技術士総合技術監理部門 平成20年度記述式問題 7つの鉄則...
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付録
技技術術士士総総合合技技術術監監理理部部門門
平平成成 2200 年年度度記記述述式式問問題題 77つつのの鉄鉄則則 適適用用例例 Ver1.1
目 次
1 平成 20 年度記述式問題 問題文 .......................................................................... 1
2 答案作成の考え方 .................................................................................................... 2
【鉄則1】パニックを乗り越えてスケジュールを立てる ........................................... 2
【鉄則2】問題のテーマ・付帯条件をブレイクダウンする ....................................... 3
大テーマの把握 .............................................................................................................. 3
問題(1)大テーマのブレイクダウン ....................................................................... 3
問題(2)大テーマのブレイクダウン ....................................................................... 5
問題(3)大テーマのブレイクダウン ....................................................................... 6
【鉄則3】テーマに対応した答案フレームを構築する ............................................... 8
【鉄則4】答案イメージは図で膨らませる ................................................................. 10
答案ロジックフローの作成......................................................................................... 10
答案アウトラインの作成............................................................................................. 11
細部イメージの作成 .................................................................................................... 14
答案イメージ図の作成................................................................................................. 25
【鉄則5】トレードオフの課題に触れる ..................................................................... 26
【鉄則6】答案ロジックは見出しに対する短答で構築する ..................................... 28
問題(1)のロジック構築 ........................................................................................... 28
問題(2)のロジック構築 ........................................................................................... 30
問題(3)のロジック構築 ........................................................................................... 32
【鉄則7】答案は行数・レイアウトを調整して記述する ......................................... 34
問題(1)の行数・レイアウト調整 ........................................................................... 34
問題(2)の行数・レイアウト調整 ........................................................................... 35
問題(3)の行数・レイアウト調整 ........................................................................... 35
答案の書き下し ............................................................................................................ 35
3 答案例 ...................................................................................................................... 36
‐1‐
1 平成 20年度記述式問題 問題文
平成 20 年度の総合技術監理部門必須科目の出題文は以下のとおりである。
1 時~4時 30 分
Ⅱ-2 次の問題について解答せよ。(指示された答案用紙の枚数以内にまとめること。)
総合技術監理は、業務に潜在するリスクの抽出と対応を行いながら得るべき利得の最大化
を目指すため、場合により相反する側面を総合技術監理の視点から適切に考慮し、最適な
総合的判断とその実行を推進することが求められる。この要求に答えるためには、事業や
プロジェクトの遂行において、複数の観点からその望ましい遂行の姿を明確にして、その
実現のための障害の可能性を5つの管理分野にわたって考慮し、適切な対処を行う必要が
ある。
このような観点を踏まえて総合技術監理の視点から、あなたが現在担当している、あるい
は過去に担当した事業又はプロジェクトを念頭に置いて、その望ましい遂行のあり方につ
いて、以下の(1)~(3)の問題に答えよ。ここでいう総合技術監理の視点とは、「経済性
管理」「安全管理」「人的資源管理」「情報管理」「社会環境管理」の5つを言う。
(1)あなたが検討の対象とする事業又はプロジェクトの概要とその望ましい事業遂行及び
管理の目標を、答案用紙1枚にまとめよ。その際、「総合技術監理では、事業やプロジェク
トの成果や要求事項及びプロセスのあるべき姿を明確にして、その目標とする状況を確保
するために必要十分な事項を管理していく」という観点を重視して、目標を設定せよ。な
お、取り上げる業務は、あなたが直接関与していない他業種の業務であっても十分見解を
述べられるものであれば取り上げても良い。
(2)(1)で挙げた目標を達成できない可能性をリスクとして総合技術監理の5つの視点の
うち3つについて、その対象とした事業やプロジェクトに即して具体的に記述せよ。
その際、「社会環境管理」「経済性管理」については必ず記述し、あとの1つは自分で選択
して記述せよ。解答は、答案用紙2枚にまとめよ。
なお、「リスク分析は、管理分野ごとに求められるそれぞれの要求事項を確実に照査し、存
在するリスクの抽出を体系的に行うと共にその根本原因を把握することが重要である」と
いう観点を重視して、記述せよ。
(3)上記で把握されたリスクの顕在化を未然に防止し、事業又はプロジェクトのマネジメ
ントを最適化するための方策について、総合技術監理の視点を用いて答えよ。解答は、答
案用紙2枚にまとめよ。
その際、「リスクへの対応は、リスクの分析に基づき、対策効果の有効性及び反映すべき要
求事項に対する可能な限りの対応を総合的に検討して内容を決定する。そのことにより、
マネジメントの最適化を図り、事業又はプロジェクトの目標を達成する。」という総合技術
監理の観点にも充分留意して、記述せよ。
‐2‐
2 答案作成の考え方
【鉄則1】パニックを乗り越えてスケジュールを立てる
平成 20 年度の問題も、かなりの難問だ。
二度ほど問題文の一語一語を拾うように読んで、まずもっとも時間のかかる鉄則7に
ついて考えてみる。
答案用紙は 5 枚で、合計 3000 字もの長文を書き綴らなくてはならない。丁寧に字を
書き切ることや、書き間違い、手の疲れなどを勘案すると、やはり一枚について 30分は
欲しいところだ。したがって、およそ 30 分/枚とすると、この平成 20 年度の記述式問題
の場合、答案用紙は5枚となっているので、5枚×30分/枚=150分 ということに
なる。
論文としてのネタをすべて出して整え終えた後、それを答案用紙に落としていく作業
だけで、優に2時間半はかかってしまいそうだ。これはすなわち、それ以外の鉄則2~
6にもとづく作業は 60分の中で全て終えなければならないということになる。
ただ、逆に考えると、答案用紙に文章を書き始めるまで1時間ものゆとりがあるとい
うことでもあるので、こう考えるとずいぶんと気が楽だ。
そして、残りの作業のうち、鉄則4のイメージ図の作成と鉄則6のロジック構築には
慎重を期して全体の半分を割くとして各々15 分、そして鉄則3の答案フレームの構築、
鉄則5のトレードオフネタの追加についてはあまり時間を要さないため各々5 分、鉄則
2のテーマのブレイクダウンには 10 分を各々割り当てることとした。
0 分 鉄則1 スケジュールを立てる 10 分間
10 分 →PM1:10 まで
鉄則2 テーマのブレイクダウン →PM1:20 まで 10 分間 20 分
→PM1:25 まで 5 分間 25 分
鉄則3 答案フレームの構築
→PM1:40 まで 15 分間 40 分
鉄則4 答案イメージ図の作成
→PM1:45 まで 5 分間 45 分
鉄則5 トレードオフのネタ追加
→PM2:00 まで 15 分間 60 分
鉄則6 ロジック構築
→PM2:30 まで 30 分間 90 分
鉄則7 答案記述(問題1)
→PM3:30 まで 60 分間
150 分
鉄則7 答案記述(問題2)
→PM4:30 まで 60 分間
210 分
鉄則7 答案記述(問題3)
‐3‐
【鉄則2】問題のテーマ・付帯条件をブレイクダウンする
大テーマの把握
問題全体が“結局のところ、何を問うているのか。そのような眼で改めて平成 20 年
度の問題を見て、問題(1)~(3)の大テーマを把握する。
最初の問題(1)では「概要」と「目標」を、問題(2)では「リスク」を、そして問
題(3)では「方策」を求めている。問題のテーマがこうなのだから、答案も問題(1)
は概要と目標、問題(2)はリスク、問題(3)は方策、これらを主題にしたものに整っ
ていなければならない。
逆に考えると、これ以外は求められていないので、余計なことは書かないように注意
しなければならない。
問題(1)大テーマのブレイクダウン
これは簡単だ。まず、「事業の概要は?」と「事業遂行・管理の目標は?」という二つ
の中テーマにブレイクダウンすることができる。
では、これら二つの中テーマについて、さらに小テーマにブレイクダウンしていこう。
� 中テーマ「事業の概要は?」のブレイクダウン
“概要”というくらいだから、事業の全体像がおおまかに表現されていればいいだろ
う。したがって、
・一言で言うと・・・という事業である
・業務の背景、意義は・・・という事業である
・総合技術監理の観点からいうと・・・という特徴のある事業である
という構成で端的にまとめればよいだろう。
ただし、この平成 20 年度の問題は、問題(2)で5つの管理のうち3つについて述べ
ることになっているので、この「事業の概要は?」の記述内容がそれらの“前フリ”の
位置付けになる。これを忘れないようにしなくてはならない。
� 中テーマ「事業遂行・管理の目標は?」のブレイクダウン
無論、これも「事業遂行の目標は?」と「事業管理の目標は?」の二つの小テーマに
分けられる。ただし問題(1)には、この目標設定について次の条件が付帯されている。
この付帯条件も、長い分、次の二点にブレイクダウンできそうだ。
問題(1)大テーマ:事業の概要と事業遂行・管理の目標は?
