資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 survival of...

10
受賞者 受賞評価のポイント 主な業績 千葉県のイチゴ栽培では、高温多湿を好む「炭疽病」の発生が苗生産上の問題となっ ていた。そこで千葉県では、平成12年より「炭疽病」の回避を目的として、夏季冷涼な 北海道に苗生産を委託するイチゴリレー苗生産を開始した。しかし一方で、委託先の北 海道では、冷涼な気候を好む「萎凋病」の発生が新たに問題となった。 そこで、両病害の対策技術の確立に取り組み、以下の成果をあげた。 ●北海道における「萎凋病」の防除対策として、水稲3年、イチゴ苗1年を作付する 田畑輪換による輪作体系を確立した。 ●無病苗生産に必要な、増殖用親株や苗における「炭疽病」の検定方法を開発した。 ●病原菌を委託先に「持ち込まない」、委託先で「増やさない」、委託元に「持ち帰ら ない」の三原則を掲げて、リレー苗生産における検疫体制を構築した。 ●田畑輪換により病原菌が死滅する要因には、嫌気条件(酸素欠乏)と温度が関与している ことを明らかにした。 ●これらの成果により、農薬に頼らない「炭疽病」、「萎凋病」の同時防除法を開発し、 イチゴ無病苗安定供給のシステム化に成功した。 ●これまでの13年間で累計約500万株の苗を生産し、千葉県全域のイチゴ生産者に無病 苗を供給した。本成果は、県内外で広く活用され、全国的にも普及している。 主要論文・特許 •「Control of Verticillium dahliae at a strawberry nursery by paddy-upland rotation Journal of General Plant Pathology, 76,7-20(2010) •「 Genetic polymorphism and virulence of Colletotrichum gloeosporioides isolated from strawberry (Fragaria × ananassa Duchesne) Journal of General Plant Pathology, 76,247-253(2010) •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum and Verticillium dahliae under anaerobic conditions Journal of General Plant Pathology, in printing (2013) DOI 10.1007/s10327-013-0476-0 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 氏名(年齢):海老原 克介 氏(39歳) 所属:千葉県農林総合研究センター 暖地園芸研究所 上席研究員 2940014 千葉県館山市山本1762 TEL 0470-22-2603 略歴:平成10年千葉大学大学院自然科学研究科修了。 千葉県農業総合研究センター暖地園芸研究所、千葉県 安房農林振興センターを経て、平成21年より現職。 業績の概要 イチゴ栽培において、「萎凋病」が田畑輪換により防除可能であることを明らかにし た。北海道に苗生産を委託するリレー苗生産方式において、イチゴ無病苗の安定供給シ ステムを構築し、県内外で広く活用されていることなどが高く評価された。 資料2

Upload: others

Post on 25-Oct-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum

1 受賞者

3 受賞評価のポイント

主な業績

千葉県のイチゴ栽培では、高温多湿を好む「炭疽病」の発生が苗生産上の問題となっていた。そこで千葉県では、平成12年より「炭疽病」の回避を目的として、夏季冷涼な北海道に苗生産を委託するイチゴリレー苗生産を開始した。しかし一方で、委託先の北海道では、冷涼な気候を好む「萎凋病」の発生が新たに問題となった。

そこで、両病害の対策技術の確立に取り組み、以下の成果をあげた。

●北海道における「萎凋病」の防除対策として、水稲3年、イチゴ苗1年を作付する田畑輪換による輪作体系を確立した。●無病苗生産に必要な、増殖用親株や苗における「炭疽病」の検定方法を開発した。

●病原菌を委託先に「持ち込まない」、委託先で「増やさない」、委託元に「持ち帰らない」の三原則を掲げて、リレー苗生産における検疫体制を構築した。●田畑輪換により病原菌が死滅する要因には、嫌気条件(酸素欠乏)と温度が関与していることを明らかにした。

