電炉ダスト等からのベースメタル リサイクル事業化...

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電炉ダスト等からのベースメタル リサイクル事業化可能性調査 報告書 平成24年2月 経済産業省 平成23年度「アジアにおけるリサイクル ビジネス展開可能性調査事業」

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電炉ダスト等からのベースメタル

リサイクル事業化可能性調査

報告書

平成24年2月

経済産業省

平成23年度「アジアにおけるリサイクル

ビジネス展開可能性調査事業」

目 次

I. 調査概要 .................................................... 1 I-1. 背景と目的 ...................................................... 1 I-2. 調査概要 ........................................................ 4

II. タイ国における電炉ダスト等リサイクルのニーズ................ 5 II-1. 政府及び業界団体の動向 ........................................ 5 II-2. リサイクル原料の発生及び処理状況.............................. 18

III. 競合・関連企業の動向 ..................................... 33 III-1. セメント事業者 ............................................... 33 III-2. 埋立処理場 ................................................... 35 III-3. 中国等への輸出 ............................................... 37 III-4. 非鉄製錬業による中間処理 ..................................... 38

IV. 事業化可能性の検討 ........................................ 40 IV-1. 想定されるビジネスモデル ..................................... 40 IV-2. 事業採算性の検討 ............................................. 43 IV-3. 製品・副産物の販売シナリオ ................................... 47 IV-4. 立地候補地 ................................................... 49 IV-5. 事業化までに必要な手続き ..................................... 51 IV-6. 事業基本計画の骨子 ........................................... 56

V. 参考資料 ................................................... 58 V-1. 現地調査報告 ................................................... 58 V-2. 現地企業の概要(本調査関連) ................................... 68 V-3. BOI申請様式(邦文仮訳) ........................................ 70

「電炉ダスト等からのベースメタルリサイクル事業化可能性調査」

検討ワーキンググループ 検討メンバー

(調査受託者)

松末 充裕 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部 企画部長

横本 誠一 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部 企画部原料企画担当部長

山本 伸之 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部

企画部原料企画担当部長補

池信 省爾 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部 企画部部長補佐

濱田 篤詩 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部 企画部主査

俵 亮輔 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部 企画部主査

名井 肇 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部

執行役員・リサイクル推進部長

中山 恵造 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部 亜鉛事業部 技術部長

中元 伸幸 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部 亜鉛事業部 営業部長

木村 正明 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部 亜鉛事業部 営業部主査

川下 幸夫 三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部 環境・リサイクル事業部

技術部長

野田 眞治 三井金属鉱業株式会社 エネルギー統括部副部長

(調査協力:外注先)

清水孝太郎 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

環境・エネルギー部 主任研究員

佐々木 創 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

環境・エネルギー部 副主任研究員

大澤 拓人 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

環境・エネルギー部 研究員

倉田 陽平 Executive Advisor, Ken and associates consulting group Co., Ltd.

Tana Sooksan Projcet Manager, Ken and associates consulting group Co., Ltd.

妻鹿 カヨ 海文堂エンタープライズ

1

I.調査概要

I-1. 背景と目的

銅、鉛、亜鉛、アルミニウムなどのベースメタルは、レアメタル等と比較して

需要量も大きく、古くから様々な用途で利用されてきた。近年は新興国の都市化

や工業化によってベースメタルの需要が世界的に拡大しており、新たな供給源の

開発が求められている。当社をはじめとする日系製錬業では、高騰する鉱石に代

わる新たな原料確保手段として、また資源循環を促進させる手段としてベースメ

タルのリサイクルに注目しているが、亜鉛についてはその用途が自動車や家電向

けの亜鉛めっき鋼板に集中しているため、まとまった亜鉛スクラップの発生が少

なく、銅や鉛などの他のベースメタルから比べるとリサイクルは進んでいない状

況である(日本における亜鉛リサイクル率は20%程度と推定される)。

現状、少ないながらも亜鉛リサイクルの主流となっているのは、電炉ダスト等

からのリサイクルである。亜鉛めっき鋼板を溶解すると、亜鉛を含む煙灰(ダス

ト)が発生するため、これを回収し、中間処理(品位向上、不純物除去等)、製

錬を行うことで亜鉛(亜鉛地金やタイヤ向け添加剤などへ)を回収している。日

本の場合、国内で発生した電炉ダストのほぼ全量が非鉄製錬業によって回収、処

理される仕組みが既にできあがっており、当社は日本国内で発生する電炉ダスト

の過半数を過去十数年にわたって回収、処理してきた実績を有する。また当社は、

他社にはない独自の中間処理技術として「MF炉(Mitsui Furnace炉)」を福

岡県大牟田市に有しており、電炉ダストの一般的な中間処理技術であるウェルツ

炉にはない特徴として、亜鉛や鉛を高効率で回収できるほか、銅、金・銀等につ

いても同時に回収(銅製錬原料として)できるという特徴がある(図表 1)。

アジアでは、我が国のほか、韓国、台湾、中国などで大量の電炉ダストが発生

しているが、これらはすでに我が国や中国の中間処理設備や亜鉛製錬所を経てリ

サイクルされているものと見られる。近年はタイ、マレーシア、インドネシアで

発生する電炉ダストについても亜鉛価格の高騰を受けて中国等へ輸出されてい

たが、電炉ダストには有害な鉛なども含まれるため、タイでは政府当局が電炉ダ

ストをバーゼル条約で規定される有害廃棄物であるとして(2011年初頭に明確

化)、その取締りを強化する方向にある。しかし、現地の回収体制や優れた中間

処理技術が不足していることもあり、タイ政府はDepartment of Industrial

Works(DIW)やDepartment of Primary Industry and Mines(DPIM)のほか、

業界団体The Iron and Steel Institute of Thailand (ISIT)を含めた協議の

場を立ち上げようとしている(Bangkok Post/June 15th, 2011)。したがって、

2

本提案で想定している当社のMF炉やこれに類似する中間処理設備の導入ニーズ

も高いものと想定される。

タイやマレーシアの有害廃棄物基準を考慮した場合、電炉ダストは有害廃棄物

に該当し、有価物として取引されることがあってもマニフェスト制度等を通じて

処理する必要があることから、金属等による環境汚染を防止する観点で今後対策

が進むものとみられる。タイをはじめとする東南アジア地域では、このようなベ

ースメタル資源が大量に眠っているものと推察され、東南アジア地域で電炉ダス

ト等の回収ネットワークを構築すると共に適切な中間処理設備を導入できれば、

我が国の資源安定供給確保に資するアジア大のリサイクルシステムを構築でき

るだけではなく、現地における環境汚染の拡大防止にも貢献できるものとみてい

る。

当社では、現地で一定量の電炉ダスト回収が見込めることや(多数の電炉事業

者が立地)、現地政府が中間処理やリサイクルを行うための仕組みづくりを検討

し始めていること、また東南アジアで唯一亜鉛製錬所があること(Padaeng

Industry:亜鉛相場が下がった時でも中間処理で得られた粗酸化亜鉛を現地で

売却可能)、さらに三井グループの関連会社(三井物産など)の現地協力が得ら

れやすいことなどから、タイを有力な対象国・地域として想定している。そこで、

本調査事業ではタイを調査対象国として選定し、タイ国内及び周辺国における電

炉ダスト等の性状や発生状況について基礎調査を行いながら、電炉ダスト以外の

リサイクル原料も視野に入れた、タイにおけるMF炉導入の事業実施可能性調査

を実施する。

3

図表 1 MF(Mitsui Furanace)の概要

スラグ(セメント原料として外販)

銅マット(銅製錬原料として使用)

粗酸化亜鉛(亜鉛製錬原料として使用)

(資料)三井金属鉱業(株)

4

I-2. 調査概要

本調査事業では、当社のほか、調査協力会社から構成されるワーキンググルー

プを定期的に開催しながら、調査検討を行った。調査検討事項としては、基礎調

査のほか、事業実施可能性に関する調査を行った。これら調査の実施に際しては、

調査対象国であるタイやマレーシアの現地へ赴き、電炉ダスト等の回収、処理の

実態把握に努めたほか、現地政府当局の意向把握や事業申請に際しての課題や改

善点などの把握、また業界団体(電炉事業者業界団体)の意向把握にも努めた。

図表 2 調査実施経緯及び全体概要

現地調査① (10/2-6)タイ政府、関連業界団体、学識者等へのヒアリング調査

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

    

現地調査② (11/27-12/1)タイ現地企業及び学識者等へのヒアリング調査

現地調査③ (12/12-16)タイ現地企業及び学識者等へのヒアリング調査

現地調査④ (1/16-21)マレーシア及びタイ政府、現地企業へのヒアリング調査

国内WG① (9/1)タイ政府・競合他社の動向等について検討

国内WG② (9/20)タイ政府、現地調査計画等について検討

国内WG③ (10/24)現地調査結果及び今後の対応、調査計画について検討

国内WG④ (11/24)現地調査結果及び今後の対応、調査計画について検討

国内WG⑤ (12/27)現地調査結果、事業採算性の検討、調査計画について検討

国内WG⑥ (1/11)現地調査結果、事業採算性の検討、調査計画について検討

国内WG⑦ (2/4)報告書案の検討、今後の対応に関する検討

独自招聘 (11/16)タイ関連業界団体等の訪日招聘(工場視察等)

 タイ現地企業関係者の訪日(1/27-31)(工場視察等)

(1)基礎調査    

①電炉ダスト等の回収・処理・輸出入に関する関係法制度

②タイ及び周辺国における電炉ダストの発生・リサイクル動向

③政府(行政担当機関)における取組実態・課題実態

(2)事業実施可能性調査

①タイ及び周辺国で発生する電炉ダストの発生量及び特徴

②処理コスト、再生資源(粗酸化亜鉛・鉄クリンカ)の販売先並びにその価格・用途

③現地の既存企業(リサイクル企業・排出企業)の状況・インフォーマルセクターの動向

④候補となる事業パートナーの詳細

⑤リサイクルに関する現状・実態の把握(適正処理を行う際の既存設備・手法とのギャップ)

⑥事業活動を支えるインフラの整備状況

⑦事業開始に必要な行政手続き(許認可取得、環境影響評価)

⑧競合すると考えられる他国企業及び他国政府との働きかけの状況等

⑨事業基本計画の策定

5

II.タイ国における電炉ダスト等リサイクルのニーズ

II-1. 政府及び業界団体の動向

1. タイ政府の動向

(1)電炉ダストに関連する政策動向

タイで発生する電炉ダストは、2010年半ばまで有害廃棄物処理事業者での

埋立処理、またはセメント会社での鉄源として利用されていた。2010年半ば

からタイで発生する電炉ダストについては亜鉛価格の高騰を受けて中国等へ

輸出されていた。しかし、電炉ダストには有害な鉛なども含まれるため、タイ

では政府当局が電炉ダストをバーゼル条約で規定される有害廃棄物であると、

2011年初頭に明確化し、その取締りを強化した(図表 3)。

図表 3 タイにおける電炉ダスト処理の変遷

時期 処理方法想定される処理価格

主な事業者と処理の状況

電炉ダストは有害廃棄物に該当するため、以下の事業者にて埋立されている可能性がある。

・General Environmental Conservation Public Co., Ltd.

・Professional Waste Technology Co., Ltd.

・Better World Green Co., Ltd.

電炉ダストを鉄源としてセメント原料化でき、タイで廃棄物を受入可能なセメント会社は下記の3社である。・SCG Cement Co.,Ltd

・Siam City Cement Public Co.,Ltd.

・TPI Polene Public Co.,Ltd.

2010年半ば~ 輸出 有償

中国人バイヤーが電炉ダストを買い付け輸出されており、所管官庁DWIがバーゼル条約対象物であると2011年初頭に明確化。ただし、現在も電炉ダストを亜鉛製品としてのインフォーマルな輸出が確認されている。

埋立処理 逆有償~2010年半ば

~2010年半ば2011年~

セメント原料

逆有償~無償

(資料)現地調査より作成

しかし、現地の回収体制や優れた中間処理技術がないこと、またセメント会

社における電炉ダストのリサイクルは、ダスト中の塩素や亜鉛の量によって受

入能力に制限があるため、現状ではリサイクル方法が確立するまで電炉事業者

において保管されている電炉ダストが大半となっている。

そこで、タイ政府においては産業廃棄物を所管する工業省工場局

(Department of Industrial Works、以下DIW)、鉄鋼業やセメント産業等の

素材産業を所管する基礎産業工業局(Department of Primary Industry and

Mines、以下DPIM)、リサイクル産業を含めた外資系産業の投資優遇策を所管

するタイ投資委員会(The Board of Investment of Thailand、以下BOI)の

6

ほか、業界団体であるタイ鉄鋼協会(The Iron and Steel Institute of

Thailand、以下ISIT)を含めて、電炉ダストリサイクルの企業の選定委員会を

立ち上げ検討を行っている(図表 4)。

図表 4 タイにおける電炉ダストリサイクル企業の選定委員会

上位委員会上位委員会

中位委員会中位委員会 DIW・DPIMDIW・DPIM

ISITISIT

申請者申請者

承認

企業選定

申請

レポート提出

情報提供

技術的な意見を求める

レポート提出

BOI

(資料)現地調査より作成

現状では、タイにおいて亜鉛ダストのリサイクル技術は存在しないため、事

業の実施主体は外資系企業となる。タイにおいては、環境インフラや自動車産

業、電子電気産業などタイ政府の産業政策と合致する外資系企業に対して、進

出手続きの簡素化や税制免除などの各種の特典を与えており、特典を与えるか

の判断する事務局はBOIとなっている(詳細はIV-5.事業化までに必要な手続

き)。ただし、タイでこれまでに参入実績がない新規ビジネスである場合や、

BOIの条件に適合しない例外事項を含んだ事業計画で進出を希望する企業か

らの申請である場合などについては、関連する政策を所管するDIWやDPIM、業

界団体から技術的な意見を求めることがある。

本事業についても図表 4のような体制で選定委員会が立ち上げられ、そこで

はまず環境負荷が少ないことで技術が第一条件として求められている(詳細は

II-1.2. (1)鉄鋼関連業界の動向)。投資の採算性については、上位委

員会で事業の継続性が担保されているかについて考慮されるが、タイ政府が亜

鉛ダストのリサイクル事業に出資することではないため参考資料という位置

づけとなっている。したがって、 終的に本事業がBOIの特典を承認されたと

しても、特典を受けてタイで事業を実施するかについては、投資主体が 終的

に判断することになる。

7

(2)家電リサイクル法に関連する政策動向

本事業化可能性調査で想定しているリサイクル原料としては、電炉ダスト以

外にもWEEE(Waste Electrical and Electronic Equipment)と称される使

用済家電も可能性があることから、調査対象国における家電リサイクル法の制

定状況についても整理を行った。

タイ政府においては、2005年よりタイ版家電リサイクル法の原案を作成し、

Pollution Control Department(PCD)を中心に関係する政府機関、業界団体

で詳細を検討されてきた。2011年初頭にタイ財務省より提示された環境管理

経済的手法法(案)(Economic Instrument for Environmental Management

Act)によって、汚染物質・物品に環境税を課す大枠が示され、家電製品につ

いてはWEEE管理促進政令(案)(Royal Decree of WEEE Management Promotion)

によって、Producer Feeを前払いとしてメーカーや輸入業者に課す政策案が

PCDより提案され、モデル事業等で実証した上で2015年に施行する予定であっ

た(図表 5)。

図表 5 WEEE管理促進政令(案)概要

回収拠点

処理・リサイクル業者

消費者

メーカー 輸入業者

自治体・回収ネットワーク

リサイクル基金

管理委員会

Product fee

関税局物品税局

買取(補助金を利用)

カネのフロー

WEEEのフロー

評価委員会

認可

(資料)小島道一、吉田綾、佐々木創、「発展途上国におけるEPRの適用とその課題―タイ・

中国を中心に―」、小島道一編『アジアにおけるリサイクル』、研究双書No.570、

アジア経済研究所、pp.347-369を基に加筆修正

8

図表 6 Product Fee(案)の内訳

(資料)the National Center of Excellence for Environmental and Hazardous Waste

Management (EHWM), Chulalongkorn University(2010), “The Study Project on Rules, Procedures, and Fees of Thailand’s WEEE Management”より作成

図表 6の通りProduct feeは、収集・運搬・リサイクルコストに買取価格と

管理コストを加えて金額が設定されおり、その内、収集・運搬・リサイクルコ

ストと買取価格が回収拠点に補助金として配布される予定である。補助金は

「あくまでも回収拠点の赤字補填する」ことを念頭に制度設計されており、回

収拠点が収益をどのように計上するかについては不透明であるなど、モデル事

業等で実証することは不可欠と考えられる。

しかしながら、2011年7月の選挙によって政権が変わったため、家電リサイ

クル法に関連する審議が現在停止している。環境管理経済的手法法が現政権に

よって審議が継続されるかについて、財務省とPCDの間で協議中となっており、

2015年のタイ版家電リサイクル法施行は難しい状況になっている。

9

(3)その他有害廃棄物の適正処理及びリサイクルに関連する政策動向

キングモンクット工科大学では、DPIMとDIW等からの受託研究として、一般廃

棄物5種類(PC、携帯電話、エアコン、プラスチック、タイヤ)、産業廃棄物5

種類(めっき廃棄物、プリント基板、石油精製残渣、自動車触媒、再生油)を対

象にマテリアルフローの解析を行っている。この研究では、「都市鉱山(Urban

Mine)」の実現に向けた調査の一環として、金属及びエネルギーの回収を目指

している。

同研究の中間報告によれば、タイ国内で発生する一般廃棄物1,500万トン/年

のうち、345万トン/年しかリサイクルに回っておらず、その多くは埋立て処分

されている。プラスチックとタイヤのリサイクルについては、エネルギー回収を

中心に今後の政策が検討されている。

また、家庭から排出されるPCのうち約半分(53%)は家庭内で退蔵されており、

直接リユースされるものが26%、リサイクルされるもの(部品リユースを含む)

