体外診断用医薬品 ベンタナ optiview pd-l1 sp )検査ガイド 肺癌編 ·...

40
体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L 1 SP142 )検査ガイド 肺癌編

Upload: others

Post on 03-Jul-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

体外診断用医薬品

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド~ 肺癌編 ~

Page 2: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

はじめに 2

Ⅰ. 製品概要 3

Ⅱ. 試薬の準備(試薬の登録・バッファーの充填) 5

Ⅲ. 機器の定期メンテナンス 5

Ⅳ. 検体処理(検体採取~包埋) 5

検体処理の条件と染色に与える影響 6

Ⅴ. 検体スライドの作製(薄切~染色前処理) 7

Ⅵ. 精度管理 8

Ⅶ.測定(操作)方法 8

Ⅷ.推奨プロトコール 9

検査フロー 10

スコアリングガイド 11

実際の染色例 13

腫瘍細胞(TC)染色 14

腫瘍浸潤免疫細胞(IC)染色 15

腫瘍細胞(TC)染色と腫瘍浸潤免疫細胞(IC)染色の鑑別 17

精度管理用コントロールスライドの評価 18

判定方法 19

凝集している腫瘍浸潤免疫細胞(IC)のスコアリング 20

分散している腫瘍浸潤免疫細胞(IC)のスコアリング 21

判定上の注意および間違いやすい症例 22

実際の症例 25

判定に注意が必要なケース 34

アーチファクト 38

参考文献 38

目次

1    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 3: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

はじめに

PD-L1(プログラム細胞死リガンド-1)は、別名B7-H1およびCD274とし

ても知られている、45-55kDaのⅠ型膜貫通タンパクです。PD-L1は、過剰

な免疫反応や正常細胞への攻撃を防ぐための、免疫抑制機構である免疫

チェックポイント分子の一つです。

PD-L1は活性化T細胞に発現しているPD-1(プログラム細胞死-1)や

B7.1といった受容体と結合することにより、活性化T細胞を不活性化し、

免疫応答を抑制に導きます1。PD-L1は抗原提示細胞(APC)などの免疫

細胞のみならず、腫瘍細胞にも発現し2, 3、腫瘍が免疫機構から逃れる

ための役割を果たしています1, 4。

そのため、PD-L1/PD-1が結合することを阻害することにより、腫瘍の

微小環境においてPD-L1の発現によって免疫反応が抑制された腫瘍特異

的なT細胞を再活性化することができ、抗腫瘍効果を発揮すると考えられ

ます。

■PD-L1 IHC検査ベンタナOptiView PD-L1(SP142)は、抗PD-L1(クローンSP142)

ウサギモノクローナル抗体およびベンタナ OptiView DAB ユニバーサル

キット、ベンタナ OptiView 増感試薬を用いて、組織・細胞中のプログラム

細胞死リガンド-1(PD-L1)タンパクを免疫組織化学的に検出します。

ロシュ・ダイアグノスティックス(株)では、自動染色装置であるベンタナ

ベンチマークULTRAやベンタナ ベンチマークGXなどで使用可能な全自動免疫組織化学染色(IHC)として、ベンタナ PD-L1

(SP142)RxDx(一次抗体)、ベンタナOptiView DAB ユニバーサルキットおよびベンタナ OptiView 増感試薬から成る“ベンタナ

OptiView PD-L1(SP142)”が体外診断用医薬品として承認されています。本品は、ホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)に

おいて組織・細胞中のPD-L1タンパクを検出することを目的としています。ベンタナOptiView PD-L1(SP142)により腫瘍細胞および

腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1タンパク発現の程度を確認することは、テセントリク ® (アテゾリズマブ)の効果予測に有用である

ことが臨床試験にて示されています。

本品の使用目的等については、ベンタナOptiView PD-L1(SP142)の添付文書を参照ください。

本誌は、ロシュ・ダイアグノスティックス(株)が提供するPD-L1 IHC検査を適正に実施していただくことを目的とし、検体の取り扱い、

染色操作、判定方法などの推奨法を示した検査ガイドです。

図1 PD-1、PD-L1経路アテゾリズマブはPD-L1に結合して、PD-L1がPD-1およびB7.1受容体と結合することを妨げる、Fc組換えヒト化モノクローナル抗体です。アテゾリズマブは、非グリコシル化IgG1カッパ免疫グロブリンであり、分子量は145 kDです。

腫瘍浸潤免疫細胞

腫瘍細胞

不活性T細胞

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    2

Page 4: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)はロシュ・ダイアグノスティックス(株)社製の自動染色装置であるベンチマークシリーズ用に 開発され、癌組織又は細胞中に発現するPD-L1タンパクの検出を目的とした検査キットです。詳細な使用目的については添付文書を参照してください。

Ⅰ. 製品概要

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142) 体外診断用医薬品製造販売承認番号:23000EZX00005000■キット構成 ※一次抗体と各検出キットの組み合わせ(別売り)で体外診断用医薬品として承認されています。●一次抗体ベンタナ PD-L1(SP142)RxDx  商品コード:518-114329構成試薬 成分 包装単位

一次抗体 抗PD-L1ウサギ モノクローナル抗体(SP142) 5 mL(50テスト)

●検出キットベンタナ OptiView DAB ユニバーサルキット  商品コード:518-111427構成試薬 成分 包装単位

インヒビター 過酸化水素 25 mL(250テスト)リンカー-HQ ヒドロキシキノキサリン標識抗ウサギIgGヤギポリクローナル抗体 25 mL(250テスト)マルチマー-HRP ペルオキシダーゼ標識抗ヒドロキシキノキサリンマウスモノクローナル抗体 25 mL(250テスト)DAB試薬 3,3’-ジアミノベンジジン 25 mL(250テスト)H2O2試薬 過酸化水素 25 mL(250テスト)COPPER試薬 硫酸銅 25 mL(250テスト)

