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防災気象講演会(2013.5.23) 下川悦郎 1 1993年豪雨災害の特徴と教訓 土砂災害を中心にして 鹿児島大学地域防災教育研究センター 下川 悦郎 1 はなしの構成 一連の豪雨災害の経過 主な災害の概要 災害の特徴 警戒避難対応における教訓と課題 防災対策における教訓と課題 20年間における豪雨災害対策の進捗状況と課題 2 鹿児島県の自然災害 第2次世界大戦後の土砂災害 自然災害による死者・不明者数は1200人超、うち600名 超は土砂災害によるもの 最大の豪雨災害 昭和13年(1938年)南大隅地方で発生した肝付災害、死 者・不明者数は400人超 3 4 1993年一連の豪雨災害の経緯と死者・行方不明者 月・日 場所 死者(人) 不明者(人) 原因 06/26 姶良町 1 崩壊 07/05 佐多町 1 崩壊 07/07 山川町等 7 崩壊・土石流 08/01 国分市 7 崩壊・河川氾濫 ~02 隼人町 6 崩壊 霧島町 4 崩壊 吉田町 4 崩壊・土石流 姶良町 1 崩壊 薩摩町 1 崩壊 08/06 鹿児島市 46 1 崩壊・土石流・河川氾濫 伊集院町 1 崩壊 吉田町 1 崩壊 08/10 垂水市 5 土石流 09/03 金峰町 21 崩壊 川辺町 9 土石流 大口市 1 河川氾濫 垂水市 1 崩壊 知覧町 1 崩壊 09/20 日吉町 2 崩壊 合計 120 1 5 7月31日~8月2日の降雨状況(総雨量線図) 6 災害の発生状況(8月1日 隼人町小鹿野)(鹿児島県)

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防災気象講演会(2013.5.23) 下川悦郎

1

1993年豪雨災害の特徴と教訓- 土砂災害を中心にして -

鹿児島大学地域防災教育研究センター下川 悦郎

1

はなしの構成

1 一連の豪雨災害の経過

2 主な災害の概要

3 災害の特徴

4 警戒避難対応における教訓と課題

5 防災対策における教訓と課題

6 20年間における豪雨災害対策の進捗状況と課題

2

鹿児島県の自然災害

・ 第2次世界大戦後の土砂災害

自然災害による死者・不明者数は1200人超、うち600名超は土砂災害によるもの

・ 最大の豪雨災害

昭和13年(1938年)南大隅地方で発生した肝付災害、死者・不明者数は400人超

3 4

1993年一連の豪雨災害の経緯と死者・行方不明者

月・日 場所 死者(人) 不明者(人) 原因

06/26 姶良町 1 崩壊07/05 佐多町 1 崩壊

07/07 山川町等 7 崩壊・土石流08/01 国分市 7 崩壊・河川氾濫

~02 隼人町 6 崩壊

霧島町 4 崩壊吉田町 4 崩壊・土石流

姶良町 1 崩壊薩摩町 1 崩壊

08/06 鹿児島市 46 1 崩壊・土石流・河川氾濫伊集院町 1 崩壊

吉田町 1 崩壊

08/10 垂水市 5 土石流09/03 金峰町 21 崩壊

川辺町 9 土石流大口市 1 河川氾濫

垂水市 1 崩壊知覧町 1 崩壊

09/20 日吉町 2 崩壊

合計 120 1

57月31日~8月2日の降雨状況(総雨量線図) 6災害の発生状況(8月1日 隼人町小鹿野)(鹿児島県)

防災気象講演会(2013.5.23) 下川悦郎

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災害発生模式図(8月1日 隼人町小鹿野) 7 8災害発生時の降雨状況(8月1日 隼人町小鹿野)

9-1災害の発生状況(8月1日 隼人町国分市名波町) 9-2災害発生模式図(8月1日 隼人町国分市名波町)

災害発生時の降雨状況(8月1日 隼人町国分市名波町) 10 11災害の発生状況(8月1日 吉田町西佐多浦 崩壊・土石流)