問題(2)大テーマ:目標を達成できなくする可能性のあるリスクは?
問題(3)大テーマ:マネジメントを最適化する方策は?
「総合技術監理では、事業やプロジェクトの成果や要求事項及びプロセス
のあるべき姿を明確にして、その目標とする状況を確保するために必要十
分な事項を管理していく」という観点を重視して、目標を設定せよ。
‐4‐
・事業の成果や要求事項及びプロセスのあるべき姿を明確にする
・その目標とする状況を確保するために必要十分な事項を管理していく
「事業遂行の目標は?」「事業管理の目標は?」という小テーマに対する答案には、
この付帯条件をきちんと反映させなければならない。
そして、この二点の付帯条件のうち、後者は明らかに「事業管理の目標は?」という
小テーマに関連がありそうで、前者も「事業遂行の目標は?」と関連していそうであり、
しかも前者の付帯条件はさらにブレイクダウンできそうだ。
このように、小テーマ「事業遂行の目標は?」に解答するには、
・「事業の成果」のあるべき姿とは?
・「事業の要求事項」のあるべき姿とは?
・「事業のプロセス」のあるべき姿とは?
という事項について解答すれば良い、ということになる。
一方、小テーマ「事業管理の目標は?」に解答するには、
・(目標とする状況の確保に)必要十分な事項とは?
という質問に対する答えを用意し、「これらを管理していく」とすれば良いだろう。
以上のように、問題(1)の大テーマをブレイクダウンして、次の中小テーマに整理する
ことができた。
(1)事業の概要と事業遂行・管理の目標は?
(1)-1 事業の概要は?
(1)-1-1 一言で言うと?
(1)-1-2 業務の背景、意義は?
(1)-1-3 総合技術監理の観点から言うと?
(1)-2 事業遂行・管理の目標は?
(1)-2-1 事業遂行の目標は?
・「事業の成果」のあるべき姿とは?
・「事業の要求事項」のあるべき姿とは?
・「事業のプロセス」のあるべき姿とは?
(1)-2-2 事業管理の目標は?
・管理すべき必要十分な事項は?
事業遂行の目標
・事業の成果
・要求事項
・プロセス
目標とする状
況の確保に必
要十分な事項
これらの
あるべき姿を
明らかにする
これらを
管理していく 事業管理の目標
‐5‐
問題(2)大テーマのブレイクダウン
問題(2)の大テーマ「目標を達成できなくする可能性のあるリスクは?」について
は、簡単すぎてこれそのものを分解することに意味はなさそうだ。
しかし、問題(2)にも次のような条件が付帯されている。
この付帯条件を模式図で示すと、以下のとおりとなる。
さらに、付帯条件は次のようなものも続く。
したがって、これもブレイクダウンしていこう。
すると、次のようになる。
この付帯条件では、三つの管理の観点を記述することが求められており、しかもその
うち一つは自ら選択することを求められている。さらに、各々要求事項、存在するリス
ク、そしてその根本原因について記すよう要求されている。
ここまでは文章を分解しただけだ。
なお、自ら選択する管理分野についてはひとまず“○○管理”としているが、これを
適当に選ぶよりは、きちんとその選択する理由を示したほうが絶対に気が利いているだ
ろう。したがって、ここでもう一つ、小技を効かそうということで、ロジックツリーの
小テーマの○○管理のところに「選択理由は?」という小テーマを追加することにした。
ただし、この点は一言触れれば良いので独立した見出しは必要ないだろう。
このようにして出揃った小テーマは、相互の並びについても確認する。
この付帯条件の場合、中テーマはパラレルに並べても問題ないが、小テーマについて
「社会環境管理」「経済性管理」については必ず記述し、あとの1つ
は自分で選択して記述せよ。
「リスク分析は、管理分野ごとに求められるそれぞれの要求事項を確
実に照査し、存在するリスクの抽出を体系的に行うと共にその根本原
因を把握することが重要である」という観点を重視して、記述せよ。
・ 社会環境管理上のリスクは?
・ 経済性管理上のリスクは?
・ ○○管理上のリスクは?
目標を達成できなくする
可能性のあるリスクは?
社会環境管理上
のリスクは?
目標を達成できなくする
可能性のあるリスクは? 経済性管理上
のリスクは?
○○管理上の
リスクは?
・ 要求事項は?
・ 存在するリスクは?
・ 根本原因は?
・ 選択理由は?
・ 要求事項は?
・ 存在するリスクは?
・ 根本原因は?
・ 要求事項は?
・ 存在するリスクは?
・ 根本原因は?
大テーマ 中テーマ 小テーマ
‐6‐
はきちんと順番どおりに並べなくては読み手の理解が難しくなる。したがって、選択理
由は冒頭に挿入しなくてはならないだろう。
こうして、問題(2)の大テーマをブレイクダウンして次の中小テーマに整理された。
問題(3)大テーマのブレイクダウン
問題(3)の大テーマ「マネジメントを最適化する方策は?」にも次のような付帯条
件がある。
なんとも長いが、ここでもブレイクダウンの鉄則を押し通そう。
この付帯条件は、全体を眺めると、四つに区切ることができそうだ。そして、それら
のつながりも、どうやら順接でよさそうだ。
これをみると、まず問題(2)の答えでもあるリスク分析の結果を踏まえて対策効果
の有効性、要求事項に対する可能な限りの対応について検討し、その上で、リスク対策
の中身を決定した、ということを質問されているようだ。
(2)目標を達成できなくする可能性のあるリスクは?
(2)-1 社会環境管理上のリスクは?
(2)-1-1 要求事項は?
(2)-1-2 存在するリスクは?
(2)-1-3 根本原因は?
(2)-2 経済性管理上のリスクは?
(2)-2-1 要求事項は?
(2)-2-2 存在するリスクは?
(2)-2-3 根本原因は?
(2)-3 ○○管理上のリスクは?
(選択理由は?)
(2)-3-1 要求事項は?
(2)-3-2 存在するリスクは?
(2)-3-3 根本原因は?
「リスクへの対応は、リスクの分析に基づき、対策効果の有効性及び反映すべき
要求事項に対する可能な限りの対応を総合的に検討して内容を決定する。そのこ
とにより、マネジメントの最適化を図り、事業又はプロジェクトの目標を達成す
る。」という総合技術監理の観点にも充分留意して、記述せよ。
・ リスク分析の結果は?
・ 対策効果の有効性は?
・ 要求事項に対する可能な限りの対応は?
・ リスク対応の決定内容は?
マネジメントを
最適化する方策は?
‐7‐
ただ単に文章を分解してみると、このような話になる。
ここでさらに考えてみると、問題(2)では社会環境管理、経済性管理、そして○○
管理からのリスクについて整理している。そして問題(3)の冒頭には「上記で把握され
たリスク・・・」とある。
したがって、マネジメントを最適化する方策について述べるにあたっても、これら 3
つの管理の観点からの分析、検討を示すのが自然だろう。
したがって、次のようにブレイクダウンできることになる。
以上のように、問題(3)の大テーマをブレイクダウンしたことによって、次の中小
テーマまで整理されたことになる。
(3)マネジメントを最適化する方策は?
(3)-1 リスク分析の結果は?
(3)-1-1 社会環境管理の観点からは?
(3)-1-2 経済性管理の観点からは?
(3)-1-3 ○○管理の観点からは?
(3)-2 対策効果の有効性は?
(3)-2-1 社会環境管理の観点からは?
(3)-2-2 経済性管理の観点からは?
(3)-2-3 ○○管理の観点からは?
(3)-3 要求事項に対する可能な限りの対応は?
(3)-3-1 社会環境管理の観点からは?
(3)-3-2 経済性管理の観点からは?
(3)-3-3 ○○管理の観点からは?
(3)-4 リスク対応の決定内容は?
マネジメントを
最適化する方策は?
・ 対策効果の
有効性は?
・ 要求事項に対す
る可能な限りの
対応は?
・ 社会環境管理の観点からは?
・ 経済性管理 〃
・ ○○管理 〃
大テーマ 中テーマ 小テーマ
・ リスク対応の
決定内容は?
・ リスク分析の
結果は
・ 社会環境管理の観点からは?
・ 経済性管理 〃
・ ○○管理 〃
・ 社会環境管理の観点からは?
