国語科 - miyazaki-u.ac.jp · 2 学びを実感させるふりかえりの在り方 ⑴...

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国語科の学びを深めるための視点や考え方となるのが,「言葉による見方・考え方」である。新学習指導要領 において,「言葉による見方・考え方」とは,次のように定義されている。 自分の思いや考えを深めるため,対象と言葉,言葉と言葉の関係を,言葉の意味,働き,使い方等に着目し て捉え,その関係性を問い直して意味付けること。 これまでの授業研究の課題の一つとして,「活動あって学びなし」という状況があった。例えば,「物語のおも しろさをハンドブックで紹介しよう」という言語活動を設定し,示された書き方どおりにハンドブックを仕上げ たとする。書き方に則りながら自分や友達の作品のよさを評価したり批判したりして,「ハンドブックを作ること ができた。」という成就感は味わうことができるかもしれない。しかし,国語科における学びの本質を求めるので あれば,ハンドブックを仕上げる過程で,「なぜ,この言葉を用いたのか。」「なぜ,この書き方だと分かりやすい のか。」等の視点から言葉と言葉の関係を意味付け,子ども自身が言葉に向き合っていくべきである。つまり,「言 葉による見方・考え方」を働かせていなければ,いくら話合い等を活発に行っていたとしても,「学びなし」にな ってしまうということである。「言葉による見方・考え方」を働かせながら学習したことを,実生活の他の場面で も生かしていけるようにすることで,国語科としての学びが成立するといえるであろう。 また,国語科学習のなかで,子どもが「何ができるようになったか」「何を学んだか」ということを実感しなけ れば,教材を学ぶだけの学習や活動を目的とした学習で終わってしまう。学習したことを整理して,「何が身に付 いたか」ということを明確にしていくことが国語科で育成すべき資質・能力を身に付けていくことにつながって いく。「学びを実感する」ということの積み重ねが,実生活で生きて働くことばの力に通じていくのである。 以上のことから,国語科の特質に応じた学びの本質を追究していくため,本研究テーマを設定した。 研究テーマ 言葉に向き合いながら学びを実感する子どもの育成 原田 俊彦 吉野 里美 佐藤 健一 国語科 研究テーマについて

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国語科の学びを深めるための視点や考え方となるのが,「言葉による見方・考え方」である。新学習指導要領

