年度電磁気学演習 年 月 日版) 2019年度京都大学理...

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2019 年度 電磁気学演習 1 (2019 11 8 日版) 2019 年度 京都大学理学部 電磁気学演習 1 組分け名簿に載っていない人は、説明の後に担当教員(手塚)まで申し出てください。 日程 毎回 金曜日 13:00 – 14:30; 2019/11/22, 2019/12/27, 2020/ 1/ 3 は休み。センター試験前日の 2020/1/17 (金)の演習は、前日の 16 日(木)に振り替えます。 下記の内容は、各クラスでの発表の状況などにより、多少前後することがあります。 演習日 予定している主な内容 出欠 1 2019/10/ 4 ベクトル解析の復習 2 2019/10/11 Maxwell 方程式 3 2019/10/18 真空中の静電場 4 2019/10/25 多重極展開 5 2019/11/ 1 導体系の静電場 6 2019/11/ 8 2 次元・ 3 次元境界値問題 7 2019/11/15 鏡映法, 等角写像 8 2019/11/29 Maxwell の応力 9 2019/12/ 6 誘電体の静電場 10 2019/12/13 誘電体でのエネルギーと力 11 2019/12/20 定常電流による静磁場 12 2020/ 1/10 真空中の静磁場 13 2020/ 1/16 磁性体の静磁場 14 2020/ 1/24 磁場が電流に及ぼす力 (15) 2020/ 2/ 3 (期末レポート提出締切) 成績 以下を加算した数値をもとに、 100 – 0 点の間でつける予定です。 発表 (A(15), B(10), F(0)) 単位の取得を希望する人は必ず発表すること。最大 30 点を予定。 小レポート (A(10), D(5), F(0)) 期間中に 3 回実施。他の人と相談してもよいが、解答の作成は 他の受講者の答案を見ずに自力で行うこと。 2 週間後の演習終了時に提出締切。メールの場合は 担当教員と TA の両方に 締切日 (日本時間) 中に。締切の次の演習の際に返却予定。 F の場合 は返却 2 週間後までの再提出を強く推奨する。 D の場合も再提出可能。合計 30 点満点。 出席シート 10 回程度実施。期末までに返却。 (10 ) 期末レポート (30 点満点) 期末に 1 回。 1

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2019年度 電磁気学演習 1 (2019年 11月 8日版)

2019年度 京都大学理学部 電磁気学演習1組分け名簿に載っていない人は、説明の後に担当教員(手塚)まで申し出てください。

日程

毎回 金曜日 13:00 – 14:30; 2019/11/22, 2019/12/27, 2020/ 1/ 3 は休み。センター試験前日の2020/1/17 (金)の演習は、前日の 16日(木)に振り替えます。下記の内容は、各クラスでの発表の状況などにより、多少前後することがあります。

回 演習日 予定している主な内容 出欠

1 2019/10/ 4 ベクトル解析の復習

2 2019/10/11 Maxwell方程式3 2019/10/18 真空中の静電場

4 2019/10/25 多重極展開

5 2019/11/ 1 導体系の静電場

6 2019/11/ 8 2次元・ 3次元境界値問題7 2019/11/15 鏡映法, 等角写像

8 2019/11/29 Maxwellの応力9 2019/12/ 6 誘電体の静電場

10 2019/12/13 誘電体でのエネルギーと力

11 2019/12/20 定常電流による静磁場

12 2020/ 1/10 真空中の静磁場

13 2020/ 1/16 磁性体の静磁場

14 2020/ 1/24 磁場が電流に及ぼす力

(15) 2020/ 2/ 3頃 (期末レポート提出締切)

成績

以下を加算した数値をもとに、 100 – 0 点の間でつける予定です。

• 発表 (A(15), B(10), F(0)) 単位の取得を希望する人は必ず発表すること。最大 30点を予定。• 小レポート (A(10), D(5), F(0)) 期間中に 3回実施。他の人と相談してもよいが、解答の作成は他の受講者の答案を見ずに自力で行うこと。 2週間後の演習終了時に提出締切。メールの場合は担当教員と TAの両方に締切日 (日本時間) 中に。締切の次の演習の際に返却予定。 F の場合は返却 2週間後までの再提出を強く推奨する。 D の場合も再提出可能。合計 30点満点。

• 出席シート 10回程度実施。期末までに返却。 (10点)• 期末レポート (30点満点) 期末に 1回。

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2019年度 電磁気学演習 1 (2019年 11月 8日版)

方針

講義「物理学基礎論 B」, 「電磁気学続論」で学習した内容を踏まえ、講義「電磁気学 A」で解説される内容を中心に演習を行います。発表者と他の受講者が積極的な質疑応答を行うことで、静的な系の古

典電磁気学に習熟します。 (単位系は国際単位系 (SI) を用います)

配布する問題を皆が解いて集まり、発表者が黒板で解いて質疑応答を行うのを主とします。次回発表

することになったら、問題を解くだけでなく、ぜひ発表用のまとめを作って、何回か練習しましょう。発表時は

初めに問題番号・名前・学生番号の下 4桁を見やすく書いてください。そして、

次の (5–10)分で何を説明するか宣言する→宣言した時間で説明する→何を説明したかまとめる

というサイクルごとに質問に対応することの繰り返しで、進めてください。

1人の発表につき、長くても発表者による説明 20分, 質疑応答およびクラス担当者からのコメント 5分の 25分で終わらせることを原則とします。発表者まかせにするのでなく、積極的に参加するとの意識を持ち、随時発言してください。発表にプロジェクターが必要なときは、前の週にクラス

担当者と相談してください。

次週の黒板での発表者は、まだ発表していない人を優先に、希望者からクラス担当者が指名しますが、

指名された人が来ていない場合はその場で希望者に振り替えます (状況により分割可能。 ∗ つきの問題・小問は省略可)。

教室とクラス担当 TA

原則として 3週ごとに手塚が担当しますが、出張などにより変更することがあります。

組 (教室) 氏名 所属 E メールアドレス

1組 (302)いく

幾た

田かい

佳 宇宙物理学教室 ikuta at kusastro.kyoto-u.ac.jp

2組 (303)わ

和だ

田とも

知き

己 基礎物理学研究所 tomoki.wada at yukawa.kyoto-u.ac.jp

3組 (401)こ

小にし

西かず

一き

貴 物理学第一教室 konishi.kazuki.55a at st.kyoto-u.ac.jp

連絡先

担当教員:て

手づか

塚まさ

真き

樹 (物理学第一教室 凝縮系理論グループ。理学研究科 5号館 439号室)質問がある場合、なるべく電子メール (tezuka at scphys.kyoto-u.ac.jp) で事前に連絡してください。(特別な用事がない限り、水曜日 15–18時は原則として在室するようにします)

演習ウェブページ

http://cond.scphys.kyoto-u.ac.jp/~tezuka/em1/PandA は https://panda.ecs.kyoto-u.ac.jp/もし読めないなど不具合があれば、上記メールまたは 075–753–3798 までお知らせください。

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第 1章

ベクトル解析の復習とMaxwell方程式

� �• 3次元極座標, 円柱座標で div, rot, grad, 4 が計算できるようになる。• ストークスの定理, ガウスの発散定理を利用できるようになる。• デルタ関数の各種の座標系での表現を導出できるようになる。� �

1.1 その場問題

各教室に移動後、問題 [1], 問題 [2], 問題 [3] を 40分程度で解き、残り時間で発表者を決めて簡潔に発表してください。問題 [1], 問題 [2] は、必要ならば 2人で分担して発表してください。

問題 [1] ディラックのデルタ関数

ディラックのデルタ関数について説明せよ。また、ディラックのデルタ関数を適切に用いて、下記の場合

に、 3次元の電荷分布 ρ(r) を表せ。 (b), (d)では、求めた ρ(r) の 3次元空間全体にわたる積分が、与えられた全電荷と一致することを確認せよ。

(a) xy平面上 (z = 0)に、単位面積あたり σの電荷が均一に分布している。(3次元直交座標 (x, y, z)

を用いる)

(b) 原点を中心とする半径 R の球面に、全電荷 Qが均一に分布している。(3次元球座標 (r, θ, φ) を

用いる)

(c) z軸を中心とする半径 bの円柱表面に、軸に沿った単位長さあたり λの電荷が、均一に分布してい

る。(円柱座標 (ρ, θ, z) を用いる)

(d) xy 平面上 (z = 0) の原点を中心とする半径 R の薄い円盤上に、全電荷 Q が均一に分布してい

る。(円柱座標 (ρ, θ, z) と 3次元球座標 (r, θ, φ) の場合についてそれぞれ表す。場合分けして書い

ても、ヘヴィサイドの階段関数 Θ(x) を用いてもよい)

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2019年度 電磁気学演習 1 第 1週 問題 (2019年 11月 8日版)

問題 [2] ストークスの定理とガウスの発散定理

(a) 3次元空間でストークスの定理 ∮C

A(r) · dl =∫

S(∇ × A) · nda, (1.1.1)

を考える。ただし S は閉曲線を境界とする曲面で A(r)はその近傍で定義された充分滑らかなベクトル場、 da は S 上の微小面積要素、 nは S の法線ベクトル、 C は S の境界で nについて右ねじの向きに向き付けされており、 dl は C 上の微小線要素である。