・ 経済性管理 〃
・ ○○管理 〃
‐8‐
【鉄則3】テーマに対応した答案フレームを構築する
問題(1)は答案用紙 1 枚=25 行で、問題(2)、問題(3)はいずれも 2 枚=50 行で
ある。ここで、一つの見出しに 5行程度として答案の全体量を見積もると、問題(1)は
5 つの見出し、問題(2)、問題(3)は 10 個の見出し、というのがバランスの取れた記
述量ということになる。
そのようなバランスを意識しながら、まず、鉄則2で整理した中小テーマについて、
読みやすい答案フレームを作るという観点でブラッシュアップさせる。
まず、問題(1)のブレイクダウンの中にある「(1)-1-1 一言で言うと?」など、見出
しとしてふさわしくないものは格下げしなくてはならない。
そのほか問題(1)(2)については特に難癖をつけるような部分は見当たらないのだ
が、問題(3)については、すこし引っかかるところがある。というのは、中テーマ4つ
に対して関係する管理が3つもあるのが気になるのだ。各々の中テーマごとに三つの管
理がかかわってくるので、答案のストーリーが輻輳してしまい、わかりにくくなってし
まいそうだからだ。
この問題(3)で記述する内容は、当然、各管理ごとに連続性のある流れになるはず
だ。しかし、中小テーマの順番は3つの管理が輻輳して、その流れを阻害するような構
成になっている。これでは読みにくいだろう。
したがって、まずは問題(3)については、“各管理ごとの方策”を大きなくくりとし
て、その中で各管理ごとにリスク分析の結果等について述べていくことにする。
また、その問題(3)についてもう一点、リスク分析の結果と対策効果の有効性、要
求事項に対する可能な限りの対応とのつながりがしっくりこない。
本来なら、リスク分析をした後は、その結果に基づいて、まずリスク対応の仮説を設
定するべきなのだが、それがこの中小テーマから欠落しているように感じるのだ。
したがって、リスク分析をした後に、最適化方策の仮説としての“対応案”を述べる
必要があるだろう。
また、そこである程度最適っぽい方策を具体的に述べてしまうのなら、敢えて最後に
リスク対応の決定内容は?を述べる必要はないかもしれない。繰り返しになる可能性が
高いからだ。
なお、見出しの数を勘案すると、以上の内容では少し見出しが多めになる。したがっ
て、対策効果の有効性は?と要求事項に対する可能な限りの対応は?はひとつの見出し
にまとめてしまおう。
このようなことを勘案して、次のフレーム(目次)案を作成した。
ここまでで約 20 分。答案用紙はもちろん白紙だ。しかし、答案フレームが完成した
ことで、試験開始当初の混乱状態と比べてかなり精神的にラクになった。
‐9‐
図 2-1 答案フレーム
問題(1)大テーマ:事業の概要と事業遂行・管理の目標は?・・・・・1枚
1.事業の概要
(一言で言うと?)
(業務の背景・意義は?)
(総合技術監理の観点から言うと?)
2.事業遂行・管理の目標
2-1 事業遂行の目標
(「事業の成果」のあるべき姿とは?)
(「事業の要求事項」のあるべき姿とは?)
(「事業のプロセス」のあるべき姿とは?)
2-2 事業管理の目標
(管理すべき必要十分な事項とは?)
1. 社会環境管理の観点からの最適策の検討
1-1 リスク分析の結果
1-2 リスク対応案
1-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討
2.経済性管理の観点からの最適策の検討
2-1 リスク分析の結果
2-2 リスク対応案
2-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討
3.〇〇管理の観点からの最適策の検討
3-1 リスク分析の結果
3-2 リスク対応案
3-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討
(3)大テーマ:マネジメントを最適化する方策は?・・・・・・・・・2枚
1.社会環境管理上のリスク
1-1 要求事項
1-2 存在するリスク
1-3 根本原因
2.経済性管理上のリスク
2-1 要求事項
2-2 存在するリスク
2-3 根本原因
3.○○管理上のリスク
(選択理由は?)
3-1 要求事項
3-2 存在するリスク
3-3 根本原因
(2)大テーマ:目標を達成できなくする可能性のあるリスクは?・・・2枚
‐10‐
【鉄則4】答案イメージは図で膨らませる
答案ロジックフローの作成
ここで再び各問題の大テーマに立ち返り、答案作成の考え方にブレがないようにする。
問題(1):事業の概要と事業遂行・管理の目標は?
問題(2):目標を達成できなくする可能性のあるリスクは?
問題(3):マネジメントを最適化する方策は?
このとき、目標については業務の“あるべき姿”を明確にして、3つの管理の視点から
リスクを考察して、さらに最適な方策について各管理の観点から対策効果の有効性などを
勘案して導く、という具合だ。
これらの答案の流れをより細かくしていったのが、答案フレームだ。
このような答案の流れをひとまず答案ロジックフローとして描いてみる。
図 2-2 答案ロジックフロー
2.事業遂行・管理の目標
2-1 事業遂行の目標
(「事業の成果」のあるべき姿)
(「事業の要求事項」のあるべき姿)
(「事業のプロセス」のあるべき姿)
2-2 事業管理の目標
(管理すべき必要十分な事項)
1-1 要求事項
1-2 存在するリスク
1-3 根本原因
1.社会環境管理上のリスク 1-1 リスク分析の結果
1-2 リスク対応案
1-3 対策効果の有効性・可能な
限りの対応の検討
1.社会環境管理の観点からの
対応策の検討
2-1 リスク分析の結果
2-2 リスク対応案
2-3 対策効果の有効性・可能な
限りの対応の検討
2.経済性管理の観点からの
対応策の検討
3-1 リスク分析の結果
3-2 リスク対応案
3-3 対策効果の有効性・可能な
限りの対応の検討
3.〇〇管理上の観点からの
対応策の検討
問題(1) 問題(2) 問題(3)
2-1 要求事項
2-2 存在するリスク
2-3 根本原因
2.経済性管理上のリスク
(選択理由)
3-1 要求事項
3-2 存在するリスク
3-3 根本原因
3.情報管理上のリスク
(一言でいうと)
(業務の背景・意義は)
(総監の観点から言うと)
1.事業の概要
‐11‐
答案アウトラインの作成
次に、答案ロジックフローを念頭に、答案の屋台骨、すなわち答案アウトラインをどう
描くかについて考える。
このとき、まず経験した事業やプロジェクトから適切なものを選択しなければならない。
経験した事業やプロジェクトの中でどれがもっとも「目標→リスク→対応策」のストー
リーを語りやすいのか、そしてどれがもっとも3つの管理の切り口等から語りやすいのか、
具体的にどう語れるのか、ということをイメージしてみる。
� 対象業務の選択
経験業務の中から最適なものを選ぶにあたって、真っ先に引っ掛かりを感じるのは、
問題文が「社会環境管理」に触れることを求めているという点だ。
これは正直、キツい。
というのは、私が経験した業務は、そのほとんどが計画や調査を中心としたコンサル
タント業務であり、その経歴の中で、実はこの「社会環境管理」を特に強く意識した業
務というのは、心当たりがないからだ。
ただ・・・、何も一番のネックになりそうなこの「社会環境管理」について“立派に”
言及する必要はない。内容は乏しくとも、その観点から業務を適正に管理できていれば
いいはずだ。あとは、5枚という作文量を賄える情報がその業務経験から引き出せるの
であれば、それで問題ない。
このような考えで、私は「技術マニュアルの作成業務」という、コンサルタントとし
てはすこし毛色の変わった業務を選ぶことにする。
正確には「下水道電気設備の設備更新方法に関する技術マニュアルの策定業務」とい
うもので、下水道の処理場やポンプ場に数多く設置されているポンプやブロワなどとい
った機械設備を動かす電気設備について、その設備更新に対する考え方を技術マニュア
ル案としてまとめ、さらに産官学の専門家による技術委員会を開いて技術マニュアルの
内容について具申する業務である。
“なんとか社会環境管理をクリアできそうなのは、これくらいかな・・・”
これがこの時点での私の率直な感想だ。
� 一番ネックになりそうな部分の答案アウトライン
この業務について「目標→リスク→対応策」という答案のアウトラインを考えていく
のだが、まず最初に考えるべき点は、当然、一番ネックになりそうな部分のアウトライ
ンが描けるかどうかだ。その部分についてアウトラインすら引けなさそうなのなら、も
うこの業務では合格レベルの答案は書けない、ということになる。
この場合のネックは、社会環境管理である。いわずもがな、組織やプロジェクトの生
産活動が外部環境に対して与える負荷を低減する、という管理の視点である。
‐12‐
しかし、本業務は技術マニュアルを作成するだけである。廃棄物や排気ガスなどとい
った環境負荷を新たに放出するような、外部環境に大きな影響を与える業務ではない。
しかし、他に社会環境管理にしっかり言及できそうな業務がない以上、仕方がない。
“なんとか社会環境管理の観点からこの業務にアプローチできないか・・・
“なんとかならないか・・・・・・、なんとかならないか・・・・・・・・”
アタマをさんざん悩ませて、いろいろ角度を変えて業務を眺めてみた結果、
電気設備だから・・・当然、電力消費にも関係がある・・・そうか、“省エネ”!
