乳幼児健診における発達障害に関する 市町村調査 報告書 ...2 質問2...

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1 はじめに 今年は、発達障害者支援法が施行されて10年目に当たる。この間、厚生労働省や文部科学省の様々な制度や 事業が実施されてきた。こうしたなかで当会会員(平成26年3月末現在、18483名)の多くは、発達障害をもつ 乳幼児期・学令期にある子どもやその保護者および成人、支援関係者等を対象とした支援活動を担っている。 我が国の伝統ある乳幼児健診(以下、健診と表示する)への心理職の参加の歴史は長いが、特に近年は発達障 害の早期発見・早期支援が重要とされており、健診の場の重要性が指摘されている。そのため、各地の保健セ ンター等における乳幼児健診とその後の支援の実情を把握し検討を加えることにより、発達障害支援がより充 実されることを願って本調査を実施した。 1.調査目的 健診は、乳幼児とその保護者が家庭外の行政や諸機関と初めて関わりを持ち、発達の問題に触れる場面であ り発達障害支援の入り口になりうるものである。発達障害支援の視点から各地域で現在、乳幼児健診と乳幼児 への発達支援がどのような形で行われているかを明らかにするために、平成24年4月1日現在の全国のすべての 市町村に調査を依頼した。 2.調査の方法 1)調査期間、調査対象、記入者、回収数 調査期間:平成24年7月25日~ 8月31日 調査対象:全国のすべての市町村 1,917市町村(指定都市行政区も含む) 記 入 者:健診の担当者 回 収 数:1,006市町村(指定都市行政区も含む)、回収率 52.5% (この中には、東日本大震災で被災した市町村も含まれている) 2)調査票 調査票は、Ⅰ.基本項目、Ⅱ.健診について、Ⅲ.健診後の対応、Ⅳ.心理職の仕事、に分けて質問項目 を設定した。 詳細は末尾に資料として添付。 3.調査結果の分析 Ⅰ 基本項目 質問1  記入該当職種 回答者の職種について 今回の回答者の職種は主に保健師の記入による結果となっている(97%)。心理職、事務職、看護師の記入 も僅かであるがみられた。 一般社団法人 日本臨床心理士会 乳幼児健診における発達障害に関する 市町村調査 報告書

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Page 1: 乳幼児健診における発達障害に関する 市町村調査 報告書 ...2 質問2 乳幼児健診の実施時期について 多くの市町村では厚生労働省の定め(母子保健法12条および13条)に基づき、3〜4か月健診、1歳6か月

1

はじめに 今年は、発達障害者支援法が施行されて10年目に当たる。この間、厚生労働省や文部科学省の様々な制度や

事業が実施されてきた。こうしたなかで当会会員(平成26年3月末現在、18483名)の多くは、発達障害をもつ

乳幼児期・学令期にある子どもやその保護者および成人、支援関係者等を対象とした支援活動を担っている。

我が国の伝統ある乳幼児健診(以下、健診と表示する)への心理職の参加の歴史は長いが、特に近年は発達障

害の早期発見・早期支援が重要とされており、健診の場の重要性が指摘されている。そのため、各地の保健セ

ンター等における乳幼児健診とその後の支援の実情を把握し検討を加えることにより、発達障害支援がより充

実されることを願って本調査を実施した。

1.調査目的 健診は、乳幼児とその保護者が家庭外の行政や諸機関と初めて関わりを持ち、発達の問題に触れる場面であ

り発達障害支援の入り口になりうるものである。発達障害支援の視点から各地域で現在、乳幼児健診と乳幼児

への発達支援がどのような形で行われているかを明らかにするために、平成24年4月1日現在の全国のすべての

市町村に調査を依頼した。

2.調査の方法1)調査期間、調査対象、記入者、回収数    調査期間:平成24年7月25日~ 8月31日

    調査対象:全国のすべての市町村 1,917市町村(指定都市行政区も含む)

    記 入 者:健診の担当者

    回 収 数:1,006市町村(指定都市行政区も含む)、回収率 52.5%

         (この中には、東日本大震災で被災した市町村も含まれている)

2)調査票    �調査票は、Ⅰ.基本項目、Ⅱ.健診について、Ⅲ.健診後の対応、Ⅳ.心理職の仕事、に分けて質問項目

を設定した。

    詳細は末尾に資料として添付。

3.調査結果の分析Ⅰ 基本項目質問1 記入該当職種 回答者の職種について �

 今回の回答者の職種は主に保健師の記入による結果となっている(97%)。心理職、事務職、看護師の記入

も僅かであるがみられた。

一般社団法人 日本臨床心理士会

乳幼児健診における発達障害に関する市町村調査 報告書

Page 2: 乳幼児健診における発達障害に関する 市町村調査 報告書 ...2 質問2 乳幼児健診の実施時期について 多くの市町村では厚生労働省の定め(母子保健法12条および13条)に基づき、3〜4か月健診、1歳6か月

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質問2乳幼児健診の実施時期について �

 多くの市町村では厚生労働省の定め(母子保健法12条および13条)に基づき、3〜4か月健診、1歳6か月

児健診、3歳児健診が実施されている。市町村によっては、それ以外の時期にも実施するなど独自の工夫がな

されているところがあり、9~10か月児健診を実施しているところが多くみられた。その他の記載(下図*

印)の部分では、7か月目にまたがる健診を実施している市町村が目立った。全体的に見ると、5歳児の健診

は一割弱であり、集団生活に入ってからの時期で健診が行われる例は少ない。

質問31歳6か月児健診、3歳児健診にかかわる専門職種とスタッフ数について �

 健診スタッフの職種について、1歳6か月児健診、3歳児健診の場合について聞いた。

 1歳6か月児健診及び3歳児健診では、保健師、歯科衛生士、看護師、医師、歯科医師、栄養士、事務職が

主たるスタッフとなっていた。これ以外の職種を見ると、心理職が一番多く、ほぼ同数で保育士が多かった。

 過半数の市町村で心理職が導入されており、健診をサポートする保育士とともに、1歳6か月児健診、3歳

児健診で必要な職種として重要視されていることがうかがわれる。

 また市町村によっては、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士、視能訓練士の専門職を健診スタッフとして

入れているところも僅かであるがみられた。

質問3 1歳6か月児健診に携わった職種(n=906 1回の健診あたり17人)

医師

保健師

看護師

助産師

歯科医師

歯科衛生士

栄養士

心理職

保育士

言語聴覚士

作業療法士

理学療法士

視能訓練士

事務職

その他

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000人数

12311231 11681168

22862286

159159

1463146310001000

6136134949 1212 77 66

540540 748748

1883

5806

 質問2 健診実施時期(n=1006 複数記入)

