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老年看護学実習Ⅱ 患者をやる気にさせるところが看護の醍醐味!! おら、看護が好きだぁ~!! 実習指導案 橋本 久美子 國方 千津子 藤原 春美 宮城 道代 小川 かおる 指導講師 小名木 玲子

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Page 1: 老年看護学実習Ⅱ - anshin.pref.tokushima.jp · 看護学で学んだ知識・技術を統合し、対象に応じた看護を実践できる能力を養う。保健医療

老年看護学実習Ⅱ

患者をやる気にさせるところが看護の醍醐味!!

おら、看護が好きだぁ~!!

実習指導案

橋本 久美子 國方 千津子

藤原 春美 宮城 道代

小川 かおる

指導講師 小名木 玲子

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老年看護学実習Ⅱ 実習指導案

患者をやる気にさせるところが看護の醍醐味!!おら、看護が好きだぁ~!!

○橋本久美子 國方千津子 宮城道代 藤原春美 小川かおる

指導講師 小名木玲子

はじめに

超高齢社会を迎え、急性期病院・ケア施設そして地域にも、看護の対象となる人々のなかで高齢者

の割合が増加している。そのため、老年看護に対する社会のニーズは高まっており、これに応える看

護師の育成が求められている。

様々な疾患などにより入院生活を余儀なくされている高齢者のなかには、退院後は自宅に戻りたい

との希望を持っている患者は多い。特に後期高齢者は、病気、加齢による変化、環境要因が重なって

生活機能の障害をきたしやすく、疾病による体調の変化、障害の悪化、自宅での介護力の問題などに

より、療養型施設への転院など必ずしも本人の希望に沿った結果にならないケースも多い。そのため、

入院時より退院を見据えた早期からの離床・リハビリを進めることにより、在宅への退院を患者とと

もに目標とし、患者の療養への意欲を高める関わりが大切になってくる。

今回、自宅退院を目指す大腿骨頸部骨折患者で、術後の痛みや動くことへの不安などから離床が思

うように進まないケースを学生が担当した。学生が離床という援助に重点をおき、安易な励ましによ

り患者の言葉の裏にある想いに寄り添えていない状況を教材として取り上げた。そこで、指導者が患

者に対して心の中を知りたいと思いながら、意図的に質問する姿や患者の訴えを受容・共感する姿を

役割モデルとして学生に見せることで、学生に傾聴することの大切さ、患者の想いに寄り添いながら

ケアを行うことの大切さを指導したいと思い、指導案を作成した。

Ⅰ.仮説校の設定 御長寿病院付属看護学校(3 年生課程・全日制)

1.教育理念

生命の尊厳を守り、思いやりを基盤とした人間性豊かな人材の育成を目指し、看護を科学的に実

践できる能力の養成、専門職業人として生涯にわたって成長する力を培い、地域社会に貢献でき

る看護の実践者を育成する。

2.教育目的

看護師として必要な知識・技術を教授するとともに、生命を尊重する倫理観と感性豊かな人間性

を養い、専門職業人としての自覚を持ち、社会に貢献しうる有能な人材を育成する。

3.教育目標

1)尊厳を持つかけがえのない存在としての人間を全人的に理解する能力を養う。

2)人間の心身の調和状態と環境とのダイナミックな相互作用を理解し対象とのケアリング的関係

性を形成する能力を養う。

3)人々の健康レベル向上に向けて、看護を科学的に実践するための基礎的能力を養う。

4)複雑な社会と多様な価値観を認識し、理論に基づいた看護を実践できる基礎的能力を養う。

5)保健・医療・福祉制度と他職種の役割を理解し、チーム医療を実践するための基礎的能力を養

う。

6)専門職業人として生涯にわたって看護を探求し、自らを磨き続ける態度を培う。

7)感じる心と柔軟な思考力、自律、共生の調和した豊かな人間性を養う。

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4.臨地実習の目的・目標

1)目的

看護学で学んだ知識・技術を統合し、対象に応じた看護を実践できる能力を養う。保健医療

福祉チームの中での看護の役割を自覚し、行動できる態度を養う。

2)目標

(1)看護の対象を全人的に理解し、対象とのケアリング的関係性を形成する能力を養う。

(2)対象の健康レベル向上に向けて、看護を科学的に実践するために必要な能力を養う。

(3)保健医療福祉チームにおける看護師の役割を理解し、チーム医療を実践するために必要な

能力を養う。

(4)看護専門職としての責任を自覚し、倫理観に基づいて行動できる能力を養う。

5.老年看護学実習Ⅱの目的・目標

1)目的

入院生活を送る高齢者とその家族がもつ健康問題を解決するために必要な知識・技術・態度の

統合を図り、老年看護の援助方法を習得する。

2)目標

(1)疾病をもつ、高齢者の特徴を身体的・精神的・社会的な側面から理解する。

(2) コミュニケーション技術を用いて、高齢者及び家族と円滑な人間関係を築くことができる。

(3)機能障害をもつ高齢者と家族に生じる問題を把握し、退院後の生活に視点をもつ援助を実

施できる。

(4)高齢者の権利擁護ができ、尊厳ある関わりができる。

(5)保健医療福祉チームの一員として役割と連携を理解する。

(6)老年看護の役割を考察し、自己の老年看護観を明らかにする。

Ⅱ.実習指導計画

1.老年看護学実習の構成

1)講義:4単位(60 時間)

