鶉瞼

楊

計

騒」籍

■

ク‐‐‐‐‥‐――‐‐一年

一一経肇

彗

筆蝙

ｉＶ

書

褥

滲

薇

婁

天安門広場百万デモの背景

朝　今年は六四天安門事件二五周年にあたります。本日は、

今日的視点から六四を、六四から今日の中国をと、時代を交

錯させながら、今日の中国の諸問題を解き明かしていただき

たいと思います。まず最初に、天安門広場では虐殺はなかっ

たということを押さえておきたいと思います。矢吹さんは、

このことを早い段階から指摘されていました。当時は中国政

権側に迎合するものだという批判も多くありましたが、私は

この指摘には重要な意味が込められていると思

っています。

ものごとを分析する場合、情報をどう扱うか、どのように取

捨選択していくかが問われますが、中国の場合、とりわけ政

治的なことに関しては情報開示されないということがありま

すから、伝聞情報を排し、　一次資料を探り、分析していくと

いうスタイルを貫かねばなりません。別の言い方をすれば、

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

報道のあり方、報道の読み方――メディアリテラシーが問わ

れます。広場の問題――天安門広場では虐殺がなかった、こ

れを確認することは、現代中国を分析するスタンスに関わる

重要な要件とも思いますので、ここから語

っていただきたい

と思います。

矢吹

「広場における虐殺問題」を論じる前に、こう

いう事

件が起きたときに人々がどういう反応をするかということを

申し上げます。日本が戦争に負けたとき、ブラジルの日系社

会において

「勝ち組」と

「負け組」との間で大論争が起こっ

て大ゲンカにな

った。

つまり、「日本は負けるはずがないと

信じている人々」がブラジルの日系社会には少なからず

い

た。しかし、国際情勢がわかっている人は

「負けたという報

道」を真実と思った。ところが、負けるはずがないと信じて

いる人は絶対に負けたことを認めない。これと類似のことが

五九

ヽ

― ＼

天安門事件でもあ

ったのです。当時、北京市内で軍と群衆の

衝突現場を見て、驚いた日本人は少なくないし、中には銃口

を向けられた方々もいる。彼らはそのとき抱いた恐怖感を現

在でもトラウマとして残しており、自らの小さな部分体験か

ら逃れられない。それが鎮圧行動のすべてと思い込み、それ

を確信しています。私は鎮圧翌年の九〇年八月に北京で衝突

現場を約

一カ月事後検証して、この種の日本人に少なからず

会いもしましたが、激論となりました。あれから四半世紀、

当時の事件の、いわゆる目撃者は依然として私の分析を容認

する者と否認する者とに三分されています。後者の人々は、

私の本を絶対に読まないし、読んでも頭に入らないのです。

あの事件で政治に目覚め、現在も反体制的な陣営に属して

いる

一人の知識人に、二〇

一四年八月に会いました。この人

物は、私の編集した天安門事件関係の本をすべて日本の吉本

屋から入手していました。特に参考になるのはチャイナク

ライシス

・シリーズの中の村田忠腟編

『「動乱」日誌』［蒼蒼

社、一九九〇年］だと証言しました。事件について細部の日付

や前後関係を確認する上で必須の文献と太鼓判を押したので

す。運動の渦中にあり、今もその

一角にいる人物でさえ、自

分の抱いたイメージの部分性、ゆがみから免れられないので

す。マ

スコミはそもそも天安門事件の取材に行

ったのではなく

て、歴史的な中ソ会談をやるというのでゴルバチョフを取材

六〇　ヽ

するために事前準備を行

っていたのです。取材チームは五月

の初めから行

っていた。待ち構える取材陣の前にゴルバチョ

フはなかなか来ない。その中で追悼デモ、葬式デモが起こっ

た。党主席

・胡耀邦が亡くなったのが四月

一五日。すぐに追

悼を呼びかける動きが生まれた。胡耀邦は学生運動

・民主化

運動に理解があると見られていた。これは事実です。胡耀邦

は保守派の攻撃を受け、都小平はかばいきれずに、馬談

［諸

葛孔明が軍律を守るため涙を流して切った才ある武将］として切

っ

たのです。そのような開明的な指導者の急逝というので、中

国共産主義青年団、共青団系の活動家を中心に、胡耀邦に対

する同情票が集まりました。

胡耀邦が亡くな

って始ま

った追悼ですが、最初はちょろ

ちょろしたもので、ほとんど大衆的な支持はなかった。ただ

し、小さなデモを世界中のテレビチームが映し始めた、これ

は全くの偶然です。特に香港の取材チームの影響が大きかっ

たのだけれど、広場で何かやっている、　一体なんだ、民主化

要求らしい、とな

った。文革が終わつて以来、デモは七六年

の第

一次天安門事件だけ。これは清明節

Ｔ一十四節気の一つ。

中国では墓参りの風習がある］に際して、その年の

一月に死去し

た周恩来追悼を回実にして、四人組

への不満を表明した騒ぎ

であり、それ以来の広場におけるデモというので、世界中が

注目した。中国政府は歴史的なゴルバチョフ訪中を控えてい

るのだからと、まず中ソ和解を成し遂げ、そのあとで学生運

動対策を行う予定を立てて、当初は学生たちの動きを放任し

ていた。「放任

一カ月」の間に、内外のメディアを通じて運

動が広がった。すなわち、学生

・労働者

・市民が

「下から組

織して運動を盛り上げた」というよりは、外国メディアを通

じて面白半分に話題が広げられたということなのです。

中国政府はそうした動きをただちに弾圧することをため

ら

つていた。

いろいろ処理方法を考えているうちに大きく

な

ってしま

った。四月二六日付

『人民日報』は学生デモを

「動乱」と認定する社説を掲げて、学生の反発を買

った。こ

の時点では、民主化デモなのか、文革のような動乱なのか、

その性質は何かと

いう基本認識において当局は判断が分か

れ、処理方法を迷

っていたのです。

何を言いたいかというと、民主化運動がそんなに急速に強

ま

ったとは言えないのではないか、という運動の限界です。

むしろメディアの報道に誘発されて、じやあ見に行こうかと

いう人々も多か

った。五月二〇日に戒厳令が出たころから

は、潮流が

一変します。

運動を

一所懸命でやっていた連中は、まずいと撤退を始め

るのです。どうでつグループかというと、北京の学生たちと

か、趙紫陽党総書記につながる党中央組織系の動員による

人々とかです。つまり広場で

「百万デモ」ができたのは、ず

ばり言

って趙紫陽が支持していると見られていたということ

です。趙紫陽の秘書グループ、側近グループから党中央の指

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

示なるものが流れた。人民日報その他、党中央あるいは政府

系機関の旗を公然と掲げた単位

［機関］がデモに出てくる、

官製メーデーと同じことになったのです。趙紫陽が認めてい

るのだから、やつても責任をとらされることはないと爆発的

な勢いになった。デモの隊列が百万に膨れたのはそういうこ

とです。これらの人々に代わ

って、相変わらず広場を占拠し

続けたのは、地方からやつてきたおのぼりさん組です。この

形も文革における北京組と地方組の関係に似ています。

実は当初は趙紫陽自身さえも、あまり状況がわかっていな

かつた。だから北朝鮮になんか行

ったりしている。四月三〇

日に帰国するが、この間に、李鵬らの陰謀が成功して、趙紫

陽は受け身になる。保守派長老による

「人老治国」の構図が

成立して、趙紫陽は棚上げされる。帰国の時点で、学生運動

を

「動乱」として処理する李鵬案はすでに

「八老治国」会議

で決定していた。趙紫陽が留守の間に、保守派李鵬は長老を

巻き込み、これは動乱、すなわち文革と同じだから、徹底

的に弾圧するのみとする方針を部小平に虚偽報告して決定さ

せ、『人民日報』に

「動乱社説」に発表した。そこで学生た

ちをますます怒らせて、過激な運動に向かわせる。

とは言え、それがただちに百万デモになったのではない。

百万デモの背景には、あまり言われていない二つの要因があ

ります。　一つは外国メディアの報道が国内に逆輸入されて運

動を紹介する役割を演じたこと、もう

一つは党中央筋から公

上（　一

ヽ

― ＼

然

・非公然のアピールがあ

ったということです。趙紫陽の秘

書

・飽形の役割や、政治改革を訴えていた中国社会科学院政

治学研究所所長

・厳家祓がしばしばアピールを繰り返すとい

うことは、趙紫陽に近い、すなわち党中央筋がアピールを出

しているようなものと受け止められて、百万というすごいデ

モにな

ったわけです。この文脈では

「動員されたデモ」なの

です。

これは事後の姿から、逆にわかります。六四鎮圧以後、何

も大きな抵抗がない。百万デモは、いわば雲散霧消した。

リーダーたちは国外に逃れ、劉暁波みたいな少数の者が投獄

されておしまいとなった。百万デモがあ

っという間に消えて

しま

った理由は、下からの根を欠いていたことが根本的理由

です。

その点が運動全体を評価する上でものすごく重要だと考え

るのです。私は民主化運動を過小評価しようとしているので

はなくて、その実態を見極めたいのです。日本でも他の西側

諸国でも、六四の流血という、非常に断片的なイメージの積

み重ねだけで民主化幻想を描いています。政治的な混乱が拡

大したのは、民主化に理解を示すことで政治力を強化したい

と考える趙紫陽総書記と、民主化に恐怖を感じて鎮圧を急ご

うとする反改革派、保守派の対立によって、党中央の指導が

三分されたからです。いわゆる民主化デモは、その間隙をつ

いて拡大したものであり、百万デモという表象から、民主化

エハ一　一

要求の根強さや影響力を評価すべきではないと言いたいので

す。もし、それを論ずるならば、高度成長を経た今こそ、中

国では社会的矛盾が山積し、さまざまな分野で深いところか

ら、民主化

への胎動が見られます。とは言え、体制側の弾圧

措置も巧妙になり、多元化しているので、ただちに体制が崩

壊する兆候は見られないと思います。

テレビで繰り返される流血の映像から生まれるイメージ、

暴力に素手で立ち向かう無名の若者、特に戦車に素手で立ち

向かう青年のイメージ、これらの断片と百万デモを結んで、

中国の民主化勢力の

「強さ」を考えると、その後の、おとな

しい中国人の態度は理解できないはずです。

劉暁波が押し止めた天安門広場の虐殺

矢吹　そこで

「広場の虐殺」の有無を検証することの意味な

のですけれど、広場に到達するまでに、群衆と軍が衝突して

いるのです。軍の出動部隊は六月四日未明までに天安門広場

に到着せよという軍令を受けている。ただし武器使用の許可

は得ていない。

市民の抵抗や妨害を排して、「武器は不使用で広場に到着

せよ」という軍令に従

って、現場の司令官も兵士たちも行軍

を始めた。ところが、西線では、群衆はバスを横につないで

陸橋の下に並べて火をつけて炎のバリケードをつくる。陸橋

の上からは石やコンクリートブロックを投げつける。この手

荒い歓迎に立ちすくんだ兵士の

一部がデモ隊に巻き込まれ、

殴打され、死去する例も現れた。東線では、逃げ遅れた兵士

を捕まえ、ガソリンかけて焼いて陸橋にぶら下げたりしてい

る。そういうこともあ

つた。

市街戦にも似た武力衝突のプロセスで、発砲が始まると死

者が続出した。この衝突劇は、軍はあらゆる手段を用いて広

場に到着することを至上命題としており、群衆は自らに有利

な地点で軍の進行を妨げるために若干の銃を含めて応戦して

起きたものです。これは繰り返しますが、ほとんど市街戦に

似ており、少なくとも

「軍による虐殺」という表現はそぐわ

ないのです。

正規軍と群衆軍との衝突であるから、正規軍が圧倒的に

有利なことは明らかです。しかし、群衆軍は、ガソリンや

チェーン、煉瓦ブロックを武器として完全武装の兵士の殺傷

に成功している。この事実からして、正規軍の発砲は

「味

方が死傷するような重大局面」で行われたことが確認でき

ます。より具体的に調べると、戒厳軍は、西線――三八軍、

二七軍、六三軍、東線――藩陽部隊三九軍、四〇軍、南線―

―済南部隊

一五軍、五四軍、空挺部隊、北線――二四軍、二

環路で待機した北京部隊、と東西南北から天安門広場を目指

しました。

最大の衝突は西線で起こり、兵士九名が死去した、すなわ

ち公主墳で六名、阜成門で二名、西単で

一名です。東線では

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

東単で

一名、崇文門で

一名、計二名です。南線では珠市口で

一名、宣武門で

一名、計二名です。これら

一三名は、「共和

国衛士」の称号を得て手厚く祀られました。軍の論理からし

て、名誉の戦死者を隠す理由はない。論功行賞を十分に行わ

ないならば、軍の士気に関わるので、死者イコール

「共和国

衛士」が死者のすべてと考えられます。

完全武装の正規軍にこれだけの犠牲を与えることに成功し

た群衆軍の死者がこの数十倍から数百倍に上るであろうこと

は、容易に推測できます。仮に

一〇〇倍とすれば、　三二〇〇

人になります。私自身は、可能な限りの資料を渉猟して、

一〇〇〇人前後、　一〇〇〇人を大きく上回ることはあるまい

と結論しました

［詳しくは矢吹晋編著

『天安門事件の真相

（上下と

一九九〇年、矢吹晋編訳

『チャイナクライシス重要文献

（全三巻こ

一九八九年、いずれも蒼蒼社刊］。

ここで私が注目しているのは、死者を出しながら、「最後

まで発砲しなかった部隊」もあ

つたことです。それは五四軍

Ａ師団で、死者

一名、重傷二四六名、軽傷

一五〇〇名、失踪

一五〇名――失踪というのはのちに原隊に戻

ったという意味

ですが、それだけの犠牲を出しながら、発砲を控えた。この

部隊は弾丸を統

一保管して行進したが、通信連絡が断たれ、

「発砲可」という新たな命令を受けることができず、古い命

令に従

って、発砲を避けたのです

寓天安門事件の真相

（上と

一八八頁］。

上ハ〓一

ヽ

― ＼

戒厳部隊がやむをえざる場合の発砲に許可を与えたのは、

軍の側に死者が出て、それ以上の進軍が妨げられた時点と考

えられるのです。発砲禁上のもとで、兵士が殺される事態が

生まれ、そこから撃ち始める。しかし、発砲はすべて

「広場

に到着するまで」なのです。西線、東線、南線から、いろい

ろなバリケードを排除して四方八方から来た軍が広場を包囲

したあとは、威嚇発砲のみで、再び発砲を禁じています。

つまり、「広場到着までの進軍への妨害排除」と、「到着以

後の広場鎮圧」とは、区別する必要がある。到着までには、

繰り返しますが、衝突があ

って、双方でたくさん死んでいま

す。しかし、進軍過程すなわち群衆側の設けたバリケード排

除における衝突と、広場を包囲したあとの軍の行動とは局面

が違います。前者は、軍に向かって投石した群衆との衝突で

す。後者は逃げ場のない、非暴力の群衆に対して発砲したか

否か、が焦点です。

広場のもう

一つの意味とは、その象徴性です。　一九四九年

に天安門広場で中華人民共和国の建国が宣言された。広場の

ど真ん中には人民英雄記念碑という象徴があり、そこに学生

たちが司令部をつく

って陣取

っていた。そういうところが広

場です。象徴性ということでもう

一つ。実はこの広場では、

前述したように七六年の四月五日の清明節に、周恩来追悼の

デモを鎮圧する騒動があ

った。当時は、文章の末期で民兵が

動員されたが、死者はゼロだ

った。これが第

一次天安門事

