雑用水利用の現状と課題

－目次－

1. 論点

2. 雨水利用

3. 下水処理水再利用

資料－３

2

雑用水利用を促進する上での論点雑用水利用を促進する上での論点

○ 雑用水利用（雨水・下水再生水）の促進を図るための方策は何か

・ 雑用水利用の潜在的需要を掘り起こすための方策

・ 水質面での効果を期待した雑用水利用の促進（河川取水量の低減が下流河川における水質改善に寄与する観点）

○ 渇水時の都市活動の維持に下水再生水を活用するための方策は何か

例）

3

雑用水利用とは、生活用水の中で、水洗トイレ洗浄水、修景、散水、洗車、冷房用水などの用途に下水等の再生水や雨水など、上水道と比較して低水質の水を使用することの総称である。上水道、下水道との対比で「中水道」という用語が用いられる場合もある。

雑用水利用とは

・水道使用量の減少・水需給ひっ迫地域における需給ギャップの緩和・節水意識の向上、渇水に強い社会の形成・汚水減少による水域環境の向上

雑用水利用の効果

①排水再利用（再生水）方式

「個別循環方式」： 「埼玉スタジアム２００２」など１つの建

物で排水を浄化再利用する方式「地区循環方式」： 「東京ディズニーランド＆ディズニー

シー」など地区の中の建築物が共同で雑用水道を運営する方式「広域循環方式」：千葉の「幕張新都心地区」などで行われている下水処理場の処理水を広域的に供給する方式②雨水利用方式（非循環方式）

「東京ドーム」など、雨水を雑用水として利用する方式で、排水の再利用と併用する場合もある。

雑用水利用のタイプ

雑用水雑用水

4

6 7 8 10 18 19 24 32 39 50 6291

139169

221

289 314364

405441

482519 535

565601

647681

734759

799848

877913

955986

10141060

0 0 0 1 3 4 5 6 7 8 11 12 29 3055 62 63 69 74 80 81 87 90 97 107 114 116 126 130 131 137 138 142 143 147 153 159

