り外板の現図展開ソフト

• 展開方法として,「曲率線展開法」を採用

• ぎょう鉄作業の効率化を実現

→板にプレス線&焼き線が入る

• スタンドアロンで他システムに依存しない

→線図のオフセットデータが必要

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曲率線展開

• 外板上の曲率線を展開基線とする外板展開。

• 外板を数式表現し,微分幾何学を外板展開に利用する。(従来の定規・コンパスによる外板展開からの脱却)

• ぎょう鉄施工に作業方針を与える。プレス線と加熱線がマーキン。

• 板の伸ばしを定量化,ムダの少ない展開。既存の展開面積とさほど変わらない。

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本プログラムによるぎょう鉄加工

展開図上にプレス線と加熱線がマーキン。

ねじれがあるような板でも,一気に合わせる。

曲率線は,折り紙の山折り&谷折りの線

曲率線は,絞り線(重ねる合せるのりしろ?)

曲率線がそのまま加工線に青:プレス線赤:線状加熱線

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形状確認は,従来通り,曲げ型で。

曲率線の所だけを焼けば良いと言う訳でない

曲げ量・絞り量は算出しているが,現場への出力はしていない。

焼きによる収縮量管理の難しさ。

曲げ型合わせで十分。

本プログラムによるぎょう鉄加工

ガスやトーチの使い方はもちろん,型合わせや形状確認の仕方は最低限必要。

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生産設計における位置付け

• 曲り外板の展開,一品作成

• 生産用のフェアリング済み

• ランディング済み

• ネスティング機能はなし

• NCデータへの変換なし

外板ランディング生産用フェアリング

曲り外板の一品作成

ネスティングNCデータ,NC切断

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プログラム導入の環境と運用

• Windows PCへのスタンドアロン

• 入り口のフォーマットを揃えれば,単体で動く。

• 出力は,DXF図面とCSVファイル

必要な環境Windows PC(さほど高機能である必要はない)曲率線展開プログラム本体AutoCAD LT(gnuplot)←フリーソフト

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プログラムの運用に必要なデータ

• 外板形状を表すための線図の点列データ

フレームFR, ウォータWL, バトックBL

• ランディングを表すバット・シームの点列データ

• 展開図にマーキンする基準線の点列データ

FR, WL, BL, 部材取り付け位置,曲げ型位置

• 正面・平面・側面の線図とシェルパン

• 各点列データの交点の情報

• 十分にフェアリングされているもの(チェック機能有り)

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プログラムの運用に必要なデータ

・外板の形状を適当なライン(例えばFR)で与える。

・目的の範囲を取り出し,格子作成。

・一本の点列に,WL,BLやシームの交点情報が必要

・外板形状が複雑な場合,より細かいピッチでラインを与える必要あり。

FR7FR6

FR5FR4

FR3 BUTTFR1

BUTT

FR2

SEAM

SEAM

基となる点列データを並べて用意する

FR7FR6 FR5

FR4FR3

BUTTFR1

BUTT

FR2

SEAM

SEAM

この区間を分割して格子を作るパッチ

上カット点

下カット点

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プログラムへの入力データの作成• 入り口を揃えれば,プログラムが使える。

• 手作業か,既存システムに合わせてシステム構築。

• フォーマット違反,フェアリング精度,交点などの情報落ちがミスとなる。

曲率線展開図 作成処理

プログラムの入力ファイル

DXFファイル 作成処理

線図データ(造船所A)

線図データ(造船所C)

線図データ(造船所B)

線図データ(造船所D)

それぞれが異なる

入力処理

曲率

線展

開プ

ログ

ラム

ユー

ザ所

ユーザが各外板ごとに作成する。プログラムに外板形状を教えるためのファイル。フォーマットが決まっている。

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本プログラムが出力するもの

• 展開図(DXFファイル)

• 曲げ型図(DXFファイル)

• 曲げ型寸法表(CSVファイル)

• 3D図(DXFファイル)

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外板展開図・DXFで出図(AutoCADで扱える)・基準線(WL,BL,部材取り付け,曲げ型位置)がマーキンされる。

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曲げ型図・DXFで出図(AutoCADで扱える)・板に垂直に置けるように切り直しを行って曲げ型位置を求めている・FRで表現する外板に適応可能

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外板3D図・DXFで出図(AutoCADで扱える,3Dビュー機能)・対象外板とその板に曲げ型を置いた様子を出力する・FRで表現する外板に適応可能

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曲げ型寸法表・CSVで出図(Excelで扱える)・曲げ型の形状を数値化したもの,ユニバーサル治具の設定の際に。・FRで表現する外板に適応可能

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適応外板について

• 非可展面の外板に適用可。

• ステムやタンジェンシー付きの外板も適用可。

→ FLAT部の追加などCADの後処理が必要

• 四辺形以外の外板も適応可。

→ 切り抜き・追加などCADの後処理が必要

船側の四辺形外板

ボトムタンジェンシー

サイドタンジェンシー

船首部

三角形

五角形

ステム

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複雑な板の展開について

• とも・おもての複雑な外板には,工夫ある外板表現が必要。

→板割りが複雑,形状が複雑

→FR/WL/BLでの表現に限界

→仮想シームの設置や切り直しなど,従来から行われている板の表現方法に工夫

→外板展開は自動だが,それに入力する外板表現には人間の判断・処置が必要

• 現図展開についての経験・知識が必要

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複雑な板の展開について

仮想のカット線。板の形状が歪にならないように。

不要部

複雑な五角形板

正面図 平面図

平面図に外板を起こし,安定した格子ができるように展開領域を拡げる

62

62.5

63

63.5

64

64.5

-152

-151.5

-151

-150.5

-150 164 164.1 164.2 164.3 164.4 164.5 164.6 164.7

Z

XY

Z

格子の様子

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複雑な板の展開について

板の切り直し

視線①

視線①(奥行き方向)

視線②

視線②(奥行き方向)

視線③(奥行き方向)

視線③(奥行き方向)

視線③正規FR

切り直しFR

CL正規FR 正規FR 正規FR

切り直しFR

切り直しFR

切り直しFR

・板を最も安定した視野で視る様にFR,WL,BL以外の断面に起こす・CAD上で切り直すか,既存の曲げ型情報などを利用する

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既存展開に曲率線を利用

展開形状に大きな差はないので,曲率線だけを既存展開にそのままトレースしても,ぎょう鉄施工に役立つ

既存の展開形状で板の切り出しを行いたい場合

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本プログラムの適用の想定シーン

1.比較的簡単だが,作業のイメージが掴めない若手技能者のサポートとして。2.かなり複雑な板を担当する熟練工への施工の近道を導く支援ツールとして。

工程の短縮と作業員の技能向上に役立つ

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この春,新しい外板展開法を装備した現図展開プログラムをリリースしました。

現場のぎょう鉄作業の効率化に,熟練技能者不足の対応に,

若手技能者の技能向上対策に,

是非,本プログラムをご検討ください。