老年看護学 概論 2単位 30 時間

方法論Ⅰ 1単位 15 時間

方法論Ⅱ 1単位 15 時間

2) 実習:4単位(180 時間)

老年看護学実習Ⅰ 2単位 90 時間

老年看護学実習Ⅱ 2単位 90 時間

2.老年看護学実習Ⅱの進め方

1)グループ 学生4名

2)受け持ち患者は1名とする

3)グループカンファレンスを行う

4)必要時個人面談を行う

5)実習記録は受け持ち患者記録、日々の行動計画、プロセスレコード、老年看護学についての事

前学習

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3.学生設定、学生グループの設定

学生 家庭環境・背景 性格 本実習の受け持ち患者

春子(20 歳)高卒

対象学生 学力は普通

核家族

祖父母との交流が少ない中

で育つ

真面目で、芯が強い

チーム内での自発的発言は少ない

右大腿頸部骨折

(入院翌日、手術目的で入院)

なつ(33 歳)短大卒

リーダー 学力は普通

既婚者

子育て中

メンバーの母親的存在

しっかり者 努力家

腰椎圧迫骨折

アキ(20 歳)高卒

学力はやや劣る

三世代家族 おっとりとしている 天然キャラ 左大腿頸部骨折

(手術前)

大吉(41 歳)

大卒 学力は優

既婚者

リストラに遭う

人の言うことを聞かない

自己主張が強い 協調性に欠ける

左腓骨骨折

<対象学生>

対象学生:春子 20歳

家族構成:核家族(4人家族)のなかで育ってきた。祖父母は県外在住の為あまり交流がない。

性格:勉強、実習など何事にも真面目に根気強く取り組める。自分から積極的に発言するタイプで

はないが、質問などにはきちんと返答できる。

学力:普通。

(レディネス)

1年 2年 3年

前期 後期 前期 後期 前期 後期

専門分野Ⅰ 基礎看護学

臨地

実習

基礎看護学Ⅰ

基礎看護学Ⅱ

専門分野Ⅱ

成人看護学

老年看護学

小児看護学

母性看護学

精神看護学

臨地

実習

成人看護学Ⅰ

成人看護学Ⅱ

老年看護学Ⅰ

老年看護学Ⅱ

小児看護学

母性看護学

精神看護学

統合分野 在宅看護論

看護の統合と実践

臨地

実習

在宅看護論

看護の統合と実践

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(春子の既習実習受け持ち対象)

実習科目 年齢 性別 疾患名

基礎看護学実習Ⅰ 46 歳 男性 尿路結石

基礎看護学実習Ⅱ 75 歳 男性 脳梗塞

成人看護学実習Ⅰ 57 歳 女性 糖尿病

成人看護学実習Ⅱ 55 歳 男性 大腸がん(周術期~回復期)

老年看護学実習Ⅰ 78 歳 女性 慢性関節リウマチ

小児看護学実習 6歳 男性 百日咳

母性看護学実習 20 歳 女性 妊婦(分娩前後)

4.実習場所の設定と諸条件

1)科目名:老年看護学実習Ⅱ

2)実習期間:2013 年 6 月 3 日~6 月 21 日 3週間(6時間/日)

3)対象学年:3年生前期

4)実習病院:御長寿病院(300 床)

5)実習病棟:整形外科病棟(40 床)

6)看護方式:固定チームナーシング制、受け持ち制、一部機能別看護

7)指導体制:看護師長、副看護師長、臨地実習指導者2名

(病棟週間行事)

月 手術日 SNST 眼科診察 回診(毎日)清拭(毎日)

処置(毎日)自力入浴(毎日)

リハビリ(月~土)

ケアカンファレンス(毎日)*

リハビリカンファレンス(毎日)**

火 整形外科回診 入浴介助

水 シーツ交換 歯科診察

木 手術日 褥瘡診察

金 入浴介助 皮膚科診察

土 中材物品点検

*ケアカンファレンス:事例を通しての看護計画の検討(参加者は病棟スタッフ・必要時他職種)

**リハビリカンファレンス:事例を通してリハビリの方向性・問題点の確認

(参加者は医師・リハビリスタッフ・病棟スタッフ・MSW・必要時他職種)

SNST:嚥下・栄養・褥瘡について介入が必要な事例の検討・回診

(参加者は医師・病棟スタッフ・栄養士・ST・薬剤師・必要時他職種)

(病棟の日課)

6:00 起床 採血 13:30 検温 リハビリ

6:30 異常者検温 モーニングケア 14:00 環境整備

7:00 朝食 与薬 15:00 カンファレンス

8:30 申し送り 16:30 申し送り

9:00 検温 回診 各種検査 18:00 夕食 与薬

10:00 入浴介助 清拭 リハビリ 19:00 異常者検温

12:00 昼食 与薬 21:00 消灯

・リハビリは午前・午後にPT・OTがそれぞれ 1 日 1 回実施

・床上安静の時期はベッドサイドで行う

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Ⅲ.患者設定

・氏名 菅井 ギン 85歳 女性

・病名 右大腿骨頸部骨折

・既往歴 白内障あり(右眼)