防災気象講演会(2013.5.23) 下川悦郎

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12災害発生模式図(8月1日 吉田町西佐多浦) 13災害の発生状況(8月1日 思川の氾濫 河川災害)(鹿児島県)

148月5日~6日の降雨状況(総雨量線図) 15災害発生時の降雨状況(8月6日 鹿児島市)

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災害の発生状況(8月6日 鹿児島市吉野町竜ヶ水 崩壊・土石流)

(鹿児島県) 17災害発生模式図(8月6日 鹿児島市吉野町竜ヶ水)

防災気象講演会(2013.5.23) 下川悦郎

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災害の発生状況(8月6日 鹿児島市吉野町花倉 崩壊・土石流)

(鹿児島県) 19災害の発生状況(8月6日 鹿児島市多賀山 崩壊) (鹿児島県)

20災害発生模式図(8月6日 鹿児島市多賀山) 21災害の発生状況(8月6日 甲突川の氾濫 河川災害)(鹿児島県)

22災害の発生状況(8月10日 垂水市二川深港)(鹿児島県) 23災害の発生状況(9月3日 金峰町大坂)(鹿児島県)

防災気象講演会(2013.5.23) 下川悦郎

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24災害発生模式図(9月3日 金峰町大坂) 25災害の発生状況(9月3日 川辺町小野)(鹿児島県)

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災害の発生状況および災害発生模式図(9月20日 日吉町毘沙門)

(鹿児島県) 27

災害の特徴

・ 降雨

量(総量)と質(強度)の両面において記録的

・ 土砂災害

人的被害 地質地形 崖錐斜面

・ 河川災害

河川氾濫 市街地の浸水 市民生活の混乱

・ 警戒避難対応

市町村の防災対応に係る意思決定の遅れ 住民の防災対応の遅れ

・ 災害の複合化、被害の多様化

土砂災害 河川災害 道路災害 ライフラインの麻痺 孤立化海上からの被災者救出

28災害の特徴(年降雨量) 29

災害の特徴(土砂災害)

① 人的被害

・ 死者・不明者数121人のうち、113人が土砂災害によるもの

② 地質地形

・ シラス崖では崩壊が多数発生

・ シラス以外の火山地質でも発生

・ 火山地質ではないところでも発生

・ 指定危険個所以外でも発生

③ 崖錐斜面の崩壊とそれに起因する土石流

・ 地質境界面からの湧出水による崩壊発生

・ 崖錐斜面の崩壊に由来する土石流が発生

防災気象講演会(2013.5.23) 下川悦郎

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30-1地質境界面からの湧出水による斜面の崩壊(湧水町)(鹿児島県) 30-2地質境界面からの湧出水による斜面の崩壊(湧水町)(鹿児島県)

30-3崖錐斜面の崩壊とそれに起因する土石流(福山町)(鹿児島県) 31

死者・不明者(121人)の年齢構成

人 頻度(%) 累加頻度(%)

1 ― 9 5 4.1 4.1

10 ― 19 8 6.6 10.7

20 ― 29 1 0.8 11.5

30 ― 39 12 9.9 21.4

40 ― 49 6 5.0 26.4

50 ― 59 20 16.5 42.9

60 ― 69 27 22.3 65.2

70 ― 79 28 23.1 88.3

80 ― 89 13 10.9 99.2

90 ― 99 1 0.8 100.0

年齢(年)

 65歳以上が44.6%

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警戒避難対応の3過程

① 監視、災害対策本部の設置および防災対応の意思決定

・ 防災情報の収集と分析

・ 災害対策本部の設置の意思決定

・ 避難勧告等防災対応の意思決定

② 防災情報の伝達

・ 雨や河川の増水、災害予兆等の防災情報の伝達・提供

・ 避難勧告等防災対応の住民への伝達

③ 住民の防災対応

・ 住民自身による災害警戒と自主避難

・ 避難勧告や避難指示による住民の避難

警戒避難対応における1993年災害の教訓と課題(1)

