森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の...

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森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の克服に向けた 森林管理ユニットと協同組合の設立 九州大学大学院 / 生物資源環境科学府 / 博士課程 藤原 敬大 ― インドネシア・ジョグジャカルタ特別州・グヌンキドル県の事例 富士ゼロックス株式会社 小林節太郎記念基金 小林フェローシップ 2010 年度研究助成論文

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森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の克服に向けた 森林管理ユニットと協同組合の設立

九州大学大学院 / 生物資源環境科学府 / 博士課程

藤原 敬大

― インドネシア・ジョグジャカルタ特別州・グヌンキドル県の事例 ―

富士ゼロックス株式会社 小林節太郎記念基金

小林フェローシップ 2010 年度研究助成論文

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謝 辞

本論文に関わる現地調査はインドネシア政府科学技術省の調査許可(No.253/FRP/SM/X/2009及び

No.42/SIP/FRP/SM/IX/2010)の下で実施された。本論文の執筆に当たり、主指導教員である佐藤宣子

教授(九州大学大学院農学研究院)並びに副指導教員でインドネシア調査時のカウンターパートを務

めて頂いたSan Afri Awang教授(ガジャマダ大学森林学部)には多くのご指導を頂いた。またガジャ

マダ大学森林学部コミュニティ林業研究センター(Pusat Kajian Hutan Rakyat-PKHR)のWahyu Tri

Widayanti講師、Bariatul Himmah氏、Ratih Madya Septiana氏、同学部卒業生であるHerlina Sherny

Susilowati氏、Rusti Aningsih氏には調査期間中多大なご支援を頂いた。集落調査時には、Sukimin氏

(Dengok村)・Badarudin氏(Girisekar村)に地域住民との橋渡しをして頂き、多くの地域住民の方々

に聞き取り調査にご協力頂いた。Popi Astriani氏(国際林業研究センター)には調査許可に関わる事

務手続きについて支援して頂いた。これらの方々のご支援なしでは、本研究を遂行することができな

かった。心から深く感謝したい。

また言うまでもなく、本研究を遂行できたのは、小林節太郎記念基金の多大なご支援があったから

に他ならない。インドネシアでフィールド調査を実施するという貴重な機会を与えて頂いた同記念基

金に心から厚く御礼申し上げたい。

2011年10月

藤原 敬大

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目 次

ページ

第1章: 研究の背景 ....................................................................... 1

第1節: 研究の背景と目的 ............................................................... 1

第2節: 森林認証の導入と私有林の団地化・協同組合の設立に至った経緯 ..................... 2

第2章: 調査地概要と調査方法 ............................................................. 5

第1節: ジョグジャカルタ特別州グヌンキドル県 ........................................... 5

第2節: 調査方法 ....................................................................... 6

第3章: 調査結果 ......................................................................... 8

第1節: 私有林の所有形態と管理実態 ..................................................... 8

第2節: 私有林管理の組織形態 .......................................................... 10

第1項: 私有林農民グループ及び私有林農民グループ連合 ................................ 10

第2項: 協同組合 .................................................................... 13

第3節: 伐採に関する内部規定と若齢木の伐採 ............................................ 18

第4節: 集落と国際社会の関係に関する認識 .............................................. 20

第4章: 総括 ............................................................................ 22

註 ..................................................................................... 23

参考文献 ............................................................................... 24

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第1章: 研究の背景

第1節: 研究の背景と目的

森林の多面的機能は、木材生産だけではなく、気候変動の緩和や生物多様性の保全の面においても

重要な役割を果たしている。その多面的機能を維持していくためには、環境に配慮した森林から産出

された木材を使用することが重要である。

インドネシアでは、森林セクターにおける木材の需要と供給の不均衡が続いており、需給の不均衡

に起因する原材料不足は、深刻な森林消失や森林劣化に至る違法伐採の原因の一つとなっている

(Guritno 2000;Wardojo 2003;Noordwijk et al. 2007;Obidzinski and Chaudhury 2009;Obdzinski

and Dermawan 2010;Rohadi et al. 2010)。同時に木材業者や木材加工業者は、高品質の家具等に使

用される大径材を入手することが難しくなっている(Purnomo et al. 2009)。そのような木材需給の

不均衡を是正するために、国有林においては、企業とコミュニティによるパートナーシップ、コミュ

ニティ・プランテーション(Hutan Tanaman Rakyat)等の地域コミュニティとの協働に基づく森林管

理の様々な取り組みがなされている(Nawir et al. 2003;Nawir and Santoso 2005;Noorwijk et al.

2007;Obidzinski and Chaudhury 2009;Obdzinski and Dermawan 2010)。一方では、将来の原材料を

確保するために、農民達の私有地で農民達と直接契約を取り交わすことによって造林を行う契約造林

を実施する企業も見られる(Nemoto 2003;岩永ら2010)。

インドネシアには約9,400万haの森林が存在する一方で、私有林の面積はわずか9%を占めるに過ぎな

い(FAO 2010)。しかしながら、わずか9%の私有林の存在は木材供給の面においてますます重要になっ

てきており(Pramono et al. 2010)、私有林から産出される木材の量は過去10年間で劇的に増加して

いる(Hinrichs et al. 2008)。またインドネシア政府も国有林から産出される木材が不足するに伴っ

て、森林セクター開発計画における私有林の存在を考慮するようになってきており(Supriadi 2002)、

木材業者や木材加工業者も将来コミュニティや小規模所有者から産出されるチークやマホガニー材の

量が国営林業公社(Perum Perhutani)よりも増加すると予想している(Purnomo et al. 2009)。

インドネシアで私有林1)は「Hutan Hak」(権利林)または「Hutan Rakyat」(人々の森)と呼ばれる。

インドネシア森林法(1999年第41号法律)において、Hutan Hakは土地所有権が確立した土地に位置す

る森林(Hutan yang berada pada tanah yang dibebani hak atas tanah)と定義されている。一方で、

インドネシア林業省は、「樹木やその他の植栽物による樹幹閉鎖率が50%以上、または/かつ、初回の植

林が500本/ha以上の人々によって所有される0.25ha以上の森林」をHutan Rakyatとして定義している

(1997年第49号林業大臣決定)。またHutan Rakyatは、1)「Pekarangan」(プカランガン)、2)「Tegalan」

(畑)、3)「Alas」(森林)の異なる土地形態から構成される森林資源であることが明らかにされてい

る(Awang et al. 2007;Hinrichs et al. 2008)2)。

Hutan Rakyat(人々の森)という言葉自体は比較的新しいものであるが、インドネシアにおける私有

林の歴史は古く、私有林はPekarangan(ホームガーデン)として20世紀の初頭にはジャワ島にすでに存

在していた(Simon 2008)。1930年代にはオランダ植民地政府も私有林開発に着手し、インドネシア独立

後の1950年代には、インドネシア政府によって植林プログラム(Karang Kitri)が実施された。また政府

植林プログラムと同時にGunung Kidul県、Wonogiri県、Kediri県、Purworejo県、Boyolali県、Sukabumi

県、Garut県などでは農民達自らによる私有林創出の自主的な活動もなされた。1960年代~2000年代前半

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にかけて国家規模の私有林創出に向けた動きは緑化プログラムの下で継続され、1996年には企業と農民

組織のパートナーシップモデルも開始された。2003年以降は、国有地と私有地の両方での植林活動を推

奨する森林・土地修復のための国家運動が実施された(Awang 2005a, Awang et al. 2007, Simon 2008)。

インドネシアの私有林は次のような共通の特徴を持つことが先行研究によって明らかにされている。

1)私有林は不毛で厳しい地形条件にある私有地に位置すること、2)私有林は多様なアグロフォレス

トリー形態や土地所有・立地形態の下で各々の農民家族によって植栽されていること、3)私有林管理

の労働力は制限されており、管理は集約化されず個人単位で家族や非公式な農民グループによって実

施されていること。また管理のための専門的な組織が存在しないこと、4)私有林は農民にとって緊急

時や特別な目的のための現金獲得手段としての貯蓄の役割を有していること。そのため、伐採は個人

のニーズに基づく伐採(Tebang Butuh)であり、仮に樹木が未成熟であってもニーズに基づき伐採さ

れること、6)公式な管理や管理計画がないため、木材産業の需要に対する安定的な木材供給と森林の

持続性の調和は保証されないこと、7)私有林管理は競争力が非常に低く、農民達は木材業者や木材産

業との交渉力を持っておらず、木材流通メカニズムの蚊帳の外に置かれていることである(Awang

2005a;Awang 2005b;Ichwandi et al. 2005;Widayanti et al. 2005;PKHR 2006;Awang et al. 2007;