・身長 153 ㎝ 体重 52 ㎏

・性格 世話好きで几帳面である。

・家族構成 独居。同じ敷地内に長男夫婦、孫が住んでいる(キーパーソンは長男夫婦)。入院後は

面会に来たり、洗濯などの協力が得られる環境である。

・入院前のADL

白内障による視力障害のため、外出時などはシルバーカーを使用。自宅内では壁伝いに歩くなど、

安全には気を付けていた。歳相応の物忘れはあるが、日常生活には支障なく、ADLはほぼ自立

していた。

・介護認定 要支援 1

・現病歴

一人でトイレに行こうとして、転倒し受傷。右大腿骨頸部骨折と診断され、手術目的で入院とな

る。入院後スピードトラック牽引施行中である。今後全身状態の評価後、人工骨頭置換術予定で

ある。学生が受け持ちとなったのは入院後1日目である。

・治療方針

入院後スピードトラック牽引2㎏を施行。(6 月 3 日入院、6 月 10 日手術予定)

・受け持ち時のADL

食事:自力座位は不可であり、ベットアップにより座位をとれば摂取は自分で可能である。

清潔:看護師の全介助により全身清拭、陰部洗浄を実施。

更衣:看護師の全介助により実施。

排泄:尿道留置カテーテルを留置中。排便はおむつを使用。

(術後、車椅子移乗に慣れたころに尿道留置カテーテルは抜去予定)

移動:ベッド上安静。

(順調であれば術後2日目より端坐位許可、3日目より車いす移乗開始予定である)

