景観講座 「景観から地域づくりを考える」 ·...

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- 45 - 景観講座 「景観から地域づくりを考える」 1 趣旨 住民の日常生活に何気なく存在している景観は、これまでの歴史的経過や社会的・経済的変遷、日々の 生活の積み重ねのなかから、自ずと築きあげられた共有の価値観が、結果的に見える形で表されてきたも のです。 これまで、世界規模でハード・ソフト面から自動車優先社会を形成し、生活面でも機能やスピード性を 重視してきたことで、人々が自然に「出会い・話し・つながる」なかで情報を共有する社会活動を低下さ せ、結果として人間関係が希薄化し、地域への愛着は薄れ、まちの魅力が低下し、景観も含めどこの地方 でも似たような都市形成が進められてきています。日々地域課題が複雑多様化し、本当に大切なもの( 本質) が見えづらくなってきている今だからこそ、住民が自分たちの暮らしをよくするために、本質を捉える目 や力を養い、将来のビジョンを思いえがくなかで、地域の現状や問題点を的確に把握し、実現へ向けた具 体的な学習や取り組みを進めて行くことが必要になります。「自分たちの地域に暮らしていて幸せ/これ からも暮らしていきたい」と思えるような「生き生きとした地域」を形成するためには、それを主体的に 考えられるような住民が必要であり、共に考えるなかで地域・特性を多面的に捉え、良い部分を活かしな がら「地域(生活)の質や魅力」を高め、「必要なアクティビティを生み出していく」ことが求められます。 そこで、昨年度の学習成果をベースに、景観形成(まちづくり)に向けて具体的に住民が取り組んでい る活動を学んだり、まち歩き等を活用したりしながら必要な学習要素を取り入れるなかで、最終的に「ま ち歩きカード(まち歩きで気になった景観・対象物に対し、①目標設定/あるべき姿を考える②現状分析 /目標と比較しながら現状を分析する③目標達成/現状を目標に近づけるために何ができるのか考える、 という 3 つの視点から考察してまとめたカード)」を作成することで、参加者が景観を切り口にして、主 体的に地域づくりを考えられるようにします。また、自らが主体性を持った「課題への気づき」を大切に するなかで多面的に捉える視点を養うために、参加者同士(住民・専門家・行政等)が共に「話し・聞き・ 見て・考える場」を積極的に設けていきます。 2 重点目標 ⑴ 具体的な活動事例等を学び、まち歩きを活用することで、景観・地域づくりに対する理解を深める。 ⑵ 参加者同士が、共に「話し・聞き・見て・考える場」を積極的に設けることで、主体的に課題意識を 持ち、多面的な視点から捉えられるようにする。 ⑶ 参加者の学習成果を「まち歩きカード」にまとめて関係課へ提供することで、市民の景観・地域づく りに対する意見を景観行政等へつなげる。 ⑷ 将来的には、地域づくりを考える際に、構成要素の一つとして景観を捉えられるようになり、地域づ くり実行計画に景観要素が取り入れられるようにしていくために、住民間の日常的な話題に景観が取り 上げられるような文化形成をめざす。

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Page 1: 景観講座 「景観から地域づくりを考える」 · という3つの視点から考察してまとめたカード)」を作成することで、参加者が景観を切り口にして、主

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景観講座 「景観から地域づくりを考える」

1 趣旨

住民の日常生活に何気なく存在している景観は、これまでの歴史的経過や社会的・経済的変遷、日々の

生活の積み重ねのなかから、自ずと築きあげられた共有の価値観が、結果的に見える形で表されてきたも

のです。

これまで、世界規模でハード・ソフト面から自動車優先社会を形成し、生活面でも機能やスピード性を

重視してきたことで、人々が自然に「出会い・話し・つながる」なかで情報を共有する社会活動を低下さ

せ、結果として人間関係が希薄化し、地域への愛着は薄れ、まちの魅力が低下し、景観も含めどこの地方

でも似たような都市形成が進められてきています。日々地域課題が複雑多様化し、本当に大切なもの(本質)

が見えづらくなってきている今だからこそ、住民が自分たちの暮らしをよくするために、本質を捉える目

や力を養い、将来のビジョンを思いえがくなかで、地域の現状や問題点を的確に把握し、実現へ向けた具

体的な学習や取り組みを進めて行くことが必要になります。「自分たちの地域に暮らしていて幸せ/これ

からも暮らしていきたい」と思えるような「生き生きとした地域」を形成するためには、それを主体的に

考えられるような住民が必要であり、共に考えるなかで地域・特性を多面的に捉え、良い部分を活かしな

がら「地域(生活)の質や魅力」を高め、「必要なアクティビティを生み出していく」ことが求められます。

そこで、昨年度の学習成果をベースに、景観形成(まちづくり)に向けて具体的に住民が取り組んでい

る活動を学んだり、まち歩き等を活用したりしながら必要な学習要素を取り入れるなかで、最終的に「ま

ち歩きカード(まち歩きで気になった景観・対象物に対し、①目標設定/あるべき姿を考える②現状分析

/目標と比較しながら現状を分析する③目標達成/現状を目標に近づけるために何ができるのか考える、

という 3 つの視点から考察してまとめたカード)」を作成することで、参加者が景観を切り口にして、主

体的に地域づくりを考えられるようにします。また、自らが主体性を持った「課題への気づき」を大切に

するなかで多面的に捉える視点を養うために、参加者同士(住民・専門家・行政等)が共に「話し・聞き・

見て・考える場」を積極的に設けていきます。

2 重点目標

⑴ 具体的な活動事例等を学び、まち歩きを活用することで、景観・地域づくりに対する理解を深める。

⑵ 参加者同士が、共に「話し・聞き・見て・考える場」を積極的に設けることで、主体的に課題意識を

持ち、多面的な視点から捉えられるようにする。

⑶ 参加者の学習成果を「まち歩きカード」にまとめて関係課へ提供することで、市民の景観・地域づく

りに対する意見を景観行政等へつなげる。

⑷ 将来的には、地域づくりを考える際に、構成要素の一つとして景観を捉えられるようになり、地域づ

くり実行計画に景観要素が取り入れられるようにしていくために、住民間の日常的な話題に景観が取り

上げられるような文化形成をめざす。

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3 実施状況 (全 7回 計 182名)

回数 内容 参加人数

1 景観を読み解く① 「景観から地域づくりを考える」 27名

2 「松本城~あがたの森周辺のまち歩き」 ~PART1~ 26名

3 景観を読み解く② 「まちの読み解き方」 24名

4 まち歩きの POINT① 「松本城~あがたの森周辺の歴史的変遷と景観形成」 27名

5 まち歩きの POINT② 「松本城~あがたの森周辺の地域を知る」 28名

6 「松本城~あがたの森周辺のまち歩き」 ~PART2~ 25名

7 まち歩きの成果発表 25名

4 成果と課題

(1) 成果

ア 景観と地域(暮らし・変遷・地域づくり)のつながりを捉えられている。

→住民が暮らしやすい、誇りを持てるような地域を形成していくために、思い・願いを共有し、未

来の地域を考えることが、良い(未来)景観形成に直結する。

イ 景観を切口にした学習や、景観の視点を取り入れた地域づくりが、地区公民館で進められている。

ウ 景観と地域づくりを結び付けて考えるネットワーク化が進められたことで、市民の学習成果が景観

行政や地域づくり施策へつながり始めている。

エ 今年度の講座課程は、景観から地域づくりへつなげるために活用できるモデルケースとなる。

→地域の歴史的変遷や景観形成について学習するだけでなく、ワークショップやまち歩きを活用し、

地域の現状・課題・住民の思い等を知ることで、視野が広がり主体的・多面的に捉える視点が身に

つくだけでなく、学習理解を深めやすい効果があった。

(2) 課題

ア 市民のなかに「景観から地域を捉える視点」を広げ、地域(地域づくり)への関心を高めていくた

めには、地区公民館での学習等へつなげていく必要がある。そのためにも、今年度の講座課程を参考

にしたマニュアル化が求められる。

イ 景観の視点を取り入れた、具体的な地域づくり活動へつなげる必要がある。

5 今後の方向性

⑴ 講座課程の学習成果・効果等を集約・検証後にマニュアル化し、地区公民館活動へつなげる。

⑵ 景観から地域づくりへつなげるためのネットワークを、地区公民館で構築する。

⑶ 高齢者が集い、子どもが安全に遊び、住民が「お互い様の精神」で率先して管理していくようなスペー

ス(拠点)を、地域に構築する。

⑷ 全市的な展開として、講座参加者の居住する地域の景観にスポットを当て、ワークショップやディス

カッション等を通じてお互いの地域について考えることで、主体的・多面的に捉える視点を養う。学習

後は、参加者及び学習結果等の情報を地域へつなげることで、地域でのアクションへ展開する。

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第1回 景観を読み解く①「景観から地域づくりを考える」

日 時:平成 26年 9月 10日(水) 午後 7時~9時

会 場:第三地区公民館 大会議室

参加者:27名

講 師:内田 真輔 氏(信州大学 経済学部)

