血中循環腫瘍細胞:検出手法と臨床応用applied-therapeutics.org/pdf/2015v7n1/2015v7n1_p4862.pdf2....

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アプライド・セラピューティクス Vol. 7 No. 1, pp 49-62, 2015 Vol.7 No.1(2015) - 49 - <総説> 血中循環腫瘍細胞:検出手法と臨床応用 水野 成美、横山 俊平、富樫 樹保,、菅谷 直史、佐藤 公美、 杉林 康、荻田 佳孝、田中 孝欣、山口 京子、寺尾 公男 Narumi Mizuno, Shumpei Yokoyama, Itsuo Togashi, Naofumi Sugaya, Kumi Sato, Ko Sugibayashi, Yoshitaka Ogita, Takayoshi Tanaka, Kyoko Yamaguchi, Kimio Terao 中外製薬株式会社 103-8324 東京都中央区日本橋室町 2-1-1 Abstract Cancer treatments have been breaking the new ground of molecular-targeted therapy and achieved remarkable progresses since the beginning of 21st century. Yet, the drugs administered in these treatments still haven’t overcome tumor heterogeneity nor tumor resistance. Although tumor biopsy requires tissue samples for genotype diagnostics in molecular-targeted therapy, it faces hurdles e.g. tumors found often in uncollectable locations, difficulty to repeat invasive sampling etc. All the more, collected tissue samples may not represent holistic tumor characteristics due to heterogeneity which could bias overall evaluation. To overcome these shortfalls, less-invasive and less-time taking methods are long-awaited in light with biomarker scrutinization at several points through the course of disease as well as entire tumor characteristics evaluation. In recent years, “liquid biopsy” is drawing avid attention as an alternative to replace conventional tissue biopsies. “Liquid biopsy” is a form of biopsy using patient’s blood samples and it is considered to enable more frequent and easier sampling than the biopsy methods. Above all, we believe it is highly potential for catching overall tumor profiles. Liquid biopsy plays a dual role as a tool for the clinical application. One side of the role does prognostic prediction, while another side does patient enrichment. The latter is accumulating a variety of evidences in many on-going clinical researches. It is desired that the methods utilizing liquid biopsy for patient enrichment will be established in the earliest possible timing. To date, three researches on liquid biopsy, namely, circulating tumor cell (CTC), circulating tumor DNA (ctDNA), exosome, are ongoing. Specifically in this manuscript, we focus on CTC which has already been granted as prognostic marker by FDA and summarize the biology, its measurement method and its clinical application.

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Page 1: 血中循環腫瘍細胞:検出手法と臨床応用applied-therapeutics.org/pdf/2015V7N1/2015V7N1_P4862.pdf2. CTC とがん転移 CTC とは腫瘍組織から離脱して血液中へと浸潤し

