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マルチクライアント研究 「鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別技術の開発」 ( 研究期間: 平成21年5月~平成22年3月 ) 報 告 書 平成22年3月 社団法人 電線総合技術センター

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マルチクライアント研究

「鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別技術の開発」

( 研究期間: 平成21年5月~平成22年3月 )

報 告 書

平成22年3月

社団法人 電線総合技術センター

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参加社名簿

社 名 責任者 委 員

住友電気工業㈱ 材料技術研究開発本部

技師長

礒嶋 茂樹

材料技術研究開発本部

技師長

礒嶋 茂樹

古河電気工業㈱ 環境・エネルギー研究所

環境技術開発部 マネージャー

徳田 繁

環境・エネルギー研究所

環境技術開発部

堀川 佐奈栄

㈱フジクラ 環境・エネルギー研究所

ケーブル技術研究部 部長

直江 邦浩

環境・エネルギー研究所

ケーブル技術研究部 グループ長

渡邉 知久

日立電線㈱ 技術研究所 基盤技術開発センター

高分子材料研究部 部長

渡辺 清

技術研究所 基盤技術開発センター

高分子材料研究部 マネージャー

菊池 龍太郎

昭和電線

ケーブルシステム㈱

技術開発センター

基盤技術グループ グループ長

岡下 稔

技術開発センター

基盤技術グループ

田中 忍

三菱電線工業㈱ 技術本部 総合研究所

所長

厨子 敏博

技術本部 総合研究所

研究員

住野 健一

塩ビ工業・環境協会 執行委員会

リサイクルWGリーダー

阪内 孚史

環境・広報部

部長

上林山 博文

オブザーバー

(社)日本電線工業会 技術部

技術部長 亀田 実

事務局

(社)電線総合技術センター 環境技術グループ

主管研究員 森 純一郎

主席研究員 平野 潤也

研究員 金子 直貴

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目 次

1 背景および目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2 廃電線の解体・分別工程・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.1 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.2 粉砕処理法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.3 剥線処理法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.4 電線被覆材用 PVC における剥線処理と粉砕処理の比率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3 分別対象の調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3.1 PVC の安定剤の種類・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3.2 電線被覆材用 PVC の鉛の含有量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3.3 重金属の電線への使用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4 PVC の分別方法の調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.1 他業界の対応・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.2 分別方法と電線被覆材用 PVC への適用の可能性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5 携帯型蛍光 X 線分析計の電線被覆材の判別能力評価・・・・・・・・・・・・・・・・・

5.1 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5.2 分析計の仕様・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5.3 電線被覆材の判別能力の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5.3.1 鉛濃度の影響調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5.3.2 配合材料による妨害要因・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5.3.3 廃電線の測定結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5.3.4 下地の影響調査(構成の影響調査)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5.4 携帯型蛍光 X 線分析計のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

6 透過型X線分別装置(アーステクニカ製)の電線被覆材の分別能力評価・・・・・・・・・・・ 6.1 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.2 分別装置の概略/原理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

6.2.1 装置の概略・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.2.2 装置の原理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

6.3 電線被覆材の分別能力の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.3.1 鉛濃度の影響調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.3.2 配合材料による妨害要因・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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6.3.3 試料サイズが小さい場合の判別能力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.3.4 電線形状での分別・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.3.5 エアーでの分別ミスの発生率・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

6.4 透過 X 線分別装置のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

7 近赤外線分別装置(アーステクニカ製)の電線被覆材の分別能力評価・・・・・・・・・・・・

7.1 目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7.2 分別装置の原理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7.3 電線被覆材の分別能力の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7.4 近赤外線分別装置のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

8 本研究のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

8.1 装置毎のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

8.2 分別対象(剥線品、粉砕品、裁断した電線)毎のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

(付録)

付録 A 委員会議事録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第 1 回委員会議事録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第 2 回委員会議事録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第 3 回委員会議事録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第 4 回委員会議事録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

付録 B 近赤外線分別装置を用いた分別フロー案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

付録 C 試料と実験の対応表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

C.1 鉛濃度の異なる試料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

C.2 各種配合の異なる試料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

C.3 廃電線・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

C.4 対応表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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65

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1 背景および目的

従来、電線被覆材の PVC には、熱劣化時に発生する塩素分を安定化させるため、鉛系安

定剤が使用されていた。使用済み電線から排出される PVC は約 20,000 トン/年でそれを使

用した電線被覆材のリサイクルも約 10,000 トン/年に及ぶ。

ところが、東京都の建設用電線への環境規制で鉛含有量 1,000ppm 以下(RoHS 指令の数

値)等、鉛使用の規制が厳しくなり、鉛含有 PVC を用いた電線の製造は主要メーカーで中

止された(電力会社向けは除く)。このため、従来電線用にリサイクルされてきた鉛含有 PVC

はマテリアルリサイクルが困難になってきている。

さらに、鉛フリーPVC(鉛含有量 1,000ppm 以下の PVC)は単独ではリサイクルできる

が、鉛含有 PVC と混ざった状態で回収されるため、すべての廃電線の PVC 被覆材がマテ

リアルリサイクルできず、そのため製造者責任を問う動きがある。

PVC の脱鉛処理を可能にすれば、全ての PVC がマテリアルリサイクル可能であるが、現

状では、技術的・経済的に難しい。そこで、鉛フリーPVC だけでもマテリアルリサイクル

を可能にするために、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC を分別する方法を検討する(図1-1)。

(脱鉛処理については、電線工業会と JECTEC で別途検討するため、本研究では検討しな

い。)

図1-1. PVC のリサイクルフロー

分離

ケミカル/サーマルリサイクル 埋立

被覆・導体の分離

脱鉛処理

再混練

鉛拡散の危険あり

電線被覆材への需要が減少

再混練

再混練

本マルチクライアント研究にて検討

廃棄PVC電線

鉛フリー/鉛含有PVC被覆材

鉛フリーPVC

再生鉛フリーPVCコンパウンド

鉛フリーPVC鉛含有PVC

鉛 再生鉛含有PVCコンパウンド

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2 廃電線の解体・分別工程

廃電線の処理は、サイズによって粉砕処理法と剥線処理法にわかれる。それぞれの処理方

法を以下にまとめる。

尚、本調査はリサイクル業者の(株)ウスイ金属殿にご協力いただき実施した。

2.1 目的

本研究で検討する分別技術は、実際の解体・分別工程に適用される技術とすることを目的

としている。そこでまず、現状の解体・分別工程を調査した。

2.2 粉砕処理法

粉砕処理法は、廃電線を自動粉砕機に投入し銅、被覆材を一緒に細かく粉砕する方法であ

る。主に、導体サイズ 60mm2未満の細い廃電線が対象であるが、銅粉末の需要が多い場合

には、導体サイズ 60mm2以上の太い廃電線も粉砕処理することがある。

粉砕処理法を用いた解体・分別工程のフローを図2-1に示す。細い廃電線はトラックへ

の積み込み作業の簡便化や輸送時の容積圧縮のために、回収時には丸められて解体工場へと

運びこまれる(図2-2~5)。その後、手作業によって、被覆の再生ができないゴム電線

とゴム電線以外に分別する。この際、ホースなどの電線以外のごみも取り除く。

廃電線は粉砕し、比重分別※により銅粉末と被覆材の粉砕片に分離し、銅と被覆材を回収

する(図2-7、8)。また、被覆材の粉砕片は水選別により PE と PE 以外の被覆材に選

別される(図2-9)。PE 以外の被覆材は、鉛含有 PVC、鉛フリーPVC、ノンハロゲン難

燃性材料(NH)、EM 電線用耐燃性ポリエチレン(EM)があり、現状では PE 以外の被覆

材は分別できていない。この混合物は現状では有価で販売されているが、需要が減少してき

ている。

尚、粉砕処理法では、被覆材は数 mm 程度の大きさの粉砕片(ナゲット)に粉砕される

ために、各種の電線被覆材を 100%の品位で分別することができない。このため、粉砕処理

された被覆材は品質が求められる電線へはリサイクルされず、マットやベンチ、杭などの他

製品へとリサイクルされる。

※ 比重分別は、湿式比重選別、乾式比重選別がある。水選別とあわせ詳細を以下に示す。

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【乾式、湿式、水選別の詳細】

○ 乾式選別

銅、被覆材の混ざった粉砕片(ナゲット)から比重差を利用して銅と被覆材に選別回収

する比重選別方法である。振動を利用して分別をおこなう。処理能力が高く、使用済み電

線を粉砕処理してできた粉砕片(ナゲット)の混合物を、効率よく選別できる。(図2-

7)

○ 湿式選別

乾式選別と同様に比重差を利用して銅と被覆材に選別する比重選別方法である。乾式選

別とは異なり、水と振動で分別をおこなう。乾式方法より分別能力が高く、高純度に選別

するのが目的である。

○ 水選別

上記の乾式選別、湿式選別で選別回収した被覆材について、被覆材の比重差を利用し

て樹脂を分別する方法である。水に浮く低比重材料(PE 等)と水底部に沈降する高比

重材料(PVC 等)とに分けるのが目的である。(図2-9)

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図2-1 廃電線の解体・選別フロー

※ NH: 高難燃性ノンハロゲン材料 EM: EM 電線用耐燃性ポリエチレン

NH と EM の樹脂は主にエチレン系ポリマー(エチレン-酢酸ビニル共重合体

(EVA :ethylene vinyl acetate copolymer)やエチレン-アクリル酸エチル共重合

体(EEA:ethylene ethyl acrylate copolymer))が用いられる。

裁断

銅 被覆材

廃電線

粉砕

比重選別

水選別

PE

手選別

ゴム以外の電線 ゴム電線

リサイクル

裁断

銅 ゴム

粉砕

比重選別

NH ・EMリサイクル

リサイクル 廃棄

・現状では、分別できない。・需要が減少してきている。

鉛フリーPVC , 鉛含有PVC ,

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図2-2

回収された廃電線(細い電線)①

図2-3

回収された廃電線(細い電線)②

図2-4

回収された廃電線(細い電線)③

図2-5

回収された廃電線(細い電線)④

図2-6

手選別の様子(ゴム電線とその他の電線を分別)

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再度分別回収(銅) 回収(被覆材)

図2-7

比重分別(銅と被覆材を分別)

図2-8

分別後の銅粉末

図2-9

水選別機(PE とその他の被覆材を分別)

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2.3 剥線処理法

剥線処理法は剥線機による電線の解体方法で、主として図2-10、11に示すような大

サイズ(60mm2以上)の太い廃電線が対象である。

あらかじめジョイント部や異形部分を除去後、一定の長さに切断する。その後、線種、線

径に対応した剥線機を用いて、導体部から外層の被覆材を剥がして分離する(図2-12、

13)。

太い電線は管理された回収による電力用が多く、比較的きれいな状態ものが多い。また、

剥線処理法では、図2-14~19に示すように、各材料を綺麗に分離できる。このため、

導体だけでなく、被覆材として使われている PVC も電線へリサイクルされていた。

しかし近年、鉛含有 PVC が嫌忌され、現在では鉛安定剤が含まれる PVC は電線へはリ

サイクルされていない(電力会社向けは除く)。

図2-10 剥線前の廃電線①

図2-11 剥線前の廃電線②

(電力用。市中の電線とは別に回収されている。)

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図2-12 剥線処理の様子①

図2-13 剥線処理の様子②

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図2-14 剥線後の導体

図2-15 剥線後の遮蔽層、押さえテープなど

図2-16 剥線後の被覆材①

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図2-17 剥線後の被覆材②

図2-18 剥線後の被覆材③

図2-19 剥線後の被覆材④

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2.4 電線被覆材用PVCにおける剥線処理と粉砕処理の比率

(1)目的

本研究では、電線へリサイクルされる被覆材についての分別技術を確立することが主なテ

ーマである。電線へリサイクルされるのは、2.3 項の調査結果の通り、剥線処理された被覆

材である。このため、剥線処理される被覆材の分別技術の確立が最も重要である。しかし、

粉砕処理される被覆材の量が剥線処理品に比べ多いのであれば、粉砕処理における分別技術

についても検討したほうがよい。そこで、剥線処理と粉砕処理の比率を調査した。

(2)調査結果

JECTEC の過去の報告書 1) 2) 3) 4) から、電線被覆材に使用されている PVC について、粉

砕処理されている割合と剥線処理される割合(重量比)をまとめた。その結果を図2-20

に示す。粉砕処理品の比率は 51~79%であり半数以上の割合を占める。特に近年(05~07

年)は粉砕処理品の比率が増え、7~8 割を占める。

粉砕処理品の割合が高いため、粉砕処理品の分別も可能な範囲で検討する必要がある。

図2-20 PVC の粉砕処理品と剥線処理品の比率

35 3749

22 21 24

65 6351

78 79 76

0

20

40

60

80

100

2002 2003 2004 2005 2006 2007

粉砕処理品

剥線処理品

(%)

(年)

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引用文献

1) 3R システム化可能性調査事業―電線・ケーブル(光ファイバ含む)リサイクルシステ

ム化可能性調査事業, JECTEC, H18.3

2) 電線被覆材リサイクルの現状及び架橋ポリエチレン廃棄物へのクローズドリサイクル

技術適用に関する調査, JECTEC, H19.3

3) 電線・ケーブルのリサイクルと環境負荷・環境効率に関する調査, JECTEC, H20.3

4) 電線リサイクルの流通経路と経済性に関する調査研究, JECTEC, H21.3

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3 分別対象の調査

3.1 PVCの安定剤の種類

(1) 目的

鉛系安定剤は鉛単体ではなく、鉛化合物として配合される。

分別対象の情報収集の一環として、一般的な安定剤の種類を調査した。

(2) 調査結果

電線被覆材の鉛系安定剤の一般的な種類を表3-1に、非鉛系安定剤の種類を表3-2に

示す。

鉛系安定剤で主に使用される安定剤は三塩基性硫酸鉛である。

電線被覆材の非鉛系安定剤としては、カルシウム系安定剤と亜鉛系安定剤を混ぜたカルシ

ウム-亜鉛系安定剤(Ca-Zn 系)、バリウム系安定剤と亜鉛系安定剤を混ぜたバリウム-亜

鉛系安定剤(Ba-Zn 系)が使用されている。

表3-1 鉛系安定剤の種類

名称 分子式無機塩類

三塩基性硫酸鉛 3PbO・PbSO4・H2O二塩基性亜りん酸鉛 2PbO・PbHPO3・1/2H2O塩基性亜硫酸鉛 nPbO・PbSO3ケイ酸鉛 PbSiO3・nSiO2・mH2O塩基性炭酸鉛 2PbO・PbCO3

金属石鹸二塩基性ステアリン酸鉛 2PbO・Pb (C17H35COO)2ステアリン酸鉛 Pb (C17H35COO)2二塩基性フタル酸 2PbO・Pb (COO)2C6H4サリチル酸鉛 Pb (C6H4OHCOO)2三塩基性マレイン酸鉛 3PbOPb (C4H7O4)H2O

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名称 分子式

バリウム系

ステアリン酸バリウム Ba (C17H35COO)2

ラウリン酸バリウム Ba (C11H23COO)2

リシノレイン酸バリウム Ba (C17H32OHCOO)2

カルシウム系

ステアリン酸カルシウム Ca (C17H35COO)2

ラウリン酸カルシウム Ca (C11H23COO)2

亜鉛系

ステアリン酸亜鉛 Zn (C17H35COO)2

オクチル酸亜鉛 Zn (CH3(CH2)6COO)2

スズ系

ブチルすずラウレート系

ブチルすずマレート系

など

表3-2 非鉛系安定剤(金属石鹸類)の種類

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3.2 電線被覆材用PVCの鉛の含有量

(1) 目的

実験用の試料組成の参考にするために、電線被覆材用 PVC 中の鉛の一般的な含有量を調

査する。

(2) 調査結果

鉛の含有量を知るために、安定剤メーカー(NI ケミック)に推奨配合量をヒアリングし

た。ヒアリング結果を以下に示す。

□ 電線用鉛系安定剤

鉛系安定剤の使用部数: 約 5PHR ※

安定剤中の鉛含有量: 約 45%(但し、安定剤によって多少異なる)

□ 電線用非鉛系安定剤 (参考として)

非鉛系(Ca-Zn 系)安定剤の使用部数: 3~4PHR ※ (汎用電線配合)

