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赤痢菌および類似大腸菌の迅速鑑別に関する研究

大阪空港検疫所(所長:林 和)

大村 寛造 吉 田 昭夫 鈴木 則彦

高井 慎也 楠井 善久 中野 康夫

大阪府立公衆衛生研究所

宮 田 義人

(平成3年9月25日 受付)

(平成3年11月8日 受理)

Key words: Shigella, E. coli, rapid identification,

glycosidases, PGUA test

要 旨

赤 痢菌 お よび赤 痢菌 類似 の生化学 的性 状(リ ジ ソ脱炭 酸陰 性,非 運 動性 かつ 乳糖 非 分解)を 示 す大 腸

菌(赤 痢 菌 類似 大腸菌)を 鑑別 す る 目的 で,Indole(tryptophanase),PGUA(β-glucuronidase),お

よびONPG(β-galactosidase)の3種 類 の性状 を調 べた 結果,Indoleお よびONPGが ともに陽 性 の赤

痢菌 株 は なか った.ま た,Indoleお よびPGUAが ともに陰 性 の赤 痢 菌類似 大腸 菌株 は み られ なか った.

赤痢 菌類 似 の性状 を示 し,か つShigelal dyaenteraieま た はShigella boydiiと 共 通抗 原 を もつ 大腸菌 株 は

この3種 類 の試験 に よ って,赤 痢 菌 と鑑別 され る ことがわか った.さ らに,Shigella flexneri6の ガス非

産生 株(Boyd88型,非 定型 の生 物型)はPGUA活 性 を示す が,S.flexneri 6 (Manchester型)や ガス

産生 性 のS.boydii 13はPGUA活 性 を示 さない こ とがわ か った.以 上 の こ とか ら,こ れ ら3種 の性 状 を

調べ るこ とに よ り赤 痢菌 と赤 痢菌 類似 性状 を示 す大 腸菌 を よ り簡便 迅速 に鑑 別 で きる こ とを示 した.

はじめに

わが国における腸管系法定伝染病の1989年 の発

生状況はコレラ(患 者95人),腸 チフス(患 者105

人),パ ラチフス(患 者65人),真 性(細 菌性)赤

痢(患 者826人)で あった1)が,空 港検疫所におい

て発見 された真性赤痢患者 は213人 を占めてい

る2).また,大 阪府下で発生した赤痢症例の うち輸

入症例が占め る割合は1982年 から7年 連続 して

80%以 上を示 してお り,1989年 においては96%が

輸入例 とその二次発生例でしめ られていた3).一

方,病 原菌が検出された海外旅行者下痢症例の う

ち18.9%か ら赤痢菌が検出されてお り,赤 痢はわ

が国における輸入感染症の最 も重要な一つを占め

ている3).

わが国では,赤 痢患者は伝染病予防法により二

次感染を防止す るため隔離 され,類 似患者もまた

培養検査の結果を待つ間その行動が制限されてい

る.し たがって,真 性赤痢患者の診定法である培

養検査には正確性 とともに迅速性が必要であ り,

さらにその方法にはすべての検査室で実施可能な

簡便性が求め られ る.

下痢患者のふん便培養検査に際 して,確 認培養

上の性状が赤痢菌の性状に一致 しかつ赤痢菌診断

用血清に凝集する赤痢菌以外の菌種や,glucoseか

らgasを 産生す る赤痢菌 もしばしば検出され,一

般検査室における赤痢菌の同定を困難 なものにし

ている.赤 痢菌と容易に鑑別しがたい菌種 として

は,赤 痢菌 と共通抗原を有す るenteroinvasive-

Escheriohia coli(EIEC),Alkalescen3Dispar(八D

group)の 大腸菌等が挙げ られ る.と くに赤痢菌 と

別刷請求先:(〒560)大 阪府豊中市螢池西町3-555

大阪空港検疫所 大村 寛造

感染症学雑誌 第66巻 第4号

赤痢菌および類似大腸菌の迅速鑑別 457

これらの菌種の鑑別点が一部の生化学的性状であ

る場合が多 く,従 来法4)では最終判定 までに数 日

間を要するため,菌 種同定および患者診断の迅速

化の妨げ となっている.