●これらの成果により、農薬に頼らない「炭疽病」、「萎凋病」の同時防除法を開発し、イチゴ無病苗安定供給のシステム化に成功した。

●これまでの13年間で累計約500万株の苗を生産し、千葉県全域のイチゴ生産者に無病苗を供給した。本成果は、県内外で広く活用され、全国的にも普及している。

主要論文・特許 •「Control of Verticillium dahliae at a strawberry nursery by paddy-uplandrotation 」Journal of General Plant Pathology, 76,7-20(2010) • 「Genetic polymorphism and virulence of Colletotrichum gloeosporioides isolated from strawberry (Fragaria × ananassa Duchesne) 」 Journal of General Plant Pathology, 76,247-253(2010) •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp.fragariae, Phytophthora cactorum and Verticillium dahliae under anaerobic conditions」 Journal of General Plant Pathology, in printing (2013) DOI 10.1007/s10327-013-0476-0

イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除

氏名(年齢):海老原 克介 氏(39歳)

所属:千葉県農林総合研究センター 暖地園芸研究所

上席研究員

〒294-0014 千葉県館山市山本1762 TEL 0470-22-2603

略歴:平成10年千葉大学大学院自然科学研究科修了。千葉県農業総合研究センター暖地園芸研究所、千葉県安房農林振興センターを経て、平成21年より現職。 2 業績の概要

イチゴ栽培において、「萎凋病」が田畑輪換により防除可能であることを明らかにした。北海道に苗生産を委託するリレー苗生産方式において、イチゴ無病苗の安定供給システムを構築し、県内外で広く活用されていることなどが高く評価された。

資料2

Page 2: 資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum

苗生産の受委託により、千葉県など産地での育苗労力を省力化した 冷涼な北海道で、新たなイチゴ苗産業の創出に貢献 土壌くん蒸剤を使用しないため、環境保全型農業に貢献 田畑輪換の防除メカニズムは、新たな防除法の開発につながる

業績のイメージ

背景

成果

成果のポイントと今後の展開

田畑輪換による「萎凋病」の 防除を実証

冷涼な気候を好む

<イチゴ萎凋病> ・北海道での苗生産で問題化

「萎凋病」防除のための輪作体系を確立

水 稲:3年 イチゴ苗:1年

・水稲を栽培するだけで 防除可能

・水田での病原菌の死滅 には嫌気条件(酸素欠乏) と温度が関与

北海道の田畑輪換ほ場を利用したイチゴリレー苗生産 により「炭疽病」、「萎凋病」の同時防除を実現

<千葉県>

「炭疽病」の検定方法を開発

高温多湿を好む

<イチゴ炭疽病> ・千葉県で防除困難

リレー苗生産での検疫体制を構築

遺伝子診断で病原菌を識別

病害検定をした「炭疽病」無病 親株を北海道に送付し、田畑輪換ほ場で健全苗を生産するシステムを構築

イチゴリレー苗生産システム

<北海道>

5月:「炭疽病」フリーの親株を送付

翌年9月:無病の健全苗を返送

千葉県のイチゴ栽培では、難防除病害である「炭疽病」、「萎凋病」の発生が問題となっており、無病苗の安定供給体制の確立が求められていた。

<効果> ・累計約500万株の苗を生産 ・県外にも技術が普及

Page 3: 資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum

1 受賞者

3 受賞評価のポイント

主な業績

品種など新技術の普及には、普及拡大に向けた技術開発者の取り組みだけではなく、生産者、実需者の意識・ニーズが共有されなければ成功しない。そこで本研究では、育種や技術開発研究の成果を迅速に普及させる手法を開発し、技術開発研究の推進と迅速な新技術普及の同時実現を目指した。