アプライド・セラピューティクス Vol. 7 No. 1, pp 49-62, 2015

Vol.7 No.1(2015) - 49 -

<総説>

血中循環腫瘍細胞:検出手法と臨床応用

水野 成美、横山 俊平、富樫 樹保,、菅谷 直史、佐藤 公美、

杉林 康、荻田 佳孝、田中 孝欣、山口 京子、寺尾 公男

Narumi Mizuno, Shumpei Yokoyama, Itsuo Togashi, Naofumi Sugaya, Kumi Sato,

Ko Sugibayashi, Yoshitaka Ogita, Takayoshi Tanaka, Kyoko Yamaguchi, Kimio Terao

中外製薬株式会社

〒103-8324 東京都中央区日本橋室町 2-1-1

Abstract

Cancer treatments have been breaking the new ground of molecular-targeted therapy and achieved remarkable progresses since the beginning of 21st century. Yet, the drugs administered in these treatments still haven’t overcome tumor heterogeneity nor tumor resistance. Although tumor biopsy requires tissue samples for genotype diagnostics in molecular-targeted therapy, it faces hurdles e.g. tumors found often in uncollectable locations, difficulty to repeat invasive sampling etc. All the more, collected tissue samples may not represent holistic tumor characteristics due to heterogeneity which could bias overall evaluation. To overcome these shortfalls, less-invasive and less-time taking methods are long-awaited in light with biomarker scrutinization at several points through the course of disease as well as entire tumor characteristics evaluation. In recent years, “liquid biopsy” is drawing avid attention as an alternative to replace conventional tissue biopsies. “Liquid biopsy” is a form of biopsy using patient’s blood samples and it is considered to enable more frequent and easier sampling than the biopsy methods. Above all, we believe it is highly potential for catching overall tumor profiles. Liquid biopsy plays a dual role as a tool for the clinical application. One side of the role does prognostic prediction, while another side does patient enrichment. The latter is accumulating a variety of evidences in many on-going clinical researches. It is desired that the methods utilizing liquid biopsy for patient enrichment will be established in the earliest possible timing. To date, three researches on liquid biopsy, namely, circulating tumor cell (CTC), circulating tumor DNA (ctDNA), exosome, are ongoing. Specifically in this manuscript, we focus on CTC which has already been granted as prognostic marker by FDA and summarize the biology, its measurement method and its clinical application.

Page 2: 血中循環腫瘍細胞:検出手法と臨床応用applied-therapeutics.org/pdf/2015V7N1/2015V7N1_P4862.pdf2. CTC とがん転移 CTC とは腫瘍組織から離脱して血液中へと浸潤し

Vol.7 No.1(2015) - 50 -

Keywords : Liquid biopsy:リキッド・バイオプシー、CTC:血中循環腫瘍細胞

Prognosis:予後、Biomarker:バイオマーカー、Patient enrichment:患者選択

(Received; July 25, 2015, accepted; September 28, 2015)

(Correspond author: [email protected])

1. 背景 現在がんの診断や治療の決定には、画像診断や

内視鏡検査、血液中の腫瘍マーカーの検出に加え

て、組織生検の実施が重要な役割を果たしている 1)。

腫瘍組織の切除もしくは針生検によって採取された

組織検体からは、病理検査にてがんの病理組織学的

分類や遺伝子情報等を明らかにすることができる。 しかしながら、手術不能かつ生検実施が困難な患

者からは検体を入手できず組織がないため、組織生

検の代用となりうる手法として、近年血液中より腫瘍

Abstract(和訳)

分子標的治療によって、がんの治療は 21 世紀に入り目覚ましい進展を遂げた。しかしながら、

これらの治療薬に関して腫瘍の多様性、耐性獲得といった問題は依然として残されている。

分子標的治療の際に行われる遺伝子型の診断には、生検により得られる腫瘍組織が用いられ

る。しかし、腫瘍の位置により組織の採取が困難な場合が多い、複数回の侵襲には困難を伴うと

いう問題がある。加えて、がんの Heterogeneity により採取部位のみを評価し腫瘍全体が評価さ

れない可能性を有する。

これらの問題を克服するために、疾患経過の様々な時点で迅速かつ低侵襲的にバイオマーカ

ーを同定でき、腫瘍全体を評価可能な方法が必要とされている。

ここ数年、組織生検に代わる方法として「Liquid biopsy」に対する注目が大きく高まっている。

Liquid biopsy とは患者の血液を検体とする生検であり、従来の組織生検に比して頻回かつ簡

便に腫瘍の状態を評価することが可能になると考えられている。さらに、腫瘍全体を評価できる可

能性を有する。

Liquid biopsy の臨床応用には、予後予測マーカー及び患者選択マーカーという 2 つの側面

がある。後者に関して、現在多くの臨床試験や研究が実施されており、様々なエビデンスが蓄積

されつつある。今後、このようなエビデンスを基に Liquid biopsy を用いた患者選択方法が構築

されることが期待される。

現在、Liquid biopsy の対象として血中循環腫瘍細胞(CTC)、循環腫瘍 DNA(ctDNA)、エ

キソソームの 3つの分野での研究が主に行われている。本レビューでは、既に癌の予後マーカー

として FDA に承認されている CTC に絞り、CTC の Biology、検出技術、臨床応用についてまと

める。

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細胞やその一部を採取する「Liquid biopsy」の研究