4~5PHR (耐熱電線配合)

※ PHR : PVC レジン 100 に対する安定剤の配合量

PVC には可塑剤、充填剤なども配合されることを考慮すると、鉛元素の含有量は 2%以

下である。

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3.3 重金属の電線への使用状況

(1)目的

重金属の電線への使用実績を調査し、鉛以外にリサイクルを阻害する規制対象の重金属が

配合さていた実績があるか調査した。

(2)調査結果

電線に使用されていた重金属を下表3-3に示す。鉛以外には、カドミウム、クロム、水

銀、錫が使用されていた実績が有る。クロムと水銀は顔料としての使用なので、被覆材に対

して 1000ppm 以下の少量であると推測される。一方、カドミウムと錫は安定剤としても使

用されており、鉛と同様に、1000ppm 以上の含有量があるものと推測される。

しかし、錫安定剤とカドミウム安定剤は特殊用途であり、これらの安定剤を使用した電線

は、鉛安定剤を使用した電線に比べ非常に少ない。

化学物質群 主な使用部位

(電線関連)

主な使用目的

(電線関連)

使用頻度の高い

化合物質名 含有量※

鉛及び

鉛化合物

各種配線材の絶縁材料

ケーブル絶縁体

ケーブルシース

塩化ビニル安定剤

三塩基性硫酸鉛

二塩基性ステアリン酸鉛

二塩基性亜燐酸鉛

ステアリン酸鉛 など

該当塩化ビニル樹脂に対し

て、0.1~3wt%程度含有。

カラーバッチ顔料、染料(特

に白色、黄色、緑色系)

酸化鉛、クロム酸鉛、

硫酸モリブデン酸クロム酸鉛

など

該当カラーバッチに対して、

1~20wt%程度含有。

カドミウム及び

カドミウム化合物

各種配線材の絶縁材料

ケーブル絶縁体

ケーブルシース

塩化ビニル安定剤 ステアリン酸カドミウム など 該当塩化ビニル樹脂に対し

て、0.1~3wt%程度含有。

カラーバッチ顔料、染料(特

に黄色、赤色系) 硫化カドミウム など

該当カラーバッチに対して、

1~30wt%程度含有。

六価クロム化合物

各種配線材の絶縁材料

ケーブル絶縁体

ケーブルシース

カラーバッチ顔料、染料

(特に黄色、緑色系)

クロム酸鉛

硫酸モリブデン酸クロム酸鉛

など

該当カラーバッチに対して、

1~30wt%程度含有。

水銀及び

水銀化合物

各種配線材の絶縁材料

ケーブル絶縁体

ケーブルシース

カラーバッチ顔料、染料

(特に赤色、橙色系) 硫化水銀 など

該当カラーバッチに対して、

1~30wt%程度含有。

有機スズ化合物

各種配線材の絶縁材料

ケーブル絶縁体

ケーブルシース

塩化ビニル安定剤 ジブチルスズ=ラウリン酸塩

など

該当塩化ビニル樹脂に対し

て、0.1~3wt%程度含有。

表3-3 電線に使用されていた重金属 1)

※ この値は当該化学物質を使用している場合の「構成材料」に対する含有量であって、配線材・ケー

ブル全体に対する含有量ではない。

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引用文献

1) 技術資料第 137 号 電線の環境技術調査報告書, 2004 年 12 月, 日本電線工業会 電線・

環境技術小委員会

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4 PVC の分別方法の調査

4.1 他業界の対応

(1) 目的

他業界の分別技術を参考にするため、鉛含有 PVC を使用している製品と、これらの製品

のリサイクル時の、分別の有無、分別方法を調べた。

(2) 調査結果

鉛含有 PVC の使用実績があるのは塩化ビニル管・継手、サッシ(窓枠)、プラスチック

板、雨樋である。これらの製品は硬質塩化ビニルであるため、鉛が溶質する心配がなく、鉛

の使用に対する規制は無い。

これらの製品の業界にヒアリングを実施した結果を表4-1に示す。電線被覆材の分別に

応用できそうな分別方法はなかった。

ただし、塩化ビニル製品の品質検査の際に、鉛の有無を検査しているメーカーがあること

が分かった。検査に用いている機器は携帯型蛍光 X 線分析計である。

製品 ヒアリング先 分別

塩ビ管・継手 塩化ビニル管・継手協会 製品により、必要に

応じて目視で分別※

サッシ

(窓枠) プラスチックサッシ工業会

工場内での端材等の廃材につ

いては、分けて回収している

プラスチック板 日本プラスチック板協会 分別していない

雨樋 塩ビ雨樋協会 分別していない

※ 鉛フリーPVC の使用されている上水管は、下水管(鉛含有 PVC)よりも肉厚が厚いの

で、肉厚の違いから目視で判別している。全ての製品を分別しているわけではなく、製

品により必要に応じて分別している。

表4-1 ヒアリング結果

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各業界へのヒアリング結果の詳細は以下の通りである。

①塩化ビニル管・継手 (ヒアリング先:塩化ビニル管・継手協会)

鉛フリーPVCの用途:上水管

分別の有無:有り(製品により必要に応じて分別している)

鉛含有PVCをリサイクルする目的で、目視による分別を実施することがある。

分別の目的:変色を防ぐため。

鉛フリーPVC中のスズ系安定剤に含まれる硫黄(S)と鉛(Pb)が反応すると黒色の硫

化鉛(PbS)になるため変色する。

分別方法

上水管(鉛フリーPVC)は下水管(鉛含有PVC)よりも肉厚が厚い。肉厚の違い

から目視で分別する。

備考

上水管(鉛フリーPVC)へは再生PVCを使用していない。このため、鉛フリーPVC

を分別回収する必要性はない。

②サッシ(窓枠) (ヒアリング先:プラスチックサッシ工業会)

分別の有無:有り

工場内で発生する端材等の廃材を分けて回収し、リサイクルしている。

市中からの回収品については、現在はリサイクルしていない。

備考

サッシは耐久性が良いので、現在回収されるサッシは30~35年昔のものである。それら

をサッシにはほぼ全てに鉛系安定剤が使用されていたと思われるが、現在は脱鉛配合への切

り替えをほぼ終えている。

市中からの回収品については、モデル事業等を通じてリサイクル技術を開発中である。不

純物などの完全分別は難しく、直接人手が触れない部材に使用する等の検討をしている。

端材などの工場内の廃材については、非鉛のもののみをリサイクルしている。

③プラスチック板 (ヒアリング先:日本プラスチック板協会)

分別の有無:無し

備考:

以前は鉛系安定剤が使用されていたが、現在はスズ系安定剤が使用されている。

④雨樋 (ヒアリング先:塩ビ雨樋協会)

分別の有無:無し

備考:メーカーや品種によるが、現在でも鉛系安定剤が使用されている。

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(3)他業界の調査のまとめ

ヒアリングの結果、市中からの回収品について、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC を分別して

いるのは塩ビ管だけであった(ただし、全ての塩ビ管を分別しているわけではなく、製品に

より必要に応じて分別している)。その分別方法は、上水管(鉛フリーPVC)と下水管(鉛

含有 PVC)を肉厚の違いを利用した目視での分別であるため、電線被覆材の鉛含有 PVC と

鉛フリーPVC の分別の参考にはできなかった。

また、塩化ビニル製品のメーカーの中で、製品の品質検査の際に、携帯型蛍光 X 線分析

計を用いて鉛の有無を検査しているメーカーがあることがわかった。このため、携帯型蛍光

X線分析計については、電線被覆材の鉛含有PVCと鉛フリーPVCの判別が可能か検討する。

4.2 分別方法と電線被覆材用PVCへの適用の可能性

(1) 目的

鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別に適用できる分別方法や機器がないか調査した。

(2) 調査結果

各分別方法について調査した結果を以下に示す。(表4-2 参照)

① 比重差による分別 適用の可能性 ×

比重差を利用した分別方法である。鉛含有 PVC と鉛フリーPVC は比重に差がない為、分

別できない。

② 疎水性の差を利用した分別(浮遊選別法) 適用の可能性 ×

疎水性の差を利用して、界面活性剤を入れた水溶液(または水)に浮くものと沈むもの

に分別する方法である。鉛安定剤、非鉛安定剤の配合量が数%と非常に少ないため、疎水

性にほとんど差がなく分別しにくい。

また、可塑剤や充填剤などの配合材料によっても疎水性が変化してしまうので、様々な

配合材料を使用している電線用 PVC は分別できない。

③ 静電分別 適用の可能性 ×

試料の帯電を利用して分別する方法である。鉛安定剤、非鉛安定剤の配合量が数%と非

常に少ないため、帯電にほとんど差がないと推測される。

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また、可塑剤や充填剤などの配合材料によっても帯電が変化してしまうので、様々な配

合材料を使用している電線用 PVC は分別できない。

④ 磁界を利用した分別 適用の可能性 ×

安定剤、非鉛安定剤の配合量が数%と非常に少ないため、磁性に検知できる程の差がな

い。

⑤ 色の違いによる分別 適用の可能性 ×

鉛含有 PVC も鉛フリーPVC も黒が多いため分別できない。

⑥ ラマン分光による分別 適用の可能性 △

“鉛元素”ではなく、“鉛化合物”の存在を判別するため、電線被覆材に使用されている

全ての鉛化合物について、判別可能か確認する必要がある。

電線用 PVC に確実に含有される鉛系安定剤があり、それらの安定剤のスペクトルが非鉛系

安定剤と異なることが示せれば適用可能であるが、非常に困難であると思われる。

⑦ 蛍光 X線による分別 適用の可能性 ◎

鉛元素を直接同定する方法なので、原理的に鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の判別が可能

である。

通常、蛍光X線分析計は固定型で移動させることができないが、携帯型の分析計が、(株)

リガクから販売されている。現場での確認作業が可能で、剥線工程への適用が期待される。

電線の直径や、被覆材の厚みによっては分析できないことも考えられるため確認が必要

である。

⑧ 透過 X 線による分別 適用の可能性 ○

透過 X 線量は鉛の有無により変化するため、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC を判別でき

る可能性が有る。ただし、透過量は臭素などによっても変化するため、組成によっては判

別が難しいことも考えられる。各種の配合材料を混ぜた試料で確認実験をする必要がある。

機器としては、透過 X 線センサを組み入れた自動分別装置がある。粉砕片(ナゲット)

や、数 cm 程度に裁断した電線などの分別への適用が期待される。

⑨ 近赤外線による分別 適用の可能性 ○

近赤外線を物質に照射し、反射した近赤外線のスペクトルを分析して物質を判別する。

近赤外線は鉛など特定元素により、吸収波長のピークシフトがおきることがあるため、

鉛含有 PVC と鉛フリーPVC を判別できる可能性が有る。

電線は黒色 PVC を使用することが多いが、黒い(色の濃い)物質は照射した近赤外線

の多くを吸収してしまうため、全波長に渡って反射スペクトルの強度が弱く、反射スペク

トルの分析が難しい。このため現状の近赤外線分別装置で電線被覆材を分別できないが、

黒い物質でも分別可能な装置を開発中のメーカーが1社(㈱アーステクニカ)あるため、

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将来的には電線被覆材の分別にも適用できる可能性がある。粉砕片(ナゲット)や、数

cm 程度に裁断した電線などの分別への適用が期待される。

開発中の装置では、弱い強度の反射スペクトルから物質を判別する。スペクトルを分析

するという点は現状の装置と同じである。したがって、白い PVC を用いて、現状の装置

で分別可能であれば、将来開発される装置で電線被覆材を分別できる可能性が高い。

(3) まとめ

電線被覆材の PVC に適用の可能性がある分別方法は、近赤外線、蛍光 X 線、透過 X 線

の3つである。特に蛍光 X 線による判別の可能性が高いと推測される。

■蛍光 X 線

鉛元素を直接同定する方法なので、原理的に鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の判別が可

能である。携帯型の蛍光 X 線分析計があり、現場での確認作業が可能で、剥線工程へ

の適用が期待される。

■透過 X線

透過 X 線量は鉛の有無により変化するため、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC を判別で

きる可能性が有る。透過 X 線センサを組み入れた自動分別装置があり、粉砕片(ナゲ

ット)や、数 cm 程度に裁断した電線などの分別への適用が期待される。

一方で、臭素など他の配合材料による分別能力の低下が懸念される。

■近赤外線

近赤外線は鉛など特定元素により、吸収波長のピークシフトがおきることがあるため、

鉛含有 PVC と鉛フリーPVC を判別できる可能性が有る。この近赤外線センサを組み入

れた自動分別装置があり、粉砕片(ナゲット)や、数 cm 程度に裁断した電線などの分

別への適用が期待される。

また通常、近赤外線分別装置では分別が困難な、黒色の物質を分別する装置を開発中

のメーカーがあり、黒色 PVC を使用することが多い電線でも将来的に分別できる可能

性がある。現状でも、白などの色の薄い PVC を分別する装置はあるので、基礎検討は

可能である。

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表4-2 判別・分別方法の電線への適用の可能性

適用の可能性

理由 (ヒアリング結果) 装置の詳細 備考(関連特許など)

①比重差

による分別× 比重に殆ど差がないため分別不可能。

② 浮遊選別法 ×

③ 静電分別 ×

④磁界を利用した分別

× 検知できるほどの磁性があるとは考え難いため、分別不可能。

⑤色の違いによる分別

(CCD等を利用)× 同色(特に黒色)の電線が多いため、分別不可能。

⑥ラマン分光による分別

PVC中の鉛安定剤のラマンスペクトルを観察できるならば、分別できる可能性があるが、“鉛元素”ではなく、“鉛化合物”の存在を判別するため、電線被覆材に使用されている全ての鉛化合物について、判別可能か確認する必要がある。電線用PVCに確実に含有される鉛系安定剤があり、それらの安定剤のスペクトルが非鉛系安定剤と異なることが示せれば適用可能であるが、非常に困難であると思われる。

簡易的なラマン分光装置を用いて、プラスチックを自動で分別する装置がある。近畿大学と㈱サイムが共同で開発。

【関連特許】特許公開2009-92458ラマン散乱信号取得方法ならびにラマン散乱信号取得装置、および、プラスチックの識別方法ならびに識別装置

特許公開2008-209128プラスチックの識別方法および識別装置

⑦蛍光X線

による分別◎

鉛元素を直接同定する方法なので、原理的に鉛含有PVCと鉛フリーPVCの判別が可能である。電線の直径や、被覆材の厚みによっては分析できないことも考えられるため確認が必要である。

携帯型の蛍光X線分析計があり、現場での確認作業が可能である。リガク、ポニー工業から販売されている。PCでの遠隔操作も可能。500万円程度。

塩ビ雨樋の製品出荷前に、鉛フリーであることを確認する検査に使用されている。

⑧透過X線

による分別○

透過X線量は鉛の有無により変化するため、鉛含有PVCと鉛フリーPVCを判別できる可能性が有る。透過量は臭素などによっても変化するため、組成によっては判別が難しいことも考えられる。

プラスチックを自動で分別する装置がある。アーステクニカから販売されている。ドイツの分別装置をベースにしており、価格は6000万円程度である。

⑨近赤外線

による分別○

近赤外線を物質に照射したときの反射スペクトルにより判別する。近赤外線は鉛など特定元素により、吸収波長のピークシフトがおきることがあるため、鉛含有PVCと鉛フリーPVCを判別できる可能性が有る。通常、近赤外線分別装置では分別が困難な、黒色の物質を分別する装置を開発中のメーカーがあり、黒色PVCを使用することが多い電線でも将来的に分別できる可能性がある。

アーステクニカのドイツの技術提携先メーカーにて、黒いプラスチックを分別できる装置を開発中である。

分別方法

安定剤よりも含有量が多い可塑剤等の影響が大きいため、分別不可能。

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5 携帯型蛍光 X線分析計の電線被覆材の判別能力評価

5.1 目的

RoHS 対応等の為に鉛濃度を分析する装置として、蛍光 X 線分析計がある。通常、蛍光 X

線分析計は固定型で移動させることができないが、携帯型で電線処理現場において使用でき

る分析計が、(株)リガクから販売されている(製造会社は米国Thermo Fisher Scientific Inc.