101101

913913

241241

629629

188188

988988

284284

972972

9999178178

1か月

3〜4か月

6か月

9〜10か月

1歳

1歳6か月

2歳

3歳

5歳

*0

200

400

600

800

1000

1200件数

質問3 3歳児健診に携わった職種(n=989 1回の健診あたり18人)

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

12991299 11701170

59965996

2111211122202220

153153

1408140810211021

6416418181 1616 66 9292

580580897897

人数

医師

保健師

看護師

助産師

歯科医師

歯科衛生士

栄養士

心理職

保育士

言語聴覚士

作業療法士

理学療法士

視能訓練士

事務職

その他

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Ⅱ 健診について質問 1歳6か月児健診と、3歳児健診について11項目にわたり調査した

1)健診の形式について

 健診の形式について、集団健診、個別委託健診(医療機関への委託)、その他について質問したところ、1歳

6か月児健診と3歳児健診、ともに98%の市町村で集団健診が実施されており、個別健診は極めて少数であった。

2)担当する医師の診療科について

 健診に携わる医師の診療科について質問した。1歳6か月児健診、3歳児健診のいずれの場合も、小児科、

歯科、内科の医師が多かった。児童精神科、小児神経科、神経内科、精神科は極めて少数であった。

3)要観察・要精密判定の割合について �

①要観察・要精密判定とされる割合は、1歳6か月児健診で25%、3歳児健診で27% であった。判定理由の

内訳は、「発育/栄養、身体疾患、発達/行動」であった。

②要観察・要精密判定のうち、発達/行動に問題のあった割合は、1歳6か月児健診では、前述①で述べた割

合の43%(全体の11%)、3歳児健診では37%(同10%)であった。

③発達/行動の主な判定理由

 1歳6か月児健診、3歳児健診、ともに「言語発達」、「多動など行動」、「精神発達」、「社会性」、「癖・振る

舞い」、「癇癪・性格」、「生活習慣」、「愛着関係」の順であった。

要 25%のうち発達・行動の判定43%(=全体の11%にあたる)

要 25%のうち発達・行動以外による判定57%(=全体の14%にあたる)

否 75%

3)①要観察・要精密判定の要否1歳6か月(n=937)

2) 担当する医師の診療科1歳6か月(n=1000 複数記入)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900人数

849849

362362

55 1313 3 44

608608

3939

小児科

内科

児童精神科

小児神経科

神経内科

精神科

歯科

その他

要 27%のうち発達・行動の判定37%(=全体の10%にあたる)

要 27%のうち発達・行動以外による判定63%(=全体の17%にあたる)

否 73%

3)①要観察・要精密判定の要否3歳(n=939)

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900人数

2) 担当する医師の診療科3歳(n=998 複数記入)

小児科

内科

児童精神科

小児神経科

神経内科

精神科

歯科

その他

826826

396396

66 1212 44 66

608608

6868

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 今回の調査結果から、1歳6か月児健診で、言葉の発達だけではなく多動や社会性の問題のある子どもをス

クリーニングできる可能性が見出された。判定理由で1歳6か月児健診と3歳児健診の差が最も開いているの

は、「かかわりが難しいなどの社会性の問題」、次いで「多動などの行動の問題」の項目であった。

4)発達障害児のスクリーニングの実施状況について �

 1歳6か月児健診と3歳児健診においてスクリーニングを実施しているか、について聞いてみたが、81%が

スクリーニングしていると回答している。

 1歳6か月児健診と3歳児健診との比較を見たが大きな差はなかった。 

 

5)4)のスクリーニングの方法について �

 1歳6か月児健診と3歳児健診ともに同じ結果を示しており、スクリーニングを行っている市町村のうち、

「問診」が93%、「行動観察等」79%、「健診票」70%、であった(複数記入)。

 「専用の質問紙」を使用している市町村は、1歳6か月児健診は12%、3歳児健診は11%で少なく、1歳6

か月児健診の方が僅かに多くみられた。

いない13%

検討中4%

無記入2%

行っている81%n=817

4) 発達障害児のスクリーニングを行っているか?

1歳6か月(n=1006)

3)③発達・行動の判定理由(複数記入)1歳6か月(n=888) 3歳(n=918)

1歳6か月3歳

839 684 656 481 450 402 357 348 77855 783 727 600 497 431 354 334 82

言語発達多動等行動 精神発達 社会性 癖・振舞 癇癪・性格 生活習慣 愛着関係 その他

839839

684684656656

481481450450

402402357357 348348

7777

855855

783783727727

600600

497497

431431

354354 334334

8282

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

件数

いない13%

検討中4%

行っている81%n=816

4) 発達障害児のスクリーニングを行っているか?3歳(n=1006)

無記入2%

*本グラフ以降、1歳6か月児健診と3歳児健診のデータを同じグラフ内に並べて示す場合は、

 1歳6か月児健診の件数の多い順に並べた項目で棒グラフを設定する。

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6)「問診」や「行動観察等」で発達障害に気づく項目について �

[1歳6か月児健診]�

 70%以上の市町村が、「視線、言語、指差し、多動、気になる行動」をあげており、60%以上の市町村が「関

わり困難、運動遅滞、こだわり」の項目を選んでいた。

[3歳児健診]

 70%以上の市町村が「多動、言語、視線、こだわり、気になる行動」を、60%以上の自治体が「かかわり困

難、危険平気、パニック、感覚異常、気になる表情、運動遅滞」の項目を選んでいた。

 本調査の質問作成にあたり、心理臨床場面で観察される子どもの行動特徴を項目としてあげたが、多くの市

町村の健診場面で同様の特徴が見出されていた。このことから、全国的に発達障害に気づくための共通の視点

があることが明らかになった。

[1歳6か月児健診と3歳児健診の比較]

 多様な項目が選ばれているなかで、1歳6か月児健診では「視線」、3歳児健診では、「多動」が最も多く選

ばれている。また、「指差し」は1歳6か月児健診でのスクリーニングに特化された項目と考えられる。

1歳6か月3歳

778 756 743 739 700 644 640 629 585 574 556 554 543 540 536 528 527 461 455 453 363 341 322 66 197760 784 477 793 736 695 600 742 603 681 614 547 587 644 569 562 469 483 514 468 454 495 222 64 193