この定理の意味するところについて、図を用いるなどして、直感的な説明を試みよ。そして、例と

して、 S = {(x, y, z)|0 ≤ x ≤ 1, 0 ≤ y ≤ 1, z = 0} で、この定理が成り立つことを確認せよ。

(発表では、計算の方針がわかるような説明まででよい。 n = z と選んでよく、その場合は C は

(0, 0, 0)→ (1, 0, 0)→ (1, 1, 0)→ (0, 1, 0)→ (0, 0, 0)のように向き付けられる)

(b) 3次元空間でガウスの発散定理∫V∇ · A(r)dv =

∫∂V

A(r) · ndS , (1.1.2)

を考える。ただし ∂V は領域 V の境界で nは ∂V の外向き単位法線ベクトル、 dv は V の微小体

積要素、 dS は ∂V の微小面積要素とする。

この定理の意味するところについて、図を用いるなどして、直感的な説明を試みよ。そして、例として、

V = {(x, y, z)|0 ≤ x ≤ 1, 0 ≤ y ≤ 1, 0 ≤ z ≤ 1}で、この定理が成り立つことを確認せよ。(発表で

は、計算の方針がわかるような説明まででよい)

問題 [3] 曲面の面積

3次元空間中で 2つの実パラメータ (s, t)でパラメータづけられた曲面 S ((s, t) ∈ A) の面積が

S =

"A

dsdt

√∣∣∣∣∣∂r∂s

∣∣∣∣∣2 ∣∣∣∣∣∂r∂t

∣∣∣∣∣2 − (∂r∂s·∂r∂t

)2(1.1.3)

で表されることについて説明せよ。(たとえば単位球面の場合、

r =

sin s cos tsin s sin t

cos s

, A = {(s, t)|0 ≤ s ≤ π, 0 ≤ t ≤ 2π} (1.1.4)

は、このようなパラメータづけの例になっており、右辺に代入して計算すると

"A

dsdt

√√√√√√∣∣∣∣∣∣∣∣cos s cos tcos s sin t− sin s

∣∣∣∣∣∣∣∣2 ∣∣∣∣∣∣∣∣

− sin s sin tsin s cos t

0

∣∣∣∣∣∣∣∣2

cos s cos tcos s sin t− sin s

·− sin s sin t

sin s cos t0

=

∫ π

0

ds∫ 2π

0

dt√

sin2 s − 0 =

∫ π

0

ds2π sin s = 4π (1.1.5)

が得られる。ただ、一般には右辺の根号の中の第 2 項の内積が 0 でないことがありうる)

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2019年度 電磁気学演習 1 第 2週 問題 (2019年 11月 8日版)

1.2 ベクトル解析に関する自習問題

自習問題 1: ベクトル

(a) 3次元空間のベクトル A, B,C を考える。以下を示せ。

A · (B × C) = B · (C × A) = C · (A × B). (1.2.1)

なお、最初の等号を示せば充分である(なぜか?)。

A × (B × C) = B(A · C) − C(A · B). (1.2.2)

(b) 3次元空間で位置ベクトル r と定ベクトル A を考える。以下を示せ。

rot r = 0, (1.2.3)div r = 3, (1.2.4)

grad (A · r) = A, (1.2.5)rot (A × r) = 2A, (1.2.6)div (A × r) = 0. (1.2.7)

自習問題 2: 円柱座標

以下の量を、 3 次元円柱座標 (ρ, θ, z) での成分とそれぞれの座標軸の方向の単位ベクトル

eρ, eθ, ez を用いて表せ。 φ(r)は滑らかなスカラー場, A(r)は滑らかなベクトル場である。

(a) grad φ.(b) rot A.(c) 4 φ.(d) div A.

1.3 Maxwell方程式� �• Maxwell 方程式の微分形と積分形を理解する。• 静的な Maxwell 方程式を用いて、導体系での電荷の振る舞いについて導かれる性質を理解する。

• グリーンの定理を発散定理から導き、静的な系でのスカラーポテンシャルの一意性を導く。• Maxwell 方程式から電荷の保存を導く。また、ベクトルポテンシャルの不定性を理解する。• 電荷に働く力を調べる。� �

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2019年度 電磁気学演習 1 第 2週 問題 (2019年 11月 8日版)

自習問題 3: 真空中のMaxwell方程式

真空中のMaxwell方程式 (微分形)

∇ × E(r, t) = −∂tB(r, t), (1.3.1)∇ × B(r, t) = µ0( j(r, t) + ε0∂tE(r, t)), (1.3.2)

∇ · E(r, t) =ρ(r, t)ε0

, (1.3.3)

∇ · B(r, t) = 0, (1.3.4)

(通常通り、 Eは電場、 Bは磁束密度、 jは電流密度、 ρは電荷密度、 ∂t は時刻 tでの偏微分、 µ0は真空の透磁率、 ε0 は真空の誘電率)について、

(a) (1.3.2), (1.3.3)から、電荷が保存することに対応する式を導出せよ。(b) (1.3.4)は、 B = rot A となる A (ベクトルポテンシャルと呼ばれる)が存在する必要十分条

件であることを説明せよ。

(c) このとき、 A は一意には決まらない。どのような不定性があるかを任意関数 ψ(r) を用いて説明せよ。

(d) スカラーポテンシャル Φ(r, t)が導入できることを説明し、上で述べた A の不定性に対応して、スカラーポテンシャルをどのように変更すれば E と Bが不変に保たれるかを述べよ。

自習問題 4: Maxwell方程式の微分形と積分形

• 微分形の Maxwell 方程式について、対応する積分形の式を示し、それぞれ、何の法則と呼ばれるかを説明せよ。

自習問題 5: 時間反転と空間反転、極性ベクトルと軸性ベクトル

• 微分形の Maxwell 方程式が、時間反転と空間反転で、それぞれどのように変換されるかを説明せよ。

• Maxwell 方程式に「磁荷」 ρm と「磁流」 jm を導入したものを書き、空間反転でどうなるかを説明せよ。とくに、 ρm は擬スカラーとなることを説明せよ。

自習問題 6: Earnshawの定理

電荷のない空間ではポテンシャルの極大点, 極小点が存在せず、電荷の集団は、静電力だけで安定なつり合いを保つことはできないことについて説明せよ。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 2週 問題 (2019年 11月 8日版)

第 2週発表問題

問題 [4] 静的なMaxwell方程式

静的なMaxwell方程式

∇ · E =ρ

ε0, (1.3.5)

∇ × E = 0, (1.3.6)

を使って以下を示せ。

(a) 導体中の電荷は表面にのみ分布する。(b) 中空の閉じた導体を考える。導体の外におかれた電荷による電場は、内部の閉じた空間の電場に

影響しない。しかし、内部の閉じた空間においた電荷は、導体外に電場を作る。

(c) (滑らかな)導体表面に単位面積 σ(r) で分布する電荷が、導体表面で作る電場は面に垂直であり、大きさは σ/ε0 である。

(d) * 避雷針について説明せよ。

問題 [5] 電荷に働く力と電気力線

電場 E(r)があるとき、位置 r にある電荷 qがこの電場から受ける力は、 F = qE(r)で与えられる。電場の空間内での配位を、電気力線で表す。具体的には、(3次元空間の)曲線 r(s)で、微分方程式

dr(s)ds

= E(r(s)) (1.3.7)

を満たすものを、いくつかの初期条件について(2次元平面に)図示することにする。

(a) 一直線 L上に点電荷 q1, q2, . . . , qn が固定されている。 L を含む平面上で、これら電荷の作る電

気力線は、各電荷と電気力線上の点 P を結ぶ線分が L となす角を θ1, θ2, . . . , θn とするとき、(初

期条件による)定数 C を用いてn∑

i=1

qi cos θi = C (1.3.8)

と表せることを説明せよ。(半頂角 αの円錐形の、頂点から見た立体角は ω = 2π(1 − cosα) となることをまず示そう。このことと、各電荷から、点 P を L まわりに回転させてできる円板 S (P) を見込

む立体角との関連を考えよ。 C をいろいろな値にとれば、何本も電気力線を描くことができることに

なる)

(b) 2個の電荷 Q = +mq と −q (m > 1, q > 0) があるとき、 Q から出発した電気力線の一部は無

限遠に行き、残りは −q に入る。その境界の電気力線が Q を出発する角度を求めよ。また、 m = 4

として、この系の電気力線を描け。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 2週 問題 (2019年 11月 8日版)

問題 [6] * スカラーポテンシャル

静的な Maxwell 方程式 (1.3.5), (1.3.6) を考える。 (1.3.6) から、スカラーポテンシャル Φ(r, t) を用いて

E = −∇Φ (1.3.9)

と書けることがわかる。電荷分布が与えられたとき、この Φはポアソン方程式

∇2Φ(r) = −ρ(r)ε0

(1.3.10)

の解となる。この解が

Φ(r) =1

4πε0

∫ρ(r′)|r − r′|

d3r′ (1.3.11)