Ichiwandi et al. 2007;Hinrichs et al. 2008;Simon 2008)。

1990年代後半のチーク材価格の著しい上昇に伴って、チーク材加工業者は国営林業公社(Perum

Perhutani)によって管理される国有林以外の供給源の探索を開始している(Hinrichs et al. 2008)。

そのため、木材加工業者がチーク材を買い付けるために直接村に来るようになっており、近年農民達

も個人のニーズに基づく伐採(Tebang Butuh)だけでなく、木材産業や市場の原木需要に対する圧力

に応じる形での伐採を継続している。このような近年の木材加工業者の行動の変化は、ジャワ(特に

グヌンキドル県)の私有林の管理形態に変化を引き起こしている(KWML 2006)。

上記の背景を踏まえ、本研究の目的は、ジョグジャカルタ特別州グヌンキドル県を対象に、1)私有

林の管理実態及び管理組織の構造、2)私有林管理及び各管理組織が抱える課題について明らかにする

ことである。

第2節: 森林認証の導入と私有林の団地化・協同組合の設立に至った経緯

地域の協同組合であるKoperasi Wana Manunggal Lestari(以下、「KWML」と言う)は、グヌンキド

ル県のKedung Keris村・Dengok村・Girisekar村の3村をまたがる形で2006年に設立された。KWMLは、

設立当初からインドネシア・エコラベル協会(Lembaga Ekolabel Indonesia-LEI)が発行する森林認

証であるPHBML認証(Pengelolaan Hutan Berbasis Masyarakat Lestari-PHBML)を取得している。KWML

の設立及びPHMBL認証の取得に至った経緯について見ていくと、2004年にガジャマダ大学森林学部コ

ミュニティ林業研究センター(Pusat Kajian Hutan Rakyat-PKHR)と2つのローカルNGO(ARuPA及び

SHOREA)が開始した「持続的な私有林管理のユニット創出プログラム」(Rancang Bangun Unit Manajemen

Hutan Rakyat Lestari-RB-UMHRL)(以下、「私有林ユニット化プログラム」と言う)まで遡ることがで

きる。私有林の脆弱性は個人単位で独立的な管理及び管理計画に端を発しており、私有林の質と量の

両面の更なる発展のためには、全ての所有者が容易に理解でき受け入れることができるシンプルな私

有林管理に関するガイドラインが求められていた(Simon 2008)。また当時、私有林の脆弱性は、違法

伐採や国有林の生産力の低下並びに木材加工産業の増大した需要圧力が原因で更に悪化の一途をた

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どっていた(Widayanti et al. 2005;PKHR 2006)(図1)。また別の側面から、私有林も河川流域(Daerah

Aliran Sungai-DAS)の生態系の一部を構成し、河川流域の生態系機能を 適な状態で維持していくた

めには、国有林と私有林は一つの流域を構成するものとして考慮する森林管理計画が必要であり、私

有林管理は個別の家族に基づく管理から共同で集約的な管理へ方向転換される必要があった(Awang et

al. 2007)。それゆえ、私有林ユニット化プログラムは私有林の質と量の両面の悪化から救済する介入

努力であり、河川流域に位置する私有林管理のための集落組織の設立を推奨する実践的研究であった

(PKHR 2006;Awang et al. 2007)。私有林のユニット化を通じた森林資源の保全を実現するため、同

プログラムでは、1)共同森林計画のための区域の設定、2)私有林管理のための個人の能力向上及び

団体として明確な行動計画を持つ森林管理組織の創設、3)私有林のユニット化の村レベルから県・州・

国レベルへの普及、4)インドネシア森林セクター開発の参考資料となる私有林ユニット化プログラム

の文書化・出版、5)私有林ユニット化に関する共通の理解・公式な政策認識の醸成及び協定の締結に

ついて取り組まれた(PKHR 2006)。

私有林ユニット化プログラムと並行して、2005年には「持続的な私有林ワーキンググループ設立」

(Kelompok Kerja Hutan Rakyat Lestari-POKJA HRL)に関するグヌンキドル県知事令(95/KPTS/2005)

が施行された。本県知事令に基づき、1)私有林資源現況調査の実施及び持続的な私有林の潜在性(ポ

テンシャル)の特定、2)森林認証普及のためのプログラムの創設、3)私有林の生産的な経済活動の

促進、4)持続可能な森林経営(コミュニティの経済的なエンパワーメント及び環境保全)の達成、5)

私有林の様々な林産物に関する事業開発を目的として、県知事及び副県知事、県関係局の局長、ガジャ

マダ大学森林学部コミュニティ林業研究センター所長及びローカルNGO(ARuPA及びSHOREA)、私有林農

民グループの代表者等から構成されるワーキンググループが形成された。

図 1 インドネシアの私有林が抱える問題点

注:原典のインドネシア語を筆者訳

出典:PKHR(2006)

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私有林管理のユニット創出プログラム、グヌンキドル県知事令、ワーキンググループの創設を通じ

て、森林認証は、市場で高い信頼を有すると同時に、規定の基準に基づいて持続可能な森林経営を評

価し、森林管理の改善のための提言ができる一つの道具として認識されていった。 終的に同認識は、

グヌンキドル県の全ての私有林は森林認証制度の活用を通じて改善される必要があるという認識に至

る。様々な森林認証の中でコミュニティを基礎とした森林管理(Community Based Forest Management)

のために設計された唯一の森林認証であるLEIのPHBML認証(Scheyvens et al. 2007;Maryudi 2009)

がグヌンキドル県の私有林管理に も相応しい森林認証として採用された。ワーキングループは、グ

ヌンキドル県で地形条件が大きく異なるDengok村・Girisekar村・Kedung Keris村を森林認証のパイロッ

トプロジェクトの対象村として選抜し(Sasono 2006)、69村を森林認証地域の更なる拡大のための追

加的な対象村として位置付けた(Hinrichs et al. 2008)。Dengok村・Girisekar村・Kedung Keris村

で森林認証を取得するためには、法人格を持つ組織が必要であった。法人格を持つ組織の中で、多く

の住民が参加でき、設立・運営のために多くの費用を要しない唯一の法人が協同組合であり、このよ

うな背景の下、KWMLは2006年に設立された。

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第2章: 調査地概要と調査方法

第1節: ジョグジャカルタ特別州グヌンキドル県

グヌンキドル県はジョグジャカルタ州特別州の南部に位置し、総面積は1,485.36km2で、18の郡

(Kecamatan)・144の村(Desa)によって構成される。インドネシア国内においてグヌンキドル県は、

カルスト地帯として有名であり、特に乾季の水不足が深刻な地域である。グヌンキドル県は地形条件

によって北部からBatur Agung地域、Ledok Wonosari地域、Pegunungan Sewu地域(またはKapur Selatan)

の3つの地域に分類されている。Batur Agung地域及びLedok Wonosari地域では地上河川が利用可能な

一方で、Pegunungan Sewu地域では多くの河川が地下河川である(Balai Pemantapan Kawasan Hutan

Wilayah XI Jawa-Madura 2006;KWML 2006)。森林認証のパイロットプロジェクトに選抜されたKedung

Keris村はBatur Agung地域、Dengok村はLedok Wonosari地域、Girisekar村はPegunungan Sewu地域に

それぞれ位置する(図2)。

またグヌンキドル県はインドネシアにおける数少ない森林修復プロジェクトの成功地としても有名

であり、各集落は耕作に適さない土地条件と乾季の水条件の改善のために荒廃地の修復を続けている

(Hinrichs et al. 2008; Nawir et al. 2007)。グヌンキドルの森林及び私有林創出の歴史について

見てみると、地域住民による国有林へのアクセスは歴史的に制限されてきたが、地域住民は日々の生

計手段を獲得するために各々の時代の国有林の管理者と密接な関係の構築を試み、例えば、オランダ

政府や日本政府の占領下では、地域住民は国有林での伐採残材や枝木の収集を行い、日々の生活を営

んできた。日本占領時代には、日本占領政府による軍需品調達のための大規模伐採が原因で深刻な森

林消失と森林劣化が起こり、グヌンキドル県全土に荒廃地が拡大した。それゆえ、インドネシア独立

後の国有林管理の 優先課題は荒廃地の修復にあった。しかし一方では、当時の地域住民による国有

図 2 調査地の位置図

出典: Yanuar Adrian Bomantara氏(ガジャマダ大学森林学部)提供

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林へのアクセスは生活需要の増大に伴って激しさを増しており、その結果として国有林における森林