という点に気が付いた。そうすると、そこから
というように急にスルッ!スルッ!と発想が広がっていった。
もっとも、広がった発想は技術業務の成果についてであって、総合技術監理の対象で
ある“技術業務の管理”についてのものではない。
そのような意味で、このような切り口では必ずしも高得点は望めないかもしれない。
しかし、社会環境に対する影響という大きな観点からすると、“技術業務の管理”に
固執して「事務所で紙の節約、電力の節約を図った」などというありふれたことを記述
するよりも、成果品の記述内容の仕方について言及するほうが、余程社会環境に対する
貢献度は高いはずだ。
口頭試験でこの点を指摘されたとしても、そのような大義名分が立つのだから、なん
とかなるだろう・・・。少々強引かもしれないが、ほかに候補もない中、致し方ない。
そうなれば次は、このネタをなるべくうまく「目標→リスク→対応策」のアウトライ
ンの図式に乗せなければならない。
目標はひとまず「電気設備更新時に省エネを実現する」にしてみよう。また、その目
標達成を阻害するリスクとしては、先ほどの着想からすると「マニュアルに省エネの記
載ができなくなる」ということになる。さらにリスクへの対応策としては、ひとまず単
純に「何らかの形で省エネの記載を担保する」ということでよいだろう。
全くもって荒削りだが、このように想像を広げていくと、ネックだった社会環境管理
についての答案のアウトラインが、薄っすらと浮かび上がってきた。
業務が“電気設備”を対象としたものなのだから、電力
消費という形で社会環境と密接な関連があるはずだ!
この業務は“技術マニュアルの策定”なのだから、ここ
での記述の仕方が下水処理場などの電力消費に影響を与
与えるだろうな・・・
だったら、マニュアル策定にあたり“設備更新時の環境
負荷の最小化”を掲げていた、という切り口なら電力消
費の低減というルートから社会環境管理にアプローチで
できる!
‐13‐
図 2-3答案アウトライン(社会環境管理)
� その他の答案アウトライン
残りの二つの管理のうち、一つは経済性管理である。
経済性管理をシンプルに考えると“工期、費用の管理”になるので、これを軸に考え
てみる。
すると、木で鼻をくくったようだが、目標としては「工程・予算を適切に管理する」
でいいだろう。また、その目標達成を阻害するリスクとしては、これまた素朴に「不測
事態の発生に伴う進捗の遅れ、予算不足」ということになる。さらにリスクへの対応策
もまずは「しっかりとした工程管理、予算管理」でよいだろう。
図 2-4答案アウトライン(経済性管理)
もう一つの管理は任意に選ぶことを求められているが、それを情報管理、安全管理、
人的資源管理の中から選ぶにあたって、注意すべき点が一つある。それは、本問題でト
レードオフの課題についての記述を答案中に含めることが求められていることだ。
というのは、この業務に関して社会環境管理に係るトレードオフの課題を持ち出すほ
どの材料が思いつかないために、経済性管理ともう一つ管理との間にそれを持ち込まざ
るを得なかったからだ。
このトレードオフについての考え方は鉄則5でまとめて述べるが、その経済性管理と
のトレードオフの関係ということから、真っ先に「有効かつ効率的な情報収集」という
目標がアタマに浮かんだ。つまり、情報管理だ。
そして、その目標達成を阻害するリスクとして、「時間・予算不足により情報収集が
不十分」ということを連想することができた。さらにそのリスクへの対処は、自ら調査
に赴くだけではなく、メーカーや自治体からも情報を提供してもらうという、「情報収集
方法の双方向化」へと発想が広がっていった。
図 2-5答案アウトライン(情報管理)
目標 リスク 対応策
電気設備更新時に省エ
ネを実現する
何らかの形で省エネの
記載を担保する
マニュアルに省エネの
記載ができなくなる
目標 リスク 対応策
有効かつ効率的な情報
収集
情報収集方法の双方向
化
時間・予算の不足によ
り情報収集が不十分
目標 リスク 対応策
工程・予算を適切に管
理する
しっかりとした工程管
理、予算管理
不測事態の発生に伴う
進捗の遅れ、予算不足
‐14‐
細部イメージの作成
このイメージ作成は、読者の気持ちになって丁寧に、丁寧にイメージを広げていく。
� 問題(1)のイメージ作成
� 「1.事業の概要」の細部イメージ
まず、答案ロジックフローを確認する。
まず、(一言でいうと)について、何の装飾もなく評すると、
・下水道電気設備の更新方法に関する技術マニュアルの策定業務
ということになる。
そして、(業務の背景・意義は)についても考えると、背景は
・電気設備更新について十分な知見がない現状
となり、そのような現状の中で、意義については、
・下水道電気設備の効率的、効果的な更新を実現しようとするもの
というイメージになろう。
また、(総監の観点から言うと)については、後述の各管理の答案イメージを総括し
ての話だが、その前フリとして次の内容にする。
・ 情報管理の観点 :有用な情報を大量に扱う必要がある
・ 経済性管理の観点 :工期が短く業務量は膨大
・ 社会環境管理の観点 :下水道を取り巻く課題を踏まえたマニュアル策定が必要
このようにして、「1.事業の概要」の答案イメージがまとまった。
(一言でいうと)
(業務の背景・意義は)
(総監の観点から言うと)
1.事業の概要
(一言でいうと):
下水道電気設備の更新方法に関する技術マニュアルの策定業務
(業務の背景・意義は):
・下水道電気設備の設備更新方法には十分な知見がない現状
・下水道電気設備の効率的、効果的な更新を広く実現しようと
するもの
(総監の観点から言うと):
・有用な情報を大量に扱う必要がある
・工期が短く業務量は膨大
・下水道を取り巻く課題を踏まえたマニュアル策定が必要
1.事業の概要
‐15‐
� 「2.事業遂行・管理の目標」の細部イメージ
・ 「2-1 事業遂行の目標」の細部イメージ
答案ロジックフローは次のとおりである。
まず、最初の(「事業の成果」のあるべき姿)は、本業務の成果は技術マニュアルの
策定であるから、現場のニーズに応えていなければならないので、
・効率的かつ効果的な電気設備更新が実現する情報を提示している姿
だと考えた。
次に(「事業の要求事項」のあるべき姿)だが、これは技術マニュアルの質という側
面ではなく、広く使われてナンボ、という点を考慮しようと
・マニュアルが広く電気設備更新の現場で利用されている姿
になるとした。
そして(「事業のプロセス」のあるべき姿)であるが、これはすなわち技術マニュア
ル策定作業についての理想の姿であり、また情報を扱う業務についての一般論として
・工期内、予算内で所定の成果を残す姿
・情報セキュリティを確保している姿
だと考えた。
・ 「2-2 事業管理の目標」の細部イメージ
この事業管理の目標というのが・・・非常につかみにくい。
先述の「プロセス」のあるべき姿とどう違うのかが、きわめてわかりにくいのだ。
ウンウン唸りながらしばし両者の違いを考え抜いた結果、“結局のところ、二つはほ
とんど一緒なんじゃないか・・・違うとしても大した違いはないだろう・・・”と思
うに至った。
よって、思考を深追いして時間を浪費するのを止め、先ほどまとめた「プロセス」
のあるべき姿で挙げた内容をそっくりそのまま「事業管理の目標」とすることにした。
この場合、当然フレームも変えなくてはならないが、自分で考えだしたフレームな
のだから、ある程度の柔軟さは持たせてもよいはずだ。
2.事業遂行・管理の目標
2-1 事業遂行の目標
(「事業の成果」のあるべき姿)
(「事業の要求事項」のあるべき姿)
(「事業のプロセス」のあるべき姿)
2-2 事業管理の目標
(管理すべき必要十分な事項)
‐16‐
� 問題(2)のイメージ作成
� 「1.社会環境管理上のリスク」の細部イメージ
答案ロジックフローは次のとおりである。
・ 「1-1 要求事項」の細部イメージ
技術マニュアルであれば、それは広く現場での実務の基本になるべきものであり、
すでに“省エネ”というアウトラインもある。
そのような点を考慮すると、地球温暖化防止の観点から電気設備更新時の環境負荷
を極力低減させる方向性の記述をすることになろう。
すなわち、
・電気設備更新時の環境負荷を極力低減させるマニュアルの記述にすること
が要求される、ということだ。
・ 「1-2 存在するリスク」の細部イメージ
次にリスクについて、アウトラインをベースに直感的に思い浮かんだのは、省エネ
ルギー性能向上という付加価値を実現するには当然コストがかかるので、コスト増と
してユーザーから忌避されることを恐れるあまり、
・環境影響という評価軸がマニュアルで軽視されるリスク
という危険だ。
環境負荷を低減させる高付加価値設備への更新ということは、裏を返せば高付加価
値の名の下でさらなる費用負担を自治体に求めることでもある。
しかし、財政が逼迫している自治体が多い昨今である。老朽化に伴う純然たる更新
すらためらうところを、無理やり高額な高付加価値設備への更新を求められては、設
備更新に伴う環境負荷低減の実現性は乏しくなってしまうだろう。
1-1 要求事項
