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医療事故予防マニュアル(医療行為別)改訂概要 1 処方・調剤・与薬における事故防止マニュアル(処方から服薬まで) (現行マニュアル:平成21年3月改訂) ○ 紙カルテ用記載を削除し、全面的に電子カルテに即した内容に変更した。 ○ 薬剤の効果に影響する食品を記載した。 ○ 間違いやすい薬品について薬品名の修正を行った。 その他、表記統一や修正を行った。 2 点滴ルートからの感染予防 (現行マニュアル:平成22年3月改訂) ○ WHO手指衛生5つのタイミングについて記載した。 ○ 中心静脈カテーテル挿入時・ポート使用時に推奨されている消毒剤を追加した。 ○ ガイドラインを参考に記載の修正を行った。 ○ 血管カテーテルの細菌検査について、現在は推奨されていないため、参考資料から削除した。 その他、表記統一や修正を行った。 3 転倒・転落防止対策マニュアル(予防から対応まで) (現行マニュアル:平成21年3月改訂) ○ 都立共通の新「転倒・転落アセスメントスコアシート」へ差替えを行った。 ○ 評価の具体的な方法の記載、3段階評価から2段階評価への変更に伴い、転倒・転落危険度 別対応策(例)の修正を行った。 転倒リスクを増す薬剤は多数存在するため、具体的な薬品名は削除した。 抑制と拘束という名称がマニュアル内に並列するため、拘束に統一した。身体拘束の 3 原則を明 記し、身体拘束時の記録については拘束解除の目安を追加した。 ○ 身体拘束に関する同意書差替えを行った。 4 ライン類の抜去防止対策マニュアル (現行マニュアル:平成21年3月改訂) ○ ラインの固定方法に関して現在行われている方法に修正した。 ○ マニュアル内の参考資料からの写真について、新たに病院で撮影を行い差替えた。 ○ 抗がん剤の血管外漏出とその対策については、ライン類の抜去防止対策マニュアルと直接関 係するものではないため、削除した。 ○ 参考資料について、入院生活アセスメントシートを自己抜去危険度アセスメントシートへ差替 えた。 ○ マニュアル全体を通して、現在実施されていないものや、文言について一部修正した。 資料8

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医療事故予防マニュアル(医療行為別)改訂概要

1 処方・調剤・与薬における事故防止マニュアル(処方から服薬まで)

(現行マニュアル:平成21年3月改訂)

○ 紙カルテ用記載を削除し、全面的に電子カルテに即した内容に変更した。

○ 薬剤の効果に影響する食品を記載した。

○ 間違いやすい薬品について薬品名の修正を行った。

○ その他、表記統一や修正を行った。

2 点滴ルートからの感染予防

(現行マニュアル:平成22年3月改訂)

○ WHO手指衛生5つのタイミングについて記載した。

○ 中心静脈カテーテル挿入時・ポート使用時に推奨されている消毒剤を追加した。

○ ガイドラインを参考に記載の修正を行った。

○ 血管カテーテルの細菌検査について、現在は推奨されていないため、参考資料から削除した。

○ その他、表記統一や修正を行った。

3 転倒・転落防止対策マニュアル(予防から対応まで)

(現行マニュアル:平成21年3月改訂)

○ 都立共通の新「転倒・転落アセスメントスコアシート」へ差替えを行った。

○ 評価の具体的な方法の記載、3段階評価から2段階評価への変更に伴い、転倒・転落危険度

別対応策(例)の修正を行った。

○ 転倒リスクを増す薬剤は多数存在するため、具体的な薬品名は削除した。

○ 抑制と拘束という名称がマニュアル内に並列するため、拘束に統一した。身体拘束の 3原則を明

記し、身体拘束時の記録については拘束解除の目安を追加した。

○ 身体拘束に関する同意書差替えを行った。

4 ライン類の抜去防止対策マニュアル

(現行マニュアル:平成21年3月改訂)

○ ラインの固定方法に関して現在行われている方法に修正した。

○ マニュアル内の参考資料からの写真について、新たに病院で撮影を行い差替えた。

○ 抗がん剤の血管外漏出とその対策については、ライン類の抜去防止対策マニュアルと直接関

係するものではないため、削除した。

○ 参考資料について、入院生活アセスメントシートを自己抜去危険度アセスメントシートへ差替

えた。

○ マニュアル全体を通して、現在実施されていないものや、文言について一部修正した。

資料8

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医療事故予防マニュアル[医療行為別シリーズ:№1]

処方・調剤・与薬における

事故防止マニュアル

(処方から服薬まで)

平成29年 月改訂(案)

東京都病院経営本部

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はじめに

医療事故防止は、医療に携わるすべての人たちの究極の願いです。都立病院医療安

全推進委員会は、平成11年に起きた都立広尾病院薬剤誤注入事故等を教訓に、医療

安全推進に向けて多くの取組を展開し、その一環として平成12年から各種の医療事

故予防マニュアルを作成してきました。本マニュアルは、医療行為別シリーズの第1

作目として、平成 14年 1 月に初版が発行され、平成21年3月に改訂されました。

インシデント・アクシデント・レポートを分析すると、行為別頻度の3分の1は薬

剤に関することであり、転倒・転落やライン類の抜去より多く、第1位の頻度を占め

ています。薬剤は患者の体内に投与される性質上、これに関するインシデント・アク

シデントは重大な事故に繋がる可能性がきわめて高いと考えられます。

一方、都立病院では全病院への電子カルテの導入から年数が経過し、医師の処方や

指示の出し方も電子カルテを使用した運用が前提へと変化してきました。また、抗が

ん剤をはじめとする多数の新薬が開発・認可され治療方法が複雑化し、医療環境の変

化に伴い後発医薬品の採用が増加し同一薬効の薬品名が複数存在するなど、薬剤の高

度な安全管理の必要性は高まっています。

前回のマニュアル改訂から約7年が経過し、これらの背景を踏まえ、今般、全面的

に電子カルテに即した内容に修正する改訂を行いました。病棟をはじめ、薬剤に関連

する各部署で本マニュアルが活用され、薬剤に関する医療事故防止に役立つことを願

います。

平成29年 月

都立病院医療安全推進委員会 委員長

平成14年1月作成

平成21年3月改訂

平成29年 月改訂

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目 次

第1 処方時の留意点 1 処方前の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 処方時の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3 医師による指示出し時の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 4 看護師の指示受け時の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8

第2 調剤時の留意点

1 処方鑑査時の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

9 2 調剤時の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 3 最終鑑査時の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13 4 薬を渡す時の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

第 与薬時の留意点

1 与薬時の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

17 第4 与薬過誤時の対応

1 与薬過誤時の留意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

19

間違いやすい薬品 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

21 電子カルテ入力時に間違いやすい薬品・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

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1 処方前の留意点

「フロー図」

手順 方法 事故防止のポイント

第1 処方時の留意点

(1)患者情報・患者

状態の把握

・臨床研修医の場合、

上席医師がチェックする

ことが望ましい

・薬剤の特性を十分に

理解しておく

・専門医への相談

・薬剤師への相談

・用法・用量・薬効・警告・

慎重投与・相互作用・

副作用・禁忌情報を

把握する

・医薬品集・添付文書の参照

・アレルギーや過敏症、

妊娠の有無などから、

禁忌薬を把握する

・各病院の注意事項・

特記事項を確認する

習慣をつける

・問診・検査データの確認

全身状態、アレルギーや

過敏症、妊娠の有無、

肝機能、腎機能の確認

・注意事項・特記欄等は

患者プロファイルに入力

(2)薬品情報の

把握

(3)薬品の選択

(4)患者への説明 ・本人への説明と

同意を得る

・EBMを用いた治療方針・

処方内容・副作用の説明

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① 病院で導入している仕様に従い問診、臨床データの確認を行い、アレルギーや過敏症、

妊娠の有無、肝機能、腎機能を把握する。

② 患者プロファイルにアレルギー等の情報を入力する。

※患者プロファイルは、アレルギー等の入力がある場合、該当薬処方時、警告(アラーム)

や処方不可とする機能をもっている。

③ 診察時には、注意事項欄等を見る習慣をつける。

④ 持参薬を確認する。

① 特に、重大な副作用については、医薬品集、添付文書の内容を十分理解しておく。

日頃から副作用症状の診断能力の向上に努める。

① 必要な場合には、薬剤師、専門医等に確認する。

② 臨床研修医の場合、処方の点検方法を各病院で決めておくことが望ましい。

③ 薬品の特性を十分に理解しておく。

① 説明不足はトラブルの要因となる。処方開始時と変更時には、患者に与薬内容について

適切な説明を必ず行う。

②患者に初めて処方する薬品については、服用法と頻度の高い副作用等を説明する。

③ 副作用発生時の対応を説明し、指導する。

※EBM(科学的根拠に基づく医療):不確かな経験や直感によらず、科学的な根拠に基づ

いて最適な医療・治療を選択し、実施していくための方法

①納豆:ワルファリン

②グレープフルーツ:カルシウム拮抗剤の一部

③牛乳:ニューキノロン系、テトラサイクリン系の一部

等に注意する。

*食物アレルギー患者への投与禁忌の薬品もあるので注意する。

(1) 患者情報・患者状態の正確な把握に努める

(4) EBM※に基づき治療方針と処方内容・副作用を患者に説明する

(3) 患者の状態に合った安全・適切な薬品の選択をする

(2) 薬品の情報(用法・用量・薬効・警告・慎重投与・相互作用・副作用・禁忌)の

十分な把握に努める

(5) 薬剤の効果に影響する食品

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2 処方時の留意点

手順

・法定記載事項に基づき、

正確に入力

・薬品は3文字・4文字

検索で入力

・誰でも分かるように商品名・

一般名で入力する

・類似の薬品名を選択しないよう

注意する

・間違いやすい薬品名

一覧(21,、22頁)の参照

(2)処方せん入力

(3)投与量の再確認

(1)患者確認 ・患者本人に名前を名乗っ

てもらい、電子カルテと

一致しているか確認 ・法定記載事項

①患者氏名②年齢又は生年月日

③発行年月日 ④医師名

⑤診察科又は病棟名

⑥薬品名及び分量 ⑦用法

⑧用量の入力間違いに注意する

・電子カルテ入力時、用量超過、

併用禁忌等の警告については、

処方内容を確認する

・薬品の入力間違いに注意する

1日 3回の場合は分3を選択し、

服薬回数の間違いに注意する ・服薬方法の入力

・分量の入力

・内用薬は1日量・頓服薬は

1回量で入力し、分量間違いに

注意する(g・mg)

・患者が小児や高齢者の

場合は、年齢・体重・検査

データと投与量に矛盾が

ないか確認

・桁数に注意

(4)薬品名の再確認

・剤型・規格単位

(含有量)の選択

・複数の単位が登録されている

薬品に注意をする

・同姓同名・類似名に注意し、

患者誤認を防ぐ

・過量投与を防ぐ

方法 事故防止のポイント

「フロー図」

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① 患者本人に名前を名乗ってもらうなど、患者と電子カルテの患者氏名とが一致しているか

確認する。

② 同姓同名又は類似名に注意する。

患者認証を十分行う。

① 処方は処方せんの法定記載事項に基づき、確認しながら正確に入力する

(処方せん及び診療録に入力。変更時には、変更した指示を入力あるいは指示票に

入力)。

〔処方せんの法定記載事項〕

ア 患者氏名

イ 年齢又は生年月日

ウ 処方せん発行年月日

エ 医師氏名

オ 診療科又は病棟名

カ 薬品名及び分量

キ 用法(1日1回朝食後等)

ク 用量(7日分等投与日数)

② 薬品名は3文字・4文字検索で選択し類似薬品に注意する。

(1) 患者確認を確実に行う

(2) 処方せん入力を正確に行う

ワンポイント

① 患者誤認が多い操作方法

・他患者カルテを展開したまま、当該患者の処方を

入力する

・患者カナ検索(患者氏名をカタカナ入力し検索す

る方法)

・IDを直接入力(数字の誤入力)

② 同姓同名患者が複数存在する場合

・生年月日を確認する

・同姓同名患者リスト等を活用し確認する

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ワンポイント

・散剤は成分量と製剤量に注意する

・都立病院では成分量入力が一般的である

例:紹介状やお薬手帳に下記のように記載されていた場合

Rp:テグレトール細粒 50% 1.2g 1 日3回 30 日分

上記をこのまま電子カルテで入力すると、テグレトール細粒の入力単位が「㎎」で

ある場合は、次のような処方になる。

Rp:テグレトール(500 ㎎/g)成分量 1200 ㎎

紹介状やお薬手帳の記載がテグレトール細粒の製剤量表示であるなら、

必要な成分量は 600㎎である。1200㎎と入力してしまうと、2 倍量が

処方されることになり、大変危険である。

③ 内用薬の分量は、一日量で、頓服薬の分量は 1回量で入力する。

④ 適切な服用方法を入力する。

⑤ 入力時は、3文字・4文字検索し、薬品選択時の間違いに気を付ける。

入力時、併用禁忌、用量超過等の警告については、処方内容を確認する。

① 患者が小児や高齢者の場合、年齢・体重・検査データと投与量に矛盾がないか確認する

(電子カルテの警告については、処方内容を確認する)。

② 桁数の誤りによる処方事例が多い。電子カルテでは「0」を 1 つ多く入力してしまうことが原

因となる。また、小数点が抜けてしまう桁違いにも注意を要する。

③ mgとg等の単位を確認する。

④ 持参薬等では院内採用薬と規格が異なる場合があるので、注意して投与量を確認する。

例):セルシン(2㎎)3T 分3 毎朝・昼・夕食後 14日分

ニトロール R(20mg)2C 分2 朝夕食後 28日分

ジゴシン散(1㎎/g)0.25㎎ 分1 朝食後 14日分

プリンぺランシロップ(0.1%)15㎎(15mL) 分3 毎朝・昼・夕食前 7日分

ブスコパン(10mg)2T 腹痛時屯用 5回分

(3) 投与量の再確認を行う

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① 間違いやすい薬品名に注意する。(※間違いやすい薬品名 21~22頁参照)

① 他院又は他科の併用薬品に関して、重複投与又は相互作用がないことを確認する。

② 処方が配合禁忌になっていないか確認する。

③ 薬の成分(卵白由来等)を確認し、アレルギーとの関連に留意する。

④ 休薬期間が設定されている等、特殊な投与方法の薬品については特に注意する

(例えば関節リウマチのメトトレキセートは連日投与しない)。

(4) 薬品名の再確認を正確に行う

(5) その他の注意事項

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3 医師による指示出し時の留意点

「フロー図」

手順 方法 事故防止のポイント

① 指示事項に基づき、正確に入力する。

〔指示事項〕

ア 薬品名(規格) イ 1回投与量 ウ 1日投与回数 エ 投与時間

オ 投与方法(内用、外用等) カ 投薬回数 キ 指示の日付と時刻

ク 実施(服用開始・変更・終了)の日付と時刻

ケ 医師の氏名の入力又は署名

① 口頭指示は、原則行わない。緊急時などのやむを得ない場合、指示を出した医師は、院内

のルールに従った上で、早急に指示票・診療録に記載する。

② 口頭指示を受けた者は、指示内容をメモした上で復唱・再確認する。

③ 麻薬、向精神薬、抗がん剤等重要な薬品を変更する場合には、看護師に連絡し、患者及

び家族にも説明する。

(1)指示入力 ・指示事項に基づき、

正確に入力

(2)指示伝達

・口頭指示

・指示受け忘れがないよう

コミュニケーションをとる

・指示簿に入力し、

担当看護師に伝達

・指示事項

①薬品名 ②1回投与量

③投与回数 ④投与時間

⑤投与方法(内用・外用)

⑥投与日数

⑦指示の日付と時刻

⑧実施(開始・変更・終了)の

日付と時刻

⑨医師名のサイン

・記載・入力間違いに注意する

・口頭指示は原則行わない

・やむを得ない場合は、指示医師は

院内ルールに従った上で、早急に

指示簿に入力する

(1) 与薬指示は、分かりやすく処方せん及び診療録に記載・入力する

(2) 指示伝達は、確実に行う

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4 看護師の指示受け時の留意点

「フロー図」

手順 方法 事故防止のポイント手順

① 原則として、患者情報を把握している担当看護師が受ける。

〔確認内容〕

ア 患者氏名 イ 薬品名 ウ 1回投与量 エ 投与時間

オ 投与方法(内服・舌下・坐薬・外用)

カ 新規・継続・変更(服用開始日含む)

① やむを得ず口頭で指示を受ける場合は、受け手は必ず「口頭指示受け」専用の確認用紙

に記載し、記載内容を復唱、再確認する。

② 口頭指示内容は看護記録に明記し、速やかに指示医に入力を依頼する。

① 後発医薬品の採用、切替が進んでいるため、院内の採用情報(DI情報(Drug Information)

など)について、薬品名、規格、剤型等を十分に確認しておく。

② 薬品名、規格等に不明な点がある場合は、指示を出した医師又は薬剤科へ確認する。

(1)指示内容確認

・患者氏名、薬品名、1回投与

量、投与時間、投与方法(内

服・舌下・坐薬・外用)、新規・

継続・変更の確認

・原則として、患者情報を

把握している担当看護師が

受ける

・原則、口頭指示は受けない

・指示医は速やかに

診療録に入力する

・口頭指示を受ける者は、指示

内容を「口頭指示受け」専用の

確認用紙にメモした上で、記載

内容を復唱・再確認

(2)口頭指示

(1) 指示内容を確認する

(2) 指示内容は、診療録記載を原則とし、口頭指示は極力さける

(3) 最新の採用薬情報を確認する

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1 処方鑑査時の留意点

「フロー図」

手順 方法 事故防止のポイント

第2 調剤時の留意点

(3)薬袋作成 ・作成後に再確認する

・必要に応じて過去の照会

記録も参考にする

・処方医師が不在の場合の

疑義照会ルールを各病院で

取り決めておく

・処方医師に確認

・照会内容、照会者名、

回答者名を処方せんに

記載

(2)疑義照会

・調剤薬は特定できるか

・用法・用量は適正か

・禁忌はないか

・併用薬との相互作用は

ないか

・重複している薬品は

ないか

・配合変化がないか

・用法・用量は、規格・剤型が

複数ある薬品については

特に注意する

・間違いやすい薬品のリストを

作成しておく

(1)処方の適正確認

・慎重に作成

(下記①~⑥を印字する)

①患者氏名

②薬品名

③用法

④用量

⑤使用上の注意

⑥保管方法

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① 調剤薬は特定できるか、用法及び用量は適正か、禁忌はないか、併用薬との相互作用は

ないか、重複している薬品はないか、配合変化はないか確認する。

② 用法・用量は、規格・剤型が複数ある薬品については特に注意する。

③ 間違いやすい薬品のリストを作成しておく。

① 処方医師に疑問点は確認する。

② 疑問点を照会後、照会内容、照会者名、回答者名を処方せんに記載しておく。

③ 必要に応じてカルテや過去の照会記録も参考にする。

① 薬袋は、患者が調剤した薬を正しく服用するための情報手段なので、慎重かつ正確に作

成する。

② 患者氏名、薬品名、用法、用量、使用上の注意及び保管方法等を分かりやすく記載する。

③ 作成後に再確認する。

(1) 処方せんの内容が適正か確認を行う

(2) 疑義照会

(3) 薬袋作成

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2 調剤時の留意点

「フロー図」

手順 方法 事故防止のポイント

(1)薬の確認

(2)処方せんへの

記載

・薬品名、規格

及び含有量

・投与量・用法

・取り出すとき、数えるとき、

戻すときに薬品名、規格を

確認する

・取り違いやすい薬品は、

近くに配置しない

・薬品棚や装置瓶に、常用量・

小児薬用量・濃度表示

及びその他の注意事項を

記載する

・特に注意を要する薬品は、間

違い防止の対策を講じる(注

意喚起の印を付ける等)

・調剤者、調剤日を記載する

・特殊な調剤方法をした場合は、

その旨を処方せんに記載する

・散剤及び

水薬量表示の確認

・散剤鑑査システム、水薬鑑査シ

ステムを適正に使用する

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ワンポイント

① 取り違いやすい薬品は、近くに配置しない

② 薬品棚及び装置瓶には薬品名のほか、常用量、小児量、倍散

及びその他の注意事項を記載しておく

③ 糖尿病薬や名称が類似した薬品等、特に注意を要する薬品には

間違いを防止する対策を講じる

① 投与量が適正か、用法と合っているかを確認する。

② 取り出すとき・数えるとき・戻すときに薬品名、規格を確認する。

③ 薬品棚から取り出した薬について、処方せんの薬品名と規格とを照合する。

④ 装置瓶への充てんは、調剤台で1種類ずつ慎重に行う(原則他の薬剤師と確認。又は鑑査

システムを利用する。)。

⑤ 散剤鑑査システム、水薬鑑査システムを適正に使用する。

① 調剤者、調剤日を記載する。

② 特殊な調剤方法をした場合は、その旨、処方せんに記載し、さらに院内ルールに従い、

次回調剤時に調剤情報を把握できるようにする。

(2) 処方せんへの記載を確実に行う

(1) 薬品名・規格及び含有量、投与量・用法を正確に確認する

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3 最終鑑査時の留意点

「フロー図」

手順 方法 事故防止のポイント

(1)処方せん記載

事項の確認

・散剤、水薬は秤量値と

総量の計算とに間違い

がないか確認する・分

包数の確認

・分包誤差・水薬瓶の目

盛り表示

・異物混入

①患者氏名 ②年齢又は

生年月日 ③処方せん

発行年月日 ④医師名

⑤診療科・病棟名

⑥薬品名・規格

⑦用法 ⑧用量

・処方せんを見てから薬品を

確認する

・色調、性状等も確認する

・患者名はフルネームで確認

する

・処方せん記載内容に間違い

がないか確認する

(2)処方内容確認

・記載内容の誤りは

ないか

・薬袋への入れ間違い

はないか

・薬袋に印刷された

薬品名の確認

・薬袋総数の確認

・類似名称に注意する

・処方内容に間違いがないか

確認する

薬品名、規格、投与量、

相互作用、配合変化の

有無、薬剤の重複の有無

(3)調剤薬の確認

薬袋記載と中身の

確認

(4)添付品等の確認 ・薬剤情報提供書・お薬

手帳用シールが正しく

発行されているか確認

・必要な器具、説明書が

添付されているか確認

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① 法定記載事項に基づき調剤済みの薬品を処方せんと照合し、薬剤学的、薬理学的はもとよ