六四

件です。当時もたくさん死んだと宣伝された。しかし、厳家

棋がはっきりと、『四五運動紀実』［北京。人民出版社、一九七九

年］に書いている。それで死者のなか

ったことがわかる。当

時も広場で騒動が起こったことの意味が、だいぶ議論にな

っ

た。北京市長は呉徳でしたが、デモ隊から

「無徳」、徳なし

と罵倒された。実際には、第

一次天安門事件とは、広場に集

ま

ってくる労働者部隊をどんどんトラックに乗せて郊外に連

れて行き、そこて釈放しただけなのです。

で、今度は第二次天安門事件です。やはり広場を囲い込ん

だ。学生たちは丸腰、ただ多少は武器があ

って、それが問題

だ

った。　一発でも撃てば、軍としても撃ち返すことになる。

そういう状況に置かれているとき、「劉暁波が立つ」のです。

劉暁波は運動が起こったときにはコロンビア大学にいた。彼

は、五月二〇日に戒厳令が出て、大規模な衝突になるという

ので、急遠帰国し、五月二三日には

「北京師範大学学生自治

会」の名義で

「われわれの建議」を発表している。六月

一日

には師範大学校門前で、二日午後からの四人組ハンスト予定

を宣言し、実行した。他の仲間は侯徳健

［台湾のシンガーソ

ングライター］、一局欣二『北京師範大学週報』前編集長］、周舵

［四

通集団計画部長］でオノ。

戒厳部隊の包囲体制が完了し、いよいよ全面衝突になる可

能性が高くなった時点で、彼らは武器を回収した。さらに、

三人軍の某連隊の政治委員

・季新国という将校と交渉して、

「学生たちを撤退させる」「それゆえ軍は絶対発砲しない」の

言質をとり、広場の東南角だけは包囲網の

一部を開けて学生

たちはそこから退去するという平和撤退交渉をまとめた。こ

うして、劉暁波たちの努力があ

ったからこそ、広場に最後ま

で残

った数千人が無事に、衝突なしに、広場から撤退できた

のです。

ところが

「広場のジャンヌダルク」と言われたリーダー柴

玲が香港に脱出してから、「広場で二〇〇〇人死んだとか、

四〇〇〇人死んだ」とか誇張放送を始めた。それが香港紙に

載り、それを

『朝日新聞』などが大いに報道したのです。

『朝日新聞』は本当に悪い、報道機関として許されない虚偽

報道をやりました。実は、広場には最後まで

『朝日新聞』の

記者とカメラマンが

一人ず

ついたのだけれど、二人とも本紙

には記事を書

いていない。後日、本紙ではなく、『社内報』

に書いている。つまり本紙では、柴玲の煽動文を翻訳してあ

おり、日撃した記者には書かせていない。柴玲は最後まで

いて真実を知りながら、広場で大量の死者が出たと繰り返し

て、同情票あるいはカンパ集めに利用したのです。

劉暁波が天安門広場最後の局面で、無血撤退の交渉をした

からこそ、平和的な撤退が可能だった。その交渉が失敗して

いたら劉暁波は真

っ先に射殺されていたはずです。劉暁波が

生き延びたという事実こそが、広場では死者が出なかったこ

との証明になります。広場に最後まで残

っていたジャーナリ

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

ストが

一〇人程度いました。その中で私が

一番信頼している

のがロビン

・マンローという、ヒューマン

・ライツ

・ウォッ

チ

［アムネスティと並んで人権保護に取り組む組織］のアメリカ人

専門家です。彼が広場の最後の光景について非常に詳しい

証一言を書いている

［矢吹晋訳

「北京における虐殺の真相」『天安門

事件の真相

（下と

所収］。も

つヽ一つはスペインのテレビ局のビ

デオです。このチームは

一部始終を記録している。ただ彼ら

は全部撮影したのだけれど、それを送ろうとすると検閲で没

収されるから、わざとテープをちょん切

って、断片に見せか

けて、順不同にして送

った。残念ながらマドリッドの本社で

は、それを正しくつなぎ合わせることができなかった。

マンローは、虚報が世界をかけめぐ

った

一例として、ＢＢ

Ｃのジョン

・シンプソン記者の放送原稿を引用して批判して

います。

「われわれは戦車がテントを押し潰すのを写した。……数

十の人々がそのようにして死んだように見えた。そしてそれ

を見た人は戦車の騒音の中からテントの中の人々の悲鳴を聞

くことができたと語

った。われわれは広場の街灯が四時に消

されたときに映した。彼らは四〇分後に再び点灯したが、そ

のときに軍隊と戦車が記念碑に向かって移動し、まず空に向

けて射撃し、それから学生を直射した。こうして記念碑の石

段とそれを飾る英雄の浮彫りは銃弾で撃破された」。

このシンプソンの原稿がいわば

「天安門広場虐殺」の国際

六五

ヽ

― ＼

的定本となりました。しかし、彼はこの原稿を北京飯店の

一

室で書いていた。そこからは人民英雄記念碑が完全に視界を

さえぎられていることは、北京をちょっと旅行したことのあ

る人なら誰でも気づくはず。マンローはこのシンプソンの原

稿を引用して、真実を書いた報道がいくつかの理由で歪曲さ

れ、聴取者のもとに届かず、逆に虚報が世界中をかけめぐ

っ

た背景を実に詳細に、虫眼鏡で見るかのごとく描きき

ってい

ます。

私は当時日本にいて、戒厳軍と学生のどちらの側にプラス

になるか、ということではなく、真実が

一番大事だと思

った

ので、徹底的にいろんな情報を集めて分析しました。そこで

私は初めて劉暁波の勇気と信念に触れたのです。彼は魯迅研

究でも著名ですが、彼の特徴は、厳しい知識人批判にありま

す。魯迅の偉さは

「行動で示した点にある」と言い、自らも

それを実際に実行した。きれいごとをいうが、何もやらない

のが普通のインテリです。彼はこれを徹底的に批判し、自ら

行動する。だから、いつもキチガイ扱いされます。これはす

ごい男がいるとそのときに感じて、以来、注目してきました。

何年か経

ってノーベル平和賞をもらつた。日本で

「広場で

虐殺があ

った」と言

っている人たちは、劉暁波の行動の意味

がわからない。なぜそのとき彼が死を免れたのかがわかって

いない。それを知らずに、劉暁波を論ずるのは、ド阿呆です

ね。最悪は、彼の文章の片言隻句をとらえて、彼の思想を批

エハ上ハ

判したつもりになっている大バカですね。天安門事件以来四

半世紀、牢獄にとらわれたままの劉暁波に国際情勢の見解を

聞くのは

「木に縁りて魚を求む

［部分に気をとられて全体を見失

２ヽ」と］」の類です。彼は

一貫して、行動によって、その思想

を表明しているのです。

「ノーベル賞おめでとう。授賞式にどうぞ」と政府から執

拗に勧められても絶対に出国しない。いったん出たら帰国を

許されないからです。彼は投獄された身で何もできないけれ

ども、獄中で生きることを通じて生身の肉体によって中国政

治の現実を批判しているのです。劉暁波にと

っては、監獄

で生きることが即中国の政治を批判する現実的な行動なので

す。私のような者には、まるでできない決意と行動ですが、

しかしその意味を理解する程度のことは凡人にもできます。

劉暁波の言行

一致は、　一つの例にすぎないけれども、そうい

うことをきちんと押さえて

一つ一つ議論していかなければ、

中国の政治や社会を深く知ることは不可能です。

特に天安門事件は、テレビ報道でいろいろな映像が世界中

に拡散され、流血の場面が繰り返し繰り返し強調される結果

になりました。　一つだけバカバカしい例を挙げましょう。今

枝弘

一［フリーの力どフマと

は、最後まで広場にいた勇気あ

る若者です。それは非常に立派なジャーナリスト精神だけれ

ども、写真を高く売るためにゴミ袋を戦車にひかれた死体だ

とか、真偽不明な怪しい話を散々撒き散らした。テレビで、

ヽ

‐― X

ほんと笑わせられたのは、「ジュウホウ

（銃砲）、ジュウホウ

（銃砲こ

と聞こえたからと

「銃を発砲したのだ」と解説した

一件。彼は中国語が全然できない。「銃砲」ではなく

「ジウ

ホゥ

（救護こ、「ジウホウチョー

［救護車。救急車の中国語］を呼

べ」と学生たちは叫んでいたのです。救急車と銃撃を混同す

るのは、中国語を日本語と混同して、そのおかしさに気づか

ないからですが、そのような無知な若者をテレビに出して、

天安門事件を理解したつもりになっているテレビやマスコミ

は、もはや害あ

って益なしですね。しかも、この種の間違い

が四半世紀経ても修正されないことがより重大です。そして

「天安門広場の虐殺」や

「丸腰の市民に対する正規軍の発砲」

という類のワンパターンが緊範呪

［孫悟空が頭にはめている

輪

っかを締めつける呪文］のように、大方の日本人の思考を

縛

っています。

朝　今のお話を聞いていると、　一方で、流血のイメージとい

うものが増殖して、それが天安門事件全体の象徴となり、広

場で流血があ

ったということにな

った。また

一方で、お

つ

しゃったように銃撃の指示はどこから出たかということは今

も

って曖味なままである。要するに機動隊がいなかったこと

も起因して軍事管制に至るまでのプロセスは必然性があ

った

にしても、流血自体は相当に偶発的な要素が強かったと考え

てよいということですね。

矢吹　そうです。少なくとも軍はですね、発砲なしにやれる

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

と思

って進軍を始めた。現に最後まで発砲せずに兵士が亡く

なり、重傷者が続出した五四軍の例もあります。そういう事

実があるわけですから。自分の部隊の兵士が殺されているわ

けですから、「発砲を許可せよ」「なぜ発砲してはいけないの

か」という兵士の突き上げが現場からあれば、現場の司令官

ならば、正当防衛として発砲を許すでしょう。これは鎮圧の

主力部隊、三八軍でまず生じたケースです。とは言え、それ

でも最後に広場全体の指揮部責任者として、劉暁波ら広場の

群衆側代表と交渉していたのは三八軍の幹部です。戒厳軍も

劉暁波も実に冷静でした。

朝　偶発的に銃撃に至る以前の軍事管制、戒厳令に至るプロ

セスのほうこそ注目されるべきだと言

ってもよいでしょう

ね。その点に関わると思いますが、矢吹さんは趙紫陽の役割

をどう考えていら

つしやいますか。

矢吹　趙紫陽

への評価は、長期的に見るか短期的に見るかで

分かれ、多面的と思います。　一つは戒厳令の是非です。趙紫

陽はこれに反対して失脚した。当時の政治局常務委員は五人

だ

ったのですが、李鵬と銚依林は戒厳令支持、胡啓立と喬石

は中立――反対とは言えないけれど事実上は趙紫陽と同じ立

場ですから、政治局は三対二だ

った。趙紫陽らは多数派にも

かかわらず、なぜ敗北したのか。現役の執行部の上に

「八老

治国」という長老院政組が存在したからです。

戒厳令の布告を決定する会議で部小平が趙紫陽を説得した

六七

ヽ

― ＼

が、結局、趙紫陽は同意しなかった。ここで彼が学生運動

ヘ

の理解を示したのは、胡耀邦の立場に似ています。彼らのカ

を利用してこそ改革を進めることができる、と見る立場で

す。趙紫陽は学生の力を利用して、保守派の攻勢をかわして

改革を進めようとした。

部小平路線の番頭役

・楊尚昆さえ、このような趙紫陽に理

解を示していた。ところが、李鵬に象徴される保守派長老

は、改革の行き過ぎが共産党の治世、すなわち既得権益を危

うくすると危惧した。既得権益の質と量とは今日とは比較で

きないほどに小さなものだが、保守派はこれを守ろうとした。

戒厳令を決定する大会でのリーダーシツプは明らかに郡小平

にあ

って、戒厳令と軍事鎮圧を決めた。そこで北京の情報

に通じている人々は、漸次広場から引き上げていく。しか

し、その頃になって地方から学生や野次馬、その他の群衆が

集ま

ってくる。彼らはお祭り気分なのです。まるで統制が

ない。そこで劉暁波は、まずいぞ、大混乱が起きるぞと警戒

し、紛争の真ん中に飛び込んでいくわけです。広場がそうい

う無秩序化し始めた状況だということは軍もわかっていた。

「出動するな」という学生側の説得もあり、三八軍司令官

の徐勤先は任務を放棄して病院に逃げ込んでしまい、のちに

軍法で処罰される始末です。三人軍の

一部に動揺が生じてい

た。そういう中で郡小平が全体の鎮圧を決断したのです。

さて趙紫陽はここで戒厳令に反対して失脚し、その後

一五

六八

年、幽閉の軟禁生活を余儀なくされるのですが、ゴルフ場に

出かけることを許され、また密かに回顧録を書いて、それは

非公式に香港で発行されています。趙紫陽がどのような形で

あれ失脚せずに、中国の民主化が進んでいたら、ソ連のよう

に共産党の支配は崩壊していた可能性もある。その場合、中

国経済は今日のような発展があ

ったか。その評価は難しいも

のがあります。

ただし、今日のような腐敗大国が生まれたのは、天安門事

件の鎮圧後、　一切の政治改革を拒否して、経済改革だけを進

めた結果であることは明白です。この意味では、趙紫陽の功

罪の評価は、かなり難しいものがあります。政治腐敗の現実

という結果が、すでに趙紫陽の立場の正しさを証明している

と見ることもできます。

その反面、すなわち年内に購買力平価ベースでアメリカ経

済を超えて世界

一の経済力になる側面に着目すれば、天安門

事件の武力鎮圧が政治的安定をもたらしたということで、逆

説的ですが

一定の評価をすることができましょう。これに対

して、経済成長

一本槍の結果、所得格差が広がり、地球環境

が汚染され、政治の腐敗は今やとどまるところを知らない

という負の現実、すなわち政治的安定を何よりも重視した結

果生まれた強権政治の側面に着目すれば、そのような帰結を

防ぐために民主化を展望した趙紫陽の判断を高く評価できま

す。この意味では、趙紫陽はすでに死去したのですが、「棺

ヽ

一́ X

を蓋いて事定まる

［死後に評価を決定されるこ

段階にはまだ至

らないと考えます。

趙紫陽が戒厳令による鎮圧に反対したのは、民主化運動に

対して戒厳令を発動することの是非を問うたのです。とは言

え、鎮圧といっても、この段階では、武力鎮圧、すなわち発

砲までは、考えていない。だから最後まで発砲しないで広場

にたどりついた部隊がいた。

朝　関連してもう

一つお聞きしたいと思います。結果、そう

いう形で虐殺があ

ったという事実が流布することによって、

その影響はその後どのような形で表れたのでしょうか。

矢吹　それは軍と学生の両方の側に表れます。軍の側には、

軍は革命の過程で、民衆を守るために生まれたもの、外敵と

戦うのが本務のはずであるにもかかわらず、学生たちと衝突

したことについては内部で相当深刻な反省、動揺があ

ったは

ずです。三八軍軍長の徐勤先の抗命事件はそのシンボルです。

他方で学生の側は、軍の武力行使を暴露

・宣伝したけれど、

軍の権威失墜、造反という事態には、ならなかった。ロシア

革命における戦艦ポチョムキンの反乱のような事態は、生ま

れなか

ったのです。「丸腰の市民に発砲した」のだから、相

当に軍のイメージダウンになるはずだけれども、それほどに

な

っていないのではないか。

民主化運動がその後、雲散霧消したこともあ

つて、衝突の

激しさの割には憎しみ合う敵対関係にはな

っていないという

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

ことですね。もちろん、亡くなった犠牲者のために運動して

いるグループは

「天安門の母」とかいろいろありますが、　一

般的に言えば、人民を守るはずの人民解放軍が人民と敵対

し、あれだけの流血をやったのだから、相当な憎しみが残

っ

