非痙攣性癲癇重責と 持続脳波モニタリング - jseptic用語の整理 •...
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非痙攣性癲癇重責と 持続脳波モニタリング
2013/7/9 慈恵ICU勉強会
井澤 純一
1
なぜこのテーマか?と質問される前に
• CCMにレビューが出た • 最近,原因不明の意識障害患者で
非痙攣性てんかん重積 (NCSE: nonconvulsive status epilep>cus) の患者がいて,ホットな話題だった?
2
Crit Care Med. 2013;41:1124-‐32.
Agenda
• 言葉の定義 • NCSEの疫学(頻度,予後,CSEとの違い) • cEEGとは? • 各種ガイドラインでは? • NCSEを治療すべきか? • おまけ;BISは有用か?
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用語を整理しよう
4
用語の整理
• Convulsion: 痙攣 – 全身または一部の筋肉の不随意かつ発作的収
縮を示す症候名 • Epilepsy: てんかん – 病名.てんかんの本体は脳波の異常であり,必
ずしも痙攣を伴わない • Seizure: (てんかん) 発作 – てんかんや精神疾患の臨床症状で,てんかんを
思わせる一回のてんかん発作という意味
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てんかん発作 (Seizure) の国際分類
• I. 全般発作 Generalized seizures • 脳全体に過剰興奮が及ぶ発作
– A. 欠神発作 Absences seizures (小発作) – B. 強直間代発作 Tonic-‐clonic seizures (大発作) – C. ミオクローヌス発作 Myoclonic seizures – D. 強直発作 Tonic seizures – E. 間代発作 Clonic seizures – F. 脱力発作 Atonic seizures
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てんかん発作 (Seizure) の国際分類
• II. 部分発作 Par>al seizures • 脳のある一部の過剰興奮によって誘発される発作
– A. 単純部分発作 Simple par>al seizures • 意識障害を伴わない
– B. 複雑部分発作 Complex par>al seizures • 意識障害を伴う
– C. 部分発作から二次性全般化する発作
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発作の病型 (発作型) を分類する
• 脳の一部の発作か全体の発作か – (画像も含めて) 臨床的に推測はできるが,
脳波が局在診断に極めて重要
• 意識障害を伴うか伴わないか – 臨床的に判定する
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発作の原因を分類する
• 特発性てんかん Idiopathic epilepsy – てんかんの原因を精査しても,何ら器質的な原因
が認められないもの
• 症候性てんかん Symptoma>c epilepsy – てんかんを起こす原因が見出されたもの
治療に関連するため,重要なのは発作型
9
Guidelines for the Evalua>on and Management of Status Epilep>cus
Neurocrit Care 2012; 17: 3-‐23
慈恵ICU勉強会 2012/9/18
伊藤 真理子/井澤 純一
再掲
Status epilep>cus (=SE)
• てんかん重積 – 元来は・・・
– 『Status epilep>cus とは持続する発作あるいは発作間欠期に意識が戻らないまま、繰り返し再発をするもの 』
– 『15〜30分の持続する発作をStatus epilep>cus重積状態とする 』 (ハリソン内科学)
11
SEの定義は不明確だった
• 1993年,「30分の持続」から「20分の持続」への短縮が提唱された – the guidelines of the Epilepsy Founda>on of America’s Working Group on Status Epilep>cus
• 1997年,「10分の持続」への短縮が提唱された – N Engl J Med 1998; 339: 792–98.
• 以降,「5分の持続」への短縮が提唱されてきた
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Lancet Neurol. 2006; 5: 246–56.