消失と森林劣化も更に深刻さを増していた。この問題に取り組むために、インドネシア政府は地域住

民による国有林へのアクセスを法的に禁止すると同時に、地域住民が自ら植林することのない非商業

的樹種(Melaleuca leucadendronやMorus sp.)を国有林に植林することによって国有林の安全面を確

保しようとした(PKHR 1999; KWML 2006)。

一方でそのような背景の下、地域住民達自らによる私有地への植林も開始された。例えば、Kedung

Keris村のPringsurat集落では、1951年に当時の集落長による私有林の創出が開始されている。その当

時、地域住民達は肥沃でない小規模な私有地に雨季の間の一度だけ農作物を栽培することができた。

集落長は、チーク(Tectona grandis)・マホガニー(Swietenia microphylla)・アカシア(Acacia

auriculiforms)のような高い商業的価値があり、10~20年で収穫できる樹種は子供の養育費を獲得す

るために集落住民が活用できるもの考え、私有地への植林を推奨した。また集落住民達は、私有林の

創出が地域の水条件の改善や農業セクターの雇用創出にもつながるものと考えており、このような期

待もまた地域住民による私有林創出の原動力となった(PKHR 1999; KWML 2006b)。

現在、29,341haの森林がグヌンキドル県には存在し、県総面積の20%に相当する。その森林の内、55%

はチークによって優占される私有林である。2010年には99,903m3の私有林材が産出され、89%がチーク

材であった(表1)。グヌンキドル県は、年間に150~220万m3の原材料を必要とするジェパラのチーク家

具産業への木材供給源として重要な役割を果たしている(Roda et al. 2007; Rohadi et al. 2010)。

年 チーク 全樹種 チーク材の

占める割合

(m3) (%)

2002 36,699 43,849 84

2003 51,168 61,327 83

2004 66,102 75,855 87

2005 83,252 96,636 86

2006 69,937 81,370 86

2007 59,403 70,614 84

2008 72,789 80,329 91

2009 85,404 95,461 89

2010 88,491 99,903 89

第2節: 調査方法

KWMLは3村(9集落)で構成され、現在の組合員数は686名(Dengok村:205名・Girisekar村:345名・

Kedung Keris村:136名)である。また815.18haの認証森林(Dengok村:229.10ha・Kedung Keris村:

184.25ha・Girisekar村:401.83ha)を管理し、 大で毎月135.3m3の木材生産(全ての樹種を含む)が

可能である(表2)。

本調査は以前に実施したKedung Keris村の調査(2009年12月~2010年3月)に引き続くものであり、

これまでに調査を実施していないDengok村・Girisekar村を主な対象村とし、2010年10月~2011年4月

にかけて複数回に分けて実施した。初めに集落の概況を把握するため、Dengok村・Girisekar村の両村

で各集落の集落長、各私有林管理組織の組合長に対して聞き取り調査を実施した。続いて、両村のKWML

表 1 グヌンキドル県における私有林材の産出量の推移

出典: グヌンキドル県・県森林局(DINAS Kehutanan)統計

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の構成員90名(各々45名)を無作為に抽出し、質問票を用いた個別聞き取り調査を実施した。質問票

は、前回のKedung Keris村で用いたものと同様のものを用いたが、前回の調査時の経験を踏まえ、KWML

が実施している共同事業の評価に関する質問項目を追加した。質問票は、1)土地所有、2)私有林に

植栽している樹木と管理方法、3)家計、4)村の生活、5)各私有林農民組織の活動に関する項目を含

む。同時に個別聞き取り調査と並行して関連する統計・資料を県森林局や村役場で収集した。また調

査結果の分析に際しては、今回収集したDengok村・Girisekar村に加え、以前実施したKedung Keris村

の調査結果を3村の異同を比較分析するために使用した。

村名 集落名 世帯数* KWML

組合員数**

KWML

参加率

(%)

私有林

面積

(ha)

森林認証

面積

(ha)

村面積

(ha)

Dengok

Dengok IV 88 23 26 116.91

229.1 401.112Dengok V 128 89 70 45.43

Dengok VI 165 93 56 66.76

Girisekar

Blimbing 162 110 68 176.83

401.83 2115 Jerukun 111 101 91 143.71

Pijenan 156 134 87 81.33

Kedung

Keris

Kedung Keris 134 36 27 73.0

184.25 1006.947Pringsurat 56 44 79 38.25

Sendowo Kidul 151 56 37 73.0

表 2 Dengok村・Girisekar村・Kedung Keris村の基礎情報

注:*Kedung Keris村(2009年12月時点)・Dengok村(2009年12月時点)・Girisekar村(2010年12月時点)