また,Polymerase Chain Reaction(PCR)5)を

応用 して腸管侵入性関連 プラス ミドを検出す る

DNA診 断法 も開発されているが,こ の方法では

赤痢菌 とEIECを 鑑別することはできない.

したがって,検 査室 レベルでは,赤 痢菌 とその

類似菌種を迅速,正 確かつ容易に鑑別する方法が

強 く求め られている現状にある.

赤痢菌および大腸菌のPGUA活 性をしらべる

ための人工酵素基質 としてはp-nitrophenyl-β-

D-glucuronide6)7)や,4-methylumbelliferyl-β-D-

glucuronide(MUG)8)9)を 使用した成績が報告 さ

れているが,赤 痢菌および大腸菌の同酵素活性を

それぞれの血清型に区分 して詳細に検討した報告

はみられない.

MUGを 用いる方法は,反 応液の遠心分離上清

を採取 し紫外線照射下で判定する必要があ り操作

の煩雑性を残 している.

一方,種 々の分子遺伝学的方法によ りPGUA

活性遺伝子を確認 した報告8)もみられるが,一 般

検査室で利用できるまでにはなお改良の余地が残

されている.

著者 らは,赤 痢菌および大腸菌の分離株につい

てIndole,PGUAお よびONPGの3種 類の酵素

活性を各血清型 と並行 して調べ,そ の成績を類型

(パ ターン)化することにより両者を迅速かつ簡便

に鑑別す る方法を検討 したので報告する.

材料 と方法

1.供 試菌:大 阪空港,名 古屋空港および大阪府

立公衆衛生研究所において主 として海外旅行者下

痢症の患者か ら分離 した赤痢菌377株 と大腸菌124

株を用いた.

2.使 用菌株の同定:使 用 した菌株はすべて,以

下の性状を調べて同定 ・型別 した.

a)生 化学的性状試験:第 一次鑑別性状 として

TSI寒 天培地,LIM培 地における性状を確認 した

(Fig.1参 照).

糖発酵性状試験は各糖(mannitol,inositol,

dulcitol, salicin, glucose, arabinose, cellobiose,

lactose, maltose, raffinose, rhamnose, sucrose,

trehalose, xylose, sorbitol, mannose) を1%に

加 えた ア ン ドレ イ ドペ プ トン水 を 用 い37℃ で培 養

し14日 間 観 察 した.そ の他 の 生 化 学 的 性 状 試 験(ア

ル ギ ニ ン お よび オ ル ニチ ン脱 炭 酸,メ チ ル レ ッ ド,

Voges Proskauer, Simmons' および Christensen

のクエン酸塩利用性,酢 酸塩利用性,マ ロン酸塩

利用性,尿 素分解酵素)を 常法4)により実施した.

b)血 清学的性状試験:0血 清型別は被検菌株

の100℃2時 間加熱死菌を用意 してデソカ生研お

よび北里研究所製の赤痢菌診断用抗血清および病

原性大腸菌診断用抗血清を用いて実施した.運 動

性を示す大腸菌株は運動性を強化 した被検菌株の

ホルマ リン死菌を抗原液 として,病 原性大腸菌診

断用抗血清(デ ンカ生研)を 用いてH型 別を実施

した.市 販血清で型別できない菌株については,

大阪府立公衆衛生研究所で調製 した抗血清を用い

て型別 した.

c)Indoletest:LIM培 地(栄 研化学)に て供試

菌を37℃ 一夜培養 し,リ ジソ脱炭酸および運動性

を判定した後,Kovacs試 薬の2～3滴 を滴下 し

液層が赤変した ものをIndoletest陽 性株 とした.

d) PGUA test: SIGMA 社製のp-nitrophenyl-

ƒÀ-D-glucopyranosiduronic acid を0.2MTris

HCI緩 衝液(pH8.5)に て0.1%(w/v)の 濃度に

溶解 し酵素基質液 とした.普 通寒天培地にて37℃

一夜培養した供試菌の一白金耳量を生理的食塩水

0.5mlに 浮遊後,ト ルエンを一滴加え充分に撹絆

した後,37℃,5分 間反応 させたものを被検菌液

とした.酵 素確認試験は酵素基質液1.0m1に 被検

菌液0.25mlを 混和 し37℃の恒温槽で4時 間反応

させてp-nitrophenylの 放出により液が黄変 した

ものをPGUAtest陽 性株 とした.