が9%と推計されており、家庭内退蔵分をリサイクルに回すことが重要と考えら

れている。携帯電話は、家庭内退蔵が69%、リユースが10%、リサイクルが10%で

あり、エアコンの場合、家庭内退蔵が4割強と推計された。

産業廃棄物については、DIWへのE-マニフェストでの報告では、めっき事業者

からの工業廃棄物の排出は8万トン/年ほどあり、非有害廃棄物としてのスラッ

ジが1%、Hard Zinc(亜鉛ドロス)が4%、有害廃棄物としてのスラッジ(排水処

理スラッジなど)が87%ほどあった。

以上のようにタイにおいても、「都市鉱山」の概念が浸透しつつあり、有害廃

棄物の適正処理のみならず、資源の有効利用という観点からリサイクルに注目さ

れつつあると考えられる。

他方で、埋立処理からリサイクルを促進させる「産業廃棄物埋立税」について、

DIWがチュラロンコン大学に研究を委託していた。同研究結果によれば、廃棄物

の性質によって4つに分けて、1)リサイクルできる廃棄物は0バーツ/トン、

2)リサイクル可能か不透明な廃棄物は50バーツ/トン(125円/トン)、3)リサ

イクル困難で非有害廃棄物は100バーツ/トン(249円/トン)、4)有害廃棄物

は150-160バーツ/トン(374~398円/トン)と異なる税率を設定することが検討

されていた。この税率設定は、政策導入当初に受容されやすいように低い価格設

定することを念頭に制度設計されている。

ただし、産業廃棄物の排出者、埋立事業者などの反対にあったことや、家電リ

サイクル法と同様にタイ財務省が提案している環境管理経済的手法法(案)の成

立が前提となっているため、施行の目処は今のところ立っていない。

10

2. タイの関連業界団体の動向

(1)鉄鋼関連業界の動向

タイ政府においてはDIW、DPIM、BOI等の政府機関と業界団体The Iron and

Steel Institute of Thailand (ISIT)を含めた協議が行われている。電炉ダス

トリサイクルに関しては、本調査主体である三井金属鉱業以外にも、ウェルツ炉

で電炉ダストをリサイクルするスイス系のGlobal Steel Dust社、スペイン系

Befesa社、回転床炉法(Rotary Hearth Furnace)で電炉ダストをリサイクルす

る英系ZincOx社の合計4社がタイへの進出意向を示している。

4社のリサイクル技術においては、電炉ダストのリサイクル量を10万トン/年

以上が基本設計となっていることから、後述する通りタイの電炉ダストだけでは

採算性を確保することが厳しいと予想されており、タイ政府では1社だけの進出

を独占的に許可とするか、などの対応を含めて検討が進められている。そこで、

ISITがDIWより依頼を受けて、電炉ダストリサイクルに関する技術的な評価を実

施し、そのレポートは2012年1月にDIWやBOI等の関係機関に提出された。

ISITのレポート作成においては、当社も本事業期間中に日本の三池製錬所へ

の招聘等を実施するなど協力し、ISITレポートにMF炉についても掲載された。

ISITレポートの目次は、以下の通りである。

図表 7 ISITレポートの目次

ISIT「電炉ダストリサイクル技術の研究」(原文タイ語) 1. 電炉ダスト

2. 電炉ダストからの亜鉛の抽出 3. 電炉ダストからの亜鉛のリサイクル技術

3.1 ウェルツ炉

3.2 プラズマ法

3.3 電気溶融還元法

3.4 MF炉

3.5 回転床炉法 4. 結論と緒言

(資料)ISITレポートより作成

同レポートにおいては、タイでの電炉ダストリサイクル事業を検討している各

社の技術(MF炉、ウェルツ炉、回転床炉法)以外にプラズマ法(Plasma Technology)

と電気溶融還元法(Electric Smelting Reduction Technology)についても、

温度や電炉ダスト処理に必要な原料投入量やエネルギー量、亜鉛回収率などを横

断的に比較している(図表 8)。

11

図表 8 電炉ダストのリサイクル技術の主要項目の比較

ウェルツ炉 プラズマ法 電気溶融還元法 MF炉 回転床炉法

開発済みScanArc PlasmaTechnologies AB

JP Steel PlantechCo.Ltd.Katech CreativeResource Corp.

Mitsui Mining &Smelting Co.Ltd.Miiki SmeltingCo.Ltd.

ZincOx ResourcePlc.

40 2 1 1 1(建設中)1935 2005 2009 1965 (2012)

1)Global Steel DustCo.Ltd.2) Befesa

Avfallsenerge AS -Mitsui Mining&Smelting Co.Ltd.

ZincOx ResourcePlc.

80,000-160,000(110,000)

50,000-150,000(50,000)

50,000-100,000(50,000)

110,000200,000-300,000

(200,000)1,100-1,200(1,200) 1,800 1,500 1,400 1,300

珪素(㎏/t) - 70-80 70-80 21 -石灰(㎏/t) 100-250% - - - -電力(kWh/t) 150-300(150) 900-1100(1100) 1600 280 250コークス(㎏/t) 180-350(141) 80-90 150-170 - -石炭(㎏/t) - - - 275 140亜鉛回収率(%) 85-96(90) >90(96) >90 85-95 98亜鉛の割合 55-68 60-72(70) 55 68 58利用先 - - 鉄 鋼・銀(電子材料) 鉄塩素除去 困難 容易 容易溶剤 NaHCO3 Na2CO3 NaOH

環境面 ダイオキシン 多い 少ない 少ない 少ない 少ない

工程に含まれず

エネルギー(電炉ダスト1t処理あたり)

製品

塩素除去方法 工程に含まれず

事業者名

処理能力(t/year)

温度(℃)原料(電炉ダスト1t処理あたり)

技術名称

開発事業者名

プラント数操業開始年

(資料)ISITレポートより作成

12

ISITレポートでは各社の処理フローも掲載されており、原文はタイ語である

ため、タイで事業展開の意向がある各社のホームページから処理フローについて

に示す(MF炉の処理フローは図表 1)。

図表 9 ウェルツ炉の処理フロー

(注)ウェルツ炉を持つ事業者の中でタイに進出意向を示している他社としては、Befesa

社がある

(資料)Global Steel Dust社のホームページより

図表 10 回転床炉法の処理フロー

(資料)ZincOx社のホームページより

13

技術の主要項目を比較した上で、同レポートでは各リサイクル技術を紹介する

に留まらず、各技術のメリット・デメリットについて、特にダイオキシンの発生

など環境面に力点が置かれて定性評価を実施している。ISITの結論としては、

図表 11の通り、MF炉について「電炉ダスト以外にも電子廃棄物や電子基板のエ

ッチング液、溶融飛灰など亜鉛と銅を含んだ様々な廃棄物を処理できる」ことや

「ダイオキシンの発生が少ない」などメリットだけでなく、他のリサイクル技術

と比較してデメリットが少ないなど概ね高く評価されているといえる。

図表 11 ISITによる電炉ダストのリサイクル技術の定性評価

メリット デメリット

ウェルツ炉

1.技術は古く確立している2.熱量が低いためエネルギーコストが低い

1.使用する材料は常に一定量の供給が必要。2.塩化亜鉛が発生し、高い処理コストが必要3.ダイオキシンの発生4.スラグの利用に制限

プラズマ法

1.亜鉛の回収率が90~96%2.ダイオキシンの発生が少ない3.塩素の除去が容易で廃棄コストが安価4.生成物が安定している5.原材料確保が容易

1.900-1100kWhの高い電力使用量2.plasma torchの寿命が短いため高コストであり、生産の制約となる3.確立した技術ではないため改良が必要な場合がある

電気溶融還元

1.ダイオキシンの発生が少ない2.リサイクルされた亜鉛と鉄を鉄鋼原料として利用可能

1.1600kWhの高い電力使用量2.確立した技術ではないため改良が必要な場合がある

MF炉

1.電炉ダスト以外にも電子廃棄物やPCBのエッチング液、溶融飛灰など亜鉛と銅を含んだ様々な廃棄物を処理できる2.亜鉛と銅を回収できる3.価値のある資源もリサイクルできる4.銅と亜鉛を同じ工程で回収が可能5.ダイオキシンの発生が少ない

1.ボイラーを利用しているため塩素除去が必要

回転床炉法

1.リサイクルされた亜鉛と鉄を鉄鋼原料として利用可能2.エネルギーを回収し工程内利用が可能3.ダイオキシンの発生が少ない

1.電炉ダストが20~30万トン必要であり、輸入する必要がある2.投資コストが高い3.電炉ダストリサイクルの実績がない

(資料)ISITレポートより作成

14

(2)家電リサイクル法に関連する業界動向

2011年7月の政権交代の影響により、同年に実施予定であった使用済家電回収

のモデル事業は資金不足から実施されていない。一方で、自治体から集めた使用

済家電はリサイクル会社の協力の下で、試験的に分別・リサイクルされている。

同試験に参加しているリサイクル会社はDIWによって許可されており、携帯電話

やパソコンのリサイクルを中心とするTES AMM社、UMICORE社、家電製品をリサ

イクルするWaste Management Siam社、プリンター・FAXをリサイクルするFuji

Xerox Eco-Manufacturing社となっている。

こ の 他 に も 、 大 手 百 貨 店 や 通 信 事 業 者 が CSR ( Corporate Social

Responsibility)の一環として、乾電池や携帯電話の無料回収を実施している。

また、PCDにおいては乾電池の分別回収に対して、自治体に予算を配分してい

る。2012年9月までに自治体による乾電池の回収状況を把握するとのことである。

バンコク都庁(BMA)へのヒアリング調査においては、現在バンコク都では有害

廃棄物を2011年に平均1.02トン/日を回収し、Professional Waste Technology

社に7,000バーツ/トン(17430円/トン)で埋立処理を委託している。その内訳は

図表 12の通りであり、900万人都市といわれるバンコクの人口と比較すると非

常に少なく、一般廃棄物の分別回収は大きな問題となっており、家電リサイクル

法制定を含めた制度改善が喫緊の課題となっている。

図表 12 バンコク都における有害廃棄物回収実績

品目 年間回収量

(トン/年、2011年実績)

乾電池・2次電池 20.93

蛍光灯 84.06

殺虫剤・スプレー缶 268.48

(資料)現地調査より作成

15

3. マレーシア政府の動向

(1)電炉ダストに関連する政策動向

マレーシアにおいて発生する電炉ダストは指定廃棄物(Scheduled Wastes:

以下SW、有害廃棄物と同義)に該当するため、指定廃棄物に関する環境規則

(Environmental Quality (Scheduled Wastes) Regulations 2005)に則り

Department of Environment(DOE)によって所管されている。

電炉ダストはSW104(重金属を含んだダスト、スラグ、ドロス、灰)というコ

ードで管理されており、DOEのAnnual reportではSW104、107、406の合計値が15.4

万トン/年と報告されているが、この中に占める電炉ダスト量についてはDOEで

は把握していない。

電炉ダストの処理については、唯一の指定廃棄物埋立事業者であるKualiti

Alam社で埋立処理されているか、一部は亜鉛化合物などその他の品目として輸

出されている。また、指定廃棄物に関する環境規則では「排出者による指定廃棄

物の保管は180日以内または20トン以下に限る1」とされているが、電炉事業者に

対しては、電炉ダストのリサイクル方法が確立するまで例外的に保管期間の延長

や保管量の拡大を認めている。

マレーシアでは指定廃棄物を輸出禁止としている。さらに、バーゼル条約BAN

改正を批准しているため、OECD諸国からの有害廃棄物の受入を許可していない

など、越境移動に関してはタイ政府よりも強固な政策を採用しているといえる。

また、マレーシアにおいては工業開発庁(Malaysian Industrial Development

Authority :MIDA2)において、環境産業に対して5年間の法人税の70%免除な

どの優遇措置がある。一方で、ダイオキシン規制は0.1ng-TEQ/㎥と日本等のア

ジア各国と比較しても厳しい基準を導入していることや、工場の立地に対して過

度の集積を避けるために干渉地帯を設けるなどの立地制限があること、リサイク

ル産業の進出においては環境影響評価が必要などマレーシアにおけるリサイク

ル事業の展開は、タイと比較すると留意すべき点が多いと考えられる。

1 小島道一「マレーシアにおける産業廃棄物・リサイクル政策」、日本貿易振興機構アジア経済研究

所『アジア各国における産業廃棄物・リサイクル政策情報提供事業報告書』、pp.177-193、2007年 2 http://www.midajapan.or.jp/index.html

16

(2)家電リサイクル法に関連する政策動向

マレーシアにおいては、2008年より「電気・電子機器のリサイクル及び廃棄

に関する規則」(通称E-Waste Regulation)の検討が進められている。

当初案では消費者の義務として、使用済み電気・電子機器を製造業者、販売業

者、あるいは輸入者(以下、製造業者等)に返納する義務が課せられていた。ま

た、製造業者等には使用済み機器の引き取り義務が規定され、使用済み機器の収

集、リサイクル、再使用に関する計画を製造業者等が自ら策定し、DOE局長に提

出することを義務付けているなど、EPR(拡大製造者責任)政策として製造業者

にとってみれば、アジア各国で検討されている家電リサイクル法と比較しても厳

しい内容であった。

このため、日本・マレーシア経済連携協定(JMEPA)に基づく「ビジネス環境

の整備に関する小委員会」においても議題して取り上げらた。その後、財団法人

海外技術者研修協会(AOTS)を通じた政策担当者研修など日本政府として制度

構築に協力しており、2011年7月には「廃電気・電子機器リサイクル:実施に係

る文書」に国際協力機構(JICA)とマレーシア環境省の間で署名され、2013年

度まで、家庭から廃棄される電気ゴミの収集、分別、輸送の体制を全国に展開す

るためのモデル事業がペナンで実施されているところである3。

3 http://weeepenang.blogspot.com/

17

4. マレーシアの企業・関連業界の動向

マレーシア鉄鋼連盟(Malaysian Iron & Steel Industry Federation、以下

MISIF)によれば、電炉ダストはDOEによって指定廃棄物として認定されており、

指定廃棄物の唯一の埋立事業者であるKualiti Alam 社に委託すると、収益が相

殺されるほどの高コストとなるため、電炉ダストは各社において保管しているか、

一部は中国に輸出されており、マレーシアでは電炉ダストはリサイクルされてい

ない。そこで、MISIFとしてDOEに対し、電炉ダストの処理に関して要望する予

定であったが、各社のノウハウや生産量などの情報流出の懸念があり頓挫してい

る。

一方で、マレーシア鉄鋼メーカーの中で 大手のライヨングループに加盟する

AMSTEEL MILLS社においては、中国のリサイクル業者から工場引渡価格(輸送費

はリサイクル業者負担)で200元/トン(31ドル/トン,2419円/トン)の買取の打

診があった。しかし、バーゼル条約違反の懸念があるため、ライヨングループと

して例外的にDOEより許可を得て工場内に保管しているのが現状である。

他方で、電炉ダストの回収事業の許可を唯一保有しているIOP SPECIALISTS社

では、大手7社の電炉事業者のうち3社から合計2,500~3,000トン/月の電炉ダス

トをIOP SPECIALISTS社が輸送費を自社で負担した上で無価物として回収した後、

亜鉛含有量を調整した上で、バーゼル条約非対象の製品(Zinc Concentration)

として、90ドル/トン(7023円/トン)(CIF価格、亜鉛含有量24%以上-27%未満

の価格)で中国へ輸出を行っている。この際の上海への輸送費は20FTコンテナ

(26トン積載可能)で30ドル/コンテナ(2341円/コンテナ)となっている。

以上のように、タイと同様にマレーシアにおいても中国人バイヤーによる電炉

ダストの買い付けが確認されており、政府としてはバーゼル条約対象品目として

輸出を禁止しているが、その一部は製品として輸出されている。また、リサイク

ル手段が確立していないため、電炉ダストのリサイクルが課題となっている。

18

II-2. リサイクル原料の発生及び処理状況

1. 電炉ダスト

(1)発生メカニズム

電炉鋼の製造プロセスを図表 13に示す。鉄スクラップを電気炉で溶解し、炉

外精錬により溶鋼を所定の品質成分に調整、その後連続鋳造を行い、鋳片(半製

品)が作られる。鋳片(半製品)は加熱・圧延、その他の加工を経て、棒鋼、線

材、鋼板等の製品となる。溶鋼を取り扱う、溶解、炉外精錬、連続鋳造工程にお

いて亜鉛を含有するダストが発生する。

図表 13 電炉鋼製造プロセス

鉄スクラップ炉外精錬

(取鍋精錬)溶解

(電気炉)連続鋳造

鋳片(半製品)