において,「言葉による見方・考え方」とは,次のように定義されている。

自分の思いや考えを深めるため,対象と言葉,言葉と言葉の関係を,言葉の意味,働き,使い方等に着目し

て捉え,その関係性を問い直して意味付けること。

これまでの授業研究の課題の一つとして,「活動あって学びなし」という状況があった。例えば,「物語のおも

しろさをハンドブックで紹介しよう」という言語活動を設定し,示された書き方どおりにハンドブックを仕上げ

たとする。書き方に則りながら自分や友達の作品のよさを評価したり批判したりして,「ハンドブックを作ること

ができた。」という成就感は味わうことができるかもしれない。しかし,国語科における学びの本質を求めるので

あれば,ハンドブックを仕上げる過程で,「なぜ,この言葉を用いたのか。」「なぜ,この書き方だと分かりやすい

のか。」等の視点から言葉と言葉の関係を意味付け,子ども自身が言葉に向き合っていくべきである。つまり,「言

葉による見方・考え方」を働かせていなければ,いくら話合い等を活発に行っていたとしても,「学びなし」にな

ってしまうということである。「言葉による見方・考え方」を働かせながら学習したことを,実生活の他の場面で

も生かしていけるようにすることで,国語科としての学びが成立するといえるであろう。

また,国語科学習のなかで,子どもが「何ができるようになったか」「何を学んだか」ということを実感しなけ

れば,教材を学ぶだけの学習や活動を目的とした学習で終わってしまう。学習したことを整理して,「何が身に付

いたか」ということを明確にしていくことが国語科で育成すべき資質・能力を身に付けていくことにつながって

いく。「学びを実感する」ということの積み重ねが,実生活で生きて働くことばの力に通じていくのである。

以上のことから,国語科の特質に応じた学びの本質を追究していくため,本研究テーマを設定した。

◆ 研究テーマ

言葉に向き合いながら学びを実感する子どもの育成 原田 俊彦 吉野 里美 佐藤 健一

国語科

研究テーマについて

1 「言葉による見方・考え方」について

まず,「言葉による見方・考え方」を次のように解釈した。

【本校国語科が解釈した「言葉による見方・考え方」】※以下,「言葉による見方・考え方」と表記する。

自分の思いや考えを深めるため,自分自身・相手・様々な事物と言葉,言葉と言葉の関係について,比較・

関連付け等の思考方法を活用しながら言葉の意味,働き,使い方等を捉える。そして,その関係性を自分の経

験・仲間の考え・学習材とかかわりながら捉え直して意味付けること。

このような「言葉による見方・考え方」を働かせていけ

ば,言葉に向き合いながら学びを実感する子どもを育成で

きるのではないかと考える。本校では,言葉に向き合いな

がら学びを実感する子どもの姿を,右図のように捉えてい

る。この姿を実現するために,次のような手立てを講じて

いく。

2 「言葉に向き合う」について

言葉に向き合うとは,言語活動をとおして,子どもが主

体的に言葉の意味や働き等を捉えながら,言葉と言葉の関

係について仲間とともに意味付けていくことと捉えている。

まず,言葉に向き合っていくための学習指導の在り方に

ついて究明したい。1点目は,問題意識や目的意識を持続

させる単元構成の工夫である。子どもが,「どうして○○

したのだろう。」「(単元のゴールを)やってみたい。そのた

めにも○○について考えてみよう。」といった,自ずと言葉

に向き合っていけるような状況を,単元をとおして設定し

ていく。そうすることで,子どもが言葉に向き合い続けることができるのではないかと考える。

2点目は,価値ある言語活動の工夫である。これまで,言葉に向き合わせる手立てとして,発問を重視する

ことが多かった。しかし,これまでの実践をふりかえると,予定していた発問に固執し過ぎるあまり,学習に

対する教師と子どもの問題意識や目的意識が合致していない場面が見られた。子どもが自ずと言葉に向き合っ

ていけるようにするには,子どもにとって価値ある言語活動を設定していくことが効果的であると考える。教

材分析を十分に行ったうえで,子どもの実態に即した価値ある言語活動を開発していきたい。ここで挙げる言

語活動とは,単元全体をとおしたもの(単元のゴール)と,一単位時間の目標につながるものを指している。

3 「学びを実感する」について

学びを実感するふりかえりの在り方についても究明していきたい。「学び」とは,単元または本時で身に付け

させたい資質・能力と捉えている。学びを実感させるには,本時の目標とつながるようなふりかえりを,一単

位時間のなかで適宜行っていく必要があると考える。例えば,学習問題について,はじめにもった自分の考え