り服薬コンプライアンスも考えて鑑査する。

〔処方せんの法定記載事項〕

ア 患者氏名 イ 年齢又は生年月日 ウ 処方せん発行年月日

エ 医師氏名 オ 診療科又は病棟名 カ 薬品名・規格

キ 用法(1日1回朝食後等) ク 用量

① 薬品名・規格・投与量

② 相互作用

③ 配合変化の有無

④ 薬剤の重複の有無

ア 処方せんを読んでから調剤薬を確認する(間違いやすい薬品に特に注意する)。

イ 薬袋に必要事項が記載されているか、記載内容に誤りがないか、薬袋への入れ間違いが

ないかチェックする。

ウ 散剤鑑査システム、水剤鑑査システムの記録用紙を確認する。

① 散剤及び水薬は、秤量値と総量の計算とに間違いがないか確認する。

② 分包数の確認をする。

③ 分包誤差・水薬瓶の目盛り表示

④ 異物混入の有無を確認する(色調、性状、におい等も確認)。

⑤ 記載内容に誤りはないか。

⑥ 薬袋への入れ間違いがないか。

⑦ 薬袋に印刷された薬品名の確認

⑧ 薬袋総数を確認する。

① 薬剤情報提供書やお薬手帳用シールが正しく発行されているか確認する。

② 必要な器具、説明書が添付されているか確認する。

(1) 処方せん記載事項の確認をする

(4) 添付品等を確認する

(2) 処方内容を確認する

(3) 調剤薬を確認する

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15

4 薬を渡す時の留意点

「フロー図」

手順 方法 事故防止のポイント

(1)引換券の確認

・処方薬剤の用法・

用量・使用目的・

薬理作用・副作用等を

説明する

・患者にフルネームで

名乗ってもらい、

渡す薬を確認する

(3)服薬指導

・患者名、処方日、

引換券の番号等を

確認する

・患者の名前は職員から言わ

ず、必ず患者に名乗ってもらう

・過去の引換券を持参する

場合がある

・複数の番号が印刷された

引換券を持参される場合が

あるので注意する

(2)患者と薬の確認

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① 患者氏名、処方日、引換券の番号等を確認する。

① 処方せんの患者氏名と薬袋の患者氏名を照合する。

② 患者にフルネームを名乗ってもらい、渡す薬を確認する。

① 処方薬剤の使用目的、薬理作用、副作用等を十分理解し、患者の状況を勘案し、分かり

やすい言葉で説明する。必要に応じて、薬品を見せて患者とともに確認する。

② 薬に関する問合せ窓口及び連絡先を患者に伝える。

(1) 引換券の確認をする

(2) 患者と薬の確認をする

(3) 服薬指導

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1 与薬時の留意点

「フロー図」

手順 方法 事故防止のポイント

(1)薬品の確認

・患者が確実に

内服したか確認

(3)与薬後の

確認

・医師指示と与薬する

薬品の確認

①患者名

②薬品名

③投与量

④投与時間

⑤投与方法(内服・

舌下・坐薬・外用)

・患者の名前は職員からは言わ

ず、必ず患者から言ってもらう

・患者が名乗れない場合の確認

方法を決めておく

・同姓同名の患者の区別方法を

明確に定める

・可能な限り、患者・家族にも確

認してもらう

・初めて与薬する薬は医師が服用

開始の説明を行う

・原則として担当看護師が与薬する

・他の看護師に依頼する場合は、

5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、

どうして、どのように)で内容を

伝達し、復唱して確認する

・持参薬との重複やアレルギー、

過敏症を確認する

・薬が薬包内に残っていないか

確認する

・確実に嚥下したか観察する

・自己管理の場合、指示どおりに

内服しているか残薬の確認をする

・内服後の状態変化を早期に

察知する

・与薬者が実施欄に入力する

(2)患者の確認 ・患者にフルネームを

名乗ってもらう

・リストバンドまたはベッド

ネームを見る

・薬品の指差し呼称

第3 与薬時の留意点

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① 医師指示と与薬する薬品の確認を行う。

ア 与薬時には患者氏名、薬品名、投与量、投与時間、投与方法(内服・舌下・坐薬・外用)を

確認する。

イ 初めて与薬する薬は医師が服用開始の説明を行う。

ウ 原則として担当看護師が与薬する。

エ 他の看護師に依頼する場合は5W1Hで内容を伝達し、復唱して確認する。

② 持参薬との重複やアレルギー、過敏症を確認する。

① 患者にフルネームを名乗ってもらう。

② 名前はこちらからは言わず、必ず患者から言ってもらう。

③ 患者が名乗れない場合の確認方法を決めておく。

④ 同姓同名の患者の区別方法を明確に定める。

⑤ リストバンドまたはベッドネームを見る。

⑥ 薬品の指差し呼称を行う。

⑦ 可能な限り、患者・家族にも確認してもらう。

⑧ ダブルチェックの必要性、チェック時期などについては、

病院の規模、機能性を鑑みて、各病院で検討する。

① 薬包内に薬品が残っていないか確認する。

② 確実に嚥下したか確認する。

③ 自己管理の場合、指示どおりに服薬しているか残薬の確認をする。

④ 内服後の状態の変化を早期に察知する。

⑤ 与薬者が実施欄に入力をする。

薬品の単位には「g」「mg」「錠」以外に「瓶」「枚」などがあるので注意!

特に電子カルテの場合、単位の表示に注意する

例:①ホクナリンテープ 0.5 枚の処方の場合「0.5」と表示される

*単位「枚」を「mg」と勘違いし、0.5mg を与薬する誤り

②バンコマイシン散(500mg) 1瓶分 4の場合「0.25」と表示される

*単位「瓶」を「g」と勘違いし、250mgを与薬する誤り

(1) 薬品の確認を確実に行う

(2) 患者の確認を確実に行う

(3) 患者が確実に内服したか与薬後の確認を行う

ワンポイント

ワンポイント

指差し呼称の方法

①指で対象を指す

②指さしたものを見る

③見たものを声に出す

④言った言葉を耳で聞く

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1 与薬過誤時の対応

「フロー図」

手順 方法 事故防止のポイント

(1)全身状態観察

・担当医が誤薬内容、

今後生じうる有害事象

の可能性と対処方法の

説明

・応急処置に全力を尽くす

(4)患者・家族への

説明

・患者の身体・精神上の

異常の有無の観察

・必要に応じて、他の診療科や

専門医への協力を求める

・EMコール等、病院の総力を

挙げて最善を尽くす

・担当医は診療録・処方せん等

から事実関係を調査する

・担当医不在の場合は、

上席医が対応する

・誤薬した薬品は全て保管する

・必要時、上席医師・関係した

部門職員が説明する

(2)連絡

(3)処置

(5)診療録に記録

・誤薬内容、一般状態を

担当医に報告

・担当医は必要な処置を

指示

第4 与薬過誤時の対応

・対応完了後、診療録に

事実経過を記載

・患者・家族への説明内容等

も記録する

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① 患者の身体・精神上の異常の有無の観察を行う。

① 誤薬内容・一般状態を担当医に報告する。

② 担当医は必要な処置を指示する。

① 応急処置に全力を尽くす。

② EMコール等、病院の総力を挙げて最善を尽くす。

③ 必要に応じて、他の診療科や専門医への協力を求める。

① 担当医は誤薬内容・今後生じうる有害事象の可能性と対処方法の説明を行う。

② 必要があれば、上席医師・関係した部門職員が説明する。

① 対応完了後、診療録に事実経過を記載する。

② 患者・家族への説明内容等を診療録に記録する。

(1) 全身状態の観察を行う

(2) 速やかに連絡を行う

(3) 処置を行う

(4) 患者・家族へ説明を行う

(5) 診療録に記載する

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1 名称が類似している医薬品名

①名称

アテレック アレロック

アスベリン アスペノン

アモキシシリン アモキサン

オメプラール オルメテック

グリミクロン グリチロン

エビスタ エビプロスタット

トランサミン トラベルミン

テオドール テグレトール

②名称と薬効(類似している薬品) ③名称と薬効 (正反対な薬品)

ガスコン ガスロンN

ワンアルファ アルファロール

テグレトール リボトリール

フェルム フェロミア

テオロング テオドール

2 外観が類似している薬品

①外観 ②外観と薬効(類似している薬品)

*各病院で採用している薬剤リストを参照する。

*後発薬に注意する。

サイトテック ザイロリック

プルゼニド プレドニン

セフメタゾン 注用セフマゾン

セフカペンピボキシル セフジトレンピボキシル

タキソテール タキソール注射液

ファンガード ファンギゾン

ラクテックD注 ラクテック注

ラベプラゾール ランソプラゾール

チウラジール チラージンS

オルメテック錠(40) プラビックス錠(75)

アダラートL錠 インデラル錠(10)

オメプラール錠(10) ナウゼリン錠(10)

バナン錠 ムコダイン錠(250)

フェノバールエリキシル デカドロンエリキシル

インクレミンシロップ トリクロールシロップ

ノイトロピン錠 ボルタレン錠(25)

ノイトロピン錠 クリノリル錠(100)

ガスター錠(20) オメプラール錠(10)

フェマーラ アリミデックス

アルサルミン細粒(1.0) セルベックス細粒(0.5)

イトリゾールカプセル(50) フルコナゾールカプセル(100)

ビオフェルミン(1.0) ラックビーN(1.0)

間違いやすい薬品

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1 名称、3文字一致 2 名称、中間3文字一致

3 電子カルテ入力時の間違い

錠(正)→mg(誤) メジコン

g→mg アスピリン、アセトアミノフェン

mL→mg シロップ、液剤は通常はmL処方が一般的

包→g 漢方薬剤、小児への投与

4 外用薬と内用薬

5 処方量の間違い

1回量と1日量

・電子カルテの処方カレンダーに反映させる場合注意

例:今日は夕食後のみ、明日からは1日量で処方する場合、処方量を

変えないと1回量を間違える

1回分と全量

・頓服薬:1回分で処方し、回数を指示する

例:ナウゼリン錠(10)2錠2回分→1錠2回分の間違い

・外用薬:全量処方も可能

例:カトレップ5個5回分→25個調剤されてしまう。

カトレップ5個のみで処方可能

成分量と製剤量

・散剤は成分量処方が都立病院では一般的

*ワンポイントアドバイス テグレトールの例(5頁)を参照

タキソール タキソテール

ノルバスク ノルバデックス

マイスリー マイスタン

レスタミン セレスタミン

ボルタレン坐薬(25mg) ボルタレン錠(25mg)

ナウゼリン坐薬(10mg) ナウゼリン錠(10mg)

電子カルテ入力時に間違いやすい薬品

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医療事故予防マニュアル[医療行為別シリーズ:№2]

点滴ルートからの

感染予防

平成29年 月改訂(案)

東京都病院経営本部

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はじめに

医療事故予防マニュアル「医療行為別シリーズ」の第2作目は、点滴ルート

からの感染予防に必要な事項をできるだけコンパクトにまとめたものとして、

平成15年2月に作成され、平成22年3月に、改訂を行いました。

この度、ラインの固定方法に関して現在行われている方法に修正し、写真の

差し替えを行うなど、現在実施されている感染予防対策に合わせました。

今後とも、本マニュアルを基本として、各病院、各部署において、適切な点

滴ルートからの感染予防対策を推進されるよう願うものです。

平成29年 月

都立病院医療安全推進委員会 委員長

目 次

平成 15年 2月作成

平成 22年 3月改訂

平成 29年 月改訂

目 次

第1 手指衛生

1 原則・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3 手指衛生を行う場面・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 4 スキンケア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 5 その他の注意・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

6 手洗いの手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 7 擦式手指消毒の手順・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

第2 皮膚の消毒 1 末梢点滴部位の消毒・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 2 中心静脈カテーテル挿入時・ポート使用時の消毒・・・・ 5 3 消毒剤の注意事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

第3 薬剤の混合(ミキシング)と点滴ルートへの接続方法 1 薬剤のミキシング・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 2 点滴ルートへの接続方法・・・・・・・・・・・・・・・ 6

第4 ルートにおける感染防止 1 末梢点滴ライン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 2 中心静脈カテーテル・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 3 インラインフィルターの使用について・・・・・・・・・ 8

第5 小児領域におけるルートの感染防止 1 末梢点滴ライン(留置針)・・・・・・・・・・・・・・・ 9 2 中心静脈カテーテル・・・・・・・・・・・・・・・・・10 3 臍帯動静脈カテーテル・・・・・・・・・・・・・・・・10

〔参 考〕 消毒薬の選択と使用方法・・・・・・・・・・・・・・・・・11

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13

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1

第1 手指衛生

1 原則

手指衛生は感染予防対策の基本である。血液・体液・排泄物等及びそれら

に汚染された物に接触した後は、手袋の着用の有無に関わらず、手指衛生を

実施する。

2 定義

CDC Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings 2002

普通石鹸(非抗菌石鹸)と流水による手洗い

普通石鹸を用いた手洗いによって汚れや細菌叢を除去することができる。

手の常在菌数を減らすために擦式手指消毒

薬を手指に擦りこむこと

手指消毒薬の効果はアルコールの種類、濃度、接触時間、使用量等や

使用時に手が濡れていたかどうかによって影響される。

消毒薬配合の製剤と流水による手洗い

手指の細菌叢を除去し常在菌叢を減少させ

る手洗い消毒または擦式手指消毒

手荒れのリスク減少を考え、ブラシを使用しない方法が推奨されている。

擦式手指

消毒

手洗い消毒

手術時

手指消毒

※ 目に見える汚れがない場合、臨床の場において擦式手指消毒剤を

用いた手指消毒か手洗いを行う。

※ 目に見える汚れ(蛋白性物質等)がある場合、手洗いを行い、

その後、必要時は擦式手指消毒剤による手指消毒を行う。

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2

3 手指衛生を行う場面

場 面

手洗い トイレの後

配膳の前

勤務開始前、終了時

目に見える汚れのあるとき など

手指消毒

・擦式手指

消毒

・手洗消毒

患者に接触する前後

同一患者に行なわれる処置と処置の間

(おむつ交換→吸引など)

他の患者に接する前

血液・体液・排泄物等に触れた後

創傷処置・カテーテル留置部のケアの前後

点滴処置・侵襲的な医療行為を行なう前

微生物汚染の可能性のある器具や物品に触れた後

手袋を外した後 など

<WHO手指衛生5つのタイミング>

1.患者に触れる前

2.清潔/滅菌操作の前

3.体液に暴露された可能性のある場合

4・患者に触れた後

5.患者周辺の物品に触れた後

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3

4 スキンケア

手荒れが起きるとその部分に細菌が定着して交差感染の危険性が増加する

ため、日常からハンドローションやハンドクリームを使用し、手荒れの予防、

皮膚の保護に努める。

(1) ハンドクリームやハンドローションは、チューブ式形態で個人用とする。

(2) 共用で使用する場合は、ポンプ式形態のものを選択する。

5 その他の注意

(1) 爪は短くする。

(2) ユニホームは袖の短いものを着用する。

(3) 腕時計は手首まで手洗いができないため外す。

(4) 指輪は指輪の下の皮膚に微生物の定着が著しいため外す。

(5) 石鹸は液体石鹸を使用し継ぎ足しをしない。

(6) 固形石鹸は、使用後十分乾燥させる。

(7) 手洗い場所にはペーパータオルを設置し清潔に取り出す。

(8) シンク周囲を水はね等で汚染しない。

(9)つけ爪、ネイルアートは外す

6 手洗いの手順

※ 手荒れがある場合には、手袋を着用する。

※ 手荒れがある場合には、皮膚科を受診する。

爪は短く

時計はしない

指輪はしない

①水で手を濡らす

②石鹸を手にとる

③手のひらで泡立てる

(5回程度)

④手背を洗う

(5回程度)

⑤指間を洗う

(5回程度)

⑥親指を洗う

(5回程度)

⑦指先を洗う

(10回程度)

⑧手首を洗う

(5回程度)

⑨水で洗い流す

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4

7 擦式手指消毒剤を用いた手指消毒の手順

⑩ペーパータオルで全体

が乾燥するまでしっかり拭

①1~2回押して液をとる

④手のひらになじませる

⑤手背になじませる

⑥指の間になじませる

③指先になじませる

⑦親指になじませる

②爪先になじませる

⑧手首になじませる

⑨手全体がなじみ、乾燥し

たことを確認する

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第2 皮膚の消毒

1 末梢点滴部位の消毒

2 中心静脈カテーテル挿入時・ポート使用時の消毒

※ ポビドンヨードによる消毒後、ハイポアルコールを使用しない。

3 消毒剤の注意事項

ア 消毒用エタノールが最も殺菌効果が高く、短時間の消毒に適している。

イ イソプロパノールは同程度の殺菌力を持ち安価であるが、局所の刺激性

が強い。

ウ アルコール又はヨード禁忌の場合、クロルヘキシジングルコン酸塩又は

クロルヘキシジングルコン酸塩液、ベンザルコニウム塩化物液等を使用す

る。

〔消毒方法〕

① 0.5%以上のクロルヘキシジングルコン酸塩(アルコール含有)または、

10%ポビドンヨードで中心から円を描くように十分塗付する。1回目で

皮膚の汚れを除去し、2回目以降で消毒する。

② 消毒後、消毒部位と消毒剤との接触時間を十分にもつ(2~3分程度、

乾燥するまで)。

〔消毒方法〕

充分に消毒剤を含んだ脱脂綿で点滴部位を拭き、乾いた時点で針を刺す。

※拭いた後、血管の位置を確認するために、再び指先を皮膚に触れる

ことは厳禁である。

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第3 薬剤の混合(ミキシング)と点滴ルートへの接続方法

1 薬剤のミキシング

(1)作業台はアルコール綿又はアルコール含有清拭用クロス(消毒用エタノ

ール又は 50~70%イソプロパノール。以下同じ。)で清拭し、清潔区域内

で作業する。

(2)薬剤のミキシング前に、手指消毒をし、清潔な手袋を装着する。

(3)ボトル類は、未開封・開封にかかわらず、注射針の刺入部分をアルコー

ル綿で消毒し、注射針を刺す。

(4)薬剤をミキシング*する際は、注射針の刺入回数を最低限に抑え、注射

器及び注射針は、1ボトル毎に使用し廃棄する。

(5)アンプルは、カット前にカットする部位をアルコール綿で消毒する。

(6)ミキシング済みの輸液ボトルは、できる限り早期に使用する。 *薬剤のミキシングは、無菌調剤(クリーンベンチ内等)するのが

望ましい。

2 点滴ルートへの接続方法

(1)点滴ルートの接続前に手指衛生をし、清潔な手袋を装着する。

(2)点滴ボトルは、アルコール綿などで清拭したトレイで運ぶ(1患者1ト

レイ)。

(3)持続点滴で点滴ボトルを交換する場合、刺入部分をアルコール綿で消毒

し、接続する。

(4)点滴ルート側管からの接続について

ア 閉鎖式ライン(一体型の回路)を使用する場合

・側管注入口をアルコール綿でごしごし擦るように消毒する。

イ やむを得ず開放式ライン(三方活栓で接続した回路)を使用する場合

・点滴終了後、滅菌済みキャップをする。

・液溜まりがある場合には残液を廃液する(オーバーフロー等)。

・保護栓を使用している場合は、点滴終了後に滅菌済み保護栓と交換する。

*三方活栓は細菌が繁殖しやすいので、原則使用しない。

〔耐貫通性感染性廃棄物廃棄容器の使用における注意〕

・清潔野から離し、足踏み式スタンドを設置するのが望ましい。

・足踏み式スタンドを設置しない場合にも、必ず蓋はかぶせる。

・内容物は7~8分目位になったら密封し、所定の場所に置く。

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第4 ルートにおける感染防止

1 末梢点滴ライン (1)挿入時の操作

清潔な手袋(滅菌の必要はない)の着用が望ましい。

(2)挿入部位

ア 上肢を第一選択部位とする。

イ 刺入部位は毎日数回観察し、カルテに状態を記載する。

→ 漏れ、発赤、腫脹、熱感、疼痛、発疹、分泌物など

ウ 抗菌薬、消毒薬の軟膏・クリームは、原則使用しない。

(3)留置針の交換

ア 72~96時間よりも頻回に末梢ラインを交換する必要はない。 イ 感染源と考えられる場合の交換時期は、臨床的に判断する。

(4)点滴セット

ア 点滴セットの交換は留置針交換時期に行う。留置針の交換が行われない場合には、96時間以内の交換が望ましい。

イ セット交換は、アルコール綿を用い、清潔操作下で行う。 ウ セットは、閉鎖式ライン(一体型の回路)の使用が望ましい。

エ ヘパリン生食ロックないし生食ロックは、必要最低限にとどめる。

オ 輸血用血液、血液製剤、脂肪乳剤は、別ルートからの投与が望ましい。

同一ルートから投与せざるを得ないときは、投与終了時、生食を用い側管注用部品、延長チューブ、留置針内を洗い流す。

カ 輸血用血液、血液製剤は、4時間以内に点滴投与を完了し、点滴ルートを交換することが望ましい。

キ 脂肪乳剤の単独注入の場合は、12時間以内に点滴投与を完了し、点滴ルートを交換することが望ましい。

〔ヘパリン生食ロックと生食ロックについて〕

CDC ガイドラインでは、生食ロックに言及はしているものの、感染防

止については一定の見解を示していない。従って、ヘパリン生食ロック

か生食ロックかについては、各病院の判断に委ねる。

〔留置針、延長チューブ、カテーテル内への血液の逆流について〕

ヘパリン生食ロックないし生食ロックを行った場合、留置針や延長チ

ューブ、カテーテル内に血液が逆流することがある。逆流した血液の放

置は微生物の増殖を助長することになる。一般的な延長チューブは、血

液が逆流しやすいことから、クレンメ付き延長チューブを留置針に接続

して使用した方が血液の逆流は少ないとされている。

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2 中心静脈カテーテル (1)挿入時の操作 キャップ・マスク・滅菌手袋・滅菌ガウン・大きめの滅菌ドレープを使

用し、無菌操作(マキシマルバリアプリコーション)で行う。

(2)挿入部位

ア 成人の場合は、中心静脈アクセスにはやむを得ない場合を除き大腿静脈の使用は避けること。

イ 穿刺部位の剃毛は必要ない。除毛が必要な場合は、医療用電気クリッパーを用いる。

ウ カテーテル刺入部のドレッシングについては、フィルム型の場合、曜日を決めて週1回交換する。ガーゼ型の場合、刺入部の観察を行い、少なくとも 48 時間ごとにはガーゼ交換を行う。

