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本冊子は平成 30 年度 公益財団法人三菱財団 社会福祉事業・研究助成事業により作成しています。 本冊子は以下より無料ダウンロードできます。https://rebitlgbt.org/project/kyozai 多様な性に関する授業がもたらす教育効果の調査報告 認定特定非営利活動法人 ReBit

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Page 1: 認定特定非営利活動法人ReBit - 認定NPO法人 ReBitReBit出張授業の教育効果調査報告 8ページ 中学校版Ally Teacher's Tool Kitの教育効果調査報告

本冊子は平成 30 年度 公益財団法人三菱財団 社会福祉事業・研究助成事業により作成しています。本冊子は以下より無料ダウンロードできます。https://rebitlgbt.org/project/kyozai

多様な性に関する授業がもたらす教育効果の調査報告認定特定非営利活動法人 ReBit

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06 教職員ならびに子どもや教育に関わるみなさまへ 29 ページ

05

01

02

03

04

07

08

09

はじめに 2 ページ

なぜ、学校で取り組む必要があるの? 3 ページ

セクシュアリティとは? 4 ページ

ReBit 出張授業の教育効果調査報告 8 ページ

中学校版 Ally Teacher's Tool Kit の教育効果調査報告 20 ページ

多様な性についての教材キット"Ally Teacher's Took Kit" のご紹介 31 ページ

認定 NPO 法人 ReBit がお手伝いできること 36 ページ

参考資料 34 ページ

- 中学・高校でのセクシュアルマイノリティの  講師らによる授業の教育効果について

- 中学校で教員が多様な性について授業を行うことの教育効果について

- 多様な性に関するブックリスト- 多様な性に関する相談窓口

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ー 発刊に寄せて ー この調査報告書をお手に取っていただきありがとうございます。 同性が恋愛対象となる人や、生まれたときのからだの性をもとに割り当てられた性と自認する性が異なる人など、セクシュアルマイノリティの人は約 5 ~ 8%、40 人クラスであれば 2 ~ 3 人くらいいると考えられます。しかし、周りに言えずに、ひとりで抱え込む子どもも少なくありません。 2015 年 4 月、文部科学省がセクシュアルマイノリティの子どもへ配慮を求める通知を全国の小中高校などへ出されました。どの学校にもいる、多様な性を持つ子どもたちについて知ってほしい。その想いから、かつて児童生徒だった若者たちが学校現場で出張授業を行ったり、中学校向けの道徳教材をつくり全国の中学校の先生へお届けしました。 この調査報告書は、「①セクシュアルマイノリティの講師らによる中学・高校での授業」「②教員が教材を用いおこなった中学での授業」の2つの多様な性についての授業の教育効果について報告します。多様な性に関する授業による生徒の変化や影響を明らかにすることで、多様な性に関する

教育の意義について考えていきます。この調査結果が多様な性について取り組みたいと思っている先生方や行政担当者のみなさまの背中を押し、ともにセクシュアルマイノリティの子どもにとっても過ごしやすい学校をつくるお一人となっていただけたら幸いです。

 近年、セクシュアルマイノリティに関する理解は社会のみならず、教育現場でも求められています。2015 年に文科省から「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」全国の小中高校に通知が出され、性同一性障害も含むセクシュアルマイノリティの児童生徒への対応・配慮が求めらています。 2019 年度より使用される中学校の道徳の教科書では 8 社中 4 社が多様な性に関する記述をを取り上げたと報道されました。また、神奈川県教育委員会や倉敷市教育委員会等、人権教育等の一環として多様な性について授業実践を行ったり、ワークシート集を HP 上で公開する教育委員会や自治体の取り組みも活発化しています。

ー 社会の状況 ー

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 特に自殺念慮を抱く第一ピークは、思春期である小学校高学年から高校生の頃とされています。また、政府の「自殺総合対策大綱」にも「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、教職員の理解を促進する」と示されています。

 セクシュアルマイノリティは約 5 ~ 8%とされていますが、性の多様性について考えていくことはその約 5 ~ 8%の子どものためだけではありません。 心と体に著しく変化が訪れる思春期という自己形成の時期だからこそ、セクシュアルマイノリティの子どもも、セクシュアルマジョリティの子どもも、あらためて自分自身について見つめ直し、生涯を通じて自らの心身の健康について考えられる一人ひとりであれたらと願います。

 セクシュアルマイノリティの人たちが自分のセクシュアリティを自覚するのは、小学生から高校生までの学齢期が多いとされています。

●ゲイであることをなんとなく自覚した年齢:平均 13.1 歳 (*3)

●性同一性障害の人が性別違和感を自覚し始めた時期 小学校入学前まで:56.6%  中学生まで:89.7% (*2)

中学生・高校生ってどんな時期?

子どもを取り巻く課題について

いじめや暴力を受けたことがある LGBT (*1)

不登校を経験したことがある性同一性障害の人 (*2)

自殺念慮を抱いたことがある性同一性障害の人 (*2)

(*1)いのちリスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン 平成 25 年度東京都地域自殺対策緊急強化補助事業 「LGBT の学校生活   に関する実態調査 (2013)」

(*2)中塚幹也(2017)「封じ込められた子ども,その心を聴く:性同一性障害の生徒に向き合う」.ふくろう出版,pp.1-340(*3)日高庸晴ほか(2007):厚生労働科学研究費補助金エイズ対策研究推進事業 ゲイ・バイセクシュアル男性の健康レポート 2

68% 29% 58.6%

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 セクシュアリティは、「性のあり方」。4 つの軸で考えることができます。

*好きになる性(Sexual Orientation)と自認する性(Gender Identity)をあわせた言葉「SOGI」も 広く知られてきており、国連等で使われています。

いろいろなセクシュアリティの人に会ってみよう!

■レズビアン(女性同性愛者)

■バイセクシュアル(両性愛者)

■ゲイ(男性同性愛者)

自認する性が女性で、女性を好きになる人。

自認する性がどうであるかにかかわらず、男性も女性も好きになる人。

自認する性が男性で、男性を好きになる人。

■トランスジェンダー(生まれたときのからだの性をもとに割り当てられた性と、自認する性が異なる人)

トランスジェンダー男性:生まれたときのからだの性は                        女性で、自認する性は男性の人トランスジェンダー女性:生まれたときのからだの性は            男性で、自認する性は女性の人X ジェンダー:からだの性がどうであるかにかかわらず、       自認する性が男女どちらでもある人、       どちらでもない人、男女の中間の人など

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■ヘテロセクシュアル(異性愛者) ■シスジェンダー

自認する性が女性で、男性を好きになる人。自認する性が男性で、女性を好きになる人。

生まれたときのからだの性をもとに割り当てられた性と、自認する性が同じ人。

マジョリティにも名前がついています

性の多様性を切り口に「ちがい」について考えることの意義

 セクシュアルマジョリティにも名前がついていること、知っていましたか?「異性を好きになる」かつ「性別に違和感がない」という人にもちゃんと名前がついていて、

多様な性のうちの 1 つです。

 性のあり方は、子どもたちの将来にかかわるアイデンティティのひとつです。だからこそ、性の多様性について知ることができないことは、安心して生きていけないことにつながるかもしれません。また、性の多様性に関する情報を、セクシュアルマイノリティの子どもだけに届けるのではなく、全ての子どもに届けることで、「ちがい」を尊重し合える学校環境づくりにつながっていきます。

セクシュアルマイノリティの子どもたちにとって

●自尊心や自己理解の確立につながる●安全・安心に過ごせる学校環境づくりに 関わる

すべての子どもたちにとって

●他者理解や多様性の受け入れにつながる●個性を尊重し合う学校環境づくりに 関わる

オカマ、ホモ、レズ、オナベは差別的な用語とされています。

*ほかにも、いかなる他者も恋愛や性愛の対象とならない「アセクシュアル(エイセクシュアル)」 の人や、セクシュアリティをあえて決めない、または決められない「クエスチョニング」の人など、 セクシュアリティは多様にあります。

*「性同一性障害」は、性別に違和感を持つ人や性別移行を望む人たちなどにあてられる医学的な 診断名です。

*このような、性のあり方が少数派の人たちのことを「セクシュアルマイノリティ」といいます。 レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を合わせて「LGBT」という こともあります。

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セクシュアルマイノリティの子どもが困りやすいことって?