を明確に表す場を設定する。その際,自分の考えを書く時間を十分に設け,一単位時間の最後に考えがどのよ

うに変容したか,ふりかえられるようにしておく。そして,話合いを行う場合には,話合いのなかで考えが変

わった子どもや,考えがより明確になったという子どもを取り上げ,どのような仲間の考えや教材のなかの言

葉で自分の考えが変容したかということをふりかえられるようにする。さらに,話合いが終わった後には,必

ず自分の考えをふりかえる時間を設定し,学習問題に対して自分がどのような考えをもてたかを実感できるよ

うにする。一単位時間のふりかえりの積み重ねが,単元全体のふりかえりにもつながっていくと考える。こう

いったふりかえりの時間を,指導者が意識して設定していきながら研究を進めていくことが大切である。

研究内容

【言葉に向き合いながら学びを実感する子どものイメージ】

研究の構想

1 言葉に向き合っていくための学習指導の在り方

⑴ 問題意識や目的意識を持続させる単元構成の工夫

⑵ 価値ある言語活動の工夫

2 学びを実感させるふりかえりの在り方

⑴ 「何が身に付いたか」をふりかえらせる手立て

言葉に向き合って

いくための学習指導

学びを実感させる

ふりかえり

ごんは,「いわし」から「くり」「松たけ」と,持ってくる物を変えているな。これは…。

さっきは気付

かなかったけれ

ど,自分で苦労し

て取ってきた物

を兵十にあげて

いるな。

ごんは,兵十に「早く気付いてよ。」と思っているだろうな。よし,紙芝居の脚本に書こう。

「ごんの気持ちの変化を捉える」という問題意識を持続させる手立て

国語科の特質に応じた学びの本質

なるほどな。○○

さんの考えから,「かげぼうしをふみふみ」という意味が分

かったよ。ごんは,兵十の気持ちに関心をもっているね。

「ごんの気持ちの変化を紙芝居で表す」という言語活動の設定

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1 言葉に向き合っていくための学習指導の在り方

⑴ 問題意識や目的意識を持続させる単元構成の工夫

「どうして?」「やってみたい」という思いが子どもに生まれるように,単元の導入を大事に扱っていかなけれ

ばならない。単元の導入だけではなく,一単位時間ごとに既習内容と本時の学習内容の関連性や,仲間と自分との考

えのずれ等を意識させたり,単元のゴールと本時の学習とのつながりを意識させたりしていく。このように,問題意

識や目的意識を持続させることで,自ずと言葉に向き合っていくことができると考える。そこで,問題意識や目的意

識を持続させる単元構成を工夫するようにした。

① 問題意識を持続させる工夫

第5学年 物語の中の変化を楽しもう〔教材:世界でいちばんやかましい音〕

導入 既習の教材「サーカスのライオン」を使い,物語の中の変化について問題意識をもたせた。

一単位時間 教材文に含まれる「変化」をテーマに,毎時間,学習問題を設定した。

単元や一単位時間の導入で,挿絵の比較や,着目させたい部分の視写といった手立ての後に発問を行っ

たことで,問題意識をもって言葉に向き合えた。単元の導入で全ての時間のめあてを立てて学習を進めて

いくよりも,一単位時間ごとに学習問題を設定して問題意識をもたせる方が,子どもたちは主体的に言葉

に向き合うことができた。これは,単元をとおした問題意識とかかわらせて,一単位時間の学習問題を設

定したことによるものと考える。

② 目的意識を持続させる工夫

単元のゴールを言葉だけで意識させるのではなく,本時の学習内容や言語活動と関連させながら意識さ

せたことで,単元をとおして目的意識を持続させることができた。教材を使って学んできたことが「単元

のゴールに,いつの間にかつながっていた」と,子どもが感じるような手立てを講じていく必要がある。

はじめと終わりの札の挿絵を比較 C:「やかましい町」という言葉が,

終わりでは「静かな町」という言葉になっているよ。

C:終わりには,「ようこそ」という言葉も入っているよ。

T:この札は,違う町のことを言っているの?

C:同じ町です。町の様子が変わったからじゃないかな…。

T:「サーカスのライオン」は,じんざの

気持ちが変わっていったね。一番大

きく変わったのは,どこだろう?

C:男の子を助けるために,じんざが火

のなかに飛び込んだところです。

C:なんだか,坂道みたいになったな。

T:本当だね。この物語だけかな。

C:いや,他の物語でもこうなるはず…。

王子様のはじめの会話を視写した後

T:王子様は,何か変わったのかな?

C:気持ちが変わっています。

C:はじめは,「やかましい音」を聞

きたかったのに,終わりでは,「静

かな音」を気に入っています。

T:どこで気持ちが変わったのかな?