**2011年3月の年次総会時の総数

出典: 各村統計資料・協同組合年次総会資料より作成

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第3章: 調査結果

第1節: 私有林の所有形態と管理実態

表3はPekarangan(ホームガーデン)・Tegalan(畑)・森林(Alas)で構成される回答者の私有林の

所有形態を示したものである。全体として回答者1人当たり0.84haの私有林を所有していた。3村を比

較してみると、Girisekar村(1.27ha)とKedung Keris村(0.55ha)では2倍以上の平均値の開きが見

られた。更に詳しく見てみると、Pekarangan(ホームガーデン)の面積は3村間で大きな差は見られな

いものの、Girisekar村ではTegalan(畑)の平均値がDengok村・Girisekar村と比較して特に大きいこ

とが分かった。また土地面積別で見てみると、Girisekar村では1ha以上のTegalan(畑)及びAlas(森

林)を所有する回答者が多いことが明らかになった。これらの土地取得の主な方法は相続によるもの

であるが、回答者の約半数は購入によっても土地を取得していた。3村間では土地の購入に関して大き

な差は見られなかったものの、0.5ha以上の私有林を所有する回答者の約60%は追加的な土地を購入に

よって取得していた(表4)。

私有林に植栽されている樹木について見てみると、3村ともチーク・マホガニー・アカシアが主な植

栽樹種として植林されおり、特にチークが優占していた。チークについて見てみると、回答者一人当

たり平均して520本のチークを有しており、Kedung Keris村では一人当たり754本と も多く、Dengok

村では一人当たり296本と も少なかった。更にha当たりの本数で見てみると、Kedung Keris村では1ha

当たり1,372本と他の2村と比較して3倍以上の開きがあった。それゆえ、Kedung Keris村の私有林面積

は も小さい一方で、 もチークが密植されていることが分かる。

地域住民達は、森林管理として下草刈り・枝打ち・間伐を実施していた。森林管理のための労働力

について尋ねたところ、先行研究でも明らかにされているように3村とも家族が森林管理のための主た

る労働力であった。また家族労働力に加えて、集落内の相互扶助や臨時雇用も付加的な労働力として

用いられていた。伐採時の労働力については、木材業者が準備するという回答がDengok村・Girisekar

村では多く見られた一方で、Kedung Keris村では集落内の相互扶助が も多く活用されていた。また

木材の販売先について尋ねたところ、Kedung Keris村では約60%の回答者がKWMLに販売した経験がある

一方でDengok村・Girisekar村では見られず、森林認証取得後も多くの木材はKWMLではなく、村内の木

材業者を通じて流通していることが明らかになった。KWML組合長への聞き取りでも、2010年にKWMLが

販売した認証材は5m3に過ぎず(全てKedung Keris村の認証材)、KWMLによる認証材の販路拡大は大きな

課題となっていた。

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土地種別 村別 土地面積(ha) 平均面積

(ha)非所有 -0.25 0.25-0.5 0.5-1 1-2 2-

Pekarangan

Dengok (N=45) 00(0.0) 30(66.7) 10(22.2) 50(11.1) 00(0.0) 00(0.0) 0.21

Girisekar (N=45) 00(0.0) 34(75.6) 7(15.6) 30(6.7) 10(2.2) 00(0.0) 0.21

Kedung Keris(N=45) 00(0.0) 38(84.4) 7(15.6) 00(0.0) 00(0.0) 00(0.0) 0.13

Total (N=135) 00(0.0) 102(75.6) 24(17.8) 80(5.9) 10(0.7) 00(0.0) 0.18

Tegalan

Dengok (N=45) 11(24.4) 16(37.8) 9(20.0) 40(8.9) 40(8.9) 00(0.0) 0.27

Girisekar (N=45) 50(11.1) 6(13.3) 9(20.0) 80(17.8) 13(28.9) 40(8.9) 0.72

Kedung Keris(N=45) 30(6.7) 28(62.2) 11(24.4) 20(4.4) 10(2.2) 00(0.0) 0.22

Total (N=135) 190(14.1) 52(38.5) 28(20.7) 14(10.4) 18(13.3) 40(3.0) 0.4

Alas

Dengok (N=45) 18(40.0) 17(37.8) 20(4.4) 50(11.1) 20(4.4) 10(2.2) 0.23

Girisekar (N=45) 14(31.1) 11(24.4) 5(11.1) 70(15.6) 80(17.8) 00(0.0) 0.35

Kedung Keris(N=45) 90(20.0) 23(51.1) 8(17.8) 5(11.1) 00(0.0) 00(0.0) 0.2

Total (N=135) 41(30.4) 51(37.8) 15(11.1) 17(12.6) 100(7.4) 10(0.7) 0.26

Total Area

Dengok (N=45) 00(0.0) 10(22.2) 13(28.9) 12(26.7) 6(13.3) 4(08.9) 0.71

Girisekar (N=45) 00(0.0) 30(6.7) 5(11.1) 10(22.2) 15(33.3) 12(26.7) 1.27

Kedung Keris(N=45) 00(0.0) 8(17.8) 15(33.3) 18(40.0) 30(6.7) 1(02.2) 0.55

Total (N=135) 00(0.0) 21(15.6) 33(24.4) 40(29.6) 24(17.8) 17(12.6) 0.84

村別 全体 (N=135)

Dengok(N=45) Girisekar(N=45) Kedung Keris(N=45)

70(51.9) 25(55.6) 21(46.7) 24(53.3)

土地面積別(ha)

-0.25(N=21) 0.25-0.5(N=33) 0.5-1(N=40) 1-2(N=24) 2-(N=17)

8(38.1) 13(39.4) 25(62.5) 14(58.3) 10(58.8)

樹種 村名 植栽本数 所有者

平均

ha当たり

平均 0 1-100 101-200 201-500 501-1000 1001-

チーク

Dengok

(N=45) 00(0.0) 21(46.7) 070(15.6) 9(20.0) 5(11.1) 30(6.7) 296 419

Girisekar

(N=45) 00(0.0) 12(26.7) 6(13.3) 16(35.6) 6(13.3) 50(11.1) 511 403

Kedung Keris

(N=45) 00(0.0) 12(26.7) 6(13.3) 7(15.6) 8(17.8) 12(26.7) 754 1,372

Total

(N=135) 00(0.0) 45(33.3) 19(14.1) 32(23.7) 19(14.1) 20(14.8) 520 619

マホガニー

Dengok

(N=45) 6(13.3) 36(80.0) 20(4.4) 00(0.0) 10(2.2) 00(0.0) 47 66

Girisekar

(N=135) 12(26.7) 30(66.7) 10(2.2) 20(4.4) 00(0.0) 00(0.0) 43 33

Kedung Keris

(N=45) 11(24.4) 28(62.2) 30(6.7) 20(4.4) 10(2.2) 00(0.0) 70 128

Total

(N=135) 29(21.5) 94(69.6) 60(4.4) 40(3.0) 20(1.5) 00(0.0) 54 63

アカシア

Dengok

(N=45) 26(57.8) 18(40.0) 10(2.2) 00(0.0) 00(0.0) 00(0.0) 7 10

Girisekar

(N=45) 12(26.7) 24(53.3) 30(6.7) 30(6.7) 20(4.4) 10(2.2) 146 113

Kedung Keris

(N=45) 10(22.2) 27(60.0) 20(4.4) 30(6.7) 20(4.4) 10(2.2) 125 228

Total

(N=135) 48(35.6) 69(51.1) 60(4.4) 60(4.4) 40(3.0) 20(1.5) 92 109

表 4 購入による土地取得者の割合

注:( )は%を示す

表 5 植栽されている樹木

注:( )は%を示す

注:( )は%を示す

表 3 私有林の所有形態

出典:個別聞き取り調査結果を基に作成

出典:個別聞き取り調査結果を基に作成

出典:個別聞き取り調査結果を基に作成

Page 13: 森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の …...Perhutani)によって管理される国有林以外の供給源の探索を開始している(Hinrichs

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家族 相互扶助 臨時雇用

Dengok (N=45)

45(100.0) 00(0.0) 20(4.4)

Girisekar (N=45)

45(100.0) 12(26.7) 00(0.0)

Kedung Keris (N=45)

41(091.1) 13(28.9) 20(44.4)

全体 (N=135)

131(097.0) 25(18.5) 22(16.3)

(回答者数) 家族 相互扶助

臨時雇用・ 木材業者

Dengok 40 00(0.0) 00(0.0) 40(100.0)

Girisekar 42 10(23.8) 7(16.7) 260(61.9)

Kedung Keris 45 13(28.9) 33(73.3) 50(11.1)

全体 127 23(18.1) 40(31.5) 71(055.9)

(回答者数) 村内の人 村外の人 村内木材業者 村外木材業者 KWML

Dengok 18 00(0.0) 0(0.0) 18(88.9) 10(5.6) 10(5.6)

Girisekar 23 20(8.7) 1(4.3) 15(62.5) 5(21.7) 00(0.0)

Kedung Keris 45 5(11.1) 1(2.2) 35(77.8) 15(33.3) 28(62.2)

全体 86 70(8.1) 2(2.3) 66(76.7) 21(24.4) 29(33.7)

第2節: 私有林管理の組織形態

KWML設立以降、3村の私有林管理は異なる3つの単位で重層的に行われている。すなわち、県単位で

の共同事業を目的とした協同組合(KWML)、村単位での森林計画を目的とした私有林農民グループ連合

(Paguyuban Kelompok Tani Hutan Rakya)(以下、「私有林連合」と言う)、集落単位での森林管理を

目的とした私有林農民グループ(Kelompok Tani Hutan Rakyat-KTHR)(以下、「私有林グループ」と言

う)である(図3)。Dengok村のみ集落単位での私有林グループを持たず、村単位の私有林連合が集落

の私有林をブロックに区切り管理する形態をとっている。

第1項: 私有林農民グループ及び私有林農民グループ連合

KWMLを始め、多くの私有林連合及び私有林グループは、私有林ユニット化プログラム及び森林認

証取得の導入プロセスで設立されている一方で、Kedung Keris村・Pringsurat集落のKTHR Sumber

Rejeki及びKedung Keris集落のKTHR Ngudi Makmurは、他の組織に比べて比較的古い歴史を持つ。

Pringsurat集落の私有林創出の歴史はすでに述べた通りであるが、1950年代の私有地への植林活動

の開始時には、植林のための農民グループは存在せず、植林活動は集落住民が個別に実施していた。

表 6 森林管理のための労働力

注:( )は%を示す

表 7 伐採時の労働力

注:( )は%を示す

表 8 木材の販売先

注:主として個人消費と回答者を除く・( )は%を示す

出典:個別聞き取り調査結果を基に作成

出典:個別聞き取り調査結果を基に作成

出典:個別聞き取り調査結果を基に作成

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その後、現在の私有林グループと同名の農民緑化グループであるSumber Rejekiが集落住民の協調的