・本人の言動

「手術のあとはゆっくりできると思っていたのに、次の日から動くように言われたけど・・・・。

手術のあとはきっと痛いはずなのに動けるだろうか。痛いときにはリハビリなんかできんよな。」

また術後は自宅退院の予定であるが「早く家に帰りたいけど、戻ったら目も見えにくいし、また

こけたりせんか心配。」と話している。

Ⅳ.指導方針

【教材観】

1.実習の目標

本実習は専門分野Ⅱに位置づけられている。突然の入院および手術という環境の変化が、老年期

にある対象にどのような影響を及ぼすかを様々な側面から理解し、対象の個別性を考慮した看護

過程の展開とその援助を経験することを目指している。

2.病態変化の理解

一般的な高齢者の特徴として①防衛力、予備力、適応力、回復力が低下していること②症状や経

過が典型的でないことが多い③合併症を起こしやすいこと④回復の過程が遅延しやすいこと⑤治

癒に時間を要すること⑥環境への適応力が低いこと⑦薬物の副作用を起こしやすいことなどの理

解が必要である。加えて術前後は内的・外的環境から影響をうけて日々症状や安静度が変化して

いくため、状況に応じた観察と判断が必要になる。

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3.手術後の課題

様々な合併症に注意しながら観察を行うことに加えて、合併症予防のために術後の早期離床にむ

けた援助が重要になってくる。術後は自立した生活を少しずつでも患者自身の力で取り戻せるよ

うに離床を進めていくことが求められる。その過程には退院後の生活も視野に入れた関わりも含

まれている。

4.不安、疼痛等への対応

術後は合併症の予防のために早期離床が必要であるが倦怠感、痛みや動くことへの不安などから

離床がなかなか進まないケースも多い。菅井氏は術前より術後のリハビリに対して消極的な態度

がみられていることに加えて、視力障害による再転倒の不安を訴えている。そのため患者を支持

的対応で支え、安全・安楽に十分留意したケアが必要である。

以上のことから、本実習における学習の内容は以下の通りである。

1)老年期の周術期~回復期にある対象の身体的・精神的・社会的側面に及ぼす影響の理解

2)健康障害により生じる問題を把握し、残存機能を考慮して個別性に応じた看護過程の展開

3)老年期の周術期~回復期にある対象の特徴を関連させ、治療上の管理・二次的合併症の予防の

理解

4)老年期の周術期~回復期にある対象の予想される機能低下、日々の変化に合わせた日常生活援

助の実践

5)老年期の周術期~回復期における医療事故防止、安全・安楽を考慮し、存機能を活かした援助

の実践

6)老年期にある対象及び家族の疾患に対する認識・想いを知り、自己効力感・自己決定を尊重し

た援助の実践

7) 退院後のライフスタイルの変化を予測した患者教育の実践

8)家族を含めた社会的環境・介護力を知り、社会復帰に向けての保健・医療・福祉制度の理解

【学生観】

1.実習生の状況

本実習は3年生前期の実習である。学習面では、専門分野もほぼ終了している。領域別実習では

「精神看護学実習」を残しており、統合分野が未習である。実習グループは成人看護学実習から一

緒なので、グループ内では特に大きな問題はなく雰囲気も良い。本学生はリーダーシップをとるタ

イプではなく、みんなの話を聞くことが多い。

2.春子の特徴

青年期の特徴としてコミュニケーション力の低下が指摘されており、春子も自分から積極的にコミ

ュニケーションをとるタイプではない。そのため、人間関係に一度つまずきが生じると自ら再度築

いていくことに困難を感じるときもある。また春子は、真面目で「一生懸命やりたい」、「役に立ち

たい」という気持ちは強く、援助に集中すると周りの状況が見えにくくなる。老年看護学実習Ⅰで

は慢性関節リウマチの患者を担当し、老年期においておきる身体的変化に加えて、疾患由来の身体

機能の低下については理解でき、それに伴う看護ケアは部分的に実施できた。しかし、対象の精神

的・社会的側面まではまだ考慮できていなかった。

【指導観】

今回の実習では老年期の周術期を含めた急性期から回復期までの患者を通して、疾患中心の看護では

なく疾病や障害をもちながらでも日常生活に適応でき、個々の生活背景に視点を置いて看護を学べる

よう指導したい。

本実習のおける強調したい留意点は以下のとおりである。

1.老年期の受け持ち患者を通して身体的・精神的・社会的側面から理解できるようにする。そのた

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めには、事前学習や発問で理解度を確認する。

2.コミュニケーション(言語的・非言語的)が意図的にとれるように調整役となり、出来る限り学生

と一緒に訪室する。学生がコミュニケーションに困難を感じるような場面では、指導者がロール

モデルとなり患者との関わりを見せ、学生の学びにつなげる。

3. 症状や安静度が変化していく患者の状態を老年期の特徴と関連づけて、考えられるように発問し、

理解度を確認する。

4.変化している状態に応じて安全・安楽を考慮し、自立にむけた視点で日常生活の援助ができるよ

うに指導する。

5.各種カンファレンスに一緒に参加することで、回復期の対象に多職種が効果的に関わり、医療チ

ームの連携の重要性と看護師の役割について説明する。

6.老年期の患者と接する看護師や医療スタッフの態度などを通して、尊厳・倫理観について学ぶ機

会とし、対象とその家族を尊重した態度を身につけられるように関わる。

7.実習を振り返ることで、自己の看護観を深める機会になるように関わる。

8.学生が主体的に実習を行い、看護する喜びが感じられるように支援的態度で関わる。

Ⅴ.実習指導案

<週案>

1.実習1週目の指導目標(6 月 3 日~6 月 7 日)

1)病棟の構造・特徴が理解できる

2)受け持ち患者の全体像を把握するための情報収集が行える

3)対象を通して老年期の特徴を理解し、看護計画が立案できる

4)手術を受ける対象の病態生理、麻酔及び手術が身体に与える影響を理解できる

5)受け持ち患者・家族とコミュニケーションが図れる

日 指導目標 指導内容 指導方法・留意点 評価

方法

6/3

6/7

1)病棟の構造・

特徴が理解できる

2)受け持ち患者

の全体像を把握す

るための情報収集

が行える

① 実習病棟のオリエンテ

ーション

・病棟の構造と特徴

・物品の配置

・看護方式・体制

・週間予定

・一日の業務の流れ

② 入院患者の特徴

① 身体的・精神的・

社会的側面の情報収集

・既往歴、障害の程度、心

身 ADL

・入院に至るまでの経過

・家庭内における対象者の

位置づけ、家族背景、キー

・病棟の構造、物品配置、マニュアル

に沿って説明する

(オリエンテーション時に質問がな

いか、声かけをする)

・各病室で学生の紹介をしながら案内

する

・使用している記録物と日程表につい

て説明する

・学生を病棟スタッフに紹介し、サポ

ートが得られるよう配慮する

・学生の不安・緊張を和らげるための

声かけや話しやすい雰囲気づくりな

どを配慮する

・カルテ、看護記録などのデーターベ

ースからの情報収集について説明す

・受け持ち患者について、簡単な情報

提供をする

・受け持ち患者に紹介し、コミュニケ

ーションが図れるようにする

口答

記録

観察

口答

記録

観察

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3)対象を通して

老年期の特徴を理

解し、看護計画が

立案できる

4)手術を受ける

対象の病態生理、

麻酔及び手術が身

体に与える影響を

理解できる

5)受け持ち患

者・家族とコミュ

ニケーションが図

れる

パーソン

・急な入院による不安と環

境の変化による認知状態

の確認

・入院前後の生活習慣・生

活過程

① 身体機能低下について

・呼吸器・循環器・神経・

運動系・聴力・視力の状態

② 精神的・社会的変化に

ついて

③ 情報分析・解釈,問題点

の明確化、具体案の立案

① 手術を受ける病態生理

・大腿骨頸部骨折について

・術式及び手術侵襲につい

・麻酔による影響について

・合併症の理解及び観察項

目の確認

① 対象や家族とのコミュ

ニケーション

・事前学習が対象に合わせた個別性の

ある看護に活かされているか、発問を

加え確認する

不足があれば、追加学習を促し、評価

して学習意欲が高まるよう声かけす

・看護過程の進行状況を把握する

・個別性のある援助が見出せているか

確認する

・優先順位が適切であるか確認する

・老年期の特徴を理解した上で、実習

期間内に達成可能な目標であるか確

認する

・手術前の事前学習内容を確認し、不

足部分を助言する

また学習内容を評価し、承認する

・予測される合併症(腓骨神経麻痺、

肺塞栓、深部感染、深部静脈血栓症)

や、廃用症候群について発問する

・対象や家族の表情と会話内容をよく

観察するよう説明する

・看護師の患者とのコミュニケーショ

ン技術をみせる

・コミュニケーションがとれるような

きっかけをつくる

・挨拶・態度・言葉遣いなどを含めコ

ミュニケーションのとり方を観察し、

助言する

口答

記録

観察

口答

記録

観察

口頭

記録

観察

2.実習2週目の指導目標(6 月 10 日~6 月 14 日)

