送信管やテレビ用水平出力管をオーディオ用に使う …...tp4.5 僅 風 肝...

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送信管やテレビ用水平出力管をオーディオ用に使うと き,筆者推奨の4DC方式(ダブルグリッドデュアル 入力,ダイレクト,ダイナミックカップルドの略)に よる全段直結シングルパワーアンプ4DC方式は第 1グリッド(Gl)と第2グリッド(G2)に分割して,Gl の損失が定格を超えないようにしながら,GlとG2に 同時に信号を入力する特殊3結方式で その特徴など を再解説する.特性は音質を確認しながら,分割抵抗 のみとコンデンサーを入れた場合の4DC方式の基本回 路によるデータも比較して,使用回路を決定した. はじめに 真空管マニュアルに掲載されて いるテレビ用の水平出力管や送信 管は それ本来の動作例や定格は あるものの,オーディオ用として の規格や動作例はありません.あ i\ ∴ 十∴ )移譲 (\、, ,&//憩源一/ 額装 言∴ 国書 ∴こ∴一 撃襲 宴遷 /,///「_/.説.” ∴∴一 ∴一 一一一∴ ∴ 二三 //・∴生田∴// ったとしても送信管における変調 用B級動作例程度です. オーディオ用の出力管が再生産 されている境南 何も好んで使い 方の難しい,それらの真空管を使 用しなくてもよいではないか,と いった考え方もありますが S 匂‾=‾8.5V を 2三150V l gl S i I i I 2 ii 8 S” ー10 S i S OV ー15 0 -20 225 -25 -30 -40 100 200 300 400 500 匂(Ⅵ (a)6DQ68:匂lをパラメーターとしたときの局弓特性 [図1]水平出力酋6DQ6Bを例にした4DC回路動作 2014/4 61 平出力管や送信管は 並外れた定 格を有していて,うまく使いこな せば素晴らしい特性と音質を持つ, 従来の回路では得がたいオーディ オアンプを製作できる可能性があ ります. したがって,何とかこれらの特 k i 60 -1 20 6 2 =菓 i l i l l 2 2= i I25 ln S ,“ 100 00 1∴ tl 7 S 1,001 12 50 ’1-l_ i‾ S 「「”hll・ー:一十_ 0 100 200 300 400 500 匂Ⅳ〕 (b)6DQ68:匂2をパラメーターとしたときの五一も特性 島l‘二島2 \馴 12 i こ こ= G +G 10 7. 5 5 2、5 0 -2、 200 400 600 800 1000 1200 年〔Ⅵ (c)EL152:Glと62を結んだ特朔徳での烏-L特性

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Page 1: 送信管やテレビ用水平出力管をオーディオ用に使う …...TP4.5 僅 風 肝 彊8I3mAヒュO.3ーAズ禁 忌′赤 15博i OW ー132V 一日 ワンホ シヤシ

送信管やテレビ用水平出力管をオーディオ用に使うと

き,筆者推奨の4DC方式(ダブルグリッドデュアル

入力,ダイレクト,ダイナミックカップルドの略)に

よる全段直結シングルパワーアンプ4DC方式は第

1グリッド(Gl)と第2グリッド(G2)に分割して,Gl

の損失が定格を超えないようにしながら,GlとG2に

同時に信号を入力する特殊3結方式で その特徴など

を再解説する.特性は音質を確認しながら,分割抵抗

のみとコンデンサーを入れた場合の4DC方式の基本回

路によるデータも比較して,使用回路を決定した.

はじめに

真空管マニュアルに掲載されて

いるテレビ用の水平出力管や送信

管は それ本来の動作例や定格は

あるものの,オーディオ用として

の規格や動作例はありません.あ

凝 窒  i\∴ 十∴

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二 三 //・ ∴生 田 ∴ // /

ったとしても送信管における変調

用B級動作例程度です.