話題提供:中田 明穂 氏(松本市都市政策課)

コーディネータ:倉澤 聡 氏(都市計画家)

1 要旨

景観から地域づくりを考えるとは、「景観の本質を考え・捉えて行くことが、地域づくりへ繋がってい

く」ということであり、そのメカニズムを経済や行政、社会構造の変化等の仕組みから捉えるために、昨

年度開催された講座内容をベースに基礎学習を行った。

また、講座趣旨の 1つでもある、これからの〝松本らしい景観の将来像〟を創造し、地域ビジョンを考

える際の参考事例として、「松本市景観賞(担当課:都市政策課)」及び「まちづくり活動部門賞」について

話題提供を受け、講演・話題提供の内容を共有するために、グループ毎ワークショップを行った。

2 概要

⑴ 開講式、本講座の概要説明(事務局)

⑵ 講演「景観の基礎学習/講師:内田 真輔氏」

⑶ 話題提供「景観賞とまちづくり部門賞/発表者:中田 明穂氏」

⑷ ワークショップ(自己紹介、講演・話題提供内容の共有)

⑸ 参考資料の紹介「人間の街-公共空間のデザイン-」

⑹ 次回のまち歩き事務連絡(事務局)

3 講座内容

⑴ 開講式(司会:牛丸副委員長 説明:事務局)

ア 「公民館の学びがつなぐ、松本らしい地域づくり・人づくり事業」の概要説明

イ 「景観から地域づくりを考える講座」の概要説明

ウ 今後の講座概略と運営方針、コーディネータ等の紹介

エ 第1回講座の概要説明

⑵ 講演「景観の基礎学習」(講師:内田 真輔氏)

ア 景観の定義(景観の本質を考えることが、地域づくりを考えることにつながるのはなぜか)

① 景観の本質

景観とは、風景(景色)という対象物を観察(その状態や変化を客観的に分析)した結果であり、

風景は地域の暮らし・産業活動・自然・歴史など、地域を構成する多様な要素の関わり合いによっ

て日々変化するものである。

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≪多様な要素とは…≫

○環境資源:自然(大気、水、森林、地理的特徴等)

○文化資源:歴史(城などの有形遺産、伝統・価値観などの無形遺産)

○人的資源:住民(家族形態、居住形態等)

○経済資源:資本(産業・道路などの公共インフラ、知識・技術等)

② 地域(地域づくり)

地域(〇〇らしさ/例:松本らしさ)を形成するには、どのような性質が求められるのか。

特質性

周辺の土地空間とは「異なる特徴(特色)=個性」を持っている。

等質性

全体として統一感(空間的・時間的な連続性)がある。

③ 景観と地域づくり

存在するものが特質性及び全体としての統一感(等質性)を持つことで「〇〇らしさ」につなが

り、両者をバランスよく兼ね備えたものが良好な景観と言える。

⇒地域づくりの成果として、「〇〇らしさ」が良好な形で共有・具現化された時に、良好な景観

はアウトプットされる。

④ 「らしさ」と景観構成要素の関係

環境・文化・人的・経済資源などの様々な要素が複雑に絡み合って、「〇〇らしさ」は形成され

るが、特色を出しても一体感が無ければ共有される景観にはならない。

イ 景観と経済

ウ 景観と行政

経済成長のなかで、利便性や均質

化を重視し、大規模商業化を推し

進めたことで、特色・連続性を消

失してきた。その結果、アイデン

ティティも失われ、そこに暮らす

意義(価値)をも無くしてきた。

トップダウン・規制・量規制から、

図右側への転換が必要

景観は、良くも悪くも、社会経済

構造の変化に伴い変化してきた

景観は、良くも悪くも、国策地方

行政の変化に伴い変化してきた

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エ 今後に向けて

これからは、市民ひとりひとりが景観の本質を理解・共有し、「景観の将来像を想像(目標を決める)・

創造(地域づくり)」するために、地域ビジョンを考え、行動を起こしていく必要がある。

【景観価値の共有に向けて必要な行動等】※トップダウンとボトムアップの両方が必要

行政

規制・誘導 法律・条令・区画整理(高さ・広告規制、景観計画等)

誘導・支援 補助金・課税

市民

啓発・教育 広報・対話・人材育成講座(松本市景観賞・まちづくり出前講座)

学 習 対話・研究勉強会・実践(市民団体等による諸活動)

⑶ 話題提供「景観賞とまちづくり部門賞」(中田 明穂氏)

ア 景観賞開催趣旨(よい景観は、よい「まち」美しい「まち」)

美しい街並みを形成していくには、夫々の建物等が魅力ある個性を発揮するなかで、本市の風土と

歴史的環境に配慮し、調和を図っていくことが求められる。そこで、新たな景観を創出し、守り育て

るなかで景観への意識を高めるとともに、松本らしい景観形成を推進する一環として開催する。

イ 景観賞部門

① 建築物・工作物部門(住宅、事務所、屋外広告物、生垣、塀等)

② まちなみ部門(建ち並ぶ建築物、緑地・オープンスペースの集まり等)

③ 公共施設部門(道路、河川、公園及び広場等)

④ まちづくり活動部門(まちづくり協定締結、勉強会、ワークショップ、緑化活動等)

ウ 景観賞の審査基準等

① 「建築物・工作物部門」と「公共施設部門」

地域特性や自然・周辺景観への配慮と調和/象徴性/独創性/松本らしさの創出 等

② 「まちなみ部門」と「まちづくり活動部門」

美しいまちづくりへの貢献/景観形成の向上に寄与する活動 等

エ まちづくり活動部門(景観とまちづくりの関係)

① 目に見える景観は、個人や地域コミュニティなどの様々な単位で、自分達の住むまちをより良く

しようという営みの積み重ねが作り出すもの。

⇒景観はひとりでに出来上がるものではない/単なる風景ではない

② 目に見える「いいな」と感じる景観には、目に見えない景観がある。

(まちへの思い、歴史や風土を大切にする、地域で取り組むコミュニティ等)

⇒コミュニティの規模に関わらず、皆で共有・実践していくことがまちづくり活動であり、まち

づくり活動の成果から生まれた景観を表彰するのが「まちづくり活動部門賞」

オ 景観賞の課題

景観賞の認知度/応募件数の減少/マンネリ化/景観賞の効果の検証

⑷ ワークショップ

ア 自己紹介

イ 講座に参加したきっかけ・思い、景観について関心のあること

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ウ グループディスカッション結果

1グループ

景観について更に学習したい、まちをもっと良くしていきたい等の意見が多く、その気持ちを大切

にして今後の講座に臨みたい。

2グループ

○区画整理で街並が整備される一方、失われているものがあるのではないかと感じている。

○きれいなまちで暮らしたい、という思いを実践につなげていくために参加した。

○これまで、居住している街並について考える機会は皆無であったが、自宅前にマンションが建設

されて日照が悪くなり、嫌な思いをしている。この機会に自分のまちを見直してみたい。

○昨年講座で、景観は単なる景色ではなく、人の営みも含めて景観だと学ぶことができた。今年の

実践的な内容を見てさらに学びを深めたい。

3グループ

○松本へ来たばかりで、もっと松本のことを知りたい。

○松本駅前に「山のまち/城のまち」と看板があり、他都市と似たようなまちづくりになっている

と感じたため、観光客を呼べるような整備などを考えたい。

○開発の結果、居住地から北アルプスが見えなくなったので、その背景を探ってみたい。

4グループ

○これまで、居住地の景観を意識することはなかったが、市との合併により、急激に人口が増え、

まちの景色が変わるどころか自分の生活リズムまで変わってしまった。そんなことに危機感を感

じている(梓川地区から参加)。

○岡谷市は、高度成長期の大変化によってまちが出来上がって以来、ほとんど大きな変化はない。

ただ、見えづらいだけでまちは少しずつ変化しており、それに気づかずに過ごすことに対して危

機感を感じている(都市計画職務の従事者)。

エ コーディネータ講評

内田氏の「景観の基礎学習(講演)」から、「景観とは何か」について一定の理解が得られたと思う。

「〇〇らしさ」は、良くも悪くも使われる言葉であり、例えば「昨日も今日もあの場所では事件が起

きている。○○らしい」も「らしさ」であるが、本講座における共通認識としてあるのは「良いと感じ

るらしさを作っていくこと」だと皆さんも考えていると思う。

よって今後の進め方としては、景観の中に「心地よい」「将来に引き継ぎたい」と思えるような「良

いもの」を創ることを想像しながら、その中から「具体的に形にしていく」という方向へ進めて行きた

いと考えている。

次回のまち歩きは、第三地区公民館をスタート地点に実施するが、ここ一帯は昔田畑であり、カタ

クラ製糸等をはじめとした近代の工業化によりインフラが整備され、その発展・影響により変化して

きた場所である。そういった歴史ベースの部分もレクチャーするが、歩く中で「赤門と一緒になった

ゴミステーション」のように、おもしろい発見があると思う。次回は少し探偵団になった気分で歩く

一方、歴史・意味のつながりを感じながら考えてみていただけると良いと思う。

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⑸ 参考資料の紹介「人間の街-公共空間のデザイン-(ヤン・ゲール)」