エ 抗菌薬、消毒薬の軟膏・クリームは、原則使用しない。

(3)カテーテルの交換 ア 交換時の偶発症を回避するため感染の徴候がない限り必要ない。

イ カテーテル感染が疑われる時は、直ちに抜去し、経過を観察する。なお、

カテーテル感染の診断のためには血液培養を最低 2 セット採取する。

(4)点滴セット(「1 末梢点滴ライン (4)点滴セット」の項を参照) ア 輸血用血液、血液製剤及び脂肪乳剤は、末梢ルートからの投与が望まし

い。

イ 輸血用血液、血液製剤及び脱脂乳剤を中心静脈カテーテルを用いて投与せざるを得ない場合は、終了時、側管注部位から患者側までを生食で十分洗い流す。

3 インラインフィルターの使用について

末梢静脈炎の発生頻度を低下させることが実証されている。また、感染予防、ガラス片や空気流入防止に有効であるとされる。 *一般に点滴で使用されるフィルターは孔径が 0.22μmなので、使用できない薬剤があることに留意する。(リポ化製剤、脂肪乳剤、G-CSF 製剤、抗がん剤等)

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第5 小児領域におけるルートの感染防止

1 末梢点滴ライン(留置針)

(1) 穿 刺

ア 手指衛生を行う。

イ 刺入部の皮膚消毒は、アルコール綿で行う。

ウ 留置針の固定を行い、穿刺部位が四肢の場合シーネ固定する。

(2) 点滴ルート

・できるだけ閉鎖式ライン(一体型の回路)を使用する。延長チューブ

を使用する場合はロック付きのチューブを用いる。

(3) 三方活栓からの注入(やむを得ず使用する場合)

ア 手指衛生を行う。

イ アルコール綿で注入口を消毒する。

ウ 薬剤注入後、注入口の残液を排液し、滅菌済み保護栓をする。

(4) ヘパリン生食ロック・生食ロック

・正しい手技(手指衛生、アルコール消毒、ヘパリン生食又は生食の注入、

滅菌済み保護栓をする)でロックする。

(5) 留置後の刺入部の点検

・刺入部の観察で腫脹、発赤、液漏れがないか、シーネ固定が緩んでいな

いか、巡回ごとにチェックする。

・血管が細いため、点滴ルートの確保が困難

・血管が細いため、穿刺針、留置針、カテーテル類が細い

・体動が激しくシーネなどによる固定が必要

・体動による留置針からの液漏れ、自己抜去が頻繁に起こりやすい

・輸液量が少なく、輸液ポンプ、シリンジポンプを使用することが多い

・薬剤の三方活栓、側管からの投与量が少ない

小児領域における点滴ルートの特殊性

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10

2 中心静脈カテーテル

(1) 穿 刺

ア 手指衛生の後、滅菌手袋を使用する。

イ 刺入部の皮膚消毒はポビドンヨードを使用する。

ウ 刺入部のカテーテルの固定は、滅菌した絆創膏で行い、透明フィルム

型被覆剤で覆う。

(2) 点滴ルート

ア できるだけ閉鎖式ライン(一体型の回路)を使用する。延長チューブ

を使用する場合はロック付きのチューブを用いる。

イ 輸液用フィルターを使用する。

(3) 三方活栓からの注入

・長期間使用するため、できるだけ三方活栓からの注入は避ける。

(4) へパリン生食ロック

・へパリン生食ロックは行わない。ただし、点滴量が1mL/h以下の場

合、血液による凝固を防ぐため点滴液にヘパリンを加える。

(5) 留置後の刺入部の点検

ア 刺入部から血液や体液の漏れが見られた場合には、ポビドンヨードで

消毒する。

イ 透明フィルム型被覆剤は汚れたり緩んだり、密着性が損なわれたとき

に交換する。

ウ 交換時刺入部の消毒をポビドンヨードで行う。

3 臍帯動静脈カテーテル

(1) 挿 入

ア 手指衛生をする。

イ 臍部とその周りの皮膚をポビドンヨードで消毒する。

ウ 滅菌手袋をして、カテーテルを臍帯動静脈に挿入する。

エ カテーテルの挿入された臍帯動脈、臍帯静脈を、それぞれ糸で結紮し

固定する。

(2) 点滴ルート

・臍帯動脈カテーテルには動脈圧ラインを、臍帯静脈カテーテルには点滴

ラインを接続する。

(3)~(5)は、「2 中心静脈カテーテル」に準ずる。

・臍帯静脈カテーテルは感染を起こしやすいので、点滴ルートとしては注

意が必要である。

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11

消毒薬の選択と使用方法 1 滅菌と消毒

(1)滅 菌

・芽胞を含め、全ての微生物を殺滅する目的で、手術用器具、体内に留置する管や器具などに対して

行い、医療器具の材質に応じて、蒸気滅菌、乾熱滅菌、ガス滅菌、過酸化水素低温プラズマ滅菌が

行われる。

・加熱は最も強力な滅菌法で、芽胞も死滅する。

(2)消 毒

・手指などの生体や物品に対して行うが、その目的は感染症を引き起こさない程度に微生物を取り除

くことにある。従って、以下の3点及び消毒剤の性質を考慮して、消毒の具体的方法を決める。

ア 病原体の生存性

微生物の性質によって違いがある(詳細は、「東京都衛生局 感染症の調査と危機管理のための

マニュアル(2000年 3月)」を参照のこと)。

イ 消毒水準からみた消毒薬の選択

Spauldingは次の三つに分類している。

ウ 汚染の起こりやすさ

病原体の分布・感染経路によって、それぞれ何に汚染が起こりやすいかが異なる。また、手指や

器具の性状や凹凸など、洗浄や清拭の難易によっても汚染の起こりやすさが異なる。手指衛生に関

しては、「第1 手指衛生」の項を参照のこと。

2 消毒薬の選択

消毒する対象の性質と想定される病原体の性質とを勘案して決める。

〔消毒薬の対象物とスペクトラム〕 ※標準的な使い方を表にまとめたものである。

〔対象物〕・・・・・○:使用可能、△:注意して使用、×:使用不可

〔スペクトラム〕・・○:有効、△:効果が弱い、×:無効

消毒のレベル 定義 主な消毒薬

高レベル消毒 細胞芽胞が多数存在する場合を除き、全ての微生

物を死滅させる。

グルタラール、フタラール、過酢酸

中レベル消毒 細胞芽胞以外の結核菌、栄養型細菌、多くのウィ

ルス、真菌を殺滅させる。

アルコール、ポビドンヨード、次亜塩素酸

ナトリウム

低レベル消毒 ほとんどの細菌、一部のウィルス・真菌は殺滅させ

るが、結核菌や細菌芽胞は殺滅できない。

クロルヘキシジングルコン酸塩、第四

級アンモニウム塩、両性界面活性剤

参 考

グルタラール × × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ヨウ素剤:ポビドンヨードなど ○ ○ × ○ ○ △ ○ ○ ○ ○ △ ○塩素系:次亜塩素酸ナトリウムなど × × △ ○ ○ △ △ ○ ○ ○ ○ ○アルコール類:消毒用エタノールなど ○ × ○ ○ ○ × ○ ○ △ ○ × ○クロルヘキシジングルコン酸塩 ○ × ○ ○ ○ × × △ △ × × ×ベンザルコニウム塩化物液など ○ ○ ○ ○ △ × × △ △ × × ×両性界面活性剤:塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなど ○ ○ ○ ○ △ × △ △ △ × × ×

手指・皮膚

結核菌

緑膿菌

消   毒   薬

ウイルス一

HBV

HIV

細     菌一般細菌

MRSA

芽胞菌

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3 消毒薬の使い方

消毒薬の殺菌スペクトラムが合っていても、使用条件によっては殺菌力が弱まることがある。消毒剤

の濃度、消毒時間との関係などを考慮する。

(1)消毒剤の使用濃度 ※標準的な使い方を表にまとめたものである。

*1 皮膚・粘膜への毒性が強い。また、蒸気による結膜炎・鼻炎もあるので、扱う場所の換気が重要である。

*2 次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨードは有機物があると濃度が低下する。

*3 アルコール類は蒸発があるので、有効な濃度であることが必要である。アルコール綿は十分にアルコールで湿っ

ていることを確認する。

*4 クロルヘキシジンは硫酸イオンがあると沈殿するので水との接触を避ける。

*5 ベンザルコニウム塩化物は経口毒性が強いので誤飲に注意する。

(2)消毒薬の作用温度

温度が低くなれば殺菌力は落ちる。一般に、消毒薬の殺菌力試験は 20℃で行われているので、それ

以下の場合は殺菌力を確認する必要がある。

(3)消毒薬の作用時間

それぞれの消毒薬によって作用させる時間が決められている。

〔アルコールの殺菌効力〕

・滅菌脱脂綿 250mg に 50%イソプロパノール、消毒用エタノールを 1mL 及び 4mL しみ込ませ 4 時間と 24 時間放置し、

セラチアの培養液と接触させ、殺菌効果を調べたもの (「東京都不明疾患調査班報告書(2000年)」より)

〔消毒用エタノール〕 〔50%イソプロパノール〕

〔開放条件でのエタノール綿の残存アルコール濃度〕

・消毒用エタノールをカット綿 1 枚に 2~6mL含ませたものを放置する。残存エタノール量は放置時間0時間後のエタ

ノール含量を 80vol%に補正して計算している。(「院内感染予防対策 Q&A200(2001年)」より(網掛け、部分加筆))

※表中の数字は、

菌陽性本数/試験本数

※表中の単位は vol%

※70 vol%以上(網掛け)が有効

時間 添加量 2mL 4mL 6mL

80 80 80

67.76 73.3 73.8

59.1 69.6 72.7

51.2 65.6 68.8

0時間

1時間

2時間

3時間

一  般  名 使  用  濃  度 備   考 注グルタラール 2~2.25w/v% 皮膚・粘膜には使用不可 *1

ポビドンヨード 10w/v% スクラブ法で使用 *2

ポビドンヨード・アルコール エタノールで10w/v%にしたもの ラビング法で使用 *2

次亜塩素酸ナトリウム 0.02~0.5% 金属腐食、刺激あり *2

消毒用エタノール 76.9~81.4v/v% 蒸発があるので注意 *3

イソプロパノール 70v/v%     〃 *3

クロルヘキシジングルコン酸塩 0.05~0.5w/v% スクラブ法で使用 *4

    〃 0.1~0.5w/v% 器具の消毒 *4

クロルヘキシジン・エタノール 消毒用エタノールで0.05~0.5w/v%にしたもの ラビング法で使用 *4

ベンザルコニウム塩化物液 0.01~0.2w/v% スクラブ法で使用 *5

    〃 0.1~0.5w/v% 器具の消毒 *5

ベンゼトニウム塩化物液 0.01~0.2w/v% スクラブ法で使用    〃 0.1~0.5w/v% 器具の消毒エタノール添加ベンザルコニウム塩化物液 消毒用エタノールで0.2w/v%にしたもの ラビング法で使用塩酸アルキルジアミノエチルグリシン 0.01~0.5w/v%

2mL

4時間 24時間 4時間

25℃ 4/10 5/10 0/10

35℃ 4/10 7/10 0/10

1mL 2mL

4時間 24時間 4時間

25℃ 4/10 5/10 0/10

35℃ 4/10 7/10 0/10

1mL

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13

〔参考文献〕

1 小林寛伊.吉倉廣.荒川宜親.(編) 厚生労働省医薬局安全対策課(編集協力)

エビデンスに基づいた感染制御 メジカルフレンド社 2002

2 CDC. Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings. 2002

3 CDC.Guideline for the Prevention of Intravascular Catheter-Related

Infections.2011

4 荒川宜親.(主任研究者) 分担研究:医療機関における院内感染対策マニュア

ル作成のための手引き. 平成18年度厚生労働科学研究費補助金 2007 p.39-44

5 NHS. National Evidence-Based Guidelines for Preventing

Healthcare-Associated Infections in NHS Hospitals in England.2007

6 吉田製薬文献調査チーム. Y’s Text 4th Edition消毒薬テキスト エビデンス

に基づいた感染対策の立場から 第4版 共和企画 2012

7 山口大学医学部附属病院薬剤部 尾家重治.(監修)第五版 消毒剤マニュアル

─消毒剤の特徴・使用法・使用上の留意点─ 健栄製薬株式会社 2012

8 WHO. WHO Guidelines on Hand Hygiene in health care.2009

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医療事故予防マニュアル[医療行為別シリーズ:№3]

転 倒・転 落

防止対策マニュアル

(予防から対応まで)

平成29年 月改訂

東京都病院経営本部

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はじめに

都立病院医療安全推進委員会では、この度、医療事故予防マニュアルの医療行

為別シリーズ「転倒・転落防止対策マニュアル」を改訂しました。

「転倒・転落」は、「薬剤」に次いで多く、インシデント・アクシデント件数全

体の 15.6%(平成 27年度集計)を占めています。その原因、状況は様々で、完全

に防止することは極めて難しく、中には、重大な結果をもたらす場合があります。

そこで医療者には、「転倒・転落」を未然に防止するとともに、被害を最小限にす

る対策が求められています。

今回、本マニュアルの改訂に当たって「転倒・転落」事故防止を図る上で職員

が患者さんに危険度について、共通の情報・認識を持つことが重要と考えました。

そのためには、患者さんの危険度を測る共通した評価法が不可欠であり、都立病

院で統一した「転倒・転落アセスメントスコアシート」を作成しました。

防止策は「総論」と「各論」に分け、「各論」では、この評価表に基づいて、危

険度別対応策を一つの表に掲げ、その後に、具体的な対策として場所や状況に沿

った形で、箇条書きで説明しました。ただし、小児の場合は、成人とは異なった

特徴がありますので、別に掲載しています。

また、「患者さん・ご家族へのお知らせ」では、転倒の危険性がイメージし易い

よう、イラストを加えました。「転倒・転落」が生じたときの対応も、フローチャ

ートと共に簡潔に示してあります。

倫理的配慮の必要な「身体拘束」については、まず「身体拘束をしないための

工夫・取り組み」の項を設けました。続いて、それでも身体拘束が必要と考えら

れる場合の対応として、その適応要件、方法、解除基準等を掲載しましたので、

参考資料としてご活用ください。

本マニュアルの中で示したアセスメントスコアシート、危険度別対応策は一つ

の例ですが、危険度評価及びそれに基づく対策の立案と実行は、医療従事者が共

通の認識を持って積極的に取り組んでいただきたいと思います。

そして、本マニュアルを基本として、各病院、各部署で、さらに一層の創意工

夫をされ、事故防止に取り組んでいただくようお願いいたします。

平成29年 月

都立病院医療安全推進委員会 委員長

平成 15年 2月作成

平成 21年 3月改訂

平成 29年 月改訂

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目 次

第1 転倒・転落の発生要因(状況、病状) 1 患者側の要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2 ケア提供者側の要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 3 環境(施設、設備)の要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

第2 転倒・転落防止対策

1 防止策(総論) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2 (1) 危険度評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (2) 説明 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (3) 環境の整備 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (4) 日常の注意事項 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (5) その他 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2 防止策(各論) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 (1) 転倒・転落防止のフローチャート ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 (2) 転倒・転落アセスメントスコアシート(例1,2) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 (3) 転倒・転落危険度別対応策(例) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

患者・家族へのお知らせ(例)1~3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 (4) 転倒・転落防止の具体的対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 ① ベッド及び周囲の環境 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 ② 歩行(廊下・階段)時 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 ③ 排泄介助時 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 ④ 入浴介助時 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 ⑤ 歩行補助具使用時 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 ⑥ 移動・移送時 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 ⑦ 診療放射線科での防止策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 ⑧ 検査科での防止策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 (5) 小児の転倒・転落事故防止 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 家族へのお知らせ(例)1~2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

第3 転倒・転落が生じたときの対応

1 転倒・転落発生時の対応フローチャート ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

20 2 転倒・転落発生時の看護記録の記載ポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

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参考 第1 薬剤と転倒・転落

1 薬剤と転倒との関係 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 2 転倒リスクを増す薬剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 3 対策 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 4 転倒後の問題を増す薬剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

第2 身体拘束について 1 身体拘束しないための工夫、取組・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 2 身体拘束の3原則・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 3 身体拘束の適応要件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 4 医師による評価と指示 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 5 患者・家族へのインフォームド・コンセント ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

身体拘束に関する説明・同意書(例) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 6 身体拘束時の看護 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 7 身体拘束フローチャート ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 8 身体拘束の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 9 身体拘束解除の基準 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 10 小児の身体拘束について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

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1

第1 転倒・転落の発生要因(状況、病状)

1 患者側の要因

(1)今までの生活状況及び既往疾患

:過去に転倒、失神、めまい、痙攣発作あり身体的機能

(2)身体的機能:運動・知覚障害、言語・視力・聴覚障害、骨・関節の異常(骨粗鬆症・

骨転移等の骨の病変、拘縮・変形)、筋力低下

(3)精神的機能:理解力・判断力低下、不眠・不穏、多動、徘徊等

(4)性 格:自立心強い、遠慮深い、我慢強い

(5)活動状況:滑りやすい履物・車椅子・歩行器・杖使用、移動に要介助、点滴・胃

管・尿留置カテーテル・ドレーン類による行動制限

(6)薬剤の服用:鎮痛剤・睡眠剤、降圧・利尿剤、筋弛緩剤、向精神薬等

(7)排 泄:頻尿、夜間の排尿、下痢、要介助、ポータブルトイレ使用

(8)当日の状態:発熱、貧血、脱水、検査後、手術後、リハビリ訓練中

(9)環境の変化:入院・転入後 2日以内、ベッド・トイレ・浴室設備の操作の不慣れ

2 ケア提供者側の要因

(1)リスクに対する意識が低い

(2)患者の危険度の把握が不十分

(3)監視体制の不備:離床センサー等のアラーム機器の不足、多忙

(4)入院・転入患者へのオリエンテーションが不十分

(5)睡眠剤等与薬後の観察不十分

(6)適切な履物・寝衣の選択、歩き方の指導が不十分

(7)補助具、ポータブルトイレ、点滴スタンドの選択や設置場所が不適切

(8)車椅子のストッパー操作や介助の不慣れ、安全ベルトの装着忘れ

3 環境(施設、設備)の要因

(1)ベ ッ ド:患者の身長に合わないベッドの高さ、不適切なベッド柵の使用、電動ベ

ッドの操作方法の説明不足、電動ベッドの誤操作

(2)ナースコール

・床 頭 台:不適切な位置

(3)床 の 状 態:滑りやすい材質や清掃による水濡れ、つまずきやすい敷物段差等

(4)環 境 整 備:廊下、ベッドサイド等の障害物、防火扉の不備、介助バーの不足や不適

切な設置

(5)構 造:分かりにくい表示、不適切な照明

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2

第2 転倒・転落防止対策

1 防止策(総論)

(1)危険度評価

① 転倒・転落の起きやすい要因を知っておく。

② 既往歴、現症から患者の状態を正確に把握する。

患者危険度 → 色別表示、検査伝票にも明示する。

③ 「転倒・転落アセスメントスコアシート」で評価スコアから危険度を判定し、情報を共

有する。

④ スタッフ同士の連携を強化し、チーム全体で観察する。

⑤ 患者の危険度だけでなく、病棟の状況も把握しておく。

例)重症者数、救急入院、手術件数多い。

→ ・表示等で注意喚起

・業務スケジュールの検討

(2)説明

① 患者、家族への説明と協力依頼

相手に合わせて分かりやすく説明し、指導する。

(患者・家族へのお知らせ(例)P6~P8参照)

(3)環境の整備

① 病棟内や病室等の整理・整頓、特に床頭台・オーバーテーブル等ベッドサイドの整備、

廊下の障害物の除去

② 分かりやすい表示

(4)日常の注意事項

① 観察・巡視を密にする。

② 移動中は目を離さない(安全を確認してから、目を離す。)。

③ 体位変換とトランスファーは正しい方法で行う。

④ 転倒・転落防止用品の適切な使用

⑤ 身体拘束は基準に従い、適切な方法で行う。

(5)その他

① 部署の責任者は定期的にパトロールする。

a 事故防止対策のルールが守られているか。

b 施設・設備の点検(構造物は安全か、センサーアラームは作動するか等)

② 患者アンケート調査(病院環境・設備等の説明は十分か等)

③ 再発防止策の検討

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3

2 防止策(各論)

(1)転倒・転落防止のフローチャート

〔転倒・転落防止のフローチャート〕

1 発生の防止

2 再発の防止

※「転倒・転落」が発生した場合の対応は、『第3「転倒・転落」が生じた

ときの対応』の項(P20)を参照

① 評価スコアを基に、「転倒・転落危険度別対応策(例)」(P6)を参考にして、看

護計画立案・実施・評価を行う。

*看護計画は、患者・家族とともに立案する。

② 転倒・転落の危険度の高い患者は、表示を決め職員が共通認識を持つ。

③ 患者の状態が変化した時、転倒・転落が起きた場合は、「転倒・転落アセスメント

スコアシート」を用いて再評価し、分析して再発防止策を立てる。

転倒・転落アセスメント

スコアシートによる評価

(P4-5)

予防策の立案(看護計画)

(P6)

患者・家族への

十分な説明、協力依頼

(P7-9)

職員に予防策を周知

する(情報の共有化)

・転倒・転落アセスメントス

コアシート再評価 (P4-5)

・インシデント・アクシデン

トレポート提出

再発防止策立案

職員への

周知徹底

予防策の実施と結果の記録

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1 年齢 1点 □ □ □

2

3 活動

4

5

6 認識

7

8

9

10 排泄

11

12 5点 □ □ □

13 抗不安薬・睡眠薬 3点 □ □ □

14 4点 □ □ □

15 1点 □ □ □

16 1点 □ □ □

17 2点 □ □ □

18 2点 □ □ □

4

その他薬剤

浣腸・緩下剤使用

降圧剤・利尿剤使用

環境入院・転科・転棟・転室した(48時間以内)

点滴・酸素吸入・ドレーン類あり

                  合計点数→

□排泄時見守りが必要

排泄時介助が必要

神経系に作用する薬剤

麻薬使用

抗精神病薬・抗うつ薬・気分安定薬・精神刺激薬・抗てんかん薬・片頭痛薬・鎮痛薬・制吐薬・鎮暈薬・パーキンソン薬・脳卒中薬・抗認知症薬・自律神経作用薬・筋弛緩薬等のうちめまい・ふらつき等の副作用がある薬剤