である)。この分析計で鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の判別が可能か検証をおこなった。

5.2 分析計の仕様

市販されている分析計の仕様を表5-1に示す。本報告書では、表5-1に示すように、

各分析計に①~⑤の番号を付ける。

尚、XL3t-700-SS(③)の測定視野 8mmφと、XL3t-700(②)は同じ性能を有する。同

様に、XL3t-700S-SS(⑤)の測定視野 8mmφと、XL3t-700S(④)は同じ性能を有する。

また、XL3t-700 は Si-PIN ダイオードを検出器として採用した分析計であり、XL3t-700S はシ

リコンドリフト検出器を採用した分析計である。

表5-1 携帯型蛍光 X 線分析計の仕様一覧

検出限界:

積算時間 60 秒で PVC 中の重元素を測定する場合、検出限界は十から数十 ppm である。

(但し、機種・対象元素によって異なる。また、積算時間が短い場合、検出限界は大きくなる。)

(参考)

・ 使用時の冷却媒体は不要である。

・ データの PC への転送が可能である。

分析計① ② ③ ④ ⑤

XLt794RW XL3t‐700 XL3t‐700‐SS XL3t‐700S XL3t‐700S‐SS

測定視野 10×20mm 8mmφ3mmφ/8mmφ切替え可能

8mmφ3mmφ/8mmφ切替え可能

定量可能元素 右記のCl, Ba以外 Ti, V, Cr, Fe, Ni, Cu, Zn, As, Se, Br, Cd, Sn, Sb, Ba, Au, Hg, Pb, Bi, Cl,

積算時間 3秒以上(メーカー推奨)

参考価格帯 ¥4,000,000 ~ ¥6,000,000

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5.3 電線被覆材の判別能力の評価

5.3.1 鉛濃度の影響調査

(1)目的

分析計ごとに、鉛フリーPVC と鉛含有 PVC(鉛含有量 0.1~2.0wt%)とを判別可能な条

件を調査する。

(2)試料

試料の配合、鉛含有量、形状は以下の通りである。

配合: 表5-2に記載の4種類の配合

鉛含有量 2.0 wt%(一般的な鉛含有 PVC の鉛含有量)

鉛含有量 1.0 wt%(比較的含有量が少ない鉛含有 PVC)

鉛含有量 0.1 wt%(鉛フリーPVC の鉛含有量の上限値。)

鉛含有量 0 wt%(鉛フリー)

※ 鉛フリーPVC として鉛含有量 0wt%を使用した。

5.3 章の鉛フリーは鉛含有 0wt%を表す。

表5-2 試料組成1

大分類 配合材料 A-Pb※1 A-Pb(1.0) A-Pb(0.1)※3 A-CZ※2

樹脂 PVC レジン 100 100 100 100

可塑剤 DOP 50 50 50 50

安定剤

三塩基性硫酸鉛 4.5 2

ステアリン酸鉛 0.9 1 0.7

Ca-Zn 系安定剤 5 5

充填剤・難燃剤 炭酸カルシウム 40 40 40 40

合計 195.4 193.0 195.7 195.0

鉛含有量(wt%) 2.0 1.0 0.1 0

※1 試料名 A-Pb, A-Pb(1.0), A-Pb(0.1)の“Pb”は鉛系安定剤を配合した試料であること

を表す。括弧内の数字は配合量(wt%)を表す。

※2 試料名の A-CZ の“CZ”は、カルシウム-亜鉛系(Ca-Zn 系)安定剤のみを配合した試料

であることを表す。

※3 試料 A-Pb(0.1)では、鉛系安定剤と Ca-Zn 系安定剤の両方が配合されている。

鉛含有量 0.1%の試料とするために、鉛系安定剤は通常よりも少なくしか配合できな

かった。コンパウンドの作製のためには、安定剤の量を増やす必要があるため Ca-Zn

系安定剤も一緒に配合した。

(単位 : PHR)

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形状: 30×30×1mm

(3)測定方法

図5-1に示すように、本測定はテスト用のスタンドを利用して測定した。スタンドの上

に試料をのせ、スタンドの下に携帯型蛍光 X 線分析計を取り付けて、スタンドのふた(X

線シールド)を閉めた後、下側から X 線を照射して分析した。

尚、このスタンドは X 線シールド内に試料を置いて測定できるものであり、より安全に

測定する場合に用いる。実際のリサイクル現場ではスタンドは使用しないがスタンドを使用

しなくても分析結果は変わらない。

試料の測定箇所の数、測定回数、積算時間は以下の通りである。

同一試料について 2 箇所測定。

(試料の濃度が測定部位によって変化していた場合、1 箇所だけの測定だと、分析計

の精度が悪いと誤認してしまう事があるため。)

1箇所について 5 回測定。(分析計に起因する誤差の大きさを確認するため。)

積算時間 3、6、10 秒 で測定(積算時間による分析精度の違いを確認するため。)

使用した分析計:

XLt794RW(①)

XL3t-700-SS(③)測定視野 3mmφ 及び 8mmφ

XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 3mmφ 及び 8mmφ

XL3t-700(②)は、XL3t-700-SS(③)の測定視野 8mmφと同じ性能を有する

分析計であるので実験しない。

同様に、XL3t-700S(④)は、XL3t-700S-SS(⑤)の測定視野 8mmφと同じ

性能を有する分析計であるので実験しない。

30mm

30

mm 厚さ

1mm

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測定時はふたを閉める。

X 線シールドになっている。

試料

図5-1 測定の様子

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(4)結果

鉛含有量 0%の PVC の分析では、全ての装置・積算時間で、鉛を検出しなかった(検出

限界未満であった)。

各分析計による鉛含有 PVC の分析の結果を表5-3、5-4に示す。

表5-3 各分析計の鉛含有 PVC の判別能力

※1 (参考)

XL3t-700-SS(③)と XL3t-700S-SS(⑤)は特徴として、微小部測定が可能で、カラー画面

や可倒式パネルなどがあり、XLt794RWに比べて操作性が良いという優位点を有している。

また、数十 ppm 程度の微量測定を実施する場合の感度は XL3t-700S-SS(⑤)が有利であ

る。

※2 ここでの“誤差”とは、測定箇所 2 箇所×5 回、即ち測定 10 回測定した平均値(a)と、

平均値からの差が最も大きかった測定値(b)との差(b-a)を意味する。

◎:誤差※2 10%以下 ○:誤差10~30% △:誤差30%以上 ×:鉛検出できないことあり

分析計① ③ ⑤

XLt794RW XL3t‐700‐SS XL3t‐700S‐SS

測定視野 10×20mm 3mmφ 8mmφ 3mmφ 8mmφ

鉛含有量 積算時間

2.0wt%

3  秒 ◎ △ ○ △ ○

6  秒 ◎ ○ ○ ○ ◎

10  秒 ◎ ○ ◎ ◎ ◎

1.0wt%

3 秒 ◎ △ ○ △ ○

6  秒 ◎ ○ ◎ △ ◎

10  秒 ◎ ○ ◎ ◎ ◎

0.1wt%

3  秒 ○ × △ × ○

6  秒 ◎ × ○ △ ○

10  秒 ◎ ○ ○ ○ ◎

備考 価格は一番安い 3秒で測定できるが、XLt794RWと比較し誤差が大きい。※1

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表5-3から、各分析計についての、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC を判別可能な条件は以

下の通りである。

■ XLt794RW (①)

判別可能な条件:

・ 全ての試料を、積算時間 3 秒以上で判別可能である。

備考:

・ 誤差が一番少ない。

・ 最も安い

・ 測定視野が一番広い( ⇒太い電線の評価に適している。 )

■ XL3t-700-SS(③) 測定視野 3mmφ

判別可能な条件:

・ 鉛含有量 0.1wt%の試料を、積算時間 10 秒で判別可能である。

・ 鉛含有量 1.0、2.0wt%の試料を、積算時間 3 秒で判別可能である。

(但し、3 秒だと誤差が大きいので、6 秒以上が望ましい。)

■ XL3t-700-SS(③) 測定視野 8mmφ

判別可能な条件:

・ 全ての試料を、積算時間 3 秒で判別可能である。

(但し、鉛 0.1wt%の試料は 3 秒だと誤差が大きいので、6 秒以上が望ましい。)

備考:

・ 同じ性能を有する XL3t-700(②)も同様な結果が得られると推測される。

■ XL3t-700S-SS(⑤) 測定視野 3mmφ

判別可能な条件:

・ 鉛含有量 0.1wt%の試料を、積算時間 6 秒で判別可能である。

・ 鉛含有量 1.0、2.0wt%の試料を、積算時間 3 秒で判別可能である。

(但し、積算時間が短いと誤差が大きいので、鉛1.0wt%の試料は10秒以上、鉛2.0wt%

の試料は 6 秒以上が望ましい。)

■ XL3t-700S-SS(⑤) 測定視野 8mmφ

判別可能な条件:

・ 全ての試料を、積算時間 3 秒で判別可能である。

備考:

・ 同じ性能を有する XL3t-700S(④)も同様な結果が得られると推測される。

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表5-4 各蛍光 X 線分析計による鉛含有量の測定値

※ 全ての分析計、積算時間において、鉛含有量 0wt%の PVC から鉛は検出されなかったため、その測定結果は省略した。

■:測定点1 ■:測定点2

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(5)まとめ

鉛含有量 1.0wt%以上の PVC と鉛フリーPVC は、全ての分析計、測定視野におい

て、積算時間 3 秒で判別可能である。(表5-5参照)

XLt794RW、XL3t-700-SS(③)測定視野 8mmφ、XL3t-700S-SS(⑤)測定視

野 8mmφ は、鉛含有量 0.1wt%以上の PVC と鉛フリーPVC を、積算時間 3 秒で

判別可能である。(表5-5参照)

XL3t-700-SS(③)測定視野 3mmφ は、鉛含有量 0.1wt%以上の PVC と鉛フリ

ーPVC を、積算時間 10 秒で判別可能である。(表5-5参照)

XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 3mmφ は、鉛含有量 0.1wt%以上の PVC と鉛フ

リーPVC を、積算時間 6 秒で判別可能である。(表5-5参照)

表5-5 判別に必要な積算時間

XLt794RW(①)は誤差が一番少なく、価格も一番安い。

ただし、測定視野が最も広いので、測定する電線の外径が測定視野よりも小さい場

合には、他の分析計よりも誤差が大きくなる可能性があるので注意が必要である。

太い電線を測定する際には最適な分析計である。

測定視野が広いほうが、誤差が少ない傾向が得られた。

(注)

メーカーからの情報では XLt794RW(①)は 2010 年度中に販売終了となり、新タイプ

が販売される予定である。新タイプは XLt794RW(①)のアップグレード版であるので、

XLt794RW(①)より判別の性能が低下することは無いと予想される。

XLt794RW

測定視野 10×20mm 3mmφ 8mmφ 3mmφ 8mmφ

鉛含有量1.0wt%と0wt%を判別可能な積算時間

鉛含有量0.1wt%と0wt%を判別可能な積算時間

3秒以上 10秒以上 3秒以上 6秒以上 3秒以上

XL3t-700-SS

XL3t-700S-SS

3秒以上

分析計

- 31 -

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5.3.2 配合材料による妨害要因

(1)目的

各種の配合材料の影響により、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の判別精度が低下しないか確

認する。

(2)試料

試料の配合、鉛含有量、形状は以下の通りである。

配合 : 表5-6に記載の配合

鉛含有量 : 2.0wt%(通常鉛含有量)、

0wt%(鉛フリー)

形状 : 30×30×1mm

(3)測定方法

『5.3.1項』の実験と同様にスタンドを使用して測定した(図5-1参照)。

試料の測定箇所の数、測定回数、積算時間は以下の通りである。

1試料につき 1 箇所測定。

1箇所について 3 回測定。(分析計に起因する誤差の大きさを確認するため。)

積算時間 3 秒 で測定。

分析計は XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 8mmφを使用。

(『5.3.1項』の結果では、XLt794RW(①)の判別能力が一番高かったが、

2010 年度中に販売終了となるため、最も新しいタイプの XL3t-700S-SS(⑤)を

使用した。)

(4)結果

XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 8mmφでの測定値を図5-2、表5-7に示す。

鉛フリーPVC の分析結果は、全て、検出限界未満であった。

焼成クレー、硼酸亜鉛、臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、

水酸化アルミニウムを配合した場合や、可塑剤をDOPからDINPに変えた場合も、

鉛含有量 2.0%の PVC と鉛フリーPVC を判別可能であった。

配合材料の影響として、三酸化アンチモンを配合した場合(試料 E)、鉛含有量の

測定値は実際の値 2.0wt%より約 30%多かった。(ただし、鉛含有 PVC と鉛フリー

PVC は判別能である。)

30mm

30

mm 厚さ

1mm

- 32 -

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(注

1)A

-Pb,

A-C

Zは

表5-2と同じ組成である。

(注

2)試

料名

A-P

b, A

-CZ

,・・の“

Pb”

、“

CZ”はそれぞれ鉛系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤を配合した試料であることを表している。

(注

3)試

料名の

A-P

b, B

-Pb,

C-P

bの“

A”、“

B”、“

C”、・・・、

は安定剤以外の配合が異なることを表している。

大分類

配合材料

A

-Pb

A-C

Z

B-P

b B

-CZ

C

-Pb

C-C

Z

D-P

b D

-CZ

E

-Pb

E-C

Z

F-P

b F

-CZ

G

-Pb

G-C

Z

H-P

b H

-CZ

樹脂

P

VCレジン

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

可塑剤

D

OP

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

DIN

P

50

50

安定剤

三塩基性硫酸鉛

4.

5

4.7

4.

7

5.2

5.

2

5.2

5.

2

4.5

ステアリン酸鉛

0.

9

1

1

1

1

1

1

0.9

Ca-

Zn系

安定

5

5

5

5

5

5

5

5

充填剤

難燃剤

炭酸カルシウム

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

焼成クレー

10

10

硼酸亜鉛

10

10

臭素系難燃剤

30

30

三酸化アンチモン

30

30

水酸化マグネシウム

30

30

水酸化アルミニウム

30

30

合計

19

5.4

195.

020

5.7

205.

020

5.7

205.

022

6.2

225.

0 22

6.2

225.

022

6.2

225.

022

6.2

225.

019

5.4

195.