1-2 存在するリスク
1-3 根本原因
1.社会環境管理上のリスク
2.事業遂行・管理の目標
2-1 事業遂行の目標
(「事業の成果」のあるべき姿):効率的かつ効果的な電気設備更新が実
現する情報を提示している姿 (「事業の要求事項」のあるべき姿):マニュアルが広く電気設備更新の
現場で利用されている姿
2-2 事業管理の目標
(管理すべき必要十分な事項)=(「事業のプロセス」のあるべき姿):
・工期内、予算内で所定の成果を残す姿
・情報セキュリティを確保している姿
‐17‐
だからといって、そうした自治体のおかれた現状を必要以上に 慮おもんばか
ってしまうと、
記述に“手心”が加わり、結果的に環境影響という評価軸が軽視されてしまう恐れが
ある。
これらは、実際、策定中にこんなことを位置づけられたらきっと自治体は嫌がるだ
ろうな・・・、という実感をもとにしたものだ。
・ 「1-3 根本原因」の細部イメージ
このような要求事項とそれに対するリスクであるから、その根本原因としては
・財政逼迫している自治体が多く、記述内容に恣意的な影響を与えかねない状況
ということになろう。
� 「2.経済性管理上のリスク」の細部イメージ
答案ロジックフローは次のとおりである。
・ 「2-1 要求事項」の細部イメージ
経済性管理における要求事項は簡単に済ませよう。
進捗、予算とも、業務である以上、工期内に予算内で業務を完了させること、とな
るだろう。契約で結ばれている関係上、当たり前のことだ。
したがって、
・工期内に予算内で十分な内容の技術マニュアルを策定すること
ということでよいだろう。
・ 「2-2 存在するリスク」の細部イメージ
また、その目標達成を阻害するリスクについては、これも一般論として、
・進捗の遅れなどによって工程・予算が逼迫し、調査が不十分になるリスク
というようにイメージが広がる。
内容を充実させようとするがために情報収集作業に時間をかけすぎて、その影響で
2-1 要求事項
2-2 存在するリスク
2-3 根本原因
2.経済性管理上のリスク
1-1 要求事項:電気設備更新に伴う環境負荷を極力低減さ
せる記述とすること
1-2 存在するリスク:環境影響という評価軸がマニュアル
で軽視されるリスク
1-3 根本原因:財政逼迫している自治体が多く、記述内容
に恣意的な影響を与えかねない状況
1.社会環境管理上のリスク
‐18‐
工程、予算が逼迫してしまうというイメージだ。
・ 「2-3 根本原因」の細部イメージ
また、このような羽目に陥るのは、そもそも当初の工程や予算が数理的手法等によ
って適切に管理されていない場合に、そのような事態に陥ってしまうことが多いだろ
うし、工程の組み換えといった臨機応変な対応も困難だろう。
すなわち、根本原因としては
・不適切な工程管理、予算管理
ということを挙げることができるだろう。
� 「3.情報管理上のリスク」の細部イメージ
答案ロジックフローは次のとおりである。
・ (選択理由)の細部イメージ
前述のとおり、もう一つの管理としては情報管理を選ぶことにした。
そして、答案アウトラインでも述べた通り、良質な情報収集とコスト・工期の二律
背反に着目していくことになるので、ひとまずここは、
・本業務において情報管理は特に注意が必要
として簡単に触れることにした。
・ 「3-1 要求事項」の細部イメージ
充実したマニュアルを作成するには、無論、その内容を担保するだけの有用な情報
をメーカーや自治体から多くかき集めなければならない。
と、ここで、情報管理の基本中の基本のキーワードである「情報セキュリティ」が
脳裏をよぎった。なぜなら、収集する各種情報の中には、本来はメーカーや自治体が
秘匿するに値する内容のものも含まれていたからだ。
ならば情報セキュリティについても言及しないと情報管理として片手落ちだろう。
(選択理由)
3-1 要求事項
3-2 存在するリスク
3-3 根本原因
3.情報管理上のリスク
2-1 要求事項:工期内に予算内で十分な内容の技術マニュ
アルを策定すること
2-2 存在するリスク:進捗の遅れなどによって工程・予算
が逼迫し、調査が不十分になるリスク
2-3 根本原因:不適切な工程管理、予算管理
2.経済性管理上のリスク
‐19‐
このようなことから、要求事項としては、
・マニュアル作成上有用な情報を収集すること
・収集時に情報セキュリティを確保すること
という2点とすることとした。
・ 「3-2 存在するリスク」の細部イメージ
要求事項で挙げたマニュアル作成上有用な情報を収集することについてのリスクは、
・工程・予算の逼迫のため情報収集が不十分となってしまうリスク
を想定し、また、収集時に情報セキュリティを確保することについては、
・企業からの入手データ等が他社等に漏洩するリスク
とした。
このあたりは実際のところそうだったので、直感でサクサクと連想していける。
・ 「3-3 根本原因」の細部イメージ
情報収集が不十分となってしまう根本原因については、まさに実感なのだが、
・情報収集作業を単純に行うと多くの時間を要すること
と整理した。
また、「情報セキュリティの確保」は人為的ミスが中心にあるため、そのものズバリ
・人為的ミス(メールの誤送信など)
これを根本原因だとした。
(選択理由):本業務において情報管理は特に注意が必要
3-1 要求事項:
・マニュアル作成上有用な情報を収集すること
・収集時に情報セキュリティを確保すること
3-2 存在するリスク:
・工程・予算の逼迫のため情報収集が不十分となってし
まうリスク
・企業からの入手データ等が他社等に漏洩するリスク
3-3 根本原因:
・情報収集作業を単純に行うと多くの時間を要すること
・人為的ミス(メールの誤送信など)
3.情報管理上のリスク
‐20‐
� 問題(3)のイメージ作成
� 「1.社会環境管理上の最適案の検討」の細部イメージ
まず、答案ロジックは次のとおりである。
・ 「1-1 リスク分析の結果」の細部イメージ
問題(2)の「1-2 存在するリスク」では「環境影響という評価軸がマニュアルで軽
視されるリスク」という分析を行っている。また、根本原因として「財政逼迫してい
る自治体が多く、記述内容に恣意的な影響を与えかねない状況」というところまで掘
り下げている。
また、このリスクに対する対応案として、答案アウトラインでは「何らかの形で省
エネの記載を担保する」としている。
では、どうやってこの対応を担保するかだが、当時考えていたのは、マニュアルが
“絵に描いた餅”となることを避けるためには、経済性と環境影響の相関性について
ある程度工学的根拠を整理することが必要だろう、ということだ。つまり、
・環境影響と経済性についての工学的評価に基づくことがポイント
というのを、本問題における方策の切り口とする。
・ 「1-2 リスク対応案」の細部イメージ
“工学的”という表現に背かない対応として、実際には、アンケートやヒヤリング
を通じて、多くの自治体から既存設備のイニシャル・ランニングコストおよび電力消
費性能に関するさまざまな“実績”を入手していた。同時に、電気設備メーカーから
も新型設備のコスト、電力消費性能についての情報も収集していた。
これらに基づいて、
・収集データをもとに既存設備、新型設備のコスト、省エネ性能を定量化する
とした。
・ 「1-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討」の細部イメージ
まず、有効性の検討を行う。
このように、工学的評価にもとづいた技術マニュアルには仕上がるため、自治体に
財政上の課題があったとしても、それをまったく無視した更新を実施することは難し
くなる。また、このマニュアルの記述が自治体の予算確保上の重要なカードになるこ
とも考えられるため、結果として幅広く活用されることが期待できるようになる。
このような点で、この対策は有効であるといえるだろう。
つまりイメージとしては、
1-1 リスク分析の結果
1-2 リスク対応案
1-3 対策効果の有効性、可能
な限りの対応の検討
1.社会環境管理の観点からの
対策案の検討
‐21‐
・マニュアルに客観性が担保され実際の更新時に活用されることが期待できる
となる
次に、可能な限りの対応の検討を行う。
可能な限りというのならば、工学的根拠ばかりではなく、根本原因で述べた財政逼
迫している自治体が多く、記述内容に恣意的な影響を与えかねない状況という実情も
勘案した記述内容にすることで、より実効性は担保されるだろう。
これについて、実際には、あらゆる自治体は規模、事業特性、財政状況といった観
点からある程度類型化することができることに着目し、あらゆる自治体をいくつかの
類型に分け、その各々について経済性と環境影響のバランスの観点からもっとも適切
と思われる設備更新方法をパターンとしてあらかじめ提示しておいたのだ。
こうすることで、財政逼迫する一方で電気設備の老朽化が問題となっているような、
いろいろな実情を抱えた全国の各自治体をバランスのとれた設備更新計画へとリード
する道筋が見えてくる。
すなわち、可能な限りの対応の検討のイメージとしては、
・財政逼迫している自治体が多い実情を勘案する
↓