夜間トイレに起きる

2点 □ □

□理解力・記憶力の低下がある

自立心が強い

自分を過大評価する

不穏行動がある

4点 □ □

□ふらつきがある

車椅子・杖・歩行器を使用している

70歳以上

足腰の弱り・筋力低下・麻痺がある

3点 □

番号 分類 項目 スコア評価日

/ / /

(2)転倒・転落アセスメントスコアーシート(統一シート) 例 1

以前に転倒・転落したことがある(概ね3ヶ月以内)

転びそうな印象がある(看護師の直感)

1~18の項目の合計点数で、レベルⅠ・Ⅱに分類

転倒・転落リスクレベルⅠ 転倒・転落を起こす可能性がある

転倒・転落防止標準対策実施

はい

いいえ

いいえ

はい

転倒・転落リスクレベルⅡ 転倒・転落を起こしやすい

転倒・転落防止標準対策実施

及び

個別看護計画立案・実施

合計点数 0点~6点 合計点数 7点以上

転倒・転落防止標準対策(入院患者全員に必ず説明・実施する) □ベッドの位置・ストッパー・高さ(転落の恐れがある⇒最下段、通常⇒患者の足底から膝高よりやや高め)

□ベッド柵、ベッドコントローラーの取り扱い方法を患者・家族に説明

□床頭台の位置を患者と相談して設定し、ストッパーをかける

□ポータブルトイレ(必要時)の位置を設定する

□キャスター付の物品(オーバーテーブル・点滴スタンドなど)に体重をかけると危険であることを説明

□ナースコールを手の届く位置に置き、取り扱いを説明し、実際に一度押していただく

□影響のある薬剤内服している場合、転倒・転落しやすいことを説明し、ナースコールするように促す

□照明のon-offの方法、調節方法、夜間の使用法を説明

□履き物はスリッパ・サンダルを避け、踵を覆う履きなれた靴を準備していただく

□寝巻・パジャマの裾丈が長いと危険と説明

【観察 : 該当する項目をチェックし看護指示またはフローシートに反映し、次回の評価まで確認する】

□ADL・自立度の把握 □排泄頻度・時間等パターンの把握 □鎮静剤・睡眠剤等の服用後の観察

□判断力・理解力の変化を予測 □移動動作の観察 □頻回に巡視し観察

患者ID 患者氏名 年齢 性別

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(2)転倒・転落アセスメントスコアシート(例 2)

墨東病院転倒・転落アセスメントスコアシート

・該当する項目を クリックする

・評価は入院時、患者 の状態が大きく変化 した時、転倒事故を 起こした時に行う

・再評価の必要が 考えられる時に行う

0~6点 →リスクレベルⅠ 転倒・転落の可能性が ある 転倒転落防止標準対 策実施

7点以上 →リスクレベルⅡ 転倒・転落を 起こしやすい 転倒転落防止標準対 策実施および個別 看護計画立案・実施

・転倒転落標準対策を患者および家族に説明する

・観察項目を選択しフローシートで患者の状態を観察する

・当日の担当看護師が 評価を行う

5

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(3)転倒・転落危険度別対応策(例)

観察内容

①身体的機能障害 : 視力、聴力、麻痺、しびれ、骨・関節の異常(拘縮、変形など)、筋力の低下、ふらつき、突進歩行、その他

②精神的機能障害 : 認知症、見当識障害、意識障害、判断力・理解力・注意力の低下、うつ状態、不穏行動(多動・徘徊)、その他

③活動状況 : 杖・歩行器・車椅子を使用、移動時介助、姿勢の異常、寝たきり状態、付属品(点滴・胃管・ドレーン類等)、その他

④薬剤の服用 : 鎮痛剤、睡眠薬、血液凝固阻止剤、降圧・利尿剤、麻薬、血糖降下剤、抗パーキンソン薬、浣腸緩下剤、抗がん剤、

多剤併用、その他

⑤排泄の頻度 : 頻尿、夜間トイレに起きる、排泄介助が必要、排泄行動に時間がかかる、尿・便失禁がある、その他

⑥当日の状態 : 発熱、貧血、脱水、食事摂取量、その他

リスクレベルⅠ リスクレベルⅡ

ベッド上

①ベッドの高さ・ストッパーの固定

②ベッド柵 ③ナースコールの位置

④ポータブルトイレの位置 ⑤照明

⑥床頭台・オーバーテーブルの整頓

⑦声かけ

①~⑦の確認

⑧体位変換は二人で

⑨離床センサー・マットの設置

⑩特殊ナースコールの設置

⑪緩衝マットレス・床マットの設置

⑫観察し易い室への移動

⑬安全ベルトの使用(説明と同意が必要)

①できるだけバリアフリーにする

②はき慣れた靴・寝巻きの裾丈に注意

③床の水は必ず拭く

④廊下・階段の障害物の整理

⑤コード等配線に注意

⑥点滴スタンド・輸液ポンプ類の可動性の確認

⑦歩行の指導

①~⑦の確認

⑧保護帽子の着用

⑨階段は手すり・杖の利用

⑩看護者の視野に入れる

⑪歩行時付き添う

*清掃時作業範囲に立ち入り禁止の表示

トイレ

①状態とADLにあわせた対応

②側を離れる時は声をかける

③ナースコールの確認

④身障者用トイレ介助は、ナースコールの使用が可能か判

断し、すぐに対応できるよう待機する

①~④の確認

⑤患者の側を離れない

夜間トイレ

①状態とADLにあわせた介助

ベッド上排泄・ポータブルトイレ使用・トイレ歩行

②排泄パターンの確認

③ナースコールの確認

④照明の確保

⑤必ず覚醒させ説明をする

①~⑤の確認

⑥患者の側を離れない

①入浴可能な状態か判断

②浴室の環境整備(段差・手すり・障害物)

③ナースコール確認

①~③の確認

④必ず付き添う

⑤介助者は同時に二つの行為を行わず患者を視野に置く

*リフト式浴槽の入浴介助は原則2名

歩行補助具

①補助具の点検を行なう

②正しい使用方法の説明(杖・歩行器・車椅子)

③杖の長さの調整や滑り止めの磨耗の点検

④車椅子のストッパー・安全ベルトの装着の確認と点検

①~④の確認

⑤患者の側を離れない

移動・

移送

移動 ①ストッパーの固定

②移動間の台車の高さは同じにする

③移動は最低2名で行なうのが望ましい

移送 ①柵をする

②安全ベルトの装着

③スピードの注意

④搬送は2名で行なうのが望ましい

移動①~③の確認

移送①~④の確認

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患者・家族へのお知らせ(例1)

患者さん・ご家族の皆様へ

転倒・転落防止対策について

当院では療養環境を整備するこ

とにより、転倒・転落の予防に努め

ておりますが、思いがけない転倒や

ベッド等からの転落事故が起こる

ことが少なくありません。

安全な入院生活をおくるために、

患者さんやご家族の方々と一緒に、

転倒・転落の予防に努めますので、

ご協力をお願いいたします。

ご不明な点は、どのようなことで

も医師及び看護師にご相談くださ

い。

都立○○病院

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患者・家族へのお知らせ(例2)

8 ○ ○ 病 院 医療安全対策室

両足をしっかりと床につけ、立ち上が

りましょう。

車椅子は、深く座りましょう。

段差に注意して歩きましょう。

ベッド柵をあげましょう。

乗車してから、足を足台に乗せ

ましょう。

カーテンの網に注意しましょ

う。

柵や柵の間に身体が挟まれない

ように注意しましょう。

ブレーキをかけ、足台を挙げて

から降りましょう。

オーバーテーブルや床頭台は動

くので、注意しましょう。

ベッドを上げ下げするときは、身体がナースコールや柵に引っかからないように確認しましょう。

背もたれに体重をかけすぎると、後ろに倒れるので気をつけましょう。

すべりにくい靴をはきま しょう

* 転倒の危険性がある患者さんの歩行には付き添いが必要です。看護師に声をおかけください。

* 車椅子乗車中に転倒・転落の危険性がある場合、安全に過ごせるように患者さんと相談させて頂きます。

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患者・家族へのお知らせ(例3)

・患者・家族とともに転倒・転落の予防策を立案するとき使用してください

・各病院の実状に合わせた内容にしてください

評価がリスクレベルⅠの場合

○○ ○○さんの転倒・転落の危険性について、現在の状態や活動状況、

そして治療される内容から転倒・転落の可能性のある状態と思われます。

安全な入院生活を送るためにをご覧ください。

評価がリスクレベルⅡの場合

○○ ○○さんの転倒・転落の危険性について、現在の状態や活動状況、

そして治療される内容から転倒・転落を起こしやすい状態と思われます。

安全な入院生活を送るためにをご覧ください。

入浴・トイレ、検査などで移動する場合は、看護師が付き添いますので、遠慮

なくお申し出ください。

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(4)転倒・転落防止の具体的対策

〔職員が共通して実施すべき事項〕

・ 病棟、各診療科の転倒・転落の情報を確認する。

・ 検査・治療の前には分りやすく説明するとともに、患者の顔色、表情

にも注意する。

・ 車椅子から立ち上がる場合、立ちくらみによる転倒に注意する。

・ 点滴スタンドや輸液ポンプ使用の患者は、特に介助、観察を怠らない。

① ベッド及び周囲の環境

a 電動ベッドの操作方法を説明する。

b 転倒・転落の危険度の高い患者はベッドの高さを最低にする。

c ベッドのストッパーをかける。

d 転倒・転落の危険度の高い患者のベッドを離れるときは、必ずベッド柵を上げる。

e ベッド周囲の環境整備を行う(ナースコールの位置・危険物の排除・オーバーテ

ーブル・床頭台・照明の調節)。

f ベッド柵の周囲のすき間をクッション材や毛布等で埋める。

g 転倒・転落の危険度の高い患者のベッドを離れる時は、a~dの事項を確認し、患

者に声を掛ける。

h ベッド上での体位変換は看護師 2名で行う。

i 理解力が低下している患者の場合は、離床センサー等を使用する。

j 認知症や意識障害のため体動が激しい場合

・緩衝マット(床)を設置する。

・より観察しやすい部屋に移動する。

・拘束等を考慮する(家族へ説明し、同意を得る)。

(「参考 第2 身体拘束について」P24参照)

② 歩行(廊下・階段)時

a 履き慣れた靴や、裾丈を調整した寝衣を着用してもらう。

b 階段は、手すりや杖を利用する等、歩行の方法を指導する。

c 必要時、頭部保護の帽子の着用を指導する。

d できるだけバリアフリーにする。

e 床の水は必ず拭き取る。

f 廊下に歩行等の障害になるものを置かない。コード類の整理を行なう。

g 点滴スタンドや輸液ポンプの可動性を確認する。

h 転倒・転落の危険がある患者の歩行時は、看護者の視野に入れる。

i 転倒・転落の危険度が高い患者は、歩行時付き添う。

j 清掃時は患者に注意喚起をし、清掃作業範囲に立ち入り禁止の表示を行う。

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③ 排泄介助時

a 患者の状態とADLに合わせた対応を行う(ベッド上排泄・ポータブルトイレ使

用・トイレ歩行)

b ベッド上、又はベッドサイドの患者の側を離れるときは、必ず声掛けをして、ナ

ースコールを患者の手の届く位置にセッティングする。

c トイレ使用中はプライバシーに考慮し、音の聞こえる所に待機する。

d 転倒・転落の危険度の高い患者を誘導したときは、患者の側から離れない。

e 身障者用トイレで介助する場合は、ナースコールの使用が可能か判断し、すぐに

対応できるよう待機する。

〔夜間の介助時〕

f 排泄パターンを把握し、患者の状態に応じた排泄の誘導を行う。

g 排泄時、適切な照明を確保する。

h 必ず覚醒していることを確認し、排泄することを認識してもらう。

④ 入浴介助時

a 入浴可能な状態か観察し判断する。

b 浴室の環境を整える(段差・手すり・障害物)。

c ナースコールの使い方を説明する。

d 転倒・転落の危険度の高い患者は、そばに付き添う。

e 介助者の視野に必ず患者を入れる(同時に 2つの行為を行わない)。

f リフト式浴槽の入浴介助は、原則 2名で行なう。

⑤ 歩行補助具使用時

a 補助具(杖・歩行器・車椅子)の定期点検を行う。

b 補助具の正しい使用方法を理解してもらう。

c 杖の長さを患者に合わせ、先端の滑り止めが磨耗していないか点検する。

d 車椅子のストッパーや、安全ベルトの装着を確認する。

e 転倒・転落の危険度の高い患者の場合は付き添う。

⑥ 移動・移送時

a 移動時(ベッド・ストレッチャー・車椅子等の間でのトランスファー)

・ストッパーは固定する。

・移動間のストレッチャー等の高さを同じにする。

・移動は 2名以上で行うことが望ましい。

・トランスファーは、正しく注意深く行う。

b 移送時(ベッド・ストレッチャー・車椅子)

・ベッド・ストレッチャーは柵をする。

・必要に応じて安全ベルトをする。

・適度なスピードで搬送する。

・移送は最低 2名で行うことが望ましい。

⑦ 診療放射線科での防止策

※診療放射線科において、共通して留意すべき事項

・更衣室内は目が届かないので、更衣時間の長さや室内の音に注意する。

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・使用後の撮影用具は床に放置しないで、すぐ所定の場所に整理する。

a エックス線撮影検査

・撮影台は一番低くして介助する。

・撮影台の中央部に患者の正中線を置き撮影する。

・撮影台で乳幼児を撮影する時は2人以上で行い、転げ落ちないよう介助する。

・撮影台から降りる際、めまい等で転倒することがあるので介助する。

・立位撮影する場合は、固定用具を使用する。

・乳幼児の立位撮影は、補助具を活用するとともに注意して観察する。

・消化器検査終了時には、空腹や体力消耗で立ちくらみを起こしやすいので介助

する。

・CT撮影、泌尿器撮影等造影撮影時は、造影剤の副作用に注意する。

b 核医学検査

・RI検査室の専用スリッパに履き替える時は、付き添う。

・放射性医薬品使用から検査までの待ち時間は、気を配り十分注意する。

・撮影台が狭いので、固定用具を使用する。

・眠っている乳幼児は目を覚ますおそれがあるので、固定用具を使用するとともに

退出まで目を離さない。

・昇降不可能な検査台の場合は、踏み台を使用し介助する。

・RI専用トイレを使用する際は、必要に応じて付き添う。

c 放射線治療

・治療台は一番低くして、何時でも介助できるよう患者の側に付く。

・治療台は狭いので、固定用具を使用する。

・危険度が高い患者の場合は2人以上で対応し、最短時間で終了するよう計画的に

行い、観察を怠らない。

⑧ 検査科での防止策

a 検査室への移動・検査待ちの時

・空腹時異常を起こしやすい患者は、予約時間等に十分配慮する。

・検査待ちの間、ベッド・ストレッチャー・車椅子の患者は、技師の目の届くとこ

ろで声かけをしながら、不意に立ち上がらないなど気を配り、十分注意する。

・検査用ベッドへの移動中、滑ったり、つまずいたりして転倒しないよう環境を整

備する。

・介助の必要性など、患者の危険度に関する情報を十分把握する。

・脱衣時には、バランスを崩しやすいので必要に応じ介助する。

・検査の準備中にも、患者の動向に注意する。

・転倒のリスクが増す検査の場合には、事前に説明書などで十分説明しておく。

b 検査・採血・採尿時

・転倒のリスクが高い検査時は、患者の状態を十分観察し、必要に応じ介助する。

・採血の際は、肘掛け椅子を使用し、採血中は患者の状態の変化を十分観察する。

・採尿室の床濡れなどは速やかに拭き取る。

・危険度の高い患者は2人以上で対応し、迅速に検査を終了させる。

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c 検査・採血後

・転倒のリスクの高い検査が終了した時は、検査による影響などを説明し、必要に

応じ介助する。

・採血終了後は、患者の状態に応じてベッドや椅子で休ませるなどして介助する。

・着衣時には、更衣時間を気にしないよう声を掛け、必要に応じ介助する。

・病棟からの迎えの待ち時間が長くならないよう、早めに病棟へ連絡する。

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(5)小児の転倒・転落事故防止

小児の転倒・転落事故の場合は、成長、発達に伴う行動によって起こることが多く、そ

の特徴を理解した上で、対策を考える必要がある。

特に、乳幼児の場合は、自分自身で身の安全を守ることができないので、周囲の大人が

常に注意を向け事故を予防する必要がある。

乳幼児の発達と起きやすい転倒・転落事故

年 齢 発達状態 起こしやすい転倒・転落事故 予 防 策

新生児

6か月

寝返りを

うつ

【転落】

1 ベッドからの転落

ベッドの柵を降ろしたまま物を

取ろうと目を離した隙に転落。

① 寝返りができたら高柵ベッドにする。

② ほんのちょっと目を離す場合も必ず柵を

上げてから行う。

③ ベッド柵の上げ忘れがないように注意表

示をする。

6か月

1歳

ハイハイ

つかまり

立ち

歩行

【転倒】

1 歩行時の転倒

乳幼児は特に、身体の割に頭が

大きく重心が高いため、バランス

が崩れやすく転倒しやすい。

転んでも上手に手を出すことが

できず、顔面から床にぶつかって

しまい、大怪我をすることが

ある。

① ハイハイできる子どもは、動きが速いので

目を離さない。

② 必ず子どもと一緒に行動する。

③ 常に床の環境整備をしておく(水や食物等

がこぼれていないか、危険物が落ちていない

か等点検しておく。)。

④ たとえ転んでも大きな怪我をしないよう

角や突出部はスポンジ等で防護する。

家族への指導

① 子どもから目を離さない。

② 歩行時は必ず一緒に行動する。

③ できるだけプレイルームを利用してもら

う。

④ 段差や引っ掛かりは転倒事故につながるの

で、危険な個所についてあらかじめ説明し

ておく。

※全ての年齢に共通し、ご家族へ指導すること

・小児は絶えず成長発達しており、昨日までできなかったことも、今日はできるようになる。

家族に危険性を説明し、事故防止の協力を依頼する。

・入院時オリエンテーションでベッド柵の上げ下ろしの仕方を説明し、実際に行ってもらう。

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2 乳幼児用歩行器利用中の転倒

歩行器にすわり、のけぞって

後ろに転倒

【転落】

1 ベッドからの転落

2 椅子からの転落

① 子どもの状態に合った歩行器か、子どもの

成長、発達状況を理解する。

※ 乳幼児用歩行器の使用基準

a 生後 7 か月以上、15 か月位まで(身長

80cm、体重 10kg まで:つかまり立ちがで

きるようになって、一人歩きができるよう

になるまで)

b 子どもが嫌がっている時には乗せない。

c 長時間は乗せない。(20分位)

② 後ろにのけぞる等子どもの行動パターン

を把握する。

③ 段差や、カーペットのめくれ等、つまず

きそうな箇所をなくすなど環境整備をする。

④ 使用中は子どもから目を離さず付き添う。

① 高柵ベッドを使用する。

② ほんのちょっと目を離す場合も必ず柵を

一番上まで上げる。

③ 踏み台となるような台、おもちゃなどはベ

ッド内に置かない。

④ 面会終了時には、ベッド柵や拘束の状態も

確認する。

⑤ オムツ交換時は、全て必要なものを準備し

てから行う。

① 病室内に不要な椅子は置かない。

② 子どもに合った大きさの椅子を選択する。

③ ハイチェアに座らせる場合は、安全ベル

トを着用する。

④ 必ず付き添う。

⑤ 目を離す時には、必ずベッドに戻す。

家族への指導

① 入院当日、面会時、適宜目を配りタイミン

グをみて繰り返して注意を促す。

特に、入院後 2~3 日後にはもう一度注意

点を伝える。

② 転落事故事例をあげて注意を促す。

a オムツ交換時、お尻拭きを取ろうと

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した隙に転落

b「誰か来た」と振り向いた瞬間転落

c バッグを置く一瞬、コートを掛ける

一瞬に転落

③ 子どもは親を追うものであることを強調

し、一瞬でも目を離さないように、目を離す

時には必ず柵を上げるように指導する。

④ 面会時には子どもが親に抱きつこうとす

るため、慎重にベッド柵を下げるよう説明す

る。

⑤ 面会中に子どもが転倒・転落した場合は必

ず看護師に知らせてくれるよう説明する。

1歳

2歳

一人歩き

走る

何にでも

興味を持

ち、足元を

見ず突進

する。

【転倒】

1 6 か月~1 歳の1、2(P13~

P14)と同様

【転落】

1 ベッドからの転落が最も多

く、家族が一緒にいるときが多

い。

2 椅子からの転落

3 階段からの転落

① 6か月~1歳児と同様の全予防策

② すべりにくい、履き慣れた靴を用意して

もらう。

① 高柵ベッドを使用する。

② ほんのちょっと目を離す場合も必ず柵を

一番上まで上げる。

③ 柵によじ登るような子どもには、靴下を履

かせて登れないようにする。

家族への指導

① 親の行動に関して、気になる場面があれば

その都度声を掛け、注意を喚起する。

② 入院中は、普段の子どもとは違う行動力が

あることを伝え、常に目を離さないよう指導

する。

① 病室内に不要な椅子は置かない。

② 子どもに合った大きさの椅子を選択する。

③ ハイチェアに座らせる場合は、安全ベルト

を装着する。

④ 必ず付き添う。

① 必ず子どもと一緒に行動する。

② 階段への出入り口に扉をつけ必ず閉める。

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3歳

6歳

走る

階段昇降

【転倒】

1 点滴スタンドを押しながら歩

行中に転倒

【転落】

1 ベッドからの転落

① キャスターがスムースな動きであるか

確認する。

② 重心がなるべく下にくるようポンプの取

り付けに注意する。

③ 点滴スタンドを押すときは、もう片方の手

には何も持たないよう説明する。

④ 必ず付き添う。

①ベッド内のテーブルなどは、使用後、置いた

ままにしない。

学童

以上

【転倒】

1 点滴スタンドを押しながら歩

行中に転倒

2 車椅子に乗っていて転倒

落し物を拾おうとして転倒

【転落】

1 大ベッドからの転落

眠っているときに転落

① キャスターがスムースな動きであるか確

認する。

② 重心がなるべく下にくるようポンプの取

り付けに注意する。

③ 点滴スタンドを押すときは、もう片方の手

は何も持たないよう説明する。

④ 点滴スタンドは身体の前にして、ゆっくり

歩くよう指導し付き添う。

① 車椅子の安全な操作について以下を十分

説明する。

a 乗り降りするときは、必ずストッパー

をかける。

b 重心が移動することで転倒しやすくな

る。

c 歩く速度で走行する。

② 物を落としたときには自分で拾わないで

必ず人を呼ぶように説明する。

① 原則として、大ベッドは学童以上に使用す

る。

② ベッド柵の隙間が子どもの肩幅より広い

場合は、マットレスパッドなどで隙間を無く

して使用する。

③ 消灯後、ラウンド時にベッド柵が上がって

いることを確認する。

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家族へのお知らせ(例1)

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ご家族の方へ「小児の転倒・転落防止策のお知らせ」(例)

お子さんの入院は、これまでと違う環境の中でご家族と離れて、療養生活を

おくることになります。

入院したときは動く元気がないと思っていても、回復するにつれてベッド柵

を乗り越えたり、勢い良く飛びついてきたりする等、思いがけない行動をとる

ことがあります。

そして、転倒・転落により、けがをしたり、骨折をする場合もあります。

当院では、このような事故を起こさず安全な療養生活がおくれように、万全

を期しておりますが、事故を未然に防ぐためにもご家族のご協力をお願いいた

します。

お子さんの転倒・転落を防ぐための注意点

1 ベッド柵は必ず上げてください。

(1) ベッド柵を上げなかったり、半分しか上げないと、お子さんがベッド柵

から顔出してのぞきこんだり、つかまり立ちしたときに転落することが

あります。

(2) ご家族がベッドを離れたり、荷物を整理したりするためにしゃがんだり

する時は、ベッド柵を必ず上げてください。お子さんは、ご家族が目を

離した一瞬の隙で転落することがあります。

(3) お子さんが寝ていても、ベッド柵は上げてください。

(4) ベッド柵を下ろすときは、お子さんを柵から離し、正面に立ちお子さん

から目を離さず操作をしてください。

(5) お子さんがベッドから降りた後も、ベッド柵は必ず上げておいてくださ

い。他のお子さんが、知らないうちにベッドによじ登り転落することが

あります。

※ 面会終了時は、転落防止のため、お帰りの際は看護師にお声をかけてく

ださい。

2 履物

(1) 履物は足にあったもので、脱げにくいものを選んでください。

(2) 運動靴のようにゴム底ですべらないものが最適です。なお、スリッパは

危険ですのでおやめください。

3 転倒時

面会中にお子さんが転んだり、どこかに体をぶつけた時は、観察が必要

ですので必ず看護師にお知らせください。

各病院の実情に合わせた内容にしてください。

文字の配列を変えたり、イラストを入れたりして、読みやすく作ってください。

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家族へのお知らせ(例2)

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ご家族の方へ

こんな時は特に注意!!