て反政府的になるかと思いきやそうはならない。この辺りに

も百万デモの性格を読み解く秘密が隠されているように思い

ます。つまり、上層部の権力闘争があり、趙紫陽派と李鵬派

に権力が割れたために、百万デモが現れた。下からの民主化

要求よりも、権力闘争の側面が強かったのです。

さてァメリカのテレビですが、事件の当座は

「広場で虐殺

があ

った」と大きく報道した。例えばＡＢＣテレビは、三週

間後の六月二七日に検証番組を放送した。いろいろなビデオ

を集めて検討した結果、「広場では無血撤退だ

った」という

確認報道を行

っている。ところが日本は

一切そういった検証

報道をやらなかった、新聞にしてもテレビにしても皆無です。

唯

一の例外は、天安門事件四周年の

一九九三年六月三日夜、

ＮＨＫテレビの

「クローズアップ現代」が

「空自の三時間」

の真相にせま

つた番組です。戒厳部隊が天安広場を完全に包

囲したあと、すなわち

一九八九年六月四日午前三時に天安門

広場にとどま

つて取材していたスペインのテレビ局の取材班

が映したビデオを紹介し、取材班にインタビューし、さらに

広場の無血撤退に決定的に重要な役割を果たした侯徳健に証

言させたものです。その結論は、天安門広場の最終的整頓

六九

ヽ

― ＼

過程においては死者は出なかった、いわゆる大虐殺説は誤り

であ

ったというものでした。この番組のもう

一つの重要なポ

イントは、ＮＨＫのテレビカメラは

「当日その時刻」には、

「広場を映せる位置にはなかった」事実を加藤青延特派員、

現解説委員が証言したことです。事件後四年目にして、ＮＨ

Ｋがその取材力と良識を活かして、このような番組をつく

つ

たことを高く評価しますが、あえて率直なコメントを加えれ

ば、「六日の菖蒲、十日の菊

［時期遅れこ

でありましょう。

この番組は遅くとも

一九九〇年の事件

一周年につくるべきで

した。三年放置した間に、虐殺イメージが人々に完璧に刷り

込まれたのです。

日本では今、天安門事件二五周年ということで、「いわゆ

る目撃者」による、回顧する文章が多少あるわけですが、こ

れはほとんどダメです。ブラジルの

「勝ち組」同様、自分の

体験だけに固執する、全体の姿はど

っかに吹

っ飛んでいる。

朝　エハ四に影響を受けたとは、矢吹さんのお話を踏まえれ

ば、六四をめぐる報道による影響を受けたとも言えますが、

六四に対する日本人の意識について言えば、私の周りを見る

と、建国後の中国が与えた最大のインパクトは文化大革命で

あり、次に大き

いのが六四だということになります。そこ

で、中国に強いシンパシーを抱いていた日本人がこの二つの

出来事によって、どのようにして中国に関心を失

っていった

かを述べてみます。文革は、得られる情報も少なかったし、

七〇

文革中はある意味では対岸の火事であ

って、いいように解釈

できた。終わってみると、負の面がたくさん露わになり嫌気

がさして興味を失

ってしまう。それでも文革終了後の改革

・

開放には

「開放」による、ある種の明るさみたいなものが

あ

った。私は文章支持者がストレートに改革

。開放を受け入

れる意識は相当に歪んでいると思うのですが、まあ、とにか

く救いがあ

った。

ところが六四では流血の事態が生の映像で放映されて、　一

挙に中国

へのシンパシーをなくしてしまう。文章終了によっ

てシンパシーをなくした人たちは単純化して言えば中国に同

期していたコアな人たちだ

ったと思うのですが、六四の場合

はコアな人たちで中国になお、かすかな希望を抱

いて

「我

慢」していた人たちは挫折し、かつ一般的な日本人も離れて

しま

ったなたいな、そういう流れになるのではないかと思

っ

ています。

矢吹

同感です。日本における対中親近感がここで大きく減

少し、対中不信が

一挙に膨れ上がった事実は、明確に認識し

ておくべきです。そのイメージが原型となり、今日のような

中国敵視論を支える基礎にな

っています。

文化大革命～六四天安門事件～現在

朝　矢吹さんは六四後も政府と民間は憎しみ合う敵対関係に

はなっていない、デモは組織化された面があるとお

っしゃい

ました。ただ、デモが始まる契機には、学生、彼らを支持す

る大衆の意識にある官僚層

への憎しみ、反官僚意識が作用し

たことも間違いないと思います。それは文革の契機にもあて

はまると思うのですが、矢吹さんの目から見て、文革、そし

て十余年の時を経た六四に、つながっているものとつながっ

ていないものはどのように映るのでしょうか。

矢吹　部小平の改革

。開放路線が始まり、市場経済の部分的

導入があ

ったため、六四の直前はインフレが騒がれた。そし

て、「官倒」と呼ばれた

「官僚ブローカー」の暗躍が憎悪の

的にな

った。市場経済が

一部で始ま

ったとき、庶民が

一番

怒

っていたのはこういう現象です。あの頃の中国の自転車は

本当に品質が悪かった。しかし上海や天津の自転車は例外で

歓迎されていた。それは

「工業切符」あるいは

「配給切符」

がないと売

ってもらえない。その自転車を配分する官僚たち

は、　一部を自由市場に回して大儲けした。本来であれば定価

で売るべき自転車を自由市場に横流しして、公定価格の何倍

もの価格で売り、大儲けした。これをやつたのが

「官僚ブ

ローカー」であり、庶民の憎しみの対象にな

った。しかし今

のベラボーな汚職、腐敗と比べると、まだまだスケールの小

さな汚職ですね。とは言え、現在ならば自動車による汚職と

対比できるのが、当時の自転車横流し事件です。金額は異な

るけれども、庶民の反権力というか反官僚意識を育てる意味

では、酷似しています。つまり、庶民対官僚の階級関係とい

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

う文脈では、①文革前すなわち調整期における闇市場問題、

②天安門事件前の

「官倒」横流し問題、③今日の官僚の腐敗

汚職構造、すべて共通していますね。

紅衛兵たちが造反をやつたときは、実権派が特権を使

って

配給する前に自分たちだけでいいものをかすめと

っていた。

そういう意味では反官僚、反政府みたいな雰囲気は文革前も

六四前も基本的に同じです。物不足の社会においては、物を

握

っている人が偉い、それはだいたい役人。そういうことに

対する反発という点では社会的に非常に似ていると思います。

ところが文革と天安門事件を比べると、文革のときは紅衛兵

が毛沢東の呼びかけで壁新聞を出して動き出した。天安門事

件のときは胡耀邦追悼というところから出発して民主化しな

ければいけないとな

った。その民主化というのはいろんな人

がいたけれども、あのときは

「ゴルバチョフのペレストロイ

カ」と

「中国の改革」とを対比する動きが非常に強かったわ

けです。

ゴルバチョフの

「ペレストロイカ作戦」は、まず政治改革

に取り組む。「政治改革から経済改革

へ」の戦略でした。こ

れに対して郡小平は

「政治改革を延期し、経済改革だけを先

行させる」作戦でした。

中国の民主化派は、ゴルバチョフ改革と部小平改革を対比

して、部小平戦略よりはゴルバチョフ戦略がいいと評価し

た。そこでゴルバチョフが五月に訪中したときには、学生た

七

一

ヽ

― ＼

ちは

「ゴルバチョフさん今日は。政治改革賛成です」という

横断幕を掲げて彼を歓迎しました。

ところがゴルバチョフ改革はペレストロイカが始ま

った途

端、終わ

ってしま

った。つまり、政治体制を担

っていたのは

共産党ですが、その共産党が崩壊するやソ連自体が崩壊して

しま

った。政治的秩序の崩壊は、民主化といえば民主化なの

だけれども、経済的にはマフィアの横行するブラック経済に

陥

った。

その後しばらくは、千不ルギー価格が高値だ

ったため、ロ

シアは救われた形だけれども、経済面ではロシアは、かつて

の

「大きなソ連」とは様変わりして、「小さなロシア、力の

ないロシア」が今の姿だと思います。この意味では、「経済

大国

への道を切り開いた」部小平の功罪と、「大国を解体さ

せるだけで終わった」ゴルバチョフ改革との比較において、

郡小平は勝者に見えます。

ただ、ゴルバチョフ改革でもう

一つ見ないといけないの

は、東ヨーロッパの人たち、ポーランド、チ

ェコ、

ハンガ

リー、あるいはバルト三国の人たちから見たらどうかという

視点です。彼らにと

ってゴルバチョフ改革は、本当にありが

たいものだ

った。ゴルバチョフのおかげで彼らは、ソ連

への

従属から自立できた。ポーランド、チェコ、ハンガリーはＥ

Ｕに入りましたね。だからゴルバチョフ改革は、国際社会全

体から見たら世界の民主化を進めるという役割を果たしまし

七二

た。ただロシア国内の経済建設の点でいうと、権力自体が

吹

っ飛んでしま

ったから何もできないで、マフィア経済をは

びこらせることで終わ

ってしま

った。それがゴルバチョフ改

革だ

った。

部小平改革のほうは、九二年に南方諸都市を視察中に改

革

。開放を促した

「南巡講話」が代表的な発言ですが、経済

改革だけに集中せよということで政治的安定の大義名分を掲

げて、民主化は弾圧し続けた。

一方、経済成長の加速を進めた結果、世界銀行の推計によ

れば、今年中に中国のＧＤＰ

（国内総生産）がアメリカを抜く

ことは確実です。もちろんこれは購買力平価という物価水準

を加味しての計算上のことです。為替レートで見れば、人民

元の過少評価もあ

って、アメリカに及ばない。

ついでにいうと、日本は東京オリンピツク前の二〇

一人年

辺りで、コ

人当たりＧＤＰ」で韓国に抜かれます。既に日

本は台湾に負けているのですよ。二０年間足踏みしている間

に、台湾に抜かれ、韓国にあと数年で抜かれる。そう

いう

意味では日本人の閉塞感はすごい。「植民地にしていた台湾」

よりも、「併合していた朝鮮」よりも、宗主国

・日本の国民

は貧乏にな

っているのです。

人々はあまり明確に自覚しているわけではないのだけれど

も、日本の排外ナショナリズムの底流には、この構造変化が

隠されている。今や日本は旧植民地にも及ばないほど落ちぶ

ヽ

‐― ＼

れたのです。これが

「ジャパン

アズ

ナンバーワン」とおだ

てられて舞い上がった日本の今日の哀れな姿です。

朝　文革のときもそうでしたが、天安門事件のときもソ連に

対する意識が強かった、一異を返せばソ連からの影響を受けて

いたということになりますね。文革のときは中ソ論争を経て

対立のま

っただ中、天安門事件のときは崩壊を目前にしなが

らペレストロイカが進んでいるという状況。そうした状況の

中で、ソ連を強く意識しながら、天安門事件のさなかにゴル

バチョフと会談しようとした、時の政権の意図はどの辺りに

あ

ったと考えますか。

矢吹　部小平は中ソ論争における中国側の旗手の

一人でし

た。しかし、これは毛沢束の反修正主義路線を代弁したもの

であり、彼自身がどこまで自分の発言を信じていたか疑わし

いところがある。ポスト毛沢東期に、対ソ関係を修復するこ

とは、国益からしても当然の成り行きでした。しかも、今回

は両国とも

「脱社会主義

への競争」「市場経済化

への競争」

という局面で争うことになります。この文脈で、中ソ関係

は、かなりねじれていて、因果関係、先後関係が逆になって

います。

例えば部小平の改革

。開放は八〇年代の初め、彼が権力を

と

つてから徐々にやってきて八〇年代後半には軌道に乗り始

めた。この意味では経済改革の先輩です。しかし、政治改革

ではゴルバチョフ戦略が先行した。

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

そういう中ソ競争の文脈で、中国の改革派は、胡耀邦、趙

紫陽らはゴルバチョフ戦略を見ていた。ところが改革が進む

と既得権益は失われる。これに抵抗したのが李鵬であり、そ

の裏には薄

一波や陳雲ら長老がいた。陳雲は深川の経済特区

には

一度も行かなかった。そのような行動で部小平による改

革の行き過ぎにブレーキをかけていた。

そういう中で郡小平は、保守派の抵抗を意識してバランス

をと

って進めようとしていた。その結果、胡耀邦や趙紫陽を

馬護として切らざるをえなくな

った。

部小平によれば、経済発展こそが政治に対する信任を勝ち

取る唯

一の道だ、それゆえ経済発展を支えるために政治的安

定は確保しなければならない、安定が大事だから政治は変え

ない、そのような枠組みのもとで経済発展に全力をあげると

いうことだ

った。

それに対してゴルバチョフのペレストロイカには政治も経

済も含まれますが、まず政治改革に取り組んだので、中国

の若者たちは、「政治改革派としてのゴルバチョフ」を歓迎

し、部小平に対しても

「中国のペレストロイカ」を期待した

のです。

文革中というのは、ソ連はフルシチョフにより平和共存の

中でやるしかないと息切れしていた。ブレジネフ長期政権に

至

って経済が停滞し、これ以上はアメリカと軍拡競争をやれ

ないとなり、そこヘゴルバチョフが出てきた。中国は毛沢東

七三

時代が終わ

って経済をよくしないとダメだとなる。中国が経

済を強く意識するのには理由があ

ったのです。香港とか台湾

とかは非常に繁栄していたから、そこと比較すると中国の貧

しさが目立

った。早く香港や台湾のように豊かにしないと共

産党の体制がもたないと思

っている。だから改革

。開放はど

んどんやりましょうとなる。しかし改革

。開放をやるために

も政治は安定させないといけないというのが部小平のロジッ

クです。

毛沢東時代後期には、毛沢束がソ連を修正主義あるいは社

会帝国主義と断罪して、中ソは断絶していたので、何よりも

三〇年ぶりの和解のための対話に着手したのですが、都小平

戦略とゴルバチョフ戦略には、共通点と相違点を含む改革競

争の側面がありました。

文革政治と六四政治を対比すれば、文革のときは、毛沢東

と劉少奇

・郡小平路線の対決でした。毛沢東はソ連のような

修正主義をやる劉少奇や部小平路線を打倒しなければいけな

いと考えた。

天安門事件の前夜、李鵬ら保守派は既得権益を守りなが

ら、漸次的改革を構想した。大胆な改革によって共産党の既

得権益の基盤が失われることを恐れた。これが保守派の立場

です。これに対して例えば趙紫陽は、人民公社解体を試行し

てみたら農村、農民がやる気を出したから、改革政策に自信

を持

っている。趙紫陽はもともと河南省の地主の息子だし、

七四

四川省や広東省の書記として、現場でリードし成功した経験

から、農民はやりたいようにやらせると豊かになると確信し

ていた。都市の工場も自由化すれば、労働者も農民と同じよ

うにやる気を出す、そういう改革路線を主張した。

不幸だったのは国務院総理の李鵬が保守派を代表して、あ

るいは保守派に担がれて、六四から引退するまで江沢民と

一

体にな

って政権を担

ったことです。その間に汚職

・腐敗はめ

ちゃくちゃに進んだ。

李鵬

一族は電力系を全部牛耳

っていて、ものすごく評判が

亜心い。

江沢民

一族はも

っと評判が悪い。いわば腐敗の総本山です。

部小平が存命中は、腐敗には限度がありました。というの

は、郡小平、陳雲は、子息の部僕方や陳元を中央委員にはし

たけれども、大きな特権をも

つ政治局委員には昇格させな

かった。彼らは権力の腐敗の帰結を明確に自覚していたので

す。と

ころが江沢民、李鵬になると、この自己規制のモラルが

失われた。脆弱な太子党政権を守り、自らの汚職利権を守