1)看護計画に沿った看護援助が実施・評価・修正できる

2) 対象の安全・安楽を考慮しながらリハビリテーションを行えるよう援助ができる

3)老年期の特徴を理解し、術後合併症の観察及び予防の援助が実施できる

4)学生カンファレンスの自主的な運営ができる

日 指導目標 指導内容 指導方法・留意点 評価

方法

6/10

1)看護計画に沿

った看護援助が、

①急性期から回復期の状態

に応じた安全安楽な日常生

・安全安楽に十分配慮した援助が実

施できるよう指導する

口頭

記録

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6/14

実施、評価、修正

できる

2)対象の安全・

安楽を考慮しなが

ら、リハビリテー

ションを行えるよ

う援助ができる

3)老年期の特徴

を理解し、術後合

併症の観察及び予

防の援助が実施で

きる

4)学生カンファ

レンスの自主的な

運営ができる

活の実施

・対象の反応

・症状の程度

・精神面の配慮

・生活習慣を考慮した援助

② 問題点に即した看護目

標と具体策の評価・修正

③ 老年期の特徴をふまえ

た、術後合併症の観察及び

予防の援助

・予測される術後合併症に

ついての理解(正常・異常

の理解)

・早期離床への援助

① リハビリテーションの

必要性を理解・理学療法士

との連携

・リハビリテーションの進

行状況

・ADL の状況

・日常生活援助の中で取り

組めるリハビリテーション

② 転落防止対策を対象・

家族に説明(4点柵・転落

防止マット・再骨折防止・

車椅子移乗の注意点)

① 予測される術後合併症

についての理解(正常・異

常の理解)

・出血、縫合不全等の観察

・呼吸器系の観察,予防援助

・循環器系の観察,予防援助

・消化器系の観察,予防援助

② 早期離床への援助

③ 患者・家族への声かけ

① 学生カンファレンス

・学生による自主的な運営

・各自の症例報告

・メンバー間での実習体験

の共有

・観察及び援助内容の理解度を適宜

確認し、常に学生に声かけをしてい

・理解し的確に実施できていること

について褒める

・実施した内容を対象の反応から評

価するように促す

・個別性のある計画の修正、評価を

確認し、必要時助言する

・合併症の理解及び観察項目の把握

する(事前学習、発問)

・安静度に応じた早期離床に向けて

の援助ができているか確認する

・リハビリテーションの経過や可動

域についての理解を確認する

・日常生活援助の中でできるリハビ

リテーションを発問する

・安全・安楽の配慮に視点が向けら

れ、実施できているか確認・助言す

・回復過程の援助を通して、会話等

から現在の状況における三側面(身

体的・精神的・社会的)について確

認するよう助言する

・合併症の理解及び観察項目の確認

し、不足部分を助言し、既習内容を

承認する(事前学習、発問)

・観察及び援助はすべて看護師と共

に行う

・早期離床に向けてベッド上での援

助等を一緒に行う

・家族への説明や対応の実際を見せ

る(観察や援助を通して)

・学生が自主的に進行できるよう配

慮する

・学生全員が自由に意見を出し合え

るような雰囲気づくりをする

・学生の想いが言葉になるように引

き出していく

・よい気づきや関わりができたとき

は褒め、自信に繋げる

・今後の実習の方向性が導き出せる

ように助言する

観察

口頭

記録

観察

口頭

記録

観察

口頭

記録

観察

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3.実習3週目の指導目標(6 月 17 日~6 月 21 日)

1)評価・修正した看護計画を実施することができる

2)退院(家庭復帰)に向けて患者のニーズを把握し、今後の課題を考え個別指導ができる

3)保健・医療・福祉と連携し、医療チームの一員としての看護師の役割を理解する

4)カンファレンスに積極的に参加し、自己を振り返り、今後の課題が明確にできる

日 指導目標 指導内容 指導方法・留意点 評価

方法

6/17

6/21

1)評価・修正し

た看護計画を実施

することができる

2)退院(家庭復

帰)に向けて患者

のニーズを把握

し、今後の課題を

考え個別指導がで

きる

3)保健・医療・

福祉と連携し、医

療チームの一員と

しての看護師の役

割を理解する

4)カンファレン

スに積極的に参加

し、自己を振り返

り、今後の課題を

明確にできる

①看護過程の振り返り

・追加情報の収集

・解釈、分析、実施、評価

・対象のニーズを把握

・QOL の理解

・心身 ADL の状態

現在の ADL・セルフケア能

力の把握

① 対象のニーズを取り入

れた援助

② 生活習慣を考えた援助

③ 自立部分を妨げない援

① 医療チームの成員、役

割、連携方法

② 社会資源の活用方法

③ 継続看護の必要性

(サマリーの活用)

① 学生主体のカンファレ

ンス

② 実習目標達成の自己評

③ 実習での学び・今後の

課題の明確化

・修正の必要な箇所が、計画の内容

に反映できるよう助言をする

・個別性をふまえた修正になってい

るか確認する

・実施が的確な場合は褒める

・心身 ADL を把握し、退院に向けて

の看護計画ができているか確認する

・対象のできる部分、できない部分

に目をむけられるよう助言する

・見守りの重要性を伝える

・退院後の生活の場を考慮した援助

の必要性を示唆する

・対象とその家族から情報を収集で

きるよう助言する

・退院調整の見学ができるよう調整

する(SW との連携)