が盛んに行われている。 National Center for Biotechnology Information が提供する学術文献

検索サービスである PubMed にて”Liquid biopsy”の検索ワードで該当する論文数は 2014 年末時点で、

2013 年末時点の約 2.3 倍となっている(93 報対 40報)。Liquid biopsy とは患者の血液を検体とする生

検であり、従来の組織生検と比べて低侵襲性なため

経時的かつより簡便にがんの診断が可能になると考

えられている。また、組織生検では腫瘍の一部分を

採取し評価するのに対し、Liquid biopsyでは全身を

循環する血液を対象としているため、原発巣と転移巣

を含め体内に存在する腫瘍全体の性質を評価できる

可能性がある。そのため様々ながんで認められる腫

瘍 組 織 を 構 成 す る 細 胞 の 不 均 一 性

(Heterogeneity)を解明する一助となることも期待さ

れている。現時点では、Liquid biopsy の有用性に

ついて一部のがんで認められているものの、多くが検

討段階であり、様々な臨床試験が実施中である 2)-3)。 Liquid biopsy で評価される対象には、血中循環

腫瘍細胞(Circulating tumor cell:CTC)や循環腫

瘍 DNA(ctDNA)、エキソソーム等が挙げられる 4)。

今回はその中でも既にがんの予後予測マーカーとし

て臨床応用されている CTC に焦点を当てて紹介す

る。 2. CTC とがん転移

CTC とは腫瘍組織から離脱して血液中へと浸潤し

全身を循環する腫瘍細胞であり、がんの転移に寄与

すると言われている 5)。そのため、CTCが血液中に存

在する状態はがんが進展している、あるいは今後進

展する段階と考えられる。 CTC は循環血液中で自身の細胞死を防ぐため、

また新たな転移巣を形成するために、様々な環境に

適応可能となる多様な表現型を有する(Figure 1)6)。

その一つが上皮間葉転換 (Epithelial- mesenchymal transition : EMT)を起こした細胞で

ある。EMT とは上皮系細胞が間葉系の性質へと転

換するプロセスであり、EMT によって細胞の遊走能

や浸潤能が向上する。 また EMT に伴い細胞の表面に発現する分子も変

化する。上皮系細胞では Epithelial cell adhesion molecule(EpCAM)やE-カドヘリン等の上皮系細胞

表面マーカーの発現が認められるのに対し、EMTに

よりこれらマーカーの発現が認められなくなり、代わり

に間葉系細胞表面マーカーであるビメンチンや N-カ

*1 single CTC*2 Circulating tumor microemboli

Figure 1:CTC 及び分子的特性

(Nat Rev Cancer. Alix-Panabieres et al. 2014;14:623-31 より引用・改変)図引用:SERVIER Medical Art

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ドヘリン、フィブロネクチン等の発現が認められる 7)。

中には、上皮系と間葉系の細胞表面マーカーの共発

現が認められている 8)。 また CTC は、腫瘍細胞が単一で存在している場

合(single CTC:sCTC)と、複数の腫瘍細胞で細胞

塊(Circulating tumor microemboli : CTM)を形

成して存在している場合がある (Figure 2)。CTMではアポトーシスの一種であるアノイキスが抑制され

ていること及び内部の細胞が免疫細胞からの攻撃を

受けにくいこと、並びにCTM内の細胞が遊走に必要

な Pro-migration factor やマトリックスプロテアーゼ

をオートクリン的に産生し続けていることから、CTMは sCTC に比べて生存能・遊走能が高いと考えられ

ている 9)。

3. CTC の検出

CTCは血液 10 mL中に 1~10個程度しか存在し

ないため、効率良く CTC を血液中から検出するため

に通常「濃縮」と「同定」の 2 つの過程を経る 6)。濃縮

過程では生物学的手法と物理学的手法が用いられ

ている(Table 1)。同定過程では、濃縮された細胞の

細胞表面マーカーや発現遺伝子、分泌タンパク質を

確認することにより CTC として同定される 6)。

3.1 生物学的手法 生物学的手法には、細胞表面マーカーに対する

抗体を用いる手法と、腫瘍細胞特有の機能を利用し

た手法がある。その内、前者には細胞の表面マーカ

ーを利用する Positive selection と、血球細胞の表

面マーカーを利用する Negative selection がある。 Positive selection では、主に EpCAM を利用し

た開発が行われている。これは、がん化を起こす主要

な臓器は上皮系由来であり、血球細胞では発現がみ

とめられないEpCAM等の上皮系細胞表面マーカー

を発現しているため、血液中の細胞を上皮系細胞表

面マーカーで捕捉することで効率的に腫瘍細胞を検

出できるという考え方に基づく。10)。in vitro での例と

して、採取した血液検体から抗 EpCAM 抗体をコー

ティングした強磁性ビーズを用いて CTC を捕捉する

CellSearch® シ ス テ ム ( Janssen Diagnostics, Raritan, US ) や 11) 、 MagSweeper ( Stanford University, Stanford, US)12)、抗 EpCAM 抗体に