⑹ 次回のまち歩き事務連絡(事務局)

第2回 「松本城~あがたの森周辺のまち歩き~PART1~」

日 時:平成 26年 9月 23日(火) 午前 9時~12時

会 場:第三地区公民館 大会議室(集合場所)

参加者:26名

講 師:倉澤 聡 氏(都市計画家)

1 要旨

初回に、講演(景観の基礎学習等)や参考資料等から、景観から地域を捉える視点について学習した。

そこで、学習成果を基に、松本城~あがたの森周辺で講師が設定したコースを歩き、各自が自由に気に

なる景観・対象物を捉えることとした。

2 概要

⑴ 講師からまち歩きのポイントについて説明

⑵ まち歩き

⑶ 「まち歩きカード①」の提出方法等について確認

3 講座内容

⑴ まち歩きのポイント

ア 講師の案内を基に、グループ内で会話しながら、「気になった・面白い」と思った箇所を撮影する。

イ 「人が滞留しているか」を着目点に、まちを捉える。

ウ 武家のまち・町人のまち等、「まちの仕組み」を確認する。

エ 「まつもと水巡り」の地図を参考に、昔のまちなみ・まち割りを意識する。

⑵ まち歩き(各箇所のポイント/講師の解説より)

ア カタクラモール周辺

トチの木や五介の松、沢山の低木等もあるなかで、低木を柵として利用している。柵以外の活用方

法を検討するとともに、人が過ごす空間を設けていくとなお良い。また、カフラスの外壁にはスクラ

ッチタイルが使用されており、今後カフラスを残した再開発について注視する必要がある。

イ 国体道路沿い

カツラの木及び、アパートと店舗が一体となった建物の作り出す景観に、注目する必要がある。合

わせて、路面電車の清水駅跡地や、40年前のまま残っている町内案内看板から過去を垣間見ることが

できる。

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ウ 国体道路から餌差町へ続く脇道

城下町より歴史ある道で、自然の地形が描くカーブは、城下町の直線道路とは違った心地よさを感

じさせる。女鳥羽川は、堤防が低くよく溢水したが、現在では花崗岩の堤防が高く設置されたことで、

溢水の心配は減少している。ただし、手入れを怠ると雑草が成長し、強度が落ちる。地域の防災意識

が高まっていけば、堤防の機能を維持させるために、清掃活動へつながることも期待できる。

エ 餌差町~鍛冶町

昔の街並(構成)を残した町で、閻魔堂や町はずれにある燃料店、壁面を洗い出した建物、ゆがみ

ガラスを使った洋館風のまちづくり相談室(かわかみ建築設計室)が目を引く。道幅や建物の高さに注

目すると、明治・大正時代の家屋は少し高くなっており、各戸の間口の広さが整っている「ウナギの寝

床」形態がうかがえる。町屋の建て方は、入口から「母屋→庭→蔵」となっており、町の裏を通る水路や、

カーブが魅せる街並にも注目したい。また、増加する空地を駐車場化(歯抜け状態)することが多く、

今後どのように工夫すれば雰囲気の良いまちづくりができるか検討が必要である。

オ 山家小路

植栽による雰囲気の演出や、明治大火で焼失を免れた今井商店が残る。

カ 上土~大名町(商人の町)

ここも「ウナギの寝床」形態の活用方法が課題となる一方、まちづくり協定が反故された建設途中

のマンションがある。こういった現状から、住民と業者が十分に議論する手段がないことや、長期的

なビジョンで住環境整備を進めるための建築等、まちとの調和性を意識した住宅建設への課題がうか

がえる。また、まち毎に路面のデザインが異なる点に着眼すると、面白味が感じられる。

キ 大名町~西堀~縄手通り

大名町は武家地であったため、間口が広くとられている。千歳橋周辺は、松本市の中心市街地にあ

まり無い「開けた空間」「都市的な空間」であり、本市のヘソと言える。初回の学習でも確認したとお

り、「人」もまちや景観を形成する一部であることからすると、大手門駐車場でバスを降りた観光客の

視点、通りを歩く・休む・過ごす等の「人の滞留」に注目することで見えてくる部分がある。また、

土塁公園に着目すると、公園の持つ意義や空間で人がどのように過ごすのか注目してみることにも意

味がある。縄手通りには「緑(樹木等)」がある反面、女鳥羽川との連続性までは考慮されていない様

子がうかがえる。

ク 中町

蔵シック館に象徴される「蔵のまち」をコンセプトにしたまちであり、鉤の手(視界を遮るため、

道をわざとずらしている)といった特徴も残されている。明治大火後、耐火対応のまちづくりが進め

られている。

ケ 宮村町~大橋通~第三地区公民館

池上博久司法書士事務所の建物は本棟造りの庄屋で、過去の水位を思わせる床の高い倉などが特徴

的である。北側の水路は、定期的に町会で清掃を行っている。また、この場所でも、空地への対応は

課題となっている。

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⑶ まち歩きカード①の提出について

ア 「気になった・面白い」と感じた景観・対象物について撮影した写真を整理し、まち歩きカード①へ理

由を明記する。

イ 完成したまち歩きカード①は、グループごと世話人が取りまとめる。

ウ カードにまとめられない場合は、次回写真を持参する。

4 アンケート(一部抜粋)

○変わりゆく街並を確認しながら、講師のレクチャーもあり、今後「景観と地域づくり」を結び付けて考え

るのに、良い機会となった。

○自分の視点からまちを見るだけでなく、参加者同士で話をしながら歩けたことで、多角的に捉える機会

となった。

○滞在することを目的に作られた場所に人がいないこと、憩の場所に設置されたベンチに人が座っていな

いこと等、その理由やベンチの設置方法(目的)について考えてみたい。

○普段あまり意識しながら歩くことが無く、道路や水路等の現状や役割等を探ってみたいと感じた。

○見慣れた建物等の歴史・背景を知ることで、愛着が生れて大切にしていきたいと感じた。

第3回 景観を読み解く②「まちの読み解き方」

日 時:平成 26年 10月 1日(水) 午後 7時~9時

会 場:第三地区公民館 大会議室

参加者:24名

講師兼コーディネータ:倉澤 聡 氏(都市計画家)

1 要旨

第 2回講座(9月 23日)に行ったまち歩きで、参加者がまとめた「まち歩きカード①(まち歩きで気になっ

た景観・対象物についてまとめたもの)」を基にワークショップを行い、その結果を受けて講師が「まちの

読み解き方(まちを景観の視点からどのように捉えるのか)」の観点からレクチャーする。その後、写真の

分類等行う中で、読み解き方について理解を深める。また、同カードは、2回目のまち歩きのルート設定(参

加者の傾向を把握)に活用する。

2 概要

⑴ ワークショップ「まち歩きで気になった景観・対象物についての理由」

⑵ グループ発表「特に気になった景観・対象物」

⑶ レクチャー(講師:倉澤 聡氏)

