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はじめに

　減速機は，電動モータなどの「原動機」と動力を得て仕事をする機械などの「被動機」の間に配置され，原動機の出力を被動機に必要なトルク，回転速度に変換して出力するものである。産業用機械や産業用ロボットなどの原動機としては主に電動モータが使用されるが，電動モータの効率が良い回転速度に対して，被動機で必要とされる回転速度は一般的に低い。そのため，原動機と被動機の間に最適な回転速度に調整するための減速機が必要となってくる。このとき，減速機は回転速度を下げると同時に伝達するトルクを増加させる。

　減速機に要求される内容は，寸法・重量・減速比など適用される被動機に応じて多岐にわたる。減速機としてはさまざまな機構のものがあるが，それぞれに一長一短が存在する。したがって，用途に合った減速機を選定するためには，それぞれの減速機の特徴を把握することが必要となってくる。　日本電産シンポは，精密制御用減速機としてさまざまな機構のものを展開することで，多様化する幅広い市場のニーズに対応してきている。当社が取り扱っている各種精密制御用減速機の特徴と最新の技術動向について紹介する。

精密制御用減速機の種類と特徴

　1．遊星歯車減速機：ABLEシリーズ　遊星歯車減速機は，産業用機械のみならず幅広く採用されている減速機である。遊星歯車減速機構は図1に示す，太陽歯車，複数の遊星歯車，内歯車および遊星歯車を支持するキャリアピンから成る。一般的に，内歯車は固定され，太陽歯車が入力となり，太陽歯車が回転すると遊星歯車は自転すると同時に太陽歯車の周りを太陽歯車と同方向に公転する。この遊星歯車の公転運動を，キャリアピンを介して出力として取り出す。複数の遊星歯車でトルクを分担して出力することができるため，コンパクトな減速機とすることができる。図1　遊星歯車減速機構の模式図

内歯車

遊星歯車

キャリアピン

太陽歯車

解説2　精密制御用減速機の種類と特徴

特集　今知っておきたい減速機の基本と最新技術動向

日本電産シンポ　坪根　太平＊

＊つぼね　たいへい：開発第一部　課長

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解説2　精密制御用減速機の種類と特徴

第 62 巻　第 6 号（2018 年 5 月号）

　当社の遊星歯車減速機（図 2）は，減速比として1段減速で1/3～1/10，2段減速で1/15～1/100を標準としている。減速機の形態としては，各社のサーボモータを容易に取り付けることができるギヤヘッドタイプとしており，軸出力タイプやフランジ出力タイプなど豊富なバリエーションを揃えている。

　2．波動歯車減速機：FLEXWAVEシリーズ　波動歯車減速機は，産業用ロボットの関節駆動部を始めとした高精度位置決めが要求されるところで幅広く採用されている減速機である。波動歯車減速機構は図3に示す，楕円状に変形可能な薄肉外歯車（フレックスギヤ）と弾性軸受，楕円状カム，内歯車から成る。楕円状カムにより，弾性軸受とフレックスギヤは楕円状に変形し，楕円長軸部分でフレックスギヤと内歯車の歯が噛み合う。内歯車を固定し，楕円状カムを入力として回転させると，フレックスギヤと内歯車の歯の噛み合い位置は楕円長軸部分とともに移動し，フレックスギヤは内歯車との歯数差の分だけ楕円状カムと逆方向に自転する。このフレックスギヤの自転を出力として取り出す。　波動歯車減速機は，少ない部品点数で構成できるため，軽量・コンパクトな高減速比の減速機とすることができる。機構上，歯の噛み合い部には予圧がかかるため，バックラッシがなく，噛み合い歯数も多いことから滑らかな回転を得ることができ，高トルクの伝達も可能となっている。これ

らの特徴から軽量かつ高精度の精密制御が要求されるロボットの関節駆動用として多用されている。しかし，製造の難易度が非常に高く，波動歯車減速機を量産化しているメーカーは数社しかない。　当社の波動歯車減速機（図 4）は，減速比として1/50～1/120 を標準としている。減速機の形態としては，フレックスギヤ，弾性軸受，楕円状カムおよび内歯車のみで構成されるコンポネントタイプや，コンポネントタイプに主軸受を備えたユニットタイプなど豊富なバリエーションを揃えている。

　3．内接式遊星歯車減速機：CORONEXシリーズ　内接遊星歯車減速機は，産業用ロボットの基本軸や工作機械などで特に高剛性かつ高精度位置決めが要求されるところで採用されている減速機である。内接式遊星減速機構は図5に示す，外歯車，

図2　ABLE製品外観（VRXFシリーズ）

図3　波動歯車減速機構の模式図

弾性軸受

楕円状カム

内歯車

薄肉外歯車

図4　FLEXWAVE製品外観（コンポネントタイプ）