・全国自治体の実態に即した最適更新方法を記述
とすればよいだろう。
以上で、「1.社会環境管理上の観点からの対策案の検討」の細部イメージが完成した。
1-1 リスク分析の結果:環境影響と経済性についての工学
的評価に基づくことがポイント
1-2 リスク対応案:収集データをもとに既存設備、新型設
備のコスト、省エネ性能を定量化する
1-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討:
・マニュアルに客観性が担保され実際の更新時に活用さ
れることが期待できる
・財政逼迫している自治体が多い実情を勘案する→全国
自治体の実態に即した最適更新方法を記述
1.社会環境管理の観点からの対策案の検討
‐22‐
� 「2.経済性管理上の最適案の検討」の細部イメージ
答案ロジックフローは次のとおりである。
・ 「2-1 リスク分析の結果」の細部イメージ
問題(2)の「2-2 存在するリスク」では「進捗の遅れなどによって工程・予算が逼
迫し、調査が不十分になるリスク」がもっとも注意すべきリスクだとしている。さら
に、「不適切な工程管理、予算管理」という根本原因まで遡っている。
また、このリスクに対する対応策として答案アウトラインで「しっかりした工程管
理、予算管理」としている。
ならば、どのような工程管理、予算管理を行うことで柔軟性を持たせるのか。その
答えは、やはり数理的手法に則ることになろう。
したがって、
・数理的手法等による工程管理、作業効率化を念頭においた予算管理に基づくこと
がポイント
とした。
・ 「2-2 リスク対応案」の細部イメージ
数理的手法に基づいた具体的な対応案の中身として、まず、工程管理については、
・クリティカルパス上の作業を重点的に管理
という風に具体化した。
次に予算管理についてであるが、これについては、情報管理とのトレードオフも念
頭においておく必要がある。
このトレードオフについて情報管理のアウトラインの対応策として「情報収集方法
の双方向化」を挙げている。これは、“情報収集作業をこちらから一方的に収集するだ
けではなく、メーカーや自治体側からも有用情報を積極的に提供してもらうよう、い
わば片方向から双方向に変えることで工数削減を図る”ということで、予算とのトレ
ードオフを解消しよう、というものである。
したがって、予算管理の具体的対応案は、
・情報収集活動の効率化
というイメージにした。
・ 「2-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討」の細部イメージ
無論、青本にある数理的手法のような工程管理をしたからといってすべてのリスク
2-1 リスク分析の結果
2-2 リスク対応案
2-3 対策効果の有効性、可能
な限りの対応の検討
2.経済性管理の観点からの
対策案の検討
‐23‐
に対抗できはしない。ただ、こうした基本的な管理方法は、工期内に一定の成果を仕
上げることの前提ではあるだろう。
よって、そのような対策を打っていない状況と比べると、明らかにリスクに対する
耐性が向上しているため、安全性は高くなる。
したがって、イメージとしては、
・作業の遅れが発生してもある程度は工期内でのマニュアル策定が可能になる
とした。
また、作業を効率化できれば、当然、予算は浮くわけであるから、
・予算管理をより安全に実施可能
とすることができる。
以上で、「2.経済性管理上の観点からの対策案の検討」の細部イメージが完成した。
2-1 リスク分析の結果:数理的手法等による工程管理、作
業効率化を念頭においた予算管理に基づくことがポイン
ト
2-2 リスク対応案:
・クリティカルパス上の作業を重点的に管理
・情報収集活動の効率化
2-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討:
・作業の遅れが発生してもある程度は工期内でのマニュ
アル策定が可能になる
・予算管理をより安全に実施可能
2.経済性管理の観点からの対策案の検討
‐24‐
� 「3.情報管理上の最適案の検討」の細部イメージ
答案ロジックフローは次のとおりである。
・ 「3-1 リスク分析の結果」の細部イメージ
問題(2)の「3-2 存在するリスク」では「工程・予算の逼迫のため情報収集が不十
分となってしまうリスク」「企業からの入手データ等が他社等に漏洩するリスク」がも
っとも注意すべきリスクだとしている。さらに、それらについて「情報収集作業を単
純に行うと多くの時間を要すること」「人為的ミス(メールの誤送信など)」という根
本原因まで遡っている。また、このうち情報収集作業の非効率性への対応策として、
答案アウトラインでは「情報収集方法の双方向化」としている。
まず、この情報収集方法の効率化についてのリスク分析の結果としては、
・収集方法の効率化をいかに図るかがポイント
ということで良いだろう。
また、情報漏洩リスクについて、メーカー等の提供元とデータのやり取りをする際
に、誤って関係のない団体へ送付してしまう危険性などが考えられる。
ならば、そうした重要なデータを扱うときは、メールでの軽率なやり取りをできる
限り排除して、より確実な伝達方法を採ればよい。
したがって、情報漏洩リスクについての分析結果としては、
・人為的ミスの存在を前提にすることがポイント
とした。
・ 「3-2 リスク対応案」の細部イメージ
情報収集方法の双方向化については、具体的にはアンケートなどといった手法だけ
に頼らず、マニュアル策定の趣旨を訴えた上で、メーカーや自治体が持つ設備性能や
コスト、設備更新計画などといった内部情報の自主的な提供をできるだけ受けるとい
うスタンスを取ることによって、収集する情報の質を効率的に高めることができる、
というものだ。すなわち、
・アンケート等を主体的に実施する以外に、メーカーや自治体側からも積極的に情
報提供してもらう
というイメージになる。これは前述のトレードオフの課題に直結する部分でもある。
一方の情報漏洩リスクについては、
・入手データはメールでの送受信をせず、郵送・面談時により直接渡すという業務
遂行方針を定める
とした。
3-1 リスク分析の結果
3-2 リスク対応案
3-3 対策効果の有効性、可能
な限りの対応の検討
3.情報管理の観点からの
対策案の検討
‐25‐
・ 「3-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討」の細部イメージ
情報収集方法の効率化については、双方向化によって収集される情報量が大幅に増
えることによって、情報の量を確保しながら工数は削減され所要時間も短縮できる、
という効果が期待される。
一方の情報セキュリティについては、上記対策によってメール誤送信はまず起こら
ないため、情報漏洩についても相当程度回避可能であるといえる。
すなわち、イメージとしては、
・情報収集量が大幅に増えるため情報の質を効率的に高めることが可能
・漏洩リスクはかなり軽減可能
ということになる。
以上で、「3.情報管理上の観点からの対策案の検討」の細部イメージが完成した。
答案イメージ図の作成
答案ロジックフローの中の細部イメージをつなげて、走り書きで答案イメージ図を作る。
3.情報管理上の観点からの対策案の検討
3-1 リスク分析の結果:
・収集方法の効率化をいかに図るかがポイント
・人為的ミスの存在を前提にすることがポイント
3-2 リスク対応案:
・アンケート等を主体的に実施する以外に、メーカーや
自治体側からも積極的に情報提供してもらう
・入手データはメールでの送受信をせず、郵送・面談時
により直接渡すという業務遂行方針を定める
3-3 対策効果の有効性の検討、可能な限りの対応の検討:
・情報収集量が大幅に増えるため情報の質を効率的に高
めることが可能
・漏洩リスクはかなり軽減可能
‐26‐
図 2-6
答案イメージ図
2.事
業遂行・管理の目標
2-1事
業遂行
の目標
(「事
業の成
果」の
あるべき
姿):
効率
的かつ効果
的な電
気設備
更新が
実現
する情報を
提示し
ている
姿
(「事
業の要
求事項
」のある
べき姿
):
マニュア
ルが広
く電気設備更
新の現
場で利用
されて
いる姿
2-2事
業管理
の目標
(管理す
べき必
要十分
な事項
)
=(「
事業
のプ
ロセ
ス」の
ある
べき
姿):
・工期内
に所定
の成果
を残す
こと
・情報セ
キュリ
ティを
確保す
ること
問題(
1)
問題(
2)
2-1要
求事項:工
期内に予算
内で技術
マニュ
アル
を策定す
ること
2-2存
在する
リスク:進捗の遅
れなど
によっ
て工
程・予算
が逼迫
し、調査が不
十分に
なるリ
ス
ク
2-3根
本原因
:不適
切な工程
管理、
予算管
理
2.経済性管理上のリスク
(選択理
由):
本業務におい
て情報管
理は特
に注
意が必要
3-1要
求事項
:
・マニュ
アル作
成上有用な情
報を収
集する
こと
・収集時
に情報
セキュリティ
を確保
するこ
と
3-2存
在する
リスク
:
・工程・
予算の
逼迫のため情
報収集
が不十
分と
なってし
まうリ
スク
・企業か
