葉緑体 チラコイド膜 とミトコンドリア 内膜ohki/biophys/nov10.pdfresearch and for...
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葉緑体(チラコイド膜)とミトコンドリア(内膜)
太陽光エネルギーで水分子から電荷分離された励起電子がNADPHの合成(光化学系Ⅰ)と
プロトンの電気化学ポテンシャルの形成をし(光化学系Ⅱ)、電気化学ポテンシャルはH+-
ATPaseでATPを合成する。 糖質/脂肪酸はTCA回路でNADHに
生成され、これが電子伝達系で電気化学ポテンシャルを形成し、電気化学ポテンシャルはH+-ATPase
でATPを合成する。
電子伝達系とH+-ATPaseの機構は葉緑体
とミトコンドリアで類似である。
ミドリゾウリムシParamecium aurelia
体内に緑藻であるクロレラを共生させており、光合成産物の還流を受けて生活することも可能である。
ミドリゾウリムシParamecium aurelia
クロレラ (Chlorella)
クロレラ属の淡水性単細胞緑藻類の総称。直径2-10μmの球形の細胞であり、細胞内に
クロロフィルを持つ。光合成能力が高く、空気中の二酸化炭素、水、太陽光とごく尐量の無機質があれば大量に増殖する。
この基準により、生命探査計画で火星に到達した惑星探査機で生命の存在しない安定状態(平衡状態)にあることを確認した。
ガイア仮説 GAIA Hypothesis
地球自身が一つの生命体であるとする考え方であり、J.E. Lovelockが提唱した。
「地球生命圏(ガイア=ギリシャ神話の大地の女神)工作舎」
NASAの生命探査計画に参画した。
・惑星に生命が存在するかの基準として、その大気組成が平衡状態か非平衡状態かを調べることを導入した。
地球自身が一つの生命体と考える「地球生命体」を提唱した。
地球大気と他惑星大気との比較
・地球の大気には二酸化炭素が極めて尐なく、酸素が存在する。・地球の温度では水か液体で存在できる。
金星と火星は平衡状態にあるが、地球は非平衡状態にある。 生命の存在
地球環境の温度
地球が太陽から受ける熱量:1.961 cal/min・cm2 「太陽定数」
・ 太陽定数=大気の吸収がないとき太陽と地球の平均距離の位置に到達する
太陽の放射エネルギーの基準値
地表に達する太陽エネルギー=0.33 cal/min・cm2
太陽に向いた面積は地球の表面積の4分の1
大気層の遮蔽効果
地表への地球内部のエネルギー=0.00009 cal/min・cm2
地球からの放射エネルギー=240 watt/m2 (=255Kの完全黒体放射エネルギー)
以上から、単位面積当たりの放射エネルギーの収支、N、はその差として
N={(1-α)/4}S - εσTs4
S :太陽定数 solar constant 1.370 W/m2
α :反射係数 planetary reflectivity 0.3
ε :大気の有効放射率 effective emissivity of atmosphere
σ :Stefan-Boltsman constant
Ts :表面温度 surface temperature のように表現できる。
平衡状態では N=0であり、
大気が存在しないときはTe =255K=-18℃ である。
大気の存在で15℃となる(温室効果)。
・光合成によって生成された酸素の総量についての考察
光合成の等式:CO2+H2O=C(H2O)+O2 から、現在、地球には生物(有機物)の量に対応する量の酸素分子が大気中に存在することになる。
1.現在の大気中の酸素量:4×1019モル
炭素量としての現生生物の総量:3.75×1016モル
陸上生物:3.7×1016 モル
海生生物:5.7×1014 モル
生物の死骸の量は3×1017 モル
生物の死骸の量までを考慮しても対応しない。
2.炭素量としての化石有機物:1.07×1021 モル
これに対応する酸素の量は:1.18×1021 モルであり、現在の大気の酸素の量はその3.4 %にすぎない。
残りの96%以上の酸素は縞状鉄鉱層に存在している。
・縞状鉄鉱床:25-17億年前の地層に存在し、海洋の鉄イオンが発生した酸素により、酸化されて沈澱した物であると考えられる。
総埋蔵量は1015トンに達すると推定される。
これより、原生代(25億年前から)の初期に分子状酸素が大気中に蓄積され始めたと推論できる。
大気中の酸素の由来
0
1
2
3
4
5
6
7
対数
目盛
H2 CH4 NH3 HCl CO N2 CO2N2O O2
地球での1年間の気体の流量
Gigamoles/year
生物が存在するとき
生物が存在しないとき