加熱・圧延 その他加工 製品

ダスト

(資料)各種資料より作成

19

(2)賦存量の推計

① タイ

タイにおける鉄鋼生産量と電炉ダスト発生量の推移を図表 14に示す。電炉ダ

ストの発生量は鉄鋼生産量に依存する。鉄鋼生産量は2007、2008年には500万ト

ン/年を超えていたが、2009年はリーマンショックの影響により約360万トンに

まで低下している。電炉ダストの発生量についても同様に推移している。2006

~2010までの5年間の平均鉄鋼生産量は約480万トン/年、電炉ダスト発生量は

約7万~10万トン/年である。

図表 14 タイにおける鉄鋼生産量と電炉ダスト発生量

年 鉄鋼生産量[トン/年] 電炉ダスト発生量[トン/年]

2006 4,914,200 73,713 ~ 98,284

2007 5,565,000 83,457 ~ 111,300

2008 5,211,212 78,168 ~ 104,224

2009 3,645,586 54,684 ~ 72,912

2010 4,783,125 71,747 ~ 95,663

平均 4,823,825 72,357 ~ 96,477

(資料)ISITレポートより作成

図表 15にタイにおける電炉ダストの組成を示す。電炉ダストの組成は電気炉

に投入するスクラップの組成によってことなる。亜鉛含有量の低いものでは

13%、高いものでは41%と幅がある。タイにおける14社の亜鉛含有量の単純平

均は27%である。

図表 15 タイにおける電炉ダスト組成(主要成分のみ、単位:%)

工場 No. Cl Fe Zn SiO2 MnO

1 4.5 34 13 2.8 3.6

2 5.1 27 32 2.4 1.4

3 4 32 26 2.9 2.2

4 3.6 32 23 3.2 2.3

5 4.8 18 39 4.1 1.8

6 5.3 23 41 2.6 1.6

7 4.3 29 21 2.7 2.8

8 4.6 26 32 3.6 1.6

9 3.8 29 28 1.8 2.8

10 6.1 28 25 3.7 3

11 3.7 26 24 3.3 5.1

12 4.1 35 21 2.3 3.8

13 5.2 25 25 2.6 5.4

14 4.3 30 32 2.6 2

平均 4.5 28 27 2.9 2.8

(資料)ISITレポートより作成

20

図表 14、図表 15のデータを用い、タイにおける電炉ダスト由来の亜鉛賦存

量推計した結果を図表 16に示す。電炉ダスト中の亜鉛含有率は、図表 15の平

均値(27%)を採用している。2010年から過去5年間の電炉ダスト発生量平均値

より、電炉ダスト由来の亜鉛は19,000~26,000トン/年が発生していると推計さ

れる。

図表 16 タイにおける電炉ダスト由来の亜鉛賦存量

年 電炉ダスト発生量[トン/年] 亜鉛量[トン/年]

2006 73,713 ~ 98,284 19,903 ~ 26,537

2007 83,457 ~ 111,300 22,533 ~ 30,051

2008 78,168 ~ 104,224 21,105 ~ 28,140

2009 54,684 ~ 72,912 14,765 ~ 19,686

2010 71,747 ~ 95,663 19,372 ~ 25,829

平均 72,357 ~ 96,477 19,536 ~ 26,049

(資料)ISITレポートより作成

② マレーシア

図表 17にマレーシアにおける大手電炉事業者7社の電炉ダストの発生量と亜

鉛含有量を示す。マレーシアにおける電炉ダストの発生量は76,800~106,800ト

ン/年、亜鉛の含有率は各事業者によって違いがある。原料として還元鉄の使用

量の割合が高いPerawajaが以外は、おおよそ25~40%である。これらの数値から

マレーシアにおける電炉ダスト由来の亜鉛腑存量は約27,000トン/年と推計さ

れる。

図表 17 マレーシアにおける電炉ダスト発生量と亜鉛含有量

事業者 電炉ダスト発生量

[トン/年] 亜鉛

含有率 亜鉛量

[トン/年]

Ann Joo Steel (旧Malayawata)

12,000~18,000 25~30% 4,125

Southern Steel 24,000 25~30% 6,600

Malaysia Steel Works 4,800 27~40% 1,608

AmSteel 6,000~12,000 2,790

MegaSteel 24,000~36,000 9,300

Antra Steel 6,000~12,000

27~35%

2,790

Perawaja n.a. 8% n.a.

合計 76,800~106,800 27,213

(資料)IOPヒアリングより作成

21

(3)処理・回収状況

① タイ

図表 18にタイにおける電炉ダストの処理・回収ルートを示す。

タイでは、電炉ダストは有害廃棄物として取り扱わなければならず、輸送手段

も指定されている。従来はセメント原料としてリサイクルされ、セメント事業者

が受け入れできない分については、100ドル/トン(7804円/トン)程度の処理費を

支払って埋め立て処理がなされていた。

2010年半ばから電炉ダストが中国へ売却されるようになってきている(15~

20ドル/トン,1170-1561円/トン)。しかし、電炉ダストはバーゼル対象物であ

るため、現在は、タイ政府がバーゼル条約違反となることから輸出禁止の措置を

取り、電炉各社が備蓄している状況にある。

しかしながら、電炉事業者での備蓄にも限界があるため、タイ政府が輸出禁止

していても、一部の電炉事業者は水面下で中国へ輸出又は埋め立て処理をしてい

るのが実態である。

タイ政府及び鉄鋼業界としては、バーゼル対象物である電炉ダストが中国へ輸

出されていることを問題視しており、国内で電炉ダストのリサイクル工場の建設

を検討しているところである。

図表 18 タイにおける電炉ダストの処理・回収ルート

電炉ダスト電炉事業者 セメント事業者

埋め立て事業者

セメント原料としてリサイ

クル

埋め立て処理

スクラップ回収事業者

中国へ輸出

敷地内に補完

【処理費】0$/t~逆有償

【処理費】100 $/t

【売値】15~20 $/t

現在はタイ政府が輸出を禁止

×

輸出禁止を受け、電炉事業者が備蓄している状況にある

(資料)現地ヒアリングより作成

22

② マレーシア

図表 19にマレーシアにおける電炉ダストの処理・回収ルートを示す。

タイ同様にマレーシアにおいても電炉ダストは指定廃棄物(SW104)になって

おり、バーゼル対象物である。マレーシアでは電炉ダストはほとんどリサイクル

されておらず、Kualiti Alam 社に埋め立て処理委託をすることになる。しかし

処理費が高いため、鉄鋼メーカーに対しては、保管を認めるなど特別な許可を

DOEが出している。電炉ダストはバーセル対象物であるため輸出が禁止されたが、

一方でリサイクル方法がないため、政府が検討している。

マレーシアにおいてIOP SPECIALIST 社が唯一電炉ダストの回収事業の許可を

有している。亜鉛含有量が20~35%であればそのまま中国に輸出し、それ以下

であれば亜鉛の含有量を高めてから、90ドル/トン(7024円/トン)(CIF価格)で

製品(Zinc Concentration)として中国へ輸出している。亜鉛含有量に応じて

価格が決まっており、20-24%未満、24以上-27%未満(90ドル,7024円)、27%

以上の3つのグレードがあり、製品扱いのためバーゼル非対象物として輸出して

いる。

輸送費は20FTコンテナ(26トン積載可能)で30ドル/コンテナ(2341円/コン

テナ)で上海に輸出している。バンコクに輸出するのであれば、20FTコンテナだ

と150ドル(11700円)の費用がかかり、香港は20ドル(1561円)が現在の相場で

ある。

図表 19 マレーシアにおける電炉ダストの処理・回収ルート

電炉ダスト電炉事業者埋め立て事業者

(Kualiti Alam Sdn. Bhd.)

埋め立て処理

スクラップ回収事業者(IOP SPECIALIST

SDN. BHD.)

中国へ輸出

敷地内に補完

CIF価格:90 $/t

製品扱い(亜鉛化合物等)での輸出

一部電炉事業者が保管

(資料)IOPヒアリングより作成

23

2. 含銅亜鉛ダスト

含銅亜鉛ダストは、亜鉛地金と銅地金を溶解・混合し、合金である黄銅を製造

する工程、黄銅(真鍮)製品の製造工程(溶解、鋳造、切断、圧延)において発

生する(図表 20)。今回の調査では、タイ国内には前者に該当する企業は見当

たらなかった。黄銅(真鍮)を製造する 大手のNSL Brass (Thailand) Co.,Ltd.

へのヒアリングでは、インプット量の約5~6%のダスト(切り粉)が発生するが、

ダストは電気炉に戻され、工程内リサイクルが行われている。そのため、現状で

は、含銅亜鉛ダストを妥当なコストで回収することは困難であると思われる。

図表 20 黄銅製品製造プロセス

切断

圧延

焼鈍し・洗浄

切断

黄銅

製品

工程内リサイクル

ダスト(切り粉)

鋳造

溶解(電気炉)

(資料)各種資料より作成

24

3. 溶融亜鉛めっきドロス・電解めっきスラッジ

(1)発生メカニズム

一般的な溶融亜鉛めっきプロセスを図表 21に示す。めっき母材をアルカリ性

水溶液に浸漬し油類を除去(脱脂)、脱油液を水洗した後、酸性の水溶液に浸漬

させて表面の錆、スケールを除去(酸洗)し、酸洗溶液を水洗後にフラックス処

理を行う。フラックス処理では、加温したフラックス液(塩化亜鉛アンモニウム

溶液)にめっき母材を浸漬させ、表面にフラックス被膜を形成させる。これを乾

燥させた後、亜鉛を溶融した亜鉛浴の中に浸漬し亜鉛被膜を形成させる。

溶融亜鉛めっきプロセスにおいて亜鉛を含有する廃棄物が発生するのは、主に

フラックス処理工程、めっき工程である。フラックス処理からは亜鉛含有ダスト

が、めっき工程からは亜鉛含有ドロス(ハードジンク)が発生している。めっき

前処理の酸洗工程、めっき歩留まり品・治具類の酸洗工程後の廃酸にも亜鉛は含

まれるが、含有される亜鉛品位は高くない。

図表 21 溶融亜鉛めっきプロセス

脱脂

水洗

酸洗

水洗

フラックス処理

乾燥

メッキ

冷却

母材

めっき製品

H2SO4 or HCl

ZnCl2・nNH4Cl(塩化亜鉛アンモニウム)

Zn

ダスト

廃液(更新時)

ドロス

廃液(更新時)

・めっき不良品・治具類

排水処理

廃液

廃液

スラッジ

酸洗い

※注:めっき母材によってはめっき前処理の酸洗いがない場合もある。

(資料)各種資料より作成

25

図表 22に電解亜鉛めっきプロセスを示す。めっき母材を脱脂、酸洗した後、

亜鉛を溶解させためっき浴に浸漬させ、めっき母材を陰極にしてメッキ液に直流

の電気を流して亜鉛皮膜を析出させる。めっき液を水洗し、クロメート処理を行

い、めっき製品となる。

電解亜鉛めっきプロセスでは、めっき前処理の酸洗工程、めっき治具類の酸洗

工程、めっき処理後の水洗工程等からの廃液処理において、亜鉛を含有するスラ

ッジが発生する。

図表 22 電解亜鉛めっきプロセス

脱脂

水洗

酸洗

水洗

電解脱脂

水洗

メッキ

水洗

母材

めっき製品

H2SO4 or HCL

Znめっき液

廃液(更新時)

クロメート処理

水洗

排水処理

・治具類・バレル

酸洗い

スラッジ

(資料)各種資料より作成

26

(2)賦存量の推計

溶融亜鉛めっきプロセスからは亜鉛を含むダスト及びドロスが、電解亜鉛めっ

きプロセスからは亜鉛を含むスラッジが発生している。現地溶融亜鉛めっき事業

者に対するヒアリングから得られた、溶融亜鉛めっきプロセスにおける亜鉛地金

消費量、亜鉛ダスト・ドロス発生量を図表 23に、亜鉛ダスト・ドロスの組成表

を図表 24に示す。この事業者では、年間の亜鉛地金消費量2,280トン/年に対し

亜鉛ダストが288トン/年、亜鉛ドロスが180トン/年発生している。亜鉛ダスト

中の亜鉛含有率は77.1%、亜鉛ドロス中の亜鉛品位は94.1%であり、亜鉛品位は

高い。

図表 23 溶融亜鉛めっきプロセスにおける亜鉛地金使用量及び亜鉛ダスト・ドロス発生量

プロダクト量 [トン/年] 30,000

亜鉛地金消費量 [トン/年] 2,280

亜鉛ダスト発生量 [トン/年] 288

[トン/トンプロダクト] 0.010 亜鉛ダスト発生量原

単位 [トン/トン亜鉛地金] 0.126

亜鉛ドロス発生量 [トン/年] 180

[トン/年・トンプロダクト] 0.006 亜鉛ドロス発生量原

単位 [トン/年・トン亜鉛地金] 0.079

(資料)タイ国溶融亜鉛めっき事業者A社ヒアリングより

図表 24 溶融亜鉛めっきプロセスにおける亜鉛ダスト及び亜鉛ドロス組成(%)

元素 亜鉛ダスト 亜鉛ドロス

Hg <0.0001 <0.0001

Zn 77.1 94.1

Pb 0.65 0.47

Fe 1.28 3.12

Cd <0.01 <0.01

Cr <0.01 <0.01

As <0.01 <0.01

Fe <0.01 <0.01

Cl 3.38 0.01

(資料)タイ国溶融亜鉛めっき事業者A社ヒアリングより

タイ国現地ヒアリングから得られた、電解亜鉛めっきプロセスにおける亜鉛地

金消費量、亜鉛スラッジ発生量を図表 25に示す。この事業者では亜鉛地金消費

量58.4トン/年に対し、亜鉛メッキスラッジが90トン/年発生している。なお、

亜鉛メッキスラッジ中の亜鉛含有率は18.54%である。

27

図表 25 電解亜鉛めっきプロセスにおける亜鉛地金使用量及び亜鉛メッキスラッジ発生量

プロダクト量 [トン/年] 3500

亜鉛地金消費量 [トン/年] 58.4

亜鉛めっきスラッジ発生量 [トン/年] 90

[トン/トンプロダクト] 0.026 亜鉛めっきスラッジ発生量

原単位 [トン/トン亜鉛地金] 1.541

(資料)タイ国電解亜鉛めっき事業者B社ヒアリングより

以上、図表 23~図表 25のデータを用いて推計したタイに国全体における溶

融亜鉛めっきダスト・ドロス及び電解亜鉛めっきスラッジの発生量を図表 26に

示す。タイにおける亜鉛めっき製品生産量から、溶融亜鉛めっき製品、電解亜鉛

めっき製品を按分し、これらの値に亜鉛ダスト・ドロス発生量原単位[トン/ト

ンプロダクト](図表 23)、亜鉛めっきスラッジ発生量原単位[トン/トンプロ

ダクト](図表 25)を掛け合わせることで算出した。

タイ国における溶融亜鉛めっきプロセスからのダストの発生量は、2004から

2008年の平均値で約2,100トン/年、ダスト由来の亜鉛賦存量は1,600トン/年と

推計される。また溶融亜鉛めっきドロスの発生量は2004から2008年の平均値で

約1,300トン/年、ダスト由来の亜鉛賦存量は1,300トン/年と推計される。

電解亜鉛めっきプロセスからのスラッジ発生量は、2004から2008年の平均値

で約3,000トン/年、スラッジ由来の亜鉛賦存量は560トン/年と推計される。

図表 26 タイにおける溶融亜鉛めっきダスト・ドロス、電解亜鉛めっきスラッジの発生量と亜鉛含有量(単位:トン/年)

2004 2005 2006 2007 2008

亜鉛めっき製品生産量 279,000 306,000 341,000 333,000 443,000

溶融亜鉛めっき製品 147,754 194,493 234,099 199,078 341,768

ダスト発生量 1,418 1,867 2,247 1,911 3,281

亜鉛量 1,094 1,440 1,733 1,473 2,530

ドロス発生量 887 1,167 1,405 1,194 2,051

亜鉛量 834 1,098 1,322 1,124 1,930

電解亜鉛めっき製品 131,246 111,507 106,901 133,922 101,232

スラッジ発生量 3,375 2,867 2,749 3,444 2,603

亜鉛量 626 532 510 638 483

28

(3)処理・回収状況

図表 27に溶融亜鉛めっきダスト・ドロスの処理・回収ルートを示す。めっき

処理工程で発生するダストは、フラックス液(塩化亜鉛アンモニウム)を購入し

ている業者へ売却されている。亜鉛ドロスは危険廃棄物として指定されている。

そのため外部に運ぶためには許可必要となる。亜鉛ドロスについても有価物とし

て回収事業に売却されている。

図表 27 溶融亜鉛めっきダスト・ドロスの処理・回収ルート

亜鉛めっき事業者

ダスト

ドロス

フラックス取り扱い業者

ZnCl2・nNH4Cl(フラックス)

買い取り

スクラップ事業者

買い取り

(資料)溶融亜鉛めっきメーカーヒアリングより作成

図表 28に電解亜鉛めっきスラッジの処理・回収ルートを示す。亜鉛めっきス

ラッジは処理量を支払って埋め立て処理しているる。スラッジの処理費用は約

1,000バーツ/トン(2490円/トン)であり、輸送費は1回あたり4,000~5,000バ

ーツ(9960~12450円)で月に1回の処分を委託しており、1回あたり約14トンを輸

送している。収集運搬業者としては、Niks Recying And Export、Kittikornwaste

sales等がある。また、スラッジ中の金属種類、金属含有率によっては売却され

ている例もある。ニッケル・銅・クロムメッキを行っている工場から排出される

めっきスラッジ(金属含有率:30%未満)は1バーツ/kg(2.5円/kg)で売却されて

いる。

図表 28 電解亜鉛めっきスラッジの処理・回収ルート

スラッジ亜鉛めっき

事業者回収事業者

埋め立て処理事業者

埋め立て処理

【輸送費】約290~360 バーツ/t

【処理費】約1,000 バーツ/t

(資料)電解亜鉛めっきメーカーヒアリングより作成

29

4. その他副原料

(1)バインダー成分

MF炉で使用されるバインダー成分は紙パルプ製造プロセスの副産物として生

成される。原料のチップにアルカリを加え常解窯で加熱することで、チップに含

まれるバインダー成分が取り除かれる。バインダー成分やその他アルカリ成分を

含む黒色の液は国液と呼ばれ、有機物とアルカリ成分に分離された後、有機物は

燃料として使用される。

図表 29 紙パルプ製造プロセス

チップ

黒液

パルプ

黒液分離

有機物

アルカリ成分(Na、Ca、S、etc.)