らの入
手データ等が
他社等
に漏洩
する
リスク
3-3根
本原因
:
・情報収
集作業
を単純に行う
と多く
の時間
を要
すること
・人為的
ミス(
メールの誤送
信など
)
3.情報管理上のリスク
(一言で
いうと
):下水道電
気設備
の
更新
方法に関す
る技術
マニュ
アル
の策
定業務
(業務の
背景・
意義は
):
・下水道
電気設
備の設
備更新
方法に
は
十分な知
見がな
い現状
・下
水道電気
設備の効率
的、効果
的な
更新
を広く実現
しよう
とする
もの
(総監の
観点か
ら言う
と):
・有用な
情報を
大量に
扱う必
要があ
る
・工期が
短く業
務量は
膨大
・下水道
を取り
巻く課
題を踏
まえた
マ
ニュ
アル策定が
必要
1.事
業の概要
問題(3
)
1-1要
求事項:電
気設備更新に
伴う環
境負荷
を極
力低減さ
せる記
述とすること
1-2存
在する
リスク:環境影響
という
評価軸
がマ
ニュアル
で軽視
されるリスク
1-3根
本原因
:財政
逼迫して
いる自
治体が
多く、
記述内容
に恣意
的な影響を与
えかね
ない状
況
1.社会環境管理上のリスク
2-1リスク分
析の結
果:数理
的手法
等によ
る工程
管理、
作業効率
化を念
頭にお
いた予
算管理に
基づくこと
がポ
イント
2-2リスク対
応案:
・クリテ
ィカル
パス上
の作業
を重点的
に管理
・情報収
集活動
の効率
化
2-3対策効果
の有効
性、可能
な限り
の対応
の検討
:
・作業の
遅れが
発生し
てもあ
る程度は工期
内での
マニュ
アル策定
が可能
になる
・予算管
理をよ
り安全
に実施
可能
2.経済性管理の観点からの対応案の検討
3.情報管理上の観点からの対応案の検討
3-1リスク分
析の結
果:
・収集方
法の効
率化を
いかに
図るかがポ
イント
・人為的
ミスの
存在を
前提に
することが
ポイント
3-2リ
スク対
応案:
・アンケ
ート等
を主体
的に実
施する以外
に、メー
カーや
自治体側
からも
積極的
に情報
提供して
もらう
・入手デ
ータは
メール
での送
受信をせず
、郵送・
面談時
により直
接渡す
という
業務遂
行方針を
定める
3-3対
策効果
の有効
性の検討
、可能
な限り
の対応の検討:
・情報収
集量が
大幅に
増える
ため情報の
質を効率
的に高
めること
が可能
・漏洩リ
スクは
かなり
軽減可
能
1-1リスク分
析の結
果:環境
影響と
経済性
につい
ての工
学的評価
に基づ
くこと
がポイ
ント
1-2リスク対
応案:
収集デー
タをも
とに既
存設備
、新型
設備のコ
スト、
省エネ
性能を
定量化す
る
1-3対策効果
の有効
性、可能
な限り
の対応
の検討
:
・マニュ
アルに
客観性
が担保
され実際の
更新時に
活用さ
れること
が期待
できる
・財政逼
迫して
いる自
治体が
多い実情を
勘案する
→全国
自治体の
実態に
即した
最適更
新方法を記
述
1.社会環境管理の観点からの対応案の検討
‐27‐
【鉄則5】トレードオフの課題に触れる
問題文の冒頭の一文に注目したい。『総合技術監理は、業務に潜在するリスクの抽出
と対応を行いながら得るべき利得の最大化を目指すため、場合により相反する側面を総
合技術監理の視点から適切に考慮し、最適な総合的判断とその実行を推進することが求
められる』とある。
この、相反する側面こそトレードオフの課題であり、これを『総合技術監理は・・・』
という言葉から始まる文章で述べている以上、これは、答案の中にトレードオフの課題
とその解決方法をいれるよう示唆している、と思っておいたほうがよいだろう。
ということで、この平成 20 年度の記述式問題についても、鉄則5を適用して、トレ
ードオフのネタを答案に盛り込むことにする。
もっとも、すでに述べているとおり、トレードオフのネタとしては、良質な情報収集
活動とコスト・工期、すなわち情報管理と経済性管理との二律背反である。
“この業務には十分な情報が必要だが、それには時間もお金もかかる”という点に、
当時、まさにアタマを悩ませていたからだ。
トレードオフの課題である以上、その対処法は経済性管理、情報管理の両方でそれぞ
れ対策をバランス良く組み合わせることになる。
このうち、経済性管理側については、まず、オーソドックスに“しっかりした工程管
理、予算管理を行い”そのほかに情報管理側での対策も講じて、その合わせ技でリスク
に対処した、という経験をもとに、下図のようなイメージを整えていった。
解決のポイント : 情報収集不足を補うには収集
方法の双方向化がポイント
↓
解決への考え方 : しっかりとした工程管理・予
算管理をおこなって、一方で
情報管理側の対策を講じ、こ
れらの合わせ技で対応
↓
課題解決の方法 :
・CPM による工程管理、予算管理を実施
・アンケート等を主体的に実施する一方、メー
カーや自治体側からも積極的に情報提供して
もらう
トレードオフの課題トレードオフの課題トレードオフの課題トレードオフの課題
経済性管理経済性管理経済性管理経済性管理 情報管理情報管理情報管理情報管理
様々な技術情報の収
集が必要だが、工期・
予算には限りがある
工期内に予算内で技
術マニュアルを策定
する
マニュアル作成上有
用な情報を収集する
‐28‐
【鉄則6】答案ロジックは見出しに対する短答で構築する
問題(1)のロジック構築
問題(1)であるが、すでに整理してある答案フレームを改めて眺めてみる。
では、これらに沿って答案ロジックを構築していこう。
� 「1.事業の概要」についてのロジック構築
答案イメージ図をもとに細部を詰めていき、文章の流れを意識しながら、次のように
ロジックを構築する。
問題(1)大テーマ:事業の概要と事業遂行・管理の目標は?・・・・・1枚
1.事業の概要
(一言で言うと?)
(業務の背景・意義は?)
(総合技術監理の観点から言うと?)
2.事業遂行・管理の目標
2-1 事業遂行の目標
(「事業の成果」のあるべき姿とは?)
(「事業の要求事項」のあるべき姿とは?)
(「事業のプロセス」のあるべき姿とは?)
2-2 事業管理の目標
(管理すべき必要十分な事項とは?)
1.事業の概要
(業務の背景・意義は?)
下水道電気設備の改築更新方法に関する技術マニュアルの策定業務
(一言で言うと?)
・ これまで下水道処理場やポンプ場の電気設備について効率的な改築
更新を行うための十分な知見は整備されていない状況 ···· (背景)
・ そのような中、適切な方法を技術マニュアルにまとめ、効率的、効
果的な改築更新を広く実現しようとするもの ············ (意義)
(総合技術監理の観点から言うと?)
・ 電機メーカーや自治体から各種の有用な情報を大量に収集する必要
があった ·································· (情報管理の観点)
・ しかし、工期は短く、安定した業務管理が必要とされていた
···················· (経済性管理の観点)
・ 一方で、地球温暖化等といった下水道を取り巻く現状を踏まえて技
術マニュアルを策定することも必要 ······ (社会環境管理の観点)
‐29‐
� 「2.事業遂行・管理の目標」のロジック構築
ここも、イメージ図をもとに、次のようなロジックを構築する。
2.事業遂行・管理の目標
2-1 事業遂行の目標
(「事業の成果」のあるべき姿とは?)
(「事業の要求事項」のあるべき姿とは?)
2-2 事業管理の目標
(管理すべき必要十分な事項とは?)⇒(「事業のプロセス」のあるべき姿とは?)
効率的・効果的な下水道電気設備改築更新の実現に必要な情報を含ん
だ技術マニュアルを策定すること
電気設備改築更新の手引書として現場で広く活用されること
・ 事業遂行の目標に値する内容の技術マニュアルを工期内かつ予算内
で策定すること
・ 情報セキュリティの確保をはじめとする諸問題について適切に対処
すること
‐30‐
問題(2)のロジック構築
問題(2)の答案フレームは、次のようになっている。
細かいところなのだが、各管理の「存在するリスク」について、問題文では『リス
クの抽出を体系的に行う』とされている。これは、リスクというものは次元の異なる
ものが複数あるのが普通だ、ということを示唆しているのだろう。
ならば、本来は他のリスクも想起して言及すべきなのだろうが、そんなことをする
と、答案スペースを多く必要とする上、論旨も散漫になってしまう恐れがある。
そこで、『体系的に』という問題文の言葉になんとか対応する方法として、ここでは、
“最も警戒すべきリスク”といった形容詞を冠して、当然複数のリスクを念頭には置
いていた、というニュアンスを残すこととしよう。
� 「1.社会環境管理上のリスク」についてのロジック構築
ここも、イメージ図をもとに、次のようなロジックとする。
1.社会環境管理上のリスク
1-1 要求事項
1-2 存在するリスク
1-3 根本原因
2.経済性管理上のリスク
2-1 要求事項
2-2 存在するリスク
2-3 根本原因
3.情報管理上のリスク
(選択理由は?)