ベンタナ OptiView 増感試薬  商品コード:518-113742構成試薬 成分 包装単位

増感用タイラマイド-HQ ヒドロキシキノキサリン標識タイラマイド 5 mL(50テスト)

増感用マルチマー-HRP ペルオキシダーゼ標識抗ヒドロキシキノキサリンマウスモノクローナル抗体 5 mL(50テスト)

増感用H2O2試薬 過酸化水素 5 mL(50テスト)

■適応機種●ベンタナ ベンチマークGX●ベンタナXTシステム ベンチマークXT●ベンタナ ベンチマークULTRA

3    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 5: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

■反応原理本品は、リンカーHQ(ブリッジ試薬)を使用した免疫組織化学染色法により、癌組織又は細胞中のPD-L1タンパクを検出します。

①スライド標本上の抗原に一次抗体を反応させると、組織切片上に存在する対象抗原と結合します。②次にベンタナ OptiView DAB ユニバーサルキットのヒドロキシキノキサリンで標識したリンカー-HQ及びペルオキシダーゼで標識 したマルチマー-HRPを反応させると、スライドガラス上に対象抗原-一次抗体-リンカー-HQ-マルチマー-HRP結合物が形成 されます。③この結合物に対して、ベンタナ OptiView 増感試薬の増感用タイラマイド-HQ及び増感用H2O2試薬を反応させると、ペルオキシダーゼの触媒作用によりタイラマイド化合物がラジカル化され、HRP近傍の組織中アミノ酸に結合します。④この結合物のヒドロキシキノキサリンに対して増感用マルチマー-HRPを反応させた後、ベンタナ OptiView DAB ユニバーサル キットのDAB試薬、H2O2試薬及びCOPPER試薬を添加すると、酵素反応により、組織中に存在する対象抗原が茶褐色に染色 されます。

茶褐色に可視化された抗原部位を光学顕微鏡で観察し、陽性・陰性の判定を行います。

■別途必要な器具および試薬等●バッファー類、補助試薬、バーコードラベル商品コード 製品名 包装単位

518-102982 EZバッファー 10X(ベンチマーク用) 2L

518-100599 または518-108922※

液体カバースリップHI 又は液体カバースリップ ULTRA※ 2L

518-103033 リアクションバッファー 10X 2L518-103002 または518-108939※

CC1バッファー 又はCC1バッファー ULTRA※ 2L

518-102319 ヘマトキシリン核染色試薬Ⅱ 250テスト518-100889 炭酸リチウム試薬 250テスト

518-111182 陰性コントロール ウサギモノクローナル抗体用 250テスト

518-103095 E-barラベルⅡ 1個(540枚)※ベンチマークULTRAの場合

●その他器具/試薬 掲載ページ

コーティングスライドガラス p.7 スライドガラスの準備

キシレン、アルコール(透徹用)

カバーガラス、封入剤

精製水又は脱イオン水

光学顕微鏡

精度管理用コントロールスライド p.8 自家製精度管理用コントロールスライド

HRP

HRP

HRP

HRP HRP

HRP

HRP

HRP HRP

HRP

HRP

HRP

HQ

HN HN

OH OH

OH

OH

HQ

HQ

HRP

HQ

HQ

H2O2

H2O2

H2O2

DAB

DAB

HRP

HQ

HRP

HQ

HRP

HQ

HRP

HQ

HRP

増感試薬タイラマイド-HQ

ベンタナ PD-L1(SP142)RxDx

OptiView DABマルチマー-HRP

増感試薬マルチマー-HRP

OptiView DABリンカー-HQ

組織組織中のアミノ酸

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    4

Page 6: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

Ⅱ. 試薬の準備(試薬の登録・バッファーの充填)

1. 初回使用時に試薬本体の外箱、またはラベルに付いている登録ボタンを、装置の登録ワンドで読み取り登録します。

2. 各キットはベンチマーク専用の試薬です。ディスペンサー試薬は開封時にシッピングキーを外し、希釈せずにそのまま使用します。 使用しない時はキャップをして冷蔵庫に保管してください。

3. EZバッファーおよびリアクションバッファーは精製水または脱イオン水で10倍希釈し、自動染色装置へ充填します。

4. 液体カバースリップ、CC1バッファーは希釈せず、そのまま自動染色装置へ充填します。

Ⅲ. 機器の定期メンテナンス

安定した染色性を維持するために、定期的に下記のメンテナンスを推奨しています。詳しくは自動染色装置の取扱説明書を参照してください。

●毎日 :機器の清掃●毎週 :データメンテナンスの実行●毎月 :各バッファータンク、スライドヒーター、廃液タブの洗浄●3ヵ月毎 :デコンタミネーション、スライドヒーターの温度チェック、スキャンデスク・デフラグメントの実行●1年毎 :アーカイブシステムデータの実行

Ⅳ. 検体処理(検体採取~包埋)

検体採取から包埋までの工程が染色不良の原因となることがあります。病理標本作製過程における操作にじゅうぶんに注意してください。

●検体採取後は速やかに固定液に入れてください。1時間以内が推奨されます。●固定は10%中性緩衝ホルマリンを用いて、6時間以上72時間以内の処理が推奨されます5-8。●固定液は組織に対してじゅうぶんな液量をご用意ください。組織の10倍以上の量が推奨されます。●ティシュ―プロセッサーの薬液は適度に交換してください。