行動のために設立された。現在のKTHR Sumber Rejekiはこの農民緑化グループを母体としており、

活動目的は毎月の集会、農業・畜産・苗木のため組合員の協力である。1992年に設立されたKTHR Ngudi

Makmurは当初私有林コンテストで好成績を獲得するための集落住民間の協力を目的として設立され

た経緯がある。2006年にはSendowo Kidul集落にKTHR Tani Makmurが設立されると同時に、PKTHR Margo

MulyoがKedung Keris村の3つの私有林グループを束ねる形で創設されている。Dengok村ではローカ

ルNGOであるSHOREAの支援が始まる前には農民グループが存在せず、私有林ユニット化プログラム及

びSHOREAの支援を通じて2004年に私有林連合であるPPHR Ngudi Lestariが設立された。Girisekar村

における私有林管理の組織化は、2004年にPijenan集落とJeruken集落の集落長達9名によって開始さ

れたTim 9に端を発し、2005年にはKTHR Subur及びKTHR Trubus、2006年にはPKT Sekar Pijerが設立

された。また2006年にはBlimbing集落のKTHR Sekar Eko JatiがPKT Sekar Pijerに加盟し、現在の

体制に至っている。

現在、様々な私有林管理に関する規則が私有林連合や私有林グループによって定められている。

例えば、Kedung Keris村のPKTHR Margo Mulyoを例に見てみると、1)伐採時は組合長へ届け出るこ

と、2)伐採本数の10倍の本数を再植林すること、3)植栽距離は3×4mが望まれること、4)皆伐は

許可されず、 大で25%までの選伐(Selective Cutting)のみ許可されること、5)林地までのトラッ

クの進入は許可されず、近くの集落道まで伐採木を人力で運ぶこと、6)肥料は有機肥料を与え、化

学肥料を与える場合は25%以下にすること、など様々な森林管理に関する規則が定められている。ま

た各村の私有林連合とも伐採が許可される樹齢についての規則も定めており、詳細については次の

第3節で見ていく。

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図 3 私有林管理の組織構造

出典: 協同組合長・私有林農民グループ連合長・

有林農民グループ長に対する聞き取り調査を基に作成

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第2項: 協同組合

森林認証導入プロセスで設立された協同組合であるKWMLは、入会時の出資金5,000インドネシアル

ピア及び毎月の分担金1,000インドネシアルピアを資本に組合員の生活を向上させる共同事業を実

施することを使命としている。計画されている共同事業は森林に関わる事業だけでなく、農業、畜

産、通商、マーケティング、サービスなど多岐に渡る。これまでに実施に至っている共同事業は、1)

認証材の売買、2)肥料の売買、3)チェーンソーの貸出である。

KWML設立以降、3村の私有林管理形態にいくつかの変化を確認できる。1点目として、森林認証取

得プロセスにおいて3村の森林の成長量が特定されたことである。現在の伐採はこの成長量を上限に

実施されており、森林の成長量が特定されたことは過剰伐採の防止に大いに役立っている。2点目と

して、KWMLの設立以前の伐採は主として鋸や斧が用いられていたが、KWML設立以降、組合員はKWML

からチェーンソーを借りることができるため、現在の伐採にはチェーンソーが用いられている。3点

目としてKWMLによる認証材の買い取りが挙げられる。表9はKWMLによる組合員の認証材の買い取り価

格を示し、KWMLの組合員は通常民間木材業者に販売するより10~15%程度高い価格でKMWLに木材を販

売することができる。それゆえ、Kedung Keris村で民間木材業者に木材を販売しているKWML構成員

達も次回は木材をKWMLに販売したいと考えていた。また一方では、森林認証導入プロセスにおいて

農民達はプレミアム価格として20~30%の木材価格の上昇を約束されていたこともあり(Hinrichs

et al. 2008)、Kedung Keris村の調査結果ではKWMLの買い取り価格と農民達の希望価格に大きな差

も見られた。しかし、今回のDengok村とGirisekar村の調査では80%以上の回答者がKWMLの認証材の

買い取り価格は十分であると考えていた(表10)。4点目としてKWML設立以前は無関係であったDengok

村・Girisekar村・Kedung Keris村の3村の交流が、KWML設立以降に開始されたことも大きな変化と

して指摘できる。現在、私有林連合の自主的な活動として認証材の高付加価値化を目的とした木材

加工(木工品や家具製作等)が実施されており、加工技術等に関する情報が3村間で交換されている。

また各村で生産された加工品をKWMLの事業として共同販売する計画も聞かれた。更に以前実施した

Kedung Keris村の調査結果によれば、3村間の距離がとても遠いという欠点はあるものの、多くの住

民は3村の交流自体は友人が増加し、集落の社会ネットワークが広がるものとして好意的に捉えてい

た。

表11はDengok村とGirisekar村の回答者によるKWMLの共同事業が私有林管理に与える効果に対す

る評価を示す。まず認証材の売買について見てみると、KWMLの認証材の買い取り価格(10~15%の上昇)

については十分であると高評価をする回答者が多かった一方で(表9)、認証材の売買自体について

は約半数があまり貢献していないと回答した。この結果については、すでに述べた通り、これまで

にKWMLを通じて売買された認証材の量が非常に限られていることが一つの原因であると考えられる。

KWMLは木材のサンプルを送付するなど販路拡大に努めているが、これまで取引の拡大に至っていない。

また一方で、KWMLだけでなく、インドネシア・エコラベル協会(LEI)によるCoC(Chain of Custody)

認証の拡大も重要である。現在、LEIのCoC認証を取得している企業は2社に限られており、その内1社

は天然林材のみを対象としているため、KWMLによって生産された認証材を受け入れることができるの

は実質的に1社のみである。それゆえ、LEIの認証材を国内外に普及させていくためには、CoC認証を取

得した企業が増加し、それらの企業による認証材の受け入れが不可欠である(原田 2010)。

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更にKWMLを通じた認証材の売買を活発にするためには、2つの課題を解決する必要があると思われ

る。第1点目は、KWMLの資本の強化である。Hinrichs et al.(2008)は、農民達が木材をKWMLに販

売する条件として、1)即時の代金支払い、2)市場より高い買い取り価格の二つを条件として指摘

している。Hinrichs et al.(2008)の示す2つの条件の内、市場より高い買い取り価格については

KWMLはすでに実現しており、Dengok村・Girisekar村の組合員の評価も高い。しかし一方で、組合員

から多くの認証材を買い入れるだけの資本力の強化については未だに大きな課題として残っている。

第2点目として、KWMLによる木材生産量の拡大である。PHBML認証の先駆的事例である東ジャワ州

Wonogiri県の事例と同様に(原田 2006; 原田2010, Scheyvens et al. 2007)、Hinrichs et al.(2008)

は、これまでKWMLも高価格での認証材の買い取りの申し出を受けているものの、買い手が求める購

入量とKWMLの生産量が釣り合わず、契約に至らなかったことを明らかにしている。典型的にコミュ

ニティを基礎とする事業体の木材生産量は不規則で低く、国際的な買い手の購入希望量を満たすこ

とは大きな課題となっている(Scheyvens et al. 2007)。グヌンキドル県では、Dengok村・Girisekar

村・Kedung Keris村の3村は森林認証のパイロットプロジェクトの対象村であり、69村が追加的な森

林認証制度拡大の対象村として位置付けられている。69村に拡大することによって森林認証面積は

15,000ha(現在のKWML:815.18ha)・年間生産量は 大で40,000m3(現在のKWML: 大で1,626m3)い

う試算もあり(Hinrichs et al. 2008)、グヌンキドル県の事業としてKWMLの規模を拡大することも

生産量を増大する一つの方法であると考えられる。

続いて、肥料の売買・チェーンソーの貸出が私有林管理に与える効果について見てみると、全体

として両事業が私有林管理に貢献していると考えている人は約半数に留まる。またDengok村・

Girisekar村の村別に見てみると、認証材の売買・肥料の売買・チェーンソーの貸出のKWMLの3つの

共同事業ともにDengok村の回答者は貢献している(「とても貢献」・「貢献」の合算)と考える傾向が強

く、逆にGirisekar村の回答者は貢献していない(「あまり貢献してない」・「貢献していない」の合算)

と考える傾向にあることが分かる。続いて、表12及び表13は、KWMLの設立が契機となって開始された3

村の交流と森林認証導入が私有林の管理や村の生活に与える効果についての回答者の評価である。全

体的には、3村の交流や森林認証導入は、村の生活の向上よりも私有林管理の面で貢献していると考え

ている人がやや多い傾向にある。また、村別に見てみると、KWMLの共同事業の評価と同様に、Dengok

村の回答者は高い評価をし、Girisekar村の回答者は低い評価をする傾向にある。

Dengok村では評価が高く、Girisekar村では評価が低いという一連の結果について、両村の距離が

一つの要因として考えられる。KWMLの本部はDengok村に位置するが、Girisekar村はDengok村までバ

イクで約1時間の距離に位置している。そのため、Girisekar村の組合員は、KWMLが実施する共同事

業に距離的に参加しにくい状況にあり、事業効果に対する実感も低いことが考えられる。表14及び

表15は、各私有林管理組織の利点と課題及び要望についての聞き取り調査結果を基に要約したもの

である。全体として各私有林管理組織ともに、活動のための資金が不足しており、十分な活動がで

きないことを課題として回答する組合員が多く見られた。また各私有林管理組織への要望としては、

木材販売に関する回答が非常に多く、多くの組合員が木材価格の上昇や認証材販売に対する支援を

優先の要望として各私有林管理組織に対し強く望んでいることが明らかとなった。

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等級 (直径)

