防災・復興における 男女共同参画視点の定着化に向けて ~多...
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防災・復興における 男女共同参画視点の定着化に向けて ~多様な視点から
報告 池 田 恵 子 減災と男女共同参画 研修推進センター 共同代表 静岡大学教育学部・同防災総合センター 教授 [email protected]
第3回 国連防災世界会議 パブリックフォーラムテーマ館 「女性と防災」 テーマ館主催シンポジウム 3 「災害に強い社会づくり ~男女共同参画の視点を根づかせる~ 」 資料
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「男女共同参画が根付いていなかった」という嘆き
1.男性中心の避難所運営 残念だが、男女共同参画は根付いていなかった。性別役割がでてくる。男性が疲弊していても避難所で頑張る。結局、管理的になる。女性はそれに従い、自分をころし、自尊感情がどんどん低下していた。
2.女性が困りごとを口にできない 女性が避難所で衝立や更衣室の事を遠慮していた。津波から2か月も経っていたのに、プライバシーのない状況は改善されていなかった。
3.復興計画に発言できない・情報が来ない 漁協が復興計画を出すというとき、女性には、まったく情報が入ってこなかった。… 女性は漁協の組合員になれない。…船の共有化構想について質問したら、「女には関係ねぇべ」と言われ、にらまれた。
東日本大震災女性支援ネットワーク調査チーム「支援者調査」より
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女性支援団体、NPO
女性支援団体、NPO
災害支援 ボランティア
当事者団体 専門団体
被災地外の行政の応援
女性センター男女共同参画
担当など 女性支援団体、
NPO
地域自治 組織
多様な 住民
× 支援
種類
対象
女性対象
支援
支援
女性配慮
立場別
支援
(
女性以外)
行政・災害対策本部
社会福祉協議会
当事者団体 専門団体
×
被災地 被災県の県庁所在地・中心都市 被災地の外
支援者の震災前の活動地と支援の種類・対象別に見た支援の流れ
支援者の震災前の活動地
当事者団体 専門団体
社会福祉協議会
企業・団体
企業・団体
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B地区
高齢者、乳幼児、障害を持つ人、病弱な人、介護が必要な人、外
国人、妊娠中・授乳中の女性、ひとり暮らしの人、家族と一緒の人、
働いている人、児童・生徒
地域の多様な組織・団体との連携による防災体制へ
支援者
・行政担当者 ・避難施設 管理者 など
・保健師 ・看護師 ・医師 ・助産師 ・介護福祉士 ・栄養士 など
・社会福祉協議会 (災害ボランティアセンター) ・ボランティア、 NPO/NGO (多様な分野) ・男女共同参画 センター ・国際交流協会 など
育児や介護に必要なものが足りな
い・・・
A地区
行政だけ 一部の人だけ 男性ばかり
・地域代表
赤ちゃん、妊婦さん、要介護高齢者、障害者に必要な物資や専門支援は? 栄養、アレルギー患者さんは? 外国人が困ることは? 子ども支援は?
男性&女性(子育て~介護
世代)、PTA、 民生委員、 婦人会、
障害者団体、患者団体、 各種の市民団体
男女共同参画関係者
・地域代表 全国や県組織から支援の打診がきたよ
地元の女性団体や子育て団体と連携しても
らおう
手一杯で細かいことまでわからない
育児・介護の要望はもう聞いているよ
こういう支援の申し出があるよ
よくわからない団体は受け入れられない
当事者のことがわかる人や団体に支援してほしい。でも言
えない。
話しやすい人や知り合いの 団体に相談し
てみよう! 必要なことは協力しよう!
要望ばかり。 疲れた・・・・
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どこまで定着しているのか
これまでの主な活動の広がり ü 地方防災計画の改定 ü 自治体の防災委員会への女性委員の増加・女性に
よる防災懇話会など ü 防災活動を行なう・学ぶ女性グループの増加 ü ジェンダー多様性配慮の視点を用いた避難所マニュ
アル・防災手帳などの作成(多くは女性センターなどが企画⇒自治会連合会、社協などとの連携が薄い)
ü 自主防災組織の役員層への女性増加の促進のための自主防災組織向け研修内容の修正・学習会
ü 女性防災人材育成の研修 課題 ü 自主防災組織に女性のリーダー層が増えていかない。 ü ボランティアセクターと男女共同参画セクターの連携が深まらない。 ü 防災の研修を受けた女性たちが自主防災組織・ボランティアセンター
と繋がれない。 ü 男女共同参画担当部署と危機管理部署、他部署の連携促進が遅い。 5
地域のレジリエンスを高め「定着」のために考慮すべき点・・・地域と災害支援組織のレジリエンスの観点から
ジェンダー・多様性の視点:「開発とジェンダー」におけるジェンダーニーズ論から ① 女性や不利な立場にある人々の意思決定への参画を促し、災害への脆弱性
を積極的に緩和しレジリエンスを高めるためのニーズ(戦略的ニーズ)
② 多様な立場にある男女が、災害時や避難生活中にも平常時と同様にジェンダーに基づく役割や活動を担えるようにするためのニーズ(実践的ニーズ)
地域防災組織にジェンダー多様性配慮の視点が受容され定着する要因
① 地域防災組織やボランティア組織の基礎的な体制デザイン(組織体制・構成、活動内容、権限、予算、防災・減災の政策全体における位置づけなど) ⇒自主防災組織・地域自治組織、ボランティアセンター