Neurocri>cal Care Society
• 2012年ガイドライン上のSEの定義
• 5分以上継続する
• 臨床症状 and/or 電気的なseizure ac>vity
• 再発を繰り返すseizure seizureとseizureの間には脳波が戻ることがない
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Neurocri>cal Care Society • 2012年ガイドライン上のSE分類
• Convulsive status epilep>cus (=CSE) – 痙攣を伴うてんかん重積
• Nonconvulsive status epilep>cus (=NCSE) – 痙攣を伴わないてんかん重積
• Refractory status epilep>cus (=RSE) – 難治性てんかん重積
NCSEはEEGでのみ診断できる
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NCSEを発作型分類に当てはめると
• I. 全般発作 Generalized seizures • 脳全体に過剰興奮が及ぶ発作
– A. 欠神発作 Absences seizures
• II. 部分発作 Par>al seizures • 脳のある一部の過剰興奮によって誘発される発作
– B. 複雑部分発作 Complex par>al seizures • 意識障害を伴う
しかしNCSEは厳密に国際分類に当てはめられないことも多い
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Agenda
• 言葉の定義 • NCSEの疫学(頻度,予後,CSEとの違い) • cEEGとは? • 各種ガイドラインでは? • NCSEを治療すべきか? • おまけ;BISは有用か?
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SeizureとSEの頻度
• ばらつきはあるものの,Neurogenic Seizure/ SEはかなりの頻度で発生している
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Crit Care Med. 2013;41:1124-‐32.
Nonconvulsive seizuresの疫学
• Neuro-‐ICUでは,EEGモニタリングが行われる患者の ~34%でnonconvulsive seizures (NCS) あり
• そのうち76%がnonconvulsive SE (NCSE) である • Seizuresの明らかな原因となるものや病歴を除外した
上でも,昏睡患者の8%でNCSが見られる • また,以下の患者でもNCSが見られることが知られて
いる – 意識障害患者の27% – Generalized convulsive SEを止めた患者の48% – 重症頭部外傷 (TBI) 患者の22% – 虚血性脳梗塞患者の6% – 頭蓋内出血患者の28% 18
Neurology 2004;62:1743–8. IF=8.249
Detec%on of electrographic seizures with con%nuous EEG monitoring in cri%cally ill pa%ents
• Objec>ves – cEEGでseizuresが証明される患者群の同定 – 初回seizureを記録するためにcEEGを長期に (24時間
以上) 必要とする患者群の同定 • Design:後ろ向き観察 • Secng:ニューヨーク,コロンビア大学病院 • Subjects – 6.5年間 (1996年6月-‐2002年12月) – subclinical seizuresの発見 OR 原因不明の意識障害の
評価目的でcEEGモニタリングが行われた連続570症例 • Main outcome measure & analysis – Seizuresのリスク因子の評価 19
Neurology 2004;62:1743–8. IF=8.249
Detec%on of electrographic seizures with con%nuous EEG monitoring in cri%cally ill pa%ents
この施設で通常cEEGを行っていた対象患者
1. subclinical seizuresの発見 OR 原因不明の意識障害の評価目的
2. Refractory SEに対して抗てんかん薬持続静注を行っている場合の調節目的
3. ICP上昇に対してPentobarbitalを持続静注している場合の調節目的
今回の研究では上記2)3)は除外 2)3)はNeuro-‐ICUではcEEGモニタリングして当たり前!?
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この施設で通常行われていたcEEGの判読
• 認定electroencephalographer (脳波判読師?脳波判読医?) による 最低1日2回の判読
• Convulsiveかnonconvulsiveかの確認のため, 可能な限りビデオによる確認
Neuro-‐ICUではこれくらい当たり前なのか!?
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• cEEGモニタリングの適応と判断されて施行されたのは,「SAH」と「原因不明の意識障害」が最多
• 全体の19% (110/570) で何らかのseizureがあり,18% (105/570) はNCS,10% (59/570) はNCSEだった
• Seizureの頻度は「てんかん関連」「中枢神経感染」「脳腫瘍」「脳外科術後」の順
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• SeizuresのほとんどがNonconvulsiveであることがわかる
• 最初の24時間のモニタリングで88%が発見 • ただし7%は48時間以降に発見
cEEGによるモニタリングを開始し,初回のSeizureを発見するまでの頻度
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• モニタリング開始時に「昏睡」であるということは,初回seizureを発見するのに24時間以上モニタリングを要するリスク因子となる (OR 4.5, p<0.018)
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• cEEGで発見されたseizuresに対する独立した予測因子 (ロジスティック回帰分析) – 昏睡 (OR 7.7, 95%CI 4.2-‐14.2) – 年齢<18歳 (OR 6.7, 95%CI 2.8-‐16.2) – Epilepsyの既往歴 (OR 2.7, 95%CI 1.3-‐5.5) – cEEGモニタリング前のconvulsive seizures (OR 2.4, 95%CI 1.4-‐4.3)
• Seizuresの発症はリスク因子の数に応じて 0~1つ 18%; 2つ 40%; 3つ 65%; 4つ 88%
25
この研究における著者らの疑問
• Nonconvulsive seizures/ NCSEは,ただのepiphenomena 付帯現象なのか?