視線

言語

指差し

多動

気になる行動

関わり困難

運動遅滞

こだわり

気になる表情

危険平気

感覚異常

愛着関係

場所みしり

パニック

人見知強

精神遅滞

人見知無

癇つよい

少食偏食

睡眠障害

頑固

我慢なし

抱きづらい

その他

無記入

0

100

200

300

400

500

600

700

800 778778756756 743743 739739

700700

644644 640640 629629585585 574574 556556 554554

543543 540540 536536 528528 527527

461461 455455 453453

341341 322322

6666

197197

363363

760760784784

477477

793793

736736695695

600600

742742

603603

681681

614614

547547587587

644644

569569 562562

469469483483

514514468468

454454495495

222222

6464

193193

6)発達障害に気づくとしたら?(n=1006 複数記入)件数

5) 4)のスクリーニングの方法は?1歳6か月(n=817  複数記入)

問診

行動観察等

健診票

専用質問紙

その他

無記入

0

100

200

300

400

500

600

700

800件数

758758

643643571571

1011014545

178178

5) 4)のスクリーニングの方法は?3歳(n=816  複数記入)

0

100

200

300

400

500

600

700

800件数

759759

649649568568

86864747

177177

問診

行動観察等

健診票

専用質問紙

その他

無記入

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7)健診票でスクリーニングを行っている場合の発達障害チェック項目について �

 1歳6か月児健診で59%の市町村が、3歳児健診では58%が健診票に発達障害のチェック項目が「ある」

と答えている。

8)7)で「ある」と回答した場合、その項目は発達障害をチェックするのに充分か、について

 1歳6か月児健診と3歳児健診のいずれも、およそ17%前後の市町村が「充分」と選んでいるだけで、多

くの市町村が現在使用している健診票では充分に発達障害をチェックできているとは考えていないことがわ

かった。

9)5)のスクリーニングの方法のうち「専門の質問紙」を利用している場合について

 1歳6か月児健診では全体の5%の市町村で「M-CHAT」が用いられている。1か所で「PARS」を

利用していた。

 3歳児健診では、全体の0.6%の市町村で「M-CHAT」が用いられている。「PARS」を利用してい

るところは、全体の0.7%であった。

 一方で、「独自に作成した質問紙」を使用している市町村が、1歳6か月児健診で全体の7%、3歳児健診で8%

あった。

わからない1%

無い5%

無記入35%

ある59%n=588

7) 健診票に発達障害チェック項目はあるか?1歳6か月(n=1006)

わからない45%

はい18%

いいえ37%

8) その項目は発達障害に 気づくのに充分か?

1歳6か月

7) 健診票に発達障害チェック項目はあるか?3歳(n=1006)

わからない1%

無い5%

無記入36%

ある58%n=579

わからない45%

はい17%

いいえ38%

8) その項目は発達障害に 気づくのに充分か?

3歳

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10)健診における発達検査の実施について

 1歳6か月児健診では全体の28%で発達検査を実施していた。3歳児健診では29%が発達検査を実施して

いた。1歳6か月児健診と3歳児健診を比較すると、僅かであるが3歳児健診での実施が多かった。

11)10)の健診で発達検査を実施している場合の検査について

 「新版K式発達検査」は、1歳6か月児健診で全体の16%の市町村で、3歳児健診では17%利用しており、

次いで「遠城寺式・乳幼児分析的発達検査」は、1歳6か月児健診で全体の13%、3歳児健診では14%の市町

村が利用していた。他の検査としては「津守・稲毛式乳幼児精神発達検査」、「KIDS」などを利用している

市町村が僅かだが見られた。また、“その他”を選択した場合に具体的検査名を求めたところ、「田中ビネーⅤ

や鈴木ビネーなどの知能検査」や、「デンバー式発達スクリーニング検査」、「太田ステージ評価」、「PVT-

R�絵画語い発達検査」等を利用していることが分かった。

9) 5)で専用の質問紙を使用している場合の質問紙とは?

1歳6ヵ月(n=101 複数記入)

4646

11

7474

3434

M-CHAT PARS 独自に作成 その他0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

わからない0%

いいえ68%

無記入4%

はい28%n=280

10) 健診で発達検査を しているか?

1歳6か月(n=1006)

9) 5)で専用の質問紙を使用している場合の質問紙とは?

3歳(n=86 複数記入)

6 6 77

8080

3939

M-CHAT PARS 独自に作成 その他0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

わからない1%

いいえ66%

無記入4%

はい29%n=295

10) 健診で発達検査を しているか?3歳(n=1006)

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8

Ⅲ 健診後の対応について質問1 発達障害が疑われる乳幼児への対応1)健診後の支援体制について

 1歳6か月児健診では、「発達相談(心理職)、次いで継続連絡、次の健診まで様子を見る、保健センターの

教室などに誘う、継続訪問」等が方法として多く選ばれていた。次に多かったのは「専門医療機関への紹介、

専門の療育機関、地域の施設へ紹介」などであった。「同胞健診時に情報を得る」という項目も多く選ばれており、

支援につながる機会を増やすように工夫していることが分かった。3歳児健診では「次の健診まで様子を見る」

以外では、ほぼ同じ結果が得られた。

1歳6か月3歳

754 735 687 686 623 572 570 502 493 386 348 308 231 137762 725 467 613 618 611 550 528 507 397 360 314 250 143

762762725725

467467

613613 618618 611611

550550 528528507507

397397360360

314314

250250

143143

754754 735735687687 686686

623623

572572 570570

502502 493493

386386348348

308308

231231

137137

発達健診

(医師)に

発達相談

(心理職)に

継続連絡

電話や手紙

次の健診まで

様子を見る

保健センター

の教室等に

誘う

継続訪問

専門の

医療機関紹介

同胞健診時に

情報を得る

専門の

療育機関紹介

地域の施設へ

案内(発達・

療育センター)

相談機関に

案内

保健所で

定期的・言語

発達相談

児童相談所

紹介

その他

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

件数

1)健診後の支援体制は?1歳6か月(n=1003) 3歳(n=998)(複数記入)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

11) 実施している場合の発達検査は?1歳6か月(n=280) 3歳(n=295)(複数記入)