り、司直の追及を免れるために、子分たちを後継者に選び、

守りを固めるという策に出た。

こうして、腐敗を防ぎ改めるのではなく、腐敗政権、腐敗

体制を堅持するために努力した結果、とんでもない構造汚職

体制が生まれた。部小平が天安門事件の鎮圧で、政治的安定

ヽ

‐― ＼

絶対視の契機をつく

ったことは事実ですが、ここに誤解があ

ります。彼は経済発展により、社会が安定したならば、ただ

ちに政治改革に取り組む意向を繰り返し表明していた。これ

が重要な点です。もう

一つ、自らの家族の汚職などについて

は、これをチェックしていたのであり、江沢民や李鵬とは、

明らかに異なるのです。子息を政治局に入れることに強く反

対していた。

部小平は、胡耀邦や趙紫陽を切ることによって、ＧＤＰ大

国はつく

ったけれども、同時に汚職大国、腐敗大国という鬼

子を育てた。これが部小平の悲劇です。

繰り返しますが、郡小平自身は政治改革と経済改革は

「車

の両輪」だと認識していた。経済がしっかりして、人々が生

活に満足していないと政治改革はうまくいかないから、どち

らかと言えば経済改革先行だとする。しかし経済改革だけを

やり、既得権益層を生み出すことになると、政治改革がで

きなくなる。政治改革もすかさずやらないといかんのだとい

う問題意識を持

っていた。ところが天安門事件があ

ったから

「当分は政治改革をやらない」と先送りし、さらにソ連解体

が追い打ちをかけた。

これがもう

一つの悲劇です。ソ連がつぶれたことの打撃で

す。こちらのほうが

「中国の政治改革をストップさせたフア

クター」としては大きい。部小平たちは、中国国内の問題に

ついてはマネージメントできる自信がある。毛沢東のもとで

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

いろんなことがあ

った、それからあともいろんなことがあ

っ

たけれど、ず

つと解決してきている。

ところが、ペレストロイカによ

ってソ連が解体して、東

ヨーロッパ全部が社会主義から外れた。その影響でベトナム

はソ連との縁が切れたけれども、北朝鮮もキューバもフラフ

ラしだした。これら外部世界の出来事は、中国の力でコント

ロールできる範囲のことではない。

今や社会主義の旗を掲げ、共産党が権力を握ると言

ってい

るのは中国だけではないか。そういう状況に大きな危機感を

持

った。保守派はも

っと強い危機感を持

っていた。そうした

状況認識から、絶対に政治改革をやるな、政治的安定が大事

だとゴリゴリにな

っていくのです。そうするとその裏で腐敗

がどんどん広がる。

経済発展が第

一だから、多少の腐敗は大目に見る。つまり

経済発展を隠れ蓑として、腐敗も発展してきた面がありま

す。当時の状況というのは、中国の他に、ロシアなどが世界

市場経済の陣営に入

ってきて、

マーケットが世界的に広が

り、安い労働力ができてくる。例えば東西ドイツを見ればわ

かりやすい。西ドイツにと

って、しばらくは東ドイツという

貧乏会社を吸収したみたいなものだから大変だ

ったけれど、

東ドイツの安い労働力、マーケットの拡大によってドイツ経

済が膨張して、今やＥＵの中ですごい力を持

っている。中国

経済も大きくな

った。その裏では、市場経済化

への移行期に

七五

生まれた間隙を縫

って、政治腐敗が空前の規模で広ま

った。

つまり政治の腐敗を促進したのは、中途半端な市場経済化で

す。これは中国市場経済派の論客

・呉敬理が二〇数年来、繰

り返している論点です。

朝　中国は文革のときまでは

一国経済でやっていたわけです

ね。七八年末の

一一期三中全会で改革

・開放政策

への転換が

正式に表明され、八

一年には

「歴史決議」で文革が否定され

る。改革

・開放

へ舵を切

った時点で、経済改革によって中国

経済が世界経済の中に組み込まれていきますが、そうするし

か豊かになれないということを認識していたはず、腐敗が進

む、既得権益層が形成されていくことも予測されていたは

ず。それを覚悟しつつ郡小平はバランスを取ろうとしていた

のだということですね。部は早く死にすぎたということにな

るのかな。六四が起きたあと、南巡講話ではあらためて改

革

。開放の加速を促したので経済改革は進むが、政治改革は

止ま

ってしまう。矢吹さんは部小平のことを評価されていま

すが、その辺りはどういうふうに考えればいいですか。

矢吹　部小平は南巡講話のあとにすぐ江沢民と李鵬を解任、

あるいは格下げすべきでした。私は当時から江沢民と李鵬は

ダメだと批判しています。部小平が南巡講話を行

ったとき

は、現在の公認テキストでは削除されているけれども、改

革

。開放をやらない江沢民や李鵬は首だ―と公言しているの

です。そして朱鉛基を大抜擢して経済を任せた。

七六

もともと都小平は、天安門事件後にやむをえず江沢民を選

んだときに、

つなぎ程度にしか見ていなか

った。彼は持ち

駒、胡耀邦と趙紫陽を切

ったので、手元に駒がなく、李先念

や陳雲の推す江沢民をやむをえず受け入れたのです。ところ

が悪

いやつほど長生きする。

つなぎのはずの江沢民政権は

九二年から〇二年まで

一〇年続き、その後の

一〇年も事実上

院政を続けた。その間につくり上げた擬似太子党人脈が構造

汚職の人脈です。

胡錦濤が次の後継者になることは、郡小平によってあらか

じめ内定されていたのだけれども、胡錦濤はその後の

一〇年

間何も改革できない、江沢民腐敗政権の現状維持しかできな

か

った。「和諧社会」というスローガンを提起しただけで、

それを実現する措置は何もできなか

った。無能政権そのも

のです。極端なことを言えば天安門事件のあとの二〇年間は

江沢民政権だ

ったとも言えます。この間に徹底的に腐敗し

た。その結果、軍まで腐敗にまみれることになる。ただし、

二〇

一二年の

一八回党大会で、周永康の後継者を常務委員会

から排除し、中央軍事委員会主席ポストを習近平に譲

ったの

は、まれに見る英断です。習近平が劉源の力を借りて、徐才

厚を党除名処分にできたのは、主席ポストを早めに譲り受け

たからです。これは江沢民の老害に悩まされ続けた胡錦濤の

英断です。これは評価に値する。

ヽ

―一 ＼

六四以降、経済改革はさらに進んだが、腐敗も進んだ

矢吹　軍の腐敗も極まれりというということで、最近報道さ

れた徐才厚の汚職について話します。初めに問題にな

ったの

は、谷俊山という総後勤部副部長の汚職です。総後勤部とい

うのは軍の資材調達とかを全部やる兵靖部隊ですから、土地

を持

っているし、工場もある。軍の土地はたくさんあるから

高級マンションとかをつくらせたりすると、ぼろ儲けです。

入手コストゼロの軍所有地は、北京や上海などを含めて全国

どこにも大量にあります。それらを香港や台湾の不動産会社

に払い下げするだけで、　一攪千金です。市街地にある軍所有

地は、べらぼうなカネになる。そういう払い下げをやってぼ

ろ儲けし、そのカネを賄賂として悪事の露呈を防ぐ人脈づく

りに用いた。故郷に宮殿みたいな家をつくらせて、「純金製

の毛沢東像」を守り神として置いた。まるでマンガですよ。

なんでそんなことができるかというと、前党中央軍事委員会

副主席――もう

一つの副主席ポストは参謀系ですが、政治委

員系の軍トップの徐才厚がそれをかばつていたからです。そ

れほど軍の腐敗はすさまじい。谷俊山は物を扱う権限を持

っ

ているから物を売

って儲けるのはわかりますね。徐才厚はな

んで儲けるか。お前を大将にしてやるにはいくら、中将なら

いくらとか、どこどこの司令官とか大将にふさわしいポスト

を用意するからいくらとか、「売官の価格表」があるという

から、すさまじい売官収賄です。

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

徐才厚は総政治部系統出身のトップです。中国の軍という

のは、ロシア革命でトロツキーがつく

った赤軍と同じで、司

令官と同格の政治委員を置いて両方の署名がないと軍を動か

せないシステムにな

っている。政治部というのは、軍組織の

上から下まで設けられてあるわけですが、そのトップが徐才

厚だ

った。軍の人事は彼が動かしていたのです。そのトップ

が汚職とか、職権を利用してカネをもら

つたとかいうことで

党を除名される。これはものすごいスキャンダルです。軍の

トップの話です。下っ端軍人の端金の話ではなく、大将級の

ポストを動かす人物です。

徐才厚になんでそんな悪事ができたかというと、「江沢民

のお気に入り」だから、誰も彼を批判できなかった。江沢民

がそう

いう腐りき

った人間を使

って軍を抑えていた。そし

て、その徐才厚と組んでいたのが治安、司法担当の周永康で

した。

周永康は、もともとは中国石油大学を出て、中国石油天然

気集団の総経理まで出世した石油派の大ボスです。そこから

転進して、四川省党委員会書記になり、四川省に人脈をつく

り、その後、公安

・警察、裁判所、検察を主管する党中央政

法委員会のトップを

一〇年やっていた。

これは実に滑稽な構図です。石油の利権を握り、四川省の

利権を菫断して、私利私益を追求した

「大泥棒を警察の責任

者に任命した」ことになります。

七七

ヽ

一́ X

江沢民派は、みずからの不正を暴かれることを何よりも恐

れたので、部下の大泥棒を警察、司法部門の責任者として、

追及を免れることを考えた。

周永康は自分の前妻を交通事故に見せかけて殺し、その後

美人キャスター買暁岸を女房にしたと言われています。周永

康との関係で石油派の落潔敏と李華林、王永春らも党籍を剥

奪される、彼らは中国石油天然気集団のトップ、あるいは

その秘書として悪事を働いた。中国では、中国石油天然気集

団、中国石油化工集団、中国海洋石油総公司の三社が原油の

採掘からガソリンスタンドまで石油関連事業を全部独占して

いる。

軍のトップ、公安倍の副部長

・李東生――もともと中央テ

レビのディレクターですが美人女子アナを次々に高官の情婦

として紹介して人脈を築いたという聞くに堪えないスキャン

ダルを起こしている、さらに石油系のトップ、こういう連中

が汚職で党を除名されるというのは、空前の汚職ですね。こ

こまできたら腐敗に対する江沢民の責任は明らかです。

朝　結局、六四以降の政治改革の停滞もしくは後退の中で腐

敗構造の深刻さが増していく。腐敗のみなもとは、党官僚、

軍幹部、あと企業家たち。この中で軍の腐敗構造は他とは違

うのですか。

矢吹　同じと言えば同じです。要するに官僚ですから。ただ

し、軍は中国共産党のゲリラ活動の中から生まれて、軍に

七八

よって党が強化

・拡大されてきた。軍は中国共産党の生みの

親、ＤＮＡです。中国革命の元祖みたいなものでしょう。そ

の軍政治部系統がここまで腐敗したというのは、スキャンダ

ルの大きさでは林彪事件を超える。林彪は文化大革命中、国

防部長として軍を握

って毛沢束を支えていた。それが脱文革

の過程で周恩来との権力闘争に敗れて逃げようとする。毛

沢東の後継者、軍のトップであ

った林彪が失脚して文革は終

わったのです。そういう大きな事件だ

った。それで毛沢東も

ガクッときて五年後に亡くな

っている。

今度は軍のトップが、　一つは土地、もう

一つは階級、ポス

トをエサに、職権を利用してカネをもらつている。売官をや

り、軍内上層部における猟官工作の

一端が暴露された。これ

は天安門事件による軍の動揺よりもはるかに大きい激震のは

ずです。中国の汚職は、歴史とともに古く、汚職自体は決し

て珍しくないのだけれども、軍のトップ、中央軍事委員会の

中枢にいた人物が汚職で摘発されるのは前代未聞です。本当

に末期症状と言わざるをえない。

朝　部小平自身は、最後まで中央軍事委員会主席の地位を離

しませんでしたが、矢吹さんがおっしやったような危機感は

なかったのでしょうか。

矢吹　

」ゝれほどに深刻な汚職を、都小平はまるで予想してい

ない。部小平が危惧していたのは大きな国際問題がらみの事

件で、中央軍事委員会の判断が割れることでした。天安門事

ヽ

― ＼

件は趙紫陽総書記と李鵬総理とが割れた。ここでもし趙紫陽

が中央軍事委員会主席のポストを保有していたならば、趙紫

陽は全権をも

つて、戒厳令を破棄して、民主化路線を進める

ことができたはずです。その事態を避けるために、老檜な部

小平は中央軍事委員会主席のポストだけは、手放さない決意

でした。毛沢東も同じです。

そしてポスト郡小平期の指導者

。江沢民は、腐敗集団の悪

事の露呈を防ぐために中央軍事委員会の主席ポストを握り続

けたわけですから、落ちるところまで落ちたというほかあり

ません。

郡小平が天安門事件から得た教訓は、趙紫陽と李鵬が対立

したことによって、権力中枢の分裂が暴露され、百万デモが

生まれ、体制が動揺したことです。後日、都小平は

「動乱社

説」の間違いに気づいて、趙紫陽の意見を聞かなかったこと

を反省したフシがあります。とは言え、趙紫陽が部小平

・ゴ

ルバチョフ会談の

一句を引用して、自らは部小平の意に背い

た判断を提示できないと秘密を暴露した時点で、趙紫陽は事

実上、都小平

への造反を語

っているわけですから、この時点

で、すでに趙紫陽は郡小平に敵対しつつ、敗北した事実を認

めた形です。

長老群の中では、薄

一波の役割も大きかった。薄

一波

一族

は、経済通を売り物として、上海証券取引所の開設以来、い

わゆる原始株

［上場前の株］の上場許可問題を

一手に処理して

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

大儲けした。薄

一波の子息による薄熙来事件を契機として暴

かれ出した

一族の腐敗は山西省だけでなく、全国に腐敗の

ネットワークを持

っていた。これらの実力を頼みとして、薄

熙来は習近平の権力に挑戦して、敗れたと見てよい。

周永康グループの腐敗摘発の中で、すぐに温家宝

一族も同

じではないか、息子はヘッジファンドやつているとか、奥さ

んは中国宝石協会主席でこれくらい儲けているとかが表に出

たことも記憶に新しいものです。これはスパイ情報、警察情

報をにぎる周永康の側がリークして暴露したと見られていま

す。結局泥試合です。お前のほうがそこまで言うならこつち

も反撃するぞという政治的取引になる。そういうことになっ

ているから、なかなか周永康を処分できなかったということ

です。

薄熙来事件が起こったときに表に出てきたクーデター話

は、薄熙来

［当時重慶市党委員会書記］と周永康

［当時党中央政法委

員〈璽口記］が組んで、それに徐才厚

［当時中央軍事委員会副主席］

も組んだ。これで二人組ですね。あともう

一人、胡錦濤政権

の番頭役、党中央弁公庁主任

・令計画が加わる

「新四人組」

による政変というウヮサです。

この四人組が習近平体制の成立を二〇

一二年の

一人回党大

会前に阻止する陰謀が

一つ。もしそれに失敗した場合には

一四年秋の

一人期四中全会で薄熙来政権をつくる計画だ

った

とも言われている。この真相はどこまで本当かわかりません

七九

ヽ

‐一 X

が。

編集部　徐才厚を除名した機関はどこですか。

矢吹　中央軍事委員会の規律検査委員会です。除名処分は当

然党中央委員会で追認することになりますが、ここで覆るこ

とはありえない。

逆に言えば、そこまで習近平が追い込まれていたので、断

固たる反撃に出て勝利したと見てよいのです。中国でよくや