■ “ いないこと ” になっていること

■男女でわかれること

■笑いやいじめの対象になっていること

どの子どもも性別に違和感がなく、異性が好きであることが前提であると、困りやすい子どもがいます。

事あるごとに男子全体に向けて「女の子のことばっかり考えてたらアカンで~」

と言う先生がおり、何気ない気持ちで言っていたのだろうけど、異性が恋愛対象ということが

前提になっていたことが辛かった。(すばる・20 代・男性同性愛者)

制服のスカートが嫌で、学校に着くとジャージに着替えていた。

反抗という意味ではなく、とにかくスカートが嫌だったからだけど、頭ごなしに怒られて辛かった。

(カツオ・20 代・トランスジェンダー男性)

中学のとき、手帳に「今日は○○と話せてうれしかった」と好きな女の子について書いてあるのを、他の女子にみられて

「こいつレズだ」といわれ、クラス内の女子の噂になってしまい、女子更衣室に入れてもらえなくなった。

(あいこ・20 代・レズビアン)

特にトランスジェンダーの子どもは、トイレ、制服、修学旅行の部屋 / 風呂、部活、健康診断など、男女でわかれることで困りやすいです。

セクシュアルマイノリティが笑いやいじめの対象となっていた場合は、他の人権課題と同様に注意や対応をしてください。

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■正しい知識にアクセスできないこと

■自分の生きていく姿が思い描きにくいこと

■困りごとを相談できないこと

教職員や保護者に正しい知識を教えてもらえない場合、「自分はおかしいのかな」と不安に感じる子どもがいます。

セクシュアルマイノリティの大人の姿が見えづらいことで、将来への不安が生じやすい子どもがいます。

周りの人に相談できないと感じたり、相談をしても否定される場合があります。

テレビの中でも学校でも男性が好きな男性は笑われる対象だったり、

きもいと言われる対象だったから、自分のことを気持ち悪い存在だと思っていた。

(かん・20 代・ゲイ)

セクシュアルマイノリティの大人に会ったことがなかったから、仕事を

したり、かぞくをもったり、 友人関係を築いたり、「普通に」大人になって「普通に、幸せに」生活して

いる姿をイメージできなかった。将来に対する不安がいつもあって、進路を決めるときも「進学

しても大人にならないならどうせ意味ないし」と投げやりな気持ちになり、

勉強に身が入らなかった。(じゅん・20 代・X ジェンダー)

女子の制服から男子の制服に変えたいと学年主任の先生に話をしたとき、「勘違いなんじゃない?

そういう “ 趣味 ” でルール違反しないで」と否定的な対応を受けた。(ひかる・20 代・トランスジェンダー男性)

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■研究の目的 多様な性に関する授業をセクシュアルマイノリティの講師が実施することで、中学生や高校生の①知識的側面、②価値的・態度的側面にどのような効果をもたらすかを調査をします。■調査対象 ・認定 NPO 法人 ReBit(以下 ReBit)に出張授業  の依頼をした中学校と高校に本調査の趣旨を説  明し、承諾を得た中学校 1 校、高校 3 校を調  査協力校としました。 ・調査時期は 2017 年 9 月から 2018 年 1 月 ・回収した 2,921 部のうち、回答に不備のあった  サンプルを除き、有効回答数は 2,619 部でした。■質問紙について ・質問紙は、セクシュアルマイノリティに関して  知識があり、大学院で教育学や心理学を修了し  た複数のメンバーや職員で作成しました。

 ・文部科学省が 2008 年に報告した「人権教育の  指導方法等の在り方について[第三次とりまと  め]」内の「人権教育の内容及び指導方法等」  を通じて育てたい資質・能力 としてあげてい  る側面のうち、知識的側面、価値的・態度的側  面についてそれぞれ 7 項目ずつ作成しました。■授業の概要 ・授業は ReBit よりセクシュアルマイノリティの  学生・若者 2-3 名が講師となり実施しました。 ・授業は「総合的学習の時間」や「人権教育」といっ  た授業の枠で実施され、それぞれ 90 分ほどで  した。  ・調査対象者には、質問紙への回答は任意である  こと、調査に協力しないことによって何ら不利  益は受けないことを伝え、授業の前後にそれぞ  れ 7 分で質問紙に回答する時間を設けました。

■授業の展開

知識の提示(

15分)

セクシュアルマイノリティの講師との出会い(

20〜40分)

セクシュアルマイノリティの人たちの声(

10分)

質疑応答(

10分)

まとめ(

5分)

・多様な性に関する正しい知識を知る

・性のあり方は多様であることを知る

・セクシュアルマイノリティの学生・若者2〜3名

 による自身のセクシュアリティ説明とライフ

 ストーリー(幼稚園〜現在まで)

・セクシュアルマイノリティの人たちの困りごとに

 ついて知る

・セクシュアルマイノリティの講師らと体感的に

 出会い、多様な性について理解する

・カミングアウトや学校での困りごと、将来などに

 関するトークセッション

・誰もが多様な性の中の1人である

・性のあり方の違いをきっかけに、どんな違いも

 受け入れあえる社会へ

・LGBTを含む多様な性に関する基礎知識の説明

・国内のセクシュアルマイノリティの人たちの割合

・LGBT、異性愛、シスジェンダーを含む多様な性

 のあり方のグラデーション

・多様な性について学ぶことの意義

主なねらい

主なねらい

主なねらい

内容

内容

内容

内容

※本調査では「LGBT」をセクシュアルマイノリティと同じ意味で便宜上、使用しています。なお、研究上で使用した用語についてはそのまま表記します。

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①知識的側面に関する項目 ・文部科学省が示す (*4)「自他の人権を尊重したり人権問題を解決したりする上で具体的  に役立つ知識」という点を基準にし、その上で授業で取り扱う内容かどうかに留意し    ながら作成しました。 ・「以下の項目に最もあてはまる選択肢を1つ選んで□を塗りつぶしてください。」と教  示文を示し、「正しい」、「正しくない」、「わからない」の 3 件法で回答を求めました。

考察:中学生・高校生ともに授業前は不正解よりも「わからない」割合が高く、情報を知   らない子が多いと考えられます。授業を通じ、中学生・高校生ともに正解率が向上   しています。

Q1

<中学生>

<高校生>

授業前

授業前

授業後

授業後

調査結果

「LGBT」はレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーの頭文字をとった言葉だ

(*4) 人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]第 1 章 -1-(4) 人権教育を通じて育てたい資質・能力(2008)

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性別は男か女のどちらかである

性のあり方はからだの性だけで判断できる

Q2

Q3

<中学生>

<中学生>

<高校生>

<高校生>

授業前

授業前

授業前

授業前

授業後

授業後

授業後

授業後

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ゲイの人はみんな女性になりたい人だ

Q4

Q5

<中学生>

<中学生>

<高校生>

<高校生>

授業前

授業前

授業前

授業前

授業後

授業後

授業後

授業後

セクシュアルマイノリティの人か、セクシュアルマイノリティでない人かは見た目だけで判断できる

<授業後の子どもたちの声>中学生:今回会って、見た目だけではわからないと思いました。高校生:見た目だけで判断してはいけないと思いました。

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セクシュアルマイノリティの人は国内に約1%いると言われている

Q6

Q7

<中学生>

<中学生>

<高校生>

<高校生>

授業前

授業前

授業前

授業前

授業後

授業後

授業後

授業後

セクシュアリティ(性のあり方)は人の数だけある

<授業後の子どもたちの声>中学生:今回のお話を通して人の数だけ性があり、性のあり方に正解なんてないんだと思いました。高校生:ひとりひとり違いがあって当たり前だと知りました。