オーディオ用の出力管が再生産

されている境南 何も好んで使い

方の難しい,それらの真空管を使

用しなくてもよいではないか,と

いった考え方もありますが 水

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100   200   300   400   500

匂(Ⅵ(a)6DQ68:匂lをパラメーターとしたときの局弓特性

[図1]水平出力酋6DQ6Bを例にした4DC回路動作

2014/4 61

平出力管や送信管は 並外れた定

格を有していて,うまく使いこな

せば素晴らしい特性と音質を持つ,

従来の回路では得がたいオーディ

オアンプを製作できる可能性があ

ります.

したがって,何とかこれらの特

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200   400   600   800  1000 12001300年〔Ⅵ

(c)EL152:Glと62を結んだ特朔徳での烏-L特性

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4D32シングルパワーアンプ

LCh入力

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 470㌦+ 25V-

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[図3]4D32シングルパワーアンプの回路図と真空管ピン接続

れていて,その中にGlと俄を結

んだ与p一五特性図がありまし

た 図1(C)にその特性を示します.

各曲線がきれいに並んでいて,見

るからに低歪率のアンプができそ

うに見えます・ただしklによる

制限があるためか.星1とEg2を

結んだとま +15Vまでしか表示

されていません いくら送信管と

いえども,定格を超えて使用する

ことはできないと考えます.した

がって,何らかの形でGlの定格

に適合した動作をさせる必要があ

ります.

以上を踏まえた上で4DC方式

の説明をします.

‘DQeBはテレビの水平出力管

で 送信管とは異なり,Glに関

する定格(ちおよび星)は示され

ていません,すなわちGlは必ず

負電圧で使用することが前提で

最大でも0Vまでが動作条件にな

2014/4

ります.その条件を満足させるた

めには 抵抗で分割するかツェナ

ーダイオードで分割して,Glを

負側に引き込み,常にGlが負電

位にあるようにすればよいと考え

ます.

そこでドライブにカソードフォ

ロワーを使用して実験してみまし

た それが図2に示す特性図です.

1997年9月号では その他の真

空管も測定して掲載しましたので

その号をお持ちの方は見てくださ

い.

総じていえるのは,図下の(1)

から(3)に示したような特徴で

す.この中で特に強調したいこと

は,軸2と耳glの分割比で シン

グルアンプで低歪率特性にするた

めには 適正な分割比率が存在す

ることです.却1をあまり下げる

と,図1(a)に示す互1の特性が

強調されて,Pp一五特性がきれ

いではなくなり,歪率が増加して

しまいます.

このデータはマニュアルにはあ

りませんので 設計の際 各自が

実験して決定すべきところでしょ

う.

簡単ですが 以上で4DC回路

の説明は終わりにして.今回はこ

の回路方式を使用した,dD32シ

ングルパワーアンプを紹介します.

4D32シングルアンプは1993

年3月号で一度紹介しましたが

そのときは自己バイアスで使用し

ました 今回は電源トランスの

関係もあり,固定バイアスで使用

することにします.また 現状で

入手できるパーツで製作したので

追試に苦労することばないはずで

す.

回路設計

本機の回路を図3に示します.

63

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[写真11]方形波応答波形(LCh,f=100Hz,FiL=80,出力1V,mS,上:入力下:出力)

[写真141方形波応答波形(L-Ch,f=10kHz,負荷オープン,上:人丸下:出力)

[写真12]方形波応答波形(L-Ch.f=1kHz,RL=

8【).出力1Vrms,上:入力,下:出力)

[写真151方形波応答波形(Lch.f=10kHz,80の抵抗に0.47uFの容量を並列接続,上:入九下:出力)

[写真17]出力1W時の歪みの内容(L-ch,f=1kHz,上:入力中:出力下:歪率計からの出力)

な乱れを生じるものですが 本機

の応答波形にはほとんど変化はな

く.安定したアンプに仕上がった

と考えます.

写真15は8偶の負荷に0.47Iげ

の容量を並列接続したときの応答

波形です.オーバーシュートはわ

ずかなので 発振に対する心配は

ない波形です.