る手は、名誉職を与えて棚上げにして、職名だけは

一階級上

がったみたいにして、実際には手も足も出せなくする。要す

るに、「事実上の軟禁」ですが、今回の措置はストレートで

す。徐才厚は

一二年まで中央軍事委員会の副主席です。前任

は軍の総政治部主任、副主席になってからも総政治部担当、

軍内の人事をやっているトップを党籍剥奪、除名までやって

いるのです。これは穏やかではない。

習近平は実権を掌握できているか

朝　現在の習近平の位置が問題にな

ってくると思いますが、

彼は江沢民のおめがねにかなってトップの地位を得たと見ら

れますね。胡錦濤との関係も視野に入れると、そのことと今

回のような緊張関係をつくり出さなければならなかったこと

とはどのように絡み合

っているのでしょうか。

矢吹　恐らく処分された薄熙来派も、習近平派も、両者とも

それなりに江沢民の息がかかっている太子党なのです。しか

八〇

し、ここで太子党は擬似太子党と純正太子党に分裂したと私

は見ています。

習近平の父

・習仲勲は西北軍出身ですから、高尚

・饒漱石

一言件

［一九五四年に反党分裂活動を行ったとして二人は粛正される］

なんかと絡んでいたこともあ

って、文革のときには実権派と

して

一番早く失脚する。そういうこともあ

って晩年は精神を

病んでいたと言われている。当時の副首相の中では

一番毛沢

東にやられた。だから習近平フアミリーは長く権力からは外

されていたので相対的にそれほど汚れていないと思います。

とは言え、太子党だ

ったから、たまたま浮かび上がってこら

れた。

薄熙来とか、彼と組んでいる周永康とかは江沢民の直系と

してやってきた擬似太子党と見るべきグループです。習近平

ももちろん江沢民の権威は利用するし、太子党という大きな

枠の中には入るわけで、結局、太子党の中での権力闘争にな

ります。薄熙来や周永康は自分たちのほうが勢力あると思

っ

ている。それは事実ですね。だ

って石油派を抑えて司法系統

を抑えて、軍まで抑えている。もちろん習近平の仲間の軍人

もいないわけではないけれど、何しろ今まで二〇年間現役で

やってきているから圧倒的に習近平

一派よりもすごい勢力な

のです。自信があるから習近平なんかふっとばせというくら

いの気持ちなのです。だから習近平としては、偶然トップに

なれたのだから、獲得した権力で薄熙来や周永康をつぶすこ

ヽ

― ＼

とを考えざるをえない。

習近平によって、さまざまな中央指導小組が新しく設けら

れた。それは何を意味するかと言うと、既存の各組織は、習

近平から見てどれも信用できない。そこでこれらの組織系統

を外して、指揮命令を出すことになるという話です。

あらゆる組織のどこにも江沢民、周永康、薄熙来とかの手下

がいるから、どこから情報が漏れるかわからない。そこで習

近平は王岐山だけを信頼して、習近平路線を実行に移してい

２一。

朝　習近平が登場してきたとき、私は江沢民にダブるような

イメージも持ちました。国内矛盾に対する不満をナショナリ

ズムをあおることによって対外的な問題にすりかえるとか、

日本に対する強攻策とか――これは尖閣の問題もあるので単

純には比較できないところがありますが。危機的状況を江沢

民流に乗り切ろうとしているのかと思いましたが、矢吹さん

のお話を聞いているとそれよりも深刻な状況になっていると

いうことですね。

矢吹　と思います。というのは、真相はわからない部分もあ

りますけれど、軍のト

ップを除名する中央軍事委員会で、

二〇

一二年に引退したばかりの副主席を除名処分するのは穏

やかではない措置です。

朝　トップが切られたのですから、マスコミは林彪事件に匹

敵するくらいの衝撃として報道、調査報道しないといけない

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

のに、ベタ記事で終わらせている……。それはともかく、今

のお話を聞くと政治改革どころではなくなりますね。

矢吹　政権を維持できるか、そういう問題になりかねない。

朝　つまるところ、党の独裁があ

って、党―政、党―軍、党

―国、すべてが

一体化している今の中国の権力構造が腐敗を

もたらす最大の要因になっている。自浄能力はほとんどない

ということではないですか。

矢吹　一般的に言えば、自浄能力には、悲観的です。腐敗し

た権力の自己革新は極めて困難です。ただし今回の場合は、

習近平は権力闘争を挑まれた形であり、これに勝利すること

なくして権力を固めることができないだけでなく、敗者とし

て処分される恐れさえあ

つた。そこで決意して、薄熙来、周

永康、徐才厚によって挑まれた権力闘争を受けて立ち、勝利

しつつあると解しています。

私はアメリカ筋の動きを注視しています。『フィナンシャ

ルタイムズ』ワ一ューヨークタイムズ』など、英米の記事を

読んでいると、気になることが書いてある。

薄熙来事件が起こ

ったとき、「薄熙来と周永康が組んで

クーデターをやつて習近平を倒そうとしている」と習近平に

教えたのは、アメリカのＣＩＡだという。これは

「さもあり

なん」です。なぜかと言うと、薄熙来事件を思い出してくだ

さい。

事件の端緒は、薄熙来夫人

・谷開来がイギリス人ヘイウッ

八

一

ドを殺したというものです。この処理をめぐ

って、薄熙来の

右腕、公安局長も経験している重慶市副市長の王立軍は重慶

のアメリカ総領事館に逃げ込みました。二〇

一二年二月のこ

とです。そのときに王立軍はクーデター計画の全容を全部

しゃべることによって、亡命許可を求めた。

ところがアメリカは亡命を認めなかった。それは習近平が

同じ月にアメリカに行くことにな

っていたからです。亡命を

認めたら米中関係がまずくなり、習近平の訪米がつぶれたで

しょう。そこでアメリカは習近平訪米計画を進めることを前

提に、王立軍の生命は中国側に保証させた。中国当局は、北

京からわざわざ国家安全部の副部長をアメリカ総領事館まで

派遣して、王立軍を薄熙来の手から保護しつつ北京まで護送

した。王立軍はその後取り調べ中ですが、アメリカとの約束

があるから、生命は保障されています。ということで、薄熙

来四人組の政変計画は、アメリカがよく知

っている。しかし

小出しにしか出さない。

朝　習近平、薄熙来という太子党同士の争

いについてお聞き

しましたが、太子党そのものについてお聞きしたいと思いま

す。共青団というのは実態のある組織ですから、共青団派と

いうのは成立する要素があ

っても、太子党派というのはそう

いった組織があるわけではなく、実体はないわけです。それ

でも党に見たてるほどに大きな存在になっている。不思議で

すね。

八二

矢吹　太子党と言われる人はだいたい二代目なのですけれ

ど、初代が革命家や共産党員だ

っただけではダメなのです。

ずばり言

って高級幹部でないといけない。中央政府の部長級

以上、日本でいうと閣僚級以上の幹部です。中国では副部長

も部長と呼ぶ習慣があります。副部長はいつも部長と情報を

共有しているし、何かあ

ったら代替できる仕組みにな

ってい

るので、同格です。月給は少し違うけれど、待遇はほとんど

同じで、秘書とかボディガードも同じように付く。そういう

連中はやめたあとも月給を丸々もらえて、住宅あり、秘書あ

りと、現職当時とほとんど同じ待遇を受ける。

一番極端な例は住宅です。住む

一画が決ま

っていて、セ

キュリティが非常にしっかりしている環境のいいところに住

んでいる。そうすると子供たちは子供のときから同じ幼稚

園、小学校、中学校に行く。専門分野によ

って学校は分か

れたとしても、休みになると幹部用宿舎区に帰

ってくる。

ず―っとつながって、家族ぐるみの付き合いになる。組織で

も何でもないけれど、隣組で生まれたときから知

っているか

ら仲間なのです。そうでつのが太子党です。その中で能力の

ある人が上に上がっていく。日本では、議員の二代日、三代

目はバカみたいなのが多いですね。それと違

ってかなり優秀

なのです。というよりも優秀な者が出世して、それにぶら下

がる構図ですね。大学

へは結構いかがわしい入り方をしてい

るのですけれども、それでも優秀な者が党の出世階段を上り

ヽ

―一 ＼

詰める。優秀ではない人は落ちていき、出世した者にぶらさ

がる構図です。

日本だ

って選挙という試練があるけれども、地盤が決ま

っ

ていてその中での選挙運動にすぎない。とても人間として鍛

えられる状況ではない。太子党は日本の議員選挙よりもも

つ

と厳しい競争をくぐり抜ける。だから上に昇

ってきている人

にバカはほとんどいない。共青団と太子党の違いは何かとい

うと、太子党は親が閣僚級として特権を持

っていて、自分も

生まれたときから特権を持

っている。入学とか、留学とか、

あらゆることについて、革命の後継者としての特権を与えら

れて育

ってきている。自分たちがこの国のリーダーだという

意識は子供のときから持

っている。

他方、共青団の人たちだ

つて、親が党員だという人が多

い。例えば李源潮、彼は今はとばっちりで常務委員は外され

て政治局委員だけれども、国家副主席としていろんな仕事を

やっている。その李源潮は上海市の副市長の息子だから、太

子党と言

ってもいいのだけれども、あまり言われない。父親

は政治的には有能ではなかったようです。彼はむしろ共青団

出身として見られている。李克強の親だ

って大した地位では

ないですけれども党の幹部です。彼は北京大学で学内共青団

の書記を務めて這い上がってきている。相対的に言えば、共

青団のほうが実力で上がってきている。

ただ、付け加えなければならないのは、中国の人脈という

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

のは太子党といい、共青団といい、大枠の話で、核心は個人

的な信頼関係のネットワークが、決定的な要素になるという

ことです。太子党といっても相互の関係は複雑で、誰が誰に

通じているかはっきりしない。明々白々の人もいればそうで

はない人もいて、危なっかしい。

だから習近平は、信頼を置く栗戦書という懐刀を党中央弁

公室の主任にして、彼を通じて全部やっている。通常の党組

織の系統は栗戦書が

一番頼りになる。あと汚職摘発は王岐山

を中心にしてやつている。もしかしたら習近平はこの二人し

か信頼していないかもしれない。トツプは非常に孤独です

よ。もう

一人、習近平の盟友がいる。それは劉少奇の子息

・

劉源です。徐才厚を処分できたのは、劉源の筋書きによると

見ていい。谷俊山の汚職に気づいた劉源は、軍内の規律検査

委員会に問題を提起した。ところが規律を担当する当時党中

央の書記だ

った徐才厚に谷俊山は問題なしともみ消された。

そこで劉源は、谷俊山と結託して汚職捜査を妨害する軍内規

律検査委員会の腐敗機構に気づいた。そして習近平に直訴

し、習近平が独裁的に運営できる中央軍事委員会主席の職権

で徐才厚の除名を決定したと伝えられています。

こうして、軍内の周永康人脈を排除したのが七月

一日の建

党記念日直後です。

朝　共青団よりは、親が特権を持

つ太子党のほうが現在の既

得権益層の主要部分を構成するということですね。

八三

ヽ

‐一 ＼

矢吹　そうです。　一般的にはそう言

っていいですね。太子党

のほうがより権限が大きいので。とはいえ共青団系も相当腐

敗に巻き込まれている。共産党が権力をと

って七〇年ですか

につ。一

連の腐敗の始まりは、薄

一波ですよ。なぜかというと改

革

。開放が始ま

ったときは、部小平は全体の指揮に忙しかっ

た。当時、薄

一波は党中央顧問委員会の副主任でしたが、劉

少奇時代に経済関係をやっていた経済通という知名度を活か

して、経済政策のトップレベルの意思決定に介入した。彼は

『回想録』を書

いているけれど、　一九四九年以後あるいはそ

の前から重要な経済政策の決定のすべてにコミツトしている

ことがわかります。それだけの知識を持

っているから部小平

時代にな

ってからも経済政策については薄

一波と陳雲が分担

して決断している。例えば上海に証券市場をつく

ったのも薄

一波です。どの企業の株式を上場させるかは薄

一波が取り仕

切

っていた。娘の北京大学の同級生

・王益を自分の事務所の

秘書にしたかと思えばすぐに上海市の証券管理委員会の事務

局に行かせた。そして

一、一一年したら王益は新株の上場を認

めるかどうかを判断する部門の副主任になる。この同級生は

歴史学が専攻だから経済なんか何も知らないはずだけれど。

彼の周辺にいろんな会社ができる。つまり会社を立てて、原

始株を裏口で入手して、保有する。上場するとわかった途端

に跳ね上がるから、それで大儲けです。土地の払い下げで儲

八四

けるのはわかりやすい、薄熙来が重慶でや

ったのはそれで

す。もともと農地ですが、払

い下げの権限を新設の区長に

与えるわけです。ただみたいな土地を払い下げるわけですか

ら、区全体だとものすごい財産なるでしょう。それは土地こ

ろがしの話ですけれど、父親を真似て株でも儲けています。

国有企業の

一部を別会社にして上場させる。その前に関係者

と称して株を保有する。薄ファミリーは二代にわたって腐敗

まみれということです。

階級差別と民族差別の国際環境

朝　ソ連は政治改革を進めて挫折し、後継たるロシアの経済

は依然としてしんどい状況にある。だけれども衛星国を手放

したことは世界の民主化を進めることにな

った。中国は経済

改革には

一応成功したものの政治改革を先延ばししたため腐

敗まみれの状況にある。共通するのは市場化によって新たな

超富裕層をたくさんつく

ったということ……。ため息が出ま

す。そ

れはさておいて、腐敗極まる中国、にもかかわらず自浄

能力を持たないという危機的な状況にある中国をどう見るの

か。これは日本が中国とどう付き合

っていくのか、東アジア

世界でどう生きていくのかということにもつながると思うの

ですが、その辺りをお聞かせいただきたいです。

矢吹　中国が今のような形にな

ったのは、ある意味で毛沢東

の予言通りなのです。毛沢東がなぜ文革をや

つたかという

と、社会主義というのは平等でなければいけない、ところが

実際には

「官僚たちが人民の上にあぐらをかいて糞

。小便を

垂れ流している。だから人民よ怒れ、そういう官僚階級を打

倒せよ」というのが毛沢束の文革の呼びかけだ

つた。放置す

れば新しい官僚主義者階級が生まれて、彼らによる独裁が生

まれる。ソ連はすでにそうな

っている。中国もそうなるだろ

うと予言したわけです。果たしてその通りにな

っています。

毛沢東の言葉で言うと

「官僚主義者階級」というのはすさま

じいものです。もちろん経済成長によって、多少は貧乏人の

所得も上がりますよ、しかし官僚はものすごい富を襲断して

いる。土地ころがし、株操作、その他……。

権力を利用して経済活動に介入して大儲けです。中国流の

市場経済は、移行期にあり、不徹底な市場経済システムで

す。このようなシステムにおいては、官僚権力が操作できる

隙間が広いのです。

マスコミは所得

「階層」と呼び、「格差問題」と呼びます

が、私は

「階級」問題だと認識しています。毛沢東の言う

「官僚主義者階級、搾取階級」が生まれたから、その階級の

利益のために経済政策が運営されている、彼らはどんどん儲

かると。そういう構造にな

っていると判断しています。

それはトロツキー社会主義論の系譜から言うと、こうなり

ます。トロツキー派の批判は、今のような市場経済に移行