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教育前・後の知識的側面の得点■分析手法 ①知識的側面 ・7 つの質問項目について、正解するごとに 1 点、不正解や「わからない」を選択し    た場合 0 点としました。 ・知識的側面に関する得点を「知識得点」とし、中学校と高校におけるそれぞれ各質問  項目における授業前後の得点の差を比較したところ、授業後の方が有意に得点が上がっ  たことが分かりました。

知識得点

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中 学 生 の ほ う が 高校 生 よ り も 伸 び 率が 高 い こ と が 分 かりました。

*授業の効果量は高校生よりも中学生のほうが統計的に大きい。

■知識的側面についての考察 中学生・高校生ともに授業実施前よりも実施後の知識得点が高い結果となりました。多様な性に関する知識得点は、中学生は授業前 1.34・授業後 5.02、高校生は授業前 3.31・授業後 6.12 となり、授業前後ともに中学生よりも高校生の方が有意に高い結果となりました。また、中学生の授業後の伸び率は高く、授業前の高校生よりも知識得点が高い結果となりました。 また、7 つの質問のうち、6 つの授業前の回答は、中学生・高校生ともに「不正解」よりも「わからない」の割合が大きく、多様な性について知らない状態の生徒が多いことが分かりました。

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②価値的・態度的側面に関する項目 ・文部科学省が示す(*5)「個人の尊厳をはじめ、自他の人権を尊重することの意義や必要  性に対する肯定的な評価と受容、責任感や共感性・連帯性、人権擁護の実現を目指す  意欲や態度」という点を基準にして作成しました。 ・「以下の項目に最もあてはまる選択肢を1つ選んで□を塗りつぶしてください。」と教  示文を示し、「全くそう思わない」から「非常にそう思う」の 6 件法で回答を求めました。  なお、項目の内、2 項目は逆転項目でした。

多様な性についての話は自分には関わりのないことだと思うQ1

<中学生>

<高校生>

授業前

授業前

授業後

授業後

<授業後の子どもたちの声>中学生:身近な話だと思った。これからも自分には関係ないことだと思わず、どんな性の人とも関係を大切に    したい。高校生:LGBT は非常に身近な問題なんだとわかりました。性の多様性について考えるきっかけになりました。

(*5) 人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]第 1 章 -1-(4) 人権教育を通じて育てたい資質・能力(2008)

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身近な人にカミングアウトされても力にはなりたくないと思う

LGBT をネタにしている人がいたら注意していきたいと思う

Q2

Q3

<中学生>

<中学生>

<高校生>

<高校生>

授業前

授業前

授業前

授業前

授業後

授業後

授業後

授業後

<授業後の子どもたちの声>中学生:友達にカミングアウトされた場合、自分にできることがあればやりたい。高校生:見た目で性を決めつけず、カミングアウトしてもらったら支えになれる人間になりたいです。

<授業後の子どもたちの声>中学生:LGBT などのネタで遊ぶのはよくないし、注意していきたいなと思った。

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自分のセクシュアリティに関わらず、ありのままの自分を大事にしたい

その人の特性にかかわらず、周囲の人を大事にしたい

Q4

Q5

<中学生>

<中学生>

<高校生>

<高校生>

授業前

授業前

授業前

授業前

授業後

授業後

授業後

授業後

〈授業後の子どもたちの声>中学生:私もありのままの自分で生きていこうと思いました。高校生:私も人の数だけあるセクシュアリティの 1 つだったんだと感じました。自分について考え大事にしていきたいです。

<授業後の子どもたちの声>中学生:自分の周りの人がもしかしたら困っているのかもしれない。だから日頃周りの人にやさしくしていきたい。高校生:他人にも目を配れる人間になりたいと思いました。特性にかかわらず、その人自身を大切にしたいです。

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多様な性について中学生(や高校生)に伝えるべきだ

LGBT について学ぶことは他の多様性について考えることにつながると思う

Q6

Q7

<中学生>

<中学生>

<高校生>

<高校生>

授業前

授業前

授業前

授業前

授業後

授業後

授業後

授業後

<授業後の子どもたちの声>高校生:これから社会に出る上で、あやふやな知識を持ったままなのは恥ずかしいと思った。人を傷つける前にこの講話    が聞けて良かったです。

<授業後の子どもたちの声>中学生:ReBit の人の話を自分の吃音と結びつけられて考えれてとても勉強になりました。高校生:自分にとっては当たり前だと思っていても周りは全くちがう考えかもしれない。誰と話す時もちがいを意識したい。

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教育前・後の 価値的・態度的側面の得点■分析手法 ②価値的・態度的側面 ・7 つの質問項目について、「全くそう思わない」から「非常にそう思う」の 6 件法で回  答させ、1、2 番は逆転項目処理をし、それ以外の項目はそのまま点数化を行いました。 ・価値的・態度的側面に関する得点を「価値・態度得点」とし、中学校と高校におけそ  れぞれ各質問項目における授業前後の得点の差を比較したところ、授業後の方が有意  に得点が上がっていたことが分かりました。

価値・態度得点

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中 学 生 の ほ う が 高校 生 よ り も 伸 び 率が 高 い こ と が 分 かりました。

*授業の効果量は高校生よりも中学生のほうが統計的に大きい。

■価値・態度的側面についての考察 多様な性に関する授業を実施することで、中学生や高校生の多様な性に関する価値・態度得点が有意に上がりました。 特に「多様な性についての話は自分にかかわりのないことだと思う」という質問に対して中学生 54%、高校生 36%が「非常にそう思う / そう思う / ややそう思う」と回答していましたが、授業後は中学生 25%、高校生10% と減少しました。自分事として認識できるようになっただけではなく、「身近な人にカミングアウトされても力になりたくないと思う」割合も、中学生・高校生ともに授業後に減少していることから他者受容や共感性・連帯性を高める効果があることがわかりました。

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■本調査のまとめ 多様な性に関する授業を実施することで、中学生や高校生の多様な性に関する知識得点だけでなく、価値・態度得点が有意に上がることが分かりました。このことから、多様な性に関する授業を実施することで、生徒は多様な性に関する正しい知識を身につけるだけでなく、多様な性に関する態度や価値観が受容的になり、人権感覚を向上させる効果があることが考えられました。 また、授業前の段階で中学生よりも高校生の方が多様な性に関する知識があり、受容度が高いということは、高校生の方が多様な人や情報と出会う機会が中学生よりも多い傾向にある背景が影響していると考えられます。しかし同様の授業を実施することで、どちらも有意に知識量や受容度が増すことから、中学生・高校生どちらに対しても多様な性に関する授業を実施することは効果があることが分かりました。

■課題と展望 質問項目の妥当性をより一層高め、精査していく必要があります。今回の調査では、文部科学省が「人権教育の内容及び指導方法等」を通じて育てたい資質・能力としてあげている知識的側面と価値態度的側面のみに触れました。 授業効果については一定の結果が示されましたが、その後の知識や価値態度的側面が行動面で表れているかどうかの児童生徒の予後についても調査が必要だと考えています。また、多様な性に関する理解は 1 回の授業のみではぐくまれるものではないため、普段の授業や学校生活の様々な場面で多様な性に関する受容的な声かけや、性の多様性を想定した学校づくりが必要であると考えられます。

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⇒セクシュアルマイノリティの講師らが多様な性に関する授業を実施することは、子どもたちに正しい知識を伝えるだけではなく、多様な性に関する価値感や態度が受容的になり、人権感覚を向上させる効果があることがわかりました。