5    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 7: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

検体処理の条件と染色に与える影響

固定条件•10% 中性緩衝ホルマリンにより、6~72時間固定することが推奨される。•亜鉛ホルマリンは10% 中性緩衝ホルマリンと同等の染色を示すと報告されている。•6時間未満の固定は推奨されない。•AFAをはじめとするアルコール系の固定液は推奨されない。

表1 ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)による扁桃組織の染色(固定液および固定時間別)

時間(hr)

固定液

10% NBF 亜鉛ホルマリン AFA* 95%アルコール*

1*

6

12

24

72

*推奨されない (すべての画像倍率は20倍)推奨

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    6

Page 8: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

Ⅴ. 検体スライドの作製(薄切~染色前処理)

■スライドガラスの準備●シランなどがコーティングされたスライドガラスをご使用ください。高温多湿での保管を避けて、有効期限内のスライドガラスを ご使用ください。

■薄切●薄切する切片の厚さは4μmに設定してください。●スライドガラス上の試薬が広がる範囲に切片を貼り付けます。ガラスの側面から1mm、ラベル・フロストから5mm離してください。 切片を貼り付ける部分は素手で触れないように注意してください。

●薄切後の乾燥は、約40℃で一晩の処理を推奨します。切片の剥離防止のためベーキングを行う場合は、60℃で30分以内の処理にとどめ、長時間、高温に置くことは避けてください。60℃以上の高温で長時間置いた場合、スライドガラス表面の変質により、撥水現象が起こる場合があります。●乾燥後の標本は保管せず、速やかに染色してください。

■ラベルの貼付●バーコードラベルプリンターより、染色プロトコール認識用バーコードラベルを印字します。●透明なフラップをしわにならないように注意して貼ります。●バーコードラベルは、スライドガラスのフロスト部分の上端に合わせて、左右から はみ出さないように貼ります。このとき、ラベルのLOT部分(右図〇部分)が浮き上がらないように、しっかり押さえてください。●一度はがしたラベルは粘着力が弱まるため、ラベルを貼りなおす場合は、別途作成しなおしてください。また、 ラベルの重ね貼りは避けてください。

薄切後の安定性肺癌および扁桃組織は、薄切後2ヶ月以内に染色してください。室温で保存された未染スライドは、2ヶ月以降、染色が著しく低下した ことが報告されています。

図2 薄切後すぐに染色された肺癌組織(A)および未染スライドの状態で室温2ヶ月間保管された後に染色された肺癌組織(B)。

PD-L1 4X

室温で2ヶ月間保管後に染色

BPD-L1 4X

薄切後すぐに染色

A

OK NG

LOT 40027

7    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 9: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

Ⅵ. 精度管理

染色を行う場合には、必ず同時に精度管理用コントロールスライドの染色を行い、染色操作が適切に行われていることを確認してください。

■自家製精度管理用コントロールスライド扁桃組織は陽性組織と陰性組織の両方を含んでいるため、ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)の特異的反応と非特異的反応を確認するためのコントロール組織として適しています。 -胚中心などに存在するマクロファージやリンパ球が陽性となります。 -表層扁平上皮や濾胞間域に存在する免疫細胞は陰性となります。

PD-L1発現率が既知の肺癌症例を用いることも可能です。

■陰性コントロール試薬:陰性コントロール ウサギモノクローナル抗体用(商品コード:518-111182)一次抗体の代わりに陰性コントロール試薬を使用して染色することにより、一次抗体を除く構成試薬の非特異反応を確認します。

Ⅶ.測定(操作)方法

本キットの染色は弊社の自動染色装置を用いて行います。代表的な自動染色装置として「ベンタナ ベンチマークULTRA」を使用した場合の操作方法を記載します。詳しくは、自動染色装置の取り扱い説明書ならびに試薬の添付文書を参照してください。

■操作手順1. 染色モジュール、PC、E-barシステムの順に電源を入れます。

2. Windows画面からVSSソフトウエアを立ち上げます。

3. Instrument Viewを表示し、画面右下の Ready モードボタンをクリックします。

4. 装置の取扱説明書に従ってプロトコールを作成し、ソフトウエアに保存します。

5. 廃液タンクの液量を確認し、必要に応じて適切な方法で廃棄します。(施設の廃棄基準を順守)

6. バーコードラベルを印字し、検体スライドに貼り付けます。(p.7 ラベルの貼付 参照)

7. 必要な試薬を染色モジュールにセットします。このとき、試薬の液量や試薬ディスペンサーキャップが全て外されていることを確認します。また、ノズルの流路を塞ぐ大きな気泡や析出物等がないことを確認し、析出物があれば金属以外の細いピンで除去してください。大きな気泡が確認された場合には、弊社カスタマーサポートセンターへご連絡ください。

8. 検体スライドを染色モジュールにセットし、スライドドローワーと試薬フードを閉めます。

9. 染色モジュールにあらかじめセットされているバッファー類の量がじゅうぶんにあること(容器の半分以上)を確認し、 Running

モードボタンをクリックし、染色開始確認のポップアップ画面の Yes をクリックします。試薬と検体スライドのバーコードを読み取り後、染色処理が開始されます。

脱パラフィンおよび前処理(1)検体スライドを加熱してパラフィンを溶融し、その後EZバッファーで洗浄することにより脱パラフィンが行われます。(2)検体スライドは、CC1バッファーにより設定された条件で熱処理が行われます。(3)洗浄が行われます。