3-1 要求事項
3-2 存在するリスク
3-3 根本原因
(2)大テーマ:目標を達成できなくする可能性のあるリスクは?・・・2枚
1-1 要求事項
1-2 リスク抽出
1-3 根本原因
技術マニュアルは今後広く更新の現場で活用されるもの
↓
電気設備更新時の環境負荷を極力低減させるような記述にすること
最も警戒すべきは環境影響という評価軸が技術マニュアルの中で恣意
的に軽視されるリスク
改築更新の実施主体の自治体の多くは財政逼迫している
↓
そのような技術マニュアルの記述内容に恣意的な影響を及ぼしかねな
い要因の存在
1.社会環境管理上のリスク
‐31‐
� 「2.経済性管理上のリスク」についてのロジック構築
ここも、イメージ図をもとに、次のようなロジックとする。
� 「3.情報管理上のリスク」についてのロジック構築
ここも、イメージ図をもとに、次のようにロジックを構築する。
2-1 要求事項
2-2 リスク抽出
2-3 根本原因
(情報管理とのトレードオフ)
手引書として十分な品質を確保しながらも、所定の工期内に当初の実行
予算内で業務を完了させること
事故等の不測事態の発生や作業の遅滞に伴う進捗の遅れ、実行予算の不
足により、行われるべき調査や研究が十分に遂行できなくなるリスク
当初作成した工程計画、予算計画が適切に管理されておらず、状況の変
化に柔軟に対応できないものになっていること
2.経済性管理上のリスク
最も警戒すべきは、
・工程や予算の逼迫等のために情報収集活動が不十分になるリスク
・電機メーカーから入手した各種技術情報が他社等に漏洩するリスク
3-1 要求事項
3-2 リスク抽出
3-3 根本原因
(経済性管理とのトレードオフ)
・充実した技術マニュアルを策定するために有用な情報を数多く収集す
ること
・収集する各種技術情報には秘匿すべき情報も含まれるため、策定作業
において情報セキュリティを確保すること
・ 単純に情報収集作業を行う場合には多くの時間を要すること
・ 人為的ミス(メールの誤送信など)の存在
3.情報管理上のリスク
(選択理由は?)
情報収集が重要だった本業務において、情報管理に特に注意を必要とし
たため
‐32‐
問題(3)のロジック構築
問題(3)については次の答案フレームを整理している。
� 社会環境管理についてのロジック構築
ここも、イメージ図をもとに、次のようなロジックとする。
1. 社会環境管理の観点からの最適策の検討
1-1 リスク分析の結果
1-2 リスク対応案
1-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討
2.経済性管理の観点からの最適策の検討
2-1 リスク分析の結果
2-2 リスク対応案
2-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討
3.情報管理の観点からの最適策の検討
3-1 リスク分析の結果
3-2 リスク対応案
3-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討
(3)大テーマ:マネジメントを最適化する方策は?・・・・・・・・・2枚
1-1 リスク分析の結果
リスクに対応するには、公正さを担保することが必要
↓
電気設備に関する環境影響と経済性について工学的評価に基づくこと
がポイント
1-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討
・技術マニュアルにある程度の客観性が担保されており、実際の更新時
に活用されることが期待できる
・より広く活用されるためには、財政逼迫している自治体が多いという
実情を勘案することが大切
↓
財政状況に応じて自治体を類型化し、各類型に対し各々最適更新方法
を示す
1.社会環境管理の観点からの最適策の検討
1-2 リスク対応案
実績データ等を参考に、既存設備や高付加価値型設備についてコストと
環境性能を定量化し、技術マニュアルの基礎的データに据える
‐33‐
� 経済性管理についてのロジック構築
ここも、イメージ図をもとに、次のようなロジックとする。
� 情報管理についてのロジック構築
ここも、イメージ図をもとに、次のようなロジックとする。
2-1 リスク分析の結果
リスクに対応するには、適切に工程と予算を管理することが必要
↓
・数理的手法等による工程管理、
・作業量が多い情報収集活動の効率化を念頭においた予算管理の実施
がポイント
2-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討
・作業進捗の遅れ等が発生しても工程組み替え等で柔軟に対応すること
がある程度期待できる
・作業の効率化に伴って、より安全な予算管理も期待できる
2.経済性管理の観点からの最適策の検討
2-2 リスク対応案
・クリティカルパスとなる作業を把握し重点的に管理する方法
・情報収集活動の効率化によって工数削減を図る方法
1-1 リスク分析の結果
リスクに対応するには、
・情報収集活動の効率化をいかに図るか
・人為的ミスの存在を前提にセキュリティをいかに確保するか
がポイント
1-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討
・情報収集量の大幅な増加とともに質も向上
↓
より充実した内容の技術マニュアルを策定することが期待される
・情報漏洩の可能性も相当程度回避することが期待される
3.情報管理の観点からの最適策の検討
1-2 リスク対応案
・直接調査する以外に自治体やメーカー側からも情報提供を受ける方法
・入手データを電子メールで送受信せず郵送等によって直接入手するよ
う業務遂行方針として位置づける等の方法
‐34‐
【鉄則7】答案は行数・レイアウトを調整して記述する
問題(1)の行数・レイアウト調整
� 行数配分
問題(1)は 1枚=25 行で、見出し、余白も含めた全てをそれに収める必要がある。
したがって、答案ロジックのメモの量を勘案しながら問題(1)の各見出しにこの行数を
配分していこう。
問題(1)は 1行を割く見出しは 4つなので、全行数の 25 行からまずこの分を差し引
く。25 行-4行=21 行。この残りの 21行を、各小テーマの答案ロジックのメモの量を
勘案しながら、全体としてバランスよく配分する。
まず、中テーマである「1.事業の概要」と「2.事業遂行・管理の目標」としては概
ね同程度の行数配分にして、各小テーマは答案ロジックのメモの量を勘案しながら配分
していった。また、余白として 1行を見ておく。
� レイアウト調整
ここで初めて答案用
紙を取り出し、見出し、
配分した行数分の枠を
薄く書き込んでいく。
そして、メモの量と全
体のバランスをもう一
度確認しておく。
こうすることで、実際
に答案文を書きだして
いくときに、文章量の調
整に役立つのだ。
なお、問題(2)以降
のレイアウト調整は割
愛する。
1.事業の概要 ······························ (12)
(一言で言うと?) ··········································· 2
(業務の背景・意義は?) ····································· 5
(総合技術監理の観点から言うと?) ··························· 5
2.事業遂行・管理の目標 ····················· (8)
2-1 事業遂行の目標 ··········································· 4
2-2 事業管理の目標 ··········································· 4
余白 ········································ (1) ············· 1
計 21
1111 事業の概要事業の概要事業の概要事業の概要
平成20年 技術士第二次試験答案用紙
2 行分
2222 事業遂行・管理の目標事業遂行・管理の目標事業遂行・管理の目標事業遂行・管理の目標
2-1 事業遂行の目標
2-2 事業管理の目標
5 行分
5 行分
4 行分
4 行分
1 行分
(一言でいうと・・・?)
(業務の背景・意義は・・・?)
(総合技術監理の観点から言うと・・・?)
(余白)
‐35‐
問題(2)の行数・レイアウト調整
残りの問題についてもメモの量を勘案しながら行数を配分していく。
問題(2)は答案用紙 2枚、合計 50 行である。そのうち見出しは 12 行なので、50-
12=38 行を配分する。余白は答案用紙 2枚なので 2行とする。
問題(3)の行数・レイアウト調整
答案の書き下し
ここまでくれば、あとは時計をにらみながら、ただひたすら書き下していこう。
接続語、言い回しといった文章的なつながりや、全体的な見栄えを意識しながら書
いていけば、それで十分だ。急ごう。
1.社会環境管理上のリスク ·················· (13)
1-1 要求事項 ················································· 4
1-2 存在するリスク ··········································· 4
1-3 根本原因 ················································· 5
2.経済性管理上のリスク ···················· (10)
2-1 要求事項 ················································· 3
2-2 存在するリスク ··········································· 4
2-3 根本原因 ················································· 3
3.情報管理上のリスク ······················ (13)
3-1 要求事項 ················································· 5
3-2 存在するリスク ··········································· 4
3-3 根本原因 ················································· 4
余白 ········································ (2) ············· 2
計 38
1.社会環境管理の観点からの対策案の検討 ···· (13)
1-1 リスク分析の結果 ········································· 4
1-2 リスク対応案 ············································· 4
1-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討 ················· 5
2.経済性管理の観点からの対策案の検討 ······ (10)
2-1 リスク分析の結果 ········································· 4
2-2 リスク対応案 ············································· 4
2-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討 ················· 4
3.情報管理の観点からの対策案の検討 ········ (13)
3-1 リスク分析の結果 ········································· 3
3-2 リスク対応案 ············································· 4
3-3 対策効果の有効性、可能な限りの対応の検討 ················· 4
余白········································ (2) ············· 2
計 38
‐36‐
3 答案例
問題(1)
‐37‐
問題(2) 1枚目
‐38‐
問題(2) 2枚目
‐39‐
問題(3) 1枚目
‐40‐
問題(3) 2枚目
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