NaOH、H2O

燃焼 蒸気

パルププラント

(資料)各種資料より作成

タイ国Siam Cement Paperでは、パルプ製造工程において、バインダー成分が

乾燥重量で1万トン/年発生している。バインダー成分が発生するグループ会社

の工場は、Phoenix Pulp & Paper Public Company Limited(コンケ-ン県)、

Siam Cellulose Co., Ltd.(カンチャナブリー県)、The Siam Pulp and Paper

Public Company Limited(ラッブリー県)に所在している。現在、バインダー

成分はボイラー燃料として利用されており、外部への販売は行われていない。ま

た、黒液は有機物とアルカリ成分に分離され、Na、Ca、S等は原料としてパルプ

プラントに戻している。そのため、バインダー成分の買い取り価格は、燃料価格

に原材料価格がいくらか上乗せされた価格となる。

30

(2)E-waste(廃家電)

図表 30にタイにおける廃家電発生量推計(Pollution Control Department、

2009年)を示す。排出量が多い機器として携帯電話、テレビ、冷蔵庫、PCがあ

げられる。携帯電話は2012年まで発生量が大きく増加し、以後減少すると推計

されている。テレビは2018年まで右肩上がりに発生量が増加、冷蔵庫は微増、

PCについては2010年をピークに以降は排出量が減少すると推計されている。

図表 30 タイにおけるWEEE発生量推計

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2018

[年]

[千台

]

デジタルカメラ

携帯電話プリンター

PC

冷蔵庫

エアコン

テレビ

(資料)Pollution Control Department資料(2009年)より作成

タイ国での家電リサイクル法は、政権交代があったために何も決まっていない

状況になっている。過去のドラフトを踏襲するのか、それとも一から作り直すの

かも決まっていない。現状は公害管理局(Pollution Control Department、以

下PCD)が財務省と話し合いをしており、財務省からの返事を待っているところ

である。過去のドラフトの発行が不可能な場合は、家電リサイクルのための基金

を作ることを考えている。基金設立が難しい場合はEPR(Extended Producer

Responsibility、拡大生産者責任)の枠組みをつくることになると見られる。

一部、乾電池については自治体が予算をつけて回収を行っている。また、ボラ

ンティアとしてデパート等でも回収を行っている。しかし、回収後の処理方法に

ついては決まっておらず、現状では埋め立てられている状況である。

31

5. リサイクル原料の発生及び処理状況まとめ

タイ及びマレーシアにおける電炉ダストを中心としたリサイクル原料の発生

状況及び亜鉛、銅の回収可能性を図表 31に示す。

電炉ダストについては、タイで年間約8.4万トン、マレーシアで年間約9.2万

トンの発生が見込まれ、亜鉛の回収可能性ということでは、タイで年間2.3万ト

ン(亜鉛含有量ベース)、マレーシアで年間2.7万トン(同)ほどのポテンシャ

ルが存在する。リサイクル事業の立地を想定しているタイ国内において電炉ダス

ト以外のリサイクル原料をみた場合、亜鉛の回収可能性ということでは、溶融亜

鉛めっき工場から発生するスラッジが有望である。亜鉛含有量では年間約0.3万

トンのポテンシャルが存在する。

このほか、銅の回収可能性ということでは、目下 も可能性が大きいものとし

てE-waste(廃家電)がある。しかし、現状ではE-wasteの多くはリユース用途

などに流れているものも多く、リサイクルに向けた新たな法制度等が実施されな

い限り、現状ではすぐの回収が難しい状況である(7ページ参照)。

単純にタイとマレーシアを比較した場合、マレーシアのほうが電炉ダストの発

生量及び亜鉛の回収可能性も大きいが、適正処理を図ろうとする政府の動きとい

う点ではタイ政府が先行しており、タイでの事業化が有望と目される。また、マ

レーシアでは、現在のところ埋立が主流となっておりリサイクルを行おうという

政策的な動きが顕在化していない上、事実上、海外輸出が黙認されているような

状況でもあることから、リサイクル事業の拠点としてはタイが優位である。この

ほか、マレーシアで発生した電炉ダストをタイへ輸入することも考えられるが、

マレーシア政府は原則として電炉ダスト等の危険廃棄物の海外輸出を認めてい

ないため(15ページ参照)、マレーシアからの輸入に際しては解決すべき課題

が多く残されている。

32

図表 31 タイ及びマレーシアにおけるリサイクル原料の発生及び処理状況一覧

国名 廃棄物種類 発生量

[トン/年] 亜鉛含有量 [トン/年]

銅含有量 [トン/年]

回収・処理プロセス 回収・処理の相場

電炉ダスト 84,420 22,790 -

• 従来はセメント成分としてリサイクル、セメント事業者が受け入れ不可の分は埋め立て

• 2010 年半ばから中国へ売却、現在は国により禁止 • 現状は電炉事業者が敷地内に備蓄(水面下では一部

輸出、埋め立て)

• リサイクル:0 ドル/トン~逆有償

• 埋め立て:100 ドル/トン

• 売値:15~20 ドル/トン

含銅亜鉛ダスト

インプット量の 5~6%のダスト(切り粉)が発生

- 回収は難しい• 発生したダストは工程内リサイクルが行われ、外部

には出て入っていない -

溶融亜鉛めっきダスト

2,140 1,650 - • フラックス工程で発生するダストは、フラックス液

を購入している業者に売却 • 不明

溶融亜鉛めっきドロス

1,340 1,260 - • 有価物として回収業者に売却 • 不明

電解めっきスラッジ

3,010 560 - • 処理料を払って埋め立て処理 • 金属含有量が高い場合(約 30%)は売却されている

場合もある

• 埋め立て:1000 バーツ/トン

• 売値:1 バーツ/kg

E-waste(廃家電)

約 9,500 千台(※1)

使用済み乾電池から亜鉛回収

廃基板等から銅の回収

• 政権交代後、家電リサイクル法案の審議が停止中 • 一部自治体から集めた使用済み家電はリサイクル

会社の協力の下試験的に分別・リサイクル • 使用済み乾電池は、自治体、大手百貨店、通信事業

者が回収しているが、 終的には埋め立て

• 回収・処理コスト未定

タイ

小計 - 26,000 以上 E-waste 次第 • 銅については将来的な E-waste 回収制度の成立次第 -

電炉ダスト 91,800 27,210 -

• リサイクルはほどんと行われおらず、基本は埋め立て処理。ただし、埋め立て処理費用が高いため鉄鋼メーカーが自社保管することを特別に認めている

• IOP SPECIALIST 社が唯一電炉ダストの回収事業の許可を有し、亜鉛製品として中国へ輸出

• 売値:90 ドル/トン(CIF価格) マレー

シア

小計 - 27,000 以上 - • 国外輸出について厳しい規制を伴う可能性大。 - 合計 - 53,000 以上 E-waste 次第 - -

(※1)PCD(Pollution Control Department)推計の2010年度廃家電発生量

33

III.競合・関連企業の動向

III-1. セメント事業者

DIWが電炉ダストは有害廃棄物であり、中国への電炉ダストの輸出はバーゼル

条約に抵触することを明確化したことにより、電炉ダストの一部がセメント産業

でリサイクルされている。本項では、タイにおけるセメント産業の動向と電炉ダ

ストリサイクルについて整理する。Thai Cement Manufacturers Association

の加盟8社のセメント生産能力は合計5,642万トンであり、大手3社(SCG Cement

社、Siam City Cement社、TPI Polene社)で、生産能力の84%を占めている。

図表 32 タイにおけるセメント生産能力とシェア(合計5,642万トン 2010年)

SCG Cement Co.,Ltd42%

Siam City CementPublic Co.,Ltd.

26%

TPI Polene PublicCo.,Ltd.

16%

Thai Pride CementCo.,Ltd.

2%

Cemex (Thailand)Co., Ltd.

1% Samukkee CementLtd.0%

Asia Cement PublicCo.,Ltd.

9%

Jalaprathan CementPublic Co.,Ltd.

4%

(資料)Thai Cement Manufacturers Associationより作成

生産能力の5,642万トンに対して、国内セメント需要は近年2,200~2,700万ト

ンと横ばいで推移しており、2010年の国内セメント需要は2,450万トンとなって

いる。

図表 33 タイにおけるセメント国内需要(万トン)

1,900

2,000

2,100

2,200

2,300

2,400

2,500

2,600

2,700

2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010

万トン

(資料)Thai Cement Manufacturers Associationより作成

34

したがって、タイにおけるセメント生産は現状では供給過剰であり、輸出市場

の開拓が各社の課題となっている。また、廃棄物のAFR(Alternative Fuel and

Raw material)利用の許可を保有している大手3社は、新たな収益源(+エネル

ギー費用削減)の可能性として関心は高い。

近畿経済産業局の調査によれば、 大手のSCG Cement社のセメント1トン生産

するためのAFR利用量は、91kg / セメント・トンであり、日本の451kg / セメ

ント・トンと比較して約5.6倍の差があり、その背景には、1)社会的要因とし

て、廃棄物受入に関する大手セメント会社とDIWとの合意条件が制約条件となっ

ていること、2)経済的要因として、埋立処理コストとの競合すること、3)技

術的要因として塩素バイパスシステムの未導入であり受入能力にも限界がある

こと、などが報告されている4。

2011年にDIWより電炉ダストが有害廃棄物でありバーゼル条約の対象物と明

確化されたことにより、現在、SCG Cement社においては、関連会社であるサイ

アム・ヤマト社から3~4万トン/年の電炉ダストを受けいれている。サイアム・

ヤマト社からは輸送費600バーツ/トン(1494円/トン)を徴収している。電炉ダス

トの主成分は鉄であるため、セメント原料のラテライトを代替できる。しかしな

がら、電炉ダスト中の亜鉛や塩素は、セメント産業にとって禁忌成分であり、

SCG Cement社がサイアム・ヤマト社から受け入れた全量をリサイクルすること

はできず、一部を埋立処理している。したがって、SCG Cement社では、他の電

炉事業者社からの電炉ダストリサイクルの依頼もあるが、処理能力の問題がある

ため、受け入れの拡大は困難となっている。

後述する通り、MF炉の生産物である鉄スラグはセメント原料のラテライトを代

替できるため、セメント産業とMF炉は競合関係ではなく、補完関係を構築でき

る可能性があることが確認されている。

4 近畿経済産業局「平成22年度 タイ チョンブリ県における循環型経済の発展に向けた事業化可能

性調査報告書」

35

III-2. 埋立処分場

2010年半ばから中国に電炉ダストが輸出されるまで、電炉ダストの一部は35

ドル/トン(2731円/トン)で有害廃棄物埋立事業者に埋立処理されていた。現状

では電炉ダストのリサイクル方法が確立するまで電炉事業者に保管されている

電炉ダストが大半となっており、今後の政策動向によっては埋立処理されること

も考えられる。また、MF炉の原料である亜鉛や銅を含んだめっきスラッジもタ

イではリサイクル技術が確立しておらず、一部は埋立処理されている。

以上の観点から、電炉ダストや亜鉛や銅を含んだめっきスラッジの処理におい

て、埋立処理費はベンチマークと考えられる。タイの有害廃棄物の電炉ダストや

亜鉛や銅を含んだめっきスラッジに関連する含有基準は、図表 34の通りであり

大半の電炉ダストや亜鉛や銅を含んだめっきスラッジは有害廃棄物に該当する

と推察される。

図表 34 電炉ダストや亜鉛や銅を含んだめっきスラッジに関連する含有基準

成分 含有基準

亜鉛・亜鉛含有物 5,000mg/kg

銅・銅含有物 2,500mg/kg

鉛含有物 13mg/kg

(資料)Notification of Ministry of Industry B.E. 2548 (2005)より作成

タ イ の お け る 有 害 廃 棄 物 の 埋 立 事 業 者 は 、 General Environmental

Conservation社、Professional Waste Technology社、Better World Green社

の3社が認可されている。

近畿経済産業局の調査によれば、2009年における有害産業廃棄物の埋立処理

実績は3社合計で年間約31.9万トンである。これに対して埋立処理能力は3社

で年間約80.6万トンとDIWに報告されているため、有害廃棄物埋立施設の稼働率

は約39.6%程度と推計でき5、電炉ダストや亜鉛や銅を含んだめっきスラッジを

受け入れる余地があると推察される。

しかしながら、ISIT等のヒアリングでは電炉ダストが中国に有価で輸出され

ていたこともあり、電炉事業者各社は処理費負担ではなく、有償もしくは無償で

のリサイクルすることを要望しており、電炉ダストにおいては当面は埋立処理さ

れることは想定できないため、MF炉で電炉ダストを有償もしくは無償でのリサ

イクルすることができれば、有害埋立事業者と競合することは想定されない。

5 近畿経済産業局、前掲書

36

一方で、亜鉛や銅を含んだスラッジにおいては、Thai Rayon社の亜鉛を含ん

だ排水スラッジ(亜鉛含有量2~4%)は、1,000バーツ/トン(2490円/トン)