・対象に必要な社会資源について発

問する

・リーダーシップ、メンバーシップ

が身につくよう、学生が主体的進行

できるよう配慮する

・学びを通して老年期における看護

の役割を理解し、今後の実習に意欲

的に望めるよう助言する

・良い気づきがあったときは褒める

・自己の今後の課題を明確化できる

よう助言する

口頭

記録

観察

口頭

記録

観察

口頭

記録

観察

口頭

記録

観察

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<日案>2013 年 6 月 14 日(金)実習2週目5日目(術後4日目)

1.指導目標

1)看護計画に沿った援助が実施、評価、修正できる

2)術後4日目のリハビリテーションの内容、進行状況を把握し援助ができる

3)円滑なコミュニケーションを図り、対象の心理状態が把握できる

時間 行動計画 指導方法・留意点 評価の視点

8:30

9:15

9:30

あいさつ

申し送りに参加

1) 前日の状態の把握

2) 本日の行動計画

発表

環境整備

1)対象の状態を考慮

した環境整備

2)危険を予測した環

境整備

検温、状態報告

1)バイタルサインの

正常と異常の判断

2)バイタルサイン以

外の状態把握(疼痛、

日常生活状況など)

・学生の心身の状態を把握する

・申し送りと記録物からポイン

トを押さえた情報収集ができ

るよう助言する

・本日の実習目標、内容が対象

の状態に合っているか確認し、

必要に応じて計画を修正する

よう助言する

・内容に変更があった場合に

は、その理由も含めて発表する

よう助言する

・本日の実習の事前学習の内容

を確認する

・どのような環境整備をおこな

っているか確認し、必要時指導

する

・対象の術後の疼痛、ADL の

変化に応じた環境整備が必要

であることを助言する

・視力障害(白内障)に配慮し

た環境整備が必要であること

を助言する

・対象のプライバシーに配慮す

るよう助言する

・対象に不安、苦痛を感じさせ

ないよう実施できているか確

認する

・バイタルサインについて異常

がないか質問する

・その他の状態把握についての

確認を行う

① 創部の観察(感染兆候)患

部の疼痛、腫脹、腓骨神経麻痺

他合併症の理解及び観察項目

の確認

② ストレスの有無・程度

③ 呼吸・循環・消化器・泌尿

器系の観察

・対象の状態を的確に把握できて

いるか

・クリニカルパス使用時の経過と

対象の経過の比較ができているか

確認する

・本日の実習目標、行動計画内容

が患者の状態に合っているか

・事前学習の内容が的確か

・対象の意向を取り入れた環境整

備になっているか

・転倒・転落の危険性を理解し、

安全・安楽に注意して行っている

・プライバシーに配慮した行動・

不安や苦痛を感じさせない声かけ

ができているか

・バイタルサインの正常と異常が

捉えられているか

・クリニカルパス使用時の経過と

対象の経過との比較ができている

・観察した内容を的確に報告でき

ているか

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10:00

10:15

11:00

11:50

13:30

回診の見学

1)対象の情報共有

2)創部の観察

3)対象の想い

全身清拭の介助

1)全身状態の観察

2)安全への配慮

リハビリテーション

1)本日のリハビリテ

ーションの内容

(車椅子乗車にて施行)

2)対象の反応

3)安全、安楽な援助

昼食の準備

1)食前の環境整備

2)食事のセッティン

検温、状態報告

(9:30 検温と同様)

・離床への援助ついての確認を

行う

・観察したことを担当看護師に

正確に報告できているか確認

する

・観察内容、報告等できている

ことは褒める

・対象の情報を看護計画に活用

できるように指導する

・創部の状態を異常がないか共

に観察し、術後合併症(感染兆

候)について質問する

・的確な返答に対しては褒め、

不足部分にはアドバイスする

・全身清拭の具体的な援助方

法、注意点について発問する

・プライバシーに配慮し、対象

に不安を与えないような声か

けができているか確認する

・全身観察を学生と一緒に行い

観察ポイントをアドバイスす

・学生主導で援助できるように

配慮する

・安全に配慮した援助ができた

ら褒める

・理学療法士と連携をとり、リ

ハビリテーションの内容、対象

の反応が把握できるよう助言

する

・リハビリテーション後、内容

と対象の反応を日常生活援助

にどのように活かしていくか

発問し、良い気づきに対して褒

める

・安全、安楽に配慮した環境が

整えられているか確認する

・対象者が気持ちよく食事を摂

れるような環境について発問

する

・的確な返答、行動がとれた時

には褒める

(9:30 検温と同様)

・創部の観察が的確か

・疼痛に対する配慮ができている

・プライバシーに配慮できている

・個別性をふまえた具体的な援助

方法を述べることができるか

・安全、安楽を考慮した援助がで

きているか

・リハビリテーションの進行状況

が把握できているか

・対象の反応を把握し、日常生活

援助にどのように活かしていくか

・安楽な体位がとれているか

・判断が的確か

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14:00

15:15

学生による早期離床

への援助

1)対象の反応

2)安全・安楽の援助

場面

本日の実習報告

・安全、安楽への配慮ができて

いるか確認する

(手すりの位置、ベッドの高

さ、適切な履物、寝衣など)