ReBit 出張授業の教育効果調査報告のまとめ

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■研究の目的 多様な性に関する授業を教員が実施することで、中学生の①知識的側面、②価値的・態度的側面にどのような効果をもたらすかを調査をします。■調査対象 ・ 本調査では、ReBit が 2017 年 3 月に製作した多様な  性に関する教材キット「中学校版 Ally Teacher's Tool   Kit」(以下 ATTK)を中学校教員が用い、授業を実施  しました。ATTK を使用した中学校のうち、本調査の  趣旨を理解し承諾を得た上で、アンケートの回答用  紙を返送した複数の中学校を調査対象としました。 ・調査時期は 2017 年 3 月から 2018 年 9 月 ・回収した 1,301 部のうち、事前事後で比較する質問  項目について比較する回答に不備のあったサンプル  を除き、有効回答数は 1,152 部でした。■質問紙について ・質問紙は、多様な性に関して知識があり、大学院で  教育学や心理学を修了した複数のメンバーや職員で  作成しました。 ・石丸(2008)(*6) や福島(2015)(*7) で言及されている他  者受容に関する質問項目を参考にし、作成しました。 ・本授業は道徳の授業で実施する可能性を考慮し、文部

  科学省が 2017 年に報告した「中学校学習指導要領  (平成 29 年告示)解説特別の教科道徳編」における内  容のうち、「2-(5) 寛容・謙虚」の育成と、「4-(3) 公平・  差別偏見のない社会」を道徳内容として単元設定をし、  この項目に関する質問項目を作成しました。 ・教育前段階での調査において、本調査の主眼である  「セクシュアルマイノリティ」という用語の定義が分  からない状態での回答を防ぐため、脚注に説明を加  えました。 ・中学生の実態を知るため、多様な性に関する実態を  問う質問項目もいくつか作成しました。 ・質問は一部の質問を除き、「以下の質問の答えとして  最もあてはまる数字に丸をつけてください。」と教示  文を示し、「そう思う」から「そう思わない」の 4 件  法で回答を求めました。■授業の概要 ・授業担当をしている中学校教員が実施しました。 ・ 授業は授業前後のアンケート時間(5 分× 2 回)も  含め、およそ 50 分で実施しました。  ・授業の前後に質問紙を配布し、それぞれ 5 分程度で  回答しました。※教材内容や、授業案の詳細については P31 ~ P33 をご覧ください。

■授業の展開

導入(

5分)

まとめ(

10分)

多様な性に関する基礎知識(

映像

15分)

考えを深化(

10分)

主なねらい

主なねらい

主なねらい

主なねらい

内容

内容

内容

内容

(*6) 石丸径一郎(2008).同性愛者における他者からの拒絶と受容 - ダイアリー法と質問紙によるマルチメソッド・アプローチ - ミネルヴァ書房.(*7) 福島静恵(2015).多様性を認め合う関係づくりを目指したセクシュアリティ教育の試み - 支援教育の視点に立った組織的な取組を通して -  神奈川県立総合教育センター長期研究員研究報告,55-60.

・本授業の目標である「多様な性」について学習する

 

という目標を伝える。

・多様性を尊重することの重要性を伝える

・映像教材を視聴し、性の多様性について用語を学ぶ。

・セクシュアルマイノリティの個人の語りや、家族や

 

友人との対談を視聴する。

・ワークシートの「セクシュアルマイノリティに対して

 もっていたイメージをふまえながら、映像の感想や気

 づいたことをまとめましょう」「もしも友人や家族など

 から、セクシュアルマイノリティであると打ち明けら

 れたら、あなたならどんな言葉をかけますか」という質

 問に対し、それぞれ自分の考えを記述する。

・多様な性について知る

・学びを自分ごとにする

・イラストの特徴から「性別」をどのように判断

 

しているか問う。

・多様な性から多様性へ広げ、一人ひとりのちがいを

 

理解・尊重することの重要性を伝える。

・授業の要点や参考資料、相談先一覧が記載された

 

プリントの配布。

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①実態に関する項目

Q1

Q2

Q3

調査結果

①セクシュアルマイノリティについて、授業や学校で習ったことはありますか?(複数回答可)

授業や学校で習ったことがある中学生は

11.9%

半数以上が「ホモネタ」「オカマネタ」を学校で聞いたことがある

②(学校以外で)どこで見聞きしましたか?(複数回答可)

「ホモネタ」「オカマネタ」を学校で聞いたことはありますか?

授業前のみ

授業前のみ

授業前のみ

考察:授業や学校で習った   生徒より、学校以外   で見聞きしている生   徒が多く、うちテレ   ビが最も多かった。

n=504

考察:「ホモ」「オカマ」という言葉よりも、昨今テレビ等   で使用されやすい「オネエ」という言葉を使用したり、   「手を頬にあてるしぐさを笑いのネタとされている   のを見たり聞いたことがありますか?」などの具体   的行動を問うことで、「ある」と答える生徒が増える   可能性もあると考えられます。

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授業後のみ

②知識・理解に関する項目

セクシュアルマイノリティ(同性愛や性同一性障害など)について、どのくらい知っていますか?

セクシュアルマイノリティについて説明できる

ゲイ(男性が好きな男性)は、女性になりたい男性のことである

Q1

Q3

Q2

授業前のみ

授業前 授業後

授業前、セクシュアルマイノリティについて聞いたことがない・具体的には知らないと回答した人は

80% 以上

授業後、セクシュアルマイノリティについて説明できると回

答した人は 76%

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③他者受容・寛容に関する項目

人の物の見方が自分と違っても、頭から否定せずその人の考え方を尊重する

仲のいい友人が性的マイノリティだとわかったら抵抗がある

Q1

Q2

授業前

授業前

授業後のみ

多様な性について学ぶことで、今後、多様な性の存在を受け入れることができそうQ3

多様な性の存在を受け入れることができそうと回答した人は

94.7%

<授業後の子どもたちの声>・違いを受け入れたり認め合うことが大切だと感じました。

<授業後の子どもたちの声>・性がちがってもちがわなくても、人は皆同じだと思った。

<授業後の子どもたちの声>・もし、カミングアウトされたらしっかり受け止められるようになりたいと思った。・セクシュアルマイノリティの人にもしカミングアウトされたらその人とじっくり話し合いたいと思いました。

授業後

授業後

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④公平・差別偏見のない社会に関する項目

セクシュアルマイノリティの人に対して、公平に接することができる

あらゆる差別や偏見がなくなるような社会にしたい

Q1

Q2

授業前

授業前

授業後

授業後

<授業後の子どもたちの声>・この授業を受けてたくさんの性がある中で、自分がどれだけその人の意見を受け入れ、尊重できるかが大切なんだなと 思いました。もし、自分の友達にもいるとしたら、その人の気持ちをよく理解し、今まで通りに接していきたいと思い ました。

<授業後の子どもたちの声>・いつもだったらふざけていっていた言葉も言おうとした瞬間ハッとなったり、意識一つでこんなにも違うのかと実感し ました。「いろんな人がいる」わかっていたつもりでしたが、全く理解が出来ていませんでした。

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⑤授業満足度や多様な性に関して学ぶことに対する態度に関する項目

今日の授業を通じて、多様な性のあり方について知ることができた

多様な性について学ぶことは、必要である

また多様な性にかんする授業を受けたい

Q1

Q2

Q3

授業後のみ

授業後のみ

授業後のみ

<授業後の子どもたちの声>・また多様な性に関する授業を受けてセクシュアルマイノリティの人を知っていきたいと思いました。知っていくと差別 や偏見がなくなると思います。

<授業後の子どもたちの声>・今回の授業で多様な性の存在を知ることができたし、私たちのあり方について学べることが出来て良かったです。

多様な性のあり方について知ることができたと回答した人は

98%

多様な性について学ぶことが必要である

と回答した人は96.1%

また多様な性にかんする授業を受けたい

と回答した人は76.5%

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調査から見る [ 実態と知識 ] に関する考察

調査から見る [ 他者受容・寛容 ] に関する考察

■中学生の実態 ・セクシュアルマイノリティについて  学校で習ったことがあるという割合  は約 12% でした。 ・学校以外で見聞きした生徒のうち、  テレビが最も多く、次いでインター  ネット、本となりました。 ・「ホモネタ」「オカマネタ」を学校で  聞いたことがあるのは約半数でした。 ・セクシュアルマイノリティについて、  「聞いたことがない」は約 3 割、「聞  いたことはあるが具体的には知らな  い」が半数、言葉で説明できたり関  心がある者は約 2 割程度でした。