9 11 14 16 24 27 34 40 44 54 60 73 91 106 123146 165 176 185 204

232260 274 290 317

341372

411 427 449 472 480 501 515544

572 585

3 3 4 4 5 5 6 6 6 8 10 16 19 34 44 58 70 85 104 121 144 159 178 199234

282339

425

486

564

667722

808

946

1034

1133

1243

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

昭和

44年

度以

前

昭和

45年

度

昭和

46年

度

昭和

47年

度

昭和

48年

度

昭和

49年

度

昭和

50年

度

昭和

51年

度

昭和

52年

度

昭和

53年

度

昭和

54年

度

昭和

55年

度

昭和

56年

度

昭和

57年

度

昭和

58年

度

昭和

59年

度

昭和

60年

度

昭和

61年

度

昭和

62年

度

昭和

63年

度

平成

元年

度

平成

2年

度

平成

3年

度

平成

4年

度

平成

5年

度

平成

6年

度

平成

7年

度

平成

8年

度

平成

9年

度

平成

10年

度

平成

11年

度

平成

12年

度

平成

13年

度

平成

14年

度

平成

15年

度

平成

16年

度

平成

17年

度

施

設

数

［施

設

］

1.個別循環 2.地区循環3.広域循環 4.非循環

n=3,047

循環方式別施設数の推移

183 5 5

195

14 15 1224 23

49

86

61

104112

57

8274 78

93 86

52

74

108125124

188

106

141

181

93

147

195

152161

175

18 21 26 31 50 55 69 84 96 120143192278339

443555612

694768846939

102510771151

12591384

15081696

18021943

21242217

23642559

27112872

3047

0

50

100

150

200

250

300

350

昭和

44

年度

以前

昭和

45

年度

昭和

46

年度

昭和

47

年度

昭和

48

年度

昭和

49

年度

昭和

50

年度

昭和

51

年度

昭和

52

年度

昭和

53

年度

昭和

54

年度

昭和

55

年度

昭和

56

年度

昭和

57

年度

昭和

58

年度

昭和

59

年度

昭和

60

年度

昭和

61

年度

昭和

62

年度

昭和

63

年度

平成

元年

度

平成

2年

度

平成

3年

度

平成

4年

度

平成

5年

度

平成

6年

度

平成

7年

度

平成

8年

度

平成

9年

度

平成

10

年度

平成

11

年度

平成

12

年度

平成

13

年度

平成

14

年度

平成

15

年度

平成

16

年度

平成

17

年度

年間導入数

［施設

］

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

累計

［施設

］

年間導入数 累計n=3,047

雑用水利用施設数の推移

62116

81

1185

243

2781

181

33 45

143

615

96139

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

01.北

海道

02.東

北

03.関

東内

陸

04.関

東臨

海

05.東

海

06.北

陸

07.近

畿内

陸

08.近

畿臨

海

09.中

国山

陰

10.中

国山

陽

11.四

国

12.北

九州

13.南

九州

14.沖

縄

施設

数［施

設］

n=3,047

地域別施設数

単位：件（特に断りのない限り）

施設数計雑用水量計

（m3/日）

一施設平均雑用水量計

（m3/日/施設）1.個別 1,060 144,261.8 136.12.地区 159 17,354.6 109.13.広域 585 215,542.3 368.44.非循環 1,243 21,412.5 17.2総計 3,047 398,571.1 130.8

（単位：件）雑用水量

・水資源部では３年に一度、雑用水利用施設の普及推進のため全国調査を実施（最新はH18調査）・H18.3末現在、全国で約３，０００件の施設で導入（個人住宅は含まない）・近年は、非循環方式（雨水のみ利用）が急速に増加・地域別には、関東臨海と北九州が圧倒的に多い・雑用水利用水量は全体で日量約４０万㎥（生活用水の約１％に相当）

全国の雑用水利用施設の現状（H18.3末現在）

雑用水雑用水 利用施設調査利用施設調査

5

雑用水雑用水 支援制度の例支援制度の例

福岡県福岡市 「福岡市雑用水道奨励補助金制度」

⇒個別循環型雑用水道を設置する場合に、一定の条件に基づき補助金を交付

埼玉県越谷市 「越谷市雨水貯留施設助成金制度」

⇒不要になった各戸の浄化槽を雨水貯留施設に転用し、または新たに雨水貯留施設を設置し、雨水の有効利用を行う者に対してその費用の一部を助成

東京都墨田区 「墨田区雨水利用促進助成制度」

⇒雨水利用のための貯留槽を設置する場合に費用の一部を助成

国

地方

公共

団体

１．公共事業①農村地域の水資源のリサイクル活用を推進する農業集落排水事業、水質保全対策事業

の実施

②工業用水余剰水の雑用水への暫定的利用

③新世代下水道支援事業水環境創造事業水循環再生型の実施

④都市機構住宅、官庁施設、公園、道路への雑用水利用の推進

２．税制①エネルギー需給構造改革投資促進税制における特例措置

②汚水、雨水を雑用水等に再利用するための処理施設についての優遇措置

３．融資①農林漁業金融公庫等の低利融資（農業基盤整備資金等）

②日本政策投資銀行の低利融資（エコビル整備事業）

４．その他①中水道施設等を設置した建築物に対する容積率制限の特例制限の特例制度

国、地方公共団体において、費用の軽減策として事業、税制、融資、補助、助成等の施策を実施。

6

雑用水雑用水 利用の課題利用の課題

4,481

2,789

1,474 1,601

844

739

152527

(221)

(553)

(660) (713)(782)

(770) (771) (765)

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

～3 3～10以下 10～20以下 20～30以下 30～100以下 100～200以下 200～500以下 500～

水量ランク(ｍ3/日)