C:多分,世界中の人が一斉に静まり

かえったところではないかな。

第1学年 したことを かんがえながら よもう 〔教材:サラダで げんき〕

第4学年 人物の気持ちの変化と関係をとらえよう 〔教材:ごんぎつね〕

研究の実際

教材の読み取りと言語活動(単元のゴール)とのつながり T:みんなだったら,どうやって犬を出て来させますか? C:ぼくだったら,ほえながらやってくるな。だって,う

ちの犬はいつもほえているもの。

はじめの札

終わりの札

単元のゴールへ向けた学びの足跡の蓄積 T:今日の学習を基に人物なりきり日記を書きましょう。 C:ごんは,兵十に気付いてほしいと思い始めているな。 T:物語パンフレットも進んできたね。

教材のなかに,自分自身も

動物になって登場させ,物語

を書くという単元のゴールを

設定した。それに向けて,読

み取った場面ごとに,毎時間,

「自分だったら」という視点

で,動物の登場の仕方や特徴

を考えさせるようにした。

物語の最終場面の感想を

伝え合うということを単元

のゴールとして設定した。

それに向けて,毎時間読み

取った内容を,場面での人

物なりきり日記等を含めた

物語パンフレットでまとめ

させるようにした。

単元のゴール掲示 物語パンフレット

⑵ 価値ある言語活動の工夫

「ごんの気持ちは,どのように変わったのでしょう。」といった発問を行ったとする。子どもたちは,兵

十に対するごんの気持ちの変化について,叙述を基に考えようとするであろう。しかし,ごんの気持ちの変

化を考える必要性を実感できない子どもにとっては,十分に考えをもつことができない,または,考えをも

とうとしないという状況があったのかもしれない。つまり,教師が「~について考えましょう。」と発問を

行うだけではなく,子どもに「やってみたい。」「自分にもできそう。」と思わせなければ,学習問題に対し

て主体的に取り組むことはできない。そして,深い学びにもつなげることができないのではないか。

そこで,子どもたちが自ずと言葉に向き合っていき,身に付けたい資質・能力を獲得できるような,子ど

もにとって価値ある言語活動の工夫が必要ではないかと考えた。言語活動を設定する際には,佐賀大学教授

の達富洋二氏の考えを基に,次のように言語活動を見直した。

① 身に付けさせたい資質・能力

習得または習熟する内容課題

を明確にする。

② 具体的な思考の流れ

子どもが今もっている資

質・能力を,生かすことがで

きる考え方を設定する。

③ 価値ある言語活動

身に付けさせたい資質・能力に迫

る,「自分にもできそう。」と見通し

がもてる言語活動を設定する。

以上の3段階を授業者が意識して,言語活動を設定していくことが必要である。身に付けさせたい資質・

能力に結び付くように設定した,一単位時間内の言語活動の例は次のとおりである。

教材文の内容と関連させながら適切な言葉を選ばせたことで,主語と述語の関係に自ずと意識が向けられ

ていた。また,登場した動物の行動を表す言葉の意味や動物の特徴を考えさせたことで,それらのことを音

読劇にも生かすことができた。

登場人物の気持ちの変化が最も強く表れている言葉について,グループや学級全体で分類させたり,並べ

替えをさせたりした。そのことにより,登場人物の気持ちの変化を明確に捉えて,人物なりきり日記にまと

めることができた。

① 身に付けさせたい資質・能力 人物の気持ちの変化と関係を捉える力 ② 具体的な思考の流れ(思考方法) 登場人物の気持ちの変化が最も強く表れている言葉を短冊に書き出し,

分類させたり,並べ替えさせたりする。(分類・比較)

③ 価値ある言語活動 気持ちの変化が表れている言葉を整理→「物語パンフレット」のなかの人物なりきり日記にまとめる。

第4学年「ごんぎつね」における言語活動

「ごん,おまえだったの

か。」を書いているグループ

が多いな。

ぼくは,「ぐったりと目を落

としました。」のところが,気

持ちが変わっていると思うな。

ごんは,「気付いてほしい。」

から「気付いてくれた。」とい

う気持ちに変わっていると思

います。

① 身に付けさせたい資質・能力 誰がどんなことをしたかを読む力 ② 具体的な思考の流れ(思考方法) 登場した動物の行動を表す言葉と他の場面の言葉を入れ替えた文章を提