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

する前の話ですが、「革命をやって、生産手段の社会化」を

実現した。革命はそれで終わりではない。「社会化された生

産手段」は実際にそれを管理

・運用する人々、「管理する階

層、官僚」を必要とする。官僚は、大衆を忘れて、それを自

分たちの利益のために使おうとする。とは言え、これがトロ

ツキストの限界ですが、「官僚は管理をゆだねられているだ

け」だから、「管理を通じて私物化を狙う」としても、「生産

手段の所有」ではなく

「管理者」にすぎないから、私物化に

は限度がある。いまだ

「階級」と呼ぶべき段階ではないとい

う議論でした。

ところがその後、例えばソ連でも中国でもプライバティ

ゼーション

［「一６計き８私有化あるいは民営化］をやつたわけ

ですね。これは制度として私有化をやつたのではなくて、表

向きは国家のもの、集団のものという形をとりながら、事

実上私物化するわけです。例えば、国有企業の

一番美味しい

部分だけ株式化して、自分がそこの株式を手に入れ、経営者

に収まる。今や

「管理者」が

「所有者」に昇格した。こうし

て、株主として合法的に配当を得て、さらに経営者としての

収入も手に入れる。

表向きは、配当収入にも経営者所得にも上限が規定されて

いるのですが、これはほとんど守られていない。これが中国

流の市場経済です。その成功者は日本の富裕層よりもはるか

にリツチです。

八五

ヽ

―一 ＼

今はグローバル企業にな

っているので、アメリカから経営

者を招き高い報酬を支払います。敵は本能寺にあり。実は自

分の経営者収入をアメリカ人取締役並みに引き揚げるための

．作戦にすぎない。アメリカなみの給与をアメリカ人に払

っ

て、中国人もそれと同じ仕事をしているから、そこまで上げ

ろと、お手盛りをやっている。

中央の財政部は、何千万元以上の報酬は不可とか、あるい

は何社もの経営者になる副職の給与は何割に抑えろとか、制

限、規制はするのだけれど、ほとんどザル法であり、守られ

ていない。中国流市場経済には、何でもあり、です。

朝　豊かになるためには市場化せざるをえなかった、イコー

ル資本主義化ということになりますが。その中で決定的だ

っ

たのは、官僚層が社会主義的な制度を残した状態で、土地売

買が典型的だと思いますが、普通の意味での資本主義より利

益が格段に得られる構造をつく

った。そこから既得権益者は

抜け出せないですね。それが今の中国の状況ではないですか。

矢吹　一般論で言うと、「革命党が社会を変える」のではな

く、逆に

「社会の旧悪の中で革命党が変質」してしま

った。

かつて共産党は国民党を腐敗した政党だと打倒したけれど

も、五〇年経

って、気がついてみたら、「かつて批判された

国民党」と比べて、「かつて批判する側にいた共産党」が

も

っと悪くな

っている。党が社会をよくするのではなく、党

は旧社会の旧悪に飲み込まれて、とてつもなく悪くな

った。

八六

国内でもう

一つ、階級問題の他に、民族問題も深刻です。

チベット、ウイグル、モンゴル、民族問題は根深い。対立は

深刻です。

中国人は日本帝国主義の植民地支配に対して、満州しか

り、台湾しかり、けしからんといろんな批判をしてきたはず

ですが、殖民地批判の論理を自分たちは活かしているかと

いうと、とんでもない。新彊ウイグルの生産建設兵団のやり

方は植民地主義そのものです。新彊ウイグルでいくら石油を

掘

っても新彊ウイグルの財政とは関係ない、全部北京に直行

してしまう。軍が開発したから軍の所有になる。ウイグルは

まさに深刻な国内植民地です。

今、特に問題になっているのが言語政策です。自治区とい

う形をと

って少数民族を尊重すると言いながら、義務教育レ

ベルで、漢語ができないチベット人教師、ウイグル人教師か

ら、教員資格を剥奪する暴挙をやっている。彼らはいやおう

なしに中国語の勉強をせざるをえない。むろん、中国語を

習得したほうが就職の機会が増えるという実利があるのは、

確かでしょう。自らそれを望んで選ぶならば言うことはない

のですが、強制は許されない。チベット文化、ウイグル文化

を守ろうとしている人たちの間で、欲求不満が高まっている

と聞きます。とは言え、圧倒的に弱いから、抵抗しようがな

い。欲求不満は内向します。

少数民族に対する抑圧と、漢民族内における階級的抑圧、

ヽ

― ＼

農民に対する抑圧、根は同じです。農民工の出稼ぎ話は本当

に酷い。アイパッド組立工場の女工連続飛び下り自殺事件

は、その象徴ですね。

このように堕落したことについては、国際的な環境の問題

も指摘したい。改革派が弱くな

って、今の体制で利益をむさ

ぼるという人だけがのさばる社会にな

ったのは、結局のとこ

ろ、かつてまともな改革をやろうとした人、例えば天安門事

件でも

いいし、その他

いろんな民主化運動をやろうとした

人、今でも弁護士で頑張

っている人がいるけれども、あまり

にも力が弱い。

そのような中国に変質したのは、内外の悪条件のためで

す。例えば郡小平は、指導部に復帰するや人五年に百万人の

兵員削減を断行した。それがプラスにな

って八〇年代は経

済が伸びた。ところが、そのあと天安門事件があ

って兵員削

減の方向は壁にぶつかり、国防予算の二桁増加路線に転換し

た。中国の国防意識を

一番挑発したのが台湾独立を煽動した

李登輝発言です。日本は

「日米防衛協力のためのガイドライ

ン」にそ

ってそれを支持した。冷戦が終わ

った機会に、東ア

ジアは安全保障環境を再検討し、非武装の平和地帯をつくろ

うとか、緊張緩和をやろうとか、そう

いう方向に動くべき

だ

ったのに、逆の動きにな

った。この問題をめぐ

って最初に

挑発したのは李登輝です。当時の台湾経済は調子がよくて、

大陸がまだ二〇〇億ドルくらいのとき、外貨を

一〇〇〇億ド

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

ル保有していた。人口二〇〇〇万の台湾と十数億の中国と

で、そう

いう対比ができたから、「台湾経済の奇跡」が叫ば

れ、台湾独立だと李登輝は舞い上がった。

日本とアメリカが李登輝を支持し、江沢民は対抗して李登

輝攻撃を行い、台湾海峡の擬似緊張が意図的につくられたの

です。李登輝がまず挑発し、弱い指導者

。江沢民はこれを奇

貨としてナショナリズムをあおり、国内統

一に利用したので

す。一

つは対李登輝のコンプレツクス。もう

一つは、台湾独

立、台湾分離の危機だと国内のナショナリズムをあおつて、

国内統

一を図ろうとした。台湾独立を

「日本軍国主義」が支

持し、アメリカ帝国主義も支持しようとしている。それに対

抗するための国防強化というキャンペーンをやつた。

郡小平が亡くな

ったのが香港返還の直前、九七年の二月で

す。その五年前から江沢民は総書記にな

っていたけれども、

都小平の院政中は見習い以上の政策はなかった。

江沢民が初めて独自の行動を展開したのが九六年の台湾海

峡へのミサイル発射です。あれは江沢民の中央軍事委員会主

席のお披露日興業に近い。「俺が軍のトップだぞ」と、腕自

坊主の自己主張に近い。挑発した李登輝も質の悪い政治家で

すが、挑発に乗

ってああいう強面作戦をやるのは、自信のな

い政治家にありがちなことです。

同時に反日キャンペーンを展開する。たまたま九五年は抗

八七

ヽ

―一 ＼

日戦争勝利五〇周年ということで、派手に反日活動をやるも

のだから、それまで友好交流に尽力してきた人々もしらけ

た。　一所懸命やってきたのに付き合いきれんと怒

った友好人

士はたくさんいます。

江沢民はあの頃は執拗に反日ということを言いましたが、

何事も国内をまとめるための戦術なのです。しかしその後遺

症は大きい。

李登輝、江沢民に次いで、ナショナリズム合戦に加わ

った

のは、小泉首相です。江沢民の反日態度に日本人は相当不愉

快になっていた。円借款とか、植樹とかいろんな形で、不幸

な戦争があ

ったけれども、これからは仲良くしましょうと協

力してきた。ところが中国は日本軍国主義復活ばかり繰り返

して、自分たちが戦後努力してきたことをまるで無視してい

る。友好活動家たちの欲求不満がつのっていった。小泉は当

時、党内で橋本派が圧倒的多数という中で少数派でした。

「一年もつか」と言われていたが、江沢民のおかげで五年の

長期政権になった。それはズバリ言

って江沢民のおかげです。

小泉が靖国に行くと言えば江沢民が騒いでくれるから、小泉

は何もやらずに、ときどき

「靖国へ行く」と発言して、江沢

民を刺激すればよい。江沢民が小泉を攻撃しさえすれば、小

泉の毅然たる対中姿勢を裏書きしてもらえる。小泉は靖国神

社

へ六回行くことによって、長期政権を維持できた。中国流

の排外愛国主義が小泉を英雄にした。

八八

朝　民族問題は、現在、未来の中国をどう見据えるかという

ことの重要なキーポイントになると思います。矢吹さんと

は

『巨大国家中国のゆくえ―国家

。社会

。経済』［東方書店、

一九九二ハ年］の編集担当者として出会

いました。この本でも

述べられている連邦国家論は民族問題を解決するのに極めて

有効な、検討されるべき施策だと思いますが、連邦国家の可

能性はなくな

ったのでしょうか。

矢吹　そうではないと思います。中国はようやく経済の面で

はアメリカを上回ったけれども、アメリカは衰退していくだ

けでしようから、この傾向はず

っと続いて、中国が強くなる

だけ。そうなって単なるＧＮＰ

（国民総生産）だけでなく、科

学技術とか軍事力とかいろんな意味で余裕ができてくると、

今までのような引き締め路線

一本槍では、行き詰まるのでは

ないか。今までは

「外敵を前にして国内団結」でやってき

た。自分より強い敵が外にいないとなると、軍事力拡大より

も生活をよくしろという要求が出てきて、変わ

っていくだろ

うと見ます。阿片戦争以来百年、これまでは

「被害者コンプ

レックス」でやってきたけれども、「ナショナリズムという

国内団結機能」が役に立たなくなるでしょう。中国はかつて

唐代には、世界国家として非常に高い文化を誇り、人々が周

辺から自然に寄

ってくる時代を体験しています。

『イソップ物語』の

「北風と太陽」の論理です。今の中国

がナショナリズムをあおって強がりを見せるのは、弱さを意

・Ｌ

―

ト

Ｉ

Ｌ

ｒｉ

ｔ

，　

い

―

―

ヽ

―一 ＼

識したコンプレツクスに基づく。外から太陽をも

っと照らさ

れ、対外的に自信がつくならば、いやおうなしに外套を脱

ぐことになるのではないか。そちらのほうが中国人の

「国民

性」にあ

っていると思います。

朝　国際環境に関連して、二つお聞きしたいと思います。　一

つ目は国内問題が累積している中でそれをそらす手段かもし

れませんが、非常に積極的な外交をやっています。特に日本

が気になるアメリカと韓国に対する習近平の外交政策をどう

思われるか。二つ目は日本が中国の未来、例えば連邦国家

へ

至る国際環境づくりといったようなことで果たせる役割があ

るのではないかないかと思いますが、その点をどういうふう

にお考えにな

っているか。

矢吹　外交についての分析ですけれども、中国は基本的に二

つの考え方でやっています。

一つはアメリカとの関係で

「新型の大国関係」です。世界

において中国とアメリカだけが別格の大国である。それは核

兵器を見たらわかることです。核兵器を持

っている安保理事

会五大国のうち、ソ連は軍拡から降りた、半人前の国家みた

いなものだから。イギリスもフランスも半人前。そうすると

アメリカに対抗する可能性を持つのは中国だけでしょう。実

際にはそんな対決にはならない。お互いに核を持

っている国

同士は戦争をやれないわけだから、仲良くせざるをえない。

私のいう

「チャイメリカという結託」の構図です

［詳しくは

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

矢吹晋著

『チャイメリカー米中結託と日本の進路』花伝社、二〇一二

年］。ただ

「場合によ

ってはやるかもしれな

い」と

いう緊張

感はお互いにと

って、国内引き締めの上でプラスなのです。

お互いに

「敵対したポーズを示しながら、結託する」という

のはアメリカと中国だけでしょう。

だからその意味で、で」の二つの国」は特殊なのだと

いう

ことがお互いにわか

っていて、中国側が

「新型の大国関係」

と言

っている。アメリカは中国の言

っていることとは違うと

表向き否定しながら、事実上は同意している。ただ、アメリ

カは他の国々、イギリスとも、フランスとも、ロシアとも、

それぞれの関係があるから、中国との特殊な関係だけではな

いですよと牽制している。アメリカは現に世界を

コントロー

ルしているわけですから、簡単に中国とだけ、「大国関係」

を

つくるわけにはいかないのです。

私が米中関係で、繰り返し指摘しているのは外貨

の話で

す。このグラフですね。

今年

の六月現在

で、中国の外貨準備高は、日本

の三倍で

す。信じられな

いくら

いの伸び方です。「台湾独立」を李登

輝がはじ

ゃいでいたときには、台湾は

一〇〇〇億ドル持

っ

ていたけれど、中国は二、一二〇〇億ドルにすぎなか

った。

三〇〇億ドルから二〇年間で三兆ドルヘと百倍です。決定的

なのは二〇〇六年です。アメリカが中国を

「ステークホル

ダＩ

Ｆけ”Ｆｏ属ｏ】０８利害関係者こ

と言

った年、その年に初めて

八九

,010年 1ストラ|テ|ン,ク |,|シ|=|″ |ラ|シス

桃輌櫛輌３．。。２．５。知輌輌囲０・０。

佃２。。０。。８。。６。。４。。２。。。朝幅ぃ

中国の外貨準準備高が日本を追い越した。それまではアメリ

カ国債の保有額は日本がナンバ１１だ

つた。この年に中国が

日本を超えた。アメリカは、これからは中国に買

ってもらお

うと決断した。次の転機は〇九年です。アメリカは

「ストラ

テジック

リアシュアランス

Ｆけ『“けｏ”【ｏｏヽ”∽∽Ｌ【”●００こ

と分析し

ました。「ストラテジック」は

「戦略的」、「リアシュアラン

ス」は

「お互いに約束を確かめる、約束を保険にかける」と

九〇

いう意味です。何を言

っているかというと、こ

のときには中国はすでにアメリカ国債を日本と

訪　　同じくらい買

っている。橋本首相は

「アメリカ

動　　国債を売るぞ」と発言して大騒ぎにな

った。し

回　　かし日本は安保条約でしばられているから売れ

紳　　ないのは明らか。中国は本当にアメリカとヶン

幅　　力したいならば、売る決断ができるわけです。

箱　　　その時点でドルは暴落して、ドルは国内通貨

麟　　に転落します。国際的な

「基軸通貨国としての

琳　　地位」は、　一挙に失われる。「ドルが危ない」

ぁ　　とウワサが伝わった途端にドル売りですよ。

・，下　　パツクスアメリカーナの終焉です。むろんアメ

所　

　

‐ヵ国内の人々の生活は関係ない、ドルはドル

出　　として国内

では通用するから。かく

てドメス

ティツクなアメリカに転落する。

中国に対して、アメリカ国債を売るなんてこと

日中の外貨準備高

九 九 九 九 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 一 ― 一 ― ―

奪奪傘染♀革津葦翠葎奪準傘牽♀革翠葦蒼軍

国中のアメリカ国債保有額(10億 ドル)

18001

1600:

20136 201312 201441586 1611 15941083 1183 1210

閣５５８＝

０

１

１は絶対にやってくれるな、そのために話し合いをやりましょ

うとァメリカが懇願しているのです。ここから米中戦略対話

が始ま

って、すでに数年です。ストラテジック

リアシユア

ランスを言

ったのはブッシュニ期政権の国務副長官

・ゼー

リックです。ゼーリックはそのあと、世界銀行の総裁にな

る、国際金融のプロです。

ヽ

― ＼

尖閣問題は日‐米

‐中の三角関係を浮き彫りにする

矢吹　一一〇

一〇年九月、当時の前原外務大臣が中国人船長を

逮捕して裁判にかけると言

ったときに、ニューヨーク行

って

ヒラリー国務長官としゃべって、「尖閣は安保条約五条の対

象内だ」と言われて、大喜びで

「今や日米安保は国際公共財

だ」と言

った。日本の新聞も大はしゃぎして書きまくりまし

た。ところがアメリカペンタゴンの報告書は、同じことを中

国にも言

っていた。

同じ年の

一カ月前、ペンタゴンの中国報告書が出て、その

中で中国のＰＬＡ

［解放軍］は国際公共財を通ぶ役割を果た

していると賞賛したのです。何を言

っているのか。ＰＬＡは

平和維持部隊に参加したり、地震の救援に出動したり、ある

いは海賊退治や、テロ対策など

「国際秩序を維持するため」

に役に立

っていると賞賛したのです。ペンタゴンは前原に

リップ

サービスをする直前に、中国に対して

「あなたの軍

隊も国際平和に役立

っている」と賞賛している。日本の主流

マスコミは、すべて御用マスコミに堕落しており、この事実

を報道した例は皆無です。前原

へのリップ

サービスを特筆

しないマスコミはマスコミではない。同時に、ペンタゴンは

解放軍にもリツプ

サービスしていたけれども、この事実を

報じた日本のマスコミも今なお皆無です。

アメリカは、今後は金持ち中国にアメリカ国債を買

ってもら

うしかない。今や日本の保有額は

一兆二〇〇〇億ドルくら

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

い、中国は

一兆六〇〇〇億ドルくらい。

日本は安保条約があるから売れないから安定的保有者。中

国はもしかしたら売るかもしれないから、そうならないよう

にご機嫌をとるほかない。米中間には、こういう馴れ合い、

もたれあい、相互依存の関係が成立した。

中国が悪さをしなければアメリカは、なんとかやっていけ

るという腐れ縁の関係ができている。　一番大事な基軸通貨の

運営が中国の協力を得て、かろうじてやっていける。このこ

とが

一番大事です、何しろ資本主義経済ですから、この点で

のゴマカシはありえない。

暗黙の約束で双方が行動しているわけですから、これは出

来レースですね。

アメリカには反共主義者もいるから

「中国の悪口」を言

っ

てこれをなだめる。中国にも反アメリカ帝国主義者がいるか

ら、足元を見られないようにアメリカとヶンカした振りをす

る。ポーズをとる。今の

「公明党と自民党の関係」みたいな

感じでしょうか。

ですから、安倍みたいなアメリカ片思い、アメリカ頼りな

んていうのは、危なっかしくてしょうがない。安倍首相とオ

バマ大統領が今年の四月に東京で演じた首脳会談は、とんで

もない

「同床異夢」です。日本側は

一所懸命

「尖閣は安保条

約五条の対象だ」とオバマが発言してくれたと喜び、満額回

答だ、大成功だと言

っている。

九

一

ヽ

一 ＼

ところがオバマはそのあと何を言

ったか。「沖縄の

一部で

ある尖閣が安保条約五条の対象に入ること」、で」れは私が

生まれる前から決ま

っていたことだ」「私は何も新しいこと

は、言

っていない」。アメリカ政府の

「標準的な解釈」を繰

り返しただけだとＣＮＮ記者に解説しています。安保条約の

締結は

一九五

一年で、オバマは六

一年生まれです。これはア

メリカ政府の標準的な解釈にすぎない。私は新しいことは何

も付け加えていないと、その後も繰り返しています。

さらに加えて、「安倍首相が中国との敵対関係を

エスカ

レートさせ、

いよ

いよ関係を悪化させるのは、

「ｏ♂ＥＱ

Ｂ【∽一詳①「重大な間違い、深刻な間違い」だと、安倍さんに

直接忠告したよと記者に語

っています。

その部分の日本側の通訳は両方とも誤訳です。御用通訳者

は安倍の顔色を見ながら、ｏ８き目０日”∽一洋のを

「正しくない」

と軽く流して、ごまかした。

も

っと悪

いのが尖閣問題です、尖閣についてアメリカは

「最終的な帰属はわからない」、「それは日台中の三者の関係

で話し合

って決めるしかない」、「最終的帰属は決ま

ってい

ない」とは

っきりいつている。帰属問題について

「アメリ

カ政府は立場をとらない」、あるいはいずれにも与しな

い

「中立的な立場をとる」というのがアメリカ政府の正式な立

場です。それを今回も繰り返した。ところが日本の御用通

訳、誤訳通訳は、「アメリカは尖閣について立場を示しませ

九二

ん」と訳している。本当にでたらめな通訳です。首相官邸

の公式サイトに出てくる映像

Ｆ計一ミ＼う母く電く‐０●一一８８一●＼ｏ『ヽ

「”Φ゙∞卜〓邑つ目け＝二

を観ました。録画の功罪は、裁判系統で少

し問題にな

っていますが、「録画だけ」というのは本当に問

題です。安倍の日本語は本当にいいかげん、発音だけは明

瞭だけれども意味不明。同時通訳もでたらめ。ホワイトハ

ウスの公式サイトの英語Ｆけ又≧く１・１口」けｏ●ｏ●∽£ｏく＼けＦｏ『ｏ第

ｏいいｏｏ＼ＮＯＰ卜＼〇卜ヽＮ卜ヽ一ｏ一●一‐●『０∽∽‐００●ぃ０【ｏ●ｏｏ‐００ヽ∽一ヽｏ●け‐ｏσ”日”‐”●０，つ【〓いｏ‐

目．●」∽けｏこげｏこ”ｏ”ュ

を読むと意味が

一番はっきり、確実にわか

ります。これはまずいのではないかとず

つと思

っていました。

今回改めて、東京のアメリカ大使館の公式サイトを見た

ら、ち

やんとホワイト

ハウスの英語版

の日本語訳

冨〓ミ

す０●●ｏ∽ｏ」”ｏ”●湯ｏ日σ”∽∽く電くさもヽけヽ早いｏＨ一ｏＯい一３日畠が出ている。

こうして、アメリカの立場は、英語も日本語もちやんとし

ていて、それを読めばアメリカが何を言

っているか、はっき

りわかります。ところが日本の新聞は、この箇所がすべてで

たらめ。読売、朝日、ＮＨＫも含めて全滅です。

つまり、日本の新聞だけを読んでいる善良な日本人には、

オバマの言い分は何もわからないということになります。小

学校から英語を教えようと言

っておきながら第

一線の連中は

バカ丸出しです。オバマ発言を無視しているのか。それとも

尖閣をめぐる対立の真相に無知なのか。要するに、尖閣紛争

について、日本の新聞には真実が書かれていない。

ヽ

‐一 ＼

朝　尖閣問題は現在の日中関係における大きなトゲだと思い

ます。領土というのは近代国民国家形成以降の国家間の領土

ぶんどり合戦の歴史を踏まえて語らなければならないと思い

ます。古文献を持ち出してもあまり意味はない。そういう中

で安倍政権の対応を見ていますと、戦後日本の枠組みである

サンフランシスコ平和条約と安保条約が不可分のものである

ということを前提にして尖閣も語られるべきなのに、両条約

に対して親米

一辺倒であるが故の御都合主義的な解釈をし、

おかしなことにな

っていると思います。尖閣のことについ

てもう

一つ言えば、沖縄とのからみを理解することは尖閣

問題を理解するために不可欠な重要なキーポイントだと思い

ます。矢吹さんは

『尖閣衝突は沖縄返還に始まる』［花伝社、

二〇一三年］という書を出されてもいますが、沖縄返還交渉

はアメリカの尖閣観をわかりやすく説明できる要素だと思う

ので、そこも語

ってほしいです。

矢吹　尖閣は日清戦争中に

「無主地である」と日本が宣言し

て、それ以来

「日本が実効支配してきた」、「固有の領土だ」

となんな言

っている。だけどそれは嘘です。　一九四五年に日

本が戦争に負けて七二年に返還されるまで誰が実効支配した

のですか。日本ではない、アメリカ軍です。ではなぜアメリ

カ軍は沖縄を実効支配できたのですか、それは中華民国政府

が同意したからでしょう。当時の中華民国は、「戦勝国の

一

員」で

「国連の常任理事国の

一員」ですよ。なぜ常任理事国

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

になれたのか。アメリカの同盟国だ

ったからですよ。連合国

として勝利した、戦勝国だからアメリカと中華民国は、「立

場が同じ」です。じゃあなんでアメリカだけが沖縄を占領し

たのか。アメリカが中華民国の同意を得たからです。「沖縄

占領はアメリカ

一国だけでやらせてくれ」「その代わり中華

民国の安全を保障する」。蒋介石としては大陸を追われて台

湾に逃げたときでしょう。沖縄占領はアメリカに任せるか

ら、台湾の安全はよろしくという取引が成立した。

ところが占領が終わって、沖縄返還とな

ったとたんに落介

石は、日を開いた。

今まではアメリカに頼んで管理してもらつていたけれど、

沖縄をどうするかについて戦勝国としての中華民国は

一言い

う権利がある。沖縄を中華民国によこせとは、言わない。な

ぜかというと

「戦勝国は領土を拡大してはいけない」という

「大西洋憲章」があり、チャーチルとルーズベルトが四

一年

に交わした誓約があり、それが

「国連の精神」として継承さ

れていたからです。第

一次大戦後の

「国際連盟」はドイツに

対して領土を奪い、過大な賠償を課した結果、ナチズムを生

んだことが反省され、第二次世界大戦後は

「戦勝国は領土を

増やしてはいけない」誓約が生まれた。寿介石はその事実を

知

っているから、沖縄本島が日本に返ることには文句を言わ

ない。ただし尖閣は別だと主張した。尖閣はもともと台湾に

一番近いところにあ

って、台湾の漁民が使

っていた。地理的

九二

ヽ

一 ＼

には沖縄トラフの大陸側にある、と。

台湾を日清戦争のあとに日本が奪

ったのだから、第二次日

中戦争に負けた日本が返すのは当たり前だと主張した。これ

はアメリカとしては認めざるをえない言い分です。国務省で

検討した結果、中華民国の言い分は、その通り認めることに

な

った。

日清戦争前の話ですけれど、南北戦争のときの北軍司令官

のグラントが、大統領を辞めたあとに世界漫遊をした。南北

戦争で勝利して統

一アメリカをつくり、これから世界に向け

ていろいろ外交をやらないといけない。それまではイギリス

からどうやつて独立するかと、イギリスしか見ていなか

っ

た。ようやく新興の

一国にな

ったから世界漫遊をして外交を

考える。　一年半くらいの旅行なのですけれど、最後に中国に

行

ったら李鴻章から文句をつけられたのですよ。日本が沖縄

を全部と

ってしま

った、あれは困ると。なんとか日本と話を

つけてくれと。李鴻章が提案してグラントも同意したのは、

奄美諸島は薩摩藩との関係が深いから日本のものだ、宮古諸

島

・八重山諸島からなる先島諸島は台湾に近いから清国のも

のだ、真ん中の久米島を含む沖縄諸島は中立の独立国にしよ

う。グラントは日本に来て、明治天皇に二回会

ってそれを伝

えた。伊藤博文と西郷従道がその話を聞いて、すぐ翌年から

清国と交渉を始めるのです。それでどういう結果にな

ったか

というと、宮古諸島

・八重山諸島から南は台湾に近いから清

九四

国にくれてやろうと、仮調印までしていた。しかしその後、

李鴻章がそれは日本に譲りすぎだど交渉の打ち切りを命じた。

どうしてかと言うと、李鴻章はそのときロシアとも交渉して

いて、そのほうはなんとか収ま

ったのです。じゃ日本にそん

なに譲る必要はないとなって、仮調印までこぎつけた妥協案

は全部吹

つ飛んでしま

った。

これが日清戦争前の状況です。すなわち日清戦争前という

のは、この辺りの線引きが

「両国の実力の反映」だ

ったとい

うことです。ところが日清戦争で日本が勝

ってしまうと話が

違

ってきて、台湾本島と膨湖島まで奪