⑷ ワークショップ「気になった景観・対象物の分類」

⑸ グループ発表

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3 講座内容

⑴ ワークショップ「まち歩きで気になった景観・対象物についての理由」

気になった景観・対象物の理由等を共有するとともに、特に気になった 1点について取り上げる。

1グループ

○カタクラモール南側から北アルプスを眺望する風景は「松本らしさ」であり、イオンモールの再開発

により、地下水が枯渇しないか、松本の良さ(風景等)が残るのか、良い街になるのか疑問が残る。

また、カフラスのスクラッチタイルを残すことで、松本市の発展を支えた片倉家と今井五介の歴史

を伝えて行きたい。

○建物の前に「緑」があると生きいきとした印象を受ける。

○なまこ壁や自分が座りたいと思えるような場所(ベンチ)に着目した。

○自分が好きだと感じる場所(落ち着く場所)を捉えるなかで、そういった場所が街中に存在する意

義・価値を感じた。

2グループ

○街路灯は、景観を演出する一要素になり得ると感じた。

○壁の模様をなまこ壁風にペンキで描いてある場所があり、周囲の景観に配慮しようとする意図はく

み取れるが、実際には違和感が残る。

○通りによって補装が異なることや住宅間の隙間(通路・水路)に、面白さを感じた。

○全体的に見て、街中に木(緑)が少ないように感じる。

3グループ

○日ノ出町通り

イオンモールの再開発に伴い、確実に変化していく場所であり、景観も含めて今後どうあるべきか

の議論が必要な通りである。通りが活性化されるなかで店舗が増える可能性もあるが、住民・商業者・

行政等が一緒に考える機会を設け、統一感を持って進めて行くことが大切になる。全てを統一する必

要はないが、通りとしての付加価値をつけるような目に見える景観形成も進めていくことで、地域の

財産にもなっていく。行政に出来る部分も限られてくるので、住居や店舗を工夫する中で、付加価値

をつけていければ通りとしての魅力が UPしていくだろう。

○大名町通り

観光バスの駐車場において、コンクリートがベタ打ちされており殺風景に感じる。すぐ横には老朽

化したビルが放置されており、観光客が下りて目にするものなので、要検討な場所である。また、歩

道が狭い上に自転車や花壇があるため、大勢で歩くのは困難であり、観光客のことも考えると、その

点も検討の必要がある。

○掘割

松本は湧水が多く、湧水マップ作成や湧水巡り等も行われているが、湧水を活用した掘割が市街地

をめぐるようになると、もっと情緒あふれるまちになると思う。合わせて、散歩途中に休憩できる場所

(ベンチ等の設置)を更に設けて行くとなお良い。

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4グループ

○中町通りでは、間口の狭い長屋(ウナギの寝床式)を上手に活用しているのが印象的であった。ただ

し、その横に駐車場が広がっている場所もあり、建物を有効活用できなかった結果、いくつかの建

物が壊されて駐車場化されたことを考えると、対照的な景観であると感じた。しかし、それを後世

まで保存することを良しとするだけは解決には至らず、空き家となった場合の活用法などを、その

まちに合った形で考えることが重要である。

○西堀の土塁公園は、公園と呼ぶには程遠く、人が憩う場所づくりが出来ていないと感じた。無論、

文化財的価値から歴史を保存することは重要であるが、「公園」という観点からすると、人がそこで

滞留し、会話が生まれ、何かしらのアクティビティを生み出すことが重要となる。どちらかと言え

ば、その辺のバランスが文化財側へ偏り、公園としての利活用が軽視されている。

○水路に赤茶けた鉄板で蓋をしているだけの場所や、ありきたりで無機質な水路の様子から、人と水

の関係性を上手にまちの中で演出している源池周辺との大差を感じた。少しの工夫で道のあり方や

まちの雰囲気を変えることが出来ると思うので、ないがしろにせずに考えてみると面白い。

⑵ グループ発表「特に気になった景観・対象物」

1グループ 「かわかみ建築設計室」の建物

グループ内の共通認識として、松本らしい気になる景観は、「歴史を感じるレトロな雰囲気を持った

景観」と定義されたため。

2グループ 「街路灯」

街路灯が景観に与える影響が大きいため。

3グループ 「観光バス駐車場と灯篭」

観光客がバスから降りて松本城に向かうスタート地点であり、殺風景だとモチベーションが上がら

ない。灯篭も貧相なものが多く、残念に感じたため。

4グループ 「水路」

水路の見せ方や人との関わり方・生活感など、まちなかにおける「水」に着目したため。

⑶ 講師よりレクチャー

景観・対象物に対して、例えば 1 グループは良いイメージで、3 グループは悪いイメージで捉えてい

る。大切なことは「気になる」という意識で、今後はその意識を講座内だけでなく、自身の生活の場にお

いても持ち、景観についてもっと会話するなかで、「伝える力」を養ってほしい。そこで、気になる景観・

対象物を整理して捉えて行くために「軸」を用意したので、次のワークショップでは夫々を分類するなか

で、ディスカッションを通じてコミュニケーション能力を養ってほしい。

⑷ ワークショップ

「気になった景観・対象物の分類」

分類軸

縦軸:現在の評価

横軸:時間的変化 守りたい

変化させたい

良いイメージ

悪いイメージ

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⑸ グループ発表「ワークショップの結果より」

1グループ

良いイメージのものが多く、落ち着き・趣がある、歴史的価値を後世に伝えるために守る等の理由で

あった。また、「緑・水」と人との関わりが出来る場所は、雰囲気が良くもっと利用されていくと良い。

2グループ

良いイメージで守りたい、悪いイメージで変化させたいものに多く分類された。また、住宅間の隙

間の通路・水路は利用価値が高い。

3グループ

全体的に、悪いイメージで変化させたいものが多く、変化には経済的側面も大きく影響するため、住

民の意見を聞く必要がある。

4グループ

そこに暮らす住民のことを考慮すると、昔ながらの風情や趣のある建築物をどのように守っていけば

いいのか議論の必要がある。「歩きやすいまちづくりとは何か」も考えて行きたい。

⑹ まとめ(倉澤 聡 氏)

景観は、時間的な積み重ねで出来る物であり、少しの気づきを共有することで生まれる変化がある。

今回のように、自由に意見交換することの大切さを認識し、日頃から更に景観について語り合う場を

設けていただきたい。

4 アンケート(一部抜粋)

○一つの景観・対象物に対して意見交換することで、異なる視点があることがわかり、自分で気が付いて

いない視点から捉え直すことができた。

○講演・ワークショップを通じて、「価値観の共有」を図っていくことの重要性が理解できた。

第4回 まち歩きの POINT①「松本城~あがたの森周辺の歴史的変遷と景観形成」

日 時:平成 26年 10月 15日(水) 午後 7時~9時

会 場:第三地区公民館 大会議室

参加者:27名

講 師:小松 芳郎 氏(松本市文書館)

小林 一成 氏(松本市都市政策課)

コーディネータ:倉澤 聡 氏(都市計画家)

1 要旨

まち歩き PART1で観察した地域の理解を深め、次回のまち歩きを効果的に行うために、歴史的変遷と景

観形成という2つの観点から学習する。

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2 概要

⑴ 講演「松本城~あがたの森周辺の歴史的変遷」(小松 芳郎 氏)

⑵ 講演「中心市街地の景観とまちづくり」(小林 一成 氏)

⑶ 質疑応答

3 講座内容

⑴ 講演「松本城~あがたの森周辺の歴史的変遷」(講師:松本市文書館 小松芳郎氏)

第 2回講座(9月 23日)で歩いた対象地域の歴史的変遷について、時代を追ってまち割り図等から読み

解いていきたい。明治維新頃の城下町まち割り図は、今から 150年程前のまちの様子であり、今日の一

番の原型とも言えるものである。町人地と武家地の部分があり、町人と武士が住み分けて暮らしていた

様子が分かる。今も残る通りや城・堀がある一方で、明治以降大きく変わった部分もあり、現在も変わ

り続けている地域である。変化の例としては、明治 23年に松本製糸場や松本停車場が出来たこと、鍋屋

小路が大正時代を経て駅前通りへと変わってきたことなどがある。明治から大正にかけて、城下町に程

近い場所へ大きな施設ができ、それが今日のまちの輪郭形成につながっている。城下町は江戸時代から

のまち割り(武家地・町人地)の影響によって大きな施設が入りにくかったため、郊外に向けてまちが広

がっていった。今から 289年前の「享保 10年復元図、松本のまち想像図」と現在を比較すると、堀が残っ

ている・埋められた・今後復元する部分などが見えてくる。本丸御殿や二の丸御殿は火災により焼失し

ており、残っている建造物等を起点に観察すると良い。

江戸時代、千歳橋より先の武家地に一般人が立ち入ることはできなかったが、明治になって往来が自

由になり、新しい時代を感じさせる出来事である。明治 9年に開智学校が新築された当時、南深志一番

町であったところが現在の本町であり、学校の入口は本町にあった。「1月 11日初市(南深志一番町)の

様子」を描いた絵図から、初市の際は大変な賑わいだったことが分かり、その賑わいも含めて当時の景観

が形づくられている。景観とは、廃墟のような建物を指すのではなく、当時そこに人が住んでいた賑わ

いも含めてのものである。

美濃の武士が 10年かけて絵と説明を書いたとされる、天保 14年の善光寺道名所図会から、源智の井

戸が「第一の名水である」との記述や、この井戸に対して制札が出されたこと等がわかる。この制札は、

420年前に石川康永が井戸を汚す行為を禁じるために出したもので、殿様が井戸に制札を出すのは異例

なことであり、それほど綺麗な水であった。現在の源智の井戸は、この図を参考に復元されたもので、

多くの市民が水を汲みに集い、平成の名水 100選に選ばれるなど、名所となっている。

大正元年、篠ノ井線の松本駅ができて 10年程経過した頃、駅建設によって長野・松本間が日帰りで往

来できるようになった。結果、本町・博労町・岡田の宿場町経営に多大な影響が出た。松本駅の東側、

中町から真東に伸びる日ノ出町という道ができ、その先に片倉製糸場が建設される。そこでは工女が働

き現金収入を得て、繭なども買ってもらうことができた。その後、大正 3年 7月に日銀松本支店、9年

には松本高等学校が建設され、製糸業の発達を背景に金融の波も来ていた。

昭和 4年頃の様子をひも解くと、松本駅と学校を結ぶ道である鍋屋小路は、開校を機に大きく広げら

れ、ここに「ちんちん電車」が通ることになる。昭和 6年の地図(著作者:松本市都市計書)では、地名・町

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名が記されており、当時の景観を知るうえで重要になる。まちの中は少しずつ変化してきているが、そ

