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新日鐵住金()名古屋製鐵所 爆発火災調査報告 消防研究センター 原因調査室 1 資料6-2

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Page 1: 新日鐵住金 株 名古屋製鐵所 爆発火災調査報告...新日鐵住金(株)名古屋製鐵所 爆発火災調査報告 消防研究センター 原因調査室 1 資料6-2

新日鐵住金(株)名古屋製鐵所爆発火災調査報告

消防研究センター

原因調査室

1

資料6-2

013732
長方形
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新日鐵住金(株)名古屋製鐵所爆発火災概要

【発生日時等】発生時刻:平成26年9月3日(水)12時35分(爆発の時刻)覚知時刻:平成26年9月3日(水)12時36分(119番通報)鎮火時刻:平成26年9月4日(木) 3時33分

石炭塔内の粉砕・乾燥させた石炭(DAPS炭)を貯炭していた炭槽(約100tを貯炭中)において、温度上昇、一酸化炭素濃度の上昇が確認され、その後黒煙が発生。炭槽下部からの払い出しによる対応を行っていたところ爆発が発生したもの。

【発生場所】特別防災区域名:名古屋港臨海特定事業所名 :新日鐵住金(株)名古屋製鐵所

【人的被害】負傷者15名(重症5名、中等症4名、軽症6名)

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発災箇所の全景(愛知県防災ヘリ撮影:9月3日13時47分、爆発から1時間12分経過)3

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第1コークス炉石炭塔(発生場所) 第3コークス炉石炭塔

石炭搬送用ベルトコンベア

石炭搬送用ベルトコンベア

第1コークス炉

中継塔

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爆発に至るまでの第1コークス炉石炭塔の状況

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時間経過 第1コークス炉石炭塔の状況

10:24(爆発2時間11分前)第1コークス炉石炭塔東側設置熱測定器発報 (80℃以上検知)

11:35頃(爆発60分前)第1コークス炉石炭塔上方より白煙が継続的に発生している。

12:15頃(爆発20分前)第1コークス炉石炭塔上方より黒煙が混じっている。

12:30頃(爆発5分前)第1コークス炉石炭塔上方より黒煙が激しく発生している。

12:35 爆発に至る

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第1コークス炉石炭塔

装炭車通路(下部はコークス炉) 石炭払い出し場所 6

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温度上昇を受け、炭槽2列の粉砕・乾燥炭を装炭車に払い出しを行う1回20トンで4回までは完了したものの、5回目の払い出し作業後に爆発したもの。

装 炭 車

石炭塔断面図

炭槽1列:湿炭炭槽2列:粉砕・乾燥炭(DAPS炭:残量:100トン)炭槽3列:湿炭炭槽4列:湿炭

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カットゲートの状況

2列目 3槽 4槽 5槽

2列目5層

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2列目 1槽 2槽

開口方向

カットゲート

炭槽

装炭車へ払い出し

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炭槽1列炭槽2列炭槽3列炭槽4列

第3コークス炉石炭塔へのベルトコンベア

シャトルコンベア(各炭槽に石炭を装入するもの)

第1コークス炉石炭塔では、シャトルコンベアの炭槽2列の上付近の焼損が強い。

中継塔からのベルトコンベア

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シャトルコンベアの状況

石炭塔内部

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2列ホッパーの残炭状況(新日鐵住金㈱名古屋製鐵所資料)

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炭層2列3・4・5槽の状況

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3 4 5

炭槽内部壁面上部

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SITによるDAPS炭(サンプル提供)の測定結果(消研)

120℃を超える温度から発熱反応が発生することを確認

SITが疑似断熱であることから、集積量が大きくなった場合を想定して、更に精密な測定をC80を用いて実施

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119 ℃ 114℃

112℃

106℃

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C80によるDAPS炭(サンプル提供)の測定結果(消研)

38℃から発熱反応が始まることを確認→ 当初の温度、集積量・周囲温度・貯蔵時間の条件によっては火災に至り得る

昇温速度:0.1K/minBlank補正済

To=38℃

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-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

0 50 100 150 200 250

熱流束(m

W)

温度(℃)

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C80による湿炭(サンプル提供)の測定結果(消研)

46℃から発熱反応が始まることを確認→ 常温であれば比較的安全

昇温速度:0.1K/minBlank補正済

To=46℃

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-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

0 50 100 150 200 250

熱流束(m

W)

温度(℃)

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爆発の発生

炭槽下部からの払い出しに際して、通気出来る開口が生じ、新鮮空気が炭槽内に流入して、可燃性ガス(発熱中の石炭から発生)と混合され、炭槽内又は上部からの着火源により爆発が発生したものと推定される。

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火災の原因

火災の原因として炭槽内石炭の酸化発熱による出火が考えられ、その発熱要因は以下のことが推定される。

① 夏季に石炭を炭槽の中で大きな塊として、長時間(3日間

以上)にわたり貯炭したことにより内部の発熱が滞留し、温度が上昇した。

② DAPS設備から高温の石炭が排出され、それが炭槽内に混入したことにより、温度上昇を促進した。

なお、爆発は、炭槽下部からの払い出しに際して、空気が炭槽内に流入して、可燃性ガス(発熱中の石炭から発生)の発生が促進され、混合気が炭槽内又は上部からの着火源により着火し、発生したものと推定される。

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事故の直接要因

(1) 粉砕・乾燥させた石炭の特性の把握の不備

粉砕・乾燥させた石炭の酸化発熱に関する性状の的確

な把握が行われず、長時間の貯炭に至ったこと。

(2) 温度・一酸化炭素濃度の上昇後の対応の不備

炭槽内には固定的な冷却散水設備は設置されておらず、

温度上昇、一酸化炭素濃度が上昇した際に、有効な冷却

ができなかったこと。

また、黒煙が発生した段階においても、炭槽下部からの

払い出しが継続され、空気の流入につながったこと。17

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(1) 平成25年7月23日に第4コークス炉石炭塔第2列の

ホッパーにおいて、DAPS炭を9日間貯留させたことで発

煙事案が発生したため、貯留上限期間を3日間としたが、

連絡事項として所内関係部署に伝えられているのみで、

マニュアル等の作成には至っていない。

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事故の背景要因

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(2) 平成25年7月の発煙事案以降のDAPS設備定期修繕工

事において、平成25年10月に実施された同工事では、DA

PS炭を槽内に貯留せずに実施しているが、今回はDAPS

炭から湿炭への入れ替えを行わずに定期修繕を開始して

いた。

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事故の背景要因

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背景要因の分析

(1) 情報共有・伝達の不足や安全への取組の形骸化

・ 安全対策の情報共有体制が不十分(貯留上限期間を 

3日間とする暫定処置の不徹底)

(2) 人材育成・技術伝承が不十分

マニュアル等の整備やknow‐whyの共有が不十分である。

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事故を踏まえた教訓

(1) 貯蔵・取り扱う石炭の酸化発熱に関する性状を的確に把握し、適切な保管条件(当初の温度、集積量、周囲温度、貯蔵時間)を把握すること。

(2) 万が一のホッパー内の温度上昇、一酸化炭素濃度上昇時にも冷却が効果的に行われるように散水等の設備を用いること。

(3) 安全に係る情報共有体制の強化、マニュアル等の整備及びその実効性の確保の徹底、ルールを逸脱させる可能性のある根本原因への対応の徹底などを図ること。