• それとも意識障害の原因となる主要な因子なのか?
• 神経傷害や不良な転帰を引き起こすのか?
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NCSEと予後との関連
• Objec>ves: NCSEのmortality, morbidityは 不明
• Design:コホート内ケースコントロール研究 • Secng:米国の大学病院,単施設 • Subjects: 1978年からのEEGデータベースをレ
ビューし,NCSEと診断された最初の100例を抽出
Neurology. 2003;61:1066–73. IF=8.249
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Assessment of acute morbidity and mortality in nonconvulsive status epilep%cus
• NCSE100例のうち,18例が死亡 • 内科疾患に合併した場合の死亡率: 27%
Epilepsyに合併した場合の死亡率: 3% • 原因不明 (Cryptogenic) NCSEのうち,
2名はNCSEそのものが 理由で死亡 (=他に死因が見当たらない)
• EIologyとなる疾患によって,死亡率は大きく異なる
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左:症例数 中央:morbidity 右:mortality
• 重篤な意識障害があると,軽度な意識障害がある場合よりも死亡が多い (39% vs. 7%, P<0.007)
• 合併症があると,合併症がない場合よりも死亡が多い (36% vs. 7%, P<0.002) 29
この研究における著者らの提言
• 合併症を発症したNCSE患者は死亡しやすい – 合併症を認識し,予防することが重要である – 合併症が生じたときには,aggressiveに治療を考慮すべき
である • 元々のてんかんがNCSEの唯一の原因である場合に
は,very aggressiveな治療をルーチンには行わない – Very aggressiveな治療: burst suppression comaを誘導す
るような治療 – NCSEそのものよりも,治療に伴う合併症で死亡する可能
性がある • NCSEが原因としか考えられない死亡例が,2例生じた – このような患者ではaggressiveな治療を行うべきだろう
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Agenda
• 言葉の定義 • NCSEの疫学(頻度,予後,CSEとの違い) • cEEGとは? • 各種ガイドラインでは? • NCSEを治療すべきか? • おまけ;BISは有用か?
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cEEGとは?
• Con>nuous electroencephalography 持続脳波モニタリング
• 文字通り,通常30分間で終了する脳波検査を,より長時間 (24時間) モニタリングすること
用いる電極は通常の脳波と何ら変わりない
BIS (Bispectral index) とは全く異なる
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脳波電極とりつけの国際規格
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• 10-‐20 (電極) 法 ten-‐twenty system – 19か所が決めら
れているが,その全てに取り付ける必要はない
– 奇数:左 偶数:右
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• cEEGを判読 or スクリーニングするためには,基本パターンを知っていないといけない
正常脳波の基本所見
• 安静・閉眼・覚醒時の正常脳波
• 10Hz前後のアルファ律動が主体
• アルファ律動は後頭部優位に出現する
35 cEEGの判読/スクリーニングには,正常脳波パターンを知らないといけない
てんかん性突発波
• CSE,NCSEに関わらず,てんかんの診断価値の高い突発波は – 棘波 spike wave – 鋭波 sharp wave – 棘徐波複合 – 鋭徐波複合
• 眠気睡眠時 (睡眠相の第一段階) はてんかん性突発波の出現頻度が高い時期である
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脳波判読のステップ (私見)
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安静・覚醒・閉眼時
睡眠時
意識障害時
cEEGの適応
• 以下の患者でNonconvulsive seizuresの発見,意識障害の鑑別に – てんかんの既往 – 急性脳損傷 (外傷,梗塞,出血) – 最近のConvulsive SE – 発作性の運動,眼振,ピクつき (twitching, jerking),
吃逆,, • 治療のモニタリングとして – ICP上昇や難治性SEに対して昏睡を誘導中 – 鎮静深度の評価
• 虚血の発見 – SAHのスパズム – Strokeの一部のハイリスク患者で,新たな虚血の発見
• 予後 – 心停止後 – 急性脳損傷後 38
Anesth Analg 2009;109:506–23.