扁桃におけるベンタナ OptiView PD-L1(SP142)染色

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    8

Page 10: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

一次抗体の反応および検出(1)スライド上の検体にインヒビターを1滴加え、4分間反応させます。(2)スライド上のインヒビターを洗浄後、一次抗体を1滴加え、16分間反応させます。(3)スライド上の一次抗体を洗浄後、リンカー-HQを1滴加え、8分間反応させます。(4)スライド上のリンカー-HQを洗浄後、マルチマー-HRPを1滴加え、8分間反応させます。(5)スライド上のマルチマー-HRPを洗浄後、増感用タイラマイド-HQと増感用H2O2試薬を1滴ずつ加え、8分間反応させます。(6)スライド上の増感用タイラマイド-HQと増感用H2O2試薬を洗浄後、増感用マルチマー-HRPを1滴加え、8分間反応させます。(7)スライド上の増感用マルチマー-HRPを洗浄後、DAB試薬とH2O2試薬を1滴ずつ加え、4分間反応させます。(8)スライド上のDAB試薬とH2O2試薬を洗浄後、COPPER試薬を1滴加え、4分間反応させます。(9)スライド上のCOPPER試薬を洗浄させます。

対比染色(1)検体スライド上にヘマトキシリン核染色試薬Ⅱを1滴加え、設定時間反応させます。(2)検体スライドを洗浄後、炭酸リチウム試薬を1滴加え、設定時間反応させます。その後、洗浄を行います。

11. 染色が終了したら、自動染色装置から検体スライドを取り出し、水洗、脱水、透徹後、封入し、光学顕微鏡により鏡検を行います。

Ⅷ.推奨プロトコール

■ベンチマークULTRA、XT、GXPD-L1(SP142)専用プロシージャによる染色が必要となります。プロシージャ名 ULTRA VENTANA PDL1(SP142) XT VENTANA PDL1(SP142) GX VENTANA PDL1(SP142)

プロトコールステップ 設定内容

Baking 必要に応じて選択

Antibody(Primary)

VENTANA PD-L1(SP142)もしくは

Negative ControlCounterstain Hematoxylin Ⅱ, 4 min

PostCounterstain Bluing, 4 min

9    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 11: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

検査フロー

肺癌組織検体を患者から採取し、標準的な手順に従い10%中性緩衝ホルマリンを用いて6~72時間固定した後、パラフィンで包埋する。

厚さ4μmに薄切した切片をシランなどがコーティングされたスライドガラス上に載せたものを3枚作製する。

1枚の未染スライドを用いて、ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)で染色し、もう1枚には一次抗体の代わりに陰性コントロール試薬を用いた染色を行う。精度管理用コントロールスライドとして、結果が既知の肺癌組織もしくは扁桃組織を同一ラン内で染色することが推奨される。

肺 癌 に お け る ベ ン タ ナ OptiView PD-L1(SP142)の判定基準に従って、病理医が結果を判定する。

新たな患者検体を再度用意し、H&E染色を実施する

染色を再度行う

染色を再度行う

染色を再度行う

H&E染色スライドは使用に適しているか?(腫瘍細胞含有の有無や固定状況等の確認)

精度管理用コントロールスライドの染色性は

適切か?

陰性コントロール試薬で染色した検体スライドの染色性は適切か?

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)で染色した検体スライドの染色性は適切か?

1枚のスライドを用いてH&E染色を行う。

いいえ はい

いいえ

はい

はいいいえ

はい

いいえ

標本の適格基準:腫瘍細胞50個以上が望ましい

H&E(非小細胞肺癌)

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    10

Page 12: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

スコアリングガイド

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)による免疫染色(IHC)は、腫瘍細胞や免疫細胞に陽性像を示します。非小細胞肺癌において、アテゾリスマブの投与判断を行う際には、腫瘍細胞(TC、図3)に加えて、腫瘍浸潤免疫細胞(IC、図4)に おけるPD-L1の発現を確認する必要があります。

図3 中程度~強陽性の円周状のDAB発色を示す、腫瘍細胞(TC)へのPD-L1発現(NSCLC)

H&E 20X PD-L1 20X

図4 顆粒状および線状のDAB発色を示す、腫瘍浸潤免疫細胞(IC)へのPD-L1発現(NSCLC)

H&E 20X PD-L1 20X

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)の評価手術検体および生検検体、原発または転移巣のいずれにおいても、ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)を評価することが可能です。一方で、細胞診検体または脱灰した骨標本における染色は確立されていません。組織標本の場合、50個以上の腫瘍細胞を含んでいる検体が、ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)の評価に適しています。

染色には、各検体から薄切した3枚の連続切片が必要となります。1枚目の切片はH&E用、2枚目は陰性対照の陰性コントロールウサギモノクローナル抗体用を用いて染色、3枚目はベンタナ OptiView PD-L1(SP142)による染色を行います。H&E染色の結果、検体の状態が不適切であると判定された場合は新たな検体を入手し、ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)および陰性対照の染色を行う 必要があります。

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)を用いて染色した患者検体の評価は病理医により行ってください。

11    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 13: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

PD-L1が発現している場合、細胞膜が茶褐色に染色されます。表2に示す判定基準に従い、ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)に よる染色結果を評価します。腫瘍細胞全体に対して、染色強度にかかわらず細胞膜に茶褐色の染色が認められる腫瘍細胞の割合を 算出し、腫瘍細胞におけるPD-L1発現率(TC)を測定します。また、腫瘍領域に対して、染色強度にかかわらず細胞膜に茶褐色の染色が認められる腫瘍浸潤免疫細胞(腫瘍組織内及び腫瘍組織の辺縁部に局在する免疫細胞)の割合を算出し、腫瘍浸潤免疫細胞に おけるPD-L1発現率(IC)を測定します。なお、腫瘍領域以外の免疫細胞にもPD-L1陽性となる可能性がありますが、判定対象とは なりません。

