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企業の海外進出の是非 名古屋市立大学 稲垣ゼミ
海外進出とは
企業などが海外へ拠点を移し国内で
行っていたものと同じ業務を行うこと
(海外進出ナビより)
日本企業の海外進出
製造業
非製造業
工場の移転
店舗の展開
トヨタの生産拠点
出典:トヨタグローバルニュースルーム
海外進出の理由
日本での利得 海外での利得 < 低下要因 • 少子高齢化による 需要減
• 円高
上昇要因 • 高い需要 • 低コスト 労働者 土地 など
出典 経済情報平成22 年11 月10 日(三菱東京UFJ 銀行)を元に加工
0 10 20 30 40 50
為替リスクの回避
第三国への輸出
国内市場の成熟化・縮小
進出取引先への部品などの供給
労働力の確保
日本への輸出
現地市場の開拓・拡大
取引先からの要請
取引先の海外展開への自主的な追随
コスト低減
3.4
9.6
20.7
18.2
12.1
24.3
39.1
10.2
13.8
44.3
中小企業(製造業)の海外進出の動機・目的
(%)
海外進出のメリット、デメリット
•新市場の獲得
•コスト削減 メリット
•産業の空洞化 デメリット
新市場の獲得
出典:内閣府 人口・経済・地域社会の将来像
日本での拡大は難しい ⇒ 海外市場へ!
なぜ新市場の獲得を?
市場拡大
売り上げ増加
企業成長の可能性
NTTドコモのインド進出例
NTTドコモのインド進出
•概要
市場の成長性の高いインドへ目を付ける
インドのタタを買収し海外に新たな市場を獲得(2008)
•結果
一度はシェアをあげることに成功
→分単位の課金から秒単位の課金に
→低価格にすることでシェアの拡大に成功
が、しかし・・・
他のキャリアも秒単位課金を導入して反撃
→値下げ競争に敗れる
激戦区といわれるインドでは勝ち抜けず撤退
→赤字の拡大により2014年の収益14.7%減
失敗の要因
①日本人の求めるサービスと海外で求められる
サービスの大きな違い。
②日本の携帯電話端末は高性能で多機能といった
技術の結晶ではあるが、外国人にとってこれらの
サービスは不必要で使う機会がないと判断された。
③日本に比べてインドの携帯電話市場の競争が
激しかった。
ニーズの差について(携帯電話市場から見る)
出典 携帯電話に対する需要特性の比較分析に関する調査研究(平成21年 総務省 情報通信政策研究所)
文化・嗜好などの違いがある
出典: 日本経済新聞 電子版『インド携帯に再編機運 値下げ競争、消耗戦へリライアンス・インダストリーズ参入、3.9兆円投資 』より(2016/10/21)
インドの携帯市場
日本と比べ 競争が激しい
新市場の獲得 まとめ
規模が大きい 進出!
参入先の市場を深く知ることが重要
海外進出のコスト
海外進出によるコスト削減
•人件費
•土地・建設費
•設備投資費用
•中国の割合が高い •ASEAN、その他アジアが拡大傾向
海外進出の現状
出典:海外事業活動基本調査からみる 2014年度における現地法人の動向(経済産業省)
人件費比較
578
1,010
1,895
1,608
317 257 317 348 181 162
245
2356
0
500
1000
1500
2000
2500
ワーカー(一般工職)月額基本給 (米ドル)
2015年度時点の比較
出典 第26回アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較(2016年6月 JETRO)
6.91
4.54
0.17
2.94
3.92
5.38
1.7
6.92
0.22 0.11
9.71 9.74
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
工業団地借料月額(平方メートル当たり) (米ドル)
土地賃借料比較
出典 第26回アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較(2016年6月 JETRO )
しかし・・・
•現地労働者の需要過多
⇒賃金の安価な現地労働者を巡る競争が拡大、
人材募集も困難に
•賃金の高騰
⇒中国を筆頭に、製造業等における人件費が上昇
⇒将来損失を含めた予算の見積もりが困難
企業が直面している課題とリスク・デメリットに関するアンケート調査
10.1 9.2
6.5
11.4
8.7 8.7
12
14.3
16.6
14.3 13.3
11.7 12.3
11
8.4
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
上海の最低賃金伸び率
65 69 77 84 94
110 138
165
198 230
261
296
324 332
0
50
100
150
200
250
300
350
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
上海の最低賃金推移(米ドル)
出典 上海市労働社会保障局
中国における生産コスト変化(2004-2014)
生産コストは米国と比較しても 大差がない
海外進出のコスト まとめ
低コストを理由とした海外進出が進んでいる
しかし・・・
コスト上昇が起こっている現状
低コストが続かない
将来的なコスト上昇を見積もる必要あり
産業の空洞化
産業の空洞化
国内企業の生産拠点が海外に移転することにより、
当該国内産業が衰退していく現象。
海外進出から国内産業の衰退まで
海外生産のほうが低コスト
国内でなく海外で生産するように
高付加価値製品の生産が海外へ
国内生産の代替が進むと・・
国内生産性が低下
移管済み, 49.8%
可能性有り, 21.5%
あり得ない, 22.1%
未定, 6.7%
コア技術の海外生産拠点への移管状況
出典:経済産業省、厚生労働省、文部科学省「2011年度版ものづくり白書」
高付加価値製品の移管 国内生産性ダウン!?