加えて腫瘍細胞に発現する他の細胞表面マーカー

に対する抗体もコーティングした磁性ビーズを用いて

感度を上げる AdnaTest(Adnagen, Langenhagen, Germany)13)、抗EpCAM 抗体をコーティングしたマ

イクロポストを用いて CTC を捕捉する CTC-chip(Massachusetts General Hospital, Boston, US)がある 14)。この内、CellSearch®システムはCTCの検

出機器として米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)より承認を得ており、CTC の

検出に 7.5mL の血液を用いている。また、in vivo の

一例として、抗 EpCAM 抗体をコーティングした医療

用ワイヤーを血管内に静置することで CTC を捕捉す

る GILUPI CellCollectorTM(GILUPI, Potsdam, Germany)があり 15)、EU より医療機器(Class II)として製造販売承認されている 16)。in vitro の系とは異

なり採血は不要で、30 分間の留置により約 1.5~3 Lに相当する血液中から CTC を回収することが可能と

なる。CellSearch®システムで検出した CTC のデー

タ(大腸がん、乳がん、前立腺がん)に特定の分布を

当てはめて推定したところ、採血量の増加に伴い

CTC の検出確率が上昇した。5 L の血液中から少な

くとも 1 つの CTC が検出できる確率について、治療

Figure 2:CTC の表現型と構成細胞数

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前及び化学療法1か月時点では96-99%となることが

示されている(Figure 3)17)。実際、様々な Stage の

乳がん患者から CTC を検出したところ、1 つ以上の

CTC が検出できた割合は CellSearch®システムで

12 % ( 7/61 ) で あ る の に 対 し 、 GILUPI CellCollectorTM では 74%(54/73)であった 18)。

GILUPI CellCollectorTM は血液中に存在する

CTC を高頻度に検出できる可能性があると考えられ

る。 一方 Negative selection は、 腫瘍細胞を捕捉す

るのではなく、血球細胞のうち白血球を捕捉すること

で間接的に CTC を濃縮する方法である。白血球に

特異的に発現する CD45 に対する抗体を利用し、1 mL 中に数百万個存在する白血球を捕捉し CTC を

濃縮する。Negative selection は他の手法と併用し

た機器の開発がなされている(3.3 複合的手法参

照)。 腫瘍細胞に特有な機能を利用する方法には、一

例として、テロメラーゼ活性を利用したテロメスキャン®

(オンコリスバイオファーマ, 東京, 日本)がある 19)。テ

ロメラーゼとは細胞分裂に関わる酵素である。がん細

胞では多くの場合テロメラーゼ活性が亢進しているた

Table 1:主な CTC の濃縮方法

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め 20)、この酵素により細胞のがん化に不可欠な要素

である無限増殖能がもたらされると考えられている。こ

の性質を利用し、テロメラーゼ依存的に細胞内で増

殖し緑色蛍光タンパク質 ( Green fluorescent protein:GFP)を発現する遺伝子改変を施したアデ

ノウイルス用いて、血液中の細胞のうちテロメラーゼが

亢進している細胞を GFP によって蛍光発光させるこ

とで CTC を検出する。 3.2 物理学的手法 物理学的手法にはCTC と血球細胞の細胞径や密

度、電荷の違いを利用した手法がある。CTC が血球

細胞より細胞径が大きいことを利用した手法として、フ

ィルターを用いて濃縮する ISET®(Isolation by Size of Epithelial Tumor Cells) (Rarecells, Paris, France ) 21) 、 ScreenCell® ( ScreenCell, Paris, France)や 22)、遠心力を用いて濃縮するDean Flow Fractionation がある 23)。CTC と血球細胞の比重差