0

鉛含有量

(w

t%)

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

:鉛含有

PV

C□:鉛フリー

PV

C表5-6 試料組成2

(単位

: P

HR)

- 33 -

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5.3.3 廃電線の測定結果

(1)目的

電線の形状でも、鉛含有 PVC を判別可能か確認する

(2)試料

表5-8の廃電線を使用。

全て、建設電販用電線に鉛フリーPVC が使用され始める 2002 年以前に製造された電線

であるため、PVC であれば安定剤として鉛を含有している。ただし、正確な鉛含有量は公

開されておらず、不明である。

図5-2 蛍光 X 線分析計による鉛含有量測定結果

表5-7 蛍光 X 線分析計による鉛含有量の測定値 単位 (wt%)

※ ND:鉛未検出

2.23 

2.09  2.10 

2.33 

2.64 

2.13 2.24 

2.17 

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 1.8 2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0 

A‐Pb B‐Pb C‐Pb D‐Pb E‐Pb F‐Pb G‐Pb H‐Pb

鉛含有量の測定値

( wt%

 )

(注)鉛フリーPVC からは、全て、鉛が検出されなかったので、グラフへの表示を省略

した。

- 34 -

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表5-8 試料(廃電線)

(注)全て、建設電販用電線に鉛

フリー

PV

Cが使用され始める

2002

年以前に製造された電線である。

外径

 φ

30m

m以

上外

径 

φ20m

m~

φ30m

m外

径 

φ10m

m~

φ20m

m外

径 

φ10m

m未

(ⅰ) φ

13m

m(ⅱ

) φ

6m

m

(ⅲ) φ

25m

m 

(高

圧)

(ⅳ) φ

18m

m

(ⅴ) 1

6m

m

(ⅵ) φ

36m

m(ⅶ

) φ

27m

m(ⅷ

) φ

13m

m

(ⅸ

) 11×

7m

m

(ⅹ) φ

19m

m(ⅺ

) φ

8m

m

(ⅻ) φ

2m

m

ビニ

ール

コー

耐火

(FP

耐熱

(H

P)

VV

F

VV

R

電線

の種

類外

IV CV

- 35 -

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(3)測定方法

測定時の様子を図5-3 ~ 6 に示す。椅子の上に廃電線を置いて、上側から分析計を

あてて測定した。

試料の測定箇所の数、測定回数、積算時間、使用した分析計は以下の通りである。

1 試料につき 1 箇所測定。

1箇所について 3 回測定。(分析計に起因する誤差の大きさを確認するため。)

積算時間 3 秒 で測定。

分析計は XL3t-700S-SS(⑤)を使用。測定視野は以下の通りである。

・試料(ⅰ)~(ⅻ)の全ての電線を、測定視野 8mmφで測定した。

・試料(ⅱ), (ⅻ)の細い電線は、測定視野 3mmφでも測定した。

廃電線にガムテープをはり固定し、転がらない条件で測定した。

図5-5

分析計の液晶画面

パソコン画面上で、

試料の測定位置を

確認できる。

図5-6 パソコン接続時のパソコン画面

廃電線

図5-4

測定の様子2

図5-3

測定の様子1

- 36 -

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(4)結果

XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 8mmφ での測定値を図5-7に示す。全ての PVC か

ら鉛を検出できた。(試料 ⅸ からは塩素が検出されず、PVC ではなかった。鉛が検出

されていないが、PVC でないため実際に鉛が入っていないと推測される。)

最も細い外径 2mmφの電線(ⅻ)からも鉛を検出できた。このため、XL3t-700S-SS

(⑤)測定視野 8mmφで測定する場合、外径 2mmφ以上の電線であれば、積算時間

3 秒で判別可能である。

細い電線について、測定視野 3mmφ と 8mmφ での、鉛含有量の測定値を比較した(図

5-8)。細い電線(ⅱ),(ⅻ)は、測定視野が狭い場合の方がほうが、鉛含有量の測定値

は多かった。従って、電線の外径が測定視野に比べ小さい場合、鉛含有量の測定値は実

際より少なくなってしまうと推測される。

0.94 0.80 

4.01 

1.34 

0.85 

2.03 1.72 

0.92 

0.00 

2.77 

0.59 

0.26 

0.00 

0.50 

1.00 

1.50 

2.00 

2.50 

3.00 

3.50 

4.00 

4.50 

5.00 

ⅰ ⅱ ⅲ ⅳ ⅴ ⅵ ⅶ ⅷ ⅸ ⅹ ⅺ ⅻ

鉛含有

量の測

定値

( wt%

 )

図5-7 XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 8mmφでの測定値

図5-8 測定視野 8mmφと 3mmφでの測定値の比較

試料番号

0.80 

0.26 

1.18 

0.52 

0.00 

0.50 

1.00 

1.50 

② ⑫

■ 測定視野 3mmφ

■ 測定視野 8mmφ

試料ⅱ (外径 6mmφ)

試料ⅻ (外径 2mmφ)

鉛含有

量の測

定値

( wt%

 )

- 37 -

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(5)考察 電線外径の影響

XL3t-700S-SS(⑤)による鉛含有量の測定値と、電線外径の関係を表したグラフを図

5-9に示す。電線外径が小さくなるほど鉛含有量の分析結果の値は小さくなっている。実

際の鉛含有量は判らないが、ケーブル外径が小さいものだけ安定剤を少なくすることは、一

般的にはない。したがって、電線外径が小さくなるほど、実際の値より測定値が少なくなる

傾向が得られた。この原因としては、電線外径が小さくなるほど、周辺に存在するもの(例えば図5

-3の場合、主として椅子の表面材料)が総質量に加わった状態で鉛の濃度計算が行なわれるこ

となどが考えられる。

以上のことから、細い電線を分析する際には、測定視野は小さい方が望ましい。ただし、

測定視野が大きい 8mmφでも鉛含有 PVC の判別は可能である。測定視野 8mmφで細い電

線を測定するときには、実際より値がかなり小さくでることを認識したうえで使用すること

が望ましい。

(参考)

㈱リガクによると、細い電線を測定する際に生じる “測定値”と“実際の値”との差は、測定視野

全体がカバーされるように複数の電線を並べて測定することによって改善されると推測される。

図5-9 電線の外径と、鉛含有量の測定値の関係

0.0 

0.5 

1.0 

1.5 

2.0 

2.5 

3.0 

3.5 

4.0 

4.5 

0 10 20 30 40

鉛含

有量

の測

定値

(wt%

電線の外径(mm)

測定視野8mmΦで測定

測定視野3mmΦで測定

- 38 -

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5.3.4 下地の影響調査(構成の影響調査)

(1)目的

電線被覆材を測定する際に、導体や銅テープなどのシース内の素材が測定値に影響しない

か確認する。

(2)試料

下記の 2 種類のシート状の試料を用いた。厚さはどちらも 1mm である。

・鉛含有 PVC シート(配合:表5-6の B-Pb)

・EVA シート

(3)測定方法

図5-10、11に示すように、試料に銅テープを貼り付け、銅テープの付いていない

方から蛍光 X 線で分析し、銅が検出されるか確認する。試料の測定箇所の数、測定回数、

積算時間、分析計は以下の通りである。

1 試料につき 1 箇所を 3 回測定。

積算時間 3 秒 で測定。

分析計は XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 8mmφを使用。

図5-10 測定の様子

図5-11 測定時の試料の模式図

銅テープ

PVC シート

または

EVA シート

銅テープを貼ってない方から測定

PVC シート、

または EVA シート

銅テープ

1mm

- 39 -

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(4)結果

銅の測定値を図5-12に示す。EVA シートに貼り付けた銅は検出されたが、PVC シー

トに貼り付けた銅は検出されなかった。従って、XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 8mmφ、

積算時間 3 秒で測定する場合、厚さ 1mm あれば下地(導体など)の元素を検出しないこと

が分かった。

PVC には X 線を吸収し易い塩素が多いため、X 線が透過し難いのではないかと推測され

る。

図5-12 銅の検出量

の測

定値

(w

t%)

0

12.5 

0

2

4

6

8

10

12

14

PVC+銅 EVA+銅

鉛含

有量

測定

結果

( wt%

 )

EVAに貼り付けた銅は検出される

PVCに貼り付けた銅が検出されない

の測

定値

(w

t%)

- 40 -

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5.4 携帯型蛍光X線分析計のまとめ

携帯型蛍光 X線分析計についての評価結果は以下の通りである。

■ 鉛フリーPVC と鉛含有 PVC とを判別可能な条件 (表5-5参照)

鉛含有量 1.0wt%以上の PVC と鉛フリーPVC は、全ての分析計、測定視野におい

て、積算時間 3 秒で判別可能である。

XLt794RW、XL3t-700-SS(③)測定視野 8mmφ、XL3t-700S-SS(⑤)測定視

野 8mmφ は、鉛含有量 0.1wt%以上の PVC と鉛フリーPVC を、積算時間 3 秒で

判別可能である。

XL3t-700-SS(③)測定視野 3mmφ は、鉛含有量 0.1wt%以上の PVC と鉛フリ

ーPVC を、積算時間 10 秒で判別可能である。

XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 3mmφ は、鉛含有量 0.1wt%以上の PVC と鉛フ

リーPVC を、積算時間 6 秒で判別可能である。

■ 配合材料の影響

焼成クレー、硼酸亜鉛、臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、

水酸化アルミニウムを配合した場合や、可塑剤を DOP から DINP に変えた場合も、

XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 8mmφ、積算時間 3 秒で鉛含有量 2.0%の PVC と

鉛フリーPVC を判別可能である。

■ 廃電線の測定

電線形状でも外径 2mmφ以上であれば、XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 8mmφ、

積算時間 3 秒で鉛含有 PVC 判別可能である。

電線サイズが細くなると精度が悪くなる。測定視野より小さい直径の電線の測定は、

注意が必要である。下記の項目の実施が望ましい。

・鉛含有量が実際より、かなり少なく表示されることを認識して使用する。

・積算時間を長くする。

・小さい測定視野で測定する。

■ 下地の影響調査

XL3t-700S-SS(⑤)測定視野 8mmφ、積算時間 3 秒で測定する場合、PVC の厚

さが 1mm 以上あれば、下地の組成は検出しない。

- 41 -

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6 透過X線分別装置(アーステクニカ製)の電線被覆材の分別能力評価

6.1 目的

鉛は X 線を透過し難い元素であるため、透過 X 線を鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別

に利用できる可能性がある。透過 X 線を用いた自動分別装置が(株)アーステクニカから

販売されており、この分別装置を使えば、廃電線や粉砕品(ナゲット)を、高速・高効率に

分別できる可能性がある。

そこで、実際に電線被覆材の鉛含有 PVC と鉛フリーPVC を分別可能か確かめるために、

分別性能(品位と回収率)を評価した。

6.2 分別装置の概略/原理

6.2.1 装置の概略

主な仕様は以下の通りである。

試料の搬送速度 : 3m/s

投入物のサイズ : 150mm 以下

検知幅 : 1200mm

図6-1に分別装置の外観、図6-2に装置の概略図、図6-3に分別部内部を示す。分

別作業は以下の流れで進める。

① 混合物投入部に投入された試料は、投入部から搬送コンベアへと移動する。

② 搬送コンベアへ投入される際に、振動によって1つ1つバラバラにし、重なった状態

で X 線測定することがないようにする。

③ 搬送コンベアで 3m/s で搬送され、搬送されながら透過 X 線で分析する。

④ 搬送コンベアの端に分別用のエアーが設置してあり、分析の結果によって遠くの回収

ボックスへとエアーで吹き飛ばすものと、近くの回収ボックスへと自然落下させるも

のとに分ける。

- 42 -

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エアー吹き出し口

分析部分別部 搬送コンベア 混合物投入部

図6-3 分別部内部

図6-1 装置の外観

図6-2 装置の概略図

材料B

材料A

X線発信器

受信器

エアー(分別用)

搬送コンベア

- 43 -

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6.2.2 装置の原理

分別対象のサンプル(下図6-4の PVC シート)の各部の X 線透過量を多点で測定する

(X 線発信器と受信器で測定)。その測定結果から、X 線透過量に起因する数値を算出する。

本報告書ではこの数値を H 値と呼ぶことにする。(H 値の詳細および算出方法については、

メーカーのノウハウの部分もあり十分な説明ができないため、本報告書においては省略す

る。)

H 値は、同種のサンプルでも値は一定ではなく、ばらつきのある分布(図6-5)とし

て観測される。閾値を決め、H 値が閾値以上か閾値未満かで試料を判別し、分別をおこう。

(1)測定の概略,(2)測定イメージ,(3)分別の概略,(4)H 値の傾向を以下に記

す。

(1)測定の概略

(2)測定イメージ

同じ材料でも、下図6-5のように分布のあるデータになる。

図6-5 H 値の分布(イメージ)

H値

試料

図6-4 測定の概略

鉛含有

鉛フリー 受信器

エアー

多点測定する

⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭

⑮ ⑯・ ・ ・

① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦

PVCシート

H 値が閾値未満

閾値以上

- 44 -

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(3)分別の概略

鉛含有 PVC と鉛フリーPVC など異種サンプルを測定した場合、H 値はピークの異なる

分布となる。この分布と閾値により、品位と回収率が決まる。

ケース 1:分布が完全に分かれている場合

下図6-6のように分布が完全に分かれている場合、その間に閾値を取れば、品位 100%、

回収率 100%で完全に分別できる。

図6-6 分布が完全に分かれている場合の分別(ケース1)

鉛含有

鉛フリー

H 値が閾値未満

閾値以上

H値

試料

鉛含有鉛フリー

閾値をここにとる

- 45 -

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ケース 2:分布が重なっている場合

下図6-7のように、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の H 値の分布が重なっている場合に

は、品位と回収率の両方を 100%にはできない。この場合、閾値の取り方によって品位、回

収率は変わる。下図6-7で閾値を H1とした場合、鉛フリーPVC は品位を 100%にできる

が、回収率は 100%にできない。閾値を H2とした場合は、鉛フリーPVC は回収率を 100%

にできるが、品位は 100%にできない。

(鉛フリー:品位 100%, 低回収率)

図6-7 分布が重なっている場合の分別(ケース2)

(鉛フリー:低品位, 回収率 100%)

鉛含有

鉛フリー

閾値をH1にした場合

鉛含有

鉛フリー

閾値をH2にした場合

H値

試料

選別可能

選別可能

選別不可能

H1 H2

鉛含有鉛フリー

H1 H2

- 46 -

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(4)H 値の傾向

参考までに、H 値の傾向を以下に記す。

① X 線透過量との相関性

H 値と X 線透過量との間には以下の相関性がある。

H 値が高い ⇔ X 線透過量が少ない (鉛含有 PVC など)

H 値が低い ⇔ X 線透過量が多い (鉛フリーPVC など)

② 測定点数との相関性

H 値の精度と測定点数との間には以下の相関性がある。

H 値の精度良い ⇔ 測定点数が多い (試料サイズが大きい)

H 値の誤差が大きい ⇔ 測定点数が少ない (試料サイズが小さい)

- 47 -

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6.3 電線被覆材の分別能力の評価

6.3.1 鉛濃度の影響調査

(1)目的

鉛を 0.1~2.0wt%含有する PVC と、鉛フリーPVC を透過 X 線分別装置で分別可能か確

認する。 また、鉛含有量の違いによって分別性能に差があるかも確認する。

(2)試料

試料の配合、鉛含有量、形状は以下の通りである。

配合: 表6-1に記載の4種類の配合

鉛含有量 2.0 wt%(一般的な鉛含有 PVC の鉛含有量)

鉛含有量 1.0 wt%(比較的含有量が少ない鉛含有 PVC)

鉛含有量 0.1 wt%(鉛フリーPVC の鉛含有量の上限値。)

鉛含有量 0 wt%(鉛フリー)

※ 鉛フリーPVC として鉛含有量 0wt%を使用した。

6.3 章の鉛フリーは鉛含有 0wt%を表す。

表6-1 試料組成1

大分類 配合材料 A-Pb※1 A-Pb(1.0) A-Pb(0.1)※3 A-CZ※2

PVC 100 100 100 100

可塑剤 DOP 50 50 50 50

安定剤

三塩基性硫酸鉛 4.5 2

ステアリン酸鉛 0.9 1 0.7

Ca-Zn 系安定剤 5 5

充填剤・難燃剤 炭酸カルシウム 40 40 40 40

合計 195.4 193.0 195.7 195.0

鉛含有量(wt%) 2.0 1.0 0.1 0

※1 試料名 A-Pb, A-Pb(1.0), A-Pb(0.1)の“Pb”は鉛系安定剤を配合した試料であること

を表す。括弧内の数字は配合量を表す。

※2 試料名の A-CZ の“CZ”は、カルシウム-亜鉛系(Ca-Zn 系)安定剤のみを配合した試料

であることを表す。

※3 試料 A-Pb(0.1)では、鉛系安定剤と Ca-Zn 系安定剤の両方が配合されている。

鉛含有量 0.1%の試料にするために、鉛安定剤は通常よりも少なくしか配合できなか

った。コンパウンドの作製のためには、安定剤の量を増やす必要があるため Ca-Zn

系安定剤も一緒に配合した。

(単位 : PHR)

- 48 -

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形状: 30×30×1mm

試験試料数: 1種類あたり 27 枚

(3)評価方法

透過 X 線の分別能力を、1)鉛含有量 2%PVC と鉛フリーPVC(鉛含有量 0%)の分別と、

2)鉛含有量の影響調査の 2 段階に分け 調査を実施した。

(4)結果 1):鉛含有量 2wt%と鉛フリーの分別

①鉛含有 PVC,鉛フリーPVC の H 値の分布の測定 と、②H 値からの品位と回収率の算

出 について報告する。

①鉛含有量 2wt%と鉛フリーの H 値の分布の測定

鉛含有量 2wt%PVC と鉛フリーPVC 各 27 枚の H 値を測定した時の分布を下図6-8に

記す。

H 値の分布が重なっているため、品位 100%かつ回収率 100%で完全に分別することはで

きない。鉛フリーPVC の品位を 100%にするためには回収率を下げる必要がある。

30mm

30

mm 厚さ

1mm

図6-8 H 値の分布

鉛フリーを選別可能

012345

試料

Pb 2wt%

選別不可能H値(%)

