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水路部技報 Vol. 10. 1 992
海底設置型 ADCPによる潮流観測結果
小田巻実 ・鈴木英一 : 海上保安庁水路部沿岸調査課
Results of the Current Observations using
the Self-Contained ADCP Deployed on the Bottom
M inoru Odamaki. Eiichi Suzu同 :CoastalSurveys and Cartography Division
1. はじめに
沿岸域で潮流などの流れの観測をする際iζ,験流器の係留用 lζ大きなブイなどを設置する乙とは,航行障
害になるのでほとんど不可能である。その点,海底設置型 ADCP (Acoustic Doppler Current Profiler.
超音波ドップラ ー式流速プロファ イラー)ならば,海面iζは何もなくてもよいので,今後はζ の}j式がよく
使われるようになると恩われる。それにもまして重要なのは,験流器を使った観測ではわからなかった,途
中の庖の流れはどうなっているのかというようなととカえ乙の ADCPを使う ζ とによって明らかにできる
乙とである。水路部沿岸調査課では, 1989年 iζ海底設置型 ADCPを導入し,テス卜を繰り返してきたが,
最近ようやく実際の潮流 ・沿岸流観測に使えるようになってきた。 ζ 乙では,段近の3例について紹介する。
2. 海底設置型 ADC Pの概略
第 1図iζ示すように,海底iζ設置された ADCPの
4個の送受波器から超音波が発射され,特定の厚さに
分割した各回から反射してくる趨音波のドップラ ー効
果を利用して流速を測定する。装置本体には,送受波
器のすぐ後ろに傾斜計とフラックスゲー ト型方位計が
組み込まれており ,測定結果は水平流速と磁針方位lζ
補正される。測定居の厚さは 1mから32mまで,最大
庖数は 128回となっている。測定可能な最大水深は,
f使用する超音波の周波数によって変わる。 75kHzのも
ので350m. 1200ほ-Izで30mとなっている。現在,
沿岸峨の観測用と して 150kHzで最大測定水深250m
のものを採用している。主な仕様は,第 l表の通り。
乙乙で,流速精度( *)は,観測条件の設定によって変
わる。それは,ある時刻の測定iζは,一回毎iζ超音波
を発射 して測定した結果を集めて,さらにS/N比や受波状態などで選別し,アンサンフツレ平均を行うから
である。また,測定水深の値は,海底設置型 ADCP 自身による海面までの距離の測定値を示す。
第 1表
昇ニt司 名 RD-SC/DR 0150
使用音波周波数: 150 kHz
音波のビーム角: 鉛直に対し 30度
最大測定水深: 250 m
流速測定範囲: 0 - 10 m/s
測定層数 最大 128層
層分割の厚さ: 1 - 32 m
(1,2,4,8,16,32のいずれか)
。mT
度
度
精
精位速
方
流
+ー 2度
+-0.2%, +-0.Sm/s
( 1回のパーストに対し)
実際の観測では,第 l図の海底設置型 ADCPを音響切離装置と ロー プキャニスター付の先取りブイを備
えた鉄骨枠にいれて設置し,回収は音響切離装置で先取りブイを浮上させて引き上げる方式をとっている。
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水路部技報
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Vol. 10. 1992
海底設置型超音波流速計
くう
第 1図 海底設置型ADCPの概形
3. 観測例
以下では,東京湾横須賀港沖,石巻湾,佐渡海峡の 3ケ所で行った観測例を紹介する。観測期間等の測定
条件は第 2表の通り。
期間
海 滅
船舶
担当
測定地点
測定層数
測定層厚(m)
平均データ数
平均間隔(分)
観測期間(日)
測定範囲(皿)
測定水深(m)
第 2表
平成元年 10月
11-12日( 2日間)
横須賀港沖
天洋
沿岸調査課
35・19.SN139・41.日E
8
1000
5
32
30
誤差標準偏差(c皿/s)
バースト間隔(岡山.)