を利用した手法には密度勾配遠心法の Ficoll®(GE

Healthcare, Buckinghamshire, UK ) や

OncoQuick®(Greiner Bio-One, Kremsmünster, Austria)が 24)、また電荷の違いを利用した手法には

Dielectrophoretic field-flow fractionation 法の

ApoStreamTM(ApoCell, Houston, US)がある

25)。 3.3 複合的手法 上述の生物学的手法と物理学的手法を組み合わ

せた CTC の濃縮手法も存在する。この一例として、

細胞径をもとにした手法と抗体を用いた手法とを組み

合わせた CTC-ichip ( Massachusetts General Hospital, Boston, US)がある 26)-27)。はじめに細胞

径依存的に CTC の選別を行った後、抗 EpCAM 抗

体もしくは抗 CD45 抗体でコーティングした磁性ビー

ズを用いて濃縮を行う。他にも、赤血球、白血球と二

段階に分けてCTC以外の血球細胞を除去しCTCを

濃縮する方法がある。この手法では密度勾配遠心法

や RBC lysis buffer を用いて赤血球 を除去した後、

Figure 3:治療開始前及び治療開始 1 か月時点における CTC 数と血液量の推定

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抗 CD45 抗体でコーティングした磁性ビーズを用い

て白血球を除去し濃縮を行う 28)。 現在主に行われている CTC の濃縮法は EpCAM

陽性の腫瘍細胞を捕捉する Positive selection であ

る。しかしながら、前述の通り CTC には EMT が起こ

った sCTC及びCTMが認められるため、EpCAM陰

性の腫瘍細胞を含めた CTC を検出する場合は、抗

EpCAM 抗体を用いた手法では捕捉できず、抗

CD45 抗体を用いた Negative selection や腫瘍細

胞機能を利用した手法、もしくは物理学的手法を用

いて CTC を濃縮することがより適していると考えられ

る 9),29)。一方で、これらの手法は EpCAM 陽性細胞

を捕捉する方法に比べエビデンスが少なく、テロメラ

ーゼ活性が低い CTC や細胞径の小さい CTC 等も

存在し、手法によっては捕捉できない CTC も存在す

る。そのため、どの濃縮法を用いていくかは今後更な

る検討が必要である。

4. CTC の臨床応用 FDA はバイオマーカーを、「正常なプロセスや病

的プロセス、あるいは治療に対する薬理学的な反応

の指標として客観的に測定・評価される項目」と定義

している 30)。CTC はがん転移の機序解明や標的分

子の探索、がんの有無の評価や予後の予測、そして

薬剤の有効性評価や薬剤適応患者の層別化等へ応

用可能であると考えられ、バイオマーカーとしての研

究が盛んに行われており、抗がん剤の研究開発、臨

床における治療方針の決定(Rx)への応用が期待さ

れる。

4.1 予後予測因子としての CTC 現在、予後予測の診断機器として、Veridex 社が

開発した CTC 検出機器の CellSearch®システムは

転移性の乳がんや前立腺がん、大腸がんに対して

FDA より承認を得ており 31)-33)、実臨床に応用されて

いる。血液 7.5 ml 中の CTC 数と無増悪生存期間

(Progression free survival:PFS)及び全生存期間

(Overall survival:OS)に関連があり、CTC 数が一

定の閾値以上(乳がん及び前立腺がんでは 5個以上、

大腸がんでは 3 個以上)存在する場合は PFS 及び

OS が短くなることが示唆されている。 その他のがんに関しても、CellSearch®システムを

用いた予後予測に関する検討が行われている。化学

療法未実施の小細胞肺がん患者 51 例において、治

療開始前の CTC 数と OS を比較したところ、CTC 数

のカットオフ値を 8個/7.5 mlとした場合にOSに対す

る予後予測が最も優れており、8 個以上の患者集団

は 8 個未満の患者集団よりも OS が有意に短かった

(OS(中央値)= 8.5 か月対 17.2 か月、p=0.0014)34)。また、固形がん患者 24 例を対象とした第 I 相臨

床試験において、治療開始前の CTC 数が 0 個であ

った集団、1~3 個の集団、4 個以上の集団で PFS及びOSを比較したところ、集団間で差が認められ、0個の集団では他の集団に比べいずれも長いという結