料金コスト

雑用水利用コスト平均

上下水道料金（東京都）

（円／ｍ３）

（注）　1. 国土交通省水資源部調べ（2003度調査）　　　　2. 雑用水利用コストは建設費（耐用年数15年）と維持管理費から計算

※雑用水利用の方式（個別循環・地区循環・広域循環・非循環）、建築物の構造、水処理方式及び維持管理体制等の条件により差異がある。

（左図の雑用水利用コストは、調査対象施設の平均値を算出したもの。）

上下水道料金と比較して、水量規模の増加に比例して雑用水利用コストが低くなる傾向にある。※

（出典）平成19年版 日本の水資源（国土交通省水資源部）

雑用水利用普及阻害要因

設備費（イニシャルコスト） 維持管理費（ランニングコスト）

処理水質レベルの維持

管理体制、管理技術が必要

施設のスペース確保

原水の不足（個別循環）

利用者の意識

費用

水質

その他降水量の季節変動年変動が

大きく不安定（雨水利用）

維持管理費がかかる、個別循環方式における再生水の不足、原水の水量・水質が不安定という課題があげられる。

雑用水利用コストと上下水道料金

7

雨水雨水 利用の事例（東京ドーム）利用の事例（東京ドーム）

屋根に降った雨水を地下貯水槽に貯留し、トイレの洗浄水、災害時の消防用水として活用

洗面・厨房からの雑排水を再生利用する「中水道システム」を採用

ドーム内で使用される水の約１／２をまかなう

雨水利用等による効果

水道用水の大規模な節水を実現

公共下水道への負担軽減（短期間に集中し、かつ、使用量の変動幅が大きな水需要の特徴に対応）

雨水貯留量：3,000m3（うち消火用水常時1,000m3）

中水貯留量：750m3

屋根面積：31,720m2（およそ9,600坪）

東京ドームの雨水貯留システム・中水道システム

東京ドーム全景

（出典）株式会社東京ドームHP（http://www.tokyo-dome.co.jp/）

雨水の利用実績

プロ野球巨人戦

⇒350（m3/day）

プロ野球日本ハム戦

⇒150 （m3/day）

他のイベント

⇒最大500（m3/day）

8

雨水雨水 利用の事例（綾瀬市庁舎他）利用の事例（綾瀬市庁舎他）

2004年8月3,306201.24,405自然沈殿処理、濾過処理、消毒処理水洗トイレ用水明星中学高等学校

2006年7月24021339自然沈殿処理散水用水野田市総合公園 陸上競技場

1993年7月9,9151,4546,693濾過処理、消毒処理水洗トイレ用水、冷房用水中野区もみじ山文化センター 本館

2005年4月2,144624,220濾過処理、自然沈殿処理、消毒処理水洗トイレ用水政策研究大学院大学

2003年12月2,735901,443濾過処理、消毒処理水洗トイレ用水大妻中学高等学校

1996年11月7,7734204,181自然沈殿処理、消毒処理水洗トイレ用水、冷房用水、修景用水綾瀬市庁舎

利用水量（㎥／年）

貯留槽容量（㎥）

集水面積（㎡）

処理方式

利用開始時期

雨 水利用用途名 称

（2007年2月時点、水量は2005年実績値）

綾瀬市庁舎（神奈川県）配水系統図

雨水貯留槽に雨水がない場合、抑制槽から貯留槽へ雨水を移送して治水対策と雨水利用を両立して運用

雨水利用

治水対策

両立

（出典）平成19年版 日本の水資源（国土交通省水資源部）

・公共施設等で雨水を水洗トイレ用水等に利用・綾瀬市庁舎では、雨水貯留槽とは別に流出抑制を目的とした雨水抑制槽を設置・雨水抑制槽に雨水があり、かつ雨水貯留槽に雨水が無い場合は雨水を抑制槽から貯留槽に移送して利用

9

河川維持用水32%

修景用水25%

融雪用水22%

事業所・工場への直接供給

7.8%

水洗トイレ用水（中水道・雑用

水道等） 3.4% 農業用水5.9%

道路等の散水 0.14%

植樹帯散水 0.68%

工業用水道への供給 1.4%

親水用水1.7%

平成14年

計約64,800万㎥／年

農業用水

46％

修景・ため池

21％

地下水涵養

9％

レクリエーション用ため池 5％

その他／混合利用

4％

野生生物の生育環境4％

海水浸入防止5％

工業利用5％

日本（2005年度） 米国カリフォルニア州（2002年）再利用量［万㎥／年］

平成17年

計約19,600万m3／年

資料：国土交通省下水道部 出典：WATER REUSE

下水処理水下水処理水 再利用の状況（海外との比較）再利用の状況（海外との比較）

（出典）下水処理水の再利用のあり方を考える懇談会（国土交通省下水道部） 資料をもとに水資源部で作成

・日本の下水処理水の再利用量は約19,600万m3/年（再利用率にして約1.4％）

・日本は河川維持用水、修景用水等への利用が多いが、カリフォルニア州では農業用水への利用が最も多い。

10

下水処理水下水処理水 海外の事例（米国海外の事例（米国カリフォルニア州）カリフォルニア州）

ＧＷＲＳ（Groundwater Replenishment System）:地下水涵養システムの概要

（処理量 Phase１ 23万6千 m3/日（２００７～） 最終目標 43万8千 m3/日）

（出典）浅野孝（カリフォルニア大学名誉教授）講演資料に基づき国土交通省水資源部で作成

２次プラントでの高度処理

１次プラントからの処理水

涵養池

地下水注入

河川

地下水

飲用水として再利用

・カリフォルニア州オレンジ郡では、渇水対策として間接的な飲用水再利用（地下水涵養システム）を実施・再生水の５０％を地下帯水層に直接注入（海水の侵入防止）・残りの５０％は地表散布により地下水に涵養

11

下水処理水下水処理水 各用途での利用の状況各用途での利用の状況

（出典）下水処理水の再利用のあり方を考える懇談会（国土交通省下水道部） をもとに国土交通省水資源部作成

0 400kmトイレ用水への利用量

(m3／年)