・「仲のいい友人が性的マイノリティだとわかったら抵抗がある」という質問に対し て「そう思わない」が 15% 増加しました。

・「人の物の見方が自分と違っても、頭から否定せずその人の考え方を尊重する」と いう質問に対して「そう思う」が 19% 増加しました。

・事後のみで聞いた「多様な性について学ぶことで、今後、多様な性の存在を受け入 れることができそう」という質問に対しても、94.7%がポジティブな回答でした。

⇒メディア等でセクシュアルマイノリティについて知る機会は増えたが、約 8 割の中学生はセクシュアルマイノリティについて「具体的には知らない」もしくは「聞いたことがない」ことが分かりました。

⇒授業前に約 8 割の中学生がセクシュアルマイノリティについて「聞いたことがない」

「具体的には知らない」と答えていましたが、授業を行うことで、76%の中学生がセクシュアルマイノリティについて説明できると思うと答えました。

⇒ どの項目も有意にポジティブな回答が増加したことから、多様な性に関する授業を実施することでセクシュアルマイノリティを含む他者や、多様性への受容度や寛容さが向上する可能性が考えられます。

■「知識」に関する効果 ・「ゲイ(男性が好きな男性)は  女性になりたい男性のことで  ある」という質問に対し、事前  の正答 / 正答傾向がある者は  75% でしたが、授業後は 79%  であり、有意に向上しました。 ・授業後に「セクシュアルマイノ  リティについて説明できる」か  どうか聞いたところ、「そう思  う」「どちらかと言えばそう思  う」と回答したのは 76% でした。

中学校版 Ally Teacher's Tool Kit の教育効果調査報告のまとめ

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中学生のアンケートから■感想

・知識があるだけで、将来の言動が変われ るから知れて良かった。

・周りの人の理解って大きいなあと感じた。 誰かにカミングアウトされた時は相手と 話し、より理解できるようになりたいです。

・人それぞれに違う考え方があるから、相 手の考えを素直に尊重したい。

・セクシュアルマイノリティについて理解 し、多くの人に伝えることが大切だと思 いました。

・一人一人多様ということを今回改めて学 ぶことができました。人のことを見た目 などで判断せずにしっかりと受け止めて いきたいです。そして、人が生きやすく

 接していきたいです。・カミングアウトされたら、「あなたはあな たのままでいいよ。」「話してくれてあり がとう」などの優しい言葉をかけたい。

・多様な性がある事を知った。割合も左利 きと同じくらい多くて、普通の事として とらえたい。

・話を聞いて実際に会ってみると、自分た ちと変わらない存在なんだなということ を知ることができました。みんながもっ ている個性の一つなんだなとも思いまし た。これからは差別的な発言をしている 人がいたら、自分たちと変わらない同じ 人間だということを教えてあげたい。

調査から見る [ 公平・差別偏見のない社会 ] に関する考察

⇒ どちらの項目も有意にポジティブな回答が増加したことから、多様な性に関する授業を実施することでセクシュアルマイノリティに対して差別をすることなく公平に接することができるという意識が向上する可能性が考えられます。現場の教職員が授業で子どもたちに多様な性について伝えることで、子どもたちに正しい知識を伝えるだけではなく、多様性に関する価値感や態度が受容的になり、人権感覚を向上させる効果があると考えられます。

・「セクシュアルマイノリティの人に対して、公平に接することができる」という質問 に対して「そう思う」が 22% 増加しました。

・「あらゆる差別や偏見がなくなるような社会にしたい」という質問に対して「そう思う」 が 9% 増加しました。

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使用した先生方のアンケートから

・導入では「オカマ」などの発言があり、笑っ ていた生徒もいましたが、基礎知識を教 えてから本編を見せると、どの生徒も真 剣に見入っていました。 感想のワークシートには「これまでは正 直あまり関わりたくないと思っていたけ ど、私たちと同じように悩んだり苦しん だりしているのだとわかった。」「その人 にかける言葉でその人の人生を左右して しまうから、気持ちを否定せず受け入れ て励ましてあげられるような言葉をかけ られる人になりたい。」などという意見が たくさん見られた。

・初めてセクシュアルマイノリティについ て知った、という生徒もいましたが、非 常に真摯に受け止め、多様性への寛容と

 いうテーマの趣旨を生徒たちが理解した  ことが見て取れた。

・生徒は、こちらが思った以上にこの授業 に真剣に向き合い、柔軟な考え方で、他 者を受け入れようとしたり、自分は自分 のままでいいんだと思ったり、そのとき のその子の感性で様々なことを感じ取っ てくれたようです。 授業の冒頭だと、ゲイやレズビアンとい う言葉に反応して笑っていた生徒も、授 業の後半にはそのような反応はしなくな りました。だからといい、学校生活の中 でそういったまわりをからかうような発 言や態度が全くなくなったわけではない ので、繰り返し指導が必要だとは思って います。

・当事者の方の想いや考えがたくさんつまっ ており、活用しやすい教材でした。セク シュアルマイノリティについては、教職 員に関しても知識が十分とはまだまだ言 えません。他の先生がたもこの機会に教 材を手にとって、指導内容や時期につい て検討してくださいました。今後もたく

 さんの教材や実践を積み重ねて多様性を 感じることのできる社会をつくっていき たいです。

・当事者が気持ちを語る動画というのはス トレートに生徒の心に響きました。どん な座学よりもやはり、人との出会いが一 番です。ありがとうございました。

■生徒の授業に対する反応や、こころに残った発言

■本教材への感想

Ally Teacher’s Tool Kit を使用していただいた先生方からのメッセージのなかで「授業の冒頭だと、ゲイやレズビアンという言葉に反応して笑っていた生徒も、授業の後半にはそのような反応はしなくなりました。」という内容が見られました。また、日常での発信や多様な性を想定した学級づくりなど、継続的な取り組みにつなげたいとの意見も見られました。日常を共にする先生が多様な性にについて伝えることで、生徒たちが真摯に受け止め多様性について考えるきっかけとなるとともに、継続的な取り組みにつながると考えられます。

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 ReBit による出張授業の事前アンケートの結果から、知識的側面に関して、「不正解」よりも「わからない」と回答する割合が多く、また ATTK による中学生の実態調査からも、セクシュアルマイノリティについて学校で習ったことがあるという割合は約 12% と、ほとんどの子どもたちが正しい知識を持っていない・習ったことがないことがわかりました。多様な性は生きる上で、誰とどのように生きていくか等、人生設計や進路選択にかかわるアイデンティティの一つです。だからこそ、正しい情報を知ることは、子どもが安心して生きていくことにつながったり、身近な人のちがいを尊重することにもつながります。

 本調査の結果をもとに、多様な性に関する授業や情報について求められていると思われる事項をまとめました。

セクシュアルマイノリティについて学校で習ったことがある中学生 約12%

■すべての子どもたちに情報を届ける

 セクシュアリティは見た目だけで判断できないからこそ、セクシュアルマイノリティの人が身近にいることを知らずに、笑いのネタとして扱ってしまうこと少なくありません。また、そうした揶揄や笑いを見聞きした結果、子どもたち自身がセクシュアルマイノリティであると自分で気づいたときに自分のことを肯定することがむずかしくなってしまう場合もあります。 ReBit による出張授業の事前アンケートの結果から、「多様な性についての話は自分には関わりのないことだと思う」と回答した中学生は 50% 以上、高校生は 30% 以上存在しました。しかし、授業を通して一人一人が多様な性を持つこと、セクシュアルマイノリティの人は身近にいるかもしれないことを伝えると、中学生の 75%、高校生の 90%は関わりのあることだと認識しました。 また、ATTK を使用していただいた先生方からのメッセージのなかでも「授業の冒頭だと、ゲイやレズビアンという言葉に反応して笑っていた生徒も、授業の後半にはそのような反応はしなくなりました。」という内容が見られました。日常を共にする先生が「ちがい」があって当たり前であることを伝えることで、子どもたち自身に関わる身近な話であると知ることができるのではないでしょうか。