の外には川があり、征矢野や高宮の集落がある。その周りには田があり、その中を道が通って別の集落

へと繋がっている様子がうかがえる。平成 5年 8月の「松本市都市計画図」とも比較してみると、城下

町の回りにあった村が広がり発展していることが分かる。また、天保 6年と現代の地図を重ねて比較す

ると、建物が密集しているのが町人地(所謂ウナギの寝床)であり、間口 3間となっている。これに対し

て、女鳥羽川の北側は、大名屋敷があった場所でまち割りが広くなっていたため、官公庁が建てられる

ことになった。伊勢町は元々間口が狭いところで、現在とは大きく異なるまち割りであった。駅近辺は

一見何もないが、これは町人地や武家地ではなく村であったためで、当時城下町と村が共存し、農作物

と城下町の品物の相互提供をしていた。

慶応 3年の「上土の屋敷割り図」から、武家の屋敷割りが分かる。図中に「木澤」という名の屋敷があり、

この方は松商学園前身の「戊戌学校」をつくった人物である。また、宮村町の 372年前・358年のまち割

り図から「庄屋与兵衛」という名が確認できるが、「源智の井戸」の名称の元になった人物の屋敷で、庄屋

のため間口は6間となっている。図中の「ご奉公人屋敷」は武家地で、「宮村両社宮地」は深志神社を示し

ている。昭和 40年頃の「本町のまち割り図」を確認すると、本町 2丁目の山本時計店があった場所は、信

濃毎日新聞社の松本本社が入ることになっており、今後またこの町は変わっていくと思われる。

松本城周辺では、明治に 3度の大火が起こり、かなり広範囲の地域が被災した。一度灰になり復興し

てきたことを考えると、復興もまた文化となっている。明治 21年大火の際は強風が吹いており、出火元

の極楽寺から扇状に広がり、松本城の手前まで迫っていた。当時はまだ 50連隊が松本にいなかったため

に被害が拡大したという見方もある。明治 19年に 999戸、明治 21年と 45年には約 1500戸もの家が被

災し、蔵造のほとんどが焼失してしまった。そのため、現存する蔵もほとんどは明治 21年以降に再建さ

れたものである。焼失した家を再建するために、官林の払下げや再築期限の延長等を要望してきた経過

もあり、先人達の苦労により当時の面影を残しながら復興していった。

明治 29年に女鳥羽川と薄川が氾濫した大水害では、まちであるが故に汚水等も混ざり、被害が大きか

った。昭和 34年の台風 7号でも女鳥羽川は氾濫し、死者 2名、災害救助法が適用されるほどの大災害と

なった。松本のまちは 3回の大火だけでなく、数度の水害にも見舞われている。その後、教訓を活かし

て女鳥羽川の改修や、それに伴い開智学校の移転等が行われ、これ以降近代化が始まっていく。六九町

にアーケードが完成したことは、水害後の変化のひとつであり、災害のたびに復興へ努力する一方、松

本から繭の品種改良が広まることで製糸業の目覚ましい発展があり、その後の日銀松本支店設置へと繋

がっていった。

現在のまち並みは、昔から同じだったわけではなく、火に焼かれ水に流されるなかで立ち上がるため

に都市開発が進められてきたという、先人たちの様々な願いがあってつくられてきた。災害とまちづく

りが相互に関わりを持ちながら近代化に向かっており、駅前の開発後に伊勢町が変わり、本町・片倉と

いったように今も日々動いている。たった 150年間程度でもこれほど変化しており、今のうちに「今後ど

のようにしていくのか」を考えなくてはいけない。そのためにも、昔の地図・まち割り・町名を知った上

で、現在の姿を捉えて行くことが重要な意味を持つ。

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⑵ 講演「中心市街地の景観とまちづくり」(講師:都市政策課 小林一成氏)

現在、中心市街地をいくつかに区分けしてまちづくり(区画整理・環境整備)が進められている。中央

西や松本駅周辺地区は、昭和末期頃から区画整理によって開発された地域で過去の面影は少ない。その

後、お城の周辺地区や東側の地区、城下町地区などは「歴史を活かしたまちづくり」が進められている。

お城を中心とした市街地は、松本城天守・二の丸三の丸・城下町を基礎に形成され、時代を積み重ねな

がら今の姿になっている。昭和 23・44・54・平成 23年の航空写真を比較してみると、昭和 23年は、江

戸から 80年程経過しており、お城の堀は大部分が埋め立てられ、住宅地に変わっている。時代を経るに

つれて、大型の店舗が建ち始め、低層高密だったまち並みも姿を変えている。また、樹木は減り、空地

や駐車場が増えてきたこともわかる。今後、駐車場や空き地がどのように移り変わっていくのか考える

必要がある。

明治から大正にかけて、善光寺街道としてにぎわった中町は、広い通りに面して張り付くように店舗

が連なっていた。平成の初期から「歴史を活かした蔵の町」として整備が始まり、まちづくり協定が締

結されるなど、まちづくりが進められるなかで、まちなみ修景後には通りに面する建物の約半数が蔵づ

くり等の建物となった。このような建物の変化や、電線の地中化・道路面の整備などにより、一度は減

少した観光客数も上向いてきている。平成 24年の道路整備で、車道の幅を1m縮小することで、歩行者

に優しい道づくりが行われた。なお、まち並みや道路が大きく変わってきた中町とは対照的に、神明小

路のように昔の姿のまま変わらない通りも残されている。

高砂通りは、生安寺通りとも呼ばれ「人形の町」として栄えてきたが、現在は「水と人形の町」をコン

セプトにまちづくりが進められている。中町と同様に修景が進められ、まちづくり協定も締結されてい

る。中町のような大きな変化はないが、ここ 10年ほどの取り組みで空き店舗・空き家が商店に変わるな

ど、少しずつまちづくりが進められており、賑わいも増している。今後も発展する可能性が秘められて

いる通りである。

明治以降、掘の一部を埋め立て四柱神社ができ、その周りに露店が立ち並んだのが縄手通りの始まり

である。諸行事毎に大きな賑わいをみせ、独自の雰囲気を持って発展してきた。昭和の頃と現在を比較

すると、通りの建物や川の護岸・流れが違っている。平成 9年の女鳥羽川河川工事の折、市民からの要

望・協議を経て、縄手通りと女鳥羽川の整備が合わせて行われることになった。整備の結果、現在のよ

うに江戸の長屋を思わせる店舗が再現されることになった。

まちで生活する人や店舗を持つ人、土地や建物を持つ人、観光客など様々な人々が関わりあい、努力

が営まれた結果、現在のまち(景観)が出来ている。今後も関係者夫々が協力してまちを守り育てていか

なければ、より良い景観は形成されていかない。今あ

る空き地や駐車場に、これまでのまちづくりとは異質

なものが出来る可能性があるなかで、景観形成に与え

る影響について、これからのまちづくり活動のあり方

が問われている。また、良好な景観の形成のために、

市では景観計画を策定しており、松本市公式ホームペ

ージにも公開されているのでご確認いただきたい。

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⑶ 質疑応答

Q.過去の地図に誤りが見つかった場合、訂正されるのか。

A.地図は修正せず、当時の資料として紹介するが、誤りはその場で訂正する。当時その地域に住んでい

た人から誤りを指摘されることもあり、それが新たな発見につながることもある(小松氏)。

Q.鍋屋小路には、現在の溶接会社のような特定の業種が並んでいたと思ってよいか。

A.鍋屋小路という名のとおり、溶接や鉄工を行う人々が多く軒を連ねていた(小松氏)。

Q.区画整理等の地区割りを、都市政策課ではどのように決定するのか。

A.当時の政策による部分が大きく詳細は不明だが、大方町会毎に分かれている事例もある(小林氏)。

A.今後まちづくりを進めるなかで、どのように境界を設定すべきか悩む場面がある。まちをどのように

捉えるのか(町会単位、道路で区切る等)が問われることになる(倉澤氏)。

Q.まちづくりを進める際、住民の合意形成はどの範囲でどのように行われているか。

A.例えば高砂町は、町会長を中心としたまちづくり推進協議会を組織して協議した。完成した「まちづ

くり協定」は今も生きており、協定を尊重した家づくりなどが行われている(小林氏)。

Q.まちが発展していく過程は地域によって異なるのか。

A.例えば、駅がお城から更に遠方に建設されれば、当然今とは違うまちになっていた。結果的に、程よ

い場所に駅が出来てまちが広がっていったが、松代のように、駅から遠いことで残されたまち並もあ

る。当時の選択が後にどのよう

な評価を受けるかも、過去を遡

ることで見えてくる(小松氏)。

A.現在の城下町の姿ができた背景

の一つに、上級武士が土地を維

持できず手放してきたことがあ

る。仮に三ノ丸まで緑地になっ

ていたら、セントラルパークや

明治神宮のように、緑地回りが発展したかどうか等の想像も、未来を考える上で訓練となる(倉澤氏)。

A.カタクラ再開発を巡る議論で、「回遊性」が話題になることが多い。例えば、女鳥羽川南側等、城下を

歩いて通りを巡るような流れができると良いと思う(小松氏)。

A.回遊性に関連して、一街区の大きさが「歩きやすさ」に与える影響にも注目してほしい。大名町や中町

など歩くことを基本に形成されているが、インフラ面も景観形成には大事な要素となる。市街中心部

の恒常的な人口密度減少についても、どう向き合うか考えなければならない(倉澤氏)。

4 アンケート(一部抜粋)