表2 肺癌におけるPD-L1発現率のスコアリングアルゴリズム腫瘍細胞におけるPD-L1発現率(TC) スコア

染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍細胞の50%以上に認められる TC3染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍細胞の5%以上50%未満に認められる TC2染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍細胞の1%以上5%未満に認められる TC1PD-L1の陽性反応が認められない又は,染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍細胞の1%未満に認められる TC0

腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現率(IC) スコア

染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍浸潤免疫細胞の10%以上に認められる IC3染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍浸潤免疫細胞の5%以上10%未満に認められる IC2染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍浸潤免疫細胞の1%以上5%未満に認められる IC1PD-L1の陽性反応が認められない又は,染色強度に関係なく,PD-L1による陽性反応が腫瘍浸潤免疫細胞の1%未満に認められる IC0

図5~7に腫瘍細胞(TC)における染色性を、図8~12に腫瘍浸潤免疫細胞(IC)における染色性を示します。

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    12

Page 14: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

本資材は肺癌を対象としたスコアリングガイドとなり,染色写真は扁平上皮癌、非扁平上皮癌の両組織型が含まれています。本キットの使用目的は添付文書を参照ください。

実際の染色例

13    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 15: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

腫瘍細胞(TC)染色

図5 腫瘍細胞(TC)への染色は、全周性または不完全な円周状の、中程度から強い膜染色(細胞質への染まりを伴う場合もある)を示すことが多い。

H&E 20X PD-L1 20X

強いTC染色

図7 腺癌においては、基底側方の膜染色が観察されることがある。

H&E 40X PD-L1 40X

TC染色(基底側方)

H&E 20X

図6 腫瘍細胞(TC)に弱い膜染色が観察されることがあるため、高倍率での観察を必要とする。

PD-L1 20X

弱いTC染色

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    14

Page 16: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

腫瘍浸潤免疫細胞(IC)染色

腫瘍浸潤免疫細胞(IC)は、腫瘍内の間質および腫瘍に隣接する腫瘍周囲間質に存在する免疫細胞を指します。ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)染色は、様々な免疫細胞に染まります。多くはリンパ球、マクロファージ、樹状細胞および顆粒球です。

図8 腫瘍浸潤免疫細胞(IC)は暗褐色の点状または線状の染色を示すことが多く、これはほとんどの組織に認められる典型的なIC染色パターンである。IC染色は、腫瘍内間質および腫瘍周囲間質(腫瘍-間質の境界部)またはその両方の場所において凝集した状態で認められることが多い。

H&E 20X PD-L1 20X

腫瘍周囲間質におけるIC 凝集

腫瘍内間質におけるIC 凝集

H&E 40X

図9 腫瘍浸潤免疫細胞(IC)染色は、腫瘍細胞間に分散した単一細胞(Single Cell)または小さな凝集として観察されることもある。このパターンは腫瘍間質における凝集を伴って観察されることがある。染色されているものが腫瘍細胞間に存在する免疫細胞であることは、H&E画像で確認できる。

PD-L1 40X

腫瘍細胞間に分散したIC単一細胞

15    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 17: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

図10 細胞膜への円周状の染色や網状の染色パターンが、マクロファージや樹状細胞といったICで観察されることがある。

H&E 20X PD-L1 20X

網状IC染色

H&E 20X PD-L1 20X

円周状IC 染色

H&E 40X

図11 まれに、IC染色は好中球における細かい点状の染色として、びまん性の顆粒状染色と一緒に観察されることがある。

PD-L1 40X

好中球

H&E 40X

図12 肺胞マクロファージは円周状の膜染色(中程度または強い)を呈することがある。腫瘍細胞との鑑別には、対応するH&E染色スライドを確認することが有用である。

PD-L1 40X

肺胞マクロファージ

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    16

Page 18: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

腫瘍細胞(TC)染色と腫瘍浸潤免疫細胞(IC)染色の鑑別

TC染色はIC染色を伴って認められることがあります。H&E染色スライドを観察することは、PD-L1染色スライドを高倍率で観察する ことと併せて、TCの中からICを鑑別するために有用です。以下の画像(図13~15)では、日常診療で遭遇しえる、TC染色とIC染色が同時に観察されるいくつかのパターンを紹介しています。

図15 H&E染色スライドにおいて多くのICが確認されず、PD-L1染色スライドにおいてTC間に顆粒状または数珠状の染色パターンが観察される場合、この染色はICではなくTCへの染色とみなすべきである。

H&E 40XH&EにおけるTC間のIC(少数)

PD-L1 40X

数珠状のTC染色

図13 TCは細胞膜への強い染色性を示し、H&Eでは腫瘍細胞間に数少ないICを認める。

H&E 20X

H&EにおけるTC間のIC(少数)

PD-L1 20X

強いTC 染色

間質におけるIC凝集

図14 TCは細胞膜への弱~中程度の染色性を示し、H&EではTC間に多数のICを認める。TCの間に強い点状のIC染色が存在することに注意が必要。

PD-L1 20X

弱いTC 染色

腫瘍細胞間に分散するIC染色

H&E 20XH&EにおけるTC間の多数のIC

17    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 19: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