e) ONPG test: SIGMA 社 製 のo-

nitrophenyl-/Q-galactopyranoside を 用 い て

Ewingら の 法4)に 従 っ て 基 質 液 を 作 製 し そ の0.25

m1にd)で 使 用 し た 残 り の 被 検 菌 液0.25mlを 加

え て37℃ の恒 温 槽 で4時 間反 応 後,o-nitrophenyl

の 放 出 に よ り液 が 黄 変 した もの をONPGtest陽

性株 と した.

平成4年4月20日

458 大村 寛造 他

Table 1 Results of IND, PGUA and ONPG test in

377 strains of Shigella in various serotypes

a): Indole (Tryptophanase) b): R-glucuronidase

c): fl-galactosidase

d). Biotype Manchester e): Biotype Boyd 88

f): Biotype other than Manchester, Boyd 88 or New

castle.

g): Aerogenic type (produced gas from glucose fermen-

tation)

f)EIECの 病原性:生 化学的性状試験 お よび

血清学的性状試験によ りEIECと 推定された菌株

は,渡 部 ら10)の報告 に準 じたPCR法 にてinv E

の全領域(930bp)を 確認した.

結 果

1.血 清 型 別 に み た 赤 痢 菌 のIndole,PGUAお

よ びONPGtestの 成 績(Table1)

a)Indoletestの 成 績:以 下 に 示 す 如 く既 報4)

の通 りで あ った.す な わ ち,S.dysenteriaeで は2

型 お よび7型 の み 陽 性 を 示 し,1,3,4,6お

よ び9型 は 全 株 と も陰 性 を 示 した.S4eme万 で

は1a,1b,お よび6型 はす べ て 陰 性,5b型 は 陽 性

を 示 した が,2a,2b,3a,4a,5a,var.Xお よび

var.Y型 の 陽 性 率 は11.8～87.5%で あ った.S.

boydii で は,1,2,3,4,8,10,12,14お

よ び18型 は全 株 と も陰 性,5,11お よ び13型 は全

株 と も陽 性 を 示 した.S.sonneiは 全 株 と も陰 性 を

示 した.

b)PGUAtestの 成 績:S.dysenteriaeの1型,

2型 お よ び9型 の株 は す べ て 陰 性 を 示 した が,3,

4,6お よび7型 で は全 株 と も陽 性 を 示 した .

Sπeme万 で は1a,1b,2a,5a,var.Yお よび

6型(生 物 型Manchester)株 はす べ て 陰 性 を 示

し,6型(生 物 型Boyd88お よ び非 定 型 株)は す

べ て 陽 性 を 示 した .し か し,2b,3a,4a,5bお よ

びvar.X型 株 の 陽 性 率 は5.9%～87.5%を 示 し

た.

S.boydiiで は2,4,11,13お よ び14型 は 全 株

と も陰 性 を示 した が,1,3,5,8,10,12お

よ び18型 は全 株 が 陽 性 を 示 した.

S.sonneiは 全 株 と も陽 性 を示 した.

c)ONPGtestの 成 績:S.dysenteriaeで は1

型 株 が す べ て陽 性 を 示 した が,2,3,4,6,

7お よび9型 は全 株 と も陰 性 を 示 した.

S.flexneriで は1a,1b,2a,2b,5a,5b,var.

X,var.Yお よ び6型(生 物 型Manchesterと

Boyd88)は 全 株 と も陰 性 を 示 した が,6型(非 定

型),3aお よ び4a型 で は そ れ ぞ れ1株 を 除 き陰 性

を示 した.

S.boydiiで は,1,2,3,4,5,8,10,

11,12,13,14お よ び18型 は 全 株 と も陰 性 を 示 し

た.

S.sonneiで は1株 を 除 い て す べ て 陽 性(陽 性

率:98.0%)で あ った.

2.赤 痢 菌 類 似 大 腸 菌 の 血 清 型 別 に み た

感染症学雑誌 第66巻 第4号

赤痢菌および類似大腸菌の迅速鑑別 459

Table 2 Results of IND, PGUA and ONPG tests in E. coli strains in

various types of pathogenicity, bio-type or sero-type.

