安全設計のために...
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4章
安全設計のためにすべきこと
4.1 進入を制限する安全設計の考え方
過去の災害統計を見ると、工場における災害の多くが機械装置等へのはさまれ(図 4-1)、巻き込まれ(図 4-2)に起因することが目立ちます。機械装置の安全設計を進める第一歩として、「はさまれない」、「巻き込まれない」ための具体的な手法について確認してみましょう。ちなみにこの手法は、新規設計の機械装置だけが対象でなく、既設の機械設備の安全化に対しても有効に活用できます。
4.1.1 指のけがを防ぐための設計
どのようにすれば指先のけがを防ぐことができるのでしょうか。それは、指が機械の危険領域に到達しない距離を常に保つことで実現できます。現状の日本の作業者の安全に関する規格では、経済産業省が管轄している JIS 規格と、厚生労働省が管轄している労働災害防止のための規格が併存しています。機械設計の実務においては、JIS 規格を優先して設計すればいいのですが、現場での機械設備設置後の改善提案等は、労働災害防止の観点から出てくることが多いと思われるので注意する必要があります。
4.1 進入を制限する安全設計の考え方 49
4安全設計のためにすべきこと
JIS B9707 では指や腕のけがを防止するための規格として、隙間から指や腕が危険源に届かないようにするための推奨距離の規準を示しています。開口部の寸法を e としたときに、指や手を突っ込んでも届かない距離を sr の寸法で表示してあります。たとえば長方形の開口部の径がe であるとすると、図 4-₃ ︵a︶ のような e の幅を持つ長方形の穴の開いた部分になります。この穴から手を差し込んで、どこまで届くかがわかれば安全距離がわかります。
(a)長方形
e e
e
(b)正方形 (c)円形
e
図 4-1 はさまれ危険個所
図 4-2 巻き込まれ危険個所
図 4-₃ 開口部の形状
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表 4-1は、JIS B9707 に記載されている上肢の侵入に対する安全距離の表です。たとえば、長方形の開口部の e 寸法が 15mm とすると、表の 6 行目に示されているように、指の関節までの指または手の安全の確保のためには、危険限界地点より最低 120mm 以上離す必要があることがわかります。これは、開口部の形状が正方形であっても、円形であっても同じであると確認できます。
表 4-1 上肢の進入に対する安全距離(単位 mm)
身体の部分 図示 開口部 安全距離 sr長方形 正方形 円形
指先
e ≦ 4 ≧ 2 ≧ 2 ≧ 2
4 <e ≦ 6 ≧10 ≧ 5 ≧ 5
指の関節までの指または手
6 ≦ e ≦ 8 ≧ 20 ≧15 ≧ 5
8 ≦ e ≦10 ≧ 80 ≧ 25 ≧ 20
10 ≦ e ≦12 ≧100 ≧ 80 ≧ 80
12 ≦ e ≦ 20 ≧120 ≧120 ≧120
20 <e ≦ 30 ≧ 850※1 ≧120 ≧120
肩の基点までの腕
30 <e ≦ 40 ≧ 850 ≧ 200 ≧120
40 <e ≦120 ≧ 850 ≧ 850 ≧ 850
※1)長方形開口部の長さが 65mm 以下なら、親指はストッパーとして働くので、安全距離は200mmまで減らすことができる。開口部 e の寸法は正方形開口部の辺、円形開口部の直径および長方形開口部の最も狭い寸法に相当する。表は 14 歳以上の人が対象。
e
sr
e
srsr
e
sr
e
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e
sr
sr
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