① 監視、災害対策本部の設置および防災対応の意思決定

・ 災害情報を広く収集し、それをもとに避難に関する意思決定

を実行(郡山町)

・ 避難勧告等市町村の防災対応に係る意思決定に遅れ

・ 避難所から帰り自宅で被災(川辺町)

② 防災情報の伝達

・ 屋内・屋外同報防災無線による情報伝達(郡山町)

・ 道路の浸水で広報車による情報伝達が不能

・ マスコミによる防災情報の伝達

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防災気象講演会(2013.5.23) 下川悦郎

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警戒避難対応における1993年災害の教訓と課題(2)

③ 住民の防災対応

・ 避難行動の遅れ(隼人町)

・ 呼びかけても避難に応じない住民(垂水市)

・ 避難勧告等が出ても避難しない住民

・ 遠距離の避難場所への避難の難しさ(金峰町)

・ 住民自身による自主避難の実施

・ 自主防災組織の結成と活動の強化

④ 全体

・ 災害発生前の異常な現象や予兆を生かす(日吉町)

・ 災害の規模が大きくなるほど防災対応の選択肢が限られる

・ 規模の大きな災害では孤立化を想定した防災対応が必要 34

防災対策における1993年災害の教訓と課題(土砂災害)

① 崖錐斜面の崩壊とそれに由来する土石流による災害の防災対策

・ 崖錐斜面の崩壊防止には湧出水の処理が対策の鍵

・ 土砂流出だけでなく流木の流出を抑制すること

② 地質境界面に沿う斜面の崩壊、大規模な斜面の崩壊、

それらに由来する土石流

・ 詳細な調査による発生メカニズムの解明と予測が重要

・ 対策は地下水の処理が鍵

③ 火山地質以外の斜面における崩壊による災害の防災対策

・ 詳細な調査による発生メカニズムの解明と予測が重要

・ 対策は地下水の処理が鍵

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36

防災対策における1993年災害の教訓と課題(河川災害)

・ 1993年の災害では、甲突川や稲荷川、思川等の中小河川が各所で氾濫

・ 雨の強度(質)が大きかったこと、流域面積が小さいことが主因

・ 流域内では多数の崩壊や土石流が発生、これによる流出土砂が河川に流れ込み河床を上昇させたことも河川氾濫の遠因

甲突川、稲荷川、思川流域における崩壊・土石流の分布図(鹿児島大学砂防学研究室 1994) 37

38

20年間における豪雨災害対策の進捗状況と課題(1)

① 土砂災害対策(ハード対策)

・ 災害発生実態に基づいた災害個所の復旧対策の実施

・ 進まない土砂災害危険個所(約5000箇所)の防災対策

(平成24年度末の整備率は34%)

② 河川災害対策(ハード対策)

・ 激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)等による河川改

修事業が進捗

・ 1993年の豪雨規模を超える豪雨には河川は決して安全ではなく、緊急時の水防計画や警戒避難対応とあわせた総合的河川防災の取組が必要

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20年間における豪雨災害対策の進捗状況と課題(2)

③ 警戒避難対応

・ 「土砂災害防止法」による土砂災害警戒区域等の指定

(平成24年度末 警戒区域12497箇所、特別警戒区域450箇所)

・ 災害危険箇所の見直し、避難の意思決定に役立つ災害予測手法の開発、防災情報の収集・伝達手段の整備、安全な避難場所の確保、自主防災組織の育成強化など、警戒避難体制の強化

・ 土砂災害発生予測情報システムの運用(2001年5月)

・ 土砂災害警戒情報の運用(2005年9月)

・ 河川情報システムの運用

・ 自主防災組織率の向上(20年間で4倍強の80.4%まで増加)と活動の強化

防災気象講演会(2013.5.23) 下川悦郎

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おわりに

人は、災害が起こっても、自分や家族には危険は及ばない、と勝手に考えるそうです。しかし、それは誤った考えです。

命を守るため、早めの避難を心がけたいものです。

御清聴ありがとうございました。