精度管理用コントロールスライドの評価

精度管理用コントロールスライドとして、陽性および陰性に染色される細胞を含んだ扁桃組織、またはPD-L1の発現率が既知である肺癌組織のいずれかの使用が推奨されます。扁桃組織をコントロールスライドとして用いる場合は、患者検体と同様に10% 中性緩衝ホルマリン(10% NBF)で固定・処理された扁桃組織の使用が推奨されます。扁桃組織においては、胚中心に存在するリンパ球およびマクロファージが陽性となります。濾胞間領域では、PD-L1陰性細胞の間にPD-L1陽性の免疫細胞が点在します。さらに、網状陰窩上皮細胞にびまん性に陽性となり、表層扁平上皮細胞には染まりません。結果が既知である肺癌組織をコントロールスライドとして用いる場合の評価は、表1に記載された肺癌における判定基準に従って行ってください。

表3 精度管理用コントロールスライド(扁桃組織)染色結果における判断基準コントロールとして適切な結果 再染色が必要

・ 胚中心に存在するリンパ球およびマクロファージに中程度から強い 陽性染色が認められる。・網状陰窩上皮細胞にびまん性に陽性染色が認められる。

判定の妨げとなるほどの非特異的なバックグラウンド染色が認められる

・表層扁平上皮細胞に陽性染色が認められない。・ 濾胞間領域において陰性の免疫細胞が認められる(陰性の免疫細胞の間には陽性の免疫細胞が点在する)。

胚中心におけるリンパ球およびマクロファージ、および網状陰窩上皮 細胞に、陽性染色を認めない、またはごく弱い陽性染色しか認められない。

PD-L1 20X

濾胞間領域

胚中心

陰窩上皮細胞

PD-L1 20X

非特異的バックグラウンド染色

PD-L1 4X表層性扁平上皮細胞

PD-L1 20X

リンパ球、マクロファージおよび網状陰窩上皮細胞での弱い染色

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    18

Page 20: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

判定方法

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)で染色した肺癌組織を、表1の判定基準を用いてTCおよびIC 染色の両方について評価します。

•腫瘍細胞(TC)のスコアリング:腫瘍細胞全体に対して、染色強度にかかわらず細胞膜に茶褐色の染色が認められる腫瘍細胞の 割合を算出し、腫瘍細胞におけるPD-L1発現率(TC)を測定します。細胞膜への染色は、顆粒状または数珠状のものであっても判定対象となりますが、腫瘍細胞の形に沿った曲線状の染色として見えることが必要です。細胞質染色は膜染色と一緒に観察されることがありますが、判定対象とはなりません。

•腫瘍浸潤免疫細胞(IC)のスコアリング:腫瘍領域に対して、染色強度にかかわらず細胞膜に茶褐色の染色が認められる腫瘍浸潤免疫細胞(腫瘍組織内及び腫瘍組織の辺縁部に局在する免疫細胞)の割合を算出し、腫瘍浸潤免疫細胞におけるPD-L1発現率(IC)を測定します。なお、腫瘍領域以外の免疫細胞にもPD-L1陽性となる可能性がありますが、判定対象とはなりません。

- 腫瘍領域:ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)の判定対象となる“腫瘍領域”は、壊死していない腫瘍細胞および腫瘍細胞間に存在する腫瘍内間質と腫瘍の周囲に存在する間質(腫瘍周囲間質)により占められている領域と定義されます。壊死部は、腫瘍領域から除外してください。

- 断片化した組織検体(生検を含む)において、腫瘍内間質や腫瘍周囲間質の判断が難しい場合、個々の腫瘍巣に隣接する間質 のみを腫瘍領域として含めます。腫瘍細胞に隣接していない間質は除外してください。

図16 A)腫瘍領域、B)切除標本における腫瘍領域、C)生検標本における腫瘍領域、D)壊死部を含む標本における腫瘍領域

H&E 4XA

腫瘍周囲間質

腫瘍領域

腫瘍細胞

腫瘍内間質

H&E 1XC

腫瘍領域

H&E 2XD

壊死部を腫瘍領域から除外する

腫瘍領域

H&E 1XB

19    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 21: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

凝集している腫瘍浸潤免疫細胞(IC)のスコアリング

PD-L1 4X

H&E 1X

腫瘍領域

PD-L1 10X

腫瘍領域

IC 染色のみを認める

H&E染色スライドを鏡検して、腫瘍の存在、壊死部の除外、適格性の確認(50個以上の腫瘍細胞の存在)および

腫瘍領域を評価する。

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)で染色されたスライドを対物レンズ10倍

または20倍にて観察し、全体的な染色パターン(ICパターン、TCパターン、または両方染色されているパターン)を確認する。

低倍(対物レンズ4倍)にて、IC凝集を目視でできる限り厳密に取り囲む。

取り囲んだICエリアを、イメージとして寄せ集めることで、

IC凝集が腫瘍領域に占める割合を推定する。例として示したケースではPD-L1発現は

「≥10% IC」と判定される。

PD-L1 4X

IC凝集

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    20

Page 22: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

分散している腫瘍浸潤免疫細胞(IC)のスコアリング

PD-L1 10X

分散しているICの割合<1%

PD-L1 10X

分散しているICの割合≥10%

分散しているICは、図9や図14を参考に、単一のIC細胞の密度に基づいてスコアを付ける。

21    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 23: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

判定上の注意および間違いやすい症例

1.壊死部および腺管内含有物への染色壊死またはアポトーシス領域周辺における壊死性残屑および免疫細胞にPD-L1染色が認められることがあります。この染色は顆粒状を示すことがあるため、特異的なIC染色と間違えられる可能性があります。このような染まりや凝集として観察される好中球への染色は、スコアリングから除外してください。