0.8
0. 2 9
75-
平成 3年 6月
8-23日( 16日間)
石巻湾
天洋
二管区
38'14.JN
141・08.JE15
2
110
10
16
30
27
5.0
4.92
平成 3年 7月
24-25日( 2日間)
佐渡海峡
明洋
九管区
37'53.2N
138・50.7E18
4
30
10
72
60
4. 7
17. 99
水路部技報 Vol. 10. 1992
( 1)横須賀港沖
横須賀港沖の損lj点(第 2-1図)における観測結果の流速ベクトノレの時間変化を第 2-2図lζ示す。全層
とも 1日2回の上げ潮流 ・下げ潮流の周期変化が表れており,明らかに潮流成分が卓越している。しかし,
各層の流向や流速,転流時や最強流速の時刻は,かなりずれている。上層では,北lと向かう上げ潮流lζ比べ,
南東に向かう下げ潮流が強い。下層は,上層lζ比べて上げ潮流 ・下げ潮流の向きが東西方向に偏している。
ちなみに, 25時間平均流(右側の矢符)では,表層の 4mから12mまでは南東流となっており,中層の16m
から20mでは,ほぽ逆の北流傾向となっている。乙の表層の南東流は,観測当日 l乙吹いていた北西風による
吹送流と考えられる。
Observation Data Vector B:YOK2.SMB
12 I 3
4
8
12
16
20
24
28
32
。,
第 2-1図 東京湾横須賀港沖の観測結果
(2)石巻湾
石巻湾では,層分割を151ζ設定して 2m毎の観測を16昼夜行った(第 2 2図)。スケール’を越えてしま
うので図には示していないが,最上層の 2m層で、は, 4ノット lζ達する流れが出現する。乙れは,海面の風
波や表皮流の影響と思われる。 2m層からlOm層ぐらいまでは全体的に北流傾向を示すが,乱れが大きく周
期性ははっきりしなし、。lOm層以深には,約 1日弱の周期変化が現れている。
図中Aでは,北東向きの流れが,海面下8mよりも浅い層iζ出現しているが, lOm以深には見られない。
Bでは,表層のlOm以浅では北向きの流れになっているのに対し, 12m以深では南向きの傾向となり,下層
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ほど流れが強くなっている。 Cでは,中間の 8mとlOm届lζ強い流れが出現している。
(3)
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佐渡海峡
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四
22
石巻湾での観測結果
佐渡海峡では, 局分割を18,層厚を 4mlζ設定した。 2昼夜の観測を行ったが, 20時間目ぐらいで記録が
おかしくなり,図 2-3 IL:は記録の良好なと ζろのみを示した。期間中は, 全般的lζ北ないし北東流の傾向
であったが, 24日の O時頃lζ急に流れが弱くなった。 lOml百では, 2ノット近くの流速が出るものの, 下層
iζ行くに従って,弱くなっている。
との時の観測では, アンサンフソレ平均のデータ数が30と少なすぎたため, データ iζ雑音が多い場合, 信頼
性のしきい値に引っかかって欠測となってしまっている ζ とが考えられ,今後の検討課題となった。
4. 結 語
以上のように, 海底設置型 ADCPKよって潮流 ・沿岸流の鉛直構造が具体的に把握できるようになった。
今回は詳細な解析を行う余裕がなかったが,観測結果には,内部波や表層の吹送流らしき現象が表れていた。
今後,沿岸流 ・潮流の長期観測点は, できるだけ ζの海底設置型 ADCPで実施してゆく乙ととしたい。
また,複数台を同時に設置するととにより,鉛直的lとも水平的にも流れの構造を捕らえた三次元の立体的な
観測を企画してゆく予定である。
今回は,限られた観測例の紹介であったが, 今後, あらゆる機会の観測に使を図るので, ぜひ使ってみて
頂きたいと考える。
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ム ,)rif;x/,/,叫ヤ~刊第 2-3図 佐渡海峡における観測結果
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報告 者 紹 介
M inoru Odamaki Eiichi Suzuki
Vol. 10. 1992
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鈴木英一平成 4年 1月現在
本庁水路部沿岸調査謀
沿岸調査官付
小田巻実平成4年 1月現在
」ふ←本庁水路部沿岸調査課
-~·・ 上席沿岸調査官
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