お子さんはあなたの後を追いかけます!!

・おしり拭きをとる一瞬

・誰か来たと振り向いた一瞬

・誰かと話をしている一瞬

・床頭台から物を取る一瞬

・・

・・

・・

・・

注 意

幼児用イスから・・・ 高柵ベッドから・・・

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第3 転倒・転落が生じたときの対応

1 転倒・転落発生時の対応フローチャート

※ 医療事故予防マニュアル「都立病院におけるリスクマネジメント」、

「医療事故が起きたら」等に基づき、適切に対応する。

・患者の状態をすばやく観察する。

・一人で対応せず、応援を求める。

・医師へ連絡する。連絡を受けた医師は指示を出す。

・応急処置を行う。

・必要に応じ、X線撮影、CT等の検査を行う。

・上司への報告を速やかに、正確に行う。

・ 家族に連絡し、転倒・転落が発生した経過、検査結果を説明をする。

・インシデント・アクシデント・レポートを提出する。

・看護記録を経時的に記載し、転倒・転落アセスメントスコアシートで再度評価する。

・原因分析・再発防止策を検討し、周知する。

※対応の原則

・ 迅速・的確・誠実に

・ 影響を最小限にくい止める

患者の状態観察

医師へ連絡

上司に報告

・経時記録に切り替える。

・インシデント・アクシデント・レポート提出

・転倒・転落アセスメントスコアシートを再評価する。

・原因分析・再発防止策検討、周知

応急処置

必要な検査

ご家族へ説明

転倒

転落

発生

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2 転倒・転落発生時の看護記録の記載ポイント

(1)記載事項

① 転倒・転落が起きたとき、SOAPから経時記録に切り替える。

② 転倒・転落発生前の患者の状態・最終確認状況の記載

③ 発生・発見時間と発生時の状況の正確な記録

④ 必要な観察事項(継続した観察と記録をする。)

・意識レベル・患者の反応

・バイタルサイン

・受傷した部位の状態(頭部外傷、打撲が疑われた場合、48時間~72時間継続して

観察する)

a 麻痺の有無

b 瞳孔不同の有無

c 嘔気・嘔吐等

・疼痛の有無及び程度

・関節可動域の状態等

⑤ 医師への連絡時間

⑥ 医師の到着時間

⑦ 医師の指示内容

⑧ 患者、家族への説明の有無

(2)注意事項

① 推測や憶測の記載はしない。

② 発見した時の状況をありのまま記載する。

(3)看護計画の修正

① 転倒・転落アセスメントスコアシートで再評価し、看護計画を見直す。

② 新たな計画を追加立案する。

③ 看護計画は具体的でわかりやすく記載する。

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参考

第1 薬剤と転倒・転落

多くの薬剤は転倒・転落リスクを増す要因である。

1 薬剤と転倒との関係

薬剤の使用により転倒の危険性が高まる可能性の理由としては、

(1)眠気・ふらつき・注意力低下・失神・めまい・せん妄など精神機能が障害され

る場合と、

(2)失調・脱力・筋緊張低下・パーキンソン様症状など運動機能が障害される場合

とがある。

表に示す薬剤は、動作のバランスを維持するのを困難にし、転倒の危険性を増すと

考えられるものの代表例である。

特に、疾病をかかえた高齢者では、微妙なバランスの上に日常生活活動が維持され

ている。薬剤の使用は、そのバランスを整えることもあるが、逆に崩す場合もある。ま

た、薬剤に対する反応も複雑である。さらに、いくつもの疾病に罹患していることもあ

り、多剤併用に陥りがちである。代謝機能の低下などにより、薬剤に対する耐性も低下

していることもあり、高齢者への薬剤使用に当たっては、有益性と副作用を共に吟味し

た特別な配慮が求められる。

2 転倒リスクを増す薬剤

筋弛緩剤、麻薬、非麻薬性鎮痛剤、抗精神病薬、抗うつ剤、抗不安薬、睡眠薬、抗て

んかん薬、NSAIDs、抗がん剤、降圧剤、利尿剤、ジギタリス製剤、H2拮抗剤、β遮断

剤、抗コリン薬、抗ヒスタミン剤

3 対策

(1)危険薬剤の投与例について、常に転倒の可能性を考えて対応する。

(2)危険薬剤の投与に際して、特に、高齢者では少量投与から開始し、必要最少量の投

与を心掛ける。また、可能な薬剤では、薬剤血中濃度の測定を行い、過量投与を避

ける。筋弛緩剤の一部、バクロフェンなどでは安定した効果が出るまでに 1週間程

度かかるものもあり、増量が必要な場合は、十分な時間を経てから行う。

(3)転倒リスクを増す薬剤の多剤併用により、さらに転倒のリスクが増加することが報

告されていることから、必要に応じて薬剤の併用を見直す。

(4)同効薬の中で転倒リスクを伴わないものを選択することにより、転倒の頻度が下が

ることが報告されており、薬剤の選択を検討する。

(消炎鎮痛剤の中でのアセトアミノフェンの選択、胃腸機能調整薬の抗ドパミン薬

の代わりに副交感神経興奮薬などの使用)

(5)危険度の高い患者をリストアップして、対策を考える。

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(6)転倒があった場合、薬剤による可能性がないか再確認する。

4 転倒後の問題を増す薬剤

抗凝固剤、抗血小板剤などでは転倒に伴う外傷による出血に注意する。出血は外傷部

位局所からのものにとどまらず、頭蓋内や深部臓器に起こる可能性も考えておかなけれ

ばならない。

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第2 身体拘束について

身体拘束注1は、患者の生命の危機と身体的損傷を防ぐために必要最小限に行うもので、

患者の人権を尊重し、安全を優先させ他に代替手段が無い場合にのみ実施する。

その際、患者・家族に説明し、二次的な身体障害や合併症が発生しないよう十分注意し

て、常に解除できないか評価しながら行う必要がある。

なお、精神科においては、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の定めるところに

より実施する。

1 身体拘束しないための工夫、取組

(1)観察の強化

① 看護室近くの部屋へ移動

② 離床センサー、アラーム鳴動機器の活用

③ 車椅子に移乗して目の届く範囲で観察

④ 患者のそばを離れる際には、看護師は互いに声をかけ、注意し合う。

(2)ベッドを含めた病室環境の工夫

① 転落の危険性がある場合、ベッドの高さは低くする。低床ベッドの利用

② ベッド柵の周囲のすき間をクッション材や毛布で埋める。

③ ベッド上及び周囲の整理整頓を行い、不必要なものを置かない。

(3)静脈ルート、ドレーン、カテーテル類の患者の自己抜去防止

① チューブ類は患者の目や手の届かない位置に固定する。

② 輸液ポンプ等は位置を工夫し患者に見えないようにする。

③ 手袋、包帯、介護用つなぎ服、固定枕等の使用

④ 点滴は刺入部位の選択をする等

(*ライン類の抜去防止対策マニュアル参照)

(4)静脈ルートやドレーン等はできるだけ早期の抜去を検討

(5)早期の膀胱留置カテーテルの抜去

(6)ルート類挿入中でも車椅子や歩行によるトイレへの移動や散歩を行う。

(7)患者のペースに合わせ、ADL拡大と気分転換を図る。

(8)徘徊する患者に付き添い、床にマットレス等を敷き、転落時の事故防止に努める。

可能であれば徘徊できるスペースを確保する。

(9)患者の精神的安定を図るために,家族への協力を依頼する。

(10)痛みや不安感のサインを把握し取り除くためのケアを検討する。

注1:日本看護倫理学会の身体拘束予防ガイドラインより「身体拘束」を使用する

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2 身体拘束の 3原則

【切迫性】行動制限は行わない場合の生命または身体が危険にさらされる可能性が高い

(意識障害、説明理解力の低下、精神症状に伴う不穏、興奮)

【非代替性】行動制限以外に患者の安全を確保する方法がない

(薬剤の使用、病室内環境の工夫では対処不能、継続的な見守りが困難など)

【一時性】行動制限は一時的であること

3 身体拘束の適応要件

緊急かつやむを得ない場合に施行するが、以下の全ての条件を満たす必要がある。

① 患者又は家族の同意及び医師の指示があること。

② 他に代替手段がないとき。

③ 生命に関わるとき。

具体的には、以下のような場合に適応となる。

・ 生命維持、回復のためのチューブ類を抜去されることで患者の状態悪化に繋がる

場合

・ 術直後に安静や安全が守れない場合

・ 痙攣時において身体保護が必要な場合

・ 認知症や見当識障害、意識障害があり、不穏行動や危険行為が予測される場合

・ 小児例、理解力の低下があり治療上必要な体位(安静)が保てない場合

・ 病的反射や不随意運動等により、自分の意思で体動を抑えられない場合

・ 自傷、他害の恐れが強い場合

・ 創部汚染、治療に協力が得られない場合

・ その他、疾患の増悪、患者生命の危険がある場合

4 医師による評価と指示

(1)拘束対象患者(上記)について医師と看護師が話し合い、患者の状態を評価した上

で決定する。

(2)医師は患者・家族に身体拘束について説明し、その内容をカルテに記載する。

(3)医師は指示票に身体拘束の指示を記載する。

(4)主治医不在時は代理医師、夜間・休日は当直医師が指示する。

5 患者・家族へのインフォームド・コンセント

(1)身体拘束の適応と判断された場合は、医師はその必要性・方法・予測期間、身体拘

束をしなかった場合のリスク等を説明し、同意を得るとともに、その旨をカルテに

記載する。

(「身体拘束の説明と同意書(例)」P27参照)

(2)夜間など緊急で拘束を行った場合は、翌朝、身体拘束の必要性、方法の妥当性、具

体的期間を家族に説明する。

(3)同意を得られない場合は、危険を回避できないことがある旨を医師が説明し、カル

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テに記載する。

(4)患者に家族がいない場合で、本人に同意を得られる状況でない時は、カルテにその

旨を記載し、医師・看護師で協議の上、身体拘束の実施を検討する。

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身体拘束に関する同意書 (案)

都立○○病院

意識障害、認知機能障害等のため患者の生命あるいは身体が危機にさらされる可能性が高く、

身体拘束を行う以外に代替えの方法がない場合に必要最小限の身体拘束を一時的に行います。

合併症としては精神的ストレス、褥瘡(床ずれ)、皮膚剥離、局所の浮腫(むくみ)、拘束部位より末

梢部分への循環不全などをきたすことがあります。

身体拘束の対象となる危険行動

□ 治療上必要な安静が保たれず、疾患の治療が遅れたり、病状の悪化をきたす恐れがある。

□ ベッドや車いすからの転落、転倒等の危険性がある。

□ 気管チューブや各種留置カテーテル、点滴、経管栄養チューブ等の自己抜去の危険性がある。

□ 自傷・他害の恐れがあり、継続して行動観察の必要がある

□ その他( )

身体拘束の部位 四肢 体幹 など

身体拘束の方法 安全帯 ミトン(手袋)

身体拘束の開始及び解除の予定

平成 年 月 日 ~ 平成 年 月 日

身体拘束をしている時は、できる限り拘束が解除できないか評価していきます。

拘束の必要がなくなったと判断した時には速やかに解除します。

平成 年 月 日

医師名(署名)

看護師名(署名)

私は一時的身体拘束及び合併症についての説明を受け、その内容を理解しました。

患者氏名

同意者氏名

(続柄) ( )

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6 身体拘束時の看護

(1)拘束方法

① 拘束部位に適した拘束用具(安全ベルト、拘束衣、ミトン手袋等)を選択し、必要

部位に適切に装着する。

② 拘束用具装着に際しては、緊急かつ安全に実施するために 2人以上の看護師が協力

して行う。

③ 安全ベルトはベッド柵ではなく、ベッドの枠に固定しスライドを予防する。

④ 安全ベルトは、関節可動性を残して固定する。

(2)観察について

① 観察期間

原則として、拘束直後に問題点がないかを確認し、その後は状況に応じて繰り返

し観察する。

② 観察事項

・患者の精神状態(不安・ストレス等)

・体動状況

・拘束による二次的障害の有無(呼吸・循環障害、末梢の循環障害、神経障害、関

節拘縮等)

・拘束部位の皮膚の状態

・状態に応じてバイタルサイン測定

(3)記録

① 拘束の目的、それに至るまでの患者の状況

② 患者及び家族への説明内容と同意の有無、説明した家族の続柄

③ 拘束開始時間・拘束部位・拘束に使用した物品

④ 観察事項・観察時間

⑤ 拘束解除の目安

(4)注意事項

① 医師の指示があることを確認する。

② チューブ類に手が届かないことを確認する。

③ 身体拘束による二次的障害に注意する。

④ 患者の訴えに注意を払う。

⑤ 誤嚥や窒息など不慮の事態に備え、対策を考慮しておく。

⑥ ナースコールを手元に設置する。

⑦ 拘束の部位や期間は最小限にとどめるよう、心身の観察とアセスメントを行う。

(5)その他

必要に応じ精神科などの専門医に相談する。

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7 身体拘束フローチャート

患者に次のような状態・危険性があり他に代替手段がない身体拘束を検討する

(1) 生命維持、回復のためのチューブ類を抜去されることで状態悪化に繋がる場合

(2) 術直後に安静や安全が守れない場合

(3) 痙攣時において身体保護が必要な場合

(4) 認知症や意識障害、見当識障害があり、不穏行動や危険行為が予測される場合

(5) 小児や理解力の低下があり、治療上必要な体位(安静)が保てない場合

(6) 病的反射や不随意運動等により自分の意思で体動を抑えられない場合

(7) 自傷、他害の恐れが強い場合

(8) 創部汚染、治療に協力が得られない場合

(9) その他、疾患の増悪、患者生命の危険がある場合

問題行動の原因を明確にする

看護アセスメント

患者に自傷行為や他の危険行動がある

(1) 問題行動の原因に対処する

(2) 拘束に替わる方法を検討し試行する

(3) 精神科等、専門医に相談する

看護介入

(1) 医師の指示

(2) 身体拘束

(3) 観察

(4) 記録

(5) アセスメントして解除を検討

拘束実施せず

YES NO

NO YES

看護介入が有効

医師と看護師で協議

患者・家族への説明と同意

(同意書作成)

拘束実施

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8 身体拘束の方法

(1)必要物品

・各種安全ベルト(ミトン型手袋、マグネット式安全ベルト、ベスト式拘束衣、車イ

ス用安全ベルト等)

用具に破損がないか、使用前に必ず確認する。

(2)拘束手技の実際

① ミトン型手袋

a 患者・家族に拘束の方法を説明し、同意を確認する。

b 患者にミトンを装着し、患者側のホックをしてからベッド柵に止める。

c ミトンのベルトの長さに注意し、ミトンをした手が顔やチューブ類に届かないよ

うにする。

d 拘束部位と拘束状況、二次的障害の有無を観察して記録する。

② マグネット式安全ベルト

a 患者・家族に拘束の方法を説明し、同意を確認する。

b 安全ベルトをベッド中央に置き、患者のウエストの一番細い部位にベルトを装着

し、両端をベッド枠にマグネット固定する。

c 胴体安全ベルトの中央に患者を寝かせ、安全ベルトを腹部中央で合わせて、きつ

すぎず緩すぎないようにマグネット固定する。(手のひらの一枚分ゆるみ)

d ベッドの端から約 20cm内側に手足を置き、手首・足首に安全ベルトを装着。ベッ

ド枠にマグネット固定する。

e 拘束部位と拘束状況、二次的障害の有無を観察して記録する。

③ ベスト式拘束衣

a 患者・家族に拘束の方法を説明し、同意を確認する。

b 患者の体型に合ったベストを選び、固定位置を決める。

c 固定位置にベストを置き、ベッド枠に固定紐をしっかり固定する。

d ベスト中央に患者を寝かせ、ベストの前身頃を合わせながら紐を結ぶ。首まわり

に注意し、ベストが体にフィットしているか確認、緩みがある場合はバスタオル

などで補正する。

e 拘束部位と拘束状況、二次的障害の有無を観察して記録する。

④ 車イス用安全ベルト

a 患者・家族に車イス用安全ベルトの使用方法を説明し、同意を確認する。

b 車イスに安全ベルトを置き、股下のベルトを座席と背もたれの下部に通す。

c 患者を車イスの中央に座らせ、腰まわりのベルトを背もたれの後方でジョイント

し、ベルトの長さを調節する。

d 拘束部位と拘束状況、二次的障害の有無を観察し記録する。

⑤ 備考

a 身体拘束中は頻回に訪室し、2 時間ごとに体位変換する。車イスでは臀部の除圧

を図る。(参考:精神科では 15分毎の観察)

b 拘束部位の圧迫や摩擦を生じる場合は、ガーゼやタオルで保護する。

c マグネットボタン、解除用マグネットキーは、紛失しないよう管理する。

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9 身体拘束解除の基準

(1)以下の場合は身体拘束を解除する。

身体拘束期間を超える

身体拘束 3原則を満たさない

(2)解除する場合は、どのように判断したかその根拠を記録に残し、指示票に解除指示

を記載し、医師・看護師がサインする。

二次的な障害が発生した場合は、速やかに医師に報告する。医師は身体拘束の適応

について再評価し、指示する。

10 小児の身体拘束について

小児は拘束されることなく、ひとりの人間として安全に治療や看護を受ける権利を持

っている。しかし、言葉が理解できない年齢では、点滴ライン、経管栄養チューブや気

管カニューレなど、生命を維持するために必要なものを抜いてしまうことがある。この

ような場合は、小児の治療の継続と安全確保のため、必要最小限の範囲で拘束を行わざ

るを得ない。その際、小児の人権と安全を守るために、以下の基準に従うものとする。

(1)身体拘束の適応要件

緊急やむを得ない場合に施行するが、以下の全ての条件を満たす必要がある。

① 患者又は保護者の同意及び医師の指示があること。

② 他に代替手段がないとき。

③ 生命に関わるとき。

具体的には、以下のような場合に適応となる。

・ 治療をすすめるため、または生命を維持するために必要な点滴チューブ等を抜いて

しまう危険がある場合

・ 手足を動かす、起きあがってしまうなど、治療上必要な安静や運動制限が守られな

い場合等(「身体拘束の適応要件」P25参照)

(2)実施にあたって

① 入院時、拘束について説明し、緊急時には事前の同意なく拘束することについても、

保護者の了承を得ておく。

② 実施にあたっては、医師、看護師がアセスメントを行い決定する。

③ 実施前に小児の理解度に合わせて最大限の説明を行うとともに、保護者への説明を

行う。

④ 夜間など、緊急に実施した場合は、翌日の早い時期に必要性、方法の妥当性、予定

期間などを保護者へ説明する。

⑤ 家族が帰宅するときは、安全確認のために看護師に声をかけるよう説明する。

⑥ 拘束を実施したこと、説明の内容についてカルテに記載する。

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〔参考文献〕

1 鈴木みずえ. 転倒・転落・骨折を防ごう. ナーシング・トゥディ.

2007 Vol. 22 No.12

2 小松泰喜.武藤芳照.転倒・転落リスクを取り除くには―患者・周辺環境・

看護師へのアプローチ―. 看護技術.2007 Vol.53 No.2 p.119-114

3 日本蘇生協議会(監修).AHA心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイド

ライン2005.中山書店 2006

4 三宅祥三.杉山良子(編) 実践できる 転倒・転落防止ガイド.

学研メディカル秀潤社 2007

5 古家幸代他 小児病棟における転倒・転落事故防止策. 月間ナースデー

タ. 2002 Vol.23 No.10

6 古川裕之. 転倒・転落リスクを高める薬剤 ナーシング・トゥディ.

2007 Vol. 22 No.12 p.65-71

7 川村治子. ヒヤリハット 11,000事例によるエラーマップ完全本.

医学書院 2003 p.66-83 p.94-97

8 井澤由香 転倒・転落における患者・家族へのアプローチ 看-218

第 46回全国自治体病院学会 2007

9 三宅祥三(監修) 医療高齢者施設におけるベッドの安全使用マニュアル

安全療養環境の構築のために 医療・介護ベッド安全普及協議会 2003

10 日本看護倫理学会.臨床倫理ガイドライン検討委員会.身体拘束予防ガイ

ドライン 2015

11 高田早苗.改めて身体抑制を問う-看護倫理研究の最重要課題-.