示し,ペアで適切な言葉を選択させる。(順序・選択)

③ 価値ある言語活動 言葉の選択→音読劇をさせながら,読み比べをする。

第1学年「サラダで げんき」における言語活動

どうして,手を小さく

ばたばたさせたのかな。

すずめは,小さいからです。 登場した動物の行動を表す言葉と他の場面の言葉を入れ替えた文章 実際の教材文

(ペアでの話合い)

C:ここは,「とんできて」

ではなくて,「ずらりと

ならんで」じゃないか

な。どう思う。

C:そうだよね。だって,あ

りは,飛ばないもんね。

C:それじゃ,ここは,「は

たらきもの」じゃない。

「はたらきあり」とも言

うもんね。

すると、こそこそと、小さな

おとが

しました。

「あら、だれかしら。」

「ぼく、ぼくですよ。」

ありが

ずらりと

ならんで

いました。

「サラダには

おさとうをちょ

っぴり。これが

こつ。おかげ

で、ありは

いつも

はたらき

ものさ。」

「まあ、おしえて

くれて

あり

がとう。じゃ、ちょっとだけ。」

音読劇

物語の山場までの流れを,短冊を使って並べさせたことで,物語の中の大きな変化までの出来事について

高低差を意識して整理することができていた。しかし,「きっかけ」という言葉に捉われすぎて,考えを収

束するまでには至らなかった。子どもに提示する言葉は,思考の流れを吟味してから使う必要がある。

2 学びを実感させるふりかえりの在り方

⑴ 「何が身に付いたか」をふりかえらせる手立て

ふりかえりについては,これまでも研究を重ねてきた。「友達の考えを聞いて,なるほどと思った。」等,

仲間の考えを参考にしながら学びに向かおうとする姿は見られるようになった。しかし,子ども自身が学び

をふりかえる際に,本時の目標につながるような言葉を使うという姿までには至っていない。そこで,教材

の中の言葉や仲間の考えを使って,本時の学びをふりかえられるように手立てを講じた。

学習内容について段階を設定したふりかえり(第1学年)

4つの観点を基にした自己評価によるふりかえり(第4学年)

一単位時間の

終末で,4つの観

点を基にした自

己評価によって

ふりかえらせた。

子ども自身が学

習で身に付けた

ことを実感でき

るようにした。

ふりかえりの4つの観点

① できるようになったこ

と・わかったこと

② 学習で学んだことをど

のように生かしたいか

➂ 「なるほど!」と思っ

た○○さんの考え

➃ その他

とてもおもしろかった 本時の学習について,「と

てもおもしろかった」「まあ

まあおもしろかった」「おも

しろくなかった」という3

つの段階でふりかえらせ

た。全員挙手をさせたこと

で,想像して読む楽しさを

感じたかどうかを把握する

ことができた。

① 身に付けさせたい資質・能力 物語の山場を捉える力 ② 具体的な思考の流れ(思考方法) 教材文巻物を活用して,町が静かになったきっかけと思う部分とその理

由について話し合う。その後,子どもたちの考えを短冊に書き,山場までの流れを高低差で表すように短冊を黒板に貼る。(順序・関連付け)