1歳6か月3歳

132132

1111 101033

4343

158158168168

140140

1212 111133

4848

件数

新版K式

遠城寺式

KIDS

津守式

SM社会生活

その他

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9

2)健診後の相談の頻度について

 健診後の発達相談や言語相談をどのような形で行っているかを質問したところ、1歳6か月児健診と3歳児

健診いずれも、およそ1割の市町村が「月一回」の頻度で健診後の個別相談を行っていた。また、「2週に一回」、

「2か月に一回」、「3か月に一回」という頻度で行っている市町村もあった。「その他」は選択肢以外の形で行っ

ているものと思われる。

3)発達相談の内容について

 およそ83 ~ 87%の市町村において、1歳6か月児健診と3歳児健診のいずれも「育児相談、言語相談」が

最も多く、次いで、「他機関につなぐ」、「行動観察」、「保護者の心理相談」、「療育相談」という順で選ばれて

いる。「アセスメント」は約半数、「身体リハビリ指導」は2割以下と、他に比して低くなっており、健診は相

談とリファー(他機関へつなげる)が主たる内容となっていることが読み取れる。

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

109109

4242 3939 3737

1717

150150

112112

4040 3838 3939

1717

154154

2) 健診後の個別相談1歳6か月(n=394) 3歳(n=400)(複数記入)

件数

月1回

3か月に1回

2週に1回

2か月に1回

週1回

その他

1歳6か月3歳

0

100

200

300

400

500

600

700

800720720

688688 667667620620

585585 580580

439439

141141

3939

718718 694694 675675623623

582582 582582

442442

135135

4040

3) 発達相談の内容は?1歳6か月(n=827) 3歳(n=829)(複数記入)

件数

育児相談

言語相談

指導

他機関に

つなぐ

行動観察

保護者の

心理相談

療育相談

指導

アセスメント

身体リハビリ・

指導

その他

1歳6か月3歳

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10

4)発達障害(疑い)が感じられた場合にフォローに関わる職種について �

 1歳6か月児健診では、98%が保健師 心理職が77% 保育士が67%がフォローに当っていた。保健師の次

に心理職、保育士が多く、発達障害のフォローは、保健師と心理職及び保育士がかかわっているという結果で

あった。3歳児健診でも同様の傾向が見られた。

5)発達を促すプログラムの実施について �

 1歳6か月児健診で25%の市町村が、3歳児健診で22%の市町村が、何らかのプログラムを実施していた。

6)5)で「実施している」場合のプログラムについて �

 実施していると回答した市町村に対してプログラム名を質問したところ、質問が不明確であったためと思わ

れるが、ほとんどは、親子教室、遊びの教室、発達支援室、療育教室、事後教室、幼児教室、グレーゾーン教

室といったように、“事業名”を挙げていた。療育等の具体的プログラム名を挙げていたのは、1歳6か月児健診、

3歳児健診ともに17市町村のみであった。ちなみに、17か所の市町村の回答を紹介すると、「感覚統合」、「音

楽療法」、「ポーテージ」、「太田ステージ」、「インリアル」、が5か所以下の複数の自治体で採用されており、そ

の他、「ペアレントトレーニング」、「ABA」、「応用行動分析」、「認知発達治療」、「SST」、「ムーヴメント」

が各1か所で実施されていた。

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000 956956

751751

659659

391391 372372

267267191191

141141 154154

952952

754754

639639

397397 371371

272272

188188135135 156156

4) フォローに関わる職種は?1歳6か月(n=977) 3歳(n=972)(複数記入)

件数

保健師

心理職

保育士

言語聴覚士

小児科医

児童精神科医

小児神経科医

作業療法士

理学療法士

その他

1歳6か月3歳

無回答7% はい

25%n=254

いいえ68%

5) 発達を促すプログラムの実施1歳6か月(n=1006)

無回答9% はい

22%n=216

いいえ69%

5) 発達を促すプログラムの実施3歳(n=1006)

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11

質問2 他機関連携の概要1)他機関を紹介した後の機関と連携について �

 1歳6か月児健診と3歳児健診ともに95%の市町村が健診後も紹介した機関と連携を行っていると答えてお

り、連携に力を入れていることがわかった。1歳6か月児健診と3歳児健診の比較で差はなかった。

2)連携機関の種類について �

 連携機関として一番多く選ばれたのは「保育所」であり、次いで「医療機関、公的療育機関、公的相談機関、

幼稚園、民間療育機関」等々。「教育委員会、小学校」なども選ばれており、市町村においては領域を広げて

さまざまな機関との連携を行っていることがわかった。

3)連携の様態について �

 連携の内容では、「健診時の情報を伝える」92%台、「成長に従い連絡を取り合う」71%、が多かった。1歳

6か月児健診と3歳児健診の比較では特に差はなかった。「親子支援のネットワーク作り」は26%の市町村に

とどまっていた。

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

804804

574574 568568

495495 492492

296296 285285218218

158158

2222

583583 572572506506

587587

315315369369

251251

166166

2323

819819

2) 連携機関とは?1歳6か月(n=949) 3歳(n=954)(複数記入)

件数

保育所

医療機関

公的療育機関

公的相談機関

幼稚園

民間療育機関

教育委員会

小学校

民間相談機関

その他

1歳6か月3歳

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

866866

667667

246246

134134

884884

683683

247247

137137

3)どのような連携をとっていますか?1歳6か月(n=939) 3歳(n=951)(複数記入)

件数

健診時の

情報を伝える

成長に従い

連絡を

取り合う

親子支援の

ネットワークを

作る

その他

1歳6か月3歳

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質問3 健診マニュアルの発達障害の項目について �

 全体の45%が「ある」と答えているが、市町村の半分以上のマニュアルに、発達障害に対応する項目が加え

られていないということがわかった。

質問4 健診スタッフの発達障害に関する知識について �

 発達障害に関する知識は、「充分あり」が9%、「ある程度あり」が77%、と答えており、9割近くの市町村で、

スタッフは知識を持っていると考えられている。

質問5発達障害についての勉強会やスタッフへの研修について �

 勉強会や研修は、「充分である」21%、「不充分である」66%となっている。

無回答7%

無い48%

ある45%

質問3 健診の実施マニュアルに発達障害の 項目がありますか?(n=1006)

無回答1%

不充分である13%

ある程度持っている77%

充分持っている9%

質問4 健診スタッフの発達障害に関する知識は?(n=1006)   

無回答4%

今後行う9%

充分行っている21%

不充分66%

質問5 発達障害に関する勉強会や研修は?(n=1006)

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Ⅳ 心理職の仕事について質問1心理職の雇用形態について(常勤・非常勤)と臨床心理士資格について