セクシュアルマイノリティのことは全然知らなかったので、知れてよかったと思いました。自分の偏見で人を傷つけることがあるのを知ったのでひとりひとりの考え方を大事にして生活してきたいです。 子どもたちの声

●一人一人に関わる身近な話であることを伝える

授業で情報を届ける

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日頃から、たくさんの「ちがい」をもつ子どもたちと接している先生だからこそ、子どもたちに多様な性に関しても、学びと安心を届けていただけたら嬉しいです。

 「セクシュアルマイノリティについて、授業や学校で習ったことのある」中学生は約 1割となり、今回の調査の結果、多様な性について知ることで知識が増えるだけではなく、

「セクシュアリティや特性にかかわらず、ありのままの自分や周囲の人を大事にしたい」と思う生徒が増えました。身近な大人が多様な性について肯定的なメッセージや、大切なことであると伝えることで安心する子どもがいます。 日常的に多様な性について子どもたちに情報を届けたり、多様な性を想定した学校経営をしていただくことが大切です。

 普段の何気ない言動から、多様な性を尊重する姿勢を子どもに伝えることができます。多様な性について授業やホームルームで話すだけではなく、日常的に多様な性のあり方や「ちがい」があることを子どもたちに伝え、子どもたちが「この先生になら相談できる」と思える大人のひとりであってください。

●多様な性に関する本や資料などを、教室・図書室・保健室・相談室などに置く●多様な性に関するニュースや話題を、子どもたちに肯定的に伝える●学級通信や保健だよりなどで、多様な性について取り上げる

●「男なんだから〇〇」「女なんだから〇〇」という言い方や見方をせず、その子自 身を見る●「いつかは結婚するんだから」「親になったら」など、みんな結婚や子育てをする ことを前提とせず、人生設計は多様でいいことを伝える●セクシュアルマイノリティが笑いのネタにされていたら、他の人権課題と同様に 注意する●「彼氏 / 彼女」ではなく「パートナー」など、性別を限定しない言葉を使う● 6 色(赤・橙・黄・緑・青・紫)のレインボーアイテムを身につけたり、置いたり する

学校のなかで情報を届ける

日常的な言動から伝える

LGBT について学びを深めるなかで「ちがい」を認め合える世の中になったらいいなと思うことが出来ました。ちがいがあることが当たり前なので、相手も自分も大事にしていけるように、いろいろな人を受けとめる心を持ちたいと思います。子どもたちの声

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  ステップ 1 <先生が知る> セクシュアルマイノリティに関する基礎知識や、子どもの困りごとを理解し、適切な対応を行う方法をまとめたハンドブックです。

 セクシュアルマイノリティの子どもにとっても過ごしやすい中学校をつくる「アライ先生」になり、子どもに多様な性について教えるための教材キットです。「アライ先生のための3ステップ」に即し、12 種の教材により構成されています。2017 年 3 月より、中学校への無料配布やオンラインでの無料公開をしています。ダウンロード URL:https://rebitlgbt.org/project/kyozai/chugakko

  ステップ 3 <児童・生徒に授業をする> 道徳の授業で多様な性に性について教えていただく際の教材です。15 分の映像教材や、生徒のためのワークシートや配布資料、先生にご参考いただくための指導案と指導の手引きもご活用ください。

 本授業は、多様な性を通して多様性について考えるものです。多様性理解とは一朝一夕にできるものではなく、教室を、学校を、全ての子どもが安心安全にすごせる居場所にするためには、授業はもちろんのこと、日々のクラス経営が非常に重要だと考えています。ぜひ先生方に、学校生活の様々な場面で、多様な性について考え続ける機会を子どもたちに提供していただきたいと思います。本キットが先生方の不断の努力の一助となれば幸いです。

■はじめに:多様な性の学習について

中学校版 Ally Teacher' s Tool Kit とは

アライ先生のための 3 ステップ

キットの内容とご紹介

先生向け資料

①説明書 ②先生向けハンドブック③レインボーシール④「アライ先生」シール⑤学習指導案 ⑥指導の手引き⑦先生用アンケート

生徒向け教材

⑧中学生向け映像教材⑨ワークシート⑩配付資料⑪生徒用アンケート

  ステップ 2 <相談していいよ、を伝える> 6 色のレインボーはセクシュアルマイノリティを理解・応援していることを表す国際的なシンボルです。子どもの目の届く場所に貼っていただきその趣旨を説明することで、多様な性について相談しやすく感じる生徒がいます。

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 (以下実態にあわせて使用する。)−多様な背について学ぶことを通して、いろいろなものの見方や考え方があることを理解 し、それぞれの個性や立場を尊重しようとする道徳的心情を育てる。−多様な性について学ぶことを通して、差別や偏見のない社会を実現しようとする道徳的 心情を育てる。

■指導上の留意点 授業前アンケートは、記入後回収せずに生徒が手元で保管する。以降、授業前アンケートの 書き直しをしないように声かけをする。

◎このイラストの性別はなんだと思いますか? 「サッカーをしているから男」「リボンをつけているから女」 など、男性らしさ女性らしさを起点とした発言が想定される

◎男・女といったけれど、性別は本当に 2 つだけなのでしょ うか?今日は多様な性について学習します。

配布資料や動画

配布資料や動画

主な発問と予想される生徒の反応

主な発問と予想される生徒の反応

■指導上の留意点 ・「ホモ」「レズ」「オカマ」などの発言があった場合、  それらが差別用語であることを指摘し、傷つく人が  いるので言わないように指導する。 ・「きもい」「生理的に無理」「生物学的におかしい」  などの発言があった場合

 −「なぜそう思うの?」など理由を聞く −「私はおかしいと思わないよ」など先生の意見を伝える −「おもしろいことではないよ」など他の人権課題と同様   の対応をする

・チャプターごとに一時停止してワークシートに取り組 ませてもよい。

<映像教材の内容>1. 多様な性ってなんだろう→セクシュアリティの用語等を知る2. 大学生・そうしのはなし3. そうしと母のはなし→ゲイの大学生であるそうしの語りや、母との対談4. 大学生・きょうへいのはなし5. きょうへいと友達のはなし→トランスジェンダーの大学生であるきょうへいの はなしや、中学時代からの友人との対談6. 多様性ってなんだろう?→「ちがい」をどのように受け入れるかをテーマに 複数人がコメント

■ワークの内容 4匹のアライグマのイラストが描かれたワークシートを 配布し、各アライグマの性別を考えさせるワークを行う。

■本時のねらい

■本時の展開1事前アンケート(約 5 分) アンケートを配布する

2導入(約 5 分) ワークシート①を配布する

3展開①(約 15 分) 動画を視聴する

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■指導上の留意点 授業後アンケートを記入する。記入内容が他の生徒に見えないように留意して回収する。

■指導上の留意点 ・記入した内容の共有や発言を強要しない

■ワークの内容ワークシートを配布し、以下の設問を各自記入する。1) セクシュアルマイノリティの人に対してこれまでもっていたイメージ をふまえながら、 映像の感想や気づいたことなどをまとめましょう。2) もし友人や家族などから、セクシュアルマイノリティであると打ち明 けられたら、あなたならどんな言葉をかけますか。