こんな症例を見つけて治療できる
39
3Hzの全般性てんかん形発射 (generalized epilep>form discharges) を伴うNCSE
Lorazepam 1mg投与後てんかん形発射は消失
Anesth Analg 2009;109:506–23.
ICUで遭遇する脳波パターン
• cEEGの判読/スクリーニングでは, 意識障害で生じる脳波パターンを知っておかないといけない
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Agenda
• 言葉の定義 • NCSEの疫学(頻度,予後,CSEとの違い) • cEEGとは? • 各種ガイドラインでは? • NCSEを治療すべきか? • おまけ;BISは有用か?
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cEEGを考慮すべき中枢神経疾患
• Ischemic stroke 脳梗塞 • Subarachnoid hemorrhage クモ膜下出血 • Intracerebral hemorrhage 脳出血 • Trauma>c brain injury (TBI) 外傷性脳損傷 • Post-‐cardiorespiratory arrest 心肺停止後
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Crit Care Med. 2013;41:1124-‐32.
SeizureとSEの頻度
• ばらつきはあるものの,Neurogenic Seizure/ SEはかなりの頻度で発生している
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Crit Care Med. 2013;41:1124-‐32.
脳梗塞ガイドライン2013
• 急性神経学的合併症の治療 • Recommenda>ons, 4. (p51) – 脳梗塞後に繰り返すseizuresは,(脳梗塞以外の)
他の神経学的状況と同じ様に治療するべきである – 抗てんかん薬は個々の患者の特徴に応じて選択
するべきである – Class I; Level of Evidence B,前回ガイドラインから
変わりなし 44
Stroke. 2013;44:870-‐947.
• NCSE, cEEGに関する記載は一切なし
45
Stroke. 2013;44:870-‐947.
動脈瘤性SAHガイドライン2012
• 動脈瘤性SAHに関連したseizuresの管理 • Recommenda>ons – 出血後早期の予防的抗てんかん薬は考慮してもよい
• Class IIb; Level of Evidence B – 抗てんかん薬をルーチンに長期使用することは推奨され
ない • Class III; Level of Evidence B
– 晩期発症のseizureのリスクが存在する場合は,考慮してもよい • すでにseizureを発症した,脳内血腫,難治性高血圧,梗塞,MCA
の瘤 • Class IIb; Level of Evidence B
46
Stroke. 2012;43:1711-‐37.
• 動脈瘤性SAHに関連したseizuresの管理: 本文から抜粋
• 後ろ向き研究で,動脈瘤性SAHに関連した早期seizuresのリスクとして知られているもの – MCA 中大脳動脈の動脈瘤 – SAH clotの厚み – 脳内出血 – 再出血 – 梗塞 – 神経学的にpoor grade – 高血圧の既往
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Stroke. 2012;43:1711-‐37.
• Recommenda>onにはNCSEの記載なし • 本文中には「NCSEは不良な予後のvery strong predictorだった」という報告を紹介している
• NCSEに関する記載はこれのみ • cEEGに関する記載なし
48
Stroke. 2012;43:1711-‐37.
脳出血ガイドライン2010
• Seizuresと抗てんかん薬 • Recommenda>ons
– 臨床的なseizuresは抗てんかん薬で治療するべきである • Class I; Level of Evidence: A
– 脳出血患者で脳損傷の程度に合わない意識障害が存在すれば,cEEGモニタリングの適応の可能性がある • Class IIa; Level of Evidence: B
– 意識変容があり,EEG上seizuresが見つかれば,抗てんかん薬で治療するべきである • Class I; Level of Evidence: C
– 予防的な抗てんかん薬は使用するべきでない • Class III; Level of Evidence: B
49
Stroke. 2010;:2108-‐29.