 常勤心理職の雇用は極めて少数であることがわかった。59か所の市町村で常勤雇用していて、その1か所当

りの雇用人数は、1.6人である。562か所の市町村は非常勤心理職を雇用しており、その1か所当りの雇用人数

は3.3人であった。また、常勤、非常勤に関わらず心理職の臨床心理士有資格者の割合は、臨床心理士:非臨

床心理士、概ね5:2 であった。

質問2心理職の仕事の内容について

 心理職には多様な仕事内容が求められていることが明らかになった。「発達相談指導」、「保護者の心理相談」、

「発達検査の実施」、「育児相談」、「療育相談・指導」、「他機関紹介・連携」、「他職種との連携」、「グループの運営」

等々。

無回答54%

常勤あり6%

常勤なし40%

質問1 1)常勤心理職の雇用は?(n=1006)

0

100

200

300

400

500

600

700

質問2 心理職はどのような仕事をしていますか?(n=634 複数記入)

597597

480480 462462426426

321321277277 264264

206206

2626

発達相談指導

保護者の心理相談

発達検査の実施

育児相談

療育相談・指導

他機関紹介・連携

他職種との連携

親子教室・グループ

その他

件数

非常勤あり56%

無回答18%

非常勤なし26%

質問1 1)非常勤心理職の雇用は?(n=1006)

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質問3心理職にどのような役割を期待されますか?

 自由記述では、回答した市町村の1/3以上からさまざまな声が寄せられ、今後の期待として、親子関係の見

立て、親支援・親カウンセリング、子どものアセスメント・発達支援プログラムへの参加、支援者(保健師、

保育士、教諭・教員等)に対する“子どもへの具体的な関わり方”の指導・助言を求める声が多く、そのほか、

他職種や他機関との連携や研究会への協力などが期待されていることがわかった。一方、地域に心理職がいな

い、発達に詳しい心理職についてどこにアクセスすれば良いのかわからない、心理職の雇用には財政・予算上

限界がある等、記述されていた。

4 調査結果のまとめ1)Ⅰの基本項目について質問1 回答者の職種は概ね保健師であった。

質問2 健診実施時期は、市町村によっては、9~10か月に実施するなど健診の回数を増やす工夫をしてい

るところが多く見られた。

 健診にかかわる職種ではいずれの健診でも、保健師が主たるスタッフとしてたずさわっていた。その他の職

種では、歯科衛生士・看護師・医師・歯科医師・栄養士・事務職が多かった。心理職は、保育士とともに6割

以上の市町村でスタッフとなっていることが明らかになった。

2)Ⅱの各地域の健診について 両健診のいずれも集団形式での実施が多く、担当する医師の診療科は、小児科・内科・歯科が多かった。要

観察・要精密判定の割合は、1歳6か月健診で25%、3歳児健診27%であった。全健診の対象児のうち要観察・

要精密判定を受けた対象者の中で「発達・行動」に問題のあった割合は、1歳6か月児健診で11%、3歳児健

診で10%であることが明らかになった。

 発達障害のスクリーニングについては両健診ともに、81%の市町村で行われており、方法としては問診、行

動観察等、健診票の利用により行っていることが明らかになった。なお発達障害に気づく視点について、項目

を挙げて調査してみたが、多くの市町村が共通した視点をもっている現状がうかがえた。ただし健診票に発達

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

200

心理職にどのような役割を期待しますか?(n=353 複数記入)

186186

130130

9696

2929

6666

親支援/

親カウンセリング

アセスメント/

療育指導への参加

関係者支援/

連携

研修会・勉強会/

スーパバイザー

心理職が少ない/

いない

件数

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障害チェック項目を入れているところは、両健診で6割弱であった。さらに健診票に発達障害チェック項目を

入れている市町村でも、その健診票だけでは発達障害をチェックするのに充分ではないと考えていることも明

らかになった。また市町村のごく一部では、独自の質問紙を作ったり、M-CHAT�を健診に利用したりして

いることがわかった。また全般的発達を評価する既存の発達検査として、3割弱の市町村で新版K式発達検査

や遠城寺式・乳幼児分析的発達検査が利用されていた。

3)Ⅲの健診後の対応について 健診後の支援体制では、心理職への発達相談、保健センターの教室に誘う、専門の医療機関、専門の療育機�

関、地域の発達・療育センターなどの専門機関への紹介が行われていることがわかった。一方で、個別のフォ�

ローとして、継続連絡(電話や手紙)、継続訪問、同胞健診時に情報を得るなどが行われており、支援機関に

つなげない・つながらない親子に対しては専門機関紹介の頻度と同程度の頻度で、アプローチの工夫がなされ

ていた。一方、気になる子どもに対するスタッフの継続的関心の向け方として、次の健診まで様子を見ること

については特に1歳6か月児健診でその傾向が強かった。

 健診後の個別相談を行う場合としては、月一回が多かった。相談の内容は育児相談、言語相談指導、他機関

へのリファー、行動観察、保護者の心理相談、療育相談指導ついでアセスメントが多かった。発達障害あるい

はその疑いを感じられた場合のフォローは、両健診とも保健師が主にかかわっているが、心理職、保育士が活

用されていることが明らかになった。

 健診後に紹介先機関との連携では両健診とも95%で行われており様々な機関との連携をしていることがわ

かった。連携の内容は、健診時の情報を伝える、成長に伴い連絡を取り合うなどがなされている。しかし、両

健診ともに、親子支援のネットワークを作っている市町村は26%にとどまっていることも明らかになった。健

診マニュアルに発達障害の項目があるのは45%で、半数以上の市町村のマニュアルには載せられていないこと

もわかった。一方、8割以上の市町村で、現場のスタッフには発達障害に関する知識があると答えていた。なお、

発達障害についての勉強会やスタッフの研修については、不充分であると答えた市町村は66%であり、多くの

市町村では、更なる研修が必要と考えていることがわかった。また、発達障害が疑われた場合に発達を促すプ

ログラムを実施している市町村は2割強にとどまっている。

4)Ⅳの心理職の仕事について 心理職は、圧倒的に非常勤雇用が多く、その仕事内容は多様な方面に携わっていることがわかった。なお自

由記述で心理職に求める役割の記入を求めたところ、多くの市町村で健診業務における心理職の参加を期待す

る記述が多くみられた。

5.考察と展望1)乳幼児健診における早期発見・早期支援の充実に向けて 平成17年に発達障害者支援法が施行され、各市町村で健診における発達障害の特性をもつ子どもの早期発