・適切な移乗方法を確認する

・対象者の特徴を捉えた声かけ

ができているか発問する

・不安な表情や態度が見られた

場合は、指導者から声かけを行

うよう配慮する

・学生の根拠ある行動は褒め、

不足部分は意欲を失わせない

よう助言する

・本日の実習目標が達成できた

か確認する

・学生の発語をゆっくりと落ち

着いた態度で待つ

・学生が新たな学びを得られた

時は褒める

・本日の学びが次週への計画へ

つながるよう助言する

・早期離床の必要性が理解できて

いるか

・残存機能を活かした援助、声か

けができているか

・学生が自分の想いを表出できて

いるか

・自発的に質問ができているか

<場面>指導者と共に患者のもとへ訪室し、離床を促す場面

術後4日目で、昨日初めて車椅子に移乗した。春子の本日の実習目標は「安全・安楽を考慮した車

椅子移乗と離床を進める」としていた。午前中には PT の介入があり、その時、車椅子に移乗して

いたため、午後より学生が主体となって、もう一度離床を促す予定にしていた。

菅井さんの言動 春子の言動・状況 指導者の言動

ぼちぼち、変わりないよ。

あぁ~、車椅子でぇ。ちょっと、

たいそうやなぁ。

(少し不安な表情)

この歳で大きい手術して、一人で

移動もできんし、学生さんにも気

の毒なわ。

長生きしても、いいことないわ。

そうは言ってもなぁ。はぁ。

(暗い表情でため息をつく。)

こんにちは。お変わりないです

か?

気分転換兼ねて、車椅子で散歩し

ませんか。

外の天気もいいですよ。

いやいや、そんなことないです

よ。

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うーん。

(重い口調でだまる。)

そうやねぇ。手術はしたものの、

ほんまに歩けるようになるんだ

ろうか。目もうすくなって、足腰

も弱って。息子らにも、迷惑かけ

ると思ったら辛くなってきてな

ぁ...。今までのように一人で暮

らせるかなぁ...。

もう、手術もして動いてリハビリ

していかないかんのは、わかって

るんやけどな。また、転ばんか不

安でな。

朝は、先生とリハビリしたんで

よ。まぁ、そんなに言うてくれる

なら車椅子乗ろうか。

リハビリしたら、前みたいな生活

ができますよ。頑張りましょう。

(何で、ため息つくんだろう。励

ましたつもりなのに...。)

<気づき>

(あれ!?菅井さん、そんな事考え

ていたんだ。私には一言も、そん

なこと言ってなかったのに...。

聞き方一つで、こんなに喋ってく

れてる!!)

私も、そう思います。怪我される

まで、身の回りのこと何でも一人

でして、すばらしいですね。

はい、私もお手伝いさせてくだ

い。

(あれ、会話が噛み合ってな

いけど、菅井さんの表情を見

てるかな?リハビリに気持ち

が向いてなさそう...。)

菅井さん、気分が乗りません

か。

何か、気にかかっていること

があるんですか?

そうやねぇ。手術しただけで

は歩けないし、先々の事考え

ますよね。菅井さん、怪我し

ているのに息子さん達のこと

まで考えて、すごいですね。

春子さんは、どう思う?

★共感・傾聴★

じゃ、一緒に移動するのを手

伝いしましょうか?ねぇ、春

子さん。

そういえば春子さん、リハビ

リは PT さんと行うことだけ

を言うのかなぁ?日常生活の

動きは何になるの?

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そうなんえ?!

朝リハビリしたから、今日はもう

休んでいいんかと思ったわぁ。

ふらつくかもしれんけん、ちゃん

と持っといてよ。

この子が支えてくれとったけん、

思ったより痛うなかったわよ。

(笑顔)

普段の動きもリハビリになりま

す。

日常生活の動きは、とってもいい

リハビリになるんですよ。じゃ

あ、車椅子に乗ってみましょう

か。

できない事は手伝うので言って

ください。手すりの持つ位置、わ

かりますか?元気な足で、しっか

り立ってくださいね。

大丈夫ですよ。ちゃんと、支えて

おきますから。

良かったです。焦らず、少しずつ

でいいので、自分でできることを

増やしていきましょうね。

(良かったぁ、乗ってくれた。)

はい。私が声かけしても、あまり

乗りたそうにしてなかったけど

指導者さんが話しかけたら、表情

が変わってびっくりしました。

★リハビリを身近な

日常生活動作へ拡大★

★安全・安楽への配慮★

(既往歴を配慮した声かけや

残存機能に意識できているわ

ね!)

上手に移れましたね。

痛みは大丈夫ですか?

菅井さん、車椅子に乗る気に

なってくれてよかったね。

そうね。菅井さんと私のやり

取りで、何か気づいたことは

ある?

端座位になり、車椅子移動時の様子

退室し、言動の振り返り

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うーん、私の声かけは菅井さんの

気持ちに寄り添えてなかったと

思います。聞き方によって、あん

なに想いをだしてくれるなんて、

話を聴く姿勢は大切だと思いま

した。

あれが、傾聴ですね!!

はい、これからは患者さんの表情

や言い方にも気をつけていこう

と思います。

そうそう!!