写真16は0.471lFのみを負荷

したときの応答波形です.オーバ

ーオールの負帰還はかけず カソ

70

[写真13]方形波応答波形(L-Ch,f=10kHz,RL=80.出力1Vrms,上:入力,下:出力)

[写真161方形波応答波形(L-Ch,f=10kHz,負荷は0.47uFのみ,上:入力.下:出力)

[写真18]最大出力時の出力波形および歪車計からの出力波形(L-ch,f=1kHz.上:入力,中:出力下:歪牽計からの出力)

ード負帰還のみで仕上げたことに

よるものか,出力トランスの特性

がよいのか.リンキングはわずか

しか発生しませんでした したが

って,アンプ自体の安定度は高く

安心してシステムに投入できるア

ンプに仕上がったと思います.

写真17は出力lW時のサイン

波応答波形と,歪率計からの出力

波形です.下段に示す歪率計から

の出力波形は,歪みの内容がほぼ

2次歪みであることを表していま

す.

写真18は最大出力時のサイン

波応答波形です.このときカット

オフ波形の先端に小さなコプがで

きることが特徴です.それ以上の

出力では サイン波の上下が徐々

に削られる形になります.

一番下に示す波形は歪率計から

の出力で 2次歪みのほかにその

ほかの高調波が加わっていること

を表しています.

試 聴

最初は図4(b)で聴いてみまし

たが 多少高域での表現力が不足

するというか.低域のエネ)レキー

感が強すぎて,バランスが崩れた

感じがしました.

実験はしていませんが 小口径

のスピーカーを使用する場合には,

(b)のほうがかえってバランスが

取れ 豊かな低音を聴くことがで

きるかもしれません.

次に図4(a)に示す回路で試聴

してみました.全体のエネルギ

ーバランスはよくなり.広がり感

と奥行き感が改善されたようです.

(b)で試聴したときより解像度が

向上して,ベースのほじける感じ

また太鼓の皮の張り方がよくわか

りますし.ピアノのアタックと艶

もよく表現できていると思います.

したがって.本機は図4(a)

に示す分割抵抗のみで構成した

4DC回路で 最終的に完成させ

ました

今後さらに.オーディオ用の

ヴィンテージ真空管は少なくなり,

価格も高騰していくものと思いま

す.そこで 今まで見過ごされて

きた送信管やテレビ用の水平・垂

直出力管をうまく利用して,それ

らに適した回路でアンプの製作を

行い,紹介していけたらと考えて

います.

MJ

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田 園 E i 量 り 1宣 W    製作嗣 脚 ぺ_ジより

オーディオ用出力管にテレビ用の水平・垂直出力管や送信管を使った

とき その特徴を生かす4DC回路方式シングルパワーアンプの製作.

20年ほど前に一度.自己バイアスでの4D 32シングルア

  ンプを発表したが 今回は使用電源トランスの関係で

・測 憾 固定バイアスとしたiカソ‾ドフォロワ‾のドライ脚臆雌 プ段6S4A にはゲインがなく.出力管4D32が必

1.-、 1- 要とする入力電圧はすべて初段6EJ7で稼い醗握 土塁二三_1、碧 ∴二、1’べ一二三二‾‾\一  二一一」 でいる.カソード負帰還のみで オーバーオー

i‾‾一 二二‾‾‾‾  脳鋒1品“    ルの負帰還はかけずに最大出力12W を得た.

圏回書図          \iSE=ノ  全段直結の単純回路で 現用のパーツを使用

iiに二二円ii\il               することにより追試が容易.

固定バイアスによる4 D C 方式で最大出力12W

4 D 3 2 シ ン グ ル I t ワ 臆 ア ン プ 麿 S業um

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出力管ソケット周辺の配線.固定バイアスなので 出力管を保護する0.2A

ヒューズホルダーを設けた

内部の広いシャシーを使用した

上.全段直結なのでパーツも少

なく.ラグ端子板の使用によって

内部配線は余裕もって楽に行える.リード線などは結束によりき

れいに配線されている

苧iiii グir

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:∴∴ 「 ∴∵   :

L:‾i 三 軍

←-運 に二二  一コ

初段およびドライブ段は,ここでは実験のためにlL6Pラグ端子板を使っているが使用するパーツ

が少ないので実際にはlL4Pでもかまわない

MJ