見・早期支援のためにさまざまな工夫がなされていた。健診スタッフはある程度以上の知識を持ち、発達障害

に気づく共通の視点を持って健診に臨み、問診、行動観察等、健診票の利用等により発達障害の特徴をもつ子

どもに対応している実態がわかった。そうしたなかで、要観察・要精密判定を受けた子どものうち、「発達・

行動」に問題のある子どもは、1歳6か月児健診で全受診児の11%、3歳児健診では同10%把握されているこ

とは、就学までの支援の連続性を考える上で注目すべきことである。

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16

 一方で、現場では早期の発見と支援のためには、現状の健診システムではまだまだ充分ではないと感じられ

ていることもわかった。今後の課題としては、健診に関わるスタッフの誰でもが発達障害に早期に気づき、早

期支援につなげられることを視野に入れて、①�健診のより適切な時期や頻度についての検討、②�健診票の精

査と充実に向けた検討、③�健診マニュアルの検討、④�支援モデルの検討などにより、市町村健診の全体的見

直しを行い、全国共通のものとして使用されることが望まれる。

2)発達障害支援と健診後の流れについて 健診に続く発達支援としては、対象者との支援関係が途切れないようにさまざまな工夫がなされており、幼・

保育機関、医療機関、相談機関、療育機関、等への紹介・連携が積極的に行われている一方で、気になる親子

に対しては専門機関の支援につながらない場合の工夫として、個別アプローチを行っている現状も示された。

 支援が必要な親子に対して気づきと同時に個別相談、遊びのグループなどにより療育プログラムにつながる

までの間の発達支援の提供が肝要であるが、例えば、1歳6か月児健診後の支援として、次の健診まで様子を

見る、が第3位であることの実情も含めて、健診時の気づきに続いて親子をどのように支援環境に導入し、ど

のように就学までつなげているかの詳細を調査できなかったことが課題として残された。また、気づき後の支

援に関して、“気づき”を保護者が受け止められるかたちで“伝え”、発達支援プログラムに“つなげる”こと

の困難に関して心理職の役割が強く求められていたことは、心理職の課題として特記しておきたい。

 いずれにしても、健診に始まる発達障害支援を就学相談までの流れのなかで、地域差なく実施できるよう、

フォローも含めた健診システム・支援モデルが求められる。

3)人材育成と心理職活用について 健診にかかわる専門職としては、保健師(看護師)、医師、歯科衛生士、栄養士に次いで心理職が活用され

ていることがわかった。健診スタッフは発達障害に関してある程度以上の知識ありとのことであるが、研修は

まだ不充分とされており、さらなる現場スタッフの人材育成が求められている。

 一方、心理職に対しては、子どもの発達アセスメント、親子関係の見立て、保護者・支援者への相談支援、

他機関連携など多様な役割を求められており、心理職の一層の活用・拡充を期待するものである。その際、心

理専門職領域においては、発達障害支援に有用な心理専門職の育成、適切な人材の紹介システムの構築が必要

であることが指摘されていることも心に留めておきたいことである。

おわりに 本調査を実施して、心理職に期待されている役割の大きさと多様性を実感した。乳幼児の健全育成と保護者

への育児支援という乳幼児健診本来の目的のためにも、私たちは、その期待に応えるために何をするべきかと

いう大きな課題を受け止め、今後の活動に反映させていかなくてはならないと考える。改めて本調査にご協力

頂いた皆様に心より感謝申し上げ、一層の努力を決意するところである。

平成26年3月31日

一般社団法人日本臨床心理士会 福祉領域委員会 発達障害支援専門部会

工藤宏子(部会長)工藤 剛 黒澤礼子(以上委員)高原香織

二口繭子 日戸由刈(以上協力委員)倭文真智子(事務局)� 

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資料:調査票

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Ⅰ 基本項

目質

問 1

次に

お尋

ねす

る下

の項

目に

記入

、該

当職

種は

右の

記入

欄の

に○

印を

ご記

入く

ださ

い。

記入

者職

種①

保健

師②

看護

師③

心理

職④

事務

職⑤

その

他( 

  

  

  

  

 )

質問

2 貴

地域

の乳

幼児

健診

で実

施し

てい

る健

診す

べて

に、

○印

をご

記入

くだ

さい

市区

町村

名担

当部

署名

一般社団法人日本臨床心理士会「市区町村乳幼児健診における発

達障

害に関

する調

査」 平成24年7月

質問

3ま

た、1歳6ヵ月児

と3歳児健診

に携

わるスタッフ数

を職

種ご

とに

ご記

入く

ださ

い。

(わ

かる

範囲

で結

構で

す)

都道

府県

Ⅱ 貴地域の健診についてご記入

ください

(複

数の

機関

がある場

合は

、主

要な健

診機

関をご想

定ください)

1)健

診は

どの

よう

な形

で行

われ

ます

か。

  

 1歳

6ヵ

月児

健診

3歳

児健

①集

団健

診②

個別

委託

健診

(注

)(

)(

。い

さだ

く入

記ご

に)

(:

他の

そ③ ①

小児

科②

内科

③児

童精

神科

④小

児神

経科

⑤神

経内

科⑥

精神

科⑦

歯科

( 

  

  

  

)( 

  

  

  

%%

%%

③発達・行動

の主

な判

定理

由に

○を

つけ

てく

ださ

い。

(複

数記

入可

) 

 a 

精神

発達

遅滞

・あ

るい

は疑

い 

 b 

言語

発達

遅滞

・あ

るい

は疑

い 

 c 

気に

なる

癖・ふ

るま

い 

 d 

多動

など

行動

の問

題 

 e 

癇癪

など

性格

上の

問題

  

f  か

かわ

りが

難し

いな

ど社

会性

の問

題P

-1

  

g 生

活習

慣の

問題

(以

下、

この

ペー

ジ下

まで

の1歳

6ヵ

月児

、3歳

児健

診の

記入

欄で

す)

質問

歳6

カ月

児健

診と

3歳

児健

診に

つい

てお

尋ね

しま

す。

  

  

  

  

(注

:個

別委

託健

診は

医療

機関

に委

託す

る場

合で

す)

  

  