●技術開発の効率化と研究成果の迅速かつ効果的な普及を目的に、1)ニーズ共有・情報コミュニケーション手法の開発、2)新技術普及コンソーシアムの効果的な構築手法の開発、3)コーディネート技術の開発を行い、研究と実践をつなぐ「アクションリサーチ手法」により効果を実証した。 ●新品種の普及には、研究者等が自ら現場に足を運び、生産者や企業の情報やニーズを的確に把握し利害調整を図ることで促進できることを実証。この活動は、生産者・研究者・実需者の橋渡し活動であり、各者の相互理解・相互学習の促進と信頼関係の醸成による普及促進効果を証明した。 ●自ら設立したコンソーシアムを通して、プロモーション活動のタイミングなどを検証し、新品種の効果的な普及プロセスを明らかにした。同手法を実践することで生産者や実需者が新品種や新技術を活用する動機の喚起に成功した。 ●コンソーシアム方式による迅速な技術普及方策についての重要なポイントを共創的連携のための8箇条として提示し、新品種普及を促進するコーディネーターの役割を示した。

主要論文・特許 •「新品種活用型農商工連携の成果と課題-共創的連携のための8箇条-」、農村経済研究、Vol.58,30-38(2011) •「農業経営者特性の構成要素-農業所得1,000万円以上の農業経営者を対象に-」、農業経営研究、47(3)11-21(2009) •「食品産業の求める青果物・加工品ニーズの分析-熊本県食品産業ニーズ調査結果から-」、農業経営研究、44(2)74-78(2006)

アクションリサーチによる新技術普及手法の革新

氏名(年齢):後藤 一寿 氏(37歳)

所属:独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構

九州沖縄農業研究センター 主任研究員

〒861-1192 熊本県合志市須屋2421 TEL 096-242-7574

略歴:平成15年東京農業大学大学院博士後期課程修了。九州沖縄農業研究センター任期付研究員を経て平成23年より現職。平成22年より東海大学客員准教授、平成25年より東京農業大学客員教授を兼務。 博士(農業経済学)。

2 業績の概要

新品種の普及について、自ら設立したコンソーシアムを通して効果的な普及手法を明らかにし、実際に成果を上げている点や、今後の6次産業化の推進にも有用な手法であることなどが高く評価された。

Page 4: 資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum

6次産業化を進めるコンソーシアムを各地域に設立し、技術開発成果の普及と地域活性化が同時に実現可能。 育種プラットフォームや研究開発プラットフォーム(共同推進組織)の設立により、実需者ニーズを基に品種開発を進めるマーケットイン型育種や研究開発のスピードアップが図られ、強い農業の実現に貢献。

本研究では、育種や技術開発研究の成果を迅速に普及させる手法を開発し、技術開発研究の推進と迅速な新品種普及の同時実現を目指した。

業績のイメージ

背景

成果

新品種・新技術の普及による強い農業の実現に向けて

Page 5: 資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum

1 受賞者

3 受賞評価のポイント

主な業績

小型反芻獣レンチウイルス(SRLV)感染症は、山羊関節炎・脳脊髄炎ウイルス(CAEV)やマエディ・ビスナウイルスというめん山羊のレンチウイルスによって起こる不治の疾病で、めん山羊に育成率や泌乳量など生産性の低下を引き起こす。SRLVは生涯にわたって感染し、有効な予防・治療法がないため、感染個体の摘発・淘汰が必要であり、そのためには精度の高い診断法の確立が求められていた。そこで、SRLV感染症について様々な検査法の開発に取り組むとともに、全国的な疫学調査や清浄化対策を実施し、以下の成果を上げた。

●CAEVを国内で初めて分離し、CAEVを含むSRLV感染個体を幅広く検出する抗体検査法とウイルス検出法を開発した。 ●全国的な疫学調査を実施し、わが国におけるCAEV浸潤状況を明らかにすると共に、感染リスクが高い品種や飼養形態等を特定した。また国内のCAEVと海外のSRLVの遺伝子配列を比較し、国内流行株の遺伝学的特徴を明らかにした。 ●出産直後の親子分離、感染個体の分離飼育および定期検査を組み合わせて、国内最大規模の農場を始め、複数の農場で山羊関節炎・脳脊髄炎の清浄化を成功させた。 ●平成24年に同じくSRLV感染症であり、届出伝染病でもある羊のマエディ・ビスナが国内で初めて発生した際には、開発した診断法が迅速な防疫に大きく役立った。