で与えられることを確かめてみよう。 ∇2G(r) = −δ3(r)の特解を、 G(r) =∫

G(k) exp(ik · r)d3k のよう

にフーリエ積分で書き、デルタ関数のフーリエ積分による表示 δ3(r) = (2π)−3∫exp(ik · r)d3k を用いて

G(k) を求めることにより計算してもよいが、ここでは、長さ a > 0 を導入して以下を考える。

Φa(r) =1

4πε0

∫ρ(r′)√

(r − r′)2 + a2d3r′. (1.3.12)

(a) x = |r − r′| とすると、以下が成り立つことを示せ。

∇2rΦa(r) = −1

4πε0

∫3a2

(x2 + a2)5/2ρ(r′)d3r′ (1.3.13)

また、 rを中心として半径 Rの球 S R内で ρの変化が小さいとする。球の外側での積分は、 a(� R)を 0に近づけると a2 のように小さくなる(O(a2) と書く)ことを説明せよ。

(b) このとき、

∇2rΦa(r) = −1

4πε0

∫S R

3a2

(x2 + a2)5/2ρ(r′)d3r′ + O(a2) (1.3.14)

であるが、これが

∇2rΦa(r) = −1

4πε0

∫ R

x=0

4π3a2

(x2 + a2)5/2

[ρ(r) +

x2

6∇2ρ+ · · ·

]x2dx + O(a2) (1.3.15)

のように展開できることを説明し、右辺を計算し a の次数ごとに整理して a → 0 とすることで、

(1.3.11)が、すなわち、 (1.3.12)で a→ 0 としたものが (1.3.10)の解となることを示せ。(c)

∇2(

1

|r − r′|

)= −4πδ(r − r′) (1.3.16)

と書けることと、 (1.3.10)の解が (1.3.11)で与えられることの関係について説明せよ。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 2週 問題 (2019年 11月 8日版)

自習問題 7: グリーンの定理

発散定理 ∫V∇ · A(r)dv =

∫∂V

A(r) · ndS , (1.1.2)

において、(V を含む充分広い領域で定義された、充分な回数微分可能な)スカラー場 φ, ψ を用い

て A = φ∇ψ と書ける場合を考える。

(a) グリーンの第一公式 ∫V(φ∇2ψ+ ∇φ · ∇ψ)dv =

∮∂Vφ∂ψ

∂ndS (1.3.17)

を示せ。ただし、∂ψ∂n は、 ψ の ∂V に垂直な方向の微分で、 V の内側から外側へ出るときに

ψが増加する場合に正となるように定義されたものとする。

(b) 下記のグリーンの第二公式を示せ:∫V(φ∇2ψ − ψ∇2φ)dv =

∮∂V

(φ∂ψ

∂n− ψ

∂φ

∂n

)dS . (1.3.18)

(c) 静的な系で、体積 V でスカラーポテンシャル Φ を求めることを考える。 Φは

∇2Φ(r) = −ρ(r)ε0

(1.3.10)

を満たす。表面 ∂V 上で Φ の値が与えられている(ディリクレ境界条件)か、または、 ∂Φ/∂n

の値が与えられている(ノイマン境界条件)ときには、 Φ(r) は V 全体で定数の差を除いて一

意に定まることを示せ。(2 つの解 Φ1,Φ2 を仮定し、その差 U = Φ2 − Φ1 の満たすべき式

を考える)

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第 2章

真空中の静電場

2.1 電荷分布が与えられたときの静電場� �• 電荷分布からスカラーポテンシャルを求める。• 球対称な系、軸対称な系の扱いに慣れる。• 電荷分布の間に働く力を求める。� �

自習問題 8: 球対称な系

原点 O を中心とする半径 aの球内に電荷 Qが分布している。電荷密度 ρ(r)は原点からの距離 r

のみに依存し、ある定数 kがあって rk に比例するものとする。

(a) 有限の qがあって

ρ(r) = ρ(r) = qrk (2.1.1)

と書けるための k の範囲を述べ、 q を Q, a, kで表せ。

(b) 球の内外での電場 E を求め、 k = 0 (一様な分布)の場合に、 |E(r)| を r の関数として図

示せよ。

問題 [7] 円形コイルと円板

半径 zの円形コイルに線密度 λで電荷が一様に分布している。

(a) 電荷の総量 Q を求め、コイルの中心からの距離 R � zのところで電場がどうなるかを述べよ。

(b) 中心軸上、コイルの中心から xの距離での電場を求めよ。

半径 aの円板に面密度 σで電荷が一様に分布している。

(c) 中心軸上、円板の中心から x の距離の点 P での電場を求めよ。ただし、円形コイルについての問題の結果を用いてよい。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 3週 問題 (2019年 11月 8日版)

(d) 上記の結果を、(無限に広がる)平面に面密度 σで分布する電荷の場合と比較して議論せよ。(たと

えば、無限平面から距離 xの点での電場の半分の(あるいは、一般に κ倍の)強さの電場が得られ

るのは、 aがどのくらいのときか。点 Pから円板を見込む立体角との関連を考えよ。)

自習問題 9: 線分・直線上の電荷分布

(a) 線密度 λの一様な電荷が、点 A (0, 0,−`/2) と点 B (0, 0, `/2) を結ぶ線分上に分布して

いるとき、点 P (a, 0, z) における電位 Ψ を求めよ。

(b) 上記で z = 0 のとき、電場の強さを求めよ。また、 ` → ∞ の極限ではどうなるかを述べよ。

(c) (x, y, z) = (0,−d/2, 0) と (0, d/2, 0) をそれぞれ通り、 z軸に平行な長い 2本の直線上に、−λ, λ の線密度で電荷が分布しているとき、 (x, y, z) = (r sin θ, r cos θ, 0) における電位を求め、 r � d のとき((d/r) の最低次で)どう近似されるかを述べよ。

2.2 多重極展開� �• ルジャンドルの多重極展開について理解する。• 電場と双極子の相互作用、双極子の間に働く力を計算できるようになる。� �

問題 [8] ルジャンドルの多重極展開

原点 O を中心とする半径 a の球内 V に電荷分布 ρ(r)があり、球の外には電荷がないとする。以下で表される、球の外の点 rでの静電ポテンシャルを求めたい。

φ(r) =1

4πε0

∫V

ρ(r′)|r − r′|

d3r′. (2.2.1)

(a) r と r′ のなす角を θ と書くとき、 |r − r′| =√

r2 + r′2 − 2rr′ cos θであることを示せ。(b) r > a より、積分の範囲について r′ < r なので、 |r − r′|−1 = (r2 + r′2 − 2rr′ cos θ)−1/2 を (r′/r)

でべき

冪級数展開する。

(r2 + r′2 − 2rr′ cos θ)−1/2 =1

r

∞∑l=0

(r′

r

)l

Pl(cos θ). (2.2.2)

ここで、 x = cos θ とすると、 Pl(x) は x の多項式であり、ルジャンドル多項式と呼ばれる。

Pl(x) (l = 0, 1, 2, 3) を求めよ。(t = r′/r とする。与えられた式の両辺を r 倍して得られる式1

√1+t2−2xt

=∑∞

l=0 tlPl(x) を満たす Pl(x) を得ればよい)

(c) 上の結果から、静電ポテンシャルは次のように展開できる。

φ(r) =∞∑

l=0

1

rl+1

∫V

1

4πε0r′lρ(r′)Pl(cos θ)d3r′. (2.2.3)

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2019年度 電磁気学演習 1 第 3週 問題 (2019年 11月 8日版)

l ≤ 2 の項に対応する静電ポテンシャルを求めよ。ただし、以下で与えられる双極子モーメント p, 四重極モーメント

←→Q = (Qi j)

3i, j=1 と、 n = r/r を用いて定義される Q = n ·

←→Q · n =

∑3i, j=1 niQi jn j

を用いよ。

p =

∫V

r′ρ(r′)d3r′, Qi j =

∫V

(r′i r′j −

1

3δi jr′2

)ρ(r′)d3r′. (2.2.4)

(以下では、 Q12 = Qxy, Q33 = Qzz など、適宜、添字 1, 2, 3 を x, y, zで書くことがある)

自習問題 10: ルジャンドル多項式

ルジャンドル多項式が満たす微分方程式を導き、ルジャンドル多項式の満たす性質を調べよう。

r0 = (0, 0, r0)にある電荷 qが rに作る静電ポテンシャルは

φ(r) =q

4πε0V (r0, r, cos θ) , V(r0, r, cos θ) =

1√r2 + r20 − 2rr0 cos θ

(2.2.5)

と書けるので、電荷のところ以外では V(r0, r, cos θ) はラプラス方程式 ∇2V = 0 を満たすことがわ

かる。

(a) 極座標表示のラプラス方程式に上の V を代入したものと (2.2.2) を比較して、ルジャンドル多項式 Pn(x)が微分方程式

ddx

((1 − x2)

dPn(x)dx

)+ n(n + 1)Pn(x) = 0 (2.2.6)

を満たすことを示せ。

(b) 上の微分方程式の解(定数倍しても解だが、使いやすいように係数を選ぶ)が次のロドリゲスの公式で与えられることを示し、前に求めた P0, P1, P2, P3 と一致するか確認せよ。

Pn(x) =1

2nn!dn

dxn [(x2 − 1)n]. (n = 0, 1, 2, . . .) (2.2.7)

(c) 上記の解が、直交性 ∫ 1

−1

dxPm(x)Pn(x) =2

2m + 1δmn, (2.2.8)