以下

、各

項目

につ

いて

右の

各記

入欄

に○

印 [

%欄

は、

数字

] を

ご記

入く

ださ

い。

3)事

由別

経過

観察

及び

事由

別精

密検

査の

分類

項目

には

、発

育・呼

吸器

・循

環器

・口

腔・腹

部・泌

尿・

2)担

当す

る医

師の

診療

科を

教え

てく

ださ

い。

(複

数記

入可

 子

ども

につ

いて

、お

尋ね

しま

す(概

ねで

結構

です

)。

 生

殖器

・皮

膚・骨

格運

動器

・眼

・耳

・血

液及

び造

血器

・神

経・発達・行動

・そ

の他

疾患

・栄

養等

があ

り ま

すが

、そ

の中

で特

に発達・行動

につ

いて

、要

観察

(経

過観

察も

含む

)・要

精密

の判

定を

受け

①要

観察

・要

精密

判定

を受

けた

子ど

もの

全体

にお

ける

割合

は②

その

判定

のう

ち、発達・行動 

の割

合は

⑧そ

の他

:( 

 )に

ご記

入く

ださ

い。

P1

g生

活習

慣の

問題

健診

実施

時期

1ヵ

月3~

4ヵ

月6ヵ

月9~

10ヵ

月1

歳1歳

6ヵ月

2歳

3歳

5歳

*

実施

健診

に ○

⇒名

名名

名名

名名

名名

名名

名名

名名

名名

名名

名名

名名

名名

名名

名名

名名

* 

実月

齢が

異な

る場

合に

はこ

ちら

にご

入く

ださ

い。

⑬保

育士

⑭事

務職

⑮そ

の他

⑯1回

の合

計人

⑨言

語聴

覚士

⑩作

業療

法士

⑪理

学療

法士

⑫視

練訓

練士

⑤歯

科衛

生士

⑥看

護師

⑦助

産師

⑧栄

養士

①医

師②

歯科

医師

③保

健師

④心

理職

1歳

6ヵ

月児

健診

3歳

児健

  

h 

養育

者と

の愛

着関

係の

問題

  

i  そ

の他

4)発達障害児

のス

クリー

ニン

グを

行っ

てい

ます

か。

①行

って

いる

②行

って

いな

い③

対策

検討

①問

診②

行動

観察

等③

健診

票④

専用

の質

問紙

⑤そ

の他

6)5

)の

①「問

診」、

②「行

動観

察等

」で

スク

リー

ニン

グを

行っ

てい

る場

合に

お尋

ねし

ます

。発達障害

に気

づく

とし

たら

、ど

のよ

うな

こと

で気

づき

ます

か。

(複

数記

入可

)①

言語

の遅

れ②

指差

しが

ない

③視

線が

合わ

ない

④抱

きづ

らい

⑤か

かわ

りが

難し

い⑥

保護

者と

の愛

着関

係が

でき

てい

ない

⑦じ

っと

して

いな

い・多

動⑧

我慢

がで

きな

い⑨

癇が

強い

⑩パ

ニッ

ク(混

乱状

態)に

なる

⑪人

見知

りが

ひど

い⑫

人見

知り

をし

ない

⑬場

所み

しり

がひ

どい

⑭危

ない

こと

を平

気で

する

(目

が離

せな

い)

⑮非

常に

頑固

⑯だ

  

  

 (以

下、

この

ペー

ジ下

まで

の1歳

6ヵ

月児

、3歳

児健

診の

記入

欄で

す)

5)4

)の

①「行

って

いる

」の

場合

、ど

のよ

うな

方法

です

か。

⑯こ

だわ

りが

強い

⑰感

覚異

常が

ある

(過

敏・鈍

い)

⑱少

食・偏

食⑲

睡眠

障害

⑳気

にな

る動

作・行

動㉑

気に

なる

表情

㉒運

動の

遅れ

㉓精

神遅

滞㉔

その

他7

)5

)の

③「健

診票

」で

スク

リー

ニン

グを

行っ

てい

る場

合に

つい

てお

尋ね

しま

す。

  そ

の「健

診票

」に

は発達障害

をチ

ェッ

クす

る項

目が

あり

ます

か。

①は

い②

いい

え③

わか

らな

い8

)7

)の

①「は

い」の

場合

、健

診票

の項

目は発達障害

をチ

ェッ

クす

るの

に十

分で

すか

。①

はい

②い

いえ

③わ

から

ない

  

どの

よう

な質

問紙

を用

いて

いま

すか

。①

日本

語版

M-C

HA

T②

PA

RS(広

汎性

発達

障害

日本

自閉

症協

会評

定尺

度)

③独

自に

作成

した

質問

紙)

()

(い

さだ

く入

記ご

に)

(:

他の

そ④

10

)貴

機関

の乳

幼児

健診

では

発達

検査

を実

施し

てい

ます

か。

①は

い②

いい

え③

わか

らな

①津

守・稲

毛式

乳幼

児精

神発

達検

査②

遠城

寺式

乳幼

児分

析的

発達

検査

9)5

)の

④「専

用の

質問

紙」を

用い

てス

クリー

ニン

グを

行っ

てい

る場

合に

つい

てお

尋ね

しま

す。

11

)1

0)の

①「は

い」の

方に

お尋

ねし

ます

。 

 乳

幼児

健診

で行

って

いる

発達

検査

はど

のよ

うな

もの

です

か。

(複

数記

入可

P-

2②

遠城

寺式

乳幼

児分

析的

発達

検査

Page 19: 乳幼児健診における発達障害に関する 市町村調査 報告書 ...2 質問2 乳幼児健診の実施時期について 多くの市町村では厚生労働省の定め(母子保健法12条および13条)に基づき、3〜4か月健診、1歳6か月

1歳

6ヵ

月児

健診

3歳

児健

③新

版K

式発

達検

査④

KID

S(乳

幼児

発達

スケ

ール

)⑤

S‐M

社会

生活

能力

検査

( 

  

  

  

)( 

  

  

  

)⑦

行っ

てい

ない

Ⅲ 貴地域

の健診後の対応についてご記入

ください

(複

数の

機関

がある場

合は

、主

要な健

診機

関をご想

定ください)

⑤保

健所

保健

セン

ター

の遊

びの

教室

・乳

幼児

親子

教室

に誘

う⑥

保健

所で

定期

的に

発達

相談

や 言

語相

談を

行う

 ⑦

相談

機関

に案

内す

る(公

的・民

間・N

PO

・大

学・他

)⑧

地域

の施

設へ

案内

する

⑬同

胞健

診時

に情

報を

得る

⑨専

門の

医療

機関

へ紹

介す

る⑩

専門

の療

育機

関へ

紹介

する

(公

的・民

間・N

PO

①発

達健

診(医

師)に

つな

ぐ②

発達

相談

(心

理職

)に

つな

  

健診

後の

発達

相談

や言

語相

談な

どを

、ど

のよ

うな

形で

行っ

てい

ます

か。

⑭そ

の他

1)貴

機関

では

、健

診後

の支

援体

制と

して

はど

のよ

うな

もの

があ

りま

すか

。(複

数記

入可

2)1

)の

⑥で

、○

を記

入し

た場

合に

つい

てお

尋ね

しま

す。

  