生体のHomeostasis(恒常性)
恒温動物の体温維持機構
外界の温度 生体 (応答)ふるえ→体温上昇
(刺激) 発汗 →体温降下
※発熱と放熱のバランスで体温を37℃に維持している。
ヒトにおける放熱の寄与
放射・対流・伝導 2100 kcal/day
水の気化熱 810 kcal/day
吸気の加熱 60 kcal/day
CO2 の放出 100 kcal/day
排泄物 30 kcal/day
合計 3150 kcal/day
中程度の活動での1日の適正エネルギー(kcal) = 標準体重(kg)×25~30(kcal)
標準体重(kg) = 身長(m)×身長(m)×22
自然科学の立場からは、生体系の形成と維持のエネルギー的側面は物理と化学の枠組みの中で完全に理解できる。
生物の中でのエネルギー変換の過程は熱力学の第2法則によって決定される。
生体は高度に秩序化されているが、これは熱力学的な平衡状態で実現されているのではなく、
非平衡状態である。
生体の熱力学
平衡構造:可逆的な変換過程で形成され維持されているので平衡状態からの逸脱がない。
散逸構造:非平衡条件下でのエネルギーと物質の交換によって形成され維持されている。
系の状態 エントロピー生成
平衡状態: 時間的に変化しない 生成はない
定常状態: 時間的に変化しない 生成がある
P. Glansdorff and I. Prigogine (1971)
“Thermodynamic Theory of STRUCTURE, STABILITY AND FLUCTUATIONS"
[Willey-Interscience]
非平衡系の熱力学
Ilya Prigogine
1917 .1.25-2003.5.28
He developed the concept of dissipative structures to describe open systems, in which
an exchange of matter and energy occurs between a system and its environment.
Prigogine received the Nobel Prize in Chemistry in 1977 for his dissipative structure
research and for his contributions to non-equilibrium thermodynamics.
プリゴジンは開放系が物質とエネルギーを外部環境と交換する散逸構造と非平衡熱力学の研究への貢献でノーベル化学賞を受賞した。
化学反応がマクスウェルの平衡分布を乱さない程に充分遅ければ成分の平均濃度の巨視的な記述は可能であるが、なお、化学反応速度と親和性の関係は非線形である。 非平衡熱力学の中心問題は、熱力学の方法を平衡状態から出発して非線形な状況と不安定性を含む現象の全ての範囲に拡張できるかということである。
非平衡熱力学の成立条件
運動系(mechanical system) は基本的には分子の座標(coordinate)と分子の運動量(momenta) または 分子の波動関数(wave function) で決定される。
巨視的な系では個々の分子の運動を記述しても意味はなく、reduced descriptionが熱力学(thermodynamics)および流体力学(hydrodynamics)の方法で与えられることが重要である。
非平衡な系への巨視的な方法の適用が、near-equilibrium領域では可能である。
系が平衡にあると仮定し、同じ独立変数でlocal entropy を記出来る状況では、この拡張は可能である。
この'local equilibrium'の仮定は 熱力学的平衡を保つ衝突効果が優勢であることを示唆している
マクロな系の性質に関する法則を系の統計的な性質だけからひき出すことができるのは,系が定常状態にあって,その統計的分布関数が時間的に一定で,エルゴード仮説が成り立つ場合に限られる。一般に閉じた系がたまたま、この定常状態にないならば,系はその後に統計的な最大確率をもつ分布を意味する系の平衡状態(定常状態)に向かって“緩和”してゆく。もし,他の条件がすべて等しいならば,緩和時間τは系の大きさの平方根に比例することが知られている。これは,緩和過程はミクロな系の性質だけによって決定され,マクロな系の性質には直接依存しないことによる。
部分系と局所平衡
エルゴード仮説:長い時間間隔では、微小状態からなる位相空間内で同じエネルギー領域の滞在時間は位相空間で占める体積に比例する。そのようなすべての実現可能な微小状態は長い時間間隔では等しい確率で起こる。つまり、時間平均と、統計力学でのアンサンブル平均は等しくなる 。