② 地域防災組織やボランティア組織の育成(研修・人材育成の体制、政策情報の普及方法とアクセス) ⇒女性防災リーダー養成など
③ 地域における多様な組織の連携状況(行政機関、開発や社会問題を扱うNGO・NPO、女性団体・当事者団体など)
④ 地域の社会経済・政治的状況(多様なジェンダー課題の所在、人間開発の状況、地域女性組織の状況など)
⑤ その他(ジェンダー平等関連の施策の状況など)
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防災・復興政策におけるジェンダー多様性配慮の視点 政策の焦点と問題点
政策の焦点 (防災基本計画) ü 災害サイクル全体で、男女、多様な立場にある人々(高齢者、
障害者など)の参画を促進し、異なるニーズに対応する (男女共同参画局の「取組指針」) ü 防災の主体としての女性、人権、日常の男女共同参画促進の
重要性への言及など平常時のジェンダー多様性配慮との関連を示唆
ü 具体的で細かな施策内容とよい事例が示されている。 欠落している部分 ü 参画促進やニーズ対応の具体的プロセスは提示されていない ü 明確に、災害リスク削減やレジリエンスの構築を目指すもので
はない ⇒母体となる地域組織やコミュニティ施策のあり方 ü 他セクターの政策との連関は、あまり見られない。
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行政の男女共同参画担当、 防災担当、地域女性組織、 男女共同参画センター ボランティア組織、福祉 団体、自治会連合会、大学 ⇒定期的に会合・情報交換
平常時からのネットワーキング 静岡県「ふじのくに男女共同参画防災ネットワーク会議」(2012~)
自主防災活動が活発 (組織率95%以上) 女性の視点による防災対策を盛り込む兆し
自主防災会役員の大多数が男性。女性はわずか防災の研修に男女共同参画の話題は、少ない
静岡県では、現在・・・・
☺
☹
では、東海地震に備え、どうした
らいい?
「男女共同参画の視点からの防災手引書」
「女性防災リーダー養成講座」 (2日間×県内3か所) 研修修了者の名簿を自治体に 提供⇒多くの女性が活動開始!
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静岡県の事例から 地域の防災力と男女共同参画
【男女共同参画の視点からの課題】 ü 自治会・町内会と同一組織…..70% ü 会長が男性, 98.9 %
(全国平均, 95.6 %) ü 役員会に占める女性役員の
平均人数 1.24人 / 8.86 人 ü 60%で女性の役員が不在 ü 強固な役割分担
静岡県, 2013, 『自主防災組織活動実態調査』
【自主防災活動の状況】
ü 発災直後の対応のみの一律指導 ⇒長期的避難生活、多様性の視点が薄い ü 「高齢化」、「地域離れ」、「町内会は、情報難民」
にもかかわらず、自治会・町内会のみにさまざまな活動を期待される ü 自治振興と、教育・福祉・子育て・防災等の生活に関わる分野が縦割りになっ
ている(cf.社会教育政策・公民館活動)。
女性防災人材育成の成果と課題(研修1年後の調査より)
成果 ü 自治会の会議に話しに呼ばれた ü 知識を得て、意見を言えるようになった ü 市と協働で子育て中の女性の防災力を
向上する事業を実施することになった。 ü 区長と一緒に防災倉庫探検隊として
備蓄物資をチェックした ü 自主防災会の役員となった 課題 ü 防災の役員が全て男性の為、入り込めない ü 組長をしていないので、防災の会議に出席できないと断られた ü 自主防災組織が固定化・高齢化し、柔軟性がなく入りこみにくい ü 自主防災役員に女性が参加することを女性自身が拒否する ü 女性委員の位置づけは炊事班、救護班が役割分担とされ、提言、発
言する機会がない
静岡県くらし・環境部男女共同参画課「女性防災リーダー育成講座平成25年度修了者フォローアップ研修事前アンケート」(2014年11月実施)
研修の成果を発揮する機会 回答率 27.6%
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静岡県連合自治会長連絡会でのアンケート (2014年6月実施)(n=36)
自主防災会の会合への出席者の男女比
所属する自主防災会に女性役員がいるか ①いる(42%)、②いない(42%)、③不明・記載なし(16%)
なぜ女性の役員が少ない/増えないか?(回答数)
↑ そのほかの回答 • 自治会の内に、女性部、保健部がある。 • 役員にふさわしい女性が高齢化しており、身体的に負担が大きい。 • 自治会の男性の年齢順で自治会長になるため、女性がなる余地がない。 • 女性もめんどくさいことをやりたがらない。女性自身にやる気がない。
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これから取り組まれるべき課題
課題 ü 自主防災組織に女性のリーダー層が増えていかない。 ⇒ 地域自治とジェンダーの課題 ü 防災の研修を受けた女性たちが自主防災組織・ボランティアセンターと繋がれない。 ⇒ 人材育成研修の企画・実施・評価 ⇒ 地域や組織の制度文化 ü ボランティアセクターと男女共同参画セクターの連携が深ま
らない。 男女共同参画担当部署と危機管理部署、他部署の連携促進が遅い。 ⇒ 多主体間の連携の課題
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