(A) Shigella-like strains (without activities of lysine decarboxylase, motility and

lactose fermentation).

(B) E. coli strains other than Shigella-like strains (including EPEC, ETEC and

VTEC)

a)•`c): See footnote of Table 1. d): Gas from glucose

e): H-; non motile strain

平成4年4月20日

460 大村 寛造 他

Table 3 Patterns of IND, PGUA and ONPG tests of Shigella strains and E . coli strains without activities of

lysine decarboxylase, motility and lactose fermentation

a)～g): See footnote of Table1.

h): A; S. dysenteriae, B; Sl , flexneri, C; S. boydii, D; S. sonnei

(): Some strains of these sero-typess howed other patterns.

(-): No strains showed the pattern.

PGUA,ONPGお よ びIndoletestの 成 績(Table

2-A)

a) IndoleTestの 成 績:

gas非 産 生 株;EIECで は0144型 の1株 を 除

い て 全 株 と も陽 性 を示 し,A-Dで は全 株 と も陽 性

で あ った の に 対 して0128は 陰 性 を 示 した.

gas産 生 株;EIEC(8株)は 全 株 と も陽 性 で あ

り,EPECは0126型 の1株 を 除 い て す べ て 陽 性

を示 した.

b) PGUAtestの 成 績:

gas非 産 生 株;EIEC(23株),enteropathogenic

E. coli(EPEC)お よ びA-Dは 全 株 と も陽 性 を示

した.

gas産 生 株;EIEC(0121,0152)お よびEPEC

(055,0111,0126)は 全 株 と も陽 性 を示 し,EIEC

(0136)とEPEC(086a)は 全 株 と も陰 性 を 示 し

た.

c) ONPGTestの 成 績:

gas非 産 生 株;EIEC(028,0112ac,0144)お

よ び0128は す べ て 陽 性,EIEC(0164)は す べ て

陰 性 を示 した が,EIEC(0124)とA-Dは50～20%

の 陽 性 率 で あ った.

gas産 生 株;EIEC(0121,0124,0152)お よ

びEPEC(026,055,0111)は 全 株 と も陽 性,EIEC

(0136)とEPEC(086a)は 陰 性 を示 した がEIEC

(0126)は50%の 陽 性 率 で あ った.

3.定 型 性 状 を示 す 大 腸 菌 のIndole,PGUAお

よ びONPGtestの 成 績:(Table2-B)

a) Indoletestの 成 績:陽 性 率95.7%を 示 し,

特 に 非 運 動 性 株 は 全 株 と も陽 性 を 示 した.

b) PGUAtestの 成 績:運 動 性 お よ びgas産 生

性 に 関 係 な く陽 性 率 は92.9%を 示 した.

c) ONPGtestの 成 績:運 動 性 株 で は100%の

陽 性 率 で あ った が,非 運 動 性 株 で は55.6%の 株 が

陽 性 を示 した.

4.Indole(1)-PGUA(P)-ONPG(0)の パ タ ー

ン別 に み た 赤 痢 菌 お よ び 赤 痢 菌 類 似 大 腸 菌 の 群

別:(I,P,O)の 順 に+,-で 表 示 した(Table

3).

a) 赤 痢 菌:(+,+,+)お よ び(+,-,+)の

パ タ ー ンを 示 す 株 は み られ な か った .赤 痢 菌 の(I,

P,O)パ タ ー ン と血 清 型 の関 係 は 以 下 に示 す 通 り

感染症学雑誌 第66巻 第4号

赤痢菌および類似大腸菌の迅速鑑別 461

Table 4 Comparison of characteristics of Shigella strains with those of non-motile E. coli

strains # antigenically close-related to Shigella strains

#: Strains were agglutinated by one or two of the Skigella antisera.

a): Triple Sugar Iron agar.

R/Y; anaerogenic strains without activities of fermentation of lactose and sucrose.

R/YG; aerogenic strains without activities of fermentation of lactose and sucrose.

b): Lysine decarboxylase. c): Motility.

d)～f): See footnote of Table1.g): Non motile strains.