およびボネの漸化式

(n + 1)Pn+1(x) = (2n + 1)xPn(x) − nPn−1(x), (n = 1, 2, 3, . . .) (2.2.9)

を満たすことを示せ。

自習問題 11: 双極子モーメントと電場

原点を中心として対称な位置 d/2, −d/2 に電荷 q, −qが配置されているとき、電気双極子モーメ

ントが p = qdで表されることを説明せよ。また、一様な電場 Eがあるとき、この電気双極子 pが電場から受ける力は全体として 0であることを示し、電場から受けるトルク N を求めよ。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 3週 問題 (2019年 11月 8日版)

問題 [9] 双極子モーメントの間に働く力

(a) 原点 Oから見て r1 がオイラー角 (θ1, ϕ1)の、 r2 がオイラー角 (θ2, ϕ2)の向きにあるとする。 r1 とr2 のなす角を γ とするとき、 cos γ を θ1, ϕ1, θ2, ϕ2 で表せ。

(b) 2 つの電気双極子 p1, p2 がそれぞれ位置 r1, r2 に固定されている。相互作用エネルギー U を、

r ≡ r2 − r1 として、 (p1 · r), (p2 · r), (p1 · p2)などを用いて表せ。(c) 電気双極子の位置を固定したまま向きを変えて、 U を最小にするときの向きについて述べよ。

問題 [10] 多重極モーメント

(a) 四重極モーメント←→Q = (Qi j)

3i, j=1 がトレースレス(

∑i Qii = 0)かつ対称(Qi j = Q ji)な 2階テンソ

ルであることを確認し、 z軸に関し回転対称な電荷分布につき、四重極モーメント←→Q の独立な成

分は 1つのみである(たとえば Qzz が決まれば、他の成分を Qzz で表せる)ことを示せ。

(b) z軸上、 z = ±a の位置にそれぞれ電荷 +q, z = 0 の位置に電荷 −2qがある系を考える。この系

の全電荷(単極子), 双極子モーメント, 四重極モーメントを求め、電気力線を図示せよ。(c) * 全電荷, 双極子モーメント, 四重極モーメントのどの成分も 0 で、八重極モーメントが 0 でない

ような電荷分布を、なるべく少数の点電荷で構成し、そのときの八重極モーメントを適当な表式で

表せ。

(d) * 一般に 2n 重極モーメントの独立な成分はいくつあるか。

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14

第 3章

導体系の静電場, 静電容量係数と静電誘導係数, 境界値問題

3.1 導体系の静電場とそのエネルギー� �• 電荷分布の一意性, Greenの相反定理について理解する。• 導体系の電荷分布と電位分布について、重ね合わせの原理が成り立つことを理解する。• 電位係数, 静電容量係数, 静電誘導係数を各種の導体の配置で計算できるようになる。• 静電場のエネルギーを計算できるようになる。� �

自習問題 12: 真空中の導体系と Greenの相反定理

真空中に n個の導体がある静的な系を考える。無限遠での電位を 0 とする。

(a) 電位分布 V(r)が与えられたとき、導体の (表面の)電荷分布が一意に定まることを説明せよ。また、各導体の電荷量 {Qi}

ni=1 が与えられても、導体の電荷分布は一意に定まることが

わかる。

(b) 各導体の電荷量が {Qi}ni=1 のときの各導体の電位を {Vi}

ni=1, 電荷量が {Q

′i}

ni=1 のときの

各導体の電位を {V ′i }ni=1 とする。以下の Greenの相反定理が成り立つことを説明せよ:

n∑k=1

VkQ′k =n∑

k=1

V ′kQk. (3.1.1)

(c) 電荷量が {Qi + Q′i}ni=1 であれば、各導体の電位は {Vi + V ′i }

ni=1 となることを示せ。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 4週 問題 (2019年 11月 8日版)

自習問題 13: 相反定理の利用

導体 1 は導体 2 に囲まれている。導体 2 に囲まれている領域のうち、導体 1の外側に点 P をとる。導体 1, 2 に適当な電荷を与えて、導体 1の電位を V1, 導体 2の電位を V2 にしたところ、点 Pの電位は V ′ となった。

(a) 導体 1, 導体 2 を接地し、点 P に電荷 q をおいた。このとき、導体 1, 導体 2 に誘導される電荷 q1, q2 を求めよ。

(b) 導体 1が点 O を中心とする半径 r1 の球, 導体 2が同じ点 O を中心とする半径 r2 の球で

あるとする。点 Pの点 Oからの距離が r (r1 < r < r2) のとき、 q1, q2 を具体的に求めよ。

問題 [11] 電位係数と静電容量

真空中に n個の導体がある静的な系を考える。無限遠での電位を 0 とする。

(a) 第 j番目の導体にのみ 0でない電荷 q j を与え、他の導体の電荷は 0 とした場合に第 i番目の導

体の電位が Vi となるとき、電位係数 pi j を pi j = Vi/q j と定義する。

次に、一般に 1, 2, . . . , n 番目の導体に電荷 q1, q2, . . . , qn を与えると、第 1, 2, . . . , n 番目の導体

の電位 V1,V2, . . . ,Vn についてV1

V2...

Vn

=p11 p12 · · · p1n

p21 p22 · · · p2n...

.... . .

...pn1 pn2 · · · pnn

q1

q2...

qn

(3.1.2)

となること、そして、電位係数の間に、 pkl = plk > 0, k , l のとき pkk > pkl という関係が成り立つ

ことについて説明せよ。

(b) k番目の導体の静電容量 Ck は、 qk , 0, Vl = 0 (l , k) のときの Vk を用いて、 Ck = qk/Vk と

与えられる。また、導体 k と導体 l の間の静電容量 Ckl は、 qk = Q, ql = −Q, qm = 0 (m , k, l)

のときの Vk,Vl を用いて、 Ckl =Q

Vk−Vlで与えられる。このとき、 Ck および Ckl を、行列 (pkl) を用

いて求める方法を説明せよ。ただし、行列 (pkl)の逆行列を行列 (ckl) とする。

自習問題 14: 静電容量とその単位

静電容量の SI単位はファラド (farad, F)であり、 1 F = 1 C/V である。静電容量の次元を、長さ[L], 質量 [M], 時間 [T], 電流 [I] を用いて表し、 1 F を m, kg, s, Aで表せ。

問題 [12] 静電容量の計算

2 つの導体に +Q, −Q の電荷を与えて電位差 ∆V が生じるとき、この 2 つの導体からなるコンデンサ(capacitor)の静電容量 (capacitance)は C = Q/∆V であるという。以下、導体の周囲は真空とする。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 5週 問題 (2019年 11月 8日版)

(a) 距離 d 離れて並行して置かれた、 2枚の平らな面積 A の導体平面からなるコンデンサについて、

A � d2 のとき、静電容量を求めよ。 A � d2 といえないほど離れていたらどうなるか?(b) 同じ中心をもつ 2 つの導体球面で半径が a, b (b > a) のものからなるコンデンサについて、静電

容量を求めよ。

(c) 同心である 2つの円柱側面で半径が a, b (b > a)のものからなるコンデンサについて、長さ L � b

のとき、静電容量を求めよ。

問題 [13] 静電容量係数と静電誘導係数

(3.1.2) に現れる電位係数行列 (elastance matrix) (p jk) の逆行列(静電容量行列 capacitancematrix)を考える:

q1q2...

qn

=c11 c12 · · · c1n

c21 c22 · · · c2n...

.... . .

...cn1 cn2 · · · cnn

V1

V2...

Vn

. (3.1.3)

対角成分 ckk は導体 k の(静電)容量係数、非対角成分 c jk = ck j は導体 j と導体 k の(静電)誘導係数

といわれる。必要ならば k0 = (4πε0)−1 を用いて、以下に答えよ。

(a) 合計 Qの電荷をもった導体系の n個の導体をすべて充分細い導線で接続して同一の電位 V とす

るときの、合成導体の静電容量 C = Q/V を、 {c jk}で表せ。

(b) 半径 a, b の 2 つの導体球が、半径に比べ充分大きな中心間距離 d を隔てて置かれている。容量

係数 ca, cb と、誘導係数 cab を求めよ。

(c) 半径 aの導体球 1 を、同じ中心を持つ半径 bの薄い導体球殻 2で囲う。電位係数 p11, p22, p12

と容量係数 c1, c2、誘導係数 c12 を求めよ。

3.2 静電場のエネルギー

問題 [14] 静電場のエネルギー

ポテンシャル Φが(電荷の導入により乱されない)外部電場により作られているとき、その中に置かれた

電荷分布 ρ(r)のエネルギーは U =∫ρΦd3r で与えられる。

(a) 真空中で、ポテンシャル(無限遠で 0 とする)も電荷分布によって作られているとすると、

U =1

2

∫ρΦd3r =

ε02

∫|E|2d3r (3.2.1)

となることを説明せよ。(無限遠から電荷分布を微小量 δρ だけ運んできて加えるのに必要な仕事量 δU

を、それまでに形成されたポテンシャルで表し、 U =∫ ρ(r)ρ=0

δU と考える。また、 δρ = ε0∇ · δE である)