③ 価値ある言語活動 山場までの流れを整理→物語全体の変化について「物語変化ポスター」で表す。

第5学年「世界でいちばんやかましい音」における言語活動

「声を出さないでいたら?」

と,だんなさんが言ったところ

じゃないかな。だって,静かに

するという考えが出たのは,こ

こからだよ。

教材文の全てを横につなげた巻物→全体を俯瞰して山場を捉えるため

こうやって並べてみると,

きっかけは,おくさんが「『世

界でいちばんやかましい音』

を聞いてみたい。」と言ったと

ころじゃないかな。

今日は,ありがしたことが分かっ

たから,おもしろかったよ。

物語変化ポスター

の一部

学習内容に関する感想

観点を基に自己評価をさせたことで,本時の学習について,教材のなかの言葉を使いながらふりかえる

子どもが増えた。また,指導者も子どもがどのようなふりかえりをするかということを考えながら,指導

の流れを組み立てることができた。話合いのなかで考えが変容している子どもを取り上げることについて

は,子どもに考えをもたせる時間を十分に確保したうえで,指導者がその考えを把握しておく必要がある。

話合いの内容だけでなく,子どものつぶやき等も生かせるように,日々の授業で意識していかなければな

らない。

1 言葉に向き合っていくための学習指導の在り方について

⑴ 問題意識や目的意識を持続させる単元構成の工夫について

授業が進んでいけばいくほど,子どもの問題意識や目的意識は薄らいでいく。だからこそ,子どもの「ど

うして?」「やってみたい」といった思いが持続するような単元構成を工夫していくことが今後も必要であ

る。一単位時間ごとに単元をとおした問題意識とかかわらせて学習問題を設定していくことは,問題意識を

持続させていくうえで効果的であった。しかし,導入で時間をかけ過ぎてしまうと,本時の目標を十分に達

成することができなくなってしまうおそれがある。そのため,子どもの実態に合わせたシンプルな導入の手

立ても考えていく必要がある。

⑵ 価値ある言語活動の工夫について

子どもが「やってみたい」「自分にもできそう」と思えるような言語活動を設定していったことで,主体

的・対話的に言葉に向き合う姿が多くなった。しかし,今後も留意していかなければならないことは,設定

した言語活動が身に付けさせたい資質・能力と結び付いているかということである。「活動あって学びなし」

にならないように,本時の目標にかかわる言葉が子どもから多く聞こえてくるような言語活動を設定してい

かなければならない。

2 学びを実感させるふりかえりの在り方について

一単位時間の終末だけに限らず,適宜,学びをふりかえらせることを指導者が意識していったことで,子ど

もの話合いのなかの様子やつぶやきにも注意して,ふりかえりにつなげるようにすることができた。子どもが

「何が身に付いたか」をふりかえるには,自分の考えの変容を捉えさせることが必要である。学習問題に対し

て全員が自分の考えをもてるような手立てや視覚的に学びをふりかえることのできる板書の工夫等も今後,必

要になってくると考える。

〔国語科の特質に応じた学びの本質をめざした今後の研究の方向性〕

○ 一単位時間における問題意識を高めさせるシンプルな導入の在り方の追究

○ 本時の目標にかかわる言葉に子どもが自ずと向き合っていくような言語活動の工夫

○ 子ども全員が自分の考えの変容を捉えることができる手立て

参考文献:学習指導要領改訂のポイント 小学校・中学校国語 「国語教育」編集部 明治図書 2017

小学校新学習指導要領ポイント総整理 国語 吉田裕久 水戸部修治【編著】 東洋館出版社 2017

平成 29 年度宮崎県小学校教育研究会国語部会夏季研修会 講演資料 達富洋二 2017

批評読みとその交流の授業づくり 河野順子 明治図書 2017

子どもと創る 国語の授業№42 全国国語授業研究会 東洋館出版社 2013

話合いのなかで考えが変容している子どもを取り上げるふりかえり(第5学年)

実践をとおして見えてきたこと

話合いのなかで,自分の

考えを変えたり,仲間の考

えに共感したりしている

子どもを取り上げ,その理

由を聞くようにした。

終末で,町が静かになっ

たきっかけとなる部分を

強調するように,グループ

全員で音読させた。

王子様ではない人が「世界でいちばんやかまし

い音」を聞いてみたいと思ったところからだよ。

ぼくは,王子様が世界へ呼びかけたところか

らと思っていたけれど,そういう考えもあるね。

□□くんの意見を聞いて,静かに

なったのは,王子様以外の人が関係

していると気付いたからです。

山場へ向かうきっかけにつ

いて,詳しく考えられるように

なったな。

話合いの後

○○くんは,途中で

考えを変えていたね。

どうして?