主要論文・特許 •「An epidemic of caprine arthritis encephalitis in Japan: Isolation of thevirus」 Journal of Veterinary Medical Science, 66(8), 911-917(2004) •「 Development of enzyme-linked immunosorbent assay for detection ofantibody against caprine arthritis encephalitis virus using recombinant protein of the precursor of the major core protein, p55gag」 Journal of Veterinary Diagnostic Investigation, 22, 415-419(2010) •「Combined eradication strategy for CAE in a dairy goat farm in Japan」Small Ruminant Research, 99, 65-71(2011)

小型反芻獣レンチウイルス感染症の国内防疫に関する研究

氏名(年齢):小西 美佐子 氏(38歳)

所属:独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

動物衛生研究所 主任研究員

〒305ー0856 茨城県つくば市観音台3ー1ー5 TEL 029-838-7713

略歴:平成14年麻布大学獣医学部卒業。 (独)農業技術研究機構動物衛生研究所研究員を経て、平成21年より現職。獣医学博士。 2 業績の概要

有効なワクチンや治療法がない小型反芻獣レンチウイルス(SRLV)感染症を引き起こすウイルスの一つである山羊関節炎・脳脊髄炎の病原ウイルス(CAEV)を国内で初めて分離し、CAEVを含むSRLV感染個体を幅広く検出する抗体検査法とウイルス検出法を開発した点が高く評価された。

Page 6: 資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum

SRLV感染症清浄国への復帰:生産性向上、健全なめん山羊の生産 日本在来種の海外輸出

アジア諸国への防疫技術の伝達:アジア各国の在来種保護

国内にはない病気と考えられていた山羊関節炎・脳脊髄炎が、2002年に初めて発生し、 精度の高い診断法の開発と清浄化対策の実施による防疫体制の確立が求められている。

業績のイメージ

背景

成果

わが国のめん山羊産業のさらなる発展に向けて

SRLV感染症の国内防疫に学術・応用両面で貢献

診断法の確立

防疫体制の確立

分離株を活用して SRLV感染症の診断法を確立

・農場の清浄化達成

原因不明な山羊の病気が発生!

国内で初めてCAEVを分離

CAEV感染リスク要因を解明

海外のSRLVと遺伝子を比較 清浄化の流れ

重度の関節炎による起立不能

ウイルス感染による細胞の変性(矢頭)

ウイルス検出法 (PCR法)

抗体検査法 (AGID法)

+ 抗原

+ - M + +

・全国的な疫学調査 →感染リスク要因や日本株の特徴を解明

感染リスク要因の特定や清浄化法の確立により防疫が可能に

Page 7: 資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum

1 受賞者

3 受賞評価のポイント

主な業績

現在の食品エマルション(乳化食品)より保存安定性や物性制御性にすぐれる、液滴サイズが均一な単分散エマルションの効率的な製造技術と、エマルションの状態や消化性の高精度・簡便な評価技術の開発が食品産業界などから求められている。そこで、これらの技術開発に取り組み、以下の成果を挙げた。

●非対称マイクロ貫通孔を多数備えるアレイ(マイクロチャネル)による単分散食品エマルション液滴の大量製造技術を開発した。本技術は、従来法による液滴製造に伴う急激な温度上昇を起こさず、強烈なせん断力も不要とすることで、食品成分の変質・劣化の抑制が可能となり、本技術を利用した次世代乳化機の販売に至った。

●食品エマルション中に分散している1ミクロン以下の液滴を前処理することなく迅速に観察できるナノギャップ法を開発した。

●胃の蠕動運動と消化液による消化を模倣できる幽門部のシミュレータの開発により、食品エマルションの胃における消化性を、高精度に評価・解析することを可能とした。

主要論文・特許 •「Large microchannel emulsification device for mass producing uniformlysized droplets on a liter per hour scale」Green Processing and Synthesis, 1, 353-362 (2012) •「Production characteristics of large soybean oil droplets by microchannelemulsification using asymmetric through-holes」 日本食品工学会誌, 11, 34-48 (2010) •特許第3772182号「マイクロスフィアの製造装置および製造方法」(2005)