○対象エリアの移り変わりが理解でき、景観を時間的・空間的に捉えることに大いに役立った。

○現在の景観形成に対する市の取組が理解でき、今後のまち歩きの参考になった。

○講演により「景観=地域=人の暮らし」という視点から理解が深まるとともに、まちづくりは 20.30年

先を考えて進める必要性を感じた。

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第5回 まち歩きの POINT②「松本城~あがたの森周辺の地域を知る」

日 時:平成 26年 11月 12日(水) 午後 7時~9時

会 場:第三地区公民館 大会議室

参加者:28名

話題提供:飯森福太郎 氏(第一地区町内公民館長会長)

飯田 裕康 氏(第三地区町会連合会前会長)

コーディネータ:倉澤 聡 氏(都市計画家)

1 要旨

2回目のまち歩きに向け、実際にその地域で暮らしている人々から、地域の現状や暮らし、またどのよ

うに街が変わってきたのか等を聞くことで、まち歩きの視点として、「居住する住民の目」や社会関係資本

(ソーシャルキャピタル)を取り入れられるようにする。

2 概要

⑴ 松本城周辺について(飯森福太郎 氏)

⑵ あがたの森周辺について(飯田裕康 氏)

⑶ 情報交換(進行:コーディネータ)

3 講座内容

⑴ 松本城周辺について(話題提供: 飯森 福太郎 氏)

子どもの頃の「女鳥羽川」は遊び場であり、今と違って道路から小学生が飛び降りても大丈夫な高さで、

戦争中は水の流れているところ以外は畑にして野菜を作っていた。現在の縄手通りは南側に店が連なっ

ているが、昔は一ツ橋より上流あたり(現在の市営住宅周辺)の河川上に鉄骨を組んで店をつくり営業し

ていた。平成 11年から 3年間かけて整備され現在のようになり、この頃から面白いまちになってきた。

中町は昔、問屋が沢山あった。客以外に歩く人もおらず、そういった状況を打開するために、自分よ

り若い人達と盛んに話し合いを行っていた。平成 8年に「蔵シック館」が完成したことで、中町を良くし

ていこうという気運が高まってきた。最初、蔵シック館の場所は、災害時の避難場所が無かったため、

避難所を兼ねたステージ状の広場にする予定であった。ところが、宮村町の酒屋が閉店し、市が譲り受

けた建物を広場予定地に移設した。建物の利活用は中町に一任されたため、1~3丁目の共有公民館とし

て使用しているが、町会の物等が置けずに不便な面もある。街並環境整備事業(国補助)により、中町通

りの無電線化等及び本通りから縄手に向かう横道も整備することができた。今まで沢山の電線が張り巡

らされていた通りが、電線の地中化により視野が広がりきれいになったと感じる。

まちの使い方として、上土町が寂しいように感じる。例えば、市営住宅の 1階スペースを店子に貸す

のではなく、町会として活用できれば良くなっていくと思う。中町の裏小路は、リヤカーが 1台通れる

かどうかであったが、2度にわたる拡張工事により道路が広がった。6.7年前から、裏小路に店舗を出

して、裏の魅力を高めて行こうとする話し合いも進められている。縄手通りにはタコ焼き店のように食

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べ歩きできる店が多く、中町でも歩きながら、ベンチに座ってという風景をつくり出したいという意見

が、振興組合の若い人から出されている。そこで、少し休めるスペースをつくるために、今春頃から椅

子等を設置し始めている。振興組合のように、「通りを良くして行きたい」という積極的な意見がある一

方で、老舗店は慌てて変えようとはしない。それは、中町の店舗以外に不動産があって家賃収入がある

からでは、と推測している。そういった店に対して意識改革の為に指導することもあるが、観光客増加

により、徐々に自分から店舗をきれいにし始めて魅力を高めようとしているが、未だに意識が変わらな

いところがあるのも現実である。

中町には独居者が多い。正確な人数は把握できていないが、お互いに助け合う意識を持った人は少な

く、中町 1丁目内でも交流している隣組は 1組しかない。他の隣組は回覧版を回しているだけである。

本町 1丁目周辺の居住者は 7軒程度。日中は店を営業しているが、住居スペースとして使用している人

はほとんどいない。テナントとして貸しているところは、階が上がるにつれ入居率は下がっている。

「蔵のまち」と言い始める前は、建物の半分が「なまこ壁」ではなかったが、補助金等により「なまこ

壁」にする人たちが増えた。昔からの土蔵を所有している宅は、当時からのまち割りの名残で「うなぎ

の寝床」になっているため、蔵は敷地の奥にあることが多く、観光客等に見せることはできない。もし、

土蔵を観光客等に見せることが出来れば、中町は蔵のまちとして更に発展していくと思う。中町で一番

の課題は後継者不足で、跡取りがいないわけではなく、子どもが大学等で都会に行ったまま戻ってこな

い。県内に居住していても、親と同居せずに別に自宅所有している人が多い。

⑵ あがたの森周辺ついて(話題提供:飯田裕康 氏)

第三地区は年々人口減少傾向にあり、主な理由としては建物(住宅)の老朽化が考えられる。戦後の

建物でも 70年以上が経過しているなかで、戦前の建物も未だに多数残っている。住民には地主が多く、

借家も多い。入居者は、老朽化すると退居していくため、結果的に入居者のいなくなった借家は、金銭

面から簡単にはスクラップできず、出来たとしても駐車場に変わるケースが多い。合わせて戸建てに住

む人も少ないので、空き地が目につきやすい。実際に、昭和 40年代頃と現在の住宅地図と比べると、

空き地が増えてきた様子がわかる。特に商店の減少が著しく、昭和 56年にカタクラモールが開業して

から減り続け、結局閉店した場所は空き地になっている。

人口変動を見ると、地区としては昭和 30年から減少の一途をたどっている。一方、四ツ谷町と若松町

も減少傾向にあったが、平成 26年に突然人口が増加している。要因は、マンション建設であるが、人

口は増加しても戸建てが増えたわけではないので、空き地が減少したわけではない。

この地区は、良くも悪くも公共施設や大企業の建物によって左右され、まちが変化してきた。例えば、

片倉の閉鎖や移転、農林省蚕糸試験場の閉鎖が地域の変わり目に大きく影響した。試験場は、明治末

期から 100年ほど続いたが、蚕糸業の衰退により試験場が二分されて真ん中に道路を通した。現在は蚕

糸記念公園やサッカー場に変わっており、建物のあった場所は平成 21年完全に幕を閉じた。昭和 55年

に松本警察署が渚へ移転し、平成 14年に松本市美術館が建設された。警察署移転から美術館建設まで

の間は駐車場として使用されていた。

片倉工業は明治初期に小さな町工場として誕生し、その後の成長によって全盛期には 3,000人を超え

る女工がいた。子どもの頃、日ノ出町を歩いていると女性が多く、疑問を持ったことを覚えている。第

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三地区公民館の場所は、以前片倉の敷地であり「片倉機器工業」があったが、現在は今井地区へ移転し

ている。終戦直前には、三菱工業傘下の軍事工業の代わりにロケットエンジンを作っていたようで、高

校時代に松商学園グランドで、ロケットエンジンの試射をしている音がうるさかった記憶がある。 「ス

マイルホテル」は以前「ホテルサンルート」という名前で片倉系のホテルであった。

⑶ 情報交換(進行:コーディネータ)

コーディネータ

飯森氏は「城下町からのまちについての動き」、飯田氏は「明治頃からまちに変わってきた場所」につ

いて夫々お話いただいた。 あがたの森周辺は大地主が多く、借家に多くの人が住んでいたというのは、

以前農地であった場所が都市開発(産業化)によって労働力を集中させていったというバックグラウン

ドがある。それが現在の景観を構成する一つの基軸になっており、成り立たなくなってきた結果が、こ

の地区周辺にみられる現象につながっているという話であった。一方、中町は「街並環境整備事業」に

より大変化を遂げたのは、住民の努力あってのことと推測されるが、意識を変化させる上で苦労された

点等伺いたい。

飯森氏

蔵シック館は中町2丁目にあり、1~3丁目の共有物と意識付けるのが大変だった。良かった点として、

居住者以外の方ともつながりができ、今まで知らなかった人同士の交流が広がった。結果、挨拶を交わ

すようになって、一つにまとまっていった。人間的な繋がりが無ければ、出来なかったことだと思う。

コーディネータ

意識を変革させるのは大変なことで、今回は動きがあるなかで様々な人がつながり、変革していった

ことは非常に大きい。繋がるという時に、「まちをこうしていこう」等のプロジェクトがあると進めや

すく、中町にとっては今回のプロジェクト(景観形成)が重要な役割を果たしていた。景観づくりは、結

局つながりが生まれないと進められないことなので、それをどのように生み出すのかが鍵になる。 「担

い手不足」の話について、現状まちの将来を考えていく中心になるのはどのような人か。

飯森氏

振興組合の若い人達(50代)。振興組合の理事長を交替するとき、各町会で 5人の選出を依頼したと

ころ、同じ顔触れになった。そこで息子たちを選出するよう依頼したため、現在では若い人達が主にな

り中町を動かしている。私たちでは出来なかったような発展的な事も考えて進めている。

飯田氏

60.70代の人になる。50代は仕事中心で、地域のことまで手が回らない上に、担い手の絶対数不足が

その要因となっている。 源池小学校に通っていた昭和 14,5年頃は、1,800人の児童がおり、1クラス

60人、5クラスあった。 今は 1クラス 30人程度で、クラス数も約半分になっている。

コーディネータ

第三地区の人口変動を見ると、昭和 30年をピークに徐々に減少しており、昭和 40年に増えている町

会はもともと農地であったスペースに入ってきた結果である。日本の地方都市に共通していることは、

街中への居住者が減少し、中心市街地の人口密度が下がっていることで、大きな課題となっている。正

直、人口的に見れば、市街地は死んでいると言ってもよい状態で、そこにどういった工夫をしていくの

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か考えて行く必要がある。松本の昭和 4年当時のエリアを、現在に当てはめると〝第 1~3・東部・中央