環境体 マクロな系
物質
エネルギー
マクロな系とその環境体との関係
系が環境体と非平衡の関係にあるとき、物質・エネルギーの交換により環境体と平衡になる。
系の拡大⇒ { 表面積は半径の2乗で増加
体積は半径の3乗で増加
系の拡大に伴い、表面を介しての物質・エネルギー交換の寄与は低下し、閉じた系と見なせるようになる。
非平衡状態にあるマクロな系とその仮想的な部分系の関係
統計的に非平衡状態にあるマクロな系を以下の2条件を満足するように仮想的な部分系に分割する。
1) 局所平衡の条件:部分系の大きさは充分に小さく、マクロな系全体の緩和時間τMに比較して部分系緩和時間τmは充分に短い。観測時間をτobserveとするとτobserve≫τmとなり、観測中は常に部分系が平衡状態にある。
2) 統計的独立性の条件:部分系は充分に大
きく、閉じた系と見なすことが出来る。この部分系に生じる変化はその周囲の部分系に生じる変化とは統計的に独立である
以上の条件で分割が可能なとき、各部分系に対して、エルゴード仮説が成立するので、統計的な手法が適用可能となる。
厳密には各部系は閉じてはなく、局所平衡を乱さない程度の物質・エネルギー交換が存在する。これにより、マクロな系全体が平衡状態へと緩和する。
「生物とは制御された化学反応のシステム」であるので、ここでは化学反応を対象とする。化学反応は1017~1023の膨大な数の分子集団に生じる変化であるが、ミクロなレベルでは分子と分子の衝突が高頻度で起こっており、この微視的過程の集合がマクロな化学変化となっている。しかし、ここで、微視的過程として2体間の衝突を量子力学的に記述できたとしても、その反応生成物は高い内部エネルギーをもち、別の衝突や構造の安定化、分解などで内部エネルギーを失うので、それが反応に大きな影響を及ぼし、反応の素過程を反応の分子種だけで取り扱うことはできない。
定温定圧下の化学反応 A+B←→C+Dで初期時刻にAとBを混合すると反応系には必ずA、B、C、Dが存在するようになり、充分に長い時間が経過すると、各成分の分布比が一定で時間的に変化しない化学平衡に到達する。同じ条件で、CとDを混合したときも同様に化学平衡に到達する。
化学平衡と統計力学
膨大な数の粒子が不規則な運動(ブラウン運動)をしている系が非平衡の状態から平衡状態へ緩和する過程を考える。内部自由度をもたない粒子がすべて同じ速度で運動し、この粒子系が平衡状態にある熱浴とエネルギー交換が可能な接触をしていると仮定する。粒子間、粒子と熱浴の間のエネルギー交換は衝突によるとし、粒子系の粒子をP、熱浴の粒子をRとし、そのときのそれぞれの初速度をu、vとする。衝突によってそれぞれの速度がu’、v’に変化したとするとその変
化は P(u)+R(v)→P(u’)+R(v’) と表される。
この過程は純粋に力学的であるので可逆過程である。しかし、熱浴の粒子は平衡分布をしているため、熱浴の粒子が速度vを取る確率と速度v’を取る確率は等しく
ない。したがって、一般に衝突が起こる確率P collisionは次のようになる。
P collision{P(u)+R(v)}≠P collision{P(u’)+R(v’)}
粒子系ではすべて同じ速度で運動していると仮定したが、時間の経過とともに、
速度分布に幅が生じ、充分に長い時間の後には、熱浴の温度と同一の温度の平衡分布となる。個々の粒子の微視的な過程は可逆的な力学過程であるにも
拘わらず、系に生じる巨視的な変化は不可逆的になる。巨視的な系が統計的な平衡状態に到達する現象を緩和過程と呼ぶが、この過程が実現するのは系の自由度の数が圧倒的に大きいからである。
緩和過程
定常状態と平衡状態
定常状態:非平衡状態(=Living state)の1つで時間的に変化しない状態
高温 低温 物質の拡散
濃度の上昇
温度勾配
高温 低温
濃度勾配による拡散
温度勾配による拡散
定常状態 (温度差の維持)
高温 低温 物質の拡散
高濃度
濃度勾配
低濃度
温度差を維持するので熱の流れはあり、エントロピーの内部生成がある。
平衡状態:ギブスの自由エネルギーが極小
現象方程式 (Phenomenological equation)
定常状態の熱力学的な表現=エントロピー生成速度極小の原理
これが、非平衡熱力学の成果の一つである。
これを証明するために、Flux (J)とForce (X)による現象の表式を導入する。
線形現象方程式 ここで、Lij は結合定数 (coupling constant) である。
ここで仮定した現象方程式の線形性が成り立つのは充分に遅い過程で、かつ、
平衡状態から遠くない非平衡状態(near-equilibrium)に於いてである。
物理現象の原因となる力がForceであり、惹起される現象がFluxである。