で あ っ た.

(-,+,+)の パ タ ー ン;S. flexneri 6(非 定

型)お よ びS. sonnei.

(+,+,-)の パ タ ー ン;S. dysenteriae 7, S.

flexneri 3a, 4a, 5b, var. Xお よ びS. boydii 5.

(-,+,-)の パ タ ー ン;S. dysenteriae3, 4,

6,S, flemeri 2b, 6 (Boyd 88と 非 定 型),Sboydii

1,3,8,10,12,18お よ びS. sonnei.

(+,-,-)の パ タ ー ン;S. dysenteriae 2, S.

flexneri 2a, 2b, 3a, 4a,5a,5b,var. Y,S. boydii

11, 13.

(-,-,+)の パ タ ー ン;S. dysenteriae 1, S.

flexneri 3a,4a.

(-,-,-)の パ タ ー ン;S. dylsenteriae 9, S.

flemerila, 1b, 2a,2b,3a,4a,5a,6 (Manches-

ter), var.X,var.Y,S. boydii2,4,14.

な お,S.flexneri 2a,2b,3a,4a,5a,5b,6,

var.X,var. Yお よ びS. sonneiで は 同 一 血 清 型

で 複 数 の パ タ ー ン が み ら れ た.

b)赤 痢 菌 類 似 大 腸 菌:(-,-,+)お よ び

(-,-,-)の パ タ ー ン を 示 し た 株 は み ら れ な か っ

た.赤 痢 菌 類 似 大 腸 菌 の(I,P,O)パ タ ー ン と血

清 型 の 関 係 は 以 下 に 示 す 通 りで あ っ た.

gas非 産 生 株;

(+,+,+)の パ タ ー ン;A-D(01), EIEC(028,

0112ac, 0124,0144).

(-,+,+)の パ タ ー ン; 0128,EIEC(0144).

(+,+,-)の パ タ ー ン; EIEC(0124,0164).

平成4年4月20日

462 大村 寛造 他

Fig. 1 Method for isolation and rapid identification of Shigella , in routine work.

Stool specimen

Plating media (SS agar1) and DHL agar2))

Selected colonies should be transferrd to tubes of TSI3) and LIM4)

(colorless•`white, transparent—translucent colonies)

Divided to Classes by the reactions of strains in TSI3) Agar and LIM4) medium as follows .

Serotyping test of Shigella*

PGUA and ONPG tests (4 hour reading of the media).

The reaction of Shigella strains in PGUA and ONPG tests are as follows.

Results are as described in Table 5.*: Strains showing the patterns other than above -mentioned patterns shouldn't beidentified as Skigella.

1): Salmonella-Skigella agar 2): Desoxycholate Hydrogensulfide Lactose agar 3): Triple Sugar Iron agar

4): Lysine-Indole-Motility 5): alkaline 6): acid

な お,EIEC(0124,0144)で は 同 一 血 清 型 で 複

数 の パ タ ー ンが み られ た.

gas産 生 株:(+,+,+)の パ タ ー ン;EIEC

(0121, 0124, 0152), EPEC(026, 055, 0111,

0126).

(-,+,-)の パ タ ー ン; EPEC(0126) .

(+,-,+)の パ タ ー ン; EIEC(0124),EPEC

(026).

(+,-,-)の パ タ ー ン; EIEC(0136), EPEC

(086a).

な お,EIEC(0124)お よ びEPEC(026,0126)

で は 同 一 血 清 型 で 複 数 の パ タ ー ンが み られ た .

5.赤 痢 菌 お よ び赤 痢 菌 類 似 大 腸 菌(赤 痢 菌 と共

通 抗 原 を 有 す る大 腸 菌)の 鑑 別 表:(Table4)

赤 痢 菌 と赤 痢 菌 類 似 大 腸 菌(共 通 抗 原 を 有 す る)

は 以 下 の とお りに鑑 別 され る.

a) S. dysenteriae 1とE. coli O1: H-,S.

dysenteriae 3お よびS. boydii 1とEIEC(0136:

H-) は そ れ ぞ れIndoleお よびPGUAtestの 成

績 に よ り容 易 に鑑 別 され る.