地区〟の 5地区程度の範囲になる。これを現在の人口で比較してみると、本市全人口が 24万人である

のに対し、このエリアは 1万 4千人で、実に 1.4/24程度となっている。この市街地の人口規模程度の

ために、行政的な枠組み・街中の機能・政治的・制度的な面等、中心に考えることは難しい状況にはあ

る。しかし、他都市・地域から最も本市へ来る場所はここであり、今後この市街地をどのようにしてい

くのかについて、景観だけでなく根本的に問われているというのが、今の私たちが置かれた環境である。

4 アンケート(一部抜粋)

○夫々の地域の変遷や住民の暮らし等が理解できたことで、今後につながると感じた。

○蔵シック館を、中町 1~3丁目の共有公民館として機能させていることは、「景観から地域づくり」へつな

がるヒントになる。

第6回 「松本城~あがたの森周辺のまち歩き~PART2~」

日 時:平成 26年 11月 15日(土) 午前 9時~12時

会 場:第三地区公民館 大会議室(集合場所)

参加者:25名

講 師:倉澤 聡 氏(都市計画家)、山田健一郎 氏(一級建築士)、藤松幹雄 氏(一級建築士)

米山文香 氏(一級建築士)

1 要旨

「まち歩カード①」の内容を基に、松本城~あがたの森周辺において、グループ毎講師が設定したテーマ・

コースによりまち歩きを行う。講師の解説により、まち歩きを行う中で捉えた景観・対象物を、「まち歩

きカード②」へまとめる。

2 概要

⑴ まち歩きのテーマ・講師紹介

⑵ まち歩きの方法・まち歩きカード②への集約方法

⑶ まち歩き

3 講座内容

⑴ まち歩きのテーマ・講師

ア 第 1グループ「まちで過ごす」・・・・・・・・・・・・・・倉澤 聡 氏

イ 第 2グループ「まちの生活感」・・・・・・・・・・・・・・山田健一郎 氏

ウ 第 3グループ「緑・水・道・空地・空家」・・・・・・・・・藤松 幹雄 氏

エ 第 4グループ「建物のデザイン(歴史をたどりながら)」・・・米山 文香 氏

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⑵ まち歩きの方法・まち歩きカード②への集約方法

ア グループ内での共有化を図りやすくするため、テーマ(切口)を設定して景観・対象物を捉える。

イ 捉える視点は、①現状に違和感を覚えるため、変化・改善した方が良い②現状は良いが、もっと変

化・改善した方が良い、と言ったように「変化・改善」の必要があるものを捉える。

ウ 捉えた物について撮影後、①目標設定(本来の「あるべき姿」としてどのような物が望まれるのか/

どのようになったら良いのか)②現状分析(あるべき姿と比較して現状はどのようになっているのか)

③目標達成(現状をあるべき姿に近づけるためにどのようにしたら良いのか)の 3つの観点から考察

し、1.2点に絞って「まち歩きカード②」へまとめる。

⑶ まち歩き

ア 第 1グループ「まちで過ごす」

人 (々住民・観光客等)がどのようにまちの中で過ごしているのかを、日ノ出町・中町・本町・

伊勢町にてベンチや通りを往来する人々を中心に考察した。しかし、現状としては、ベンチで過

ごす人も往来する人も少なく、まちに活気が感じられなかった。要因として、講師からは「車社

会になり、昔に比べて通りなどで佇む場所が減ったこと」「実際に設置されているベンチが、利

用者の使いやすさや座りやすさ等を考えられていないこと」等のレクチャーがあり、様々な問題

点が確認された。その上で、「今後、まちで人々が過ごす・過ごしやすい場所を設置し、活気を

もたらして行くなかで、どのように景観を変化させていくのか・変化していくのか」といった視

点で、各自が問題意識を持ちながら、まち歩き・撮影を行っていた。

イ 第 2グループ「まちの生活感」

「まちの中に人が住むこと」「これからどのように暮らしていくのか」等を視点に、高層住宅や戸建て

住宅が混在する住宅地、オフィスビル街、商店街などを中心にまち歩きを行った。洗濯物や干し柿、

自宅前を掃除する人など、「生活感を感じるもの」や多くの人が行き交い生活している様子を確認する

なかで、今後どのようにまちを発展させていくべきか考えていくことの重要性を理解した。その上で、

まちに住む人だけでなく、外からの異なる視点(まちを訪れる人等)から「まちがどうあるべきか」につ

いて、生活感を切り口に考えることができた。

ウ 第 3グループ「緑・水・道・空地・空家」

江戸時代からの都市形成には、「連続性(変化しないこと)」と「変化」という両面があり、変化につ

いては政治体制や災害、交通形態の変化が主な要因として考えられる。そこで、水路・小路・まち割

りなど、連続性を持った部分を基軸にまち歩きを行った。「榛の木川」や「蛇川」及び当時の「まち割り」

の様子から、生活と川がどれだけ密接に係り合っていたのかを確認するだけでなく、「松本らしいまち

づくり(景観形成)」を進める上で、水路(=水)と小路を活かしていくことの必要性も確認できた。合

わせて、川がまち割りをひも解くうえで、カギになることも理解された(例:まちの境目に川がある等)。

また、中町に残る「ミドリ薬局」のような看板建築の建物や、ナマコ壁による蔵造りの建物だけでな

く、その技術をどのように後世に残し、生かしていくのかを検討していかなければいけないことが共

有された。

エ 第 4グループ「建物のデザイン(歴史をたどりながら)」

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建物自体やその建物の敷地等から、歴史的なデザイン・特徴・変遷を考えながら、まち歩きを行っ

た。普段何気なく通り過ぎている場所でも、建物のデザインが変化していないもの・変化してきてい

るもの・既に無くなったものなど、講師や「甘味処塩川」の亭主からの話を聞いて、勉強になることが

多々あった。また、まち割りや敷地跡が比較的残っていることを確認できた一方、飯田町・小池町で

は隣が駐車場化した結果、敷地の構造が見えてきた所もあり、少し考えさせられる部分があった。

4 アンケート(一部抜粋)

○初回のまち歩きで行ったことが無い小路や普段見慣れていても気づかなかった所について知る機会とな

り、有意義なまち歩きとなった。

○基礎知識を持って 2回目のまち歩きに臨めたことで、様々な事象を捉えやすかった。

○水路等を基軸に、現在までのまちなみの変遷をたどる視点は、わかりやすかった。

○湧水・清流に恵まれた「松本のまちの良さ」を、もっと多くの市民に伝え、この特徴を生かしたまちづく

りを更に進めるべきだと感じた。

第7回 まち歩きの成果発表

日 時:平成 26年 12月 10日(水)

午後 7時~9時

会 場:第三地区公民館 大会議室

参加者:25名

コーディネータ:倉澤 聡 氏

(都市計画家)

1 要旨

2回目のまち歩き後に作成した「まち歩

きカード②(対象に対して、目標設定・現

状分析・目標達成の 3点からまとめる)」

について、各グループでワークショップを行い、対象物を多角的な視点から捉えるなかでカードをブラッ

シュアップする。その後、各グループで議論された内容を発表するなかで、全体として共有化を図る。

2 概要

⑴ ワークショップのポイント(コーディネータ)

⑵ 各グループで「まち歩きカード②」の内容についてワークショップ

⑶ 各グループ発表

⑷ まとめ(コーディネータ)

⑸ 事務連絡

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3 講座内容

⑴ ワークショップのポイント(コーディネータ)

ア 「人間の街(著者:ヤン・ゲール)」の〝歩行者景観に関

する 12の質的基準〟すべてが満たされると「心地良い」

とされているが、対象物を捉える際の参考にする。

イ 始めに、目標(目標設定)について、それぞれ意見を

出し合いながら、グループ内で深める。

ウ 目標達成(これからどのようにしていくのか)について、アクター(行政・町会等)という点が問題と

してあるが、ワークショップでは「自分たちならばどのようにするのか」を話し合う。

<歩行者景観に関する 12の質的基準>

交通と事故からの保護(安全)