果が得られた。(PFS(中央値) 各 8.8 か月、1.4 か

月、1.3か月、p=0.02、OS(中央値)各 9.0か月、7.4か月、3.5 か月、p=0.2)35)。

CTC 数だけではなく CTM の有無と予後の関係に

ついても検討が行われている。化学療法未実施の小

細胞肺がんの患者 97 例において、治療開始前の

CTM の有無で PFS 及び OS を比較したところ、

CTM を有している患者群では CTM を有していない

患者群に対し PFS 及び OS が共に有意に短かった

(PFS(中央値)4.6 か月対 8.2 か月、p<0.001、OS(中央値)4.3 か月対 10.4 か月、p<0.001)36)。

このように、CTC はがんの予後予測因子として認

められており、今後様々ながんへの適応が期待され

ている。しかしながら、がん腫により CTC 数は異なる

可能性があるため、がん腫毎にデータを集積して検

討する必要があると考えられる。また、CTM を有する

患者でも予後に差が認められるが、CTC 数との関連

性や感度は明らかではないため、CTM の予後予測

因子としての有用性も併せて検討することが望まれ

る。 4.2 治療方針の決定への応用

CTC は予後予測因子としてだけではなく、薬剤の

有効性評価や Rx にも応用が試みられている。 薬剤の有効性評価の一例として、治療後の CTC

数と抗腫瘍効果について OS に与える影響を比較し

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た 検 討 が ある 。 転 移 性 乳 が ん患 者 に 対 し 、

Computed Tomography(CT)による抗腫瘍効果に

基づき Progressive disease (PD 群)、Partial response/Stable disease ( PR/SD 群)に 、また

CellSearch®システムによる CTC 数に基づき治療開

始後約 4 週時点の CTC 数が 5 個以上の群、5 個未

満の群に分けOSを比較した。その結果、PD群よりも

PR/SD 群において、また CTC 数が 5 個以上の群よ

りも 5 個未満の群において有意に OS の延長が認め

られた(抗腫瘍効果 OS(中央値)=12.9 か月対

24.9 か月、p<0.0001、CTC 数 OS(中央値)= 8.5か月対 22.6 か月、p<0.0001)37)。CT による腫瘍評

価に通常約 10 週間を要するのに対し、Cell Search®システムによる CTC 数の評価は治療 4 週間

後であったことから、より早期の有効性評価が可能で

あることが示唆された。また、治療後のCTC数が多い

患者ほど薬効が低いことから、多数の CTC が認めら

れた場合には病変の増悪を懸念し早期に CT 検査を

実施することが有用となる可能性がある。 また治療方針決定の一例として、表現型や遺伝子

発現・変異を解析することで、分子標的薬投与の判

断への応用が検討されている。特に、Human epidermal growth factor receptor 2(HER2)の過

剰発現及び Epidermal growth factor receptor(EGFR)の遺伝子変異についてはCTC用の検査試

薬を用いた検討が進められており 38)、採血から診断

までが1つのプラットフォームとなることが期待される。

現時点では、分子標的薬が既に承認されている標的

分子を中心に腫瘍組織と CTC を用いた比較検討が

進められており、以下にいくつかの例を示す。

HER2 乳がんや胃がんの標的分子である HER2 は、免

疫組織化学法、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション

(Fluorescent in situ hybridization:FISH)法、逆

転 写 ポ リ メ ラ ー ゼ 連 鎖 反 応 ( Reversed transcription-polymerase chain reaction :

RT-PCR)法等によってその過剰発現の評価が行わ

れている 39)。転移性乳がん患者では腫瘍組織と

CTC の HER2 発現が異なる事例が報告されており

(Table 2)、がんの Heterogeneity が示唆される。免

疫組織化学法もしくは FISH 法にて腫瘍組織 HER2

Table 2:腫瘍組織及び CTC における HER2 発現の比較

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陽性と診断された患者の内、CellSearch®システムに