- 49 -

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②鉛フリーPVC の品位と回収率の算出

鉛 2%含有 PVC と鉛フリーPVC(1:1)の混合物を分別する場合の、鉛フリーPVC の品

位と回収率を、H 値の分布から算出した。品位と回収率の関係を図6-9に示す。

尚、品位と回収率の算出式は以下の通りである。

品位 = N (鉛フリー) ※1/ { N (鉛フリー) + N (鉛含有) ※2}

回収率 = N (鉛フリー) / { 鉛フリーPVC の全試料数 }

※ 1 N(鉛フリー) : H 値が閾値未満の鉛フリーPVC の試料数

※ 2 N(鉛含有) : H 値が閾値未満の鉛含有 PVC の試料数

図6-9 鉛フリーPVC の品位と回収率の関係

・ 鉛フリーPVC を品位 100%で分別する場合、回収率 50%で回収可能である(H 値の閾

値を 40 とした場合)。

・ 高回収率で回収する場合、鉛フリーPVC を品位 80%、回収率 100%で回収可能 であ

る(H 値の閾値を 47 とした場合)。

0102030405060708090100

0 20 40 60 80 100

品位

(%)

非鉛PVCの回収率(%)回収率(%)

- 50 -

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(5)結果 2):鉛含有量の影響調査(鉛含有量 1wt%, 0.1wt%と鉛フリーの分別)

①各鉛含有量での H 値の測定 と ②鉛フリーPVC の品位 100%での回収率の算出について

報告する。

①各鉛含有量での H 値の測定

鉛含有量の異なる PVC 各 27 枚の H 値を測定した時の分布を下図6-10に示す。

図6-10 H 値の分布

・ 鉛含有量が少なくなるにつれて、“鉛含有 PVC の H 値分布”と“鉛フリーPVC の H 値

分布”の重なる部分が増えるため、分別能力(品位、回収率)は低下する。

012345

30 35 40 45 50 55 60

試料

Pb 2wt%

H値(%)

0

123

45

30 35 40 45 50 55 60

試料

Pb1wt%

0

1

2

3

4

5

30 35 40 45 50 55 60

試料

Pb0.1wt%

0

123

45

30 35 40 45 50 55 60

試料

Pb0wt%

X 線透過量 少ない多い

- 51 -

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②鉛フリーPVC の品位 100%での回収率の算出

H 値分布から、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC(1:1)の混合物を分別した場合の、品位

と回収率を算出した。この結果を図6-11に示す。

鉛含有PVCの鉛含有量が少なくなると、鉛フリーPVCとのHの重なりが大きくなるため、

分別能力(品位、回収率)が低下した。以下に示すように、鉛含有 PVC の鉛含有量の低下

とともに、鉛フリーPVC の品位 100%での回収率は低下する。

【鉛フリーPVC の回収率(品位 100%の場合)】

鉛含有 PVC の鉛含有量が 2.0%の場合 : 50%

鉛含有 PVC の鉛含有量が 1.0%の場合 : 27%

鉛含有 PVC の鉛含有量が 0.1%の場合 : 17%

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

0 20 40 60 80 100

品位

(%

回収率(%)

図6-11 鉛フリーPVC の品位と回収率

鉛フリーPVC を品位 100%

で回収できる領域

◆ : 鉛含有量 2.0% PVC と鉛フリーPVC(1:1)を分別した場合のグラフ

■ : 鉛含有量 1.0%PVC と鉛フリーPVC(1:1)を分別した場合のグラフ

▲ : 鉛含有量 0.1% PVC と鉛フリーPVC(1:1)を分別した場合のグラフ

- 52 -

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6.3.2 配合材料による妨害要因

(1)目的

各種の充填剤・難燃材が配合されている場合、分別能力が低下しないか調査する。

(2)試料

配合 : 表6-2に記載の配合

鉛含有量 : 2.0wt%(通常鉛含有量)

0wt%(鉛フリー)

形状 : 30×30×1mm

試験試料数 : 試料 A は1種類あたり 27 枚

試料 B~H は1種類あたり 38 枚

(3)評価方法

配合材料の異なる PVC について、以下の①, ②の項目を実施した。

① 配合材料の異なる PVC の H 値の測定

各種の充填剤や難燃剤が配合された鉛含有 PVC 8 種類と、同じ配合で鉛を含有し

ていない鉛フリーPVC 8 種類を作製し、それぞれの H 値を測定した。

② 配合材料の異なる PVC の品位と回収率の算出

各種の鉛含有PVCと鉛フリーPVCが均等な数量で混ざっている場合の品位と回収

率を、①の H 値から算出した。

(4)結果

① 配合材料の異なる PVC の H 値の測定

各種の充填剤や難燃剤が配合された鉛含有 PVC と鉛フリーPVC(表6-2)の H

値を測定した。この結果を図6-12に示す。

- 53 -

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(注

1)A

-Pb,

A-C

Zは

表6-1と同じ組成である。

(注

2)試

料名

A-P

b, A

-CZ

,・・の“

Pb”

、“

CZ”はそれぞれ鉛系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤を配合した試料であることを表している。

(注

3)試

料名の

A-P

b, B

-Pb,

C-P

bの“

A”、“

B”、“

C”、・・・、

は安定剤以外の配合が異なることを表している。

大分類

配合材料

A

-Pb

A-C

Z

B-P

b B

-CZ

C

-Pb

C-C

Z

D-P

b D

-CZ

E

-Pb

E-C

Z

F-P

b F

-CZ

G

-Pb

G-C

Z

H-P

b H

-CZ

樹脂

P

VCレジン

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

可塑剤

D

OP

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

DIN

P

50

50

安定剤

三塩

基性硫酸鉛

4.

5

4.7

4.

7

5.2

5.

2

5.2

5.

2

4.5

ステアリン酸鉛

0.

9

1

1

1

1

1

1

0.9

Ca-

Zn系

安定

5

5

5

5

5

5

5

5

充填剤

難燃剤

炭酸

カルシウム

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

焼成

クレー

10

10

硼酸

亜鉛

10

10

臭素

系難燃剤

30

30

三酸

化アンチモン

30

30

水酸

化マグネシウム

30

30

水酸

化アルミニウム

30

30

合計

19

5.4

195.

020

5.7

205.

020

5.7

205.

022

6.2

225.

0 22

6.2

225.

022

6.2

225.

022

6.2

225.

019

5.4

195.

0

鉛含有量

(w

t%)

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

表6-2 試料組成2

:鉛含有

PV

C□:鉛フリー

PV

C

(単位

: P

HR)

- 54 -

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図6-12 各配合における

H値分布

5 10

 15

 20 

25 30

 35 

40 

45 50

 55 

60 65

 70 

75 

80 85

 90 

95 100 

H値

(%)

A‐Pb

A‐CZ

B‐Pb

B‐CZ

C‐Pb

C‐CZ

D‐Pb

D‐CZ

E‐Pb

E‐CZ

F‐Pb

F‐CZ

G‐Pb

G‐CZ

H‐Pb

H‐CZ

D:臭

素系

難燃

剤配

合非

鉛も密

度が

高い

E:三

酸化

アンチモン配合

鉛含

有も密

度が

低く認

X線

透過

多い

ない

基本組成

焼成クレー 追

硼酸亜鉛

追加

臭素

追加

三酸化アンチモン 追

水酸化マグネシウム 追加

水酸化アルミニウム 追

可塑剤変更

DO

P ⇒

DIN

P

- 55 -

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図6-12の H 値の分布から、以下のことが分かる。

試料D-Pb, D-CZの結果から、臭素が配合されているとH値は大きい側にシフトする。

試料 E-Pb, E-CZ の結果から、三酸化アンチモンが配合されていると H 値は小さい側

にシフトする。

臭素,アンチモン以外の材料の配合によっても、H 値は少しずつシフトする。

以上のことから、配合によって H 値がシフトするため、様々な配合の PVC が混ざると分別

能力は低下する。特に、臭素,アンチモン配合の PVC は H 値のシフト幅が大きいため、こ

れらの PVC が混ざると高品位かつ高回収率にするのは難しくなる。

② 配合材料の異なる PVC の品位と回収率の算出

各種の充填剤や難燃剤が配合された鉛含有 PVC と鉛フリーPVC(表6-2の 16 種類の

PVC)が均等な数量で混ざっている混合物を分別する場合の、鉛フリーPVC の品位と回収

率を①の H 値の測定結果から算出した。この結果を図6-13に示す。

尚、品位と回収率の算出式は以下の通りである(『6.3.1(4)』の算出式と同じである)。

品位 = N (鉛フリー) ※1/ { N (鉛フリー) + N (鉛含有) ※2}

回収率 = N (鉛フリー) / { 鉛フリーPVC の全試料数 }

※ 1 N(鉛フリー) : H 値が閾値未満の鉛フリーPVC の試料数

※ 2 N(鉛含有) : H 値が閾値未満の鉛含有 PVC の試料数

・ 全ての PVC が均等な数量で混ざっている混合物を分別する場合、鉛フリーPVC の品

位 100%での回収率は 9%である。

・ 三酸化アンチモン配合の鉛含有 PVC のH値が小さいために、他の鉛フリーPVC の高

品位での回収が困難になっている。

10 

20 

30 

40 

50 

60 

70 

80 

90 

100 

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

品位

(%

回収率(%)

図6-13 鉛フリーPVC の品位と回収率

- 56 -

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6.3.3 試料サイズが小さい場合の判別能力

(1)目的

試料サイズが小さくなるとH値を算出するための測定点数が減り、H値の誤差が大きくな

る。これにともない、鉛含有PVCと鉛フリーPVCの分別能力が低下する可能性がある。

そこで、試料サイズが小さいときの品位と回収率を調査した。

(2)試料

配合:下表6-3 の A-Pb(鉛 2%含有), A-CZ(鉛フリー)

(表6-1,2と同じ組成である。)

表6-3 試料組成

大分類 配合材料 A-Pb A-CZ

樹脂 PVC レジン 100 100

可塑剤 DOP 50 50

安定剤

三塩基性硫酸鉛 4.5

ステアリン酸鉛 0.9

Ca-Zn 系安定剤 5

充填剤・難燃剤 炭酸カルシウム 40 40

合計 195.4 195.0

鉛含有量(wt%) 2.0 0

形状: 試料1 30×30×1mm

試料 2 30×10×1mm

試料 3 20×10×1mm

試料 4 10×10×1mm

30

30

(単位 : PHR)

- 57 -

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(参考)

表6-4 試料の形状と測定点数

測定試料数:

試料 1: 27 枚

試料 2: のべ 40 枚 (20 枚を搬送ベルトに縦向き、横向きにして測定)

試料 3: のべ 40 枚 (20 枚を搬送ベルトに縦向き、横向きにして測定)

試料 4: 20 枚

(3)評価方法

サイズ毎に、①H 値分布の測定 と ②H 値からの品位と回収率の算出 を実施した。

(4)結果

①H 値分布の測定

サイズ毎に、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の H 値の分布を測定した。この結果を図6-

14に示す。

図6-14 H 値分布

・ 試料の形状が小さくなるほど H 値の分布が広がり、『鉛含有 PVC の H 値の分布』と

『鉛フリーPVC の H 値の分布』の重なる部分が大きくなった。

試料 サイズ 測定点数

1 30x30mm 約300

2 30x10mm 約70

3 20x10mm 約40

4 10x10mm 約20

図6-14 H 値の分布

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100

H値 (%)

30×30mm 鉛2%

30×30mm 鉛フリー

30×10mm 鉛2%

30×10mm 鉛フリー

20×10mm 鉛2%

20×10mm 鉛フリー

10×10mm 鉛2%

10×10mm 鉛フリー

- 58 -

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②H 値からの品位と回収率の算出

H 値分布から、鉛含有量 2.0% PVC と鉛フリーPVC(1:1)の混合物を分別した場合

の、品位と回収率を算出した。この結果を図6-15に示す。

図6-15 鉛フリーPVC の品位と回収率

試料のサイズが小さくなると、『鉛含有 PVC の H 値の分布』と『鉛フリーPVC の H 値

の分布』の重なりが大きくなり、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別能力(品位、回収率)

は低下した。以下に示すように、試料のサイズが小さくなるとともに、鉛フリーPVC の品

位 100%での回収率は低下した。

【鉛フリーPVC の回収率(品位 100%の場合)】

試料サイズ 30×30mm の場合 : 50%

試料サイズ 30×10mm の場合 : 15%

試料サイズ 20×10mm の場合 : 3%

試料サイズ 10×10mm の場合 : 5%

試料サイズ

■ 30×30mm

◆ 30×10mm

▲ 20×10mm

× 10×10mm

- 59 -

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6.3.4 電線形状での分別

(1)目的

『6.3.3項』の実験で、サイズが小さくなると分別能力が低下することが分かった。

一方、粉砕処理したナゲットは数 mm 程度と小さい。したがって、透過 X 線分別装置での

ナゲットの分別は非常に難しいと推測される。そこで、代替案として、粉砕前(裁断後)の

電線を分別できないか検討した。

(2)試料

下表6-5の廃電線(長さ 10cm に裁断したもの)を使用。

(3)調査方法

電線の両端の、X 線が PVC のみを通

過する部分の透過 X 線量で判別できな

いか調査した。(右図6-16参照)。

※導体部分は銅が X 線の透過を阻害

するので測定はできない。

(4)結果

廃電線の透過 X 線像を撮影した結果を表6-5に示す。透過 X 線像は全体的に真っ黒に

なり、PVC のみを透過する部分でも X 線がほとんど透過しなかった。このため、電線形状

では分別できないことがわかった。

表6-5 廃電線の透過 X 線像

X 線が PVC

のみを通過

する部分

図6-16 廃電線の測定部

- 60 -

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6.3.5 エアーでの分別ミスの発生率

(1)目的

試料サイズが小さくなると、エアーでの分別が難しくなる可能性がある。そこで、エアー

での分別ミス発生率をサイズ毎に調査した。

(2)試料

配合: 下表6-6 の A-Pb(鉛 2%含有), A-CZ(鉛フリー)

(表6-1,2,3と同じ組成である。)

表6-6 試料組成

大分類 配合材料 A-Pb A-CZ

樹脂 PVC レジン 100 100

可塑剤 DOP 50 50

安定剤

三塩基性硫酸鉛 4.5

ステアリン酸鉛 0.9

Ca-Zn 系安定剤 5

充填剤・難燃剤 炭酸カルシウム 40 40

合計 195.4 195.0

鉛含有量(wt%) 2.0 0

形状: 試料1 30×30×1mm

試料 2 30×10×1mm

試料 3 20×10×1mm

試料 4 10×10×1mm

30

30

(単位 : PHR)

- 61 -

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(3)エアーでの分別ミスが生じるケース

分別ミスが生じるケースは以下の 2つが考えられる(図6-17)。

ケース①(飛距離不足):

エアーで a へ飛ばそうとしたが、飛距離が足りずに b へ入る

ケース②(跳ね返り):

エアーで a へ飛ばした試料が、跳ね返り b へ入る

※ 尚、b へ入れる予定の試料が、間違って a に入ってしまうことはない。

図6-17 分別ミスが生じるケース

(4)調査方法

エアーで吹き飛ばして、図6-16の a に入れる予定の試料のうち、エアーでの分別ミ

スによって b に入ってしまう割合を試料サイズ毎に調査した。

ケース①

(飛距離不足)

ケース②

(跳ね返り)

- 62 -

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(5)結果

表6-7に実験結果を示す。

エアーでの分別ミスの発生率は数%である。これにより回収率が数%低下する。

大きいサイズでも小さいサイズでも分別ミスは生じていたため、試料サイズが 10×

10mm~30×30mm であれば、エアーでの分別ミス発生率は、サイズによって変わらない。

ケース①(飛距離不足)による分別ミスは発生せず、ケース②(跳ね返り)による分別ミ

スのみ発生した。

表6-7 実験結果

ミスで b に入ってしまった枚数 / a へ飛ばす予定の枚数

サイズ エアーでの分別ミス発生率 分別ミスの原因

試料1 30x30mm 1 枚/33 枚 3% ケース②(跳ね返り)

試料2 30x10mm 0 枚/28 枚 0% ―

試料3 20x10mm 1枚/22 枚 5% ケース②(跳ね返り)