図17 PD-L1染色を示す壊死性残屑。判定対象からは除外する。

H&E 10X PD-L1 10X

壊死性残屑における非特異染色

図18 PD-L1染色を示す管腔内残屑。判定対象からは除外する。壊死層辺縁部に認められるわずかな腫瘍細胞へのPD-L1染色はTCの判定対象となる。

H&E 20X PD-L1 20X

管腔内残屑への染色

壊死層辺縁部での腫瘍細胞の細胞膜

への染色

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    22

Page 24: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

2.リンパ節転移原発巣および転移巣のいずれの検体に対しても、ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)染色を実施可能ですが、骨転移の検体は不適です。PD-L1陽性を示す正常の免疫細胞があることを踏まえ、リンパ節転移検体の判定には特に注意してください。ICのスコアリングには、腫瘍細胞に隣接している腫瘍浸潤免疫細胞のみを対象としてください。

図19 リンパ節転移非小細胞肺癌におけるPD-L1染色

H&E 4X PD-L1 4X

腫瘍領域

腫瘍領域外の正常免疫細胞

(判定対象から除外)

3.肺胞マクロファージ肺胞マクロファージにおけるPD-L1染色は、これらが腫瘍領域内に存在しており、かつ腫瘍細胞に隣接している場合に限り、ICの スコアリングに含めることができます。肺胞マクロファージへの強い染まりは腫瘍細胞と似ているため、H&E染色スライドにて形態を確認してください。

図20 腫瘍辺縁部における肺胞マクロファージへのPD-L1染色

H&E 10X肺胞

マクロファージ

PD-L1 10X肺胞

マクロファージ

23    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 25: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

4.血管内の免疫細胞腫瘍間質の血管内にPD-L1陽性の免疫細胞を示すことがあります。これらはICのスコアリングには含みません。

図21 血管内の免疫細胞(この写真は好中球)はICスコアリングに含めない。

H&E 40X PD-L1 40X

5.ヘモジデリンおよび炭粉色素炭粉色素およびヘモジデリン色素はIC染色と紛らわしいことがあります。高倍率での観察ならびに陰性コントロール試薬の結果を確認することが必要となることがあります。

H&E 20X

ヘモジデリン色素

炭粉色素

陰性試薬 20X

IC染色

ヘモジデリン色素

炭粉色素

PD-L1 20X

図22 H&E染色スライド(左)、陰性コントロール試薬による染色(中央)、炭粉色素に隣接するIC染色(右)

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    24

Page 26: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

実際の症例

【TC0、IC0】

ケース1: TC:0%、IC:<1%。ICスコアリングから除外すべき管腔内残屑の染色を示している。炭粉染色の存在も認められる。

H&E 4XA

B

炭粉色素

PD-L1 4XA

B

炭粉色素

H&E 1X

A

PD-L1 1X

A

25    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 27: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【TC0, IC1】

H&E 4XA

H&E 4XB

PD-L1 4XA

PD-L1 4XB

H&E 1X

A

B

PD-L1 1X

A

B

ケース2:スコア:TC:0%、IC:2%。リンパ節転移検体。腫瘍細胞がリンパ節組織から明らかに分離しており、腫瘍領域の特定が容易。

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    26

Page 28: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【TC0, IC2】

H&E 4XA

H&E 10XB

ケース3:スコア:TC:0%、IC:5%。比較的一様に拡散した単一のIC細胞を示す。

PD-L1 4XA

PD-L1 10XB

H&E 1X

A

BPD-L1 1X

A

B

27    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 29: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【TC0, IC3】

ケース4:スコア:TC:0%、IC:10%。腫瘍辺縁に沿ってPD-L1陽性のICが密集している。

H&E 10XA PD-L1 10XA

H&E 1X

A

PD-L1 1X

A

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    28

Page 30: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【TC0, IC3】

H&E 4XA

H&E 20XA

ケース5:スコア:TC:0%、IC:20%。TCに隣接する管腔内IC(マクロファージ)にPD-L1染色が認められる。これらはTC染色と間違われることがあり、H&E染色スライドを確認する必要がある。これらは ICのスコアリングに含める。

PD-L1 4XA

PD-L1 20XA

H&E 1X

A

PD-L1 1X

A

29    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 31: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【TC0, IC3】

PD-L1 4XA

PD-L1 4XC ケース6:スコア:TC:0%、IC:10%。それぞれ異なる割合のIC染色を伴う、3つのエリアを示している。 全体として、このケースは10% ICである。スコアリングから除外すべき壊死部が存在することにも注意が必要。

PD-L1 4XB

H&E 2X

B

C

A

PD-L1 2X

B

C

A

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    30

Page 32: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【TC2, IC1】

H&E 10XA

H&E 20XA

ケース7:スコア:TC:15%、IC:1%。弱いTC染色が認められる(陽性細胞として判定)。

PD-L1 10XA

PD-L1 20XA

H&E 1XA

PD-L1 1XA

31    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 33: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【TC3, IC1】

H&E 4XA

PD-L1 4XB

ケース8:スコア:TC:80%、IC:2%。IC染色を伴うさまざまな強度のTC染色が混在している例。強いTC染色の領域においては、腫瘍内間質を注意深く観察する必要がある。弱~中程度のTC染色領域においては、ICを比較的容易に評価できる。TC染色とIC染色の鑑別は、H&E染色スライドを観察する。壊死部はICのスコアリングに含めない。

PD-L1 4XA

PD-L1 10XC

H&E 1X

AB

C

PD-L1 1X

ABC

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    32

Page 34: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【TC3, IC2】

H&E 10XA

PD-L1 20XB ケース9:スコア:TC:60%、IC:5%。TC染色とIC染色を鑑別するために高倍率による評価およびH&E染色スライドの観察を必要とする例を示す。