て検出したCTCで免疫蛍光染色にて HER2陽性の

患者(Tumor+/CTC+)では、CTC で HER2 陰性の

患者(Tumor+/CTC-)に比べ抗 HER2 療法の有意

な PFS の延長が認められた(PFS(中央値)=8.8 か

月対 2.5 か月、p=0.002)40)。CTC における HER2発現状況が抗 HER2 療法の効果予測因子として有

用である可能性が示唆されたが、18 例と少数例での

検討であるため、より大規模な無作為化試験で検証

する必要がある。また腫瘍組織で HER2 陰性の患者

の内、CTC で HER2 陽性の患者(Tumor-/CTC+)が認められているが、抗 HER2 療法の効果は明らか

になっておらず、現在行われている DETECTⅢ

(Figure 4)41)-42)をはじめ複数の臨床試験を通じて、

Tumor-/CTC+の症例に対する抗 HER2 療法の有

用性が明らかになることが期待される。

EGFR ゲフィチニブ等の分子標的薬のターゲットである

EGFR では、腫瘍組織検体を用いた EGFR 遺伝子

変異検査が行われている 43)。CellSearch®システムと

同様、抗 EpCAM 抗体を利用した CTC-chip にて検

出したCTCにおいてEGFR 遺伝子変異の有無を確

認したところ、組織と CTC で遺伝子変異の有無並び

に変異部位が一致した。また、CTCにてEGFR阻害

剤の薬剤耐性遺伝子変異の1つである T790M の変

異の検出後、ゲフィチニブから化学療法へと治療を

変更したところ、腫瘍が増悪することなく更なる腫瘍

縮小が確認された 44)。EGFR 阻害剤では耐性遺伝

子の出現により薬剤の効果が減弱するため、その確

認は治療方針の決定において重要である。通常は腫

瘍の増悪時に組織生検により T790M 変異を確認す

るが、CTC を経時的にモニタリングすることにより耐

性変異をタイムリーに検出できる可能性が示唆された

ため、CTC を用いることで速やかに治療方針を決定

できることが期待される。

Figure 4:DETECT III 試験のデザイン

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大腸がん癌原遺伝子の変異 Adenomatous polyposis coli(APC)や v-Ki-

ras2 Kirsten rat sarcoma viral oncogene homolog (KRAS)、 Phosphatidylinositol-4,5- bisphosphate 3-kinase, catalytic subunit alpha(PIK3CA)等の種々の癌原遺伝子の変異の

存在が認められた大腸がん患者から検出されたCTCでは、原発巣や転移巣で確認された変異に加えて、

CTC のみに存在する変異が確認された。Ultradeep sequence 後に、Deep single-nucleotide variant(SNV)algorithm 法を用いて解析したところ、CTCのみに認められた変異は腫瘍組織から遊離後に遺