• Objec>ves – 脳出血患者におけるEEG上のseizuresの頻度,意義を調
べる • Design:後ろ向きコホート研究 • Secng:コロンビア大学病院,単施設 • Subjects: – 1998年1月から2006年9月までの非外傷性・非SAH性脳出
血患者で,最低12時間以上cEEGモニタリングを行った成人102症例
• Exposure:Main outcome measure & analysis – 「脳波上のseizures」,「周期性てんかん形発射 (PEDs)」,
「退院時のpoor outcome」と関連する因子の測定
50
Seizuresは血腫拡大と関連 Electrographic seizures and periodic discharges
a=er intracerebral hemorrhage Neurology. 2007;69:1356–65.
Seizuresは血腫拡大と関連
• 交絡因子の調整後,24時間後フォローのCTで 30%以上の血腫増大が,唯一脳波上seizuresと関連 (OR 9.5, CI 1.7-‐53.8)
• 周期性てんかん形発射 (PEDs: periodic epilep>form discharges) は退院時poor outcomeと関連 (OR 7.6, CI 2.1-‐27.3)
51
Neurology. 2007;69:1356–65.
外傷性脳損傷 (TBI) ガイドライン2007
• An>seizure prophylaxis • Recommenda>ons • B. Level II – 晩期発症のPTS (poskrauma>c seizures) の予防目的
でフェニトインやバルプロ酸を使用することは推奨されない
– 抗てんかん薬は,早期発症のPTS (受傷7日以内) の発生を減らす目的では適応となる
– ただし,early PTSと予後悪化の関連性は示されていない
52
J Neurotrauma 2007;24(supp 1):S83-‐S86.
Guidelines for the Management of Severe Trauma%c Brain Injury: 3rd edi%on
TBI後のNCSはICP上昇と関連
• Objec>ves: – 外傷後NCSがICP上昇を引き起こすかを調べる
• Design:後ろ向きコホート研究 • Secng:カリフォルニア大学病院,単施設 • Subjects:中等度から重度TBI (GCS 3-‐13) で患者20例 – cEEG上Seizuresが見られた10症例 vs. マッチングした,seizuresが見られなかった10症例
• Exposure:seizuresの有無 • Main outcome measure & analysis – ICP上昇との関連
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Nonconvulsive electrographic seizures a=er trauma%c brain injury result in a delayed, prolonged increase in intracranial pressure
and metabolic crisis Crit Care Med. 2007;35:2830–6.
• Seizuresを生じた患者群の平均ICPが高かった
• Seizuresを発生した10例のうち,8例がNonconvulsive seizures/ NCSEだった
• 7日間の平均ICP: 17.6mmHg vs. 12.2mmHg; P<0.001
• 7日間でICP>20mmHgを超えている時間: 32% vs. 6%; P<0.02)
• Seizure前後のICP: 発作前12時間の平均 9.6mmHg vs. 発作後12時間の平均 22.4mmHg, P<0.002
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Crit Care Med. 2007;35:2830–6.
Seizures(+)
Seizures(-‐)
ACLSガイドライン2010
• 蘇生後のSeizure Control – Treatment Recommenda>on
• ROSC後seizuresの予防・治療に関するデータは不十分である
– cEEGが有用かどうかは,今後更なる研究が必要
55
CirculaIon. 2010;122(16 Suppl 2):S345-‐421.
Burst suppression
• MalignantなEEGパターン (burst-‐suppression, flat-‐line) は予後不良を予測 56
内科系意識障害患者では?
• Objec>ves: – Primary acute neurologic condi>onを除いた内科ICUにおいて,
脳波上のseizures,周期性同期発射と予後との関連を調べる • Design:後ろ向きコホート研究 • Secng:コロンビア大学病院内科ICU,単施設 • Subjects:
– 2004年7月-‐2007年1月に入室し,acute neurologic condi>onが明らかでなく,seizuresの可能性があるか意識変容の精査目的でcEEGを行われた連続201症例
• Exposure: 脳波上のseizures,周期性同期発射の有無 • Main outcome measure & analysis
– Poor outcome (退院時死亡 OR 植物状態 OR 重篤な障害)
57
Con%nuous electroencephalography in the medical intensive care unit
Crit Care Med. 2009; 37:2051-‐6.
• 年齢,昏睡,臓器不全で調整した後でも, 脳波上のseizures,周期性てんかん形発射は退院時死亡,重篤な障害に関連 58
Crit Care Med. 2009; 37:2051-‐6.