歩行者の保護、交通不安の除去

犯罪と暴力からの保護(治安)

活気ある公共領域、街路に注

がれる眼差し、適切な照明

不快な感覚体験からの保護

風・雨・雪・寒さ・暑さ・騒

音・汚染・埃・照り返し

歩く機会

歩行スペース、障害物除去、良好

な路面、興味深いファサード

たたずみ/滞留する機会

エッジ効果、たたずむための

拠り所、魅力的なゾーン

座る機会

着座に適した場所・ベンチ・

ゾーン、眺望・日照・人

眺める機会

興味深い眺め、夜間照明、適度な

観察距離、遮断されない視線

会話の機会

会話景観をつくり出すストリ

ートファニチュア、低騒音

遊びと運動の機会

創造性、身体活動・運動、遊

びの促進、いつでも

スケール

人間的スケールで設計された建

物と空間

良好な気候を楽しむ機会

日向・日陰・暖かさ・涼しさ

そよ風

良好な感覚体験

素晴らしい眺め、花木・水、

良好なデザインとディテール

⑵ ワークショップ結果

ア 第 1グループ/まち歩きテーマ「まちで過ごす」

「まちで過ごす」をテーマに、公園と河川を切口に議論を深めた。実際のまち歩きでは、人が過ごし

ている様子がうかがえず、例えば人通りのある公園にベンチが設置されているのに、誰も座っていな

い(活用されていない)ことがあった。公園やベンチを何のためにつくるのか(目的/使われ方)を考え

た結果なのか疑問が残る。その後、活用されるための方策を考えるなかで、何点かキーワードが出さ

れた。例えば、「緑や土」等あげられたが、根本的に歩行者にとって優しくデザインされているのか否

かが最も重要なことで、車優先社会であることが、まちで過ごしにくくさせている要因との意見もあ

った。観光客にとっても同様であり、このような点をもう少し検討しながら公園などをつくるべきと

の考えで一致した。

また、女鳥羽川河川敷は上・中・下流と全く異なる様子になっている。整備されている上流に対し、

雑草が生い茂る中流、大きい石などがある下流と、上流(癒しの空間)に合わせて統一感を出すべきで

はないか。

イ 第2グループ/まち歩きテーマ「まちの生活感」

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人によって捉え方や感じ方の異なる「生活感」というテーマに対し、「民家の不要物(ゴミ等)が置いて

ある/歩いている人数/自宅を緑化している」等、居住者の活動から生活感を感じる様々な視点があ

り、バラエティーに富んだ話が進められた。いずれにしても、景観という目に見えるハードな部分で

はなく「居住する人・歩く人がどのように感じるか」という視点から、まちを捉えることがポイントだ

と感じた。

また、湧水地の不明瞭な表示や水汲み客の横付けされた車による風情の無さも目に付いた。湧水・

路地・小路があって風情がある、住民が楽しく歩いている等、市民がどれだけ素敵に生活しているか

が感じられれば、観光客は松本市を魅力的に感じるのではないか。そういった「生活を見せる」という

ことが、観光にも居住者にとっても意味あることだと思う。

ウ 第3グループ/まち歩きテーマ「緑・水・道・空地・空家」

ヤマダドレスの裏側(東側)に、なまこ壁の蔵が複数残り、木々も適度に生息する場所がある。ここ

は、信濃毎日新聞社が入ってくる予定地 1階で、松本インターから車で伊勢町を通って市街地へ入る

と必ずぶつかるところ(T路地)である。この場所を人が集うスペースにできないか議論になった。

例えば、木々を生かしたオープンカフェや、蔵にお店が入り、一角では松本の工芸品を売り出す。

若者が喜ぶような特別感のある店を集める。そうなれば、松本らしい緑や空間が存在する、新たな拠

点になるのではないか。そうなれば、現在松本城に訪れる観光客は、バスで城西側駐車場へ乗り付け

ることが多いが、この場所にイメージ的には「長野市のパティオ大門(蔵を活かしたお店)」のようなス

ペースが存在することで、高砂→中町→縄手→松本城といった回遊性が出せるようにも感じている。

最終的には信毎の判断となるが、住民説明会でも提案していけると良い。

エ 第4グループ/まち歩きテーマ「建物のデザイン(歴史をたどりながら)」

江戸時代のまち割りを残す場所は、歴史を知る大切なものであるため、目標としては、まちとして

の機能や一体感を保ちながら、城を中心とした城下町全体の雰囲気に統一感を持っていける街並みを

保つことで、まちの魅力UPにつなげていきたいと考えている。しかし、現実にはそのようにいかず、

統一感すら保てないばかりか、例えば居住者が亡くなったことで相続者が一つの不動産物件として捉

え、売ったり駐車場等に変えたりする場所も少なくない。

そこで、目標に近づけるために「ルール作り」をすることも考えられるが、「商いの街(中町/古い

街並みを生かして観光へ)」と「人が住む街(餌差町/住みやすい建物を増やして転入者増加へ)」では、

価値観を一致させたまちづくりは難しいものとなる。更に、「居住者(住んでいる人)と土地持ち(他で

暮らしている)」という立場の違いもある。では、建物等を文化財として捉え、何らかのメリット(補

助金・減税など)を見出すことも考えられるが、現実的には厳しく、現時点で出来ることとすれば、

教育や子どもたちへ伝承、記録で残す等の方法しかないと思われる。

実際住んでいる人の「経済との絡みの部分」と「外部の目から見たもの」との折り合いをどこでつ

けていくかが非常に難しいところである。

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⑶ まとめ(コーディネータ)

昨年の講座は景観というものは目に見えるものと捉えられるが、その背景にあるものを見ようという

組み立てで、かなり難解なものであった。今年は、景観の奥深さや「見た目だけではない」というところ

を、身近な視点から捉えて行くために、歩いて、考えてまちを読み解いていった。

最終的には、4つのテーマからまち歩き・まち歩きカード作成を通じてまちを考えていくなかで、テ

ーマは違っても同じようなところに興味を持っているように感じられた。つまり、違う視点で歩きなが

ら対象を捉えても、分析する視点は一致しているということ。

来年は、「景観を変えていくにはどのようにしたらいいのか」についてトライしていきたい。ある場所

を良い方向に進めていくには「何が出来るのか」「心地良い・居心地の良い・暮らしやすい街にしてい

くにはどのようなことが考えられるか」と言うことを、次のステップとして考えていければ面白いと考

えている。目の前にある景観を評価しているだけでは次に進めない。ただし、今回得た知識や捉え方、

景観と言う視点を、周りの人や地域の人に伝えることで、松本の景観を考える土壌が広がっていけば良

いと感じている。

「街中を歩く・過ごす人がいない」という問題を打ち破ることと、良い景観を作っていくことはつなが

りあっている。つまり、景観は物理的・空間的に良いだけでは成り立たず、そのためには「人のアクテ

ィビティ」が必要になる。アクティビティがそこにあることで、その景観に対して手を加えたくなる人

が出てきて、良くなっていく。人が居て初めて街の景観はより良くなっていく。まちづくりにおいては、

実際に良いものを作らないと次へは進まない。人が「この変化は良い/またやりたい」となり、隣町の人

が「自分たちもやってみよう」等の主体的は動きにつながっていくことがまちづくりの成果だと思う。そ

れがないと街の「良い力」は引き出せないし、この講座が一つのきっかけになればと考えている。

イオンモールも粛々と計画を進めていて、現時点でも見慣れた風景が次第に無くなり、今後大変化し

ていく。新しいものを造るならば、どう魅力的な松本としてのストックになっていくのかも大切であり、

良質なストックも建物だけでなく街・街区など面的なものにどう価値を高めていくかが、これからのま

ちづくりにとって大事である。

⑷ 事務連絡

ア まち歩きカード②を各自若しくは世話人が修正し、12月末までに提出する。

イ 完成したカードは冊子にして、2月以降に講座参加者・該当する地域の地域づくりセンター・都市

政策課・文化財課等に配布する。

4 アンケート(一部抜粋)

⑴ 第 7回講座に関する意見

○景観・人の滞留・空間等について、お互いの異なった視点から議論できたことは価値がある。

○夫々が感じたまま自由に話し合う中で、共感する瞬間もあり、とても心地良かった。

⑵ 講座全体に関する意見

○まちの変遷・現状について、まち歩きと座学を通じて理解を深めることで、地域づくりに「景観と空

間」が重要な役割を果たすことがわかった。

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○「景観と空間」を良いものにしていくためには、地域の力が必要であり、人(人づくり)こそ、地域づく

りだということがわかった。

○地区公民館で、同様のことを講座として開催するなかで、自分の暮らす地域について住民と意見交換

してみたい。

○自分の地域にもっと関心を持ち、改善した方が良いと感じる場所を、公民館と一緒に考えて地域を活

性化させていきたい。