日本看護倫理学会誌 2010 Vol.2 No.1

12 森田美恵子他 転倒アセスメントスコアシートの改訂と看護師の評価者間

一致性の検討 日本看護管理学会誌 2010 Vol.14 No.1

13 赤間紀子他 転倒転落アセスメント項目の検討-症例対照研究による有効

性の評価と応用- 日本医療マネジメント学会誌 2014 Vol.14 No.4

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医療事故予防マニュアル[医療行為別シリーズ:№4]

ライン類の抜去

防止対策マニュアル

平成29年 月改訂(案)

東京都病院経営本部

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は じ め に

平成 16 年、都立病院医療安全推進委員会では、医療事故予防マニュアルの「医療行為

別シリーズ」の第 4作目として「ライン類の抜去防止対策マニュアル」を作成しました。

作成以降も予期せぬ形でのライン類の抜去は、インシデント・アクシデント・レポートの

中でも報告数の多い事象であり、その防止対策は医療現場における重要な課題です。医療

を取り巻く環境も日々変化しています。今回は、現状の視点で環境を見直し、「ライン類の

抜去防止策対応マニュアル」を改訂しました。

本マニュアルでは総論として、まず抜去の発生要因について検討し、次いでその防止策、

抜去時の対応について記載しました。小児は成人とは異なる特徴がありますが、先に共通

する内容を記載し、小児に特徴的な発生要因や留意事項等を別に記載しました。

次に各論として、日常実施頻度の高いチューブ・ドレーン・カテーテルなどのライン類

について、刺入あるいは挿入後の固定方法、抜去防止のための観察、抜去が発生した後の

対応方法を記載しました。

ライン類の固定にあたっては、各施設で既に独自に様々な固定方法を工夫されているこ

とと思います。患者さんの症状等は千差万別であり、いろいろな状況の中でライン類が使

用されています。従って本マニュアルで示したライン類の管理が全てに当てはまるもので

はありません。本マニュアルで示した内容は、その一方法として参考にしていただきたい

と思います。

予期せぬ抜去の中でも患者さん自身が点滴等を抜いてしまう自己抜去は発生頻度が高

く、その発生はせん妄や認知症に伴って生じることがほとんどであり、防止対策を立てに

くい面がありました。平成 16年度には「自己抜去危険度アセスメントスコアシート」を作

成しました。アセスメントスコアシートによる危険度の評価は、人による評価のばらつき

を防ぐことができます。

なお、予期せぬ抜去を防ぐためには、ライン類を使用するに当たって適切な使用である

かを医療者が十分に検討すること、また、ライン類を使用する際は、患者さんやご家族に

その内容を説明し、治療における必要性を十分ご理解いただくことが重要であることは言

うまでもありません。

本マニュアルが、ライン類の抜去防止を工夫される際の参考として、各病院で利用され、

医療安全の推進に役立つことを願うものです。

平成29年 月

都立病院医療安全推進委員会 委員長

平成 16年 8月作成

平成 21年 3月改訂

平成 29年●月改訂

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目 次

第1 抜去の発生要因

1 抜去発生の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

2 発生要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

第2 抜去の防止策

1 抜去防止策のポイント ・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

2 抜去防止のフロー ・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

3 一般的な防止策 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

4 放射線科・検査科等での防止策 ・・・・・・・・・・・ 8

第3 抜去時の対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9

第4 各種ライン類の管理 -固定方法・観察・抜去後の対応-

1 気管挿管

(1)気管チューブ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

(2)気管カニューレ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

(3)小児の気管挿管 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13

2 静脈ライン

(1)末梢静脈ライン ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

(2)中心静脈ライン ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

3 動脈ライン(Aライン) ・・・・・・・・・・・・・・ 20

4 消化管チューブ

(1)経鼻胃管 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

(2)イレウス管 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 23

(3)胃ろうチューブ (カテーテル)・・・・・・・・・・・ 24

(4)腸ろうチューブ (カテーテル)・・・・・・・・・・・ 26

(5)SB チューブ (Sengstaken-Blakemore tube) ・・・ 28

5 腹腔ドレーン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

6 胆道ドレーン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

7 胸腔ドレーン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

8 尿路カテーテル

(1)膀胱内留置カテーテル・・・・・・・・・・・・・・ 36

(2)腎ろうカテーテル ・・・・・・・・・・・・・・ 38

9 脳神経外科領域のドレーン ・・・・・・・・・・・・・ 40

10 硬膜外カテーテル ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43

〔参考資料〕

資料1 挿管チューブ・気管カニューレ抜去事例集・・・・ 45

資料2 自己抜去危険度アセスメントスコアシート・・・・ 48

参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

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1

第1 抜去の発生要因

1 抜去発生の状況

チューブ・ドレーン・カテーテルなどのライン類(以下、「ライン類」という。)の予

期せぬ抜去とは、自然にあるいは何らかの外力でライン類が抜けてしまう事故抜去と、

ライン類を患者自身が抜いてしまう自己抜去を言う。

このような抜去の発生原因やその状況を詳細に分析した報告はないので、ここでは日

常の経験を基に発生の状況を述べることとする。

(1)発生の状況

① 事故抜去

a 患者の移動時や体動時に、ライン類がベッド柵、車イス、床頭台、時にはストレ

ッチャーに引っかかって生じることが多い。従って、患者が行動を起こす時間帯、

検査などで移動する時間帯に多い。

b 固定方法が不十分なために抜けたり、あるいは機器の接続部がゆるかったために

自然にはずれたりなど、管理面での不十分さが原因となることもある。また、時

には体位変換時に抜けてしまうなど、医療者が関与した抜去例も報告されている。

【小児の場合】

a 末梢静脈ライン、消化管チューブ、気管挿管で多く見られ、乳幼児に多い。

b 体動が激しい時は抜去が発生しやすい。四肢の動きを制限されている 1 歳の子ど

もが、口で点滴ラインを抜去したり、3 か月の乳児が、気管挿管が苦しく首を強

く振って抜去するなど、乳幼児といえども医師、看護師の想像よりも強い力で、

また、想像しない方法で抜去することがある。

c 体位変換、絆創膏の貼り替え、移動中など、医療者の関与している時にも生じる。

② 自己抜去

a 認知症や意識障害を有する患者、あるいは術後の患者にみられ、医療機関でよく

発生するインシデントの一つである。そのほとんどが認知症・せん妄が基礎にあ

って発生する。近年、入院患者の高齢化に伴い一層増加してきている。

b 夜間に発生することが多く、医療者が訪室したところ胃管を手に持ってベッド上

に座っていたなど、抜去後に発見されることがほとんどである。そして、同じ患

者が何度も抜去することも少なくない。

【小児の場合】

a 病状の回復期や起床後から朝食時の時間帯や、面会時及び面会後に起きやすい。

起床後や面会後などは、子どもが強く泣いたり暴れたりして発生する。また、面

会時は、両親がいるからと医療者の観察が不十分になりがちである。

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(2)抜去防止策のポイント

① 患者周辺の環境整備、ラインの整理

② 医療者側の知識・技術・判断

③ 患者の状態を評価して、個々に予防策を立てる(自己抜去では、そのほとんどが認

知症・せん妄が基礎にあって発生するので、ライン留置の医学的適応の有無の評価

も重要)。

④ 患者に協力を求める。

【小児の場合】

① 抜去発生の要因として、子どもは言葉で苦痛や危険を上手に表現できず、理解力は

獲得過程にあるため、協力は得られにくい。また小さい身体に刺入・挿入されてい

るライン類が多いことが挙げられる。

② 十分な説明により、ライン類の必要性、抜去の危険性を家族にご理解いただくこと

が重要である。

③ 子ども周辺の環境整備

④ 四肢の運動制限に頼らない固定方法の検討

上記のとおり、抜去防止策のポイントを記載したが、予期せぬ抜去は、医療者の注意

と患者の協力により減らしていくことが可能である。

また、自己抜去を防止するには、成長発達と理解度及び活動に応じた固定方法の工夫

と緻密な観察が必要である。

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2 発生要因

(1) 医療者側の要因

① 固定方法

a ライン類の種類に合った固定をしていない。

b 外部からのけん引力に抵抗できる固定をしていない。

c 患者の移動・体動を考慮した固定をしていない。

【小児の場合】

a 子どもの活動性に応じた固定を行っていない。

b 鎮静剤の効果がなくなった後のことを考慮した固定や行動制限を行っていない。

c 乳児だからと安心し、しっかり固定していない(0~1歳でも十分自分で抜く力

があり、手だけでなく口や体動など、思いがけない動きで抜けることがある)。

d 行動制限に頼り過ぎ、しっかり固定していない。

② 観察の視点

a 患者の状態

・患者に関する情報の不足(抜去歴など)

・前回観察時の情報の不足

・体位・体動の問題点の見落とし

・せん妄や不穏の徴候の見落とし

b 固定の状態

・抜けそうな状態の見落とし(マーク位置の確認不足など)

・縫合糸・固定テープのゆるみの見落とし

・刺入部・挿入部周囲のかゆみなど、皮膚変化の見落とし

・刺入部・挿入部の違和感・疼痛の確認不足

c ライン類の状態

・排液バッグ・点滴バッグ・ボトルの異常の見落とし(排液量の量的異常・性状

の変化、輸液量の量的異常など)

・ライン類の屈曲、ねじれ、圧迫などの見落とし

・ライン類の各接続部の確認不足

d その他

・ライン類の定期的観察の不足

【小児の場合】

【注意】

・自宅でライン類を使用していた子どもでは、入院という環境の変化から、

抜去が起きやすい。

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a 面会の家族に頼ることによる観察不足

b 抜去が起こりやすい状況を念頭においた観察の不足

・消化管チューブからの薬剤、食事注入時

・起床時や、家族の帰宅に際し強く泣いている時

・朝食時など、行動制限が解除されている時

・病状の回復期

③ その他

a ライン類の必要性の説明不足

b ライン類の不適切な長さ

c 複数のラインが絡んだり、交差するなどライン類配置の不備

d 不十分な環境整備

e 移動時の不適切な誘導・介助・指導

f 帰宅時の医療者への声かけなど、家族と医療者とのコミュニケーション不足

(2)患者側の要因

① ライン類の必要性の理解力不足

② 移動時・体動時の注意不足

③ 異変についての医療者への申告不足

④ 認知症・せん妄、意識障害

【小児の場合】

① 子どもは言葉で苦痛や危険を上手に表現できず、理解力は獲得過程にあるため、協

力は得られにくい。また小さい身体に刺入・挿入されているライン類が多いことが

あげられる。

② 行動制限の必要性の理解不足

③ 在宅環境と入院環境の違いの理解不足

(3)家族側の要因

・帰宅時の医療者への声かけなど、家族と医療者とのコミュニケーション不足

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第2 抜去の防止策

1 抜去防止策のポイント

(1)患者の状態を評価して、個々に予防策を立てる。

(2)医療者側の知識・技術・判断が重要

2 抜去防止のフロー

(1)発生の防止

*1 意識レベルの変化・見当識異常・理解力低下・せん妄がある、あるいは出現する可

能性がないか。

*2 予期せぬ抜去が生命の危険に関わる場合、患者の状態(*1)に応じて鎮痛剤の使用や

行動制限も考慮する。なお、使用に当たっては、家族にその必要性を十分説明し同

意を得る。

抜去を繰り返す場合は、ライン類留置の継続を含め、他の方法等について医師・看

護師等チームで検討する。

(2)再発の防止

患者の状態の把握

(スコアシートのチェック)

予防策の立案(抜去危険度別対応策)

患者・家族への説明・協力依頼

予防策の実施・結果・評価

職員が共通認識

(情報の共有化)

*2

*1

インシデント・アクシデント・レポート提出

原因分析

再発防止策立案

職員への周知徹底

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3 一般的な防止策

(1)環境整備

① ベッド周囲

a 点滴スタンド・輸液ポンプ・車椅子・ポータブルトイレ・床頭台・オーバーテー

ブル・椅子・寝具などを整理する。

b ライン類を圧迫しないよう、ベッド柵を適切な高さに設定する。

c 患者の体動や活動範囲を考慮したライン類の長さを設定する。

d はさみ、ナイフ等は病院に持ち込まないよう説明する。

【小児の場合】

※小児の場合は身体が小さく、体動が激しいため、ライン類が成人に比べ複雑に絡

み合うことが多い。そのため、以下の点には十分注意する。

a モニター類のコードや輸液のライン、栄養チューブなどが絡まないように整理す

る。

b 処置後の片付けをきちんと行い,不要になった物品は速やかに片付ける。

c ベッド上の玩具等を整理する。

② 病室、廊下、トイレ等

a 病室、廊下、トイレ等の整理整頓を行い、不要な物品を置かない。

b 液体をこぼした時、床が濡れている時は、すぐに拭き取る。

(2)ライン類の管理

① 確認

a ライン類の接続が十分になされていることを確認する。

b 勤務交替時には、ライン類の刺入部・挿入部の状態や固定状態・ライン類の長さ

等を確認する。

c 固定位置の目印を確認する(ライン類の種類に応じて)。

d 途中での折れ曲がり、ねじれ、患者の下敷きになって生じる閉塞の有無を確認す

る。

e 体位変換・処置を行うときは、ライン類の位置の確認を行い、四肢などに引っ掛

けないように注意する。

f 挿入部・刺入部、固定部位等の皮膚の状態観察を定期的に行う。

② 固定方法

a ライン類は、交差しないように刺入部・挿入部側へセットする。

b ライン類は 1か所だけでなく、余裕を持たせて 2~3か所で固定する。

c 刺入部に直接けん引力が加わらないようにループ等をつくり固定する。

d ライン類の種類が多いときは、それぞれ分かりやすく表示する。

【参考】

・交替時にウォーキングカンファレンス等を行い、前勤務者と後勤務者が、

ベッドサイドで患者の情報交換、ライン類の確認をすることが望ましい。

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③ 記録

a ライン類の情報をわかりやすく記録する

※ライン類留置の目的等を記載し、経時的に状態を記録することで、予期せぬ抜

去や体内埋没を早期に発見するよう努める。

【小児の場合】

a シーネ固定は、上肢又は下肢に合わせてシーネを折り曲げ、できるだけ良肢位を

保持する。また関節を含め太めのテープで 3点固定する。

b 点滴が挿入されている肢は、観察しやすいようにしておく。

c 点滴の固定部位は、対側の手や口などではがせないように工夫をする。

d ライン・クレンメ・ポンプは、手の届かない位置に配置する。

e 牽引してもはずれないよう、接続部はロック式のものを使用する。

④ 患者・家族への説明

a ライン類挿入の必要性や実施期間について説明し、十分理解してもらう。

b 予期せぬ形での抜去を防止するため、必要に応じて行動制限を行うことについ

ても説明し、理解と同意を得る。

cトイレに行く等移動する時は、看護師に声をかけるよう患者や家族に伝える。

d 患者や家族に、点滴のおおよその終了時間や交換時間を伝える。

e 寝衣(パジャマ・浴衣)は緩めのものを着用してもらう。

【小児の場合】

a 抜去は、面会前後に多い。面会終了後には看護師等に連絡するよう、家族に説

明する。

【注意】

・小児の回復速度が速いことに留意し、急に立ち上がるなど元気になったとき

を想定した固定を行う。

・乳児であっても抜去する力があることを認識し、固定を行う。

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4 放射線科・検査科等での防止策

(1)検査室内での対応

ライン類を装着した状態で検査に訪れる患者も多い。ライン類の予期せぬ抜去は、

適正な診療の妨げになるので、以下の点に十分注意する。

① 検査前の観察(ライン類の状況把握)と確認

a 検査に影響のある部位に挿入されていないか。

b 検査台への移動時、機器や検査台などに引っ掛ける危険性はないか。

c ライン類は、検査台の移動範囲に支障のない長さであるか。

d 排液バックを装着している患者は、身体と一体で移動できるか。

e 移動による排液の逆流はないか。

② 検査中の対応

a 検査時の立位、座位、臥位等の体位変換により、ライン類が牽引されないか注意

する。

③ 検査終了時の確認

a 固定状況等が検査前と変わっていないことを確認する。

(2)ポータブル検査時の対応

病棟などで、ポータブル検査の対象となる患者は、複数のライン類を装着している

場合が多く、十分な注意が必要である。特に、せん妄、認知症、睡眠覚醒周期障害等

のある患者は、検査途中での抜去の可能性もあり、検査前の装着状況の確認が重要で

ある。

① ポータブル検査時の注意事項

a 検査前に抜去の兆候を認めた場合は、直ちに医師・看護師に連絡する。

b 検査中は、機器の突出部でライン類を引っ掛けないよう十分注意する。

c ベッド移動時には、ライン類の長さを確認する。

d 電源やシールドなどは、患者のライン類に十分注意して確保する。

e 検査終了後は、固定状況等が検査前と変わっていないことを看護師などと確認す

る。

【注意】

・X線撮影、CT、MRI等の検査に影響を及ぼす材質が、ライン類に使用さ

れていないか。

・固定テープのはがれに気づいたり、ライン類が抜けそうだと思ったら技師等

に知らせるよう患者に説明しておく。

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第3 抜去時の対応

ライン類の挿入・刺入は、それぞれ医療上の目的があって実施される。末梢静脈や中

心静脈を用いての点滴のように治療が主目的の場合、動脈ライン(Aライン)のように

主に監視や情報収集を目的とする場合、また、治療と監視・情報収集の両方を兼ねて挿

入されるライン類もある。例えば、手術後の腹腔内ドレーンは、腹腔内の滲出液などを

体外に排泄したり、薬液を注入するという治療と、滲出液の性状、出血の有無、化膿の

有無など手術局所の情報を得るという2つの目的で挿入される。更に、気管挿管や昇圧

剤入り点滴のように治療に加えて生命維持を目的として行われることもある。

したがってライン類の予期せぬ抜去は、治療の中断や患者の状態把握に支障を来し、

時には病状の悪化や生死に関わるような状況を引き起こすことがあるので、迅速な対応

が必要である。

対応のフロー

個別のライン類の抜去によって生じる問題点や対応の方法については、

「第4 各種ライン類の管理」の項を参照すること。

医師に連絡 患者の状態観察

ライン抜去発生 上司に報告

応急処置

必要な検査

家族に説明

・ 記録、患者の状態のアセスメント

・ インシデント・アクシデント・レポート提出

・ 原因分析、再発防止策、周知

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第4 各種ライン類の管理

-固定方法・観察・抜去後の対応-

1 気管挿管

(1)気管チューブ

気道を確保し、換気状態・呼吸状態の改善を図ることを目的に挿入する。

気管カニューレと同一の目的を有するが、挿入する部位、形態、取扱い

などが異なる。

経口挿管と経鼻挿管の 2通りがある。

① 固定方法 (図1)

a 固定位置がずれないように、チューブに固定テープを巻き付けて、汚

れ、発疹のない皮膚に確実に固定する(テープは皮膚に確実に固定で

きるものを選択する)。

b 顔面の火傷、損傷などで、顔面皮膚への固定が困難な場合は、ワイヤ

ーや縫合糸を用いて門歯や、臼歯に固定することがある。

【注意】

・気管チューブ内の吸引操作時、吸引チューブを引き抜くときは、気管

チューブを手で押さえ、チューブの位置がずれないように注意する。

・体位変換は、気管チューブと人工呼吸器の蛇管の接続を外して行う。

外すことができない場合は、チューブが引っ張られないように十分注

意する。

図1 経口挿管の固定

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② 観察

a 患者の状態

・血中酸素飽和度などの計測値が適切か。

・チューブ挿入経路に沿った部位の痛みを訴えていないか。

・両肺の呼吸音が均等に聞こえるか(呼吸時の胸郭の動きが不自然では

ないか)。

・咳嗽反射が強く、それによるチューブ抜去の可能性はないか。

・バッキングしていないか。

・頭部・上肢などの動きが激しくないか(不穏・興奮などがないか)。

b 固定の状態

・チューブの固定位置がずれていないか(挿入部分の長さが適切か)。

・チューブの周囲が口腔内分泌物・血液などで汚染されたり、皮膚発疹

が発生していないか。

・固定テープがゆるんでいないか。

c チューブの状態

・チューブと人工呼吸器の接続が確実か。

・呼吸器の回路に、引っ張られた時のゆとりはあるか。

・カフ圧は適切か。

③ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9参照)

チューブの不用意な抜去は、緊急に換気が開始されない場合、重篤な低

酸素脳症、更には死亡を招く危険性がある。次の注意欄に記載したこと

などが抜去後の再挿管の条件となるが、迅速に対応することが必要であ

る。

a 抜去時は、直ちにマスクによる人工呼吸を開始し、医師を呼ぶ。

b 一般的に呼吸不全があり、気管挿管が長期に及ぶ場合は早期に気管切

開を行う。

【参考】

・抜去はポータブル撮影、体位変換、移送、清拭、口内清掃などに際

して起こることが多いとされる。

・気管チューブの抜去は 3~16%の例に起こり、人工呼吸器装着 100

日当たり、1.1~2.1回の頻度で起こるとされる。

・自己抜去の 48~75%に不穏・興奮がある。

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(2)気管カニューレ

気管切開部にカニューレを挿入し、気道を確保する。

① 固定方法

カニューレは、カニューレホルダーまたはひもで固定する。ひもで固定

する場合は、ひもがゆるくならず、結び目がほどけないよう、本結び(こ

ま結び)とする。

② 観察

a 患者の状態

・血中酸素飽和度などの計測値が適切か。

・咳嗽反射が強くないか。

・頚部・気管部の痛みを訴えていないか。

・頭部・上肢などの動きが激しくないか(不穏・興奮などはないか)。

・切開部の皮膚・孔に変化はないか。

b 固定の状態

・固定ひもがゆるんでいないか。

・カニューレの位置はずれていないか。

c カニューレの状態

・カフのある場合、カフ圧は適切か。

・人工呼吸器のアラームは作動するか。

・カニューレと人工呼吸器の接続は確実か。

・呼吸器の回路に、引っ張られた時のゆとりはあるか。

③ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9参照)

気管カニューレ挿入により人工呼吸を行っている場合、人工呼吸の停止

は、生命の危険に直結する場合が多いので、その対応は迅速を要する。

a 直ちに医師に連絡する。

b 再挿入の準備をする。

c 同一サイズのカニューレ、半サイズ細いカニューレを準備しておき、

抜去が起きた場合に備えておく。

d 気管切開孔を閉鎖しアンビューバッグ人工呼吸を行う。

【参考】

・抜去はポータブル撮影、体位変換、移送、清拭などに際して起こる

ことが多いとされる。

・体動・体位変換、また気道内圧の上昇などにより、カニューレと人

工呼吸器の回路の接続がはずれ、重度の低酸素脳症例、死亡例が報

告されている。これは呼吸筋の障害などにより自力での換気ができ

ないためである。

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(3)小児の気管挿管

気管内に専用の挿管チューブを挿入することで、気道を確保する。

経口挿管と経鼻挿管の 2通りがある。

① 固定方法 (図2)