(b) 真空中で、面積 A, 間隔 d の平行平板コンデンサに電荷 Qが蓄えられているとき、平板の境界の

影響は無視できるとして、電場のエネルギーを求めよ。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 5週 問題 (2019年 11月 8日版)

3.3 境界値問題� �• ラプラス方程式 ∇2Φ = 0およびポアソン方程式 ∇2Φ = f の性質について知る。

• グリーン関数による解の表現を利用して解を求める。• 極座標, 円柱座標を活用し、電場中の導体, 円柱の内部などの状況で境界値問題を解く。� �

自習問題 15: ラプラス方程式

静電場 E(r) を考える。ガウスの法則 ∇ · E = ρ/ε0 において、 E = −∇Φ として、 ∇2Φ = −ρ/ε0

だが、電荷のない (ρ = 0)領域 V に着目して、 d次元空間で以下のラプラス方程式を考える。

∇2Φ(x1, . . . , xd) =

∂2∂x21

+ · · ·+∂2

∂x2d

Φ(x1, . . . , xd) = 0 (3.3.1)

(a) 一般に、 Φ(r) = Φ1(r),Φ2(r) が (3.3.1) の解ならば、任意の実数 a1, a2 について、

Φ(r) = a1Φ1(r) + a2Φ2(r) も (3.3.1)の解であることを示せ。(b) d = 1 のとき (x1 = x と書く)、 V = [0, a] とする。 (3.3.1)は

d2

dx2Φ(x) = 0 (0 ≤ x ≤ a), (3.3.2)

となる。このとき、 Φ(x)の一般解を求め、以下を示せ。

(i) 0 ≤ x1 < x2 ≤ a とする。 (Φ(x1),Φ(x2)) を決めるか、 (Φ(x1), E(x1)) を決めれば、

V 全体で Φ(x)が決まる。また、 Φ( x1+x22 ) =

Φ(x1)+Φ(x2)2 が成り立つ。

(ii) Φ(x)が定数でないとき、その最大値および最小値は、端点 x = 0 または x = a で実

現し、 0 < x < aでは Φは極値を持たない。

(c) d = 2 のとき ((x1, x2) = (x, y) と書く)以下を示せ。(i) V の内部に点 P(x, y) をとり、 P を中心とする半径 Rの円周 C およびその内部が、 V

の外部を含まない場合を考える。このとき、 Φ(x, y)は、 C上での Φの平均値に等しい。

(ii) Φ(x)は、 V の内部で極大も極小も持たない。

(iii) Φ(x)は、 V の境界面 S = ∂V で Φの値が決まれば、一意に定まる。

問題 [15] 極座標によるラプラス方程式の解

極座標により 3次元空間のラプラス方程式の一般解を求めよ。ただし、非負整数 n,mで n ≥ m を満た

すものについて、 (2.2.7)のルジャンドル多項式 Pn(x) を用いてルジャンドルの陪多項式

Pmn (x) = (1 − x2)m/2dmPn(x)

dxm (3.3.3)

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2019年度 電磁気学演習 1 第 5週 問題 (2019年 11月 8日版)

を定義すると、これは、ルジャンドルのばい

陪微分方程式

ddx

[(1 − x2)

d f (x)dx

]+

[n(n + 1) −

m2

1 − x2

]f (x) = 0 (3.3.4)

の解となることを用いてよい。(なお、 Pmn (x)については、上記を (−1)m 倍した定義を用いることもある)

(余裕があれば、 2階の常微分方程式なので 2つの線形独立な解があるはずだが、 1つの解のみ用いれば済むのはなぜか、簡潔に議論せよ)

問題 [16] 電場中の導体球

(a) z軸まわりで軸対称の場合に、 3次元空間のラプラス方程式の解がどうなるか説明せよ。(b) 一様な電場 E0 = E0 zが形成されているところに、原点を中心とする半径 a の導体球(表面の電

位を V0 とする)を置いたときの新たな電場分布を求めよ。ただし、 xy平面上で遠方の電位を 0 と

する。(導体球表面の電荷による電位への寄与が、無限遠では 0 となることに注意せよ)

自習問題 16: 立方体内部の静電ポテンシャル

xyz空間の 6つの導体表面 x = 0, y = 0, z = 0, x = a, y = a, z = a (a > 0) により囲まれる、一辺の長さ aの立方体の内部の静電ポテンシャル Φ(x, y, z) を求めるために、ラプラス方程式の境界

値問題を解く方法を考えよう。ただし、側面と上下の面の間は絶縁されており、上下面 z = 0, a で

Φ = V0, 4枚の面からなる側面で Φ = 0 とできる状況を考える。

(a) まず、 Φ(x, y, z) = X(x)Y(y)Z(z) と変数分離できる解に注目する。このような解の候補が

X(x) = Aeαx, Y(y) = Beβy, Z(z) = Ceγz (A, B,C, α, β, γ は定数) と表されることを説明せよ。また、 α, β, γの間の関係を求めよ。a

(b) 上記で求めた解はラプラス方程式の固有関数であり、側面の境界条件 Φ(x = 0, y, z) =

Φ(x = a, y, z) = Φ(x, y = 0, z) = Φ(x, y = a, z) = 0 を満たす固有関数を見つけることが

できれば、それらの重ね合わせとして求める解が得られると期待できる。この側面の境界条

件を満たすには、 α, β, γ は実数とすべきか、純虚数とすべきか述べよ。さらに、側面の境界条

件を満たす α, β, γ の組み合わせを求めよ。

(c) 求められた解の重ね合わせによって、解の表示

Φ(x, y, z) =∑m,n

Dm,nXm(x)Yn(y)Zm,n(z) (3.3.5)

を求めよ。ここで、 Dm,n は重ね合わせの係数である。また、 m, n のとる値の範囲と、それぞれ

規格化された Xm(x),Yn(y),Zm,n(z) を明示的に求めよ。

(d) 上下の面での境界条件 Φ(x, y, z = 0, a) = V0 を考慮して、係数 Dm,n を決定し、 z = aで

の導体表面の電荷密度を求めよ。

a この時点では Φが実数であることは要求しないので、 X,Y,Z も、したがって α, β, γ も複素数であってよい。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 5週 問題 (2019年 11月 8日版)

問題 [17] * グリーン関数による解の表現

半径 a, bの同心導体球面上でポテンシャルの値 Φ(r, θ, φ) = Va,Vb が与えられているポアソン方程式

∇2Φ(r) = −ρ(r)ε0

(1.3.10)

を考える。これらの球面に挟まれた領域 V に電荷分布 ρ(r)があるときに、ポテンシャルを求めたい。以下、rについてのラプラス演算子を 4r = ∇2r のように書く。 a < b とする。

(a) 以下の方程式を満たすグリーン関数 G(r, r′) を考える:

4r G(r, r′) = −4πδ(r − r′). (3.3.6)

グリーンの定理を用いて、領域 V における (1.3.10)の解が

Φ(r) =1

4πε0

$Vρ(r′)G(r, r′)dr′ +

1

"∂V[G(r, r′)∂r′Φ(r′) − Φ(r′)∇r′G(r, r′)] · n dr′

(3.3.7)

と表されることを説明せよ。(V 内部と表面 ∂V とでの積分を区別するために多重積分記号を用

いた)

(b) 球座標で、 G(r, r′) を球面調和関数 Ylm(θ, φ) を使って表す。デルタ関数は球座標では

δ(r − r′) = r−2δ(r − r′)δ(cos θ − cos θ′)δ(φ′ − φ) (3.3.8)

と表され、球面調和関数は

∞∑l=0

l∑m=−l

Y∗lm(θ′, φ′)Ylm(θ, φ) = δ(cos θ − cos θ′)δ(φ − φ′) (3.3.9)

を満たす。ここで、

G(r, r′) =∞∑

l=0

l∑m=−l

gl(r, r′)Y∗lm(θ′, φ′)Ylm(θ, φ) (3.3.10)

と展開すると、 gl(r, r′)の満たす方程式は θ, φ を含まない以下の式で与えられることを説明せよ:

1

r2∂

∂r

(r2∂gl

∂r

)−

l(l + 1)

r2gl = −

r2δ(r − r′). (3.3.11)

(c) まず、 r , r′ の場合に、 gl ∝ rp 型の解を求めよ。そして、境界条件 |r| = r = a, b で G(r, r′) = 0

であることと、 r, r′ の交換に関する対称性を使うと、 r< = min(r, r′), r> = max(r, r′) として

gl(r, r′) = C(rl< − Ar−(l+1)

< )(rl> − Br−(l+1)

> ) (3.3.12)

と表せることを説明し、定数 A, Bを求めよ。

(d) gl の方程式を微小な ε について r′ − ε ≤ r ≤ r′ + ε の範囲で積分することで、 C を求めよ。

19

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2019年度 電磁気学演習 1 第 5週 問題 (2019年 11月 8日版)

問題 [18] * 球殻の中の電荷分布が作るポテンシャルと表面の電荷密度

原点を中心とする z方向の長さ 2d の線分上に、 ρ(z) ∝ (d2 − z2) となる電荷密度が与えられている。

線分の全電荷を Q とおく。原点を中心とする内半径 b(> d) の接地された導体球殻がこの線分を囲んで

いる。階段関数 Θ(x) (x ≥ 0で Θ(x) = 1, x < 0で Θ(x) = 0) を用いて、球座標系での電荷密度が

ρ(r, θ, φ) =3Q4d3

(d2 − r2)1

2πr2[δ(cos θ − 1) + δ(cos θ + 1)]Θ(d − r) (3.3.13)

で与えられることを説明し、 d < r < bでの解をルジャンドル多項式 Pl(cos θ) を用いて表せ。そして、球殻表面での電荷密度を求めよ。 d � b のときにはどうなるか?