伝子型が変異したのではなく、腫瘍中にサブクローン

レベルで存在する細胞集団の遺伝子型と一致してい

た 45)。このことから、CTC の遺伝子解析を行うことで

組織検体から得られる情報に加え、組織検体からは

検出できなかった変異等を検出できる可能性が示さ

れた。 Anaplastic lymphoma kinase(ALK) アレクチニブ等の標的分子となるALK融合遺伝子

は非小細胞肺がんで発現が認められており、患者選

択は腫瘍組織サンプルを用いて免疫組織化学法もし

くは FISH 法によって行われている 46)。非小細胞肺

がん患者を対象に腫瘍組織と CTC 中の ALK 融合

遺伝子の発現状況を FISH 法で確認したところ、細

胞サイズを元にした物理学的手法の ISET®の場合は

組織で ALK 陰性の症例では ALK 陽性 CTC は 0個ないし 1 個/ml しか検出されなかったのに対し、

ALK 陽性症例では全例で ALK 陽性 CTC が 4 個

/ml 以上認められた。一方、EpCAM 陽性の CTC を

捕捉する CellSearch®システムでは十分量の CTCが検出されなかった 47)。これより、標的分子によって

は利用可能な CTC の濃縮方法が限られる可能性が

あると考えられる。 CTC と腫瘍組織における標的分子の発現状況は

がん腫やその分子種によって異なる可能性がある。

CTC のみで標的分子が検出された患者に対しては

分子標的薬治療の効果も含めて評価する必要がある。

CTC の検出方法によって CTC 数に違いが認められ

たため、標的分子毎に最適な CTC の検出方法を含

めて考えていく必要がある。 他にも、CTCの種類毎の臨床的意義を明らかにす

べく様々な検討が進行している。 例えば、間葉系の性質を獲得した CTC と転移の

関係に関して検討がなされている。早期及び転移性

の乳がん患者から抗 CD45 抗体を用いた Negative selection によって採取した CTC を用いて間葉系細

胞の表面マーカーであるビメンチン(Vim)の発現を

確認したところ、早期乳がんの患者では 77%で Vim陽性 CTC が検出されたのに対し、転移性乳がん患

者では全例で検出された。また、得られた CTC の全

てで Vim を発現していた患者数は、転移性の乳がん

患者で多く認められた(12/25(48%)対 6/22(27%)、

p=0.048)48)。少数例の検討ではあるが転移性の非

小細胞肺がん患者においても、ISET®にて検出した

CTC について、6 例全例でサイトケラチン(CK)

+/Vim+もしくは CK-/Vim+が確認された 8)。このよう

に転移性のがん患者では早期のがん患者に比べて

間葉系の性質を示す CTC の割合が高く、EMT を起

こした CTC の検出はがん転移のリスク層別に用いる

ことができる可能性がある。 また、がんのサブタイプと CTC の種類を比較した

検討も行われている。乳がん患者では、HER2 陽性

乳がんや Triple negative の乳がん患者において間

葉系のマーカーを持つ CTC が多かった。一方で、ホ

ルモン陽性の乳がん患者では上皮系のマーカーを

持つ CTC が多かった 49)。この結果より、がんのサブ

タイプによって CTC の種類やその割合が異なる可能

性があるため、サブタイプ毎に評価すべき CTC の種

類を検討する必要があると考えられる。 さらに CTM でも、がんの診断における有用性が検

討されている。非小細胞肺がんにおいて、従来診断

に用いてきた因子(年齢、喫煙歴、CT イメージング、

FDG-PET/CT イメージング等)に CTM を因子に加

えると、従来よりも精度高く非小細胞肺がんを識別で

きることが示された。Stage I の非小細胞肺がん患者

に絞った場合でも同様の結果が得られており 50)、

CTM を用いることでこれまで診断の精度が高くなか

った早期のがんへも応用できる可能性が示された。

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以上のように、エビデンスは十分でないものの、が

ん腫毎、さらにはがんのサブタイプ毎、Stage 毎等に

検出される CTC の種類やそれぞれの臨床的意義が

異なる可能性があるため、今後の研究によってはこれ

らの違いを用いたがんの診断や治療方針決定がなさ

れる可能性がある。 5. 結論

CTC は従来の腫瘍組織検体よりも低侵襲に採取

することができる腫瘍組織由来検体であり、患者の腫

瘍状態を経時的に評価できる可能性がある。 医薬品開発においては、CTC は時には OS や

PFSのサロゲートマーカーとして、時には薬剤の治療

効果予測因子として、より正確かつ早期の有効性評

価を行うことのできるバイオマーカーになり得ると考え

られる。また、CTC のプロファイルや遺伝子発現・変

異を経時的に観察することで、耐性遺伝子の検出や

新たな標的の発見という点で医薬品開発に貢献でき

る可能性がある。 これらは現行の治療においても同様に、薬剤の治

療効果予測や標的遺伝子・耐性遺伝子の検出等 Rxに用いられるバイオマーカーとして使用できると考え

られる。 また、CTC に発現する標的分子を検出することで、

現在腫瘍組織を利用して行っているコンパニオン診

断のように、特定の医薬品の選択の妥当性や用量の

決定を補助する可能性がある。また Heterogeneityにより腫瘍組織のみでは検出が困難であった標的分

子を CTC にて特定することで、新たに分子標的薬の

対象患者の選択に使用できるかもしれない。 一方で、CTC の臨床応用には課題も多く残されて

いる。物理学的、生物学的手法のように CTC の検出

方法が非常に多く存在するが、現状どの手法でも全

ての性質の CTC を採取することは困難である。また、

CTC を用いることの有用性が確認されているがん腫

は限られており、CTC を臨床応用するためにはこれ

らの課題を解決していくことが必要であると考えられ

る。 このように CTC を用いることで医薬品開発並びに

がん治療の未来は発展を遂げる可能性があり、今後

その有用性の検証が待たれる。

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