患者さんの言葉には、バック

グラウンドがあるから、1 つ

1つの言葉を意識して聴くこ

とが大切ね。励ましのタイミ

ングも、患者さんの状況を見

ながら行うのがいいね。

★褒める★

そうだね。同じケアをするに

も患者さんの気持ちをわかっ

てするのと、しないのでは、

あとの結果が違ってくるね。

今回の気づきを大切にしたら

いいね。

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Ⅵ.考察

今回、言語的な訴えではなく、表情や口調などから汲み取れるはずの不安に気づいていない学生に、

指導者として関わる指導案を作成した。学生は援助を行うことだけに集中しているが、高齢者の様々

な特徴を踏まえて、バックグラウンドにあるもの、心の中の想いをいかに引き出すことが大切かに気

づいて欲しかった。そこで、患者の想いを引き出す糸口やその想いを受容・傾聴する姿を役割モデル

として実践することで、学生の気づき(学び)へと結び付けることができた。

見籐 1)は「臨地実習が教育として立派な効果をもたらすかどうかは、実習指導者の力量にかかって

くる。」と述べている。効果的な臨地実習にするためには、実習中の学生の多様な経験の中から、どの

素材(反応や場面)を選択し教材化するかという指導者としての能力が欠かせない。加えて、教材化

した場面においては①学生を見守り、安心感をもった環境の中で自主的に患者と関わる環境をつくる

こと②学生の疑問に対して、実践的な助言を与えること③対象者への直接ケアを通じて役割モデルと

なることなどが重要である。しかし、刻一刻と変わる臨床の現場で常に実習目的・目標と三観を意識

した指導は難しい現状がある。学生が実習の振り返りを行う時には、指導者は指導内容を振り返る機

会とし、振り返る際には実習目的・目標に立ち返り一貫した指導ができるように意識していくことが

重要となってくる。

臨床現場で即実践的に行えることとして、学生の行動目標をヒントに与えられた環境の中から教材

を見つけ出すこと、それを言葉で伝え、学生の行動目標以上の学びに繋げていくことができる。その

学びを通し、対象と関わる楽しさや看護の視点に学生自らが気づき、成長していく過程を見守れる指

導者でありたい。

Ⅶ.おわりに

今回の研修を通して指導者が三観など指導のコアになる部分をもち学生に関わることにより一貫し

た指導が可能となることを実感した。実習の場では指導者を始めスタッフ1人1人が学生の良き役割

モデルであることを認識し、看護の素晴らしさを学生が実感できるようにチームの一員として学生を

受け入れ、看護を実践していきたい。そして学生とともに成長をできるように今後も自己研鑽に努め

ていきたい。

謝辞

今回、実習指導案を作成するにあたり、ご指導・ご助言頂きました独立行政法人国立病院機構東徳

島医療センター小名木玲子先生はじめ、御講義して頂いた諸先生方に深く感謝いたします。

引用文献

1)見籐隆子:人を育てる看護教育,医学書院,1987

参考文献

・矢野章永他編:看護学教育 臨地実習指導者実践ガイド第 1 版,医歯薬出版株式会社,2012

・井上智子他編:病期・病態・重症度からみた疾患別看護過程+病態関連図第 1 版,医学書院,2008

・佐藤みつ子他著:看護教育における授業設計第4版,医学書院,2013

・足立はるゑ他著:臨地実習指導サポートブック第 1 版,メディカル出版,2011

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<評価表> 老年看護学実習Ⅱ評価表

評価基準:5.指導・助言を与えなくてもできる 4.少しの指導・助言を与えればできる 3.指導・助言を与えればできる

2.指導・助言を与えても不十分である 1.指導・助言を与えてもできない

項目 評価内容 学生 指導者

1)老年期の身体的・精神的・社会的特徴を述べることができる

2)健康障害に伴う二次障害を予防する対策がとれる

3)高齢者の特徴をふまえ、安全性を配慮し、日常生活上の援助ができる

4)健康問題の状況に合わせ、残存機能を生かした自立を促すための援助ができる

5)対象の価値観・生活習慣を理解し、尊重した対応ができる

6)家族との人間関係を理解し、必要な援助方法が述べられる

7)収集した情報を整理し、分析・解釈・統合し、看護上の問題を抽出できる

8)抽出した問題点の優先順位が決定できる

9)対象の状態に応じた到達可能な目標設定ができる

10)個別性を考慮した看護計画が立案できる

11)計画した看護計画を対象の反応を確認しながら安全・安楽に実施できる

12)実施結果の報告、記録ができる

13)実施した看護の結果を評価でき、必要に応じて修正ができる

14)チーム医療の必要性を理解し、チームの一員として行動できる

15)カンファレンスに参加し、疑問や意見を述べられ、学びの共有ができる

16)社会資源の種類や活用方法について述べることができる

17)継続看護の必要性が説明できる

18)チームの中で尊重した誠実な接し方やコミュニケーションをとることができる

19)指導者への報告・連絡・相談ができる

20)記録・レポート類の提出期日が守られる

総 点

指導者のコメント(積極性・協調性・責任感・誠実性・礼儀・言葉遣い・態度についてもお書き下さい)

指導者名 印

学籍番号 学生氏名

実習病院 病院・施設: 病棟:

実習期間 平成 年 月 日 ~ 年 月 日

出席状況 欠席日数: 日 遅刻・早退回数: 回 担当教員