◎「ちがい」を尊重するために必要なのは、まずその「ちがい」を理解し ようとすることではないでしょうか。

◎多様な性と同様に、見た目だけではわかりづらい「ちがい」もあるから こそ、想像力をはたらかせる必要があります。

◎性別は多様であり、男女だけではありません。また、好きなものや外見 から判断できるわけではないし、どの性別であっても「どうあらねばな らない」ということはありません。

◎このイラストの性別はなんだと思いますか? ・「わからない」「男・女だけじゃない」など、多様な性を踏まえた発言

■指導上の留意点 ・多様な性から多様性に広げ、生徒一人ひとりが、個々の「ちがい」を  どう受け入れるか、今後も考え続けるよう促す

4展開②(約 10 分) ワークシート②を配布・記入する

6事後アンケート(約 5 分) 授業前に配布したアンケートに戻る

5終末(約 10 分) 導入のワークシートに戻る・生徒用の配布資料を配布する・セクシュアルマイノリティのような見た目だけではわかりづらい「ちがい」は身近にあたり まえに存在すること、それらを尊重することで誰もが生きやすい社会になることを伝える

(以下実態にあわせて使用する。)−多様な性について学ぶことを通して、いろいろなものの見方や考え方があることを理解  し、それぞれの個性や立場を尊重しようとする道徳的心情を育てることができたかを、 発言、態度、ワークシートの内容などを総合して評価する。−多様な性について学ぶことを通して、差別や偏見のない社会を実現しようとする道徳的 心情を育てることができたかを、発言、態度、ワークシートの内容などを総合して評価する。

■本時の評価

配布資料や動画 主な発問と予想される生徒の反応

配布資料や動画 主な発問と予想される生徒の反応

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< 学校図書館・保健室・相談室などに > ◆ 金子由美子(2017)『マンガレインボー kids:知ってる? LGBT の友だち』  子どもの未来社 ◆すぎむらなおみほか(2014)『はなそうよ!恋とエッチ:みつけよう!からだときもち』    生活書院 ◆ 日高庸晴(2017)『セクシュアルマイノリティって何?』少年写真新聞社 ◆ 日高庸晴(2015 ~ 2016)『もっと知りたい!話したい!セクシュアルマイノリティ:   ありのままのきみがいい』全 3 巻 汐文社 ◆ 藤井ひろみ(2017)『よくわかる LGBT:多様な「性」を理解しよう』PHP 研究所 ◆ ReBit(2018)『「ふつう」ってなんだ?:LGBT について知る本』学研プラス ◆ ロバート・ロディほか(2017)『わたしらしく、LGBTQ』全 4 巻 大月書店 ◆ 渡辺大輔(2016)『いろいろな性、いろいろな生きかた』全 3 巻 ポプラ社

< 先生・保護者に > ◆ 遠藤まめた(2016)『先生と親のための LGBT ガイド:もしあなたがカミングアウト  されたなら』合同出版 ◆ 河崎芽衣(2017)『見えない子どもたち:LGBT と向き合う親子』秋田書店 ◆ 康純(2017)『性別に違和感がある子どもたち』合同出版 ◆ 中塚幹也(2017)『封じ込められた子ども、その心を聴く:性同一性障害の生徒に向   き合う』ふくろう出版 ◆ ダニエル・オウェンズ=リードほか(2016)『LGBT の子どもに寄り添うための本:   カミングアウトから始まる日常に向き合う Q&A』白桃書房 ◆ はたさちこほか(2016)『学校・病院で必ず役立つ LGBT サポートブック』保育社 ◆ 原ミナ汰ほか(2016)『にじ色の本棚:LGBT ブックガイド』三一書房 ◆ 藥師実芳ほか(2014)『LGBT ってなんだろう?:からだの性・こころの性・好きに  なる性』合同出版

< 授業づくり・学校づくりに > ◆ 加藤慶ほか(2012)『セクシュアルマイノリティをめぐる学校教育と支援:  エンパワメント につながるネットワークの構築にむけて 増補版』開成出版 ◆ “ 人間と性 ” 教育研究所(2002)『同性愛・多様なセクシュアリティ:人権と共生を  学ぶ 授業』子どもの未来社 ◆ 針間克己ほか(2014)『セクシュアル・マイノリティへの心理的支援:同性愛、  性同一性障害を理解する』岩崎学術出版社

多様な性にかんするブックリスト

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◆ 日高庸晴ほか(2017)「多様な性を考える授業:一度の授業で子どもの人生が変わります」◆ 文京区(2017)「性自認および性的指向に関する対応指針:文京区職員・教職員のために」  http://www.city.bunkyo.lg.jp/kusejoho/jinken/danjo/sogi/sogishishin.html◆ 三成美保(2017)『教育と LGBTI をつなぐ:学校・大学の現場から考える』青弓社◆ 淀川区役所ほか(2015)「性はグラデーション:学校の安心・安全をどうつくる? どう守る?」  http://www.city.osaka.lg.jp/yodogawa/page/0000334762.html◆ 教職員のためのセクシュアル・マイノリティサポートブック制作実行委員会(2018) 「 教職員のためのセクシュアル・マイノリティサポートブック Ver.4」  http://www.jtu-nara.com/book.html  http://say-to-say.com◆ 倉敷市教育委員会(2017 ~ 2018)「人権教育実践資料 2~3 性の多様性を認め合う  児童生徒の育成 I~II」 http://www.city.kurashiki.okayama.jp/30449.html◆ 宝塚市教育委員会「『ありのままに自分らしく』互いに認め合える学校園所をめざして: 性の多様性について考える」   http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/kyoikuiinkai/1002552/1012182/1025339.html

◆ よりそいホットライン(24 時間無料電話相談)/ 0120-279-338 (4 番:セクシュアルマイノリティ専門回線)

さらにくわしいブックリストは小学校高学年版 Ally Teacher' s Tool Kit(P39 参照)

にて公開しています。http:rebit lgbt.org/project/kyozai

「LGBT 教材」で検索ください。全ての資料は無料ダウンロードし、

授業でそのままご活用いただけます。

多様な性にかんする相談窓口

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 LGBT を含めた全ての子どもがありのままで大人になれる社会を目指す認定 NPO 法人です。2009 年 12 月に早稲田大学公認学生団体として発足し、2014 年 3 月に NPO 法人化、2018 年 7 月に認定 NPO 法人となりました。教育現場 / 行政 / 自治体などで約 650 回の LGBT や多様な性に関する研修を実施しました。ホームページ:https://rebitlgbt.org/

 セクシュアルマイノリティを含めた全ての子どもたちがありのままで大人になれる社会をつくるために、認定 NPO 法人 ReBit がお手伝いできることがあります。

ReBit では学校現場等でこれまで 650 回、6 万人以上に向け授業を実施してきました。

 ReBit では「“ 覚える ” よりも “ 出会う ”」授業を心がけています。 セクシュアルマイノリティについて知っていただくのはもちろんですが、それ以上に、まずは今を生きるセクシュアルマイノリティの若者と出会っていただくことで、体感的な理解につなげていけたらと願っています。 その上で、や多様な性を切り口として、セクシュアルマイノリティ以外の多様性への気づきや、その中で自分たちは生きていること、さらにその中にあって今後どのように生きていくか…など、社会の様々な課題を “ 自分ごと ” として捉え、「自身も多様な中の一人である」ということの体感的理解を目指しています。 授業の様子(動画):http://news.yahoo.co.jp/feature/162

講義型:ReBit の講師 1 ~ 2 名ほどが前に立ってお話する形式です

<児童・生徒・学生向け>目安時間:75 分~ 90 分

<教職員向け>目安時間:90 分~ 120 分

認定特定非営利活動法人 ReBit(リビット)とは?