以下の処理費で埋立処理されており、Thaiwire Products社・Siam Steel

Galvanizing社や日系の亜鉛めっき事業者も1,000~7,000バーツ/トン(2490~

17430円/トン)程度の処理費を支払って、埋立処理を委託している6。

したがって、MF炉において亜鉛や銅を含んだスラッジをリサイクルすることは、

処理手数料収入が期待でき、その価格は埋立処理費の1,000~7,000バーツ/トン

(2490~17430円/トン)がベンチマークとなっている。ただし、亜鉛や銅を含ん

だスラッジ等の有害廃棄物の回収においては、有害廃棄物処理事業者と競合する

だけでなく、1事業者あたりの発生量も多くないため、回収スキームを既に保有

している地場のリサイクル事業者と連携することが肝要となると考えられる。

6 ただし、2010年に入り亜鉛スラッジも有価(1バーツ/トン)でリサイクル会社に販売している亜

鉛めっき事業者も確認されている。

37

III-3. 中国等への輸出

タイにおいては、DIWが電炉ダストをバーゼル条約で規定される有害廃棄物

であると、2011年初頭に明確化し、その取締りを強化している。電炉ダスト

は有害廃棄物に該当するため、E-マニフェスト制度に則り管理されており、

DIWでは不正輸出が発覚すれば摘発するとしている。しかしながら、タイ工業

連盟(Federation of Thai Industries 以下、FTI)やリサイクル事業者への

ヒアリングでは、電炉ダストの一部は未だに中国へ輸出されていると指摘され

ている。

タイの電炉事業者は①インド系、②日系、③タイ資本の大企業、④タイ資本

中小企業の4種類に分類される。各グループで、ダストを処理する方法が異な

っており、電炉ダスト処理のオペレーションの中で電炉ダストの保管の状況に

留意が必要で、その一部を中国に輸出している事業者もあると指摘している。

電炉ダスト以外でも、有害廃棄物である亜鉛含有率の高いダストや亜鉛めっ

きドロスの一部が中国へ輸出されていることが、現地調査で確認された。自動

車部品の鋳造工場からは発生する亜鉛の含有率73%程度のダストは、フレコン

に入れ、コンテナ船で中国へ輸出されていた。この他にも、ニッケル、銅、ク

ロムめっき工場から出てくる廃水スラッジもタイ資本のリサイクル事業者が1

バーツ/kg(2.5円/kg)の価格でスラッジを買い取り、中国に輸出されていると

考えられる。

以上のように、DIWが電炉ダストをバーゼル条約で規定される有害廃棄物で

あると明確化した以降においても、電炉ダストの一部は中国へ輸出されている

と考えられる。また、その他の亜鉛含有率の高いダストや亜鉛めっきドロス、

ニッケル、銅、クロムめっき工場から出てくる廃水スラッジも中国へ輸出され

ていると考えられる。これらの中国へ輸出されている廃棄物は、排出企業から

有価で買い取られ、バーゼル条約非対象物の製品扱いとして不正に輸出されて

いるため、その数量を把握することは困難である。

本事業を展開する際には、まずは、現在中国への輸出を中止し適正に処理を

実施している大手電炉事業者から電炉ダストを確保することが肝要と考えら

れる。また、DIWとしても電炉ダストのリサイクルがタイで実施された際には、

税関等と連携して水際対策を強化する意向も示されていることから、不正な中

国への輸出は将来的に減少すると推察される。

38

III-4. 非鉄製錬業による中間処理

タイにおける電炉ダストリサイクルに関しては、当社以外にも、ウェルツ炉

で電炉ダストをリサイクルするスイス系のGlobal Steel Dust社、スペイン系

Befesa社、回転床炉法(Rotary Hearth Furnace)で電炉ダストをリサイクル

する英系ZincOx社の合計4社がタイへの進出意向を示している。

Global Steel Dust社は、2011年6月にBOIに投資奨励を4社の中で も早く

申請しており、ラヨーン県のAmata City工業団地に、年間11万トンの電炉ダ

ストを処理するリサイクル工場を建設すると数回に渡り報道発表している。

Global Steel Dust社が積極的な報道発表する背景としては、通常BOIが申

請受理後90日以内に奨励証書の受給が決定されることになるが、図表 4の通

りタイ政府の関係機関を含めて選定委員会を立ち上げ慎重な対応しているこ

とから、BOIに早急に手続きをするように間接的な圧力をかけているのではな

いか、とタイ政府の関係者が指摘している。

また、選定委員会が検討している間に、その他の事業主体として、ZincOx

社が2011年10月、Befesa社が2012年1月にBOIに投資奨励の申請しており、当

社においてはBOIの申請予定しているところである。

39

図表 35 タイに進出意向のある電炉ダストリサイクル技術保有企業の比較

企業名 三井金属鉱業(三池製錬) Global Steel Dust

社 Befesa社 ZincOx社

本社 日本・東京 スイス・ローザンヌ スペイン・マドリッド 英国・ロンドン

主な事業拠点日本、中国(上海市・広東省・江蘇省・香港)、台湾、韓国、タイ、マレーシア

スイス、米国(テキサス州)、サウジアラビア、韓国、タイ

スペイン、ポルトガル、フランス、英国、ドイツ、スウェーデン、トルコ、メキシコ、ペルー、チリ、アルゼンチン

英国、米国、トルコ、韓国、タイ

事業概要

資源開発、非鉄製錬(銅、亜鉛、鉛、貴金属等)、産廃リサイクル(電炉ダスト含む)、機能材料・電子材料の生産、自動車部品の生産など

電炉ダストのリサイクル、プラント建設など

各種鉄鋼スクラップや電炉ダストのリサイクル、アルミニウム製錬等からのスラグリサイクル、産廃リサイクル(電炉ダスト含む)など

資源開発、非鉄製錬(亜鉛、)、産廃リサイクル(電炉ダスト含む)、

電炉ダストリサイクル技術

MF炉 (Mitsui Furnace)

ウェルツ炉 (Waelz Kirn)

ウェルツ炉 (Waelz Kirn)

回転炉床炉 (Rotary Hearth Furnace )

長所

・電気炉ダスト以外の汚泥、飛灰などの産業廃棄分の処理も可能。

・廃熱の回収利用が可能。 ・銅(貴金属)の回収が可能。 ・不純物が少ない粗酸化亜鉛が回収で

きる。 ・スラグの再利用(セメント向け鉄源。

・建設費が安価。 ・CO2排出量が少ない。 ・原料の前処理工程が単純。 ・操業は比較的容易

・鉄メタルの回収が可能。 ・不純物含有量が少ない粗酸化

亜鉛が回収できる。 ・亜鉛低品位のダストからの亜

鉛の回収が可能。 ・設備がコンパクト。

短所

・鉄がスラグに酸化鉄として濃縮するので、鉄鋼への再利用は不向き。

・団鉱にするためのバインダー剤が高価。

・クリンカに亜鉛・鉛が残留し、再利用には不向き。・MFやRHFと同品質の粗酸化亜鉛とするには、焙焼が(酸化炉)必要。

・排ガスのダイオキシンが高い。

・設備建設費が高価。 ・高濃度の亜鉛を含んだダスト

を処理すると鉄が酸化物になり、鉄の回収率が悪くなる。

採用実績 ・三池製錬の1基のみ。 ・ も採用実績が多

い。 -

・主に鉄鋼ダスト処理用途。電炉ダスト処理用途の適用例は少ない。

タイへの進出状況など

・BOI申請予定 ・GSDは2011年6月にBOI申請済

・Befesa社は2012年1月にBOI申請済

・ZincOx社は2011年10月にBOI申請済

(資料)各社報道発表資料などから作成

40

IV.事業化可能性の検討

IV-1. 想定されるビジネスモデル

MF炉は電炉ダスト以外にも、亜鉛・銅を含んだダストやスラッジや使用済家電

をリサイクルすることができることが特長である。これらの廃棄物は、タイにお

いてはセメント会社でリサイクルされていない。一方で、MF炉の生成物で約7

割を占める鉄スラグは、セメント原料の鉄源であるラテライトの代替材として販

売が可能である。

したがって、原料確保の上でセメント系リサイクル事業者と連携することは、

セメント系リサイクル事業者にとって、これまで扱えなかった廃棄物原料を取り

扱うこととなり事業拡大の可能性があり、またセメントメーカーにとっては原材

料調達コストの削減に資することになる。当社にとっては、タイでの廃棄物回収

事業の簡素化・安定化することが可能となり、かつ鉄スラグの売却先を確保でき

ることになる。以上のように、セメントメーカー・セメント系リサイクル事業者

と相互利益を享受するビジネスモデルを構築することが可能であると考えられ

る。タイにおいてセメント系リサイクル事業者には、大手素材系財閥のサイア

ム・セメント・グループ会社であるSCI Eco Service社や、セメント業界2位の

サイアム・シティ・セメント社の子会社であるGeocyle社といった事業主体があ

り、事業連携の可能性を協議中であり、図表 36のようなビジネスモデルを想定

している。

MF炉の生成物である粗酸化亜鉛は、タイの亜鉛製錬事業者であるパデン社

(Padaeng Industry Public Company Limited)に売却することで、タイにお

ける亜鉛原料の安定供給に貢献でき、売却できなかった残りを日本へ輸出するこ

とを検討している。また、生成物である銅マットについては、タイにはタイ・カ

ッパー社(Thai copper industries)が存在しているが操業停止中であり、日

本に輸出することを前提としている。

日本においては、MF炉ではボイラーを利用して発電しているが、タイでは電力

価格が安価であり、発電収入の効果が少ないため、MF炉から発生する蒸気は周

辺工場に売却した方が発電機導入コストも削減できるなど事業採算性が向上す

ると考えられる。したがって、入居する工業団地内で蒸気の売却先を確保するこ

とが課題となる。さらに、電炉ダストを団鉱にするためのバインダーは、紙パル

プ製造プロセスの副産物であることから、紙パルプメーカーより調達する。

41

以上のように、本ビジネスモデルはセメントメーカー・セメント系リサイクル

事業者と連携することが核となり、タイの循環型社会構築や資源の安定供給に資

するビジネスモデルと考えられる。

42

図表 36 想定されるビジネスモデル

紙パルプメーカー

MF炉

電炉ダストリサイクル新会社

電炉ダスト

亜鉛・銅めっき産業

銅、真鍮メーカー

2

3

亜鉛・銅を含んだ

ダストやスラッジ

セメント系リサイクル事業者( SCI Eco Service社、

Geocyle社など)

原料回収を担当

電炉メーカー

1

使用済家電(乾電池、ブラウン管テレビ等)

4家庭・自治体

バインダー

粗酸化亜鉛銅マット

鉄スラグ

セメントメーカー各社原材料調達コストの削減

脱塩素技術移転

Padaeng Industry Public Company

Limited亜鉛原料の安定調達

亜鉛製錬所銅製錬所

輸出

6

5

7

蒸気

輸出

ボイラーを使用する製造業者各社

(入居工業団地内)

(資料)現地調査より作成

43

IV-2. 事業採算性の検討

1. 採算性試算の考え方及び前提

本調査では、現地調査で得られた情報をもとに回収可能とみられる電炉ダスト

やその他のリサイクル原料の量を仮定したほか、実際に即した単価を仮定した上

で、事業採算性の試算を行った。また、電炉ダストリサイクルのリサイクル事業

では、今後のタイ政府における政策動向や鉄鋼業界における生産動向によっても

事業採算性が変化するほか、亜鉛の国際相場動向、また亜鉛製錬所に粗酸化亜鉛

を売却する場合の取引条件によっても採算性が大きく変化するため、一般的なケ

ースとして以下のような試算前提を置いた。また、NPV(Net Present Value:

正味現在価値)の評価に際しては、8年間で償却する場合(法人税の免税期間内

の償却を想定)と、25年間で償却する場合(一般的なMF炉の耐用年数を想定)

の2ケースについて想定した。

図表 37 試算の前提①(原料構成及び処理手数料単価等)

・ 電炉ダスト:80,000トン/年

・ 亜鉛・銅のスラッジ・ダスト等:3,500トン/年

・ 廃電子基板:5,000トン/年

・ 廃ブラウン管ガラス:5,000トン/年

・ その他(鋳物砂、乾電池等):3,900トン/年

・ 電炉ダスト調達費(有価買い入れ):150バーツ(374円)/トン

・ 廃家電等処理手数料:900バーツ(2,241円)/トン

図表 38 試算の前提②(相場動向)

・ 為替(バーツ-日本円):2.49 円/バーツ (2011/12/26現在)

・ 為替(米ドル-日本円):78.04 円/$ (2011/12/26現在)

図表 39 試算の前提③(建設費・修繕費・公租公課等)

・ 建設費: 40億円

電炉ダスト脱ハロ設備(造粒)・粗酸化亜鉛脱ハロ設備を

含む。ただし、発電機は含まない。

・ 償却:8年定額(残存簿価10%)

・ 修繕費(1~8年目): 1億円/年

・ 修繕費(9~25年目): 2億円/年

・ 法人税(1~8年目): 免除

44

図表 40 試算の前提④(その他)

品目 単価(かっこ内は日本円換算) 備考

重油 22.4(55.8 円) バーツ/L 2011/1-11 月の CIF 輸入価格。

石炭 140(10926 円) $/トン インドネシア産一般炭の CIF 輸

入価格(概算)。

上水 16(40 円) バーツ/m3 水道公団価格。使用量に応じて

変動(min:9.5~max:16)。

排水 6(15 円) バーツ/m3

アマタシティ工業団地(BOD:

0-200ppm)。上水利用料の 80%

が排水処理費として課金。

土地 1,606(4000 円) バーツ/m2 アマタシティ他の 3 工業団地の

平均値。

電気 3.62(9.0 円) バーツ/kWh 電力公団送電単価。

廃棄物輸送費 3(7.5 円)バーツ/トン・

km 関係者ヒアリング(2010 年度)。

ワーカー賃金 185,435(46 万円) バーツ/年・人

基本給・諸手当・社会保障・残

業・賞与。日給 300 バーツ(747

円)換算(2012 以降)。

エンジニア賃

金 310,128(77 万円) バーツ/年・人

基本給・諸手当・社会保障・残

業・賞与。

中間管理職賃

金 753,898(188 万円) バーツ/年・人

基本給・諸手当・社会保障・残

業・賞与。

駐在員用住宅

借り上げ料 50,000(124500 円) バーツ/月・軒 メイド付きサービスアパート。

(資料)現地調査及び文献調査から

45

2. 採算性試算の結果

事業採算性の結果を図表 41に示す。事業開始初年度では、239百万円の利益

が得られる試算結果となった。主な収益源は廃家電等の受け入れ処理に伴う処理

手数料の収入、粗酸化亜鉛の売却収入、銅マットの売却収入、発生蒸気の売却収

入である。このうち、もっともおおきな割合を占めるのは粗酸化亜鉛の売却収入

であり、国際的な亜鉛相場や亜鉛製錬所への売却条件などによって今後も事業採

算性は大きく変化する可能性がある。

一方、コストのうち、 大の割合を占めるのは、プラント建設に伴う減価償却

費であり、プラント建設に伴う初期投資額をいかに圧縮するかが事業採算性を向

上させる上での鍵となる。本調査では、日本国内よりもタイ国内では電力料金が

安価であることに着目し、初期投資のかさむ発電機の設置をとりやめ、電力を外

部から購入する代わりに発生蒸気を売却するというプランを想定している。設備

建設に伴う初期投資の圧縮が事業採算性の向上に大きく資することから、政府に

よる設備導入補助金等の活用が事業化に際しては有効であると考えられる。

現在のところ、タイ国内ではE-waste(廃家電)リサイクル事業は稼動してい

ないが、将来的にこれが稼動することとなった場合、これの処理手数料や発生し

た銅マット売却収入なども見込めるようになるため、タイ国内における家電リサ

イクル制度の成熟度合いによっては事業採算性が改善する可能性も残されてい

る。

NPV(正味現在価値)を8年間でみた場合は262百万円となり、同25年間でみ

た場合は3,619百万円という試算結果が得られている。いずれも小額ではあるが、

プラスの結果が得られていることから、本試算の前提が整えば、投資回収は十分

に可能であると考えられる。

46

図表 41 事業開始初年度における採算性(8年での償却を想定)試算結果

239

-2,000

-1,500

-1,000

-500

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

廃棄物処

理費

粗酸化

亜鉛

銅マ

ット

蒸気

収入

オイル・

石炭

・コー

クス

バイン

ダー

電力

人件費

修繕・物

品費

物流費

間接費

減価償

却費

金利(

年利

3.5%)

税(0

%)

収支

Million JPY per year

●電炉ダスト処理量: 80kt/年●スラッジ・廃家電・電池・CRTガラス等処理量: 15.9kt/年

備考:

-設備投資額: 40 億円

-電炉ダスト処理手数料: ▲150 バーツ/t (有価買取).

-廃家電等処理手数料: 900 バーツ/t.

8年で償却する場合

47

IV-3. 製品・副産物の販売シナリオ

1. 粗酸化亜鉛

タイ現地で発生した粗酸化亜鉛については、タイ国内の亜鉛製錬会社(パデン

社など)や当社グループ会社(八戸製錬)等への売却を想定している。タイでは

今後自動車向け亜鉛メッキ鋼板の需要拡大が見込まれるため、これに伴う亜鉛生

産の拡大も期待できる。

なお、パデン社に売却する場合、同社では湿式法による亜鉛製錬を採用してい

るため、電炉ダストに起因するハロゲン元素等の不純物が制約となって受け入れ

が難しい場合も想定される。この場合、事前に十分な脱ハロゲン処理を施す必要

が生じるものと思われる。もしパデン社の受け入れに限度がある場合、また現地

での脱ハロゲン処理のコストが高くつく場合、乾式法による亜鉛製錬を採用して

いる当社グループ会社(八戸製錬:ハロゲンを含む粗酸化亜鉛の処理も可能)へ

の売却を行うものとする。

2. 鉄スラグ

現地で発生した鉄スラグについては、タイ国内のセメント会社(サイアム・セ

メント社など)への売却を想定している。タイ国内で生産されるセメントは、現

在のところ天然のバージン原料を主原料にしており、これをリサイクル由来の原

料に置き換える余地が多分に残されている。天然資源と比較して本事業で発生す

る鉄スラグは、セメント会社にとって原料調達コストの圧縮を実現できる可能性

があり、サンプルレベルでは、すでに現地のセメント会社でも受け入れの成分基

準などを満たしていることを確認済みである。

3. 銅マット

現地で発生した銅まうっとについては、現在のところ、タイ国内の銅製錬所(タ

イ・カッパー社)が十分に稼動していないため、当社グループの銅製錬所(パン

パシフィック・カッパー株式会社日比製煉所)での引き取りや場合によっては中

国の銅製錬所などへの売却を想定している。銅需要の休息な拡大によってリサイ

クル資源も含めた銅製錬原料のニーズは高まっており、本事業で発生した銅マッ

トについても好条件での売却を期待できる。

48

4. 蒸気

日本国内で比してタイ国内では電力料金が安価であり、先述のとおり、初期投

資に占める発電設備コストが大きな割合を占めるため、タイへの進出に際しては、

発生蒸気を自家発電用に回すのではなく、近隣の蒸気需要家に売却することを想

定している。ただし、タイは低緯度ということもあり、暖房需要も少ないことか

ら、有機化学、木材、食品、サービス業などといった大型熱需要家への売却を念

頭に置く必要がある。電力と異なり、蒸気搬送に際してはパイプラインなどの設

備投資が必須となることから、これら需要家近隣でのプラント建設がタイ進出の

条件となる。後述のとおり、本事業の立ち上げに際して各種恩典を受けようとす

る場合には、タイ政府が指定する工業団地での立地が前提となるため、これら蒸

気需要家が多数立地する工業団地への進出が必要となる。

49

IV-4. 立地候補地

後述する通り、タイでの事業化までに必要な手続きを踏まえると、工業団地に

入居することが手続きの迅速化のみならずBOIの各種の特典を受ける条件とな

っている。タイ工業団地公社(Industrial Estate Authority of Thailand、

以下IEAT)によれば、1)MF炉を設置するために必要な10万m2以上の土地が余

っていること、2)101または106のリサイクル工場の立地が可能なこと、3)