単分散食品エマルションの製造と評価技術の開発

氏名(年齢):小林 功 氏(37歳)

所属:独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構

食品総合研究所 主任研究員

〒305-8642 茨城県つくば市観音台2-1-12 TEL 029-838-8025

略歴:平成15年筑波大学大学院農学研究科博士課程修了。日本学術振興会 特別研究員、(独)食品総合研究所 研究員、(独)農研機構食品総合研究所 研究員を経て、平成20年より現職。博士(農学)。

2 業績の概要

単分散食品エマルション液滴の大量製造法の実現、食品エマルションの観察技術の開発、 胃消化動態の直接観察と解析を可能とする装置の開発など、独創性が高く、また実用化レ ベルの開発を行っていることが高く評価された。

Page 8: 資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum

マイクロチャネル乳化装置の普及および単分散食品エマルションの実用製造 乳化食品の研究開発現場で利用可能な簡易型ナノギャップ装置の開発 胃消化シミュレータの実用化による高齢者用食品等の研究開発への貢献

乳化食品を高品質化する単分散エマルションを製造する技術と、エマルションの性質を簡易・高精度に評価する技術の開発が食品産業界から強く求められている。

業績のイメージ

背景

成果

今後の展開

50 µm

チャネル

スロット

乳化モジュール 100 µm

ぜん動運動の進行方向

(ローラー)

5 µm

円盤状に変形した サブミクロン液滴

透明板

ナノギャップ 基板

円盤状サブミクロン植物油

(ナノギャップの高さは50 nm)

単分散食品エマルション製造技術の開発

シリコン製マイクロチャネルを 用いた単分散食品エマルションの製造

非対称マイクロ貫通孔アレイ(マイクロチャネル)を用いた乳化法を開発

実用化された マイクロチャネル乳化装置

乳化食品の研究開発現場での利用

極めて温和な条件で、機能性食品成分も内包できるサイズの揃った食品素材液滴の大量製造が可能

食品エマルションの評価技術の開発

○サブミクロンサイズの食品エマルション液滴の迅速・高精度観察技術(ナノギャップ法)

○ぜん動運動を備えた胃消化シミュレータの開発による食品エマルションの消化動態観測

ぜん動運動が活発に起きる幽門部を模倣

胃のぜん動運動と胃液による消化の様子を直接観測が可能

サブミクロンエマルションの組成を変化させずに迅速・高精度な光学顕微鏡観察が可能

ナノギャップの中に閉じ込めれられたサブミクロン液滴はブラウン運動を停止

(乳化食品の新規評価技術として有用)

Page 9: 資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum

1 受賞者

3 受賞評価のポイント

主な業績

フジコナカイガラムシは果樹全般を加害する害虫であり、特にカキでは果実にすす病や火ぶくれ症を引き起こし、商品価値を大きく損なわせる。本虫は果樹の粗皮の隙間やヘタの間など狭い場所を好むため、薬剤による防除が難しい。そこで、土着天敵を効率的に活用した総合防除法の開発を目的として、以下の成果をあげた。 ●本虫の土着天敵であるフジコナカイガラクロバチに対する薬剤感受性を検定。天敵に影響の少ない薬剤を使った天敵活用型の防除体系を構築した。現在、本県ではこの防除体系が約1,000haのカキ園(県内カキ栽培面積の約1/2)に普及している。 ●本虫は主に果樹の粗皮などの隙間に生息し、春先、新芽に寄生する。この性質を利用し、樹の地際部の粗皮を削り、そこに高濃度の殺虫剤(ジノテフラン)を刷毛で塗る樹幹塗布法を開発した。この方法により、薬効成分が樹液の流動に乗り樹の隅々まで転流。枝葉に寄生している本虫の効率的な防除が可能となった(2009年、樹幹塗布剤として農薬登録)。 ●本虫の防除適期はふ化幼虫時期であるが、微小のため、ほ場での発生確認は困難である。そこで、雌成虫が雄成虫を誘引する物質の成分を同定し、性フェロモン剤を開発。フェロモントラップに利用することで、雄成虫の発生時期を確認。その時期から有効積算温度法により次世代の幼虫ふ化時期の予測が可能となった。また、このフェロモン剤を本虫の交信撹乱へも応用。現地カキ園において被害果率を慣行防除の1/20に抑える高い防除効果を確認した。 ●本虫の性フェロモンを同定する際に天敵の寄生蜂を誘引する新たな物質(シクロラバンデュリルブチレート:略称CLB)を発見。このCLBを利用した防除効果を現地カキ園にて検証中。