試料4 10x10mm 0 枚/24枚 0% ―

- 63 -

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6.4 透過X線分別装置のまとめ

■ 濃度の異なる PVC の分別

・ 鉛含有量 2.0%PVC、鉛フリーPVC が1:1の混合物を分別する場合、品位 100%で

回収可能な鉛フリーPVC の回収率は 50%である。

・ 鉛含有量 1.0%PVC、鉛フリーPVC が1:1の混合物を分別する場合、品位 100%で

回収可能な鉛フリーPVC の回収率は 27%である。

・ 鉛含有量 0.1%PVC、鉛フリーPVC が1:1の混合物を分別する場合、品位 100%で

回収可能な鉛フリーPVC の回収率は 17%である。

■ 配合材料の影響

・ 可塑剤、難燃剤、充填剤などの配合材料の異なる PVC が混ざると分別能力は低下す

る。特に、臭素系難燃剤、三酸化アンチモン配合の PVC が混ざっていると分別能力

が低下する。

■ サイズの影響

・ 試料のサイズが小さくなると、H 値の分布が広がるため、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC

の分別能力は低下する。

■ 電線形状での分別

・ 電線形状では分別できない。

■ エアーによる分別ミス発生率

・ エアーでの分別ミスの発生率は数%であり、これにより回収率が数%低下する。試料

サイズが 10×10mm~30×30mm であれば、エアーでの分別ミス発生率は、サイズに

よって変わらない。

図6-18 実験の様子

- 64 -

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7 近赤外線分別装置(アーステクニカ製)の電線被覆材の分別能力評価

7.1 目的

通常、近赤外線分別装置は電線被覆材のような黒い物質を分別することができない。しか

し(株)アーステクニカにおいて、黒い物質でも分別可能な近赤外線分別装置の開発が進め

られており、将来的に電線被覆材の分別に利用できる可能性がある。

一般的に近赤外線分別では、反射スペクトルに違いがないと分別できない。これは黒い物

質用の近赤外線分別装置でも同じである。一方、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の反射スペク

トルに違いがあるかは解っていない。

そこで、白い PVC を用いて、現状の近赤外線分別装置で、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC

の反射スペクトルの違いの有無を調べ、将来的に黒い電線被覆材へ適用できる可能性かある

か調査する。また、反射スペクトルに違いがある場合には、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC を

分別して、鉛フリーPVC の品位・回収率も調べる。

7.2 分別装置の原理

近赤外線による判別では、物質に近赤外線を照射し、反射した近赤外線のスペクトルを分

析して物質を判別する(図7-1)。

近赤外線を物質に照射したときに、物質は特定の波長の近赤外線を吸収するため、物質か

らの反射スペクトルを分析すると、吸収波長の近赤外線だけ強度が低くなる。吸収波長は物

質ごとに異なるため、反射スペクトルから物質を判別できる。(ただし、黒い物質は近赤外

線を全波長に渡って吸収してしまうため、判別できるほどの反射量が得られない。)

鉛系安定剤にも特有の吸収波長が存在するため、大量に配合されている場合には、その吸

収波長によって判別できる。しかし鉛安定剤は通常、数%しか配合されないため、鉛安定剤

の吸収波長で判別することはできない。そこで、以下のような判別方法をとる。

PVC レジンの吸収波長(λ1, λ2, λ3,・・・)は、配合材料を混ぜることによって僅かにズ

レる(図7-2)。このズレ(⊿λ1, ⊿λ2, ⊿λ3,・・・)は配合材料の種類と量によって異な

るため、このズレを利用して判別する。本研究では、この方法で鉛含有 PVC と鉛フリーPVC

を判別可能か調べる。

強度

λ1 λ2

⊿λ2⊿λ1

λ3

⊿λ3光源

図7-1 測定部の様子 図7-2

近赤外線の反射スペクトル(イメージ)

波長

- 65 -

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アーステクニカ製の近赤外線分別装置では、透過 X 線分別装置と同様に、1つの試料を多

点測定し判別する。その後、エアーで分別する。(図7-3)

図7-3 装置の概略図

図7-4 装置の外観

- 66 -

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7.3 電線被覆材の分別能力の評価

(1)目的

鉛フリーPVC と、鉛含有 PVC を近赤外線分別装置で判別可能か確認する。

(2)試料

配合 : 表7-1に記載の配合

鉛含有量 : 2.0wt%(通常鉛濃度)

0wt%(鉛フリー)

※ 鉛フリーPVC として鉛含有量 0wt%を使用した。

7.3 章の鉛フリーは鉛含有量 0wt%を表す。

形状 : 30×30×1mm(左図参照)

色 : 白色

試料数: 試料 A :27 枚

試料 B~H:38 枚

(3)評価方法

下記の①、②を調べる。

① 近赤外線による判別の可能性検討

近赤外線分別装置で鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の吸収波長のズレ⊿λを測定し、

判別可能な差があるか調査する。

② 分別実験

上記①で、判別可能な差があった場合、実際に分別して、品位と回収率を確かめる。

(4)『①近赤外線による判別の可能性検討』の結果

鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の吸収波長のズレ⊿λに、判別可能な差があるか調べた。

試料を多点測定したときの、吸収波長のズレ⊿λ一つ一つをプロットしたグラフを図7-5

に示す。グラフには全ての試料の測定結果がプロットされている。横軸と縦軸はそれぞれ異

なる吸収波長(λ1, λ2)についてのズレ(⊿λ1, ⊿λ2)を表している。(正確には、吸収

波長に特定の係数をかけた数値である。詳細はメーカーのノウハウのため不明)

図7-5から以下のことが分かる。

臭素系難燃剤、三酸化アンチモンを含まない PVC は、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC

の吸収波長のズレ量⊿λの差が大きい。このため、高い精度で判別可能と推測される。

臭素系難燃剤、三酸化アンチモンを含む PVC は、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の吸

収波長のズレ⊿λに差があるが、その差は小さい。このため、高い精度での判別は難

しいと推測される。

30mm

30

mm 厚さ

1mm

- 67 -

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(注

1)表

5-6、6-2と同じ組成である。

(注

2)試料名

A-P

b, A

-CZ

,・・の“

Pb”

、“

CZ”はそれぞれ鉛系安定剤、カルシウム‐亜鉛系安定剤を配合した試料であることを表している。

(注

3)試

料名の

A-P

b, B

-Pb,

C-P

bの“

A”、“

B”、“

C”、・・・、

は安定剤以外の配合が異なることを表している。

大分類

配合材料

A

-Pb

A-C

Z

B-P

b B

-CZ

C

-Pb

C-C

Z

D-P

b D

-CZ

E

-Pb

E-C

Z

F-P

b F

-CZ

G

-Pb

G-C

Z

H-P

b H

-CZ

樹脂

P

VCレジン

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

可塑剤

DO

P

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

DIN

P

50

50

安定剤

三塩

基性硫酸鉛

4.

5

4.7

4.

7

5.2

5.

2

5.2

5.

2

4.5

ステアリン酸鉛

0.

9

1

1

1

1

1

1

0.9

Ca-

Zn系

安定

5

5

5

5

5

5

5

5

充填剤

難燃剤

炭酸

カルシウム

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

焼成

クレー

10

10

硼酸

亜鉛

10

10

臭素

系難燃剤

30

30

三酸

化アンチモン

30

30

水酸

化マグネシウム

30

30

水酸

化アルミニウム

30

30

合計

19

5.4

195.

020

5.7

205.

020

5.7

205.

022

6.2

225.

0 22

6.2

225.

022

6.2

225.

022

6.2

225.

019

5.4

195.

0

鉛含有量

(w

t%)

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

表7-1 試料組成

:鉛含有

PV

C□:鉛フリー

PV

C

(単位

: P

HR)

- 68 -

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図7-5 吸収波長のズレ

⊿λ 1

⊿λ 2

(試

料E:三

酸化

アンチモン配

合)

E-CZ(鉛

フリー

A,B,C,F,G,H

(鉛

フリー

A,B,C,F,G,H

(鉛2%)

E-Pb(鉛2%)

D-Pb(鉛2%) D-CZ(鉛

フリー

(試

料D:臭

素配

合)

正確には

、波

長の

ズレに、ある係

数を掛

けた

数値

(メーカーのノウハ

ウため詳細不明)

- 69 -

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(5)『②分別実験』の結果

分別能力(品位・回収率)を調べるために、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別実験を実

施した。全て同一の条件で分別した。図7-6に分別の略図、表7-2にボックス a(鉛フ

リー回収側)に回収された各試料の回収率を示す。

※ 試料が全種類均等な数量で混ざっている混合物を分別したときの、鉛フリーPVC の

回収率が 69%。

図7-6 分別部の略図

表7-2 各試料の回収率

a鉛フリー

b鉛含有

記号 備考

A-CZ 基本材料 100B-CZ 焼成クレー 追加 97C-CZ 硼酸亜鉛 追加 58D-CZ 臭素系難燃剤 追加 0E-CZ 三酸化アンチモン 追加 0F-CZ 水酸化マグネシウム 追加 97G-CZ 水酸化アルミニウム 追加 97H-CZ 可塑剤変更 DOP ⇒ DINP 100A-Pb 基本材料 0B-Pb 焼成クレー 追加 0C-Pb 硼酸亜鉛 追加 0D-Pb 臭素系難燃剤 追加 0E-Pb 三酸化アンチモン 追加 0F-Pb 水酸化マグネシウム 追加 0G-Pb 水酸化アルミニウム 追加 0H-Pb 可塑剤変更 DOP ⇒ DINP 0

鉛フリーPVC 69

鉛2%含有PVC

ボックスaに回収された割合

0

試料

(%)

- 70 -

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臭素系難燃剤、三酸化アンチモンを配合している PVC は、他の PVC と吸収波長のズレ

⊿λが異なるために分別が難しく、鉛フリーPVC も鉛含有 PVC も全てボックス b(鉛含有

回収側)に回収され、分別することができなかった。

臭素系難燃剤、三酸化アンチモンを配合しない PVC は分別することができた。硼酸亜鉛

を含む鉛フリーPVC は品位 100%での回収率 約 60%、それ以外の試料は品位 100%での回

収率が 97~100%である。

A~H の全種類の PVC が同じ割合で混ざっている場合、鉛フリーPVC は品位 100%、回

収率約 70%で回収することができた。

したがって、近赤外線分別装置は、鉛フリーPVC と鉛含有 PVC を高品位に分別回収可能

な装置であった。

- 71 -

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7.4 近赤外線分別装置のまとめ

■ 近赤外線による鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の判別

臭素系難燃剤、三酸化アンチモンを含まない場合は、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の吸収

波長のズレ⊿λの差が大きいため、高精度に判別可能である。臭素系難燃剤、三酸化アンチ

モンを含む場合は、吸収波長のズレ⊿λの差が小さくなるため、判別が難しくなる。

■ 分別能力

現状の近赤外線分別装置による分別能力は以下の通りである。

(ただし、分別対象の試料が 30×30×1mm の白い PVC の場合である。)

臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、硼酸亜鉛を含まない鉛フリーPVC は品位 100%、

回収率 97~100%で分別回収できる。

硼酸亜鉛を含む鉛フリーPVC は品位 100%、回収率 約 60%で分別回収できる。

臭素系難燃剤、三酸化アンチモンを含む PVC は分別が難しい。

表7-1の A~H の全種類の PVC が均等な数量で混ざっている場合、鉛フリーPVC

は品位 100%、回収率 約 70%で回収することができる。

将来的に、黒い PVC の吸収波長を白い PVC と同程度に分析できるようになれば、黒い

鉛含有 PVC と鉛フリーPVC も上記の品位、回収率で分別できるようになる。

■ 今後の課題

本研究では評価実験をしていないが、粉砕品(ナゲット)は数 mm 程度であり、小さい

ため分別が難しいと推測される。粉砕してしまうと分別が難しくなるため、従来粉砕処理さ

れていた細い廃電線については、解体・分別工程全体を見直すなどの抜本的な解決策を考え

る必要がある。

■ 参考

粉砕品(ナゲット)のように、小さいサイズの試料を高品位・高回収率で分別するのは困

難である。そこで、その解決策として、近赤外線分別装置の有効な利用方法を検討し、廃電

線の新しい分別フロー案を考えた。これを参考として付録 B に記載する。

- 72 -

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8 本研究のまとめ

本研究では、電線被覆材の鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別方法を検討した。廃電線

の解体方法には、剥線処理法と粉砕処理法があるため、剥線品と粉砕品(ナゲット)それ

ぞれに適した分別技術が必要である。その他、本研究では裁断した電線の分別についても

検討した。これは、粉砕品が小さいために分別が非常に難しいことから、その解決策とし

て実施した検討である。粉砕前(裁断後)の数 cm~数十 cm の電線を対象としている。

分別方法を調査した結果、蛍光 X 線、透過 X 線、近赤外線の3種類が鉛含有 PVC と鉛

フリーPVC の分別に適用できる可能性があることがわかった。それぞれ、分別に利用でき

そうな装置として、蛍光 X 線には携帯型の分析計、透過 X 線と近赤外線には自動分別装置

がある。これらの装置について、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別に適用できるか検討

した。

8.1 装置毎のまとめ

(1)携帯型蛍光 X 線分析計

携帯型蛍光 X 線分析計は 3 種類分析計(XLt-794RW、XL3t-700-SS、XL3t-700S-SS)

を検討した。判別能力が高く、100%分別可能であった。鉛含有量 1.0wt%以上と 0wt%の

PVC は、全ての分析計、測定視野において、積算時間(測定時間)3 秒で判別可能であっ

た。通常、鉛含有 PVC には鉛が数%含まれるので、一般的な鉛含有 PVC と鉛フリーPVC

は積算時間 3 秒で判別可能である。積算時間を長くする、測定視野を広くするなどすれば、

鉛含有量 0.1wt%と 0wt%の PVC も判別可能であった。

電線形状でも外径 2mmφ以上であれば判別でき、さらに PVC の厚さが 1mm 以上あれ

ば下地の影響を受けない(下地の組成を検出しない)こともわかった。

以上のことから、携帯型蛍光 X 線分析計は電線被覆材の分別にすぐにでも適用できる性

能を有しており、廃電線の分別、剥線後の被覆材の分別へ適用できる。

(2)透過 X 線分別装置

透過 X 線分別装置は、アーステクニカ製の分別装置で実験した。試料として 30×30×

1mmt の PVC シートを用いて実験した。鉛含有量 2.0%と 0wt%の PVC が1:1の割合

で混ざっている場合、鉛含有量 0wt%の PVC を品位 100%、回収率 50%で回収できるこ

とがわかった。ただし、可塑剤、難燃剤、充填剤などの配合の異なる PVC が混ざった場

合や、試料のサイズが小さい場合には、品位、回収率が低下してしまう。このため、現状

のままでは電線被覆材の分別への適用は難しい。

(3)近赤外線分別装置

近赤外線分別装置も、アーステクニカ製の分別装置で実験した。試料として 30×30×

1mmt の白色の PVC シートを用いて実験した。可塑剤、難燃剤、充填剤などの配合の異

なる 8 種類の鉛含有 PVC(鉛 2.0wt%)と、同じく 8 種類の鉛フリーPVC(鉛 0wt%)を

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全て同じ割合で混ぜた場合には、鉛フリーPVC(鉛 0wt%)を品位 100%、回収率 約 70%

で回収することができた。回収率を下げているのは、臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、

硼酸亜鉛を含む PVC であり、これらの特定の PVC を含まなければ品位 100%、回収率

97%~100%になる。現状の装置では電線被覆材のように黒い PVC を分別することはでき

ないが、(株)アーステクニカにて黒い物質用の近赤外線分別装置を開発中であり、将来的

に電線被覆材の PVC への適用が期待できる。

8.2 分別対象(剥線品、粉砕品、裁断した電線)毎のまとめ

分別対象(剥線品、粉砕品、裁断した電線)それぞれの分別について、分別に適用でき

る機器を以下(1)~(3)と表8-1に示す。(内容は上記 8.1 と重複する。)