価格 (インドネシアルピア/m3)

DL (10-13cm)

650,000~800,000

OP (15-19cm)

1,300,000~1,450,000

OD (20-28cm)

2,250,000~2,450,000

OGD (30-40cm)

4,000,000~6,000,000

十分

あまり 十分ではない

十分でない

Dengok 37(82.2) 4 (8.9) 4(8.9)

Girisekar 39(86.7) 6(13.3) 0(0.0)

合計 76(84.4) 10(11.1) 4(4.4)

とても貢献 貢献

あまり

貢献していない貢献していない 分からない

(1)認証材の売買

Dengok 1(2.2) 25(55.6) 8(17.8) 1 (2.2) 10(22.2)

Girisekar 2(4.4) 4 (8.9) 18(40.0) 18(40.0) 3 (6.7)

合計 3(3.3) 29(32.2) 26(28.9) 19(21.1) 13(14.4)

(2)肥料の売買

Dengok 2(4.4) 36(80.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 7(15.6)

Girisekar 3(6.7) 8(17.8) 19(42.2) 10(22.2) 5(11.1)

合計 5(5.6) 44(48.9) 19(21.1) 10(11.1) 12(13.3)

(3)チェーンソーの貸出

Dengok 2(4.4) 36(80.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 7(15.6)

Girisekar 1(2.2) 11(24.4) 19(42.2) 4 (8.9) 10(22.2)

合計 3(3.3) 47(52.2) 19(21.1) 4 (4.4) 17(18.9)

表 9 KWMLによる組合員の認証材の買い取り価格(2011年4月時点)

出典: 個別聞き取り調査結果を基に作成

表 10 KWMLの認証材の買い取り価格に対する組合員の評価

注:( )は%を示す

表 11 KWMLの共同事業に対する評価

注:Kedung Keris村聞き取り調査時には本質問項目は未実施・( )は%を示す

出典: 個別聞き取り調査結果を基に作成

Page 19: 森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の …...Perhutani)によって管理される国有林以外の供給源の探索を開始している(Hinrichs

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とても貢献 貢献

あまり 貢献していない

貢献していない 分からない

(1)私有林管理

Dengok (N=45) 1(2.2) 27(60.0) 2 (4.4) 1 (2.2) 14(31.1)

Girisekar(N=45) 4(8.9) 19(42.2) 12(26.7) 3 (6.7) 7(15.6)

合計 (N=90) 5(5.6) 46(51.1) 14(15.6) 4 (4.4) 21(23.3)

(2)村の生活

Dengok (N=45) 1(2.2) 27(60.0) 2 (4.4) 1 (2.2) 14(31.1)

Girisekar(N=45) 3(6.7) 13(28.9) 17(37.8) 5(11.1) 7(15.6)

合計 (N=90) 4(4.4) 40(44.4) 19(21.1) 6 (6.7) 21(23.3)

とても貢献 貢献

あまり

貢献していない貢献していない 分からない

(1)私有林管理

Dengok (N=45) 0 (0.0) 31(68.9) 4 (8.9) 0(0.0) 10(22.2)

Girisekar(N=45) 5(11.1) 20(44.4) 16(35.6) 2(4.4) 2 (4.4)

合計 (N=90) 5 (5.6) 51(56.7) 20(22.2) 2(2.2) 12(13.3)

(2)村の生活

Dengok (N=45) 0 (0.0) 27(60.0) 8(17.8) 1(2.2) 9(20.0)

Girisekar(N=45) 1 (2.2) 12(26.7) 28(62.2) 2(4.4) 2 (4.4)

合計 (N=90) 1 (1.1) 39(43.3) 36(40.0) 3(3.3) 11(12.2)

表 12 3村の交流が私有林管理と村の生活に与える効果

注:Kedung Keris村聞き取り調査時には本質問項目は未実施・( )は%を示す

出典: 個別聞き取り調査結果を基に作成

表 13 森林認証導入が私有林管理と村の生活に与える効果

注:Kedung Keris村聞き取り調査時には本質問項目は未実施・( )は%を示す 出典: 個別聞き取り調査結果を基に作成

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利点 課題

協同組合

(KWML)

Kedung

Keris

友人・知人の増加

木材価格の向上

出資金の積立による小規模融資

情報・知識の共有

持続的森林管理への意識の向上

Dengok・Girisekar・Kedung Keris村間の交流

チェーンソーの貸出

組合員による毎月の分担金の支払いが順調でないこと

木材価格が保証されないこと

人的資源の質の未発達

認証材市場の未発達

Dengok・Girisekar・Kedung Keris村間の距離が遠いこと

Dengok

友人・知人の増加

認証材販売のためのマーケティング

出資金の積立による小規模融資

共同事業余剰金の分配

森林管理の知識の向上

トレーニング(森林管理)の実施

高品質な苗・肥料に関する支援

チェーンソーの貸出

組合員による毎月の分担金の支払いが順調でないこと

認証材のマーケティングのための資本の不足

協同組合が資本不足のため組合員の認証材を購入でき

ず、多くの組合員が民間業者に未だに販売していること

Dengokの私有林の木材生産量が木材産業の需要量に未対

森林管理や木材加工のトレーニングの不足

出資金の会計に関する透明性の不足

Dengok・Girisekar・Kedung Keris村間の距離が遠いこと

Girisekar

友人・知人の増加

出資金の積立による小規模融資

相互扶助の向上

情報・知識の共有

トレーニング(森林管理)の実施

森林管理や協同組合に関する知識の獲得

肥料の補助

チェーンソーの貸出

組合員による毎月の分担金の支払いが順調でないこと

共同事業(特に組合員から木材を購入)のための資本が

不足

出資金の会計に関する透明性の不足

KWML・Paguyuban・KTHRの連携が順調でないこと

私有林

農民

グループ

連合

(Paguyuban)

Dengok

友人・知人の増加

木材価格の上昇

苗木・肥料に関する支援

森林管理の知識の向上

トレーニング(森林資源現況把握・林班地図・木材加工)

持続的な森林管理の意識向上

分担金の積立

NGOによる支援

活動のための資本の不足

農業や肥料生産のための用具の不足

組合員の集会への出席率が悪いこと

多くの組合員が樹種より農作物の植栽を優先

組合員の団結が不足

組合員に若者が少ないこと

Girisekar

友人・知人の増加

木材価格を上昇させるための販売調整

苗木の分配

知識・情報・経験の共有

政府・他団体からの情報の獲得

トレーニング(森林資源現況調査・林班地図・有機肥料)

持続的森林管理のための意識向上

分担金の積立による農民グループの資本強化

NGOによる支援

相互扶助の強化

持続的な森林管理の達成のための協調

KWMLとKTHRの橋渡し・活動の調整

活動のための資本の不足

組合員の集会への出席率が悪いこと

運営が活発でないこと

意思決定に関する透明性の不足

役員と組合員のコミュニケーションの不足

組合員の運営役員に対する信頼の不足

KWML・Paguyuban・KTHRの役員間のコミュニケーション

が順調でないこと

3つの集落間の距離が遠いこと

Kedung

Keris

友人・知人の増加

情報・知識の共有

相互扶助の強化

人的資源・天然資源の質の向上

組合員による毎月の分担金の支払いが順調でないこと

組合で定めた伐採許可樹齢が順守されていないこと

組合員の集会への出席率が悪いこと

森林管理の調整の不足

木材価格がまだ低いこと

私有林

農民

グループ

(KTHR)

Dengok ― ―

Girisekar

苗木・肥料に関する支援

分担金の積立による農民グループの資本強化

集落内の相互扶助・住民の団結の強化

森林管理・木材加工の情報・知識の共有・向上

小規模事業の育成

活動のための資本の不足

時折の活動が活発でないこと

一部の組合員の集会の欠席

役員・組合員間のコミュニケーション不足

積立金の会計に関する透明性の不足

木材価格の未上昇・森林認証が木材価格を向上させる力

がないこと(そのため、森林認証の効果を実感できない

こと)

人的資源の質が未発達

生活ニーズに基づいた伐採(Tebang Butuh)を実施して

いる世帯がまだ存在すること(結果として伐採許可樹齢

が順守されていないこと)