認定 NPO 法人 ReBit がお手伝いできること

①出張授業・研修(子ども向け・教職員向け)

■授業意図について

■授業形式について

■授業・研修時間について

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①概要決定(1 ヶ月前まで)②依頼書フォーマットのご記入・ご返送をもって正式受諾(2 週間前まで)③企画書送付・当日準備 ※アンケート調査へのご協力、機材のご準備、資料の印刷などをご相談させていただきます④当日実施

弊法人 HP 内の「出張授業 / 研修のご依頼」からお問い合わせ・お申込みください。https://rebitlgbt.org/project/entry

<大学>早稲田大学、慶應義塾大学、明治大学、埼玉大学、群馬大学 他多数

<高等学校>東京都立小平高等学校、神奈川県立金沢総合高等学校 他多数

<中学校>新宿区立四谷中学校、横浜市立日限山中学校 他多数

<小学校>奥多摩町立氷川小学校、横浜市立十日市場小学校 他多数

<教育委員会・行政など>内閣府、東京都教育委員会、東京都中学校長会 他多数

●学生向け

多様な性とは?多様な性とは?

セクシュアルマイノリティの学生・若者の話

セクシュアルマイノリティの学生・若者の話

トークセッション(カミングアウトや将来の話)

25 分

15 分× 2 名

25 分

10 分× 2 名

15 分

15 分30 分

10 分

5 分

5 分

学校のなかでできること

質疑応答

質疑応答 まとめ

まとめ

●教職員向け

■当日までの流れについて

■お問い合わせ・お申込み方法

■授業コンテンツ

■授業 / 研修実績

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セクシュアルマイノリティや多様な性について知るきっかけの 1 冊としてください。

ぜひ学校内での情報共有等にお役立てください。

②教職員向け・子ども向け書籍

③教職員向けの冊子・DVD

「LGBT ってなんだろう? - からだの性・こころの性・好きになる性 -」(2014・合同出版)

「男・女だけじゃない!先生が LGBT の子どもと向き合うためのハンドブック」(2014・横浜市、埼玉県、東京都武蔵野市と協働作成)

「「ふつう」ってなんだ? - LGBTについて知る本 -」(2018・学研プラス)

お近くの書店やインターネット通販サイトより購入いただけます。

体育やプール、制服、行事、友だち関係、カミングアウト etc.LGBT の子どもたちにとって、日常生活の中にもたくさんの不安な要素があります。そんな時、身近に一人でも相談できると思える人がいることが何よりも力になります。LGBT 当事者の学生 50 人の声から子どもたちに寄り添うヒントをみつけてください。LGBT や多様な性について初めて知る、入門書としてお使いください。

クラスの 13 人に 1 人は LGBT。そんな LGBT 当事者の生徒たちは、普段の学校生活の様々なシーンや周囲の何気ない言動で悩んでしまうことがあります。また、学校の制服やトイレの使用においても困難を感じることがあります。この冊子は、LGBT 当事者学生の実際の体験談や、悩みや困難をおぼえる当事者学生のために先生ができること、また、実際にカミングアウトを受けるときのポイントなどが収録されています。

日常や学校現場での事例を、マンガと図解で小中学生に読みやすく解説。性のあり方 ” について、考えてみたことはありますか?この本では、「ふつうってなんだろう」という切り口から、いろいろな性のあり方について紹介します。LGBT かどうかにかかわらず、すべての人が「自分らしさ」を大切に生きていくためにどんなことができるのか、まずは “ 知る ” ことからはじめてみませんか。この本が、それぞれが自分らしく生きるためのヒントを提供し、お互いの違いを認め合える社会について考えるきっかけになることを願っています。

■教職員向け書籍

■冊子

■子ども向け書籍

■購入方法

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小学校と中学校の先生には無料配布しております。

④小学校高学年・中学生向け道徳教材

教職員向け研修用 DVD「先生にできること~ LGBT の教え子たちと向き合うために~」

(2012・早稲田大学教育学部 金井景子研究室と協働制作)

ReBit Online Store よりご購入ください。https://rebitlgbtsupporters.stores.jp/

LGBT の生徒たちのために、あなたにできることがあります。セクシュアリティは人間のアイデンティティや生き方に関わる大きな問題です。セクシュアル・マイノリティである LGBT の生徒は、学校生活の中でアイデンティティに関わるさまざまな問題に直面しています。生徒たちの悩みを解決するためには先生の手助けが必要です。LGBT の生徒はあなたの学校にも確実にいます。この DVD では、かつて ” 生徒 ” だった当事者たちが自分の学校生活を振り返って、考え、語っています。その声に耳を傾けてみましょう。先生にできることが必ずあります

■ DVD

■購入方法

■中学校向け

■小学校高学年向け

先生向け資料

先生向け資料

①説明書 ②先生向けハンドブック③レインボーシール④「アライ先生」シール⑤学習指導案 ⑥指導の手引き⑦先生用アンケート

①説明書 ②先生用ハンドブック ③ブックリスト④「アライ先生」シール ⑤学習指導案 ⑥指導の手引き⑦先生用アンケート

生徒向け教材

生徒向け教材

⑧中学生向け映像教材⑨ワークシート⑩配付資料⑪生徒用アンケート

⑧小学校高学年向け 映像教材⑨配付資料⑩児童用ワークシート 兼アンケート

すべての教材を無料ダウンロードし、授業でそのままお使いいただけます。小学校・中学校の先生には、映像 DVD やハンドブック・配布資料などをまとめた製品パッケージを無料で送付させていただきます。

Ally Teacher's Tool Kit を申し込むhttp:rebit lgbt.org/project/kyozai「LGBT 教材」で検索ください。

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 月 1,000 円から参加できる「にじいろバトン」は、LGBT を含めたすべての子どもがありのままで大人になれる社会を目指すチームです。ReBit と一緒に、次世代に未来のバトンをつなぐ仲間を募集しています。

LGBT の子ども・若者が大人になるまでに直面する困難の解消のため、以下の事業を展開しています。

<御礼 / 報告>● ReBit 最新の活動情報(月1)●にじいろバトン交流会、感謝祭 (年 2 回程度)●アニュアルレポート(年1)

<お申込みはこちらから>https://rebitlgbt.org/support/nijiirobaton

皆さまからのご寄付は寄付金控除の対象となります。詳細はこちらから https://rebitlgbt.org/pdf/donation_deduction.pdf

ReBit を応援する

「多様な性」と出会い、多様性について 見つめ直す

授業・研修を全国約 650 回、約 6 万人に展開

約 200 社への研修提供、約 1,500 名の就活生を支援、日本最大級の LGBT の就活 /就労に関するカンファレンス「RAINBOW

CROSSING TOKYO」を開催

「先生が知る・子どもに伝える」ための教材を開発し、全国約 1,000 個、

約 2,000 名にお届け

LGBT 就活事業LGBT 教育事業

ReBit の取り組み

あなたの寄付が、LGBT の子どもたちを未来につなぎます

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引用についてのお願い本資料を引用する場合は以下の明記をお願いいたします。

「多様な性に関する授業がもたらす教育効果の調査報告 2019. 認定特定非営利活動法人 ReBit」

※メディア関係者の方が記事中で引用される場合は、必ず下記メールアドレスまで掲載内容をお知らせください。

[email protected]

■発行者:認定特定非営利活動法人 ReBit

■認定特定非営利活動法人 ReBit 調査班 藥師実芳(認定特定非営利活動法人 ReBit 代表理事) 三戸花菜子(認定特定非営利活動法人 ReBit 教育事業部マネージャー) 大賀一樹(臨床心理士、東京都教育委員会、早稲田大学ジェンダー・セクシュアリティセンター職員) 渡邉歩(早稲田大学大学院(教育心理)在学、早稲田大学ジェンダー・セクシュアリティセンター職員) 坂田寛介(大正大学大学院(臨床心理)在学)

■ホームページ:http://rebitlgbt.org■メールアドレス:[email protected]■電話 /FAX:03-6278-9909

■平成 30 年度 公益財団法人三菱財団 社会福祉事業・研究助成事業

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本冊子は認定特定非営利活動法人 ReBit の HP より無料ダウンロードできます。https://rebitlgbt.org/project/kyozai