病態別cEEGモニタリングの意義
• 病態に応じて判断するべきか? 59
Crit Care Med. 2013;41:1124-‐32.
Agenda
• 言葉の定義 • NCSEの疫学(頻度,予後,CSEとの違い) • cEEGとは? • 各種ガイドラインでは? • NCSEを治療すべきか? • おまけ;BISは有用か?
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Convulsive SEは早期に治療するべき?
• Objec>ves: – SEは生命を脅かす病態だが,初期治療に最良の薬剤が何かは明ら
かでない • Design:二重盲検,4群間RCT • Secng:22施設 • Subjects:SEを呈した518症例
(384例:Convulsive SE, 134例:Nonconvulsive SE) • Interven>on:
– ジアゼパム (0.15 mg/kg) + フェニトイン (18 mg/kg) vs. – lorazepam (0.1 mg/kg) vs. – phenobarbital (15 mg/kg) vs. – フェニトイン (18 mg/kg)
• Main outcome measure & analysis – 薬剤投与開始から20分以内に,臨床的にもEEG上もseizure活動が止
まり,20-‐60以内に再発しない場合を治療の成功と定義
61
A COMPARISON OF FOUR TREATMENTS FOR GENERALIZED CONVULSIVE STATUS EPILEPTICUS
N Engl J Med 1998;339:792-‐8.
62
• Per-‐protocol解析で • CSEの患者群では,
治療薬によって成功率が異なった (P=0.02)
• 群間で見ると, Lorazepamはフェニトインよりも成功率が高かった(P=0.002<0.01)
• NCSEの患者群では, 違いを見出せなかった
• この効果は薬そのものの効果というよりは,薬剤投与が完了する速さに関係している可能性
• できるだけ早く止める事が,止まりやすさに関係している?
Overt = Convulsive SE Subtle = Nonconvulsive SE
N Engl J Med 1998;339:792-‐8.
Convulsive SEは早期に治療するべき?
• Objec>ves: – パラメディックによる院外ベンゾジアゼピン投与が安全・有効かは不明
• Design:二重盲検,3群間RCT • Secng:サンフランシスコ公衆衛生部門のパラメディック • Subjects:
– Convulsive seizuresが5分以上持続した OR 全般性CSEを繰り返した成人205例
• Interven>on: – ジアゼパム静注 (5mg) vs. Lorazepam静注 (2mg) vs. プラセボ
• Main outcome measure & analysis – 患者の意識が戻っていれば,SEは止まったと判断 – 以下の場合はSEが継続していると判断
• 臨床的seizuresは止まっているが,昏睡 AND 脳波上のseizure ac>vityが継続している状態
• 意識障害が継続し,抗てんかん薬による治療を必要とするconvulsive seizuresを反復している
– Primary outcome: 救急部門到着時にSEが止まっているか 63
A COMPARISON OF LORAZEPAM, DIAZEPAM, AND PLACEBO FOR THE TREATMENT OF OUT-‐OF-‐HOSPITAL STATUS EPILEPTICUS
N Engl J Med 2001;345:631-‐7.
• 救急部門到着時にSEが止まっていた割合 – Lorazepam 59.1%; ジアゼパム 42.6%; プラセボ 21.1% (P=0.001)
• 研究後の呼吸・循環合併症を生じた割合 – Lorazepam 10.6%; ジアゼパム 10.3%; プラセボ 22.5% (P=0.08)
• 死亡率 – Lorazepam 7.7%; ジアゼパム 4.5%; プラセボ 15.7% (P=0.08) 64
• 投薬がはやく完了 する薬剤ほど, 成功率が高い
• (少なくともCSEは) はやく止めるほど,はやく止まる
• 動物実験モデルでも,SEは時間が経てば経つほど,止まりにくくなる事が知られている – GABA受容体が消失→ベンゾジアゼピンへの反応性
低下 – たとえconvulsive ac>vityが存在しなくても,神経消失
をきたす – 過剰な神経発火の結果から,細胞死を引き起こす
65
N Engl J Med 1998;339:792-‐8.
Time is Brain?
66
Lancet Neurol. 2006; 5: 246–56.