(1)剥線品の分別

携帯型蛍光 X 線分析計を適用できる。鉛含有 PVC と鉛フリーPVC(鉛 0wt%)を積算

時間(測定時間)3 秒で判別可能である。電線形状でも外径 2mmφ以上であれば判別でき、

さらにPVCの厚さが1mm以上あれば下地の影響を受けない(下地の組成を検出しない)。

(2)粉砕品(ナゲット)の分別

現状では、適用可能な装置はない。

粉砕品は量が多い為、携帯型分析計のように一つ一つ手作業で判別する機器は実用的で

ない。また、自動分別が可能な透過 X 線分別装置や近赤外線分別装置では、数 mm 程度の

小さいサイズの PVC を分別することは難しく、品位・回収率が低くなってしまう。

(3)裁断した電線の分別

粉砕品はサイズが小さい為に分別が難しい。このため、粉砕前(裁断後)の数 cm~数

十 cm の電線を分別することを提案する。

裁断した電線の分別には近赤外線分別装置が有力な候補である。

白などの色の薄い PVC であれば、現状の近赤外線分別装置でも鉛含有 PVC と鉛フリー

PVC を高品位に分別可能である。電線は色が黒いものが多いが、(株)アーステクニカに

て黒い物質用の近赤外線分別装置を開発中であり、将来的に電線被覆材の PVC への適用

が期待できる。

(参考:近赤外線は樹脂の分別に用いられるため、NH・EM、ゴムの判別もできる可能性

がある。その場合、付録 B の 図 B-1の解体・分別フローのように分別できれば、NH・

EM、ゴムも自動で分別できるようになり、PVC 以外の電線被覆材のリサイクル促進にも

繋がる。ただし、近赤外線で NH・EM、ゴムを判別可能かについては確認する必要があ

る。)

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表8-1 各装置の鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別への適用の可能性

携帯型蛍光 X 線分析計 透過 X 線分別装置 近赤外線分別装置

剥線品

粉砕品

(ナゲット)

裁断した電線

判別能力が高く、100%

分別可能。

すぐにでも適用できる。

粉砕品や、裁断した電線

は量が多い為、一つ一

つ手作業で分別するの

は時間がかかり、実用

的ではない。

様々な配合の PVC が混ざる

と分別能力(品位・回収率)が

低下してしまうので適用できな

い。

PVC のサイズが小さいと、

分別能力(品位・回収率)が

低くなる。また、様々な配合

の PVC が混ざると分別能

力が低下してしまうので適用

できない。

内部の導体によって、X 線

が透過しないため判別でき

ない。

PVC のサイズが小さい

と、分別能力(品位・回収

率)が低下するので適用

でない。

白などの薄い色であれば

高品位に分別可能。

黒色用も開発中のため、将

来的に電線被覆材にも適

用できる可能性あり。

白などの薄い色であれば

高品位に分別可能。

黒色用も開発中のため、将

来的に電線被覆材にも適

用できる可能性あり。

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付録 A

委員会議事録

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マルチクライアント研究「鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別技術の開発」

第1回委員会議事録

記録:事務局(JECTEC:金子)

開催日時: 平成 21 年 6 月 26 日(金)13:30 ~ 15:00

場 所:(社)日本電線工業会 B 会議室

出席者(順不同、敬称略):

宇佐見(住友 代理)、堀川(古河)、中司(フジクラ 代理)、菊池(日立)、田中(昭和)、

住野(三菱)、上林山(塩ビ工業・環境協会)、亀田(電線工業会)、森、平野、金子(JECTEC)

1.配布資料

マルチクライアント研究 参加社名簿

鉛分別 21-1 第1回委員会資料

2.議事内容

事務局より、資料(鉛分別 21-1)を用いて実施計画(案)と調査の進捗状況を報告し、その

内容について審議した。

(1) 調査内容について

事務局から「現状のリサイクルの様子」と「適用の可能性のある分別技術」についての調

査の進捗を報告。

電線のリサイクルは剥線処理と粉砕処理(ナゲット処理)に大別できる。粉砕処理で得

られた再生品の被覆材には銅粉などの異物が混入するため、電線へ再利用されず、剥線

処理された再生品のみ電線へ再利用される。

鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別に適用できそうな技術としては、現在のところ X 線

を利用して判別する技術だけである。X 線を利用した機器として、携帯型成分分析計と

自動分別装置があるので、これらの機器について調査・検討する。

今後の調査に関して以下の事柄が提案された。これらを含め、7 月中に調査項目を整理し、

委員の皆さんに E メールで送付して、確認いただくことになった。

PVC を使用している各業界で、鉛含有 PVC と鉛フリーPVC がどのように分別されて

いるのか調べる。

塩ビ管継手工業会に鉛の簡易的な分析計があるので確認する。

鉛以外の各種重金属(クロムなど)の電線被覆材への使用状況についても調査して、鉛

以外に分別したほうが良い物質がないか確認する。

剥線処理と粉砕処理の処理量の比率を調べる。(推定値でも良い)

安定剤について組成や分別に関係する特性を調査するが、調査する安定剤は一般的なも

のに限定し、各社固有の安定剤については調査しない。

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(2) 調査のスケジュールについて

資料(鉛分別 21-1)では調査を 8 月まで実施し、8 月に委員会を開催する予定であったが、

調査期間が短いことから以下のように変更することになった。

9 月まで調査を実施する。(分別技術については 10 月以降も調査するが、10 月以降に

見つかった分別技術については、実験などの検討は実施しない)

次回委員会を 9 月に開催し、調査内容を報告する。

(3) 分別技術の検討について

X 線による携帯型成分分析計、自動分別装置での実験項目を次回委員会までに整理すること

となった。

(4) その他

上記(1)~(3)以外に審議された項目

鉛含有 PVC の再生品の用途拡大の可能性について

電力用電線には被覆材として鉛含有 PVC も使用されているので、建設電販向け電線など

に使用されていた鉛含有 PVC の再生品を電力用電線へ使用できれば良い。しかし、使用

済みの建設電販向け電線は様々な種類のものが混ざっており、PVC の組成も様々である

ため、電力用電線へ再利用するのは難しい。

電線被覆材の PVC の再生品は、電線以外では杭やマットに使用されているが、鉛含有

PVC の需要は減少傾向にある。その他の建材などの用途では殆どの場合、その用途内で

クローズドリサイクルされているため、電線被覆材の PVC を使用してもらうのは難しい。

3. 次回、第 2 回委員会の開催日

9 月 25 日(金)13:30~15:00 を予定。

以上

修正後のスケジュール

項目

平成21年 平成22年5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

委員会開催 ○ ○ ○ ○

既存技術の調査

分別技術の調査

分別技術の検討

まとめ

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マルチクライアント研究「鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別技術の開発」

第 2 回委員会議事録

記録:事務局(JECTEC:金子)

開催日時: 平成 21 年 9 月 25 日(金)13:30 ~ 15:00

場 所:(社)日本電線工業会 B 会議室

出席者(順不同、敬称略):

宇佐見(住友 代理)、堀川(古河)、渡邉(フジクラ)、菊池(日立)、田中(昭和)、

住野(三菱)、上林山(塩ビ工業・環境協会)、平野、金子(JECTEC)

(欠席:亀田(電線工業会))

1.配布資料

・21-#2-1 第 1 回委員会の議事録

・21-#2-2 第 2 回委員会の発表用資料

・21-#2-参考資料 1 JECTEC の文献。(剥線処理品と再生処理品の割合の記載部を抜粋)

・21-#2-参考資料 2 電線工業会の資料『技術資料第 137 号 電線の環境技術調査報告書』

(電線に使用される重金属についての記載部を抜粋)

・21-#2-参考資料 3 各分別方法の鉛含有/鉛フリーPVC への適用の可能性をまとめた資料。

・21-#2-参考資料 4 『鉛含有/鉛フリーPVC の分別』についての他業界へのヒアリングメモ。

2.議事内容

2-1. 前回の議事録の確認

・ 2 (4)に記載の『 建設電販向け電線の被覆材は電力用電線の被覆材に比べてグレードが低

い 』の意味か解り難いので修正する。

⇒ 委員会終了後に議事録を修正いたしました。

2-2. 進捗内容

事務局が資料(21-#2-2)を用いて進捗を説明し、その内容について審議した。

進捗、審議の内容は以下の通り。

(1) 分別対象の調査

PVC に関する基本的な情報を調査して、報告した。

ⅰ)安定剤の調査

安定剤メーカーへのヒアリングから、鉛の含有量は約 2%であることが解ったため、実験用

の試料は鉛含有量 2%で作製する。

ⅱ)剥線処理品と粉砕処理品の比率

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粉砕処理品は 7~8 割で、剥線処理品より多いことが解った。本研究では電線へ再利用され

る廃電線の分別を主目的としているが、電線以外へ利用される粉砕処理品の割合が多いため、

粉砕処理品についても可能な範囲で分別を検討する。

ⅲ)電線に使用される重金属

カドミウム、クロム、水銀、スズが使用されていた実績がある。特に、カドミウムとスズは

安定剤に使用されるので含有量が多いと推測される。本研究の目的は鉛含有 PVC の分別で

あるが、カドミウムとスズを含有する電線についても、各社殿からご提供いただける場合に

は、判別可能か検討する。

(2) 分別技術の調査

ⅰ)分別方法の適用の可能性

ラマン分光、近赤外線、蛍光 X 線、透過 X 線の 4 種類は適用できる可能性がある。

ラマン分光、近赤外線はスペクトルから“化合物”を判別する方法なので、使用されている

全ての鉛安定剤が判別可能でなければならないので難しい。蛍光 X 線、透過 X 線の場合は

“鉛元素”の存在を判別するので適用できる可能性が高い。

ⅱ)分析装置・分別装置の調査

各分別方法について下記の利用できそうな装置があり、詳細をまとめて報告した。

①ラマン分光:携帯型分析計、自動分別装置(近畿大学、㈱サイム)

②近赤外線: 電線被覆材のように黒いプラスチックを分別できる装置はまだ無い。開発中

である。

③蛍光 X 線: 携帯型分析計(㈱リガクなど)

④透過 X 線: 分別装置(㈱アーステクニカなど)

ⅲ)他の業界の対応

鉛含有 PVC を使用している製品、過去に使用していた製品は、塩ビ管・継手、サッシ、プ

ラスチック板、雨樋である。分別の実施状況と方法をヒアリングした。

サッシ、プラスチック板、雨樋は鉛含有と非鉛を分別していない。

塩ビ管・継手は分別する場合もあるが、分別方法は目視での分別でのみであり、分析計など

を使った高精度な分別はしていない。分別する理由は、非鉛 PVC 中のスズ系安定剤に含ま

れる硫黄と鉛が反応すると黒く変色するためである。(尚、上水管には非鉛 PVC、下水管に

は鉛含有 PVC が使用されている。再生品は下水管にのみ使用している。)

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(3)実験項目案

各装置について、表に○をつけた実験項目を実施する。

実験項目 透過X線 蛍光X線 近赤外線

1.鉛の濃度

○ ○ ○鉛の濃度は何%以上を判別できるか確認する。

2.充填剤・難燃剤の影響

○ ○ ○各種の充填剤・難燃材が多量に含有されていても、鉛含有/非鉛を判別できるか確認する。

3.厚さと大きさ

○粉砕した被覆材を分別する際に、被覆材に必要な厚さ、大きさを確認する。

4.使用済み電線

○ ○・中に銅が入ったままでも判別できるか確認する。・回収時に汚れた電線や、撚り線など判別できるか確認する。・細い線(直径1mm程度など)でも判別できるか確認する。

【実験項目案に関しての審議内容】

● 実験 2 について

・ 硼酸亜鉛を含有したサンプルも実験する。

● 実験 3 について

・ 厚さ 0.5mm は薄すぎるので 1mm 以上で実施する。

・ 大きさについての実験に使用する試料は、下記のように変更する。

変更前: 10×10mm, 20×20mm, 30×30mm

変更後: 10×10mm, 10×20mm, 10×30mm

● 実験 4 について

・ 実際の使用済み電線を分別できるか試してみる実験とし、傾向の確認まではしない。

・ 使用済み電線を収集してきた後に、使用する電線とその長さなどを一覧表にして、E メ

ールで委員の皆さんへ送付する。

・ 10 月 15 日(木)までに提供して頂けた電線も実験する。遅れても構いませんが、連絡

は 15 日までにお願いいたします。

● 実験 1~3 について共通の事柄

・ フタル酸エステルの部数 60PHR は多すぎるので、50 にする。

● その他

・ 鉛の含有量は作製時に入れた部数から算出するだけとして、サンプル作製後には鉛の含

有量を測定しない。

・ 使用した材料の銘柄や、表面処理を明記する。

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・ 委員会後に実験内容についての修正・追加案がある場合は、10 月 2 日(金)までにご連

絡頂き、修正する。

3. 次回、第 3 回委員会の開催日

1 月 29 日(金)13:30~15:00 を予定。

以上

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マルチクライアント研究「鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別技術の開発」

第 3 回委員会議事録

記録:事務局(JECTEC:金子)

開催日時: 平成 22 年 1 月 29 日(金)13:30 ~ 16:00

場 所: コンワビル 13 階 第三会議室

出席者(順不同、敬称略):

堀川(古河)、菊池(日立)、住野(三菱)、上林山(塩ビ工業・環境協会)、

亀田(電線工業会)、平野、金子(JECTEC)

(欠席:礒嶋(住友)、渡邉(フジクラ)、田中(昭和))

1.配布資料

・ 21-#3-1 第 2 回委員会の議事録

・ 21-#3-2 第 3 回委員会の報告資料

・ 21-#3-3 携帯型蛍光 X線分析計による鉛含有量測定結果

2.議事内容

2-1. 前回の議事録の確認

修正なく、承認された。

2-2. 報告内容

携帯型蛍光 X 線分析計、透過 X 線分別装置、近赤外線分別装置について、電線被覆材の判

別能力、分別能力を評価した。事務局より資料(21-#3-2, 21-#3-3)を用いて、評価結果を報

告した。それぞれの評価結果は以下の通りである。

(1) 携帯型蛍光 X 線分析計(リガク製)

・ 鉛濃度 2%、鉛フリーPVC の被覆は分別可能。

・ 鉛濃度 0.1%(1000ppm)は、測定視野と積算時間をかければ測定可能。

・ 電線サイズが細くなると精度が悪くなる。

・ PVC の厚さが 1mm 以上あれば、下地の組成は検出しない。

ご意見:

・分析計は両手で操作する必要があるため、その分、効率がわるい。治具などを作製して、操

作性を高めれば、より実用的になると思われる。

・束の電線など、リサイクル現場に置かれている状態で測定すれば、さらに実用的なデータと

なる。

→ 測定機器がないため、メーカーに協力していただき測定を実施してきたが、これ以上協

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力していただくのは難しい。分析計を入手できた場合に検討課題としたい。

(2) 透過 X 線分別装置(アーステクニカ製)

・ 安定剤以外の組成が同じ場合、鉛濃度 2%、鉛フリーPVC が 1:1 の混合物から、鉛フリー

PVC を品位 100%、回収率 50%で分別可能である。

・ 可塑剤、難燃剤、充填剤などの配合の異なる PVC が混ざると分別能力(品位、回収率)は

低下する。特に臭素系難燃剤、三酸化アンチモン配合の PVC が混ざっていると分別能力は

低下する。

・ 試料のサイズが小さくなると判別能力は低下する。

・ 試料のサイズが 10×10mm 以上であれば、X 線の判定通りに、エアーで分別できる。

・ 電線の形状のままだと(導体が入ったままだと)分別できない。

ご意見:

・試料が重なった場合は、分別が難しくなるのではないか。

→ 装置へ入る段階で、試料の重なりを防ぐ機構がついており、ここの段階で重なりを排除

できる。また、2 つの試料が重なっていたとしても、1 つ 1 つを個別に、鉛含有/鉛フリー

の判別をすることができる。

(3) 近赤外線分別装置(アーステクニカ製)

・ 鉛フリーPVC のうち、臭素系難燃剤、三酸化アンチモンを配合していない PVC は、高品

位に分別可能である。

・ 黒色のプラスチックを分別可能な装置は現在開発中であるが、開発されれば透過 X 線分別

装置よりも高品位・高回収率に鉛フリーPVC を回収可能と推測される。

2-3 審議内容

(1) 修正項目

今回の報告内容について審議し、報告書に記載する際に以下のように修正することとした。

・ “鉛フリー”と“非鉛”という言葉が混在している。定義が違うので、混同しないように

使い分ける。

鉛フリーPVC : 1000ppm 以下の鉛含有率の PVC

非鉛 PVC : 鉛安定剤を配合しない PVC(アンチモンに含まれる鉛は可)