その

頻度

を下

から

選ん

で、

右の

欄に

記号

を記

入し

てく

ださ

い。

⑪児

童相

談所

へ紹

介す

る⑫

次の

健診

時ま

で様

子を

見る

③継

続的

に電

話や

手紙

で連

絡す

  

  

 【頻

度】 

a. 週

1回

 

b. 2

週に

1回

 

c. 月

1回

  d

. 2

ヵ月

に1

回  

e. 3

ヵ月

に1

回 

f. そ

の他

( 

  

  

  

 )

  

  

  

  

(育

成室

・発

達セ

ンタ

ー・療

育セ

ンタ

ー・他

④継

続的

に訪

問す

る 

質問

1 発

達障害が

疑わ

れる

乳幼

児へ

の対

応に

つい

てお

尋ね

しま

す。

  

   

以下

、各

項目

につ

いて

右の

各記

入欄

に○

印 [

2)の

み記

号] を

ご記

入く

ださ

い。

 (以

下、

この

ペー

ジ下

まで

の1歳

6ヵ

月児

、3歳

児健

診の

記入

欄で

す)

都道

府県

 名

市区

町村

⑥そ

の他

:( 

 )に

ご記

入く

ださ

①個

別②

グル

ープ

相談

①育

児相

談②

言語

相談

・指

導③

療育

相談

・指

導④

身体

リハ

ビリ指

導⑤

アセ

スメ

ント

⑥他

機関

につ

なぐ

⑦保

護者

の心

理相

談⑧

行動

観察

⑨そ

の他

①小

児科

医②

児童

精神

科医

・小

児神

経科

医な

ど③

保健

師④

心理

職⑤

言語

聴覚

士⑥

作業

療法

士⑦

理学

療法

士⑧

保育

士⑨

その

①は

い②

いい

え 

( 

  

  

  )

( 

  

  

  )

1)他

機関

と連

携を

取っ

てい

る①

はい

②え

質問

2 他

機関

を紹

介し

た後

にそ

の機

関と

連携

を取

って

いま

すか

 

どの

よう

な職

種の

方が

関わ

りま

すか

。(複

数記

入可

3)発

達相

談の

内容

には

どの

よう

なも

のが

あり

ます

か。

(複

数記

入可

4)発達障害

、あ

るい

は発達障害の疑い

が感

じら

れた

乳幼

児の

フォ

ロー

に、

  

   

以下

、各

項目

につ

いて

右の

各記

入欄

に○

印を

ご記

入く

ださ

い。

5)貴

機関

にお

いて

、発

達を

促す

ため

のプ

ログ

ラム

を実

施し

てい

ます

か。

6)5

)の

①「は

い」の

場合

、ど

のよ

うな

プロ

グラ

ムで

すか

P-

3②

いい

2)1

)の

①「は

い」の

場合

、ど

のよ

うな

機関

です

か。

(複

数記

入可

)1歳

6ヵ

月児

健診

3歳

児健

 ①

医療

機関

②公

的相

談機

関③

公的

療育

機関

④民

間相

談機

関⑤

民間

療育

機関

⑥保

育所

⑦幼

稚園

⑧小

学校

⑨教

育委

員会

)(

)(

。い

さだ

く入

記ご

に)

(:

他の

そ⑩

3)ど

のよ

うな

連携

をと

って

いま

すか

。(複

数記

入可

)①

健診

時の

情報

を伝

える

②親

子支

援の

ネッ

トワ

ーク

を作

る③

成長

にし

たが

い連

絡を

取り

合う

④そ

の他

 

①は

い 

 ②

いい

え 

 

①充

分持

って

いる

②あ

る程

度持

って

いる

③ま

だ不

充分

であ

①充

分行

って

いる

②不

充分

であ

る③

今後

行う

予定

であ

Ⅳ 心

理職

の仕

事について

(複

数の

機関

がある場

合は

、主

要な健

診機

関をご想

定ください)

質問

3 乳

幼児

健診

実施

に関

する

マニ

ュア

ルに

発達

障害

の項

目が

あり

ます

か。

右の

記入

欄に

○印

をご

記入

くだ

さい

(以

下、

質問

2‐3)‐④

まで

の1歳

6ヵ

月児

、3歳

児健

診の

記入

欄で

す)

  

  

 右

の欄

に○

印を

ご記

入く

ださ

い。

質問

4 健

診ス

タッ

フは

、発

達障

害に

関す

る知

識を

持っ

てい

ます

か。

右の

記入

欄に

○印

をご

記入

くだ

さい

質貴

務職

右数

質問

5 貴

機関

では

、発

達障

害に

つい

て、

勉強

会や

スタ

ッフ

への

研修

など

を行

って

いま

すか

職仕

事(複

数機

関あ

場合

、要

健診

機関

を定

名勤

常①

名何

)1

名勤

常非

②か

すま

い名

士理

心床

臨①

のそ

)2

名職

理心

の他

のそ

②は

訳内

①育

児相

談②

発達

相談

・指

導③

保護

者の

心理

相談

④発

達検

査の

実施

⑤療

育相

談・指

導⑥

親子

教室

やグ

ルー

プの

運営

⑦他

職種

との

連携

⑧他

機関

の紹

介・連

携・コ

ーデ

ィネ

ート

⑨そ

の他

( 

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

  

 )

************************ ご

多忙

のと

ころ

、ご

協力

、大

変有

難う

ござ

いま

した

。************************

質問

3 心

理職

にど

のよ

うな

役割

を期

待さ

れま

すか

。(自

由記

述)

質問

1 貴

機関

で勤

務し

てい

る心

理職

につ

いて

お尋

ねし

ます

。右

の記

入欄

に人

数を

ご記

入く

ださ

い。

質問

2 貴

機関

で、

心理

職は

どの

よう

な仕

事を

して

いま

すか

。右

の記

入欄

に○

印を

ご記

入く

ださ

い。

(複

数記

入可

P-

Page 20: 乳幼児健診における発達障害に関する 市町村調査 報告書 ...2 質問2 乳幼児健診の実施時期について 多くの市町村では厚生労働省の定め(母子保健法12条および13条)に基づき、3〜4か月健診、1歳6か月

乳幼児健診における発達障害に関する市町村調査 報告書

発行日 平成26年3月31日

編��集 一般社団法人 日本臨床心理士会

       福祉領域委員会 発達障害支援専門部会

発行者 一般社団法人��日本臨床心理士会

  ����〒113-0033 

��������東京都文京区本郷2-27-8 太陽館ビル401

    �TEL�03-3817-6801 FAX�03-3817-6802

    �E-mail [email protected]

    �URL http://www.jsccp.jp/