工業団地の環境影響評価(EIA)枠(大気汚染物質の総量規制)の枠に余裕があ

ること、などの条件を満たす工業団地としては、タイ中部のラヨーン県に立地す

るAmata City、Eastern Seaboard (Rayong)、Hemaraj Eastern Seaboardの

3つの工業団地である。

これらの工業団地は、図表 42の通り、いずれもレムチャバン港から約30km以

内に隣接しており、電炉事業者が集積しているマプタプット港からも約50km内

となっている。一方で、これらの工業団地は、MF炉での電炉ダストリサイクル

で必要な原料のバインダーの発生源である紙パルプメーカーや、MF炉の製品で

ある粗酸化亜鉛の売却先である亜鉛製錬所、鉄スラグの売却先であるセメントメ

ーカーからは距離がある。しかしながら、電炉ダストが有害廃棄物であるため、

輸送費が他の原料や製品よりも高いことを考慮すると、電炉事業者との距離が近

いこれらの工業団地に入居することは、トータルの輸送コスト削減に資すると考

えられる。

図表 42 入居可能な工業団地と関連事業者、インフラの立地

ラヨーン県

バンコク都

Hemaraj Eastern Seaboard Industrial Estate Eastern Seaboard Industrial Estate (Rayong)

Amata City Industrial Estate

スワンナプーム国際空港

レムチャバン港

マプタプット港

電炉事業者集積

セメントメーカー集積

主要紙パルプメーカー

亜鉛製錬所(Padaeng Industry社)

(資料)各種資料より作成

50

図表 43に立地可能な工業団地の概要を示す。これらの工業団地はラヨーン県

の北部に隣接していることから、土地代や 寄りの港湾施設までの距離などに大

差はないため、集中排水処理施設の処理能力が入居先の判断基準となる。

この理由は、MF炉の電炉ダストのリサイクル工程では、ダストの前処理と粗

酸化亜鉛の後処理として、ダストや粗酸化亜鉛に含まれる塩素を苛性ソーダで中

和し高濃度の塩水を排水することが必要であるからである。ただし、タイにおい

ては、工業省告示「工場からの排水に関する基準」第2版(1996)の基準に塩水

の基準は存在しない。しかし、ラヨーン県はマプタプット問題など環境問題が注

目されていることから、工業団地の集中排水処理施設の処理能力が高いEastern

Seaboard (Rayong)工業団地は有力な候補地と考えられる。

図表 43 立地可能な工業団地の概要

工業団地名 アマタシティイースタンシーボード

(ラヨン)イースタンシーボード

(ヘマラート)

開発主体Amata Corporation Public

CompanyHemarj Land and

DevelopmentHemarj Land and

Development集中排水処理施設処理能力(㎥/日) 14,000 26,000 6,000土地(万バーツ/ライ) 230 270 270土地(バーツ/㎡) 1,438 1,688 1,688一般工業区の空状況(㎡) 4,800,000 不明 1,272,000最寄港(港名)までの距離km (レムチャバン)27 (レムチャバン)30 (レムチャバン)27

(資料)JETRO「タイ国工業団地調査報告書現地調査」より作成

51

IV-5. 事業化までに必要な手続き

1. 事業開始までの主な手続き

タイの外資の投資振興の根拠法は投資奨励法であり、この奨励法の実施責任を

担当しているのがBOIであり、各種の投資奨励策の実施や税制優遇等の特典対象

の判断などをBOIがワンストップサービスで提供している。したがって、タイに

おいて外資が参入する際にBOIで手続きを進めるのが一般的となっており、本件

においてもBOIでの各種申請することを前提としている。

BOIによる投資額や業種の区別に則り、本件を「投資金額7億5千万バーツ(18

億7千万円)以上で輸出が80%以下のリサイクル事業」に該当するとした場合の

主な手続きは、以下の通りである。

図表 44 BOI申請から奨励認定を受ける主な手続き

(1)申請書の提出

(2)審査担当官によるインタビュー

(4)認可通知とそれに対する回答

(3)本委員会による案件審査

(5)奨励証書の発給申請

【申請書の添付書類】•製造品目のカタログ、会杜概要、工程表、初期の環境負担調査結果報告書

申請書受理から原則として2週間以内

【インタビュー目的】製品の詳細、製造工程など技術的なことや申請者(会社)の現在の事業内容を把握し、委員会へ報告※リサイクル産業はInvestment Promotion Bureau 4が担当

電炉ダストリサイクル選定委員会投資金額7億5千万

バーツ以上で輸出が80%以下の案件であるため、通常は90日以内

本件は、投資金額7億5千万バーツ以上で輸出が80%以下の案件であるため、首相が議長の本委員会で決定

電炉リサイクル事業については、BOI本委員会前に、関係省庁DIW・DPIM、業界団体ISITの委員会をBOIが組成

【奨励証書発給申請書の必要書類】1. 奨励証書発給申請書(BOI様式 FOS CT 21)2. 法人登記簿謄本(登記事務所が証明した定款、株主リストを含む)3. 法人登記証明書(上記登記簿と対になっている)4. 増資の場合の法人登記簿謄本(もしある場合)5. (タイ商務省の)会社株式登記事務所の保証書6. 海外からの資金送金を証明する書類(外国からの資本がある場合)7. 合弁事業契約、技術援助契約、その他の援助契約(もしある場合)

8. 記入済み必要インフラ、人材調査票

通知を受け取ってから1ヶ月以内に通知

書の内容に同意するか、しない旨の回答

奨励証書発給申請は奨励認可を引き受けると回答した日より180日以内

(6)奨励証書発給

通常発給申請から10営業日以内である

【認可通知書の添付書類】1. 認可受理の回答フォーム2. 認可受理回答期限延長の申請フォーム3. 奨励証書(Promotion Certificate)発給申請フォーム4. 輸入品梱包に輸入税等減免特典を受けることを表示する荷印の通知5. 機械輸入に関する告示(46/2534(1991年))、Por3/2545(2002年))及びタイで製造できる機械・設備リスト6. 法人所得税免税の特典を使用する前の事業実績報告の方法について(OBOI告示Por.4/2544(2001年))7. 電子システム(MCTS)による機械品目表承認の基準と方法(OBOI告示Por.8/2544(2001年))

8. 必要インフラ、人材に関する調査表

(資料)BOI「タイ国投資委員会ガイド2011」より作成

通常であれば、投資金額7億5千万バーツ(18億7千万円)以上で輸出が80%以下

のリサイクル事業」は申請受理後90日以内に首相が議長の本委員会で奨励証書

の受給が決定される7。しかしながら、先述した通りタイ政府では1社だけの進

7 本委員会は首相を議長とし、工業大臣が副委員長、ほかに経済関係閣僚とタイ工業連盟、主要民間

団体等の代表、顧問委員で構成

52

出を独占的に許可とするか、などの対応を含めて検討が進められており、図表 4

で示した電炉ダストリサイクル企業の選定委員会を立ち上げて審議するなど慎

重な対応を採っている。

電炉ダストのリサイクル事業は、特別重要業種(7.27リサイクル事業)に該

当し、その特典を受けるための条件は以下の通りである。

図表 45 リサイクル事業に対するBOI特典を受けるための諸条件

1) 関係政府機関の同意を得なければならない

2) 委員会が事例によって例外を認める場合を除き、工業団地あるいは奨励さ

れた工業国立地すること

3) 国内発生以外の廃棄物・リサイクル資源を取り扱ってはならず、選別、回

収、再利用、リサイクル、有価物質の抽出を対象とする

(資料)BOI「タイ国投資委員会ガイド2011」より作成

上記の1)、2)の条件に関しては電炉ダストリサイクル企業の選定委員会と

して、工業団地に入居することが前提で進められており、その限りにおいては特

に追加的な手続きは不要であると考えられる。また、進出企業が工業団地に入居

する限り、環境影響評価や健康影響評価8が必要な有害廃棄物処理施設(工場コ

ード101)ではなく、リサイクル施設(工場コード106)として操業許認可を公

布できることをIEATが承認している。

3)の条件に関しては、本事業においては当面はタイ国内の電炉ダストのスト

ックを中心にリサイクルすることを前提としており、将来的に不足する処理能力

に関しては、タイ版家電リサイクル法が施行された時に発生するブラウン管ガラ

ス・乾電池、貴金属の品位の低い電源基板のリサイクルや亜鉛・銅めっきスラッ

ジなどをMF炉の特長を活かし、かつタイでリサイクル困難な廃棄物を処理する

ことで対応する予定である。

他方で、現在、同様の電炉ダストリサイクル事業を検討している他社の技術で

は、将来的にマレーシア等の近隣諸国からの輸入を前提にしていると考えられる

ことから、3)の国内発生以外の廃棄物・リサイクル資源を取り扱ってはならな

いという条件は、本事業にとってプラスとなっている。

また、BOIでは立地によって税制等の特典内容を区別しており、本事業候補地

はラヨーン県と想定し、これに特別重要業種としての特典が追加されることにな

り、具体的に適用される特典としては図表 46の通りとなる。

8 2010年8月に環境アセスメント、健康アセスメントを必要とする11業種を定めた天然資源・環境省

通達が閣議決定され、その中に有害廃棄物処理施設(工場コード101)が含まれている。環境アセス

メント、健康アセスメントが必要となると、アセスメントの結果の審査や、結果を30日以上の公開し

周辺住民への公聴会の開催などが必要となる。したがって、工場コードが101と判断された場合は、

タイにおけるリサイクル事業の手続きに時間が要すると考えられる。

53

図表 46 ラヨーン県において特別重要業種として承認された場合の特典

特典の内容 期間等

法人所得税(30%)減免 8年間免除

機械・設備の輸入税減免 免除

輸出製品用原材料輸入税減免 1年間(延長

可能)

(資料)BOI「タイ国投資委員会ガイド2011」より作成

奨励証書発給後、奨励企業は奨励証書発給日から6ヶ月以内に工場建設の開始

や機械の購入などによりプロジェクトを開始することや、30ヶ月以内に投資委

員会の減免措置使用による機械・機器の輸入を完了すること(ただし、1回につ

き1年、3回まで延長は認められる)、36ヶ月以内に建設を完了し、機械・機

器を設置し、工場の稼働を開始する必要がある。

図表 47 BOI奨励証書発給後の主な手続とその期限

       奨励証書発給後の期限手続内容 6ヶ月以内 12ヶ月以内 24ヶ月以内 30ヶ月以内 36ヶ月以内

事業の進捗状況の報告と実施の確認 ●

事業の進捗状況の報告と実施の確認 ●

事業の進捗状況の報告と実施の確認 ●

機械輸入の完了 ●

操業開始 ●

(資料)BOI「タイ国投資委員会ガイド2011」より作成

工場設立に関する産業廃棄物処理・リサイクル業者の許認可権は、工業団地に

入居する場合はIEATに許認可権が委譲されており、BOI申請とは別途申請が必要

である。許認可を申請するに際し、必要書類は他の工場とほぼ同様であるが、リ

サイクル施設(工場コード106)の設立には、保管・分別・リサイクルする場所

を明示した工場レイアウト、残渣が発生した際の処理方法(売却先や処理委託先)

などの詳細を提出しなければならない(図表 48)。

図表 48 リサイクル事業の許認可取得時の必要書類

1) 申請書

2) 法人登記簿写し(代表権、会社の目的部分)

3) 工場所在地地図

4) 工場内機会配置図(正確な縮図で建築士の証明を添付)

5) 工場設計図(正確な縮図で建築士の証明を添付)

6) 公害防止対策の証明書

7) その他必要書類

(リサイクル企業の追加書類)

・保管・分別・リサイクルする場所を明示した工場レイアウト

・残渣が発生した際の処理方法(売却先や処理委託先)

(資料)BOI「タイ国投資委員会ガイド2011」、佐々木(2007)前掲書より作成

54

許可されたライセンスは5年間有効であり、5年目の12月31日までDIWに再申請

する必要がある。再申請の際にDIWが工場の状況や汚水処理システムなどの環境

機器を点検し、不備がなければさらに5年のライセンスが取得できる。

また、リサイクル業者は少なくても年に1度DIWの点検を受けることとなって

おり、周辺住民の苦情などがあった場合は、DIWは処理・リサイクル業者に対し

て点検を行い、不備があった場合は改善命令を出すことができ、改善命令に対し

て、処理・リサイクル業者は改善を行わなかった場合、DIWは操業停止、ライセ

ンス剥奪の権限を持っている9。

9 佐々木創、「タイにおける産業廃棄物・リサイクル政策」、日本貿易振興機構アジア経済研究所『ア

ジア各国における産業廃棄物・リサイクル政策情報提供事業報告書』、pp.149-176、2007年

55

2. 事業開始後の主な手続き

本事業で回収する予定の電炉ダストやめっきスラッジ等は有害廃棄物である

ため、工場設立とは別に運搬許可をDIWから取得することに加えて、別途運輸省

の許可となる。しかし、先述した通り、電炉ダストやめっきスラッジ等の回収に

おいては、既にこれらの廃棄物を回収している大手セメント会社の関連リサイク

ル会社と連携することで、手続きや回収システムの簡素化を図ることが可能であ

る。事業運営時における廃棄物・リサイクル事業者の義務は、The Notification

of MOI B.E.2548(2005)の第17~24項に規定されている。

図表 49 廃棄物・リサイクル事業者の義務

第17項 廃棄物処理・リサイクル事業者はDIWが定めた手順に従って廃棄物

管理を実施しなければならない。

第18項 廃棄物の処理は許可された廃棄物の種類と処理方法で実施しなけ

ればならない。また、顧客に対し許可された廃棄物の種類と処理

方法を許可証で通知しなければならない。

第19項 the Notification of Hazardous Substance Committee Resolution

regarding land transportation of hazardous substance B.E.

2545 (2002).に従いマニフェストを使用しなければならない。ま

た、廃棄物処理・リサイクル業者はDIWにインターネット経由で報

告しなければならない。

第20項 一度マニフェストで合意した廃棄物に関しては、廃棄物処理・リ

サイクル業者が処理責任を持つ。

第21項 廃棄物処理・リサイクル業者は処理実施前に、廃棄物の成分分析

のデータを記録しなければならない。その分析はDIWに登録されて

いる分析機関や自社の分析室で実施しなければならない。分析結

果は 低3年間保持しなければならない。

第22項 廃棄物処理・リサイクル業者はThe Notification of MOI B.E.

2545(2002)で定められた廃棄物管理者制度に基づいて管理者を設

置し、従業員が適切で安全な方法で業務を実施するように講習を

しなければならない。

第23項 廃棄物処理・リサイクル業者は附属書3で規定している廃棄物の流

出、火災、爆発、または事故がある場合には緊急時対応計画を確

立しなければならない。また、工場に安全装置、防火設備や避難

経路を確保しなければならない。

第24項 廃棄物処理・リサイクル業者はSoKo.5という書式で年次報告書を

翌年3月1日までにDIWに提出する必要がある

(資料)The Notification of MOI B.E.2548(2005)より作成

56

IV-6. 事業基本計画の骨子

事業基本骨子を図表 50に示す。事業実施に際しては、タイ政府BOIによる選

定委員会で選定されることが前提となる。事業拠点としては、ラヨーン県内の工

業団地への進出を想定しているほか、事業実施体制としては現地有力企業との合

弁もしくは独資での進出を想定している。事業採算性の更なる向上のためには、

タイにおけるE-waste等の危険廃棄物に関するリサイクル制度の発足等が望ま

れるところである。

事業基本計画の策定から操業開始までのスケジュールは図表 51のとおりであ

る。

図表 50 事業基本計画の骨子

骨子構成 概要

事業拠点 ラヨーン県(Amata City、Eastern Seaboard (Rayong)、Hemaraj

Eastern Seaboardのいずれか)

回収・処理・資源

売却に係るビジネ

スモデル

<回収>

タイ政府の指導及び法令に基づき、タイ国内の電炉事業者から発生

した電炉ダストの国内唯一の合法処理事業者として、電炉ダストの

買い入れを実施する。

<処理>

当社のMF炉形式によるリサイクルを行う。

<資源売却>

粗酸化亜鉛については、タイ国内の亜鉛製錬所(Padaeng社)への

売却もしくは日本の当社グループ会社(八戸製錬社)へ売却する。

銅マットについては、パンパシフィック・カッパー社(日比製錬所)

もしくは中国等の銅製錬所への売却を行う。

蒸気については、進出工業団地内の需要家に売却を行う。

事業実施体制

現地の有力企業(SCI Eco Service社やGeocyle社など)との合弁

もしくは独資によって現地でMF炉を中心とする電炉ダストリサイ

クルプラントを建設する。

電炉ダストの回収については、現地有力企業もしくは日系商社など

との契約締結によって行う。

技術・設備の導入

計画・投資規模

本FS調査終了後、3年目には技術導入を実施する。投資規模は40

億円を想定(発電機は含まず)。

収益性分析

事業開始初年度における利益として239百万円の利益を想定

(ただし、亜鉛相場及び亜鉛製錬所への売却条件によって大きく変

動する可能性あり)。

NPV(8年)=262百万円、同(25年)=3,619百万円を想定

技術・制度的課題

に向けた対策

ISITから提出された技術評価レポートをもとにBOIで高い評価を得

て、タイ国内に相応しい電炉ダストリサイクル事業者として認定さ

れることが必要である。

事業採算性の更なる改善のためには、タイ国内におけるE-wasteリ

サイクル制度の発足及びそれらの受け入れを開始することが必要

である。

57

図表 51 事業基本計画の策定から操業開始までのスケジュール

・事業化可能性調査(本調査事業)・パートナー候補の抽出・BOI申請

初年度(2011年度)