Guidelines for the Evalua%on and Management of Status Epilep%cus
• Convulsiveだろうが Nonconvulsiveだろうが, 5分以上続くseizureはSEと定義
• CSEだろうがNCSEだろうが, SEは治療すべき
最近のガイドラインでは
Neurocrit Care. 2012;17:3–23.
Guidelines for the Evalua%on and Management of Status Epilep%cus
Neurocrit Care. 2012;17:3–23. • Summary of cEEG Recommenda>ons
1. SEの治療には通常,cEEGが必要 – strong recommenda>on, very low quality
2. Seizuresがongoingで持続していると疑われる場合,cEEGモニタリングをSE発症1時間以内に開始するべき – strong recommenda>on, low quality
3. 昏睡患者でNCSEを評価する目的の場合,cEEGモニタリング期間は少なくとも48時間 – strong recommenda>on, low quality
4. ICU secngでEEGを判読する者は,cEEGの解釈に特に訓練を受けているべきである – strong recommenda>on, low quality
最近のガイドラインでは
NCSEを治療すべきか?
• 外傷性脳損傷や脳出血では,NCSEやseizuresが死亡リスクと関連
• ある研究では,元々てんかんの既往があり,抗てんかん薬が治療域に達せずにNCSEを発症した患者の死亡率は3%
• 二次的な原因からNCSEを発症した患者では,死亡率はかなり高くなる (27%)
• 死亡に関与するのは,seizuresそのものというより,背景疾患そのものである可能性
69
Crit Care Med. 2013;41:1124-‐32.
NCSEを治療すべきか?
• NCSEに対する前向き介入研究が存在しない • CSEとNCSEを同じ様に論じていいのかわから
ない
• 他に意識障害の原因が明らかでなく,気道・循環を安全に保てるのならば,現状では治療に向かうしかないか...
70
Agenda
• 言葉の定義 • NCSEの疫学(頻度,予後,CSEとの違い) • cEEGとは? • 各種ガイドラインでは? • NCSEを治療すべきか? • おまけ;BISは有用か?
71
BISをcEEG的に使えるか?
• 難治性SEの治療ゴールは, 臨床的 (convulsive) にも脳波上 (nonconvulsive) も, あらゆるてんかん性活動を消失させること
• そのためには,EEG上Burst suppresion (BS) を誘導する程度まで深い鎮静を要する事が多い
• このためにcEEGモニタリングが必要となるが,施設によっては実施が難しい
• SEの治療中にBISを用いたという報告は,case reportsがいくつかあるのみ
• ICUで難治性SEで入室した成人10症例が,cEEGとBISモニタリングを同時に行った
72
Can BIS monitoring be used to assess the depth of propofol anesthesia in the treatment of refractory status epilep%cus?
Epilepsia. 2010;51:1580-‐6. IF=3.909
• (A) 53歳 CSEの治療のためICUでPropofolによる麻酔を開始 cEEG上Burst suppressionパターンが1分間に3つ見られる 平均BIS値は23で, 平均suppression ra>oは44%
• (B) 56歳
CSEの治療のためICUでPropofolによる麻酔を開始 cEEG上Brust suppressionパターンが1分間に3つ見られる 平均BIS値は7で, 平均suppression ra>oは81%
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• Burstの回数とBIS値は相関する • Burstの回数とSuppression ra>o (SR) は相関する
• Burst suppressionを誘導するほど深い鎮静下では,鎮静度のモニターとしてBISは有用かもしれない
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cEEG上のBurstが増えるほど BIS値は上昇
cEEG上のBurstが増えるほど, Suppression raIoは減少
まとめ
• 用語は正しく使用するべき – 何でもかんでも「けいれん」って言ってませんか?
• NCSEの疫学 (頻度,予後) – 予後は病態によって大きく異なる
• cEEGとは? – 手を出すなら脳波の基本を知らないといけない
• 各種ガイドラインでは? – 多くのガイドラインでNCSEやcEEGについて言及していない
• NCSEを治療すべきか? – 「治療しないでよい」という根拠が示されないのならば,
治療するのが妥当か? • おまけ;BISは有用か? – 難治性SEのコントロールという,特殊な状況ではありかも
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