問題 [19] 一方向について並進対称性のある系での電場の決定

(a) 系が z方向について一様である場合に、円筒座標により表したラプラス方程式

r∂

∂r

(r∂ f∂r

)+∂2 f∂θ2

= 0, (3.3.14)

の一般解を求めることを考える。 r だけの関数 R(r) と θ だけの関数 Θ(θ)の積で表されるような解

の線形結合として、一般解が表せるとの仮定のもとで、一般解は、 {an}, {bn}, {cn}, {dn} を定数として

f (r, θ) =∞∑

n=1

(an cos nθ + bn sin nθ)(cnrn + dnr−n) + c0 log r + d0, (3.3.15)

の形に書けることを説明せよ。

(b) 真空中で、一様な外部電場 E0 xが形成されているところに、半径 a の長い円柱状の導体を、軸を

z軸に合わせて置く。導体外部での電場を求めよ。

20

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2019年度 電磁気学演習 1 第 6週 問題 (2019年 11月 8日版)

自習問題 17: * 境界値問題: 円柱とベッセル関数

半径 b, 高さ Lの直円柱の表面で静電ポテンシャル Φが与えられたとき、内部での静電ポテンシャ

ルを、中心軸を z軸にとった円柱座標系 (r, φ, z) を導入して (上面 z = L, 底面 z = 0)求めよう。

(a) まず、ラプラス方程式

4Φ(r, φ, z) =1

r∂

∂r

(r∂Φ

∂r

)+

1

r2∂2Φ

∂φ2+∂2Φ

∂z2= 0 (3.3.16)

の、変数分離 Φ(r, φ, z) = R(r)Q(φ)Z(z) のできる解を考える。 d2Zdz2 = k2Z, d2Q

dφ2 =

−n2Q (k, nは r, φ, zに依存しない定数) とおくことができ、 nが整数になることを説明せよ。

(b) k は実数または純虚数にとれる。円柱の上下の面 z = L, 0 で Φ = 0 と境界値を定めると

き、円柱内部の解を上記のような変数分離された解の線形結合として表すには、 k をどのよ

うにとるべきか述べよ。また、 k > 0 のとき、 R は、 k を用いて x = kr と変数変換すれば、

ベッセルの微分方程式

d2

dx2R(x) +

1

xddx

R(x) +(1 −

n2

x2

)R(x) = 0 (3.3.17)

を満たすことを説明し、 (適当な文献を調べるなどして) ベッセルの微分方程式の nが整数

の場合の解である第 1種ベッセル関数 Jn(x), 第 2種ベッセル関数 Nn(x) の原点付近で

の振る舞いについて述べよ。

同様に、 kが純虚数のときには、 x = |k|r を用いて、 R が変形されたベッセルの微分方程式

d2

dx2R(x) +

1

xddx

R(x) −(1 +

n2

x2

)R(x) = 0 (3.3.18)

を満たすことを説明し、 nが整数の場合の解、第 1種変形ベッセル関数 In(x), 第 2種変形ベッセル関数 Kn(x)の原点付近での振る舞いについて述べよ。 k = 0 のときはどうなるか?

(c) 円柱内部 (r = 0 を含む)での解を表すには、どのベッセル関数を使うべきか考察せよ。境界値が、円柱の上下の面 z = L, 0 で Φ = 0 、側面で Φ(r = b, φ, z) = V(φ, z) と与え

られたとき、円柱内部での任意の点におけるポテンシャルを求める方法を説明し、具体的に

V(φ, z) =

V0 −π/2 < φ < π/2,

−V0 π/2 < φ < 3π/2(3.3.19)

のとき、 Φ(r, φ, z) を適当なベッセル関数を用いて表せ。

自習問題 18: * コイルの作る静電場

半径 a の円形コイルに線密度 λ で電荷が一様に分布しているとき、コイルを含む平面からの距離

h, 中心軸からの距離 r での電場はどうなるか?

21

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2019年度 電磁気学演習 1 第 6週 問題 (2019年 11月 8日版)

3.4 鏡映法� �• 接地された導体付近においた電荷の像を考えて静電ポテンシャルおよび導体表面の電荷分布を求める。

• 導体が複数の部分からなる場合や、接地されていない導体球の場合なども調べる。� �自習問題 19: 導体平面付近においた電荷

x ≤ 0 に接地された (静電ポテンシャル Φ(r) = 0) 導体が広がっており、その外の点 A(a, 0, 0)

(a > 0)に点電荷 +eがある。

(a) 導体を点 A’(−a, 0, 0) においた −e の点電荷で置き換えることを考える。このときの点

P(x, y, z)における静電ポテンシャルを、 ρ =√

y2 + z2 を使って表せ。

そして、求めた静電ポテンシャルが、導体があったときの境界条件 Φ(x = 0, y, z) = 0 を満

たし、導体があった領域の外でポアソン方程式を満たしていることを説明せよ。

(b) 元の導体のある系を考えて、点電荷の存在により、導体表面に誘導される電荷の密度ω(x = 0, y, z) を、 ρ の関数として表し、導体表面に誘導される全電荷量 Q を求めて、点電

荷 +e と比較せよ。

自習問題 20: 立体角法

導体のある系で実現する電場分布が、導体外においては、点電荷 q1, . . . , qn により真空中に実現

する電場と等しいとする。このとき、導体表面の一部 S に生じる誘導電荷 Q を、その部分 S をそれ

ぞれの点電荷から見込む立体角 ω1, . . . , ωn を用いて表せ。ただし、 ωi の符号は、 qi が S につい

て誘導電荷と反対側にあるとき正、同じ側にあるとき負にとるものとする。

問題 [20] 接地された導体球付近においた電荷

原点を中心とする接地された半径 Rの導体球の外部の点 D (0, 0, d) (d > R)に電荷 +qがある。

(a) 導体球を置き換える電気映像の位置と大きさを求めよ。(b) 球外部の点 Pでの電位を求めよ。(c) 球表面の誘導電荷密度の分布と、誘導される全電荷量をそれぞれ求めよ。

問題 [21] 直交する導体の間においた電荷

z軸で直交し、 A: y = 0, x ≥ 0 および B: x = 0, y ≥ 0 に広がる、接地された 2枚の半無限導体平板A, B がある。点 P (a, b, 0) (a, b > 0) に電荷 q > 0 をおく。

(a) このときにできる電気映像をすべて求めて図示せよ。

22

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2019年度 電磁気学演習 1 第 6週 問題 (2019年 11月 8日版)

(b) z = 0 上の電場を求めよ。また、 z = 0 と両導体の交線 (x軸上 x ≥ 0, y軸上 y ≥ 0)上での誘導電荷の密度を求めよ。それぞれ図示せよ。

(c) A, B に誘導される電荷の量をそれぞれ求め、その和が −q になることを確認せよ。

問題 [22] * 帯電した導体球付近においた電荷

原点を中心とする半径 R の (接地されていない) 導体球に電荷 Q = +q を与え、球の外部の点 D(d, 0, 0) (d > R) に点電荷 +q を置く。点電荷と導体球の間に引力が働く条件について、グラフなどを用

いて考察し、 a = d − R � Rのときの引力の大きさを求めよ。 Q = 2qの場合にはどうなるか?

問題 [23] 円筒の電気映像

z軸を中心とする半径 aの円筒形の長い導体 A と、 (x, y, z) = (h, 0, 0) を通って z軸に平行な直線を

中心とする半径 bの円筒形の長い導体 Bがある。 a ≤ b とする。

(a) a + b < h のとき、 A と B は互いの外部にある。 A に単位長さあたり +λ, B に単位長さあたり−λの電荷を与えたとき、円筒の外部での電場を再現するようにそれぞれの円筒を線状電荷で置き

換えることによって、電位差を求め、単位長さあたりの静電容量を求めよ。

(b) a + h < b のとき、 Aは Bの内部にある。このとき、前問の結果がどのように変わるかを述べよ。

自習問題 21: 接した球

半径 aの 2つの導体球が 1点で接触した導体が帯電している。この導体の (無限遠の電位を 0 と

した)電位を求め、静電容量が C = 8πε0a log 2 で与えられることを示せ。

自習問題 22: 電線

大地を平らで充分広い導体とみなし、大気の影響を (前後の他の問題と同様に)無視する。高さ h

で水平に張られた半径 a の電線に、線密度 λ で帯電している。単位長さあたりの静電容量を求

めよ。

23

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2019年度 電磁気学演習 1 第 7週 問題 (2019年 11月 8日版)

3.5 等角写像� �一方向に並進対称性のある系で電位, 電場を求めるためラプラス方程式を解く際に、解析関数を用いた等角写像が利用できる理由を理解する。そして、 w = za, ez, log z, sin z などを用いて問題を解く。� �問題 [24] 等角写像と等電位線・電気力線