2年目(2012年度)

3年目(2013年度)

4年目(2015年度)

5年目(2016年度)

・リサイクル事業の許認可申請(IEAT)・(必要に応じて)危険廃棄物の収集運搬に関する許認可申請(DIW等)・資材・燃料類の調達に関する購買契約・生成物(粗酸化亜鉛、銅マット、蒸気)の売却先確保(売却基本契約など)

・BOIプレゼンテーション・(必要に応じて)環境影響評価・進出地の最終決定(特に蒸気売却先の確保)及び工業団地との基本契約・電炉事業者との回収基本契約・生成品に関するサンプル分析・基本事業計画の作成・パートナー企業(プラント建設、ダスト回収等)との覚書交換及びプレスリリース

・資材調達・プラント建設・政府等(日本)への設備導入補助申請等

・試運転・操業開始

58

V.参考資料

V-1. 現地調査報告

1. 第1回現地調査

日程 2011年10月3日(水)~10月5日(水)

参加者 三井金属鉱業/横本、山本

MURC/清水、佐々木

・ タイ国内に拠点を構えて電炉ダストリサイクルの事業化を図ろうとする

動きは、Zincox、Global Steel Dust、Befesa、三井金属の4社存在する。

このうちZincox及びGlobal Steel Dustについてはタイ投資委員会(Board

of Investment)に申請を行っている状況であるが、具体性に欠くとして

受理されていない模様である。すでに新聞報道等で盛んにPRを行っている

が、実態としてはまだどの事業者も同じスタート地点にいる状況である。

・ 三井金属の MF 炉は、事業許認可を所管する工業省工場局(Department of

Industrial Works)及び投資委員会から環境配慮に優れているという点

で高い評価を得ている。また、電炉ダストだけではなく、E-waste なども

併せて処理できる技術ということで、将来性の高さも評価されている。

ただし、コストの高さについては一部から懸念の指摘があった。

・ すでに2社から投資委員会に対して申請がなされているところであるが、

タイ政府としては優れた技術を有する1社のみを採用したいと考えてお

り、三井金属から魅力的な技術提案が行われれば、検討の俎上に加える

ことをよしとしている。鉄鋼連盟(Iron and Steel Institute of

Thailand)が 11 月上旬ぐらいまでに取りまとめる予定の政府提言資料

(技術評価調査)の結果を踏まえ、いずれか1社に絞り込む予定である。

・ もしタイ国内で電炉ダストリサイクルの事業化を試みようとするならば、

11 月上旬までにとりまとめ予定の技術評価調査で取り上げられるように

すること、また投資委員会の幹部層に対しても同様に技術提案を行って

いくことが有効であると現地政府担当者から助言を受けている。

・ タイ国内で発生する電炉ダストは7~10 万トン程度にすぎず、また手数

料を徴収しての回収は難しいため、他の亜鉛源(めっきスラッジなど)

や手数料収入を期待することのできる廃棄物(液晶ガラスカレットなど)

についても引き受けるようなビジネスモデルについて速やかに事業採算

性を検討する必要がある。

59

2. 第2回現地調査

日程 2011年11月28日(月)~11月30日(水)

参加者 三井金属鉱業/横本、山本

MURC/佐々木、大澤

① 亜鉛含有廃棄物について

・ 溶融亜鉛めっき工場からは亜鉛ダストと亜鉛ドロスが発生している。め

っき処理をするプロダクトの量 2,000~3,000 トン/月、亜鉛地金の消費

量 180~200 トン/月に対し、亜鉛ダスト発生量は 24 トン/月、ドロス発

生量は 14~16 トン/月である。発生した亜鉛ダストはフラックス液(塩

化亜鉛アンモニウム溶液)を購入している業者に売却し、ドロスはダス

トの売却先とは異なる 2 社に売却している。

・ レーヨンの合成プロセスにおいて亜鉛を含むスラッジが発生する。ただ

し、レーヨンを製造している会社はタイでは 1 社のみである。スラッジ

の発生量は、排水処理後のスラッジ重量で 1.2~1.5 トン/月、スラッジ

中の亜鉛の含有率は 2~4%である。発生した亜鉛スラッジのおよそ半分が

近くのセメント工場へ、残りが埋め立てに回る。処理料は幅が広く、業

者によっても異なるが 1,000 バーツ/トン(2490 円/トン)以下である。

・ 自動車部品の鋳造工場からは亜鉛含有率の高いダストが発生している。

ねずみ鋳鉄鋳物部品、球状黒鉛鋳鉄鋳物部品が約 18 トン/月、ステンレ

ス部品約 20トン/月の生産量に対し、亜鉛ダストの発生量は 30トン/月、

亜鉛の含有率は 73%である。亜鉛ダストはフレコンに入れ、コンテナ船で

中国へ輸出されている。

② 銅含有廃棄物について

・ 登録コード 105、106 の工場からは銅スラッジが排出されていると思われ

る。スラッジの処理方法については法律が定められており(The

Notification of MOI B.E.2548)、コード 105、106 の工場では危険廃

棄物処理の許可を工業省工場局(DIW:Department of Industrial Works)

から受ける必要がある。同法では、これらの工場はモノを集めて分別、

リサイクルを行う工程を持つことが決まりになっている。サイアム扇谷

では、エッチング処理後のスラッジを処理したいとのことである。ここ

のスラッジに含まれる銅の含有量は約 2%である。

③ 家電リサイクル法について

・ 家電リサイクル法については、政権交代があったために何も決まってい

ない状況になっている。過去のドラフトを踏襲するのか、それとも一か

60

ら作り直すのかも決まっていない。

・ 現状は Pollution Control Department(PCD)が財務省と話し合いをし

ており、財務省からの返事を待っているところである。過去のドラフト

の発行が不可能な場合は、家電リサイクルのための基金を作ることを考

え て い る 。 基 金 設 立 が 難 し い 場 合 は EPR ( Extended Producer

Responsibility、拡大生産者責任)の枠組みをつくることになるだろう。

・ 乾電池については自治体が予算をつけて回収を行っている。また、ボラ

ンティアとしてデパート等でも回収を行っている。しかし、回収後の処

理方法については決まっておらず、現状では埋め立てられている。

④ その他 MF 炉建設に関連する情報

・ パデンはラヨーンに脱塩処理設備を保有しており、輸入した粗酸化亜鉛

を処理している。パデンが処理設備を持っているのであれば、三井で塩

素除去をする必要がないため、MF 炉の立地は内陸でも問題ない。

・ 工場を建てる際には、地域住民の反対に合うことが考えられる。大牟田

市での環境影響評価の結果があれば、DIW が事業者の選定を行う際にも後

押しになるのではないかと思われる。

61

3. 第3回現地調査

日程 2011年12月13日(火)~12月15日(木)

参加者 三井金属鉱業/横本、山本、濱田

MURC/佐々木、大澤

① 電炉ダストの発生、処理状況について

・ タイでの製鉄工場は①インド系、②日系、③タイローカルで大規模、④

タイローカルで小規模の 4 種類に分類される。それぞれのグループで、

ダストを処理する方法が異なっており、各グループの電炉ダスト処理の

オペレーションについて十分把握しておくことが必要。

・ 電炉ダストの発生量について国が発表している数値はあるが、実際には

各グループの処理・保管方法によって使用可能な量は異なる。ISIT のレ

ポートの数字は各企業の生産キャパシティーから計算された数値になる。

注意すべきところはダストの保管の仕方である。中国に輸出している工

場もあるし、埋め立てているところもある。

② 亜鉛その他めっきスラッジの発生、処理状況について

・ 亜鉛めっきスラッジ中の亜鉛含有量は 18.54%(乾燥重量ベース)、スラ

ッジの発生量は約 7.5 トン/月。バレル専用ラインでは、繁忙期で 10 ト

ン/dayの部品にめっきを行う。亜鉛インゴットの使用量は、9月4,300 kg、

10 月 5,000 kg、11 月 5,300 kg。亜鉛めっきスラッジは 990 バーツ/トン

(2465 円/トン)の処理量を支払い、埋め立て処理をしている。スラッジの

埋め立て処理場は現在二箇所ある、一箇所はサケーオ県(トヨタの工場)

の近くであり、もう一箇所はチョンブリ県。輸送費は 1 回あたり 4,000

~5,000 バーツ(9960-12450 円)で月に 1 回の処分、1 回あたり約 14 トン

を輸送している。収集運搬業者は、Niks Recying And Export、

Kittikornwaste sales の 2 社。

・ ニッケル、銅、クロムめっき工場から出てくる廃水スラッジ中の銅・ニ

ッケルの含有量は 3、4 割を下回る。スラッジの排出量は、ウェットで 80

トン/月(クロム、ニッケル合算値)。スラッジの含水率は約 60%であり、

これをフィルタープレスして、フレコンに入れて持ち出し、工場外のコ

ンテナに集めている。べター・ワールド・グリーンのスラッジの回収費

用はトラック 1 台幾らというカウントになっており、回収費用は 35,000

~40,000 バーツ(87000-100000 円)/1 台(10 トン)、価格は 1 年に 1 回

更新される。現在は値上がりしており約 70,000 バーツ(175000)/1 台(10

トン)である。今年からは、Kitty Environments 社に 1 バーツ/kg(2.5

円/kg)の価格でスラッジを売却している。

62

・ 亜鉛の消費量が多いのはボルトメーカーでの亜鉛めっき。ボルト専業メ

ーカーとしては浅川製作所 、メイラ、青山製作所、佐賀鉄工所がある。

その他に亜鉛めっきを行っている企業としては、サーテックカリヤ、

K.P.S. Plating Co., Ltd.、アスノホリエタイランドがある。

③ エッチング廃液スラッジの発生、処理状況について

・ エッチング廃液に含まれる銅は全て社内リサイクルをしている。廃液を

処理して酸化銅に加工して工程にもどしており、外部には出て行ってい

ない。エッチング廃液スラッジの発生量は約 100 トン/月。外部に処理を

委託する場合の処理料金は、銅の市場価格によって変動はするが、工場

渡し(運賃先方負担)で 0.3 バーツ/kg(0.75 円/kg)で松田産業タイラン

ドに売却。銅の市場によっては引き取りが断られ、埋め立て処理に回す

こともある。廃液スラッジの処理場所はタイに 3 箇所ある。

・ タイ国内で基板のエッチングを行っている企業には、DRACO PCB PUBLIC

CO., LTD.、KCE エレクトロニクス、キョウデン、がある。これらの中で

も CMKT の工場規模は大きい。

④ その他、亜鉛、銅を含む廃棄物について

・ 銅が含まれる廃棄物(有価物)としては、めっき製品の NC 旋盤くずもあ

る。粉塵の量が多いため結構な量が出てくる(月にフレコンバッグ 1 袋

分、約 1 トン)。輸送量は 1 回あたりフレコンバック 1 袋(1 トン)で、

輸送費用は 5,000 バーツ(12450 円)で THAI SATO PROFESSIONAL CO., LTD

に運搬を委託している。

・ ニッケル、銅、クロムめっき工場からは、めっきした製品の加工による

ダストも発生する。これまでのダストの処理は、樹脂を燃やしてダスト

から金属(銅・ニッケル)を回収し、この金属を日本に持って帰ってス

テンレスの原料として使用していた。工場から出るニッケル、銅の金属

パウダーは 2 ヶ月で約 10 トンである。以前はこれを日本に輸出していた

が、タイにおいてダイオキシン規制がはじまったことから、タイ国内で

燃焼処理をして金属を輸出することが出来なくなっており、現在は外部

のリサイクル処理にまわしている。

・ 新しくできる CGL ライン(連続亜鉛めっきライン)から、亜鉛鋼板の新

断ちが多量に出てくる。自動車の内板材、外板材にはほとんどものに亜

鉛めっきがされている(約 1.5 wt%)。

⑤ E-waste について

・ E-waste については今後どれだけ出てくるかも分からないところ。家電リ

63

サイクル法についてタイ政府が描いている青写真では処理費がずいぶん

安く設定されている。処理体制に必要な数字を工業省はつかんでいない

ようである。

・ グレードの低い基板についても回収の引き合いがあるが、基板収集のコ

ストが高く、どれだけかき集められるかに課題がある。廃基板の処理は

タイ国内で行う方がの望ましい。タイ国外に輸出する場合、書類審査だ

けで時間がかかってしまう。

・ 家電リサイクルの対象は CRT になるのでガラスの処理は問題になる。ま

た、車のガラスは産業廃棄物になっている。これは、ガラス上のフィル

ムが上手く取れないためである。

・ 乾電池の分別は行っていない模様。タイでは廃電池の行き先がないため、

電池の処理が課題となっている。電池も古物取り扱いで、中古品として

買えば危険物に当らない。

⑥ スラグの受け入れ及びバインダーの調達について

・ Siam Cement は MF 炉のスラグは、セメント原材料として使用できると見

ている。サンプル分析を行い、成分調整の必要性及び買い取り価格の検

討を行うとのこと。

・ MF 炉で使用するバインダーについて、Siam Cement Paper で製造してい

るバインダーは Na を含有するものが乾燥重量で 1 万トン/年発生してい

る。現在はこれををボイラー燃料として利用しており外部へ販売してい

ない。

・ バインダーが発生するグループ会社の工場は、Phoenix Pulp & Paper

Public Company Limited(コンケ-ン県)、Siam Cellulose Co., Ltd.

(カンチャナブリー県)、The Siam Pulp and Paper Public Company

Limited(ラッブリー県)である。

・ Siam Cement から、タイでの MF 炉建設に対する三井の出資の考え方(三

井単独での出資か JV の形態を考えているのか)についての質問あり。

⑦ 工場立地について

・ 新しい工場建設をする際は、地域住民との問題が生じる。環境影響評価

(EIA:Environmental Impact Assessment)、健康影響評価(HIA:Health

Impact Assessment)を取得するのに必要な年数は約 3 年。地域住民の反

対を受けて EIA、HIA の取得ができず、プロジェクトが潰されることが多

い。操業していない企業を許可証ごと買い取ってしまったほうが工場建

設に係るトータルコストは安くなる。

・ IEAT は三井金属がタイにおいて投資をすることに対しては歓迎している。

64

プラントをどこに立地すべきかの検討については IEAT が支援する。だた

し、海のそばの立地は難しく、海から 100 km 程度のロケーションではま

だ可能。10 万 m2の土地が余っていること、101 の工場の立地が可能なこ

と、工業団地の EIA 枠(大気汚染物質の総量規制)を持っておりその枠

がまだ余っているところ。これらの条件を満たす工業団地としてはラヨ

ーン県の Amata City と Eastern Seaboard Rayong、Hemaraj Eastern

Seaboard であろう。

・ これらの工業団地については EIA については問題ないと思われる。気を

つけるべきは CO2の排出枠である。各工業団地には CO2の排出枠が決まっ

ており、この枠に余裕があるかどうかについて確認する必要がある。そ

の他に注意すべき点としては NOx、SOxの排出量、排水中の塩素濃度、取

水の制限がある。また、燃料の輸送方法についても、DIW、IEAT に提出す

る必要がある。

⑧ タイ政府機関での企業選定について

・ ISIT が会社を選定するのではなく、ISIT が作成したレポートを見て DIW

が判断することになる。重視するのは環境面である。廃棄物をどの程度

処理できるか、環境への影響はどうか、プラントから出る排水、空気に

対する環境影響はどうであるかという点である。

・ 企業を選定する委員会は BOI 内に設置されている。BOI 内には中位委員会

とその上に上位委員会がある。上位委員会のトップは首相であり、FTI

鉄鋼産業クラブ会長も委員の一人である。ISIT はこの委員会の事務局で

あり、三井金属にはこの委員会での議論の内容はお伝えすることができ

る。

・ 企業選定のプロセスとしては、三井金属が BOI の中位委員会に申請を行

い、中位委員会は技術的な意見を DIW、ISIT に求め、これを受けて企業

を選定する。選定の結果が上位委員会に諮られ承認される。7.5 億バーツ

(18.7 億円)以上の案件に関しては上位委員会にあげる決まりとなって

いる。

上位委員会上位委員会

中位委員会中位委員会 DIW・DPIMDIW・DPIM

ISITISIT

申請者申請者

承認

企業選定

申請

レポート提出

情報提供

技術的な意見を求める

レポート提出

BOI

65

・ ISIT がレポートを提出した後、委員会が開催される。本来はもっと早く

開催される予定であったが遅れている。12 月中での委員会の開催はない

であろう。1 月初旬に委員会を開催し、ISIT から提出したレポートに対

してコメントをもらう予定である。1 月中には答えを出せると思う。

・ IAEA からの委員はいないが、別途意見を聞かなければならないと考えて

いる。工業団地に建設する場合は IEAT に意見を聞かなければならない。

既に、IEAT のスタッフを呼んで話を聞いているところである。

・ 三井金属に対して心配しているのは、事業への参入が も遅かったとい

うこと。参入の遅れをどうカバーするか。三井金属のポリシーにもよる

のであるが、ひとつアドバイスとしては、三井金属が単独で投資をする

のか、タイ国内のパートナーを見つけるのかによっても異なる。

66

4. 第4回現地調査

日程 2012年1月16日(月)~1月21日(土)

参加者 三井金属鉱業/横本、山本

MURC/佐々木、大澤

① マレーシアにおける電炉ダストの発生、処理状況について

・ マレーシアにおける鉄鋼生産量はタイと遜色ないか、それ以上のものが

あるが、還元鉄を電炉に投入している電炉事業者が一部に存在している

ため、亜鉛を高品位で含む電炉ダストの発生はマレーシア西海岸部に立

地する電炉に限られる(こちらで発生する電炉ダストの亜鉛品位は 25~

40%)。

・ マレーシア国内で発生した電炉ダストについては、原則として政府が許

認可を与えている埋立事業者(クオリティ・アラム:Kualiti Alam Sdn.