b) S. dysenteriae 2とEIEC(0112ac: H-)は

PGUAお よ びONPGtestの 成 績 に よ り容 易 に 鑑

別 され る.

c) S. dysenteriae 3とEIEC(0124:H-お よ び

0164: H-)は Indoletestに よ り鑑 別 され る.

d) S. dysenteriae 7とEIEC(0121: H-)は

ONPGtestに よ り鑑 別 で き るが,S. dysenteriae 7

に はONPG陽 性 株 の報 告11)も あ り,gas産 生 性 状

に よ っ て鑑 別 す る の が望 ま し い.

e) S.boydii 13は,gas産 生 性 状 を示 す 血 清 型 で

あ るが,共 通 抗 原 を もつEIEC(028: H-)と の

鑑 別 に はPGUAま た は,ONPG試 験 の いず れ に

感染症学雑誌 第66巻 第4号

赤痢菌および類似大腸菌の迅速鑑別 463

よっても鑑別可能な結果であった。

考 察

Kilianら6)は 被検株培養菌を生食水で2回 洗浄

した ものについてPGUAお よびONPGtestを

実施 している.ま た,Ewingら4)は 被検菌を トルエ

ン処理す ることにより,菌 体からの酵素の放出を

促進す る方法を用いている.著 者 らは予備実験で

両法を比較 したが,Kilianら の方法では4時 間で

陰性,24時 間後にはじめて陽性～弱陽性を示 した

株がEwingら の方法では4時 間後 にすでに陽性

を示 し,Ewingら の方法が優れていることがわ

かったので,本 報ではEwingら の方法を用いた.

一般 の検査室で日常的に実施 されている検査法

では,赤 痢'菌の確定診断には糖分解試験等の成績

判定に長い 日数を要する各種生化学的性状検査の

結果を待たねば決定できない現況にあるが,本 報

では赤痢菌と赤痢菌類似大腸菌を各血清型 ごとに

わけて,Indole, PGUAお よびONPGtestを 実施

して得 られたパターンか ら両菌種は鑑別できるこ

とを示 した.

すなわち,TSI,LIMお よび抗血清による第一

次鑑別に,こ れ らの酵素活性試験の成績を加味す

ることにより赤痢菌を迅速確実に同定できると考

えられた(Fig.1,Table5参 照).

しかし,本 報ではすべての血清型について調べ

得なかったし,使用株数の少ない血清型もあった.

また,S. flexneriの1型 のIndole陽 性株4),2a型

ではONPG陽 性株12)の報告 もみ られるが本報 で

使用 した菌株にはこれらの性状を示す株は含まれ

ていない.し たがって,今 後 これ らの不足点を補

充す ることによ りさらに完全な鑑別法が開発され

ると考 えられる.

謝辞:稿 を終るにあたり,菌株を分与していただいた名

古屋検疫所名古屋空港出張所寺澤徳昭所長,柳井慶明技官,

PCR法 によるEIECの 確認をお願いした大阪府立公衆衛

生研究所塚本定三先生に深謝致します.

文献および資料

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3) 宮田義人, 田口真澄, 大村寛造, 吉田昭夫, 南 明

平成4年4月20日

464 大村 寛造 他

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Osaka Airport Quarantine Station (Chief: Kazu HAYASHI)Yoshihito MIYATA

Osaka Prefectural Institute of Public Health

For the differentiation of Shigella from Escherichia coli, Indole (tryptophanase), PGUA (ƒÀ-

glucuronidase) and ONPG (ƒÀ-galactosidase) tests were used.

A total of 377 Shigella and 124 E. coli strains was examined for each sero- and biosero-type by

using these tests.

The results were as follows.

1) There were no Shigella strains showing positive reactions for both Indole and ONPG tests .

2) No E. coli strains with Shigella-like characteristics (negative for lysine-decarboxylase, motility

and lactose-fermentation tests) showed negative results for both Indole and PGUA tests .

3) The abovementioned strains were classified into twelve types according to the results of these

tests.

Shigella strains, thus, were differentiated from antigenically Shigella-like E . coli strains.

Additional use of these tests together with the conventional methods may valuable for the

identification of Shigella strains.

感染症学雑誌 第66巻 第4号