各施設で独自に工夫して固定を行っている。ここに示すのはその一方法

である。

a 気管内チューブを粘着性テープ等で固定する部分を清拭し乾燥させる。

b 粘着性テープで固定する時に皮膚保護シートや非アルコール性保護皮

膜を用いる方法がある。

c 気管内チューブ挿入の長さに印があるか確認し、その位置をずらさな

いように十分注意する。

d 頭部の圧迫に注意し、砂嚢や固定用具、ガーゼで作ったはちまきなど

を使用して固定する。(図3)

e 新生児ではガーゼなどで口角の高さに合うよう調節し、抜去を防ぐ。

(図3)

f 身体拘束をする場合は、成長発達を考慮して最小限とする。

・A-aを上口唇にしっかり貼り、A-bを挿管チューブに巻きつける。

・B-bを下口唇にしっかり貼り、B-aを挿管チューブに巻きつける。

なお、皮膚保護シートの上に粘着テープを貼り固定する方法もある。

【注意】

・呼吸器回路の蛇管の固定は、引っ張られないようゆるみをもって行

う。

・蛇管の固定に砂嚢や、新生児では小さいおもりを使用し,呼吸回路

が重さで引っ張られないように工夫する(図3)。

図2 経口挿管の固定方法

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図3 新生児の固定方法

② 観察と介護 (観察項目に関しては、(1)②、(2)②参照)

a 小児ではカフ付チューブを使用しないため、多少のリークは止むを得

ない。頭部の向き等でリークの減少を図る。リークがひどいときは、

気管チューブの交換が必要な場合もある。

b 新生児では気管内に挿入されている部分が短いので注意が必要である。

特に極低出生体重児の場合は、より抜去が生じやすい。

c 絆創膏が唾液で汚染されたときや、はがれかけているときには、速や

かに医師に報告し貼りかえを行う。

d 気管内吸引、絆創膏の貼りかえ等はチューブの位置がずれないように

注意深く行う。

e 体動や首振りが激しいときには、早めに落ち着かせる(トントンして

あやす、音楽をかけるなど)。

f チューブ内の吸引操作時は、気管チューブを手で押さえ、チューブの

位置がずれないように注意する。

g 体位交換や体重測定時には、チューブが引っ張られないように注意す

る。

③ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9参照)

チューブの不用意な抜去は、緊急に換気が開始されない場合、重篤な低

酸素脳症、更には死亡を招く危険性がある。迅速に対応することが必要

である。

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a 医師に連絡する。

b 再挿管の準備をする。

【注意】

・新生児、特に未熟児では、ライン類の抜去が発生しやすく、医療者

は抜去への対応訓練を常にしておく必要がある。(マスク、バッグの

使い方、気管挿管の準備、酸素投与、胃内容の減圧等)

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2 静脈ライン

(1)末梢静脈ライン

輸液、薬剤の投与を目的とする。血管確保のために注射針を留置するこ

とも多い。

注射針(翼状針・テフロンチューブ針など)の太さや種類により、血管へ

の刺激性や固定性に違いがある。

① 固定方法(図4)

a 針の固定には、刺入部の針の観察がしやすいガーゼ無し透明フィルム

を用いることが望ましい。

b ラインにループを作る。

c 過度なけん引力による抜去を防ぐため、高粘着力低皮膚刺激性のテー

プ又は伸縮性のテープでラインを固定する。

図4(広尾病院の例)

【小児の場合】

小児では、各施設で独自に工夫をして固定を行っている。ここに示すの

はその一方法である。(図5~6)

a 点滴刺入部を、伸縮性テープで固定する(図5)。

b 細長くカットした伸縮性テープや絆創膏を、点滴ラインの下から上た

すき掛けにして、刺入部を固定する(図5)。

c 点滴ラインにループを作り、刺入部と一緒に、①よりも大きい伸縮テ

ープで固定する(図6)。

d シーネを当て、前腕部と指部を(手関節を挟んで 2 か所)、不織布レイ

ヨンテープなどで固定する。その時、観察のために、指先は見えるよ

うに固定する(図6)。

e シーネに、前腕部と点滴のラインを一緒に、もう 1 か所不織布レイヨ

ンテープなどで固定する。

f 網状のネットなどで前腕から指まで覆うこともある。

g 刺入部を透明なプロテクターで覆い絆創膏で固定する。

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h ラインの接続はロック式を使用し、けん引によるはずれを防止する。

i できるだけ四肢や体部の運動制限を行わない。

j 子どもの状況によって、拘束ジャケットやひもを使用し、また、シー

ネにカバーをする。

図5 図6

② 観察

a 患者の状態

・不穏状態にないか。

・体位・体動に問題はないか。

・過度にライン類を気にしていないか。

・刺入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

・滴下が設定通りか。

・刺入部の皮膚に変化はないか。

・浸出や漏出はないか。

b 固定の状態

・固定部のテープにはがれ・ゆるみはないか。

c ラインの状態

・ライン接続部位にゆるみはないか。

・ラインの屈曲、閉塞はないか。

・患者の動きとラインの長さは適切か。

③ 予期せぬ抜去後の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

末梢静脈ラインの抜去は治療目的を達成しないばかりか、刺入部からの

出血や注射薬の漏れによる組織の損傷・壊死などの危険性がある。

a 刺入部(抜去部)の止血を確実に行う。

b 皮下の腫脹など薬液の皮下漏出の有無を観察するとともに、漏出薬液

の種類を確認する。

c 抗がん剤等、組織壊死を生じる薬液漏出の場合は、速やかに医師に報

告し指示を受ける

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(2)中心静脈ライン

中心静脈圧測定、輸液の注入や栄養補給の目的で行われる。利点は、移

動や体位変換がしやすいこと、長時間の留置が可能であること、末梢静脈

では静脈炎や血栓を起こしやすい薬液も注入可能なことである。主として、

鎖骨下・頚静脈・肘静脈より上大静脈までカテーテルを留置したものをい

う。大腿静脈から挿入することもある。

① 固定方法

a カテーテルの固定は、2 か所以上の縫合により行う(刺入部近くとルー

プ上)。なお、最近では、固定具を用いて固定する方法が増えている。

b 刺入部位は、密着性が高く皮膚低刺激性のガーゼ無し透明フィルムを

用いて保護し、固定する。

c カテーテルに過度なけん引力が直接かからないようループを作り、粘

着性が高く皮膚低刺激性のテープで固定する。

d 皮脂分泌や発汗が多い場合は、まず皮膚にテープを貼り、その上に置

いたチューブをテープで固定する。 【小児の場合】

a 小児用カテーテルは細く、切断や体内留置の長さにズレが生じやすい。

ライン交換、刺入部包帯交換は注意深く行う。

b 原則として行動制限をさせないようなカテーテル管理が必要である。

ただし、安全管理上必要であれば、子どもや家族に身体拘束について

説明し、同意を得た上で実施する。

② 観察

a 患者の状態

・不穏状態にないか。

・体位・体動に問題はないか。

・過度にライン類を気にしていないか。

・刺入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

・滴下が設定通りか。

・刺入部の皮膚に変化はないか。

・浸出や漏出はないか。

b 固定の状態

・固定具又は縫合糸のゆるみはないか。

・固定部のテープにはがれ・ゆるみはないか。

c ラインの状態

・刺入部の目盛りを確認する(体内留置の長さの確認)。

・ライン接続部のゆるみはないか。

・ラインの屈曲、ねじれ、閉塞はないか。

・患者の動きに合わせたラインの長さは適切か。

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【小児の場合】

a ラインの長さが、子どもの行動を制限していないか。

③ 予期せぬ抜去後の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

中心静脈ラインの予期せぬ抜去は、中心静脈圧測定や治療の目的を達成

できないことになる。予期せぬ抜去によりカテーテルの断端が中心静脈

に残存した場合には、血管内異物として生命予後に影響を及ぼすことも

ある。

a 全抜去の場合

・カテーテル先端が切断されて体内に遺残していないか、カテーテルの

長さと先端部の状態を観察する(体内に遺残しているようなら、緊急

にレントゲン撮影を行い確認する)。

・刺入部の圧迫止血を確実に行う。

・ラインの再確保について医師の指示を確認する。

・周囲が血液・薬液で汚染されたときは、速やかに清拭消毒する。

b 抜けかかっている場合

・体外の長さを測定し、体内留置の長さを推測する。

・上記の結果を医師に報告する。

・医師は体内留置の長さを再確認し、継続して使用可能か、新たなライ

ン確保が必要か判断する。

・継続使用が可能な場合は、固定状態の確認を行うとともに、必要があ

れば再固定を行う。

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3 動脈ライン(Aライン)

血行動態の不安定な患者、頻回の動脈血採血が必要な患者に対し、動脈圧

の観察や採血を目的に動脈にチューブを刺入し留置する。多くの場合、橈骨

動脈が用いられる。

(1)固定方法 (図7)

① 留置針に耐圧チューブをつないで、その接続部を固定用テープで固定す

る。

② 耐圧チューブをループさせ、絆創膏で固定する。

③ 必要に応じ手関節をシーネで固定する。

図7

(2)観察

① 患者の状態

a 末梢循環不全の徴候はないか(皮膚の色調変化の有無等)。

b 不穏状態にないか。

c 体位・体動に問題はないか。

d 過度にライン類を気にしていないか。

e 刺入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

② 固定の状態

a 固定用テープを透して血液の漏れなどはないか。

b しっかりシーネ固定されているか。(シーネが使用されている場合)

③ ラインの状態

a モニター上の圧波形に鈍化、平坦化などラインの閉塞を疑わせる変化

はないか。

b 各接続部分にゆるみ、抜け、はずれなどはないか。

ループさせる 固定用テープ

絆創膏

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(3)予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

予期せぬ抜去後は動脈圧測定や動脈血採血に支障を来たし、患者の病状

把握が困難になる。

① 刺入部の圧迫止血を 5 分以上行う。ただし、圧迫が長時間にならないよ

うに注意する(動脈を圧迫するため)。

② 止血後、ガーゼと絆創膏で固定する。

③ 必要があれば他の部位に動脈ラインを確保する。

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4 消化管チューブ (1)経鼻胃管

上部消化管内のモニタリングと治療を目的に挿入される。モニタリングの内容は、

出血の有無・程度、排液量など、また、治療については胃内への薬物・栄養物の

投与、上部消化管内の減圧、術後の縫合不全防止、イレウス防止、胃内容物の

吸引、胃洗浄(薬物・毒物に対する)などである。

① 固定方法

a ①鼻の下で固定する鼻下固定法と②鼻尖から鼻根にかけて固定するC型

固定法がある。(図8)

b 顔面にも 1 か所絆創膏でチューブを固定するのが良い。

c 鼻孔を出たところに印をつける(マーキング)。 【小児の場合】

a 子どもに合ったチューブを使用する。

b 挿入中は、上肢の屈曲を制限することも考慮する。

①鼻下固定法 ②C型固定法

◎胃管を包み込むようにし、皮膚を直接

圧迫しないように鼻下に固定する

※テープによっては、テープの接着が弱く

なるため下地のテープは不要

図8固定方法(広尾病院の例)

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② 観察

a 患者の状態

・不穏状態にないか。

・体位・体動に問題はないか。

・過度にライン類を気にしていないか。

・挿入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

・意識レベルの低下や認知症・見当識傷害等の進行はないか。

b 固定の状態

・絆創膏のはがれ・ゆるみはないか。

・固定部位の皮膚に変化はないか。

c チューブの状態

・体外部分の長さは適切か(マーキングの位置等)。

・内容物が適切に排出しているか(量、性状)。

③ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

目的達成前の抜去は適切な診療に支障を来たしたり、回復を遅らせたりするこ

とになるので十分な注意が必要である。 a 以下の場合には、緊急に対応する必要がある。

・減圧を目的とした胃内容吸引時

・薬物注入時間が近い場合

・栄養物などの投与中の不完全抜去の場合

【小児の場合】

a ミルクが鼻から流出する、嘔吐する、呼吸状態が悪い場合は緊急に医師へ連

絡する。

b 誤飲の可能性があるため鼻腔、口腔内の吸引を行い、内容物を確認する。

(2)イレウス管

機械的イレウスの診断と非手術的イレウス解除、また、術後の減圧を図る目的で

留置する。イレウスの再発防止、縫合不全の防止としても使用される。管を利用し

ての選択的造影も可能である。

① 固定方法

a 図8のとおり確実に固定する((1)経鼻胃管と同じ)。

b 鼻孔を出たところに印をつける(マーキング)。 【小児の場合】

a 体型に合うサイズのイレウス管を使用する。

b 挿入中は、上肢の屈曲を制限することも考慮する。

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【参考】

・イレウス解除の目的で挿入する場合には、先進部が進むことを考慮して、

胃内で 20cm 位のたるみを持たせるよう挿入し鼻孔で固定する。

その上で、1 日 1 回程度レントゲンにより先進部の進行状況を確認し、進

行している場合、胃内に 20cm 位のたるみを持たせるよう再挿入し固定し

直す。

② 観察

a 患者の状態

・不穏状態にないか。

・体位・体動に問題はないか。

・過度にライン類を気にしていないか。

・挿入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

・意識レベルの低下や認知症・見当識障害等の進行はないか。

・肺合併症はないか(呼吸の状態、咳嗽の有無など)。

b 固定の状態

・絆創膏のはがれ・ゆるみはないか。

・固定部位の皮膚に変化はないか。

c 管の状態

・体外部分の長さは適切か(マーキングの位置等)。

・バルーン圧は適切か。

【参考】以下の内容を表示しておくことが望ましい。

・バルーンが拡張中か否か

・その日の挿入部分の長さ

③ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

目的達成前の抜去は、適切な診療に支障を来たしたり回復を遅らせたりする

ことになる。迅速な対応が必要なこともあるので、留置目的を理解しておくこと

が必要である。

a 腹痛の有無、バイタル・サインをチェックする。

(3)胃ろうチューブ(カテーテル)

摂食・嚥下障害を有する患者の経腸栄養剤の注入を目的とする。

胃ろうチューブの多くは、内視鏡的胃ろう造設術で留置される。

胃ろうチューブには、体外の部分がボタン型とチューブ型のものがあり、胃内部

の形状がバンパー型とバルーン型のものがある。

① 固定方法

a 内視鏡的に造設後、バンパー又はバルーンで胃からのチューブの逸脱を防

止する。

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b チューブの体外側についているストッパーで、チューブを腹壁外に固定し、胃

内に引き込まれるのを防ぐ。一般に、体外のチューブを皮膚に固定する必要

はない。

【小児の場合】

a 子どもに合ったサイズを使用する。

b ろう孔形成までは抜去のないよう注意する。

c 挿入中(特に造設初期)抜去の危険性が考えられる場合は行動制限も考慮

する。

② 観察

a 患者の状態

・不穏状態にないか。

・体位・体動に問題はないか。

・過度にライン類を気にしていないか。

・挿入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

b 固定の状態

・ろう孔の状態はどうか(化膿、出血の有無、皮膚の状態など)。

・バルーン内の蒸留水の容量は適切か(バルーン型の場合)。

c チューブの状態

・体外部分の長さは適切か(マーキングの位置等)。

・バルーン圧は適切か。

・使用時以外は引っ張られないよう小さくまとめてあるか。

③ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

対応が遅れた場合、再留置、再造設までの栄養方法を検討する必要が生じる。

a ろう孔の状態により対応。

・ろう孔が完成していない場合(造設後 1週間以内の抜去)

胃と腹壁の癒着が不完全なため抜去により腹膜炎を生じることがある。ろう孔

へのカテーテルの再挿入は控える。

・完成されたろう孔での場合

ろう孔が閉鎖しないように緊急にろう孔を維持するチューブ、ステントなどを

挿入する(ろう孔は不完全ながらも2~3週間で形成される)。

【参考】

・すぐに対処可能である場合は、挿入されていたものと同じ太さの胃ろう

チューブを再挿入する(緊急を要する場合は、導尿のバルーンカテーテル

を挿入する)。

・再挿入後は透視下で造影剤をチューブに注入し、先端が胃内にあること

を確認する。

・確認後に栄養剤の注入を再開する。

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(4)腸ろうチューブ(カテーテル)

経口からの栄養摂取が不十分の患者に対し、経腸栄養剤を注入し、栄養補給

を図ることを目的とする。

チューブは空腸に手術的に留置される。多くは 8~10Fr の細径のチューブが用

いられる。

① 固定方法

a 空腸に留置される経腸栄養チューブは、手術的に留置される。

b チューブは、ろう孔近くで縫合糸で皮膚に固定する。

c 多くの場合は、更にループをつくり皮膚に縫合固定する。 【小児の場合】

a 子どもに合ったチューブを使用する。

b ろう孔形成までは、抜去のないよう注意する。

c 挿入中(特に造設初期)抜去の危険性が考えられる場合は行動制限も考慮

する。

② 観察

a 患者の状態

・不穏状態にないか。

・体位・体動に問題はないか。

・過度にライン類を気にしていないか。

・挿入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

b 固定の状態

・チューブを固定する糸が皮膚から外れていないか。

・固定部位の皮膚に変化はないか。

c チューブの状態

・体外部分の長さは適切か(マーキングの位置等)。

・使用時以外は引っ張られないよう小さくまとめてあるか。

③ 予期せぬ抜去後の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

対応が遅れた場合、再手術を要することがある。再留置、再造設までの栄養方

法を検討する必要が生じる。 a ろう孔の状態により対応。

・ろう孔が完成していない場合(造設後 1 週間以内の抜去)

抜去により腹膜炎を生じることがある。ろう孔へのチューブの再挿入は控える。

・完成されたろう孔での場合

孔にチューブを入れるだけの簡単な操作で、再挿入可能である

(8~10Fr のチューブの場合は、ろう孔が細く、抜けたら 24 時間以内に閉鎖し

てしまうので注意すること)。

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【参考】

・チューブは皮膚に縫合糸で固定してあるので、抜去が生じることは稀であ

る。

・万一抜けても、腸ろう部は腹壁と腸管が接するように縫合してあり、腸液、

腸内容が腹腔内に漏れる心配はない。

【注意】

・再挿入後は透視下で造影剤をチューブに注入し、先端が腸内にあること

を確認する。

・確認後に栄養剤の注入を再開する。

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(5)SBチューブ(Sengstaken-Blakemore tube)

胃用と食道用のダブルバルーンを有する経鼻胃管であり、食道・胃静脈瘤破裂

の緊急止血を目的に使用される。

① 固定方法

a 胃用バルーンに 250~300mL の空気を注入後、食道・胃接合部に密着するま

でゆっくり引き戻し、胃用バルーンを軽く体外に引っ張った状態で鼻孔から出

たところでチューブにひもを掛け、その先端部におもりを付け、点滴架台にぶ

ら下げる(鼻孔の部位で絆創膏固定する方法もある)。

b 食道用バルーンを三方活栓で水銀血圧計に連結し、食道バルーンの内圧が

30~35mmHg となるまで空気を注入する。

c 鼻孔を出たところに印をつける(マーキング)。

【注意】

〔挿入後の管理〕

・3 時間毎に、体外にバルーンを引っ張るようにして鼻孔のところで絆創膏

固定し直す。

・食道潰瘍の発生を避けるため、食道バルーンは 6時間毎に 10分程度脱

気する。

・バルーンの挿入時間は 48 時間程度である。48 時間後には空気を抜い

て、内視鏡で止血の有無を確認する。

② 観察

a 患者の状態

・不穏状態にないか。

・体位・体動に問題はないか。

・過度にライン類を気にしていないか。

・意識障害はないか(肝性脳症を合併することがあるので注意)。

b 固定の状態

・絆創膏のはがれ・ゆるみはないか。

・固定部位の皮膚に変化はないか。

c チューブの状態

・マーキングの位置に変化はないか。

・バルーン圧は適切か。

・引っ張りの程度は適切か。

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【注意】

・けん引力でチューブが口腔咽頭まで引き上げられ、喉頭・気管を塞ぎ窒息

することがある。

・嘔吐・誤嚥による肺合併症にも注意する。

③ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

予期せぬ抜去、あるいは止血不十分な状態での抜去は再出血を来たすことも

多く、この場合には失血が生命予後を左右することになるので、厳重な管理が

必要である。

a 止血不十分な時期の抜去に際しては、病状を評価し、再挿入の要否を判断

する。

b 再挿入が必要と判断される場合には、可及的速やかに再挿入を行う。

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5 腹腔ドレーン

術後、腹腔内の剥離面からの出血や漏出する体液、臓器断端からの液体を速や

かに体外に誘導する。

創傷治癒の異常を早期に察知し適切な対策を講じる。 (1)固定方法

① 閉鎖式ドレーン

a 体表に現れるところで固定する。

通常縫合糸で皮膚に固定する。

b 絆創膏を皮膚に貼り、ドレーンをその上に置き、絆創膏を重ねて固定する。ド

レーンがねじれないように注意する。

c 排液バッグを身体より低い位置に固定する。

d 体位変換を行う際に、ドレーンが引っ張られたり、ねじれたりしないように注意

する。

② 開放式ドレーン

a ドレーンへの圧迫を避ける。

b 定期的に排液量を観察し、必要に応じてガーゼの交換を行い、ドレーン周囲

を乾燥・清潔な状態に保つ。

(2)観察

① 患者の状態

a 不穏状態にないか。

b 体位・体動に問題はないか。

c 過度にライン類を気にしていないか。

d 挿入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

《留置部位》

左右の横隔膜下、ウインスロー孔、側腹部、ダグラス窩、消化管吻合部、実

質臓器切断端など

《ドレーンの種類》

① 形 状 ② 管理上の種別

a チューブ形式のもの ・閉鎖式ドレーン

b ペンローズドレーン型のもの ・開放式ドレーン

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② 固定の状態

a 縫合糸のゆるみはないか。

b 絆創膏のはがれ・ゆるみはないか。

c 固定部位の皮膚に変化はないか。

③ ドレーンの状態

a 体外部分の長さは適切か。

b 引っ張り、屈曲、ねじれ、閉塞はないか。

c 接続不良はないか。

d 排液量、排液の性状に問題はないか。

④ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9参照)