Bhd.)に外注して処理することとなっているが、処理費用が高いために

政府の特性措置として工場敷地内での「保管(実質的な敷地内の埋立処

分)」を認めている状況。また、一部の電炉事業者は回収および処理の

許可を有するリサイクル事業者(マレーシア国内に1社のみとのこと:

今回訪問した IOP Specialists Sdn. Bhd)が無料で引き渡しており(運

搬費用などはリサイクル事業者が負担)、これらは混合するなどして亜

鉛品位を 20%以上に調整した上で、中国に有価で売却されている状況で

ある(標準的なもので、90 ドル/トン(7023 円/トン)(上海 CIF の場合)。

・ マレーシア政府としては、電炉ダストリサイクルの事業を歓迎はしてい

るが、マレーシア国内で発生した電炉ダストの処理については、原則国

内での完結することや、また国外からの持込などを厳しく取り締まろう

という姿勢である。

② SCI Eco との事業連携可能性について

・ JV の投資については SCI-Eco(サイアムセメントグループの関連会社、

原料購買、廃棄物リサイクルを手掛ける)が主体的となって取り組んで

も良いという強い関心表明が得られた。

・ タイにおける MF 炉事業の採算性を改善するための事項として、SCI Eco

が取り扱っている廃油の低コスト融通や、SCG で調達する石炭や珪石との

一括調達が可能であるとの提案が得られている。

・ MF 炉で発生する鉄スラグについては、SCG での受け入れに際して特に大

きな問題はないだろうとの回答が得られている。ただし、磨砕させる必

要があるため、硬度について引き続きの確認が必要であるほか、実機ベ

ースで処理を行った場合の検証についても今後の課題であることが指摘

67

されている。

③ 投資委員会(BOI)申請について

・ 1月内を目処にタイ国内における電炉ダストリサイクル事業のあり方を

検討する投資委員会が開催される見込みであり、一般公募とするのか、

もしくは相応しい技術を1つ選んでの指名とするのかが決定される見込

みである。その投資委員会では、MF 炉に関する技術評価がなされたレポ

ートが提出される予定ではあるが、仮に1社指名となった場合にまだ BOI

申請を行っていない企業の技術を指定することの難しさがタイ政府関係

者複数方面より得られている(すでに Zincox、Global Steel Dust、Befesa

は BOI 申請を済ませている)。

・ 投資委員会(BOI)、工場局(DIW)いずれも速やかな BOI 申請を促す内

容のコメントが相次いでいる。立地場所などについては税制恩典などの

適用を検討する上である程度の具体化を図っておく必要があるが、それ

以外についても後日の変更も可能であるとの回答が BOI から得られてい

る。

・ SCG との連携については、タイ国内の有力企業であることから、各方面で

色々なメリットを享受できるだろうとの評価が得られている(特に工場

立地など)。

・ リサイクル産業(工場コード:106)として申請する際には、政府が誘致

促進を行っている各地の工業団地での立地が前提になるとの指摘があっ

た。

68

V-2. 現地企業の概要(本調査関連)

1. 政府関連

企業・団体 概要

Department of Industrial Works

(DIW:工場局)

DIWは工業省傘下の政府一部門であり、タイ国内

に立地する工場の安全面および環境面などでの

管理及び法令順守状況を監視。(工業団地以外

の)工場設置に関する許認可やバーゼル条約手

続等を担当。

URL:www.diw.go.th

Department of Primary Industry

and Mines (DPIM:一次産業及び鉱

業局)

DPIM は工業省傘下の政府一部門であり、物流な

ども含めた鉱業全般について管理監督を行って

いる。製錬・リサイクル産業をカバーしている。

URL:www.dpim.go.th

Pollution Control Department(汚

染管理局)

科学技術環境省傘下の政府一部門であり、タイ

国内の環境保全を促進するための部署として

1992年に設立。

URL:www.pcd.go.th

Board of Investment(BOI:投資

委員会)

BOIはタイへの投資促進を目的として1977年に

設立された投資委員会であり、首相が委員長、

主要経済閣僚がメンバーとなっている。タイ経

済の発展に寄与する投資プロジェクトに対して

広く資金面や制度面での特典や保護を与えるた

めの審査などを行っている。

URL:www.boi.go.th

Industrial Estate Authority of

Thailand(IEAT:タイ工業団地公

社)

IEATは、工業省管轄の工業団地公社であり、BOI

同様に投資奨励恩典を与える権限を「タイ国工

業団地公社法」に基づいて付与されている(工

業団地内に限る)。IEATが管轄する工業団地に

入居すると、BOIによる認可取得の有無に関係な

く、入居企業はIEATからの恩典を享受可能。

URL:www.ieat.go.th

69

2. 業界団体・大学

企業・団体 概要

The Iron and Steel Institute of

Thailand (ISIT:タイ鉄鋼協会)

ISITは2000年11月に設立された工業省傘下の

独立機関。タイの鉄鋼産業の発達に取り組む。

URL:www.isit.or.th

The Federation of Thai

Industries (FTI:タイ工業連盟)

タイ国内の民間企業によって組織、運営されて

いる業界団体。39種の業種別部会が運営されて

いる。前身は1967年に創設されたタイ工業協会。

URL:www.fti.or.th

King Mongkut's University of

Technology North

Bangkok/National Metal and

Materials Technology Centre(モ

ンクット王工科大学・国立金属資源

研究センター)

金属や各種機能材料等に関係する技術分野を中

心に研究を行っている研究センターである。政

府からの委託により、危険廃棄物の発生状況や

リサイクル状況に関する調査なども手がけてい

る。

Chulalongkorn

University/Center of Excellence

on Hazardous Substance

Management(チュラロンコーン大

学・危険廃棄物管理センター)

1999年に開設された危険廃棄物管理と環境問題

を中心に取り扱う王立チュラロンコーン大学内

の研究センターである。EHWM( Center of

Excellence on Hazardous Waste Management)

と同様の研究開発を行っている

URL:www.ehwm.chula.ac.th

3. 企業

企業・団体 概要

The Siam Cement Public Company

Limited(SCG:サイアム・セメン

ト社)

SCG(サイアム・セメント・グループ)はタイで

五指に入る大企業のひとつであり(王族関係者

による経営)、セメント、化学、製紙、建材生

産、流通ビジネス等を事業の柱としている。

URL:www.scg.co.th

SCI Eco Service(SCIエコサービ

ス社)

SCIエコサービス社は、1994年に設立されたSCG

の関連会社であり、SCGの原料購買や廃棄物リサ

イクルなどを手がけている。タイ政府から

E-wasteリサイクル制度の相談を受けることな

どがある。

URL:www.scieco.co.th

Samchai Steel Industries Public

Company Limited(サムチャイスチ

ール社)

スチールパイプのタイ国内メーカー。

URL:www.samchaisteel.com

Thai Rayon Public Company

Limited(ラヨーン社)

1974年に設立された化学繊維メーカー。ビスコ

ースステープルファイバーではタイ国内におけ

るパイオニアとしての位置づけ。年産14万トン。

URL:www.thairayon.com

70

V-3. BOI 申請様式(邦文仮訳)

申請番号________/20_________

受付者______________

日付 ___/___/20__

タイ王国投資委員会

奨励申請書

投資申請件名:

日付:

1. 申請者:

1.1 氏名: 年齢: 国籍:

住所

電話: ファクス: E-mail:

会社/協同組合/財団 の代理人として

会社/協同組合/財団は、 □ 設立済み □ 未設立

1.2 この申請に関する事項について、コンタクト出来る代理人:

氏名:

住所:

電話: ファクス: E-mail:

1.3 会社/協同組合/財団が既に設立されている場合、その詳細を以下にご記入下さい。

登録番号:

登録日:

納税ID番号:

登録資本: バーツ, 払込資本: バーツ

保有株式 タイ人: パーセント 外国人: パーセント

外国人の保有株式:

国籍 , パーセント

国籍 , パーセント

国籍 , パーセント

国籍 , パーセント

一番 近の( 年 月 日付)貸借対照表における詳細

資産 バーツ 負債 バーツ

自己資本 バーツ

71

会社/協同組合/財団 の事務所の住所:

町: 郡:

県: 郵便番号:

電話: ファクス:

E-mail: ウェブサイト:

1.4 1.3に記載された、登録資本金の10%以上を保有する株主のリスト。保有数

の大きい者から順にお書き下さい)

株主の氏名 国籍 住所/電話番号/ファクス番号

/Eメール 持ち株比率

2. 資金調達:

2.1当該プロジェクトの実施にあたって: (単位:1,000バーツ)

会社/協同組合/財団は、登録資本金を増額しない

会社/協同組合/財団の登録資本を バーツ増額する

設立される会社/協同組合/財団は バーツの登録資本を有する。

当該プロジェクトの資金調達先:

払込資本金:

社内留保:

タイ国内での借入金:

外国からの借入金:

外国仕入れ先からの信用:

タイ国内の仕入れ先からの信用:

合計:

72

2.2 2.1に記載された会社/協同組合/財団の登録資本金:

株式の数: 株、 一株あたり バーツ

タイ人株主の持ち株: %、 外国人株主の持ち株: %

登録資本金の10%以上を保有する株主のリスト。(保有数の大きい者から順にお

書き下さい)

株主/共同投資家

の氏名 国籍

住所/電話番号/ファクス番号

/Eメール 持ち株比率

2.3 ローン及びクレジットの調達先:

借り入れ先の名前 金額(1,000バーツ) 通貨 貸付を受けた国

2.3.1 金融機関

2.3.2 親会社、及

び/又は、子会社

注) 使用された為替レートをお書き下さい。

3. 投資

3.1 当該プロジェクトの予定投資額(1,000バーツ)

1) 建設費

2) 機械費

3) 設置費

4) 試運転費

5) 操業前費用

6) その他資産

合計

7) 土地代

8) 技術料

9) 運転資金

総合計

73

3.2 工場の所在地/ 事業所の場所

工業団地/工業地域名:

町: 郡:

県: 郵便番号: 敷地面積: ライ

電話: ファクス: E-mail:

4. プロジェクトの詳細

4.1 生産能力

製品 及び 副産物

(生じる場合) 年間 大生産能力1 数量単位

稼動時間数

( 時間/ 日、 日/ 年)

注1) 4.4の機械の 大生産能力と、上記の稼働時間数により計算

4.2 初3年間の生産計画

1年目 2年目 3年目 製品 及び 副産物

(生じる場合) 数量単位

数量 数量 数量

4.3 生産工程

各工程で使用される機械を明確にして下さい。

(以下の表に書ききれない場合は、生産工程を示すチャートを別途添付して下さい)

生産工程 主な使用機械

生産機械 主な使用機械

74

4.4 生産工程(4.3)に示された主な機械及び他の使用機械

輸入機械 国内購入

新規購入 中古 新規購入 機種名 生産国

量 金額 量 製造年 金額 量 金額

注1) 輸入機械についてはCIF価格を、タイ国内購入機械については契約価格

を用いて下さい。

注2) 製造後10年以上経過した中古機械を輸入する場合、指定の予備フォーム(F

PA PP 16)をご提出下さい。

4.5 使用目的やハーモナイズド・コード(HS)等含む製品の詳細

(写真、イラストまたはカタログを添付して下さい。)

4.6 環境保護計画

廃棄物の種類 年間廃棄量 処理方法

固形廃棄物

液体廃棄物

粉塵・大気汚染

□ 環境影響評価(EIA)の認可取得を必要とする案件

□ ISO14000規格を取得済みの既存案件の拡大

注) 業種1.5.2、1.6、1.9、1.10、1.11、1.12、1.14、

1.15、1.16、1.26、2.15(アスベストを使用する場合)、3.1(工

程に漂白や染色を含む場合)、4.11、5.3.2、6.1、6.2、6.5、6.

7、6.10、6.11(工業団地内の案件、環境影響評価(EIA)の取得を必要

とする案件、ISO14000規格取得済みの案件拡大を除いて)に該当する場合、初期環

境影響評価フォーム(F PA PP 15)をご記入の上、添付して下さい。

75

4.7 会社/協同組合/財団が既に操業している場合、過去3年間の生産能力と奨励事業

と非奨励事業の操業状況を述べて下さい。

(労働時間 時間/日、 日/年)

(金額の単位:1,000バーツ)

国内販売 輸出 製品 年

年間 大

能力

現在の生

産 量 金額 量 金額

4.8 過去3年間の雇用者と純利益

雇用者 年

タイ人従業員の数 外国人従業員の数

純利益(損失)

(単位:バーツ)

日現在

76

5. 原材料及び必要資材:

(単位:1,000バーツ)

1年目 2年目 3年目

輸入品 タイ国産品 輸入品 タイ国産品 輸入品 タイ国産品

品目

量 金額 量 金額 量 金額 量 金額 量 金額 量 金額

1. 数量単位

2. 数量単位

3. 数量単位

4. 数量単位

5. 数量単位

6. 数量単位

7. 数量単位

8. 数量単位

9. 数量単位

10. 数量単位

合計

77

6. 人員計画

当該プロジェクトのフル稼働時における雇用計画:

タイ人 外国人 役職

数 数 国籍 経営幹部

専門技術職員

監督職員

事務職員

技術者

非技術者

合計

7. 市場

7.1 市場計画

国内市場 % (全販売高に占める割合)

□ 間接輸出を導入

輸出 % (全販売高に占める割合)

7.2 主要な顧客

名前 国

1.

2.

3.

4.

5.

78

8. コストおよび利益:

8.1 初3年間の製造コスト及び利益の見積り

(単位: 1,000バーツ)

項目 1年目 2年目 3年目

原材料及び必要資材費

国産品

輸入品

人件費:

タイ人

外国人

公共料金1)

減価償却費2)

販売・管理費

事務所減価償却費

利子

国内分

外国分

技術料・ロイヤルティー

国内分

海外借入分

その他の費用

合計

利益(損失)

注1) 例:水道、電気、電話等の料金

注2) 減価償却費の計算は、歳入法に従うこと。

8.2 ユニット当たりの工場出荷価格及び利益 (操業3年目の時点で計算して下さい)

(単位:バーツ)

製品

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工場出荷価格 必要原材料費 公共料金 その他の経費 利益

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9. 追加恩典要請:

( ア ) S T I 投 資 奨 励 策 : 「 技 能 、 技 術 及 び イ ノ ベ ー シ ョ ン ( Skill,

Technology&Innovation-STI)を促進する投資奨励政策に沿った権利恩典付与の

奨励特典申請書」(F PA PP 14)を添付して下さい。

(イ) ハードディスクドライブ(HDD)振興策:ハードディスクドライブ(HDD)

製造業を促進する投資奨励政策に沿った権利恩典付与の奨励特典申請書」(F PA

PP18)を添付して下さい。

(ウ) 中小企業奨励策:タイの中小企業を促進する投資奨励政策に沿った権利恩典付与

の奨励特典申請書」(F PA PP 17)を添付して下さい。

10. BOI担当官との面談のご希望日時をご記入下さい。

申請面談の希望日時 環境面談の希望日時

年月日 時間 または 年月日 (金曜日のみ)

時間 または

年月日 時間 または 年月日 (金曜日のみ)

時間 または

年月日 時間 または 年月日 (金曜日のみ)

時間

訳注)環境面談は、4.6 で初期環境影響評価フォーム(F PA PP 15)の提出が求めら

れている特定業種のみ該当します。

私は、ここに記載された情報は、真実かつ正確であり,ここにあげられている見積り

は私の意見では, も妥当なものであることを、断言致します。

代表者 申請者

署名: 署名:

( ) ( )

日付: 日付:

注) 会社/協同組合/財団 が設立されている場合は、会社の代表者の署名と社印の捺

印が必要です。

訳注) 署名の下欄 ( )内には、ブロック体(ローマ字)で、署名者のフルネームを

お書き下さい。

平成23年度

「アジアにおけるリサイクルビジネス展開可能性調査事業」

電炉ダスト等からのベースメタルリサイクル事業化可能性調査

報告書

平成24年2月

発行: 経済産業省産業技術環境局リサイクル推進課

委託先: 三井金属鉱業株式会社 (本件に関するお問い合わせ先)

三井金属鉱業株式会社 金属・資源事業本部 企画部 担当:山本

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