H&E 1X

A

PD-L1 1X

A

PD-L1 10XA

B

33    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 35: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

判定に注意が必要なケース

【壊死部の除外】

PD-L1 10XA

H&E 20XC ケース10:判定に注意が必要な例。スコア:TC:20%、IC:5%。スコアリングから除外すべき壊死部を有する。領域AおよびBの高倍率画像は、炭粉 色素の中およびTC染色の隣にIC凝集を示している。判定対象から壊死部を除外し、このケースは5% ICとスコアリングされる。

PD-L1 10XB

PD-L1 2X

B

A

H&E 2X

B

C

A

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    34

Page 36: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【薄い染まりのIC、TCとICの鑑別】

PD-L1 10XA

H&E 20XC

ケース11:判定に注意が必要な例。スコア:TC:0%、IC:5%。低倍率では確認しづらい、薄い染まりのICに注意が必要な例(領域B)。また、巣状の IC染色およびマクロファージへの染色を示しており、円周状のTC染色と間違えられやすい。マクロファージへの染色をTC染色と鑑別するために、高倍率での評価およびH&E染色スライドの観察が重要(領域C)。

PD-L1 20XC

H&E 1X

B

A

PD-L1 1X

B

A

PD-L1 4XB

C

低倍率では目立たないIC

35    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 37: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【TCとICの鑑別】

H&E 10XA

ケース12:判定に注意が必要な例。スコア:TC:10%、IC:15%。高倍率(領域A)で、弱い膜染色の腫瘍細胞および腫瘍細胞間に点在している強い点状のIC染色が認められる(領域C)。高倍率でIC染色とTC染色を鑑別することが重要。

PD-L1 10XB

H&E 1X

A

B C

PD-L1 1X

A

B C

PD-L1 10XCIC凝集

点状IC 染色

TC染色

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    36

Page 38: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

【TCとICの鑑別】

H&E 20xA

H&E 20XB

ケース13:判定に注意が必要な例。スコア:TC:40%、IC:50%。線状の膜染色を伴うTC(領域A)および顆粒状染色のIC(領域B)。TCおよびICの 両方に強い染色を示している。スコアリングの際、染まっている細胞がTCおよびICのどちらであるかを、高倍率で慎重に評価する必要がある。

PD-L1 20XA

PD-L1 20XB

H&E 1X

A

B

PD-L1 1X

A

B

37    ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド

Page 39: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

アーチファクト

本項に示すアーチファクトは、ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)染色スライドおよび陰性コントロール試薬にて染色されたスライドで観察される可能性のあるものです。このようなアーチファクトにより判定が困難な場合、染色を再度行うことが推奨されます。判定の際には、陰性コントロール試薬で染色されたスライドにおいて、バックグラウンド染色や非特異染色が許容範囲内にあることを確認 することが推奨されます。

PD-L1 20X

斑状染色:多くの場合、細胞質において均一に分布し、細顆粒状沈殿物のように見える 非特異的染色である。

血清へのバックグラウンド:血管内および血清の漏出物における非特異染色。

PD-L1 20X

管腔内残屑:管腔内染色を示す扁桃組織があることが知られている。陰性コントロール 試薬においても認められる場合には、コントロール組織として使用しないこと。

陰性試薬 10XPD-L1 20X

DABドット:扁桃またはリンパ節などで観察されることがあり、検出試薬による非特異的バッググラウンドである。

DABドット

参考文献

1. Blank C, Mackensen A. Contribution of the PD-L1/PD-1 pathway to T-cell exhaustion: an update on implications for chronic infections and tumor evasion. Cancer Immunol Immunother. 2007;56(5):739-45.

2. Dong H, Zhu G, Tamada K, et al. B7-H1, a third member of the B7 family, co-stimulates T-cell proliferation and interleukin-10 secretion. Nat Med. 1999;5(12):1365-9.

3. Herbst RS, Soria JC, Kowanetz M, et al. Predictive correlates of response to the anti-PD-L1 antibody MPDL3280A in cancer patients. Nature. 2014;515:563-7.

4. Butte MJ, Keir ME, Phamduy TB, et al. Programmed death-1 ligand 1 interacts specifically with the B7-1 costimulatory molecule to inhibit Tcell responses. Immunity. 2007;27(1):111-22.

5. Sheehan DC, Hrapchak BB. Theory and practice of Histotechnology, 2nd edition. St. Louis: C.V. Mosby Company; 1980.

6. Carson F, Hladik C. Histotechnology: A Self Instructional Text, 3rd edition. Hong Kong: American Society for Clinical Pathology Press; 2009.

7. College of American Pathologists Laboratory Accreditation Program, Anatomic Pathology Checklist, 2011.

8. CLSI. Quality Assurance for Design Control and Implementation of Immunohistochemistry Assays: Approved Guideline-Second Edition. CLSI document I/ LA28-A2(ISBN 1-56238-745-6). CLSI, 940 West Valley Road, Suite 1400, Wayne, PA 19087-1898 USA, 2011.

ベンタナ OptiView PD-L1(SP142)検査ガイド    38

Page 40: 体外診断用医薬品 ベンタナ OptiView PD-L1 SP )検査ガイド 肺癌編 · 2019-07-31 · 518-100599 キシレン、アルコール(透徹用) または 518-108922※

「VENTANA」は、ロシュ社の登録商標です。

〒108-0075 東京都港区港南1-2-70http://www.roche-diagnostics.jpカスタマーソリューションセンター 0120-600-152

1085.TD.TMS.2000.PAB01-025A