進出と生産性の関係の調査
海外現地法人数と国内労働生産性の相関関係を調査した。
期間:1988年~2011年
データ出所:JIPデータベース、海外事業活動基本調査
使用した数値
•日本の労働生産性(=実質産出量÷従業員数;輸送機械産業)
•外国における日本の法人企業数(輸送機械産業)
企業数↑ ⇒ 労働生産性↓ ?
2006年
~2006年: 現地法人数↑ ⇒ 国内労働生産性↑ 2006年~: 現地法人数↑ ⇒ 国内労働生産性↓
予想と同じ 空洞化が起こっている!!
まとめ
海外進出のメリット、デメリット
•新市場の獲得
•コスト削減 メリット
•産業の空洞化 デメリット
メリット1:新市場の獲得
規模が大きい 進出!
参入先の市場を深く知ることが重要
65 69 77 84 94
110 138
165
198 230
261
296
324 332
0
50
100
150
200
250
300
350
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
上海の最低賃金推移(米ドル)
メリット2:コスト削減
低コストが続かない
将来的なコスト上昇を見積もる必要あり
2006年
~2006年: 現地法人数↑ ⇒ 国内労働生産性↑ 2006年~: 現地法人数↑ ⇒ 国内労働生産性↓
空洞化が起こっている!!
おわりに
•市場の獲得には、現地のニーズや法制度への深い理解が必要
•長期的な海外進出には、将来的なコストを見積もった戦略が重要
•海外への過度な移転は、産業の空洞化を引き起こす危険
参考 第45回海外事業活動基本調査概要
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/result/result_45/pdf/h2c45kaku1.pdf
海外事業活動基本調査からみる 2014年度における現地法人の動向
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kaigaizi/result/result_45/pdf/h2c45sankou1.pdf
海外進出ナビ
http://kaigai.asia/navi/overseas.htm
トヨタグローバルニュースルーム
http://newsroom.toyota.co.jp/corporate/companyinformation/worldwide
海外の店舗 - ローソン
http://www.lawson.co.jp/worldoverview/
日本経済新聞 電子版『インド携帯に再編機運 値下げ競争、消耗戦へリライアンス・インダストリーズ参入、3.9兆円投資 』
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDX20H0R_Q6A021C1FFE000/
参考
携帯電話に対する需要特性の比較分析に関する調査研究(総務省)
http://www.soumu.go.jp/iicp/chousakenkyu/data/research/survey/telecom/2009/2009-I-11.pdf
第26回アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較(2016年6月 JETRO)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/42952cecddce53c3/20160032.pdf
中小企業の海外進出に関する調査と事例研究(平成24年1月社団法人 中小企業診断協会 愛知県支部)
https://www.j-smeca.jp/attach/kenkyu/shibu/h23/h_aichi.pdf
主要輸出国25 カ国の生産コスト比較:世界の生産拠点の勢力図の変化
http://www.bcg.co.jp/documents/file172753.pdf
上海市概況(2016年7月 JETRO)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/cn/katoh/pdf/overview_shanghai_201607.pdf
内閣府 第2章 人口・経済・地域社会の将来像
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s2_1.html
JIPデータベース、海外事業活動基本調査
http://www.rieti.go.jp/jp/database/jip.html
経済産業省、厚生労働省、文部科学省「2011年度版ものづくり白書」
http://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2011/pdf/gaiyou_01.pdf