伐採時の報告が順守されてないこと

一部の住民の森林の重要性の未認識

Kedung

Keris

友人・知人の増加

相互扶助の強化

情報・知識の共有

持続的森林管理の実現

組合員による月の負担金の支払いが維持されていない

こと

伐採届・伐採許可樹齢が順守されていないこと

木材価格がまだ低いこと

出典: 個別聞き取り調査結果を基に作成

表 14 各私有林管理組織の利点と課題

Page 21: 森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の …...Perhutani)によって管理される国有林以外の供給源の探索を開始している(Hinrichs

-18-

協同組合

(KWML)

Dengok

組合員の個人事業(農業・自営業等)に対する融資

木材価格の向上

認証材の販売支援(マーケティング)

用具(農業・木材加工)に関する支援

高品質の苗・肥料に関する支援

Girisekar

生活のニーズに応じた伐採(Tebang Butuh)対策の実施

組合員の個人事業(農業・自営業・家内工業(ホームインダストリー)等)や生活に対する

資金援助(低金利の融資ローン)(その結果としてのTebang Butuhの減少)

認証材の販売支援(マーケティング)

高品質の苗・肥料に関する支援

活発な運営と活動

意思決定や会計に関する透明性の向上

Kedung

Keris

木材価格の向上

認証材市場の拡大・販売支援(マーケティング)

高品質の苗・肥料に関する支援

トレーニング(森林管理・木材加工)の実施

用具(森林管理)の貸出

私有林

農民

グループ

連合

(Paguyuban)

Dengok

組合員の個人事業(農業・自営業等)に対する融資

木材価格の向上

認証材の販売支援(マーケティング)

トレーニング(森林管理・木材加工)の実施

用具(農業・木材加工)の貸出

高品質の苗・肥料に関する支援

Girisekar

分担金の積立による小規模融資

木材価格の上昇

認証材の販売支援(マーケティング)・組合員間の販売量調整

トレーニング(木材加工)の実施(木材の高付加価値化)

用具(木材加工)の貸出

肥料・苗・畜産に関する支援

組織運営の改善(積極的で活発な運営)・透明性の向上

定期的な集会の実施

KTHR間の活動調整

KTHRと県のワーキンググループ・関係機関(森林局・農業局等)との橋渡し

農作物販売のための良い市場の実現

Kedung

Keris

分担金の積立による小規模融資

認証材の販売支援(マーケティング)

トレーニング(森林管理)の実施

用具(森林管理)の貸出

高品質の苗・肥料に関する支援

Dengok ―

私有林

農民

グループ

(KTHR)

Girisekar

分担金の積立による小規模ローン(結果としてのTebang butuhの予防)

森林管理に関する支援

持続的森林管理に対する意識の向上

組合員間の相互扶助の強化

木材価格の向上・安定化

認証材の販売支援(マーケティング)

高品質の苗・肥料に関する支援

運営面の透明性の向上

Kedung

Keris

分担金の積立による小規模融資

認証材の販売支援(マーケティング)

トレーニング(森林管理)の実施

用具(森林管理)の支援

高品質の苗・肥料に関する支援

第3節: 伐採に関する内部規定と若齢木の伐採

研究の背景で述べたように、国有林から産出される木材の減少に伴って私有林から産出される木材

の重要性が高まると同時に、木材加工業者は、高品質の家具等に使用される大径木を入手することが

難しくなっている。それゆえ、これらの木材加工業者の大径木に対する需要に応えるためには、私有

林においても大径木が生産されることが望まれる。しかし、私有林における伐採は個人のニーズに基

づく伐採(Tebang Butuh)であり、仮に樹木が若齢であっても農民のニーズに基づき伐採されるため、

大径木の生産が難しい状況にある。

現在、Dengok村・Girisekar村・Kedung Keris村の私有林連合では伐採が許可される樹齢と伐採後の

表 15 各私有林管理組織への要望

出典:個別聞き取り調査結果を基に作成

Page 22: 森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の …...Perhutani)によって管理される国有林以外の供給源の探索を開始している(Hinrichs

-19-

再植林に関する内部規定を定めている(表16)。その一方で、3村間で差は見られるものの、全体とし

ては半数近い人が、緊急時や特別な目的のために借金ができない場合に、例え若齢木であっても現金

獲得のため伐採していることが明らかとなった(表17)。表18は、回答者の借金の目的について示した

ものであり、若齢木の伐採の回答の割合が高かったKedung Keris村の場合、子供のための教育費が借

金の大きな原因となっており、子供の教育費獲得のための若齢木の伐採が行われていた。また土地面

積別に若齢木の伐採の有無を見てみると1 ha未満の回答者の約半数が若齢木を伐採した経験があるの

に対し、1 ha以上ではあまり若齢木が伐採されていないことが分かる(表19)。更に農林畜産業以外の

定収入の有無と若齢木の伐採についてχ2検定(p<0.05)を行ったところ、両者には統計的に有意な関

係性が認められた。それゆえ、農林畜産業以外の定収入の有無は若齢木の伐採を予防する一つの条件

であると考えられる。

伐採樹齢に関する規定 再植林に関する規定

Dengok

チーク:15年以上

その他:10年以上

マホガニー:10年以上

伐採1本につき2本

Girisekar 樹齢15年以上かつ直径15cm以上 伐採1本につき5本

Kedung Keris

チーク:15年以上

マホガニー:15年以上

アカシア:10年以上

伐採1本につき10本

Dengok Girisekar Kedung Keris Total

有 7(15.6) 20(44.4) 36(80.0) 63(46.7)

無 38(84.4) 25(55.6) 9(20.0) 72(53.3)

回答者数

子供の

教育 病院

家庭の

用事

家の修理

・建設農業資本

借金や

利子の

支払い

自営業の

資本 生活 土地購入 その他

Dengok 39 6(15.4) 1 (2.6) 00(0.0) 2(5.1) 7(17.9) 1(2.6) 13(33.3)11(28.2) 10(2.6) 4(10.3)

Girisekar 38 8(21.1) 3 (7.9) 5(13.2) 6(15.8) 7(18.4) 2(5.3) 06(15.8)09(23.7) 5(13.2) 00(0.0)

Kedung Keris 45 38(84.4) 11(24.4) 30(6.7) 4(8.9) 2 (4.4) 1(2.2) 010(2.2)020(4.4) 00(0.0) 00(0.0)

全体 122 52(42.6) 15(12.3) 80(6.6) 12(9.8)16(13.1) 4(3.3) 20(16.4)22(18.0) 60(4.9) 40(3.3)

表 16 伐採と再植林に関する各私有林グループ連合の規定

出典: 各私有林グループ連合内部規定より作成

表 17 若齢木の伐採の経験の有無

出典:個別聞き取り調査結果を基に作成

表 18 借金の目的

出典:個別聞き取り調査結果を基に作成

注:( )は%を示す

注:( )は%を示す

Page 23: 森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の …...Perhutani)によって管理される国有林以外の供給源の探索を開始している(Hinrichs

-20-

土地面積

-0.25 0.25-0.5 0.5-1 1-2 2-

若齢木の伐採 有 11(52.4) 17(51.5) 22(55.0) 07(29.2) 06(35.3)

無 10(47.6) 16(48.5) 18(45.0) 17(70.8) 11(64.7)