腹腔ドレーンの予期しない抜去によって、ドレーン周囲の組織や臓器

の損傷を生じることがある。また、腹腔内に感染を伴っている場合は、

ドレーンの早期抜去が腹腔内膿瘍や腹膜炎の原因となる。 a 腹痛、発熱の有無、バイタル・サインの変化に注意する。

b ドレーンの遺残の有無の確認、固定に用いた安全ピンなどの回収を確認する。

c 腹腔内臓器の損傷の有無を観察する。

d 創部の観察及び処置を行う。

e 創部を清潔に保つよう処置する。

【注意】

〔排液の性状について〕

① 血液

手術直後には出血の可能性がある。排液中の血液混入の程度とそ

の変化に注意する。

② 胆汁・膵液

肝臓や膵臓の切除術に際して、切除断端近くに留置するドレーンか

ら胆汁又は膵液の排出のあるときは、要注意である。

③ 腸管内容や膿

大腸手術後の縫合不全や感染の可能性がある。排液の性状の変

化に注意する。

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6 胆道ドレーン

胆道の減圧を目的としたドレーン(あるいはカテーテル)である。

胆道内容の排除、洗浄により、黄疸の軽減や胆道感染の治療を目的に留置する。

(1)固定方法

① ENBDカテーテルは、経鼻胃管と同様に固定する(P22図8参照)。

② PTCDカテーテルは、皮膚を通過する部位で縫合固定する。更に万全を期す

場合は、皮膚上にループを作り、2、3か所縫合固定又は絆創膏固定する。

【注意】

・胆道のドレーンは ENBDを除くと、抜去後再度留置することが困難な場合

が多い。予期せぬ抜去が生じないようにしっかり固定し、引っ張らないよ

うに注意する。

・患者にドレーン留置の目的、不用意に抜去した場合の危険性及び緊急

手術となる場合もあることを説明し、理解してもらうことが大切である。

・排液を集めるバッグは胆道の高さより低い位置を保つよう、患者に指導

する。

胆道ドレーンの種類と目的

①内視鏡的胆管ドレナージ

(EBD :endoscopic biliary drainage

ENBD:endoscopic nasobiliary drainage)

内視鏡的胆管ドレナージのうちENBDは、内視鏡観察下にERCP*の手技を

応用して、十二指腸乳頭部から総胆管内に減圧カテーテルを挿入留置

し、胆道の減圧や洗浄を行う方法である。カテーテルは鼻腔を通過して体

外に誘導・固定する。

*(ERCP:endoscopic retrograde cholangiopancreatography)

②経皮(経肝)的胆管ドレナージ

(PTCD:percutaneous transhepatic cholangio- drainage 又は

PTBD:percutaneous transhepatic biliary drainage)

局麻酔下に、超音波ガイドにてカテーテルを肝臓内の胆管に誘導留置す

る。閉塞性黄疸の緊急処置として用いられることが多い。

この他に、十二指腸乳頭部から総胆管内にステントを留置する方法

(biliary stenting)も行われている。

③外科手術に伴う胆道ドレナージ

総胆管の減圧、胆管空腸吻合部の減圧等を目的に手術中に留置する。

総胆管結石の手術には、Tチューブが用いられる。チューブは右側腹部又

は肋骨弓下に誘導し、皮膚を貫いて体外に誘導する。

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(2)観察

① 患者の状態

a 不穏状態にないか。

b 体位・体動に問題はないか。

c 過度にライン類を気にしていないか。

d 挿入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

② 固定の状態

a 縫合糸のゆるみはないか。

b 絆創膏のはがれ・ゆるみはないか。

c 固定部位の皮膚に変化はないか。

③ ドレーンの状態

a 体外部分の長さは適切か。

b 引っ張り、屈曲、ねじれ、閉塞はないか。

c 接続不良はないか。

d 排液量・排液の性状に問題はないか。

④ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9参照)

予期せぬ早期の抜去が生じた場合には、胆汁漏出による急性腹膜炎を生

じることがある。また、胆道の減圧不良のため胆汁の欝滞を生じた場合

には、そこに消化管からの逆行性感染を生じることがしばしばある。胆

道の感染は敗血症の原因となるので、予期しない抜去には慎重に対処す

る。 a 腹痛、発熱の有無、バイタル・サインの変化に注意する。

b 創部を清潔に保つよう処置する。

c ドレーン先端部遺残の有無を確認する。

d 創部からの排液の性状と量を確認する。

【注意】

・突然の排液量減少は要注意である。

・膿性の排液あるいは血性の排液の場合は要注意である。

【参考】

・腹腔経由の胆道ドレーンは、時間の経過とともに、肝臓と腹壁をつなぐト

ンネル状の組織(ろう孔)ができる。この後には、ドレーンを抜去しても胆

汁が腹腔内に漏れることは少なくなる。このような状態になるには 2 週間

程度を要する。なお、全身状態不良、高齢、肝障害、腹水を有する患者

の場合には更に時間を要する。

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7 胸腔ドレーン

種々の疾患や手術操作によって、胸腔に空気や液体が貯留することがある。

これらを排出する目的で胸腔にドレーンを挿入する。

(1)固定方法

① 胸腔ドレーンは、挿入部で皮膚に縫合固定する。

② ドレーン刺入部より胸水の漏出が起こることがあるため、切り込みガー

ゼを置き、透明フィルムを用いて固定する。

③ 皮膚に横に絆創膏を貼り、その上にドレーンを乗せ、10cm 程度の絆創膏

で上から固定する。更にY字に切り込んだ絆創膏でドレーンが跳ね上が

らないよう固定する。

④ 適当な部位で、ドレーンと皮膚にマジックでマーキングを行う。

⑤ ドレーンの長さに余裕のある場合には、もう 1 か所同様に絆創膏で固定

する。

⑥ ドレーンとハイムリッヒ弁の接続は、結束バンドを用いることが望まし

い。

【小児の場合】

① 低出生体重児では、気胸の治療でドレーンを挿入する場合、縫合固定で

はなく絆創膏で固定する場合もある。

(2)観察

① 患者の状態

a 不穏状態にないか。

b 体位・体動に問題はないか。

c 過度にライン類を気にしていないか。

d 挿入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

e 挿入部周囲の皮膚に変化はないか(びらん、発赤、かゆみなどの有無)。

② 固定の状態

a 絆創膏にはがれ・ゆるみはないか。

b 縫合糸のゆるみはないか。

③ ドレーンの状態

a 持続吸引装置が正しく作動しているか(陰圧装置を付けている場合)。

b 吸引装置の位置は適切か。

c ドレーンとハイムリッヒ弁、ドレーンとドレーン、ドレーンと吸引ボ

トルの接続にゆるみはないか。

d ドレーンの閉塞、屈曲、ねじれ、圧迫はないか。

e マークの位置移動はないか。

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(3)予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

予期せぬ抜去は排気や排液という本来の治療に支障をきたすのみならず、

空気流入のため胸腔内の陰圧が保てず、肺の虚脱、縮小を引き起こし換気

状態の悪化を招くおそれがある。

① 直ちにドレーン挿入創を塞ぎ、空気の流入を止める(ガーゼで創部を押

さえる・テープで創部を密封するなど)。

② 上記処置の上、直ちに医師に連絡する。

【注意】

・生理的に胸腔内は陰圧であり、貯留した空気や液体を排出するため

には、常にドレーンに陰圧をかけておく必要がある。

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8 尿路カテーテル

(1)膀胱内留置カテーテル

膀胱に貯留した尿を持続的に誘導・排出するためのカテーテルである。排尿障

害がある場合、経時的な尿量測定が必要な場合、あるいは臀部周囲の創部の尿

による汚染防止のためなど、広く用いられる。

① 固定方法

a バルーンを 5~10mL の蒸留水で確実に膨らませる。

【小児の場合】

a カテーテルのサイズにより、バルーンを 1~5mL の蒸留水で確実に膨らませる。

b バルーン部が膀胱頸部に接触するまでカテーテルを引く。

c 男性は腹部、女性は大腿部(図9)に粘着性布伸縮包帯のような多少弾力性

のある絆創膏を 1 枚皮膚に貼り、その上にカテーテルをのせて、テープでカ

テーテルを包むように接着面を広く貼り、固定する。

図9 〈固定方法例〉

【小児の場合】

a 大腿部にテープで固定する。

b 上記のように、大腿部にテープで固定し、更にけん引されても抜けないように

カテーテルとバルーン注入口との二股部でテープを貼り、固定する。

c 尿バックを適切な場所に固定する。この時、尿バックのラインがベッド柵等に

引っ掛からないよう注意する。

d 自己抜去の危険性が予測される場合は、カテーテルをズボンの中を通す、

あるいは包帯で下肢に固定するなど手が届かないよう工夫する。

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② 観察

a 患者の状態

・不穏状態にないか。

・体位・体動に問題はないか。

・過度にライン類を気にしていないか。

・挿入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

b 固定の状態

・テープにはがれ・ゆるみはないか。

・固定部位の皮膚に変化はないか。

c ラインの状態

・尿バッグの位置は適切か。

・尿量と尿の性状に問題はないか。

・カテーテルの走行に問題はないか。

・尿漏れはないか、尿道からの出血はないか。

・ねじれ、屈曲、圧迫、けん引はないか。

・体外部分の長さは適切か。

③ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

予期せぬ抜去により、尿の排出に困難を生じたり、尿量の正確な測定ができ

ない、あるいは尿による創部汚染を予防できないなどの不都合が生じる。

a 抜去時の観察項目

・バルーンは膨らんだままか、破裂していないか。

・カテーテルの先端部が体内に遺残していないか。

・尿道からの出血はあるか、出血がある場合その程度はどうか。

【注意】

・再挿入が簡単にできない時は専門医に依頼する。

・尿道損傷がある場合には再挿入しにくくなることを念頭に置く。

・再挿入で尿道からの出血は自然に止血することが多いが、出血量が多

い場合は緊急の対応を要することがある。

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(2)腎ろうカテーテル

腎孟尿管移行部から尿管膀胱接合部までに通過障害があり、水腎症となった

腎に対してスムーズな尿流確保のために留置される。永久的な場合と一時的な

場合がある。

① 固定方法

a 腎盂バルーンカテーテルは、水腎症の程度によりバルーンを蒸留水 1~4mL

で確実に膨らませ、ろう孔より 3~4cm 外側の皮膚に粘着性布伸縮包帯で

固定する。

b 3孔先穴カテーテル・ファイコンカテーテルの場合は、円盤状の「ツバ」を付

け、これを皮膚に粘着性布伸縮包帯で固定する。

c ピッグテイルカテーテル(通常一時的な腎ろうとして使用される)は、皮膚の

縫合固定と、余裕をもって皮膚に粘着性布伸縮包帯で固定する(縫合だ

けの固定では不十分)。

d ピッグテイルカテーテルは、尿バックまでの接続が難しいことが多いので市

販されている専用の接続器具を使用することも一法である。

e 尿バックの重みがカテーテルにかからないように尿バックの固定を行う。

【注意】

・側臥位をとった時、挿入部が身体の下となりカテーテルの圧迫、屈曲

等を容易に引き起こすため、固定の位置、固定の方法、患者への指導

が重要である。

【小児の場合】

a カテーテルのサイズにより、バルーンを蒸留水 1~3mL で確実に膨らませ、

皮膚に 2 か所以上でカテーテルを粘着性布伸縮包帯で固定する。

b 集尿袋の重みがカテーテルにかからないように固定を行う。

② 観察

a 患者の状態

・不穏状態にないか。

・体位・体動に問題はないか。

・過度にライン類を気にしていないか。

・挿入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

b 固定の状態

・テープにはがれ・ゆるみはないか。

・固定部位の皮膚に変化はないか。

c カテーテルの状態

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・バッグの位置は適切か。

・尿量と尿の性状に問題はないか。

・カテーテルの走行に問題はないか。

・尿漏れはないか、尿道からの出血はないか。

・ねじれ・屈曲・圧迫・けん引はないか。

・体外部分の長さは適切か。

③ 予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

目的を果たす前の予期せぬ抜去は通過障害を助長することになり、水腎症

の発生や既にある水腎症の悪化を来す。

a 医師に連絡し、再挿入の準備を行う。

b 抜去後の観察項目

・バルーンは膨らんだままか、破裂しているか。

・カテーテルの先端部が体内に遺残していないか。

・ろう孔からの出血はあるか、出血がある場合その程度はどうか。

・ろう孔から尿の流出はあるか。

・いつからカテーテルの尿流出がなくなったか。

【注意】

・再挿入は急を要する(時間が経過するとろう孔が塞がる)。

・抜去に気づいた時には、同じ太さか、又は少し細いカテーテルを入ると

ころまで挿入・固定し、医師に連絡する。

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9 脳神経外科領域のドレーン

脳神経外科領域におけるドレナージの目的は、頭蓋内圧のコントロール、血液(血

腫)・膿排除、髄液灌流・洗浄、薬液の注入である。

[ドレーンの種類]

① 皮下ドレーン

② 硬膜外ドレーン

③ 硬膜下ドレーン(慢性硬膜下血腫腔内ドレーン)

④ 嚢胞・膿瘍ドレーン

⑤ 脳室ドレーン

⑥ 脳槽ドレーン

⑦ 腰椎ドレーン

(1)固定方法

① 頭皮あるいは腰部皮膚に、絹糸等で縫合固定する。

② 頭部のドレーン刺入部はガーゼで覆う。

③ 上記腰椎ドレーンは、ループを作り絆創膏で皮膚又はガーゼに固定する。

④ 皮下ドレーン、硬膜外ドレーン、硬膜下ドレーン(慢性硬膜下血腫腔内ドレー

ン)は廃液バッグと接続し、廃液バッグはベッド上に固定する。

⑤ 脳室ドレーン、脳槽ドレーン、腰椎ドレーンは、サイフォンをつけ外耳孔を基

準として医師の指示のもとに固定する。

(2)観察

① 患者の状態

a 意識障害はないか。

b 認知症・見当識障害の進行はないか。

c 不穏状態にないか。

d 体位・体動に問題はないか。

e 過度にライン類を気にしていないか。

f 挿入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

② 固定の状態

a 縫合糸のゆるみ、絆創膏のはがれ・ゆるみはないか。

b 創部、三方活栓接続部ガーゼの血液汚染はないか。

c 髄液漏出による湿潤はないか。

d 固定部位の皮膚に変化はないか。

【注意】

・意識障害等が認められる患者は、無意識にドレーンを抜去してしまう危

険性が高い。

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③ ドレーンの状態

・皮下ドレーン、硬膜外ドレーン、硬膜下ドレーン(慢性硬膜下血腫腔内ドレー

ン)、嚢胞・膿瘍ドレーン、脳室ドレーン、脳槽ドレーン、腰椎ドレーン

a 排液量・性状(血性の増強など)に問題はないか。

・脳室ドレーン、脳槽ドレーン、腰椎ドレーン

a マークは移動していないか

b 髄液の滴下不良はないか

c 拍動はあるか、液面移動はあるか

(3)予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

ドレーンの不具合や目的を果たす前の抜去は、患者の意識レベルを始めとする

神経症状や呼吸障害、ひいては生命予後に直結する影響を及ぼす可能性が高

いので、その管理は重要である。

① 抜去後の創部の処置

a 完全抜去の場合

・体内に遺残がないか、ドレーンの長さと先端部を確認する。必要があればC

T・MRを実施し確認する。

・ドレーン挿入部を消毒し、ガーゼで厚く覆い圧迫しておく。

・創部を上にして、頭位を高めに保持する。

b 回路の中継点で外れた場合

・先をシリコンチューブ等で囲ったペアン鉗子で中枢側をクランプし、断端部

を十分消毒し、滅菌ガーゼあるいはドレープで被覆しておく。

・創部を上にして、頭位を高めに保持する。

・回路の交換を早急に行う必要がある。

【注意】

〔抜去の可能性がある場合の対応〕

・滴下不良、液面移動なし、マークの移動、創部ガーゼの汚染等が

見られた場合は、抜けかかっているか、抜けている可能性が高い。

・創部汚染が見られた場合は、ドレーン挿入部を消毒し、ガーゼで

厚く覆い圧迫しておく。

・創部を上にして、頭位を高めに保持する。

・医師に連絡する。

【注意】

1 ドレーンの整理

脳神経外科領域では、くも膜下出血術後など、しばしば、脳室、

脳槽ドレーン、硬膜外ドレーン等、多くのドレーンが狭い範囲で

挿入されていることがある。これらドレーンがお互いに絡まぬよ

う、整理・注意する。

2 ドレーンクランプ時の注意

坐位で食事可能な患者の場合、坐位の間はドレーンをクレンメ

でクランプすることがある。

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c ドレーン挿入部の縫合後、患者の状態により以下の対処が必要となる。

・髄液の漏出がないか、ガーゼを観察する。

・意識レベルやバイタル・サインの変化に十分注意する。

・CT等の検査

・感染予防の処置

・再挿入

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10 硬膜外カテーテル

硬膜外腔にカテーテルを留置し、局所麻酔薬を持続又は反復注入して除痛を図

る。短期留置は手術時や術後の疼痛除去に、長期留置は癌性疼痛除去を目的に

使用される。 (1)固定方法(図10)

① カテーテルをループさせる。

② 挿入後、患者の背中を屈曲位より伸ばす。

③ 固定用テープを貼る。

④ 患者の状態に応じて、ルートは絆創膏で肩口まで固定する(脊椎骨と肩甲骨

をまたがないように注意する)。

※注入用ボトルの扱い方

薬液ボトルをバックに収納し、寝衣や身体に固定するよう工夫する。

図10

(2)観察

① 患者の状態

a 不穏状態にないか。

b 体位・体動に問題はないか。

c 過度にライン類を気にしていないか。

d 刺入部の違和感・疼痛の訴えはないか。

② 固定・カテーテルの状態

a 固定用テープを透して液漏れの有無を観察する。

b 液漏れがある場合には、固定用テープをはずしてカテーテルの長さを確認

する。

絆創膏 固定用テープ

ループさせる

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c 液漏れがない場合には、絆創膏を貼りかえ、カテーテルの折れ曲がり、伸び

がないか観察する。

(4)予期せぬ抜去時の対応(「第3 抜去時の対応フロー図」P9 参照)

予期せぬ、あるいは目的を果たす前の抜去は疼痛への対策が不十分となり、患

者に大きな苦痛を与えることになる。 ① カテーテルの抜け、折れ曲がり、伸びがある場合にも医師に連絡する。

② カテーテルの抜けを発見したら、まずカテーテル先端部の切断の有無を確認

する。

③ 必要があればカテーテルを再挿入する。

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〔参考資料〕

資料1 挿管チューブ・気管カニューレ抜去事例集

挿管チューブ 気管カニューレ

絆創膏が唾液で濡れて

剥がれた。

レスピレーターを装着したまま

ガーゼ交換し

抜けた。

体位変換後、リーク音が

強くなった。

清拭実施時、カニューレ固定

ベルトが緩んでいた。

ベットサイドでPTが

リハビリを実施中に

チューブを確認せず、体

を動かし引っ張られて

抜けた。

シーツ交換時、蛇腹が引っ張られて抜けた。

MR終了後、ストレッチャー

移動時に、掛け声確認がなく一致した

移動行動ができなくて

抜けた。

ベッドから移動時、アンビュー使用し引っ掛け

て抜けた。

両上肢を拘束し、ベットアップしていた。発見

時は、体をチューブが届く位置でずらし抜けて

いた。

絆創膏

固定

ゆるみ

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挿管チューブ 気管カニューレ

手、胴拘束、ミトンによる拘束中であった。

ベットアップし、手の拘束がゆるくなったとこ

ろで挿管チューブに手が届き、抜去した。

拘束のミトンをしていたが、上半身持ち上げ、

顔を近づけ、抜去した。

鎮静剤を使用していたが、前日中止になった。

その後、体動が活発で、起き上がり動作等がみ

られた。拘束をしていたが手が挿管チューブに

届き抜去した。

カニューレを挿入中、拒否感が強く自己抜去し

た。再挿入の必要性を説明するが受け入れるこ

とができず、気管孔は閉じた。

抜管を明日予定していたが待ちきれず、抜去し

た。抜管時のアセスメントが重要。

普段は手拘束をしていたが、家族が付き添っ

ていたので一時的に外した。家族が目を離した

すきに抜去した。

鎮静剤中止後!

納得でき

ない!

明日 抜管予定!!

待てない

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挿管チューブ 気管カニューレ

処置中、採血時に抜けた。 カフなし、カニューレガーゼが 2 枚で浮きやす

い状態のガーゼ交換を、看護師 1 人で行い抜け

た。

唾液で固定用絆創膏が濡れていた。

固定紐の長さが、児の体の成長に合わなかった。

体動、啼泣があり、吸引後 1cm抜けてきていた。 喉頭分離術後、カニューレは短めを使用。強直

強く、弓直りになって自然抜去した。

体動が激しく、頭部を砂嚢で固定し、

上下肢の拘束を行ったが抜去した。

母親が帰ろうとした時、自己抜去を発見した。

カニューレ

唾液

親の面会

終了時! 砂嚢固定

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自己抜去危険度アセスメントスコアシート(例)

東京都立広尾病院

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〔参 考 文 献〕

1 山口 徹.北原 光夫.(編) 今日の治療指針 2003 年版 医学書院 2003

2 国立がんセンター内科レジデント.(編) がん診療レジデントマニュアル第3版.

医学書院 2003

3 高橋 章子.(編) 最新・基本手技マニュアル(エキスパートナース MOOK17 ).

照林社 1995

4 市川智恵子.(編) 消化器外科・看護技術のコツのコツ(2). 消化器外科 NURSING. 2004

Vol.9 No.8

5 深沢広美. 挿管チューブ・気管カニューレ抜去防止対策検討.第47回全国自治体病院学会

2008

6 樫山 鉄矢.山本むつみ. ナースのためのやさしくわかる人工呼吸ケア. ナツメ社. 2007

7 Pandey, CK, Singh N, Srivastava K, et al. Self-extubation in Intensive Care and

Re-intubation Predictors: A Retrospective Study. J Indian Med Assoc 2002 Vol.100 p.11-17

http://www.jimaonline.org/jan2002/originals1_01.html

8 Boulain T, et al. Unplanned Extubations in the Adult Intensive Care Unit . A Prospective

Multicenter Study. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 1998 Vol.157 p.1131-1137

http://ajrccm.atsjournals.org/cgi/content/abstract/157/4/1131

9 Ebstein S, Nevins ML, Chung J Effect of Unplanned Extubation on Outcome of Mechanical

Ventilation. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2000 Vol.161: p.1912-1916

http://ajrccm.atsjournals.org/cgi/content/abstract/161/6/1912