電位 V(r) = V(x, y,Z)が Z によらないとき、電荷のない領域で、ラプラス方程式

∂2V∂x2

+∂2V∂y2

= 0 (3.5.1)

が成り立つ。これを、導体表面などの境界条件に合わせて解くことを考える。

(a) 複素数 z = x + iyの解析関数 w = f (z) = u(x, y) + iv(x, y) を考える。解析関数が微分可能な

ことから、 u と vがコーシー・リーマンの方程式 (Cauchy–Riemann equations)

∂u∂x

=∂v∂y,∂u∂y

= −∂v∂x, (3.5.2)

を満たすこと、そして、 u と vがどちらもラプラス方程式 (3.5.1)の解となることを示せ。(b) w = f (z) による (x, y) から (u, v) への変換は等角写像であることを説明せよ。

(c) ある w = f (z) について v(x, y) が与えられた等電位線上でそこでの電位に一致すれば、

V = v(x, y) は (3.5.1) を満たす電位の候補となる。このとき、電場の強さが |dw/dz| で与えられる

こと、および、 uが一定の線が電気力線を与えることを説明せよ。

自習問題 23: 調和関数

以下の z = x + iyの関数 wについて、実部 u(x, y), 虚部 v(x, y) を求め、それらが一定となる線が

xy平面上で描く図形について述べよ。また、 z → w は (x, y)平面またはその一部を (u, v)平面の

どの部分にどのように写像するか説明せよ。

(a) w = Az2 (Aは実数).(b) w = Aza (A, aは実数). 特に a = 1/2,−1の場合どうなるか?(c) w = A log z (Aは実数).(d) w = log z−a

z+a (a > 0).

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2019年度 電磁気学演習 1 第 7週 問題 (2019年 11月 8日版)� �問題 [16](b)について、 xy平面上で遠方の電位を 0 とします。

11月 20日(水) 15:00 – 16:30、京都大学医学部創立百周年記念施設 芝蘭会館にて、生命科学研究科 男女共同参画推進セミナー「日本人女性研究者、アメリカのアカデミアを生き抜く」(講師:鳥居

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z = x + iy, w = u + iv として、解析関数 w = sin z による写像を考えよう。 cos(iy) =ey+e−y

2 = cosh y, sin(iy) = e−y−ey

2i = i sinh y および加法定理を用いれば、 w = sin z =

sin x cos(iy) + cos x sin(iy) = sin x cosh y + i cos x sinh y が得られるので、 u = sin x cosh y,v = cos x sinh y となる。

(a) a > c > 0 として、 xy 平面上の 2 点 F(c, 0), F′(−c, 0) からの距離の和が 2a になる点

P(x, y) の軌跡が、原点を中心とする長軸 2a, 短軸 2√

a2 − c2 の楕円 x2a2 + y2

a2−c2 = 1 と

なることを示せ。

(b) q > 0 について、 (開)線分 Lq : y = q,− π2 < x < π2 が、 w = u+ iv = sin z = sin(x+ iy)

により、どのように写像されるかを述べよ。

(c) xy 平面上で {Lq | q > 0}が掃く領域 {(x, y) | y > 0,− π2 < x < π2 } は、 w = sin z によっ

て、上半平面 v = =w > 0 に一対一に写像されることを示せ。

問題 [25] 帯電した半無限導体平板

(a) w = Az1/2 を用いて、帯電した半無限導体平板の端付近の等電位面と電気力線を調べ、図示

せよ。

(b) w = A log z を用いて、同一平面上に、 2枚の帯電した半無限導体平板 (電位は異なるとする)がわずかの距離をおいて並んでいるときの等電位面と電気力線を図示せよ。

問題 [26] 等角写像の応用

(この問題では、 z = x + yi (i =√−1)とするので、 3次元空間の直交座標系の 3軸を x軸, y軸, Z

軸と呼びます)

25

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2019年度 電磁気学演習 1 第 8週 問題 (2019年 11月 8日版)

(a) Z 軸を中心とする、 xy平面による断面が長軸(x方向) 2a,短軸(y方向) 2bの楕円である楕円柱

導体の表面に、 (楕円に垂直な中心軸方向に関し)単位長さあたり λの電荷が分布している。このとき、電位は、ある定数 A と z = x + yi を用いて、 w = A cos−1

(z

√a2−b2

)の虚部で与えられること

を示し、等電位面と電気力線を求めて図示せよ。

(b) 幅 2aの薄くて長い導体板が、 (幅と垂直な方向に関し)線密度 λで帯電している。導体の幅方向

に x 軸を、導体と垂直な向きに y軸を、導体板の中心線に沿って Z 軸をとることにする。このとき、

電位はある定数 A と z = x + yi を用いて、 w = A cos−1(

za

)の虚部で与えられることを示し、等電

位面と電気力線を求めて図示せよ。

問題 [27] * 等角写像の応用 2

複素数 z,w の間の変換 z = A cot(w/2i) を用い、半径 a, b の薄くかつ長い円筒状導体 (a < b とす

る)が中心距離 d だけずれて平行に配置された場合の、両導体間の単位長さあたりの静電容量を、一方

が他方の中にある場合 (d < b − a), 離れて配置された場合 (d > a + b) についてそれぞれ求めよ。

3.6 Maxwellの応力と導体にはたらく力� �• Maxwell の応力テンソルについて、真空中の静電場の場合に、 Coulomb の法則や、電気力線との対応を通して理解を深める。

• 静電場のもとで導体に働く力について、平行平板コンデンサや平行な導線の場合に計算できるようになる。� �

自習問題 25: 電荷の保存

真空中のMaxwell方程式 (微分形)のうち 2つの式 (1.3.2), (1.3.3)は、次のようにも書ける。

∇ × H(r, t) = j(r, t) + ∂t D(r, t), (1.3.2’)∇ · D(r, t) = ρ(r, t), (1.3.3’)

(1.3.2’)の両辺の発散をとった式から、電荷の保存を表す式

∇ · j + ∂tρ = 0, (3.6.1)

が得られることを示し、この式を、体積 V (境界の閉曲面を ∂V と表し、その外向きの法線方向の単

位ベクトルを n(r) とする)について積分形で表すと以下の式が導かれることを説明せよ:

∂t

$Vρ(r, t)dr = −

"∂V

j(r, t) · n(r)dr. (3.6.2)

すなわち、 V の内部の電荷の増加率は、 ∂V を通って流れ出す電流の (−1)倍に等しい。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 8週 問題 (2019年 11月 8日版)

自習問題 26: 2階のテンソル

空間の各点 r で定義されたベクトル量aV(r) を考える。座標の回転 U によって、 r が r′ に移るとき、 V(r)は V′(r′)に移る。これは一次変換なので、行列 (ai j)

3i, j=1 を用いて、

V ′i (r′, t) =3∑

i′=1

aii′(r)Vi′(r, t) (3.6.3)

と書ける。ここで、次のような、 2つの添字 (= x, y, z; 1, 2, 3 とも書く) をもつ量を考えよう。

Ti j = ViV j + cδi j|V|2. (3.6.4)

ただし、 cは定数とする。このとき、 U による Ti j の変換が、

T ′i j(r′, t) =3∑

i′=1

3∑j′=1

aii′(r)a j j′(r)Ti′ j′(r, t), (3.6.5)

と表されることを説明せよ。このような変換をする物理量を 2階のテンソルという。また、 r も下記の一次変換によって r′ に移る。行列 (ai j)

3i, j=1 と (ui j)

3i, j=1 の関係について説明

せよ。

r′i =3∑

i′=1

uii′ri′ . (3.6.6)

a ここでは空間の反転を考えないので、極性ベクトルか軸性ベクトルかを問わない。

問題 [28] Maxwellの方程式と応力テンソル

真空中のMaxwell方程式 (微分形)

∇ × E(r, t) = −∂tB(r, t), (1.3.1)∇ × H(r, t) = j(r, t) + ∂t D(r, t), (1.3.2’)∇ · D(r, t) = ρ(r, t), (1.3.3’)∇ · B(r, t) = 0, (1.3.4)

を考える。ただし、 E は電場、 H は磁場、 D は電束密度、 B は磁束密度、 j は電流密度、 ρ は電荷密度、∂t は時刻 t での偏微分であり、真空中では、 E と D, H と B の関係は、電気定数 ε0 と磁気定数 µ0 に

よって、それぞれ

D = ε0E, B = µ0H (3.6.7)

のように表される。また、 Y = E × H は、ポインティングベクトルと呼ばれる。

(a) (1.3.2)’ と電場の内積をとり、得られた式を (1.3.1) を用いて整理することにより、

E · j + ∂t

(12

E · D +1

2H · B

)+ ∇ · (E × H) = 0 (3.6.8)

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2019年度 電磁気学演習 1 第 8週 問題 (2019年 11月 8日版)

を導け。ここで、電磁場と相互作用する物質中に電流が流れている状況を考えると、物質のエネル

ギー密度の時間変化は E · j で表される。 EEM = 12(E · D + H · B) が電磁場のエネルギー密

度、 Y が電磁場のエネルギー流密度を表すとすれば、 (3.6.8) は、エネルギーの保存を表すと解釈できる。

(b) 物質の運動量密度を pm(r, t) とする。電磁場との相互作用による運動量密度の時間変化は、そこでの電荷密度と電流密度が受ける力で与えられるので、

∂t pm = ρE + j × B, (3.6.9)