農林畜産業以外の定収入

有* 臨時的** 無 合計

若齢木の伐採

有 19 12 32 63

無 37 08 27 72

合計 56 20 59 135

第4節: 集落と国際社会の関係に関する認識

現在、グローバリゼーションの進行に伴い、世界経済と各国経済が密接な関連を持ち、連動するよ

うになってきている。また1992年の地球サミット以降、国連レベルや地域レベル、二か国間レベル等

で持続可能な森林経営を巡る国際交渉が取り組まれ、近年は森林減少と森林劣化による排出の削

減(Reducing Emissions from Deforestation and forest Degradation-REDD)の国際交渉も盛ん

である。それゆえ、多くの環境や資源管理は、1つのスケールでなく複数のスケールで考慮される必要

がある(Berkes 2002)。

世界経済の動向が村の生活に与える影響の認識について尋ねたところ、約90%もの回答者がその影響

を感じることがあると回答した(表21)。その理由に尋ねたところ、近年の世界同時不況と並行して

2009年に木材価格が20%以上下落した一方で、苗木・肥料・食料等の価格は上昇していることを理由と

して挙げる回答者が多く見られた。続いて、回答者が販売した木材の流通について尋ねたところ、多

くの回答者はその流通先について知らないものの、全体として60%の回答者が生産者としてその流通先

について知りたいと考えていた(表22)。また3村間で差異が見られ、Girisekar村では木材の流通先に

ついて知っているという回答者が多く見られた。この結果の一つの要因として、Girisekar村では家具

製作等の木材加工が盛んであり、木材の生産現場と加工現場が近いことが考えられる。またKedung

Keris村は流通先を知らない回答者が も多い一方で、流通先に興味がある回答者が も多いという結

果を示し、生産者としての意識が高いものと思われる。また国内外の政策については、3村間に大きな

差は見られず、政策の内容について知らない回答者が多い一方で、全体として約75%の回答者は国際間

の二酸化炭素取引等について関心を持っていた(表23)。

表 19 土地面積別若齢木の伐採の経験の有無

資料:個別聞き取り調査結果を基に作成

表 20 若齢木の伐採と農林畜産業以外の定収入の有無の関係

注: *自営業・公務員・年金・炭焼き・木材加工

**臨時的な農作業・建設業・家具加工業への従事 出典: 個別聞き取り調査結果を基に作成

注:( )は%を示す

Page 24: 森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の …...Perhutani)によって管理される国有林以外の供給源の探索を開始している(Hinrichs

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感じる やや感じる 少し感じる 感じない

Dengok 43(95.6) 00(0.0) 1(2.2) 10(2.2)

Girisekar 31(68.9) 6(13.3) 2(4.4) 6(13.3)

Kedung Keris 44(97.8) 10(2.2) 0(0.0) 00(0.0)

全体 118(87.4) 70(5.2) 3(2.2) 70(5.2)

知っている 少し知っている あまり知らない 知らない

Dengok 30(6.7) 8(17.8) 30(6.7) 31(68.9)

Girisekar 17(37.8) 30(6.7) 20(4.4) 23(51.1)

Kedung Keris 00(0.0) 10(2.2) 33(73.3) 11(24.4)

全体 20(14.8) 120(8.9) 38(28.1) 67(49.6)

興味がある 少し興味がある あまり興味がない 興味がない

Dengok 25(55.6) 20(4.4) 5(11.1) 13(28.9)

Girisekar 12(26.7) 5(11.1) 20(44.4) 7(15.6)

Kedung Keris 43(95.6) 20(4.4) 00(0.0) 00(0.0)

全体 77(57.0) 90(6.7) 25(18.5) 20(14.8)

知っている 少し知っている あまり知らない 知らない

Dengok 20(4.4) 20(4.4) 40(8.9) 37(82.2)

Girisekar 00(0.0) 6(13.3) 20(4.4) 36(80.0)

Kedung Keris 00(0.0) 10(2.2) 5(11.1) 39(86.7)

全体 20(1.5) 90(6.7) 110(8.1) 112(83.0)

興味がある 少し興味がある あまり興味がない 興味がない

Dengok 23(51.1) 8(17.8) 00(0.0) 14(31.1)

Girisekar 22(48.9) 8(17.8) 6(13.3) 8(17.8)

Kedung Keris 43(95.6) 10(2.2) 10(2.2) 00(0.0)

全体 88(65.2) 17(12.6) 70(5.2) 22(16.3)

表 21 世界経済の動向が村の生活に与える影響

注:( )は%を示す 出典: 個別聞き取り調査結果を基に作成

表 22 木材の流通

注:( )は%を示す 出典: 個別聞き取り調査結果を基に作成

表 23 国内外の森林政策

注:( )は%を示す

出典: 個別聞き取り調査結果を基に作成

Page 25: 森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の …...Perhutani)によって管理される国有林以外の供給源の探索を開始している(Hinrichs

-22-

第4章: 総括

インドネシアでは、木材の需給バランスの不均衡を背景に、インドネシアの全森林面積のわずか9%

過ぎない私有林の存在が木材供給の面でますます重要になってきている。また一方では、私有林は安

定的な木材生産を行う場として本質的な脆弱性を抱えており、近年の木材加工業者による村での直接

の買い付けは、ジャワの私有林の管理形態に変化を引き起こしている。その結果として、ジャワ島の

私有林の脆弱性は更に悪化し、持続的な私有林管理が懸念されている。

本稿ではジョグジャカルタ特別州グヌンキドル県を事例に、私有林の所有形態及び管理実態、私有

林管理の組織形態について見てきた。総括するとグヌンキドル県の事例は、森林認証制度の導入を通

した私有林管理ユニットと協同組合の設立による私有林管理の脆弱性の克服への取り組みであり、個

別で分散的な管理から共同で団地的な管理への転換を図る取り組みである。 終的には、私有林のみ

ならず河川流域を単位とした国有林と私有林の一体的な管理が目指されている。

Dengok村・Girisekar村・Kedung Keris村が地形条件の異なる3つの地域に位置することはよく知ら

れている。本稿は地形条件だけでなく、3村の森林の所有・管理形態や集落組織構造が大きく異なるこ

とを明らかにした。それゆえ、更なるKWMLの発展やグヌンキドル県における森林認証スキームの69村

への拡大を考える場合、これらの村落間の森林管理構造の多様性が留意されながら森林管理の「多様

性の統一(Bhinneka Tunggal Ika)」が図られるべきある。一方で、Dengok村・Girisekar村・Kedung Keris

村間の森林所有・管理形態の差異に関する更なる歴史・社会背景の解明は今後の研究課題である。

また本稿は伐採に関する内部規定と若齢木の伐採についても分析を行った。木材加工業者の大径木

に対する需要に応えるためには、私有林においても大径木の生産が望まれるが、私有林の個人のニー

ズに基づく伐採(Tebang Butuh)の下では、大径木の生産が難しい状況にある。若齢木の伐採は、緊

急時に現金獲得の代替手段がない場合に行われ、また若齢木の伐採と農林畜産業以外の定収入の有無

には関係性が認められた。それゆえ、他の収入源の有無が若齢木の伐採を予防する一つの大きな要因

であると思われる。そのため、緊急時に現金が必要な組合員に対する私有林管理組織による小規模ロー

ンは若齢木の伐採を予防し、大径木を産出するための一つの効果的な手段である。更に本稿は集落と

国際社会との関係についても考察を行った。多くの回答者が世界経済の動向が村の生活に影響を与え

ていると感じており、二酸化炭素取引等の国際政策についても強い関心を抱いていた。グローバル化

が進んだ現在、国際社会と集落との距離は非常に近く、国際レベルと現場レベルの双方向の取り組み

が強く求められる。

本事例であるグヌンキドル県の取り組みは、森林認証制度の導入を通じた私有林の脆弱性の克服と

森林の持続性を目的とする先駆的な取り組みであり、私有林管理ユニットのアプローチは大きな可能

性を秘めている。また地域住民の団結によって小規模な資本を集約する協同組合は、自助努力のセー

フティーネットとして緊急時の経済的ニーズを緩和すると同時に共同事業の実施によって地域住民の

生活向上を目指すものである。グヌンキドルの事例はまだ発展の途上にあり、多くの課題も残されて

いるが、流域を単位とした国有林と私有林の一体的な管理目指す新しく大きな可能性を持つ事例とし

て今後も注視していく必要がある。

Page 26: 森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の …...Perhutani)によって管理される国有林以外の供給源の探索を開始している(Hinrichs

-23-

1) 「Pekarangan」(ホームガーデン)は、農民の家に囲まれた場所であり、樹木は通常野菜や他の作

物が耕作される場所の境界に沿って植えられる。「Tegalan」(畑)は、作物、材木用樹木、燃料木

のアグロフォレストリー的な生産のための場所であり、Tegalanでの土地利用は「Alas」(森林)よ

りも集約的である。Alasは、植林のために意図された場所であり、食用作物は栽培されない。また

比較的農民達の家から遠い場所にあり、一般的に土壌は岩石が多く、不毛で、起伏があり、急勾配

である(Hirinchs et al. 2008)。

2) 本報告書では、「Hutan Hak(権利林)」または「Hutan Rakyat(人々の森)」と同義語として「私有

林」を用いる。

Page 27: 森林認証制度の導入による 小規模私有林の脆弱性の …...Perhutani)によって管理される国有林以外の供給源の探索を開始している(Hinrichs

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森林認証制度の導入による小規模私有林の脆弱性の克服に向けた森林管理ユニッ

トと協同組合の設立

2012年6月 第1版第1刷発行 非売品