1000000 500000 100000 50000 10000

水洗トイレ用水

関東圏、近畿圏、福岡都市圏等、人口の集中する都市における利用が盛んである。条例等による二重配管や助成による要因が大きいものと思われる。

0 400km工業用途への利用量

(m3／年)

1000000 500000 100000 50000 10000

工業用水

首都圏、中京圏等、工業生産の盛んな都市における利用が目立つ。ただし、個別企業の立地条件（工場と下水処理場の距離など）に依るところが大きく、大口利用者の有無が利用水量の大小の主要要因。

0 400km農業用途への利用量

(m3／年)

1000000 500000 100000 50000 10000

農業用水

現状、渇水が頻発する地域であっても、農業用途での利用の進んでいない理由について、検討が必要である。

環境用水

関東圏、中京圏、近畿圏、福岡都市圏等、人口の集中する都市における利用が盛んである。

0 400km環境用水への利用

(m3／年)

1000000 500000 100000 50000 10000

12

工業用途、農業用途、トイレ用水への供給

年間供給水量

0 400km渇水発生状況

4321

渇水発生状況

8ヵ年以上

４～７ヵ年

２～３ヵ年

1ヵ年

0ヵ年

最近20ヵ年で渇水の発生した状況

0 400km

工業用途・農業用途・トイレ用水への利用量

(m3／年)

1000000 500000 100000 50000 10000

下水処理水下水処理水 再利用の状況（渇水対応）再利用の状況（渇水対応）

（出典）下水処理水の再利用のあり方を考える懇談会（国土交通省下水道部）資料をもとに水資源部で作成

・利用水量と渇水発生状況はある程度の関連は見られるが、明確ではない。・地域内での水のニーズや施設の立地条件などの要因によるところが大きいと思われる

13

＜石塘堰樋土地改良区（熊本市西部）＞＜石塘堰樋土地改良区（熊本市西部）＞昭和昭和5151年から試験田で年から試験田で66年間、さらに現地で年間、さらに現地で33年間の実証実験を行い、対象水田年間の実証実験を行い、対象水田

225ha225ha、対象農家数、対象農家数529529戸が処理水を農業用水として利用開始。戸が処理水を農業用水として利用開始。

資料：熊本市HP、熊本市提供

下水処理水下水処理水 国内の事例（熊本市）国内の事例（熊本市）

・熊本市では、下水処理水の農業用水としての再利用を、実証実験を重ねた後に本格的に開始・現在、全国の下水処理水による農業用水供給量の３分の２を占めている（約７５０万m3/年）

14

再生水を送水再生水を送水約約2000m2000m33／日／日

地下へ浸透地下へ浸透

下水処理水下水処理水 国内の事例（香川県多度津町）国内の事例（香川県多度津町）

下水処理水をため池に送水する水路

農業用のため池に下水処理水が放流される様子

再生水プラント

せせらぎ水路

河川放流

河川放流

河川放流

河川放流

せせらぎ水路

せせらぎ水路

せせらぎ水路親水公園

親水公園

せせらぎ水路

せせらぎ水路

せせらぎ水路

下水処理場

せせらぎ水路

親水公園

農業用溜め池

「地球温暖化と再生水利用」シンポジウム（平成20年1月18日）資料をもとに国土交通省水資源部作成

・香川県多度津町では、下水再生水を活用した節水型まちづくりを推進し、様々な用途に下水処理水を活用・水不足のときには１日あたり2000立方メートルの再生水をため池に放流し、農業用水として使用

・下水再生水は地下水の涵養にも利用されており、国内では先進的な事例

15

・東京２３区では、河川維持用水、水洗トイレ等の雑用水、せせらぎなどの環境用水等、用途に応じ、必要な水質に処理した下水再生水を利用

下水の高度処理水

目黒川などの水源：目黒川などの水源：85,000m85,000m33//日日

落合水再生センター「せせらぎの里」：落合水再生センター「せせらぎの里」：40m40m33//日日

新宿・汐留地区等のトイレ新宿・汐留地区等のトイレ用水：用水：7,000m7,000m33//日日

「ゆりかもめ」の洗浄用水：「ゆりかもめ」の洗浄用水：2,000m2,000m33//日日

清流復活（河川維持用水）清流復活（河川維持用水）

雑用水雑用水

環境用水環境用水

洗浄用水洗浄用水

下水処理水下水処理水 国内の事例（東京都）国内の事例（東京都）

（出典）「地球温暖化と再生水利用」シンポジウム（平成20年1月18日）資料