と書ける。この式と (1.3.2)’, (1.3.3)’ を用いて ρ, j を消去し、 ∂t pm を電磁場だけの式で表せ。(c) 電磁場の応力テンソル←→T を

Ti j = EiD j + HiB j − δi jEEM, (3.6.10)

で定義する*1とき、

∂t

[pm +

Yc2

]j=

3∑i=1

∂riTi j, (3.6.11)

が成り立つことを示せ。ただし、 [· · · ] j はベクトルの j成分を表す。

(d) pEM = Yc2 を電磁場の運動量密度と考えて、 (3.6.2) と同様に、体積 V での運動量の保存を表す

(積分形の)式を導き、境界 ∂V に電磁場が及ぼす力について、符号も含めて説明せよ。

問題 [29] Coulombの法則とMaxwellの応力テンソル

真空中で、 x 軸上 (−a, 0, 0) の位置に点電荷 q1 が、 (a, 0, 0) の位置に点電荷 q2 がある系を考えよ

う。 q2 が q1 に及ぼす力を、この空間でのMaxwellの応力テンソル

T (E)i j = ε0EiE j −

ε02δi j|E|2 (3.6.12)

を計算する*2ことによって求めたい。ただし、体積 V としては、 x < 0 を考える。 (境界として、 x軸上充分遠

くにある点 (R, 0, 0) を中心とする半径 Rの球面を考え、 R→ ∞の極限を考えれば、 xy平面以外の寄与

は消える。)

(a) 両電荷が作る、 yz平面上での電場 E(x = 0, y, z) を求めよ。

(b) yz平面上での応力テンソルを求めよ。

(c) yz平面の受ける力を求め、 Coulomb の法則から求められる力と比較せよ。 (なお、逆に q1 が q2に及ぼす力を求めるときにも同じ応力テンソルが現れるが、境界面の外向き法線方向の単位ベクト

ルが逆向きとなるので、力は互いに逆向きで等しい大きさとなることと整合する)

*1 符号を逆にとる定義もある。ここでは講義の教科書の定義に従う。

*2 静電場のみがある系なので、磁場の寄与を省略したことを T (E)i j と書いて強調している。黒板での発表では Ti j と書いてよい。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 8週 問題 (2019年 11月 8日版)

自習問題 27: 電力管

各点で電場 E に平行な空間中の曲線である電気力線に囲まれた領域を、電力管と呼ぶ。電力管は等電位面に直交する。電位 Φの等電位面上の微小面積 ∆S が、 E を遡って電位 Φ + δΦ まで

進むと ∆S ′ になるとして、 ∆S , ∆S ′ を上下の底面、この間の電力管の表面を側面とする、円柱状

の領域 V を考えよう。

(a) 等電位面 ∆S 上に、 V の外を向く向きに単位法線ベクトル n1 をとると、 E = En1 と書け

る。ここでのMaxwell の応力テンソルを n1 の 3成分を用いて表すことにより、等電位面に作用する単位面積あたりの力を、向きも含めて求めよ。

(b) 電力管の側面上に、 V の外を向く向きに単位法線ベクトル n2 をとると、 E は n2 と直交

する。このことを用いて、電力管の側面に作用する単位面積あたりの力を、向きも含めて求

めよ。

問題 [30] 導体にはたらく力

(a) 真空中で、面積 A, 間隔 d の平行平板コンデンサに電荷 Qが蓄えられているとき、平板の境界の

影響は無視できるとして、間隔を δd だけ縮めたときのエネルギー変化を考えることにより、平板間

に働く力を求めよ。

(b) 電位差を V に保つときはどうなるか?

自習問題 28: 導線

(黒板問題 27*で調べたように、ただしこの問題では d � a, b と近似してよい) 半径 a, bの 2本の長い直線状の導体が、距離 d(� a, b) を隔てて平行に置かれている。単位長さあたりの静電容量を求め、間に電位差 V があるとき、導体間に単位長さあたり働く力を、向きも含めて求めよ。

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第 4章

誘電体の静電場

4.1 誘電体の静電場� �• 誘電体の界面での境界条件を確認し、電場中においた誘電体板の内部での電場や、板表面に現れる分極密度を調べる。

• 誘電体を含む導体系について、電場や誘導電荷を求め、極板間に誘電体をもつコンデンサの容量を計算できるようになる。� �

問題 [31] 誘電体とその界面

(a) 2 つの誘電体 1, 2が接している。誘電率を ε1, ε2 とする。境界面に面密度 σで真電荷*1がある場

合の、電場 E1, E2 の境界条件を求めよ。

(b) 電気感受率 χe の (すなわち、外部から電場 E を掛けられたときの誘電分極が P = χeε0E となる)無限に広い誘電体の板がある。誘電体の誘電率 ε を求めよ。

(c) 上記の板を、真空中で一様な電場 E0 の中に、板面の法線が E0 の向きになるように置く。板表面

に現れる分極密度と、板内部の電場 E を求めよ。(d) 板を傾け、法線と E0 のなす角が θ0 となるようにしたときの、 E と法線のなす角 θ を求めよ。

自習問題 29: 誘電体と誘導電荷

半径 a の導体球の外側が、半径 b(> a) の同心球のところまで、誘電率 ε の誘電体で包まれてお

り、導体球は接地されている。中心から r(> b)のところに点電荷 q を置くとき、球に誘導される電荷

を求めよ。

*1 分極電荷と区別している。

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2019年度 電磁気学演習 1 第 10週 問題 (2019年 11月 8日版)

問題 [32] 誘電体と導体のある系

真空中で、一様な外部電場 E0 xが形成されているところに、半径 aの長い円柱状の導体の周囲に内半

径 a, 外半径 b, 誘電率 ε の円筒状の誘電体が密着したものを、軸を z軸に合わせて置く。誘電体中およ

び、誘電体の外側での電場をそれぞれ求めよ。

自習問題 30: 誘電体とコンデンサ

面積 S の正方形の平行導体板を持つ平行板コンデンサがあり、極板の間隔は d (�√

S ) である。

(a) 極板の間が、誘電率 ε1, ε2, . . . , εn の誘電体 (厚さ d1, d2, . . . , dn,∑

k dk = d) で満たされているときの静電容量を求めよ。

(b) 極板の間が空気 (誘電率 ε0 とみなす)のときの容量を C0 とする。厚さ t (< d)、誘電率 ε の

極板と同じ形状の誘電体を極板間に極板と平行に差し込んだ後の静電容量 C を求めよ。

4.2 誘電体でのエネルギーと力

問題 [33] 誘電体の境界面に作用する力と、電荷にかかる力

誘電率 ε1, ε2 の誘電体が平面で接している。

(a) 大きさ E の外部電場が境界面に垂直にかけられた場合と、境界面に平行にかけられた場合につい

て、それぞれ、境界面に作用する力を求めよ。

(b) 誘電体 ε1 の内部で接触面から距離 d の位置に電荷 qの点電荷があるときの電場と、電荷にかか

る力を求めよ。

自習問題 31: 液体の電気感受率

半径 a, b (a < b) の長い同心円柱導体面が、誘電体である液体に垂直に差し込まれている。円柱面間の電位差を V にしたとき、液面が h上昇した。液体の密度を ρ, 重力加速度を g として、液体

の電気感受率を求めよ。 (空気の感受率と密度は無視する)

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2019年度 電磁気学演習 1 第 10週 問題 (2019年 11月 8日版)

問題 [34] * 誘電体液に浮いた導体球

(a) 誘電体 ε1, ε2 が平面を境にして接し、平面上に中心をもつ半径 a の導体球を囲んでいる。導体球

に電荷 Q を与えたときの電荷と電位, 電場の分布を求めよ。 (導体面および誘電体の境界面で境界条件を満たすこと、また、 ε1 = ε2 = ε0 のとき、真空中の導体球と同じ結果になることを確認せ

よ。) また、球の静電容量を求めよ。(b) 今度は、半径 a の導体球を、帯電していない状態で、誘電率 ε, 比重 d の誘電体液面に静かに置

いたところ、体積のうち r (< 1/2) の割合が液中に浸かった状態で浮かんだ。大気の誘電率は ε0

に等しいとみなせ、大気の密度および誘電体液の表面張力は無視できるものとする。重力加速度を

g とする。球の質量 m を求めよ。

(c) この導体球に電荷 Q を与えたところ、中心が下降し、液面の高さになった。 Q を求めよ。

問題 [35] 誘電体中の静電場のエネルギー

面積 S = a2 の正方形の平行導体板を持つ平行板コンデンサがあり、極板の間隔は d (� a) である。厚さ t (t < d)、誘電率 ε の極板と同じ形状の誘電体を、極板間に極板と平行に深さ x (0 < x < a) まで差し込んで保持した状態を考える。ただし、誘電体の辺は導体板と平行で、 x方向と垂直な方向について

は、誘電体ははみ出していないものとする。

(a) 両極が電位差 V の電池につながれているとき、誘電体がコンデンサに引き込まれる力を xの関数

として求めよ。

(b) 電荷 Q を充電して電池を外したとき、誘電体がコンデンサに引き込まれる力を x の関数として求

めよ。

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