・ 最後の表(資料 21-#3-2, p40)の記号(◎, ○, △, ×)の基準を決める。

・ 『近赤外線分別装置で PVC とゴムや NH・EM も分別できる』という事柄は、今回実施し

た実験内容ではないので、“参考情報”とする。

(2) 報告書の公開について

本研究は電線被覆材のリサイクル促進のために実施した研究であるため、参加各社の利益よ

りも、大手電線会社による業界への貢献の意味合いが強い。このため、実際の使用者にあたる

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リサイクル業社へ情報提供し、鉛含有、鉛フリーPVC の分別に利用して頂くのが望ましい。

ただし、マルチクライアント研究の報告書は、3 年間 参加各社以外へは非公開との規約があ

るため、原則 3 年間公開できない。このため、リサイクル業社への情報公開の是非について、

相談させていただいた。

ご意見:

・マルチクライアント委員だけでなく会社としての了承 と JECTEC の運営を実施している

企画委員の了承が必要である。

→ 以下の対応とすることとした。

各社への対応 : 次回第 4 回委員会の前に、E メールに上記内容を記載して送付さ

せていただく。公開のご了承を頂けるか各社においてご相談いただ

き、次回委員会にて、ご了承いただけるか確認させていただく。

企画委員への対応: JECTEC 企画委員会でマルチクライアントの結果を報告し、リサ

イクル業者への公開の是非を判断頂く。

3. 次回、第 4 回委員会の開催日

3 月 12 日(金)13:30~16:00 を予定。

以上

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マルチクライアント研究「鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別技術の開発」

第 4 回委員会議事録

記録:事務局(JECTEC:金子)

開催日時: 平成 22 年 3 月 12 日(金)13:30 ~ 17:00

場 所: (社)日本電線工業会 B 会議室

出席者(順不同、敬称略):

堀川(古河)、菊池(日立)、住野(三菱)、渡邉(フジクラ)、岡下(昭和 代理)、

上林山(塩ビ工業・環境協会)、亀田(電線工業会)、森、平野、金子(JECTEC)

(欠席:礒嶋(住友))

1.配布資料

・ 21-#4-1 報告書(案)

2.議事内容

2-1. 前回の議事録の確認

修正なく、承認された。

2-2. 報告書(案)の審議

事務局より報告書(案)(21-#4-1)の要旨を説明し、審議した結果、下記の修正をすること

となった。

2章の修正事項

・ 2章の題名を『廃電線の解体・選別工程』とする。

・ ウスイ金属殿に写真の使用許可をいただく。許可いただけない場合は、写真を省く。

3章の修正事項

・ p11; 主に使用されている鉛系安定剤が三塩基性硫酸鉛であることを記載する。

・ p11; 誤字の修正:『二塩基性フタール酸』 ⇒ 『二塩基性フタル酸』

・ p12; 非鉛系安定剤の後に『金属石鹸類』であることを記載する。

・ p13;『3.3項』を2章へ移す。

・ p13; 図3-1は PVC についてのグラフであることを記載する。

・ p14; 表3-3は、鉛を最上段へ移し、鉛以外を『その他の重金属』としてまとめて下

へ移す。

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4章の修正事項

・ p17; 『4.1他業界の対応』に(3)を設け、そこに『(1)目的』に対する答えを書

く。

・ 『調査した塩ビ管、サッシ、プラスチック板、雨樋は硬質塩ビであるため、鉛の溶出

がない。塩ビへの鉛使用の規制はない。』ということを記載する。

・ p19-20; 分別、選別、識別、判別など、似たような言葉が使用されている。同じ意味合

いで使用しているものは 1 つの言葉で統一するなど、整理して使用するようにする。

・ p21; 『(3)まとめ』に、蛍光 X 線、透過 X 線、近赤外線は、原理的にも適用の可能

性があるということを明記する。

・ p22; 印刷用紙の大きさを A3 にする。

5章の修正事項

・ 試料に関する記述を5章にまとめて書かかずに、実験ごとに使用した試料を書く。

6章の修正事項

・ 分析計の名称(XL3t-700 など)が間違っているところがあるので修正する。

・ 6 章のグラフの縦軸の表記を全て『鉛含有量の測定値』で統一する。

・ p32; 鉛含有量ごとに、グラフの縦軸のスケールを合わせる。

・ p32; 印刷用紙の大きさを A3 にする。

・ p37(3-6 行目); 表現が断定的過ぎるので、文章を以下のように変える。

『実際の鉛含有量は判らないが、ケーブル外形が小さいものだけ安定剤を少なく

することは、一般的にはない。電線外径が小さくなるほど、実際の値より少なく

なる傾向が得られた。』

7章の修正事項

・ 透過 X 線分別装置の、電線被覆材の鉛含有 PVC と鉛フリーPVC の分別能力は良くな

かった。このため、メーカーから公開の許可が得られないことも考えられる。その場

合は、7 章の内容は報告書から省き、参考資料として委員会参加社にだけ配布する。

・ p45; ①,②の項目名と、その下の文章が似ていて解りにくいため、書き直す。

・ p55; 『7.3.3.2項』は内容が他の項目とことなるため、7章の最後に移す。

・ p58(2 行目); 文章の修正:『安定剤のみ異なる PVC』⇒『濃度の異なる PVC』

・ p58(9 行目); 文章の修正:『測定点数が減るため』⇒『分布が広がるため』

8章の修正事項

・ p61(3 行目); 誤記の修正:

『携帯型蛍光 X 線分析計』⇒『近赤外線分別装置』

・ p63; 表8-1の試料に、臭素, 三酸化アンチモンなどの配合材料も書く。

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・ p64; 『8.4 まとめ』は、表現が解り難いので、解り易くする。

9章の修正事項

・ 具体的に書く。特に『9.1項』は文章が少ないので具体的に書く。

・ p66; 表の◎, ○, △等の記号は解り難いので、記号ではなく文章で説明を書く。

3.報告書の公開について

本研究の成果を公開することが、本当に電線のリサイクルの促進につながるのか確認する。

確認の方法としては、JECTEC 賛助会員の電線リサイクル業社(3社)へ、携帯型蛍光 X 線

分析計と近赤外線分別装置の評価結果をみせて、結果の公開がリサイクル促進につながるかヒ

アリングする。

ヒアリングの結果を基に、再度、委員の皆様の承諾を頂く。承諾が得られた場合に、報告書

を公開する。

4.その他

・ 3 月 26 日(金)までに委員の皆様から頂いた修正案をもとに、内容を修正する。

・ 修正した報告書(案)は、4 月 2 日(金)までに E メールで委員の皆様へお送りする。

以上

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付録 B

近赤外線分別装置を用いた分別フロー案

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付録 B 近赤外線分別装置を用いた分別フロー案

黒色の PVC を分別可能な近赤外線分別装置が開発された場合も、以下の懸案事項が残る

ため、近赤外線分別装置が使用されず、電線被覆材のリサイクルが促進されない恐れがある。

そこで電線被覆材のリサイクルを促進するために、近赤外線の有効な使用方法として以下の

分別フロー案を考えた。参考として以下に載せる。

【懸案事項】

粉砕品(ナゲット)は数 mm 程度であり小さく、形状も不均一であるため分別が難

しい。このため、粉砕品の分別は品位・回収率が低くなってしまう。

価格が数千万円の高額な装置である。用途が鉛含有 PVC と鉛フリーPVC との分別

だけであると、費用対効果が低い。

【近赤外線分別装置を有効に利用する分別方法案】

近赤外線分別は、透過でなく反射した近赤外線で判別するので、電線形状(内部に導体が

入った状態)でも判別できると推測される。また、近赤外線は樹脂の分別に用いられるため、

ゴムや EVA※1 , EEA※2も分別できる可能性がある。

そこで、上記の懸案事項の解決策として、以下の方法を提案する。

図b-1に示すように、廃電線を裁断後、粉砕前に近赤外線分別を実施する。この方法に

より以下の効果が得られるため、電線のリサイクルの促進につながると考えられる。

ナゲットのように小サイズでの選別でないため、“小サイズ化による分別能力の低

下”がない。(高品位、高回収率で回収できると推測される。)

これまで手作業で実施していたゴム電線の分別を自動化できる。

これまで分別できなかった NH※3・EM※4と PVC の分別が可能になる。

※1 EVA:エチレン-酢酸ビニル共重合体(NH, EM に使用される樹脂)

※2 EEA:エチレン-アクリル酸エチル共重合体(NH, EM に使用される樹脂)

※3 NH: 高難燃ノンハロゲン材料

※4 EM: EM 電線用耐燃性ポリエチレン

(NH と EM は樹脂が同じため、分別する必要はない。分別しなくてもリサイクル

可能である。)

ただし、実際にゴムや NH・EM の分別が可能か、電線形状での分別が可能かについては

確かめる必要がある。

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銅被

覆材

廃電

粉砕

比重

選別 水

選別

PE

裁断

鉛フリーPVCの電線

(Br , Sb2O3 非

含有

)ゴム

電線

リサイクル

銅ゴム

粉砕

比重

選別

リサイクル

リサ

イクル

近赤

外線分別

鉛フリーPVC

(Br , Sb2O3 非

含有

リサイクル

銅被

覆材

粉砕

比重

選別

水選

PE

リサイクル

廃棄

リサイクル

銅NH, EM

粉砕

比重

選別

水選

PE

NH, EMの

電線

リサイクル

リサイクル

NH, EM

リサイクル

数cm

 ~数

十cm

 の廃

電線

鉛フリーPVCの電線

(Br , Sb2O3含

有)

鉛含

有PVCの電線

, 鉛フリーPVC

(Br , Sb2O3含有

)鉛

含有

PVC ,

図B-

1 近赤外線分別装置を用いた解体・分別フロー案

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Page 98: 鉛01 報告書 表紙 - JECTECjectec.or.jp/03multi/data/pvc-houkoku.pdf1 背景および目的 従来、電線被覆材のPVC には、熱劣化時に発生する塩素分を安定化させるため、鉛系安

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付録 C

試料と実験の対応表

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付録C 各試料と実験の対応表

C-1 ~ C-3に示す試料を5章、6章、7章の各章の実験で使用した。そこで参考

として、各試料をどの実験で使用したのか解りやすいように、対応表を作成した。実験に

使用した試料とあわせて、対応表を以下に示す。

C.1 鉛濃度の異なる試料

目的: 鉛フリーPVC と鉛含有 PVC(鉛含有量 0.1~2.0wt%)を判別可能か調べる。

配合:表C-1に記載の4種類の配合

鉛含有量 2.0 wt%(一般的な鉛含有 PVC の鉛含有量)

鉛含有量 1.0 wt%(比較的含有量が少ない鉛含有 PVC)

鉛含有量 0.1 wt%(鉛フリーPVC の鉛含有量の上限値。)

C(鉛フリー)

※ 鉛フリーPVC として鉛含有量 0wt%を使用した。

表C-1 試料組成1

大分類 配合材料 A-Pb※1 A-Pb(1.0) A-Pb(0.1)※3 A-CZ※2

樹脂 PVC レジン 100 100 100 100

可塑剤 DOP 50 50 50 50

安定剤

三塩基性硫酸鉛 4.5 2

ステアリン酸鉛 0.9 1 0.7

Ca-Zn 系安定剤 5 5

充填剤・難燃剤 炭酸カルシウム 40 40 40 40

合計 195.4 193.0 195.7 195.0

鉛含有量(wt%) 2.0 1.0 0.1 0

※1 試料名 A-Pb, A-Pb(1.0), A-Pb(0.1)の“Pb”は鉛系安定剤を配合した試料であること

を表す。括弧内の数字は配合量を表す。

※2 試料名の A-CZ の“CZ”は、カルシウム-亜鉛系(Ca-Zn 系)安定剤のみを配合した試料

であることを表す。

※3 試料 A-Pb(0.1)では、鉛系安定剤と Ca-Zn 系安定剤の両方が配合されている。

鉛含有量 0.1%の試料とするために、鉛安定剤は通常よりも少なくしか配合できなか

った。コンパウンドの作製のためには、安定剤の量を増やす必要があるため Ca-Zn

系安定剤も一緒に配合した。

(単位 : PHR)

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C.2 各種配合の異なる試料

目的:PVC に配合される材料による測定への妨害効果を確認するための試料

配合:表C-2に記載の配合

鉛含有量 2.0wt% 8種類※1 , 2

鉛含有量 0wt%(鉛フリー)8種類※2

※ 鉛フリーPVC として鉛含有量 0wt%を使用した。

※1 鉛配合量は、一般的な鉛含有 PVC を除外するのを目的とするため、2wt%と設定。

※2 妨害効果の確認として、可塑剤,焼成クレー ,硼酸亜鉛,臭素系難燃剤,三酸化アンチモン,

水酸化マグネシウム 水酸化アルミニウムを配合。

C.3 廃電線

目的:電線形状での判別の可否を確認するための試料

表C-3の廃電線

尚、廃電線の収集には、非鉄リサイクル業者のウスイ金属株式会社にご協力いただいた。

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(注

1)A

-Pb,

A-C

Zは

表C-1と同じ

組成である。

(注

2)試

料名

A-P

b, A

-CZ

,・・の“

Pb”

、“

CZ”はそれぞれ鉛系安定剤、カルシウム-亜鉛系安定剤を配合した試料であることを表している。

(注

3)試

料名の

A-P

b, B

-Pb,

C-P

bの“

A”、“

B”、“

C”、・・・、

は安定剤以外の配合が異

なることを表している。

大分類

配合材料

A

-Pb

A-C

Z

B-P

b B

-CZ

C

-Pb

C-C

Z

D-P

b D

-CZ

E

-Pb

E-C

Z

F-P

b F

-CZ

G

-Pb

G-C

Z

H-P

b H

-CZ

樹脂

P

VCレジン

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

100

可塑剤

DO

P

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

50

DIN

P

50

50

安定剤

三塩

基性硫酸鉛

4.

5

4.7

4.

7

5.2

5.

2

5.2

5.

2

4.5

ステアリン酸鉛

0.

9

1

1

1

1

1

1

0.9

Ca-

Zn系

安定

5

5

5

5

5

5

5

5

充填剤

難燃剤

炭酸

カルシウム

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

40

焼成

クレー

10

10

硼酸

亜鉛

10

10

臭素

系難燃剤

30

30

三酸

化アンチモン

30

30

水酸

化マグネシウム

30

30

水酸

化アルミニウム

30

30

合計

19

5.4

195.

020

5.7

205.

020

5.7

205.

022

6.2

225.

0 22

6.2

225.

022

6.2

225.

022

6.2

225.

019

5.4

195.

0

鉛含有量

(w

t%)

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

2 0

表C-2 試料組成2

:鉛含有

PV

C□:鉛フリー

PV

C

(単位

: P

HR)

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表C-3 試料(廃電線)

(注)全て、建設電販用電線に鉛フリー

PV

Cが使用され始める

2002

年以前に製造された電線である。

外径

 φ

30m

m以

上外

径 

φ20m

m~

φ30m

m外

径 

φ10m

m~

φ20m

m外

径 

φ10m

m未

(ⅰ) φ

13m

m(ⅱ

) φ

6m

m

(ⅲ) φ

25m

m 

(高

圧)

(ⅳ) φ

18m

m

(ⅴ) 1

6m

m

(ⅵ) φ

36m

m(ⅶ

) φ

27m

m(ⅷ

) φ

13m

m

(ⅸ

) 11×

7m

m

(ⅹ) φ

19m

m(ⅺ

) φ

8m

m

(ⅻ) φ

2m

m

ビニ

ール

コー

耐火

(FP

耐熱

(H

P)

VV

F

VV

R

電線

の種

類外

IV CV

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C.4 対応表

各試料の使用された実験は以下の表C-4の通りである。

各試料は、表に○印のある実験に使用した。

表C-4 試料と実験の対応表

※1 6.3.3項、6.3.5項の実験では表C-1の試料の一部(A-Pb と A-CZ)のみ

使用している。

※2 6.3.4項の実験では、表C-3の試料の一部(①,②,⑥)のみ使用している。

機器 携帯型蛍光X線分析計 透過X線分別装置近赤外線分別装置

実験結果の記載部 5.3.1項 5.3.2項5.3.3項 6.3.1項 6.3.2項 6.3.3項 6.3.4項 6.3.5項 7.3項

試料

1. 鉛濃度の異なる試料

(表C-1の試料)

○ ○ ○ ○

2.各種配合の異なる試料

(表C-2の試料)

○ ○ ○

3.廃電線

(表C-3の試料)○ ○

※1 ※1

※2

装置

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