主要論文・特許

・フジコナカイガラムシPlanococcus kraunhiae (Kuwana)(カメムシ目:コナカイガラムシ科)に対する性フェロモン成分による交信攪乱効果, 日本応用動物昆虫学会誌,第53巻 p173~180(2009) ・A new approach for mealybugフェロモンmanagement: recruiting an indigenous, but ‘non-natural’ enemy for biological control using an attractant(Entomologia Experimentalis et Applicata,vol.142 , p211~215(2012) ・特許第4734553号,「フジコナカイガラムシの性誘引剤」(2011年登録)

土着天敵と誘引剤利用による カキのフジコナカイガラムシの防除

氏名(年齢):手柴 真弓 氏(38歳)

所属:福岡県農業総合試験場 病害虫部

主任技師

〒818-8549 福岡県筑紫野市大字吉木587 TEL092-924-2938

略歴:平成10年九州大学農学部卒業。福岡県福岡農業改良普及指導センター技師を経て、平成13年福岡県農業総合試験場病害虫部技師。平成15年より現職 2 業績の概要

果樹全般を加害する害虫フジコナカイガラムシの有用な土着天敵を明らかにし、天敵を効率的に活用した総合防除体系を構築し、その技術がすでに県内において実用化されていることが高く評価された。

Page 10: 資料2 イチゴ育苗圃の田畑輪換によるイチゴ萎凋病の防除 · •「 Survival of strawberry-pathogenic fungi, Fusarium oxysporum f.sp. fragariae, Phytophthora cactorum

フジコナカイガラムシはその生態から薬剤による防除が困難な害虫であり、果樹全般、特にカキでは被害が大きい。また、本虫はヘタの隙間などに好んで生存するため、輸出に際して検疫上の大きな問題であり、産地では効果的な防除法の開発が強く求められている。

業績のイメージ

背景

成果

○樹幹塗布法の開発

(樹皮下やヘタ下のフジコナ

カイガラムシを防除)

○フジコナカイガラムシの

性フェロモンによる防除適

期の予測

○新発見の天敵誘引剤(CLB)

により、土着天敵の活動を高める。

樹皮を削ったあと

薬液を塗布する

○性フェロモンをフジコナカイガラ

ムシの交信攪乱剤として利用

フジコナカイガラムシに産卵中

のフジコナカイガラクロバチ

越冬世代 第 1 世 代 第 2 世 代 第 3 世 代

2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

フジコナカイガラムシの発生

展葉期 開花期 着色開始

これまでの 防除体系

新たな防除体系

今後の防除体系

薬剤防除

発生予察に基づく薬剤防除

天敵活用

*補正防除

樹幹塗布

樹幹塗布 交 信 撹 乱 に よ る 防 除

[薬 剤 散 布 な し]

天敵活用

カキ(富有)の生育ステージ

フジコナカイガラムシ防除の更なる効率化を目指して

フジコナカイガ ラムシは 薬剤 防除が難しい

フジコナカイガラムシの性質や天敵に着目し、新たな防除技術を開発

○天敵活用型防除体系 (悪影響の少ない防除体系で土着天敵を保護利用)