ってしまう、尖閣も当

然日本になる。これが尖閣領有史です。「尖閣は無主地と宣

言したから、日本のものになった」のではないのです。

「先占」を内閣では決めたのだけれども、清国には通告し

ていない。相手に通告せず自分だけで

一方的に決めても意味

ないではないですか。真相は要するに、日清戦争のどさくさ

まぎれに奪

った。それだけの話です。

一九四五年に今度は日中戦争に負けたわけですから、落介

石がこの辺りは全部返してもらうと言うのは当たり前の話で

す。沖縄までとは言えない。これは日本の歴史的統合領土と

して国際的に認められている。仮に沖縄もと言

ったとたんに

領土拡張主義だとなるわけですから、蒋介石はアメリカの世

論の動向を気にしているというか、アメリカしか頼りになる

国はないから、そこは慎重にして、尖閣だけは日本に返して

ヽ

―一 ＼

もらわなくては困ると泣きついた。だから結局、アメリカ軍

の基地を残した。中国名で黄尾嶼と赤尾嶼、日本名では久場

島、大正島です。現在、基地の名前に、黄尾嶼、赤尾嶼とい

う中国名がついているのは落介石が要求したからなのです。

その目的は台湾の防衛です。

ここをもし日本に任せたらどうなるか。何を落介石が心配

したかというと、ここは無人島です。中国大陸の軍隊がこっ

そり上陸して基地をつく

つて、そこから台湾作戦をやる。そ

れは困るということです、久場島、大正島は大陸に

一番近い

わけですから。当時のアメリカは第七艦隊のパトロールを

削減する、緊張関係を緩和するなど、

ニクソンやキツシン

ジャーが北京に行くためにいろんな緩和策をやっていた。そ

ういう点からいつたら、ここのアメリカ軍基地をなくすとい

うのは当たり前なことなのに、ここにだけは落介石がアメリ

カにいてくれと頼んだから基地が残

った。これが尖閣の運命

です。

蒋介石が非常に強く要求した結果なのだけれども、落介石

が要求する根拠もあ

ったし、ニクソンも受け入れざるをえな

いと思

った点が重要です。

アメリカには、沖縄占領を

一国だけで自由にやれたのは落

介石とイギリスの同意を得られたからだという負い目があ

つ

たのです。さらに、ニクソンが北京に行くときの土産話があ

ります。「瓶のフタ論」、安保条約は瓶のフタだという議論

がありますね。日米安保は決して北京を狙

っているのではな

い、むしろ逆だ。日本の軍国主義はいつ、どこで暴発するか

わからないから、日米安保でフタをしているのだと、アメリ

思想の本舗

。図書新聞では創業以来六二年間、　一貫して知のトレンド

を練り続け、アヴァンギャルド

・シーンの生きた批評を完全パック、

産地直送させていただいております。媚びない。退かない。甘くない。

Ｊ́り壽ゴリ

・レビＬュー　　　　　　　　　　　そのラジカリズムに徹した辛日の

本格書評は、知識の修羅場を生き

抜く指南の書。どうぞトンガリの

極みを熟読玩味の上、ますますの

硬派書評組である．

ご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。なお、「本紙でみた」

とお葉書いただければ、早急に見本紙送付いたします。

詳しくはウエプで。　　　　　　　　　　　　　　　　　　店主敬自

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一〇

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一

剛Ｏニー三二六

一―四八三七

〓一一一一一ヽヽ沖０∽〓●∽〓ヨ̈ＯＣヨ・』０

図書新聞

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

九五

イタリア 70

アメリカイギリス

ポーランドフランス

ドイツウクライナ

IIlシ ンノヽレスチナ

ヽ

一 ＼

２

２８

２９

力は毛沢東、周恩来に説明したのです。

日本は極端な対中嫌悪感によって世界の孤児になっている

朝　まだまだお聞きしたいたいことがたくさんあるのですけ

れども、最後に対談開始の前にご紹介いただいた世論調査の

ことをお話しください。日本の対中感、中国の対日感、それ

ぞれ最悪な状況になっていますが、これをどう見るか。さら

に現在の中国を念頭に置きながら、日本のスタンスはどうあ

るべきかをお話いただきたいと思います。

矢吹　中国をどのように認識するかと、現実に存在する中国

とどう付き合うかは区別して議論しないといけません。日本

九

策

３２

２

で今

一番問題なのは、中国が嫌いだから戦争もやむをえない

みたいな議論があることです。これはものすごく間違

ってい

る。どんなに嫌な隣人だとしても隣人であれば仲良く、心底

から仲良くなれないとして表向きは仲良くしないとまずいだ

ろうと思います。その辺りのことが日本ではものすごくご

っ

ちやにな

つていて、中国はいろいろ問題のある国だからケン

カするのは当り前だ、場合によっては戦争もやろうではない

かみたいな議論は、とにかく困るということなのだけれど

も。今の日本の中国敵対意識はもちろんつくられたものだけ

れど、常軌を逸しているということを指摘したいわけです。

アメリカにピ

ュー

（ＰＥＷ）という世論調査の会社があ

っ

ＬＤ

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ド！―ト

中国への好感度好感を持たない 持つ

5596

53

3852篤爾

40豊撻議裁暮鱗曇圏薔圏圏圏圏麟麟45

32-49

39圏麟饉爾艤艤爾翻1日||||口 36

７４７２鍋

卜′レコ 68イスラエルマレーシア

タイパキスタン

インドネシアベトナム

フィリピンインド韓爾日本

ベルーメキシヨプラジル

アルゼンチンケニヤ

タンザニア南アフリカ

世界平均

フランスイタリア

ドイツウクライナ

爾シア′ヽレスチナエジフト

トリレヨイスラエルマレーシア

タイパキスタン

インドネシアベトナム

フィリピンインド韓国日本

ペルーメキシヨプラジル

アルゼンチンタニヤ

タンザニア南アフリカ

世界平均

エジプト 53

78

中国に個人的自由はあるかない ある

アメリカ7 14%イギリス 76蕪薫暑薫職鱗繋齢漣難欄醸購16

ポーランド 72隷棘熱蝉鶏難構藤簿鑽饉 14

空喝‐2場1廃弔3薄Keseaに h ce薇

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て、そこがピ

ュー

グローバルアテイテュード

プロジ

エク

ト

つ同ヨ

ＯｏげＬとけき０８聟〓こ

と

いう大掛かりな国際調査

をやっているのです。ＰＥＷの中にはいろいろなプロジエク

トがあるのですが、ご紹介するプロジェクトの最高責任者は

オルブライト前国務長官です。世界のいろんな国の人が、世

界のいろんな国に対してどのように見ているかという世論調

査です。日本では内閣府世論調査というのがありますが、主

な国に対して好きか／嫌いか／どちらでもないか、その程度

なのです。継続的に調査しているものがありますけれど。こ

のアメリカのＰＥＷの調査はかなり組織的に継続的にやって

いるので有名なわけです。例えば日本の場合は、日本の調査

会社とジョイントしてそちらにゆだねてやらせている。調査

の方法はテレビ局や新聞社がやっているのと同じ固定電話で

六四天安門事件から二五年　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

やるＲＤＤ方式

冒営８日口”』針∪」”Ｆ”乱数番号法］です。そう

いう世論調査は珍しくないのだけれども、この七月に発表さ

れた調査を見ると、日本が世界の孤児であるとう姿が浮かび

上がっています。日本では中国に好意を持たない、つまり中

国嫌いだという人が九

一パーセント、好意を持つ人は七パー

セントで

一割もいない。これは国際的に見てむちやくちやな

数字です。ちなみに世界平均を言いますと、嫌いだと、中国

にいい感じを持

っていない人は三分の

一で、逆に好感を持

っ

ている人は四九パーセントで半分は好感を持

っている。いろ

いろあるけれど、中国とは仲良くやりましょうというのが平

均的。日本の数字は極端ですね。例えばイギリスは三八パー

セントが嫌い、四七パーセントが好感を持

っている。アジア

だとベトナムは衝突していたから日本に次いで好感度が低く

一六パーセント、嫌いが七八パーセント。日本は実際に軍事

衝突しているベトナムよりすごい数字です。

中国に個人的自由があるかについて。日本のマスコミは決

まりき

ったように、中国には自由がない、共産党独裁だとい

うけれど、日本では自由があると思

っている人は四パーセン

ト、ないと思

っている人は人九パーセント。日本が極端に中

国の悪日だけを言

っていることにつながる。アメリカは基本

的に反共だし、朝鮮戦争のときは中国と戦

ってたくさん死

んでいるし、台湾を支持してきたし、ベトナム戦争では中国

がベトナムを支援してアメリカは手をやいていた。ず

っと反

九七

中、反共でやっていたわけです。そのアメリカでは自由があ

ると思

っている人は

一四パーセント、ないと思

っている人は

七八パーセント。日本はそういうことがないのに、こんな数

字です。

もう

一つ、習近平は信頼できるかについては、信頼できる

は、日本は六パーセントだけ。だけれどもドイツは二五パー

セント、アメリカは二人パーセント。日本の中国イメージは

極端なのです。

私自身は中国の今のあり方にそうとう厳しい目で見てい

る。しかし、どんな国であ

ったとしても、どんな独裁国で

あ

ったとしても、隣国であるとすれば、うまく付き合

ってい

くしかないではないかと思います。

無人島をめぐ

って争い、場合によっては無益な戦争だとい

うのは狂気の沙汰です。その辺りのことは冷静に考えない。

世論調査に出てくる日本の姿は異常です。日本だけです、中

国に対してこんなにむき出しの嫌悪感を出しているのは。世

界のどこにも、そんな国はない。日本は本当におかしくな

っ

ている、狂

っているとしかいいようがない。

そういう状況ですから、本当は、私は中国の悪口を今はあ

まり言いたくないのだけれども、しかし起きていることは事

実として指摘しなければいけない。これだけ中国の悪口を

一言っている日本が、中国で本当に起きていることが何かにつ

いてはほとんど鈍感で、ただ悪い国だ、信用できない、嘘を

レ

九八

つく国だと、そんなイメージだけが先行していて、それ以上

見ようとしていないというのは、どうしようもない。

いろんな新聞が徐才厚という中央軍事委員会のトップがあ

そこまでにな

っているのをろくろく報道しない。新聞記者は

何を考えているのだと。ほとんど痴呆症といいたい。マスメ

ディアが自痴にな

っているのではないか。

編集部　多く語

っていただいて、ありがとうございます。

＊

［］内の注は聞き手に拠る。

追記対

談の二週間ほど前に軍制服組トップの前党中央軍事委員

会副主席

。徐才厚が汚職で摘発され党籍を剥奪されたことは

対談でも触れられているが、その後、常務委員経験者には捜

査は及ばないという不文律が破られ、前政治局常務委員の周

永康が摘発された。対談でも矢吹さんは中国における

一連の

事態に対する日本の報道が鈍いと指弾されているが、今回の

対談以降に起こっている事態は次号で語

っていただく予定で

ある。

第4期変革のための総合誌

20149010月 合併号 ヽ

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(巻頭特集)東アジア

川満信一・丸川哲史・李泳采東アジアの中の沖縄/日本

〈廣松渉没後二〇周年・資本論〉張 一兵 廣松渉の物象化パラダイムの起源吉田憲夫 廣松渉氏の「貨幣生成論」について

井出 彰 東京発、遠野物語行 (最終回)

¨特集

天安門事件二五周年

矢吹晋

・朝浩之　解放軍最高幹部の党籍を剥奪した中国

中華民族の再興は可能か　加々